以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電線付半導体基板の製造装置としての薄膜系太陽電池集電極配線機1(以下、単に「配線機1」という。)を説明する。図1は、配線機1の模式的構成図である。配線機1は、半導体基板としての基板Wに接着剤ADを塗布する接着剤塗布装置10と、基板Wに電線としてのリボン電線Rを供給する電線供給装置としてのリボン供給機20と、リボン電線Rを基板Wに押さえつける保持装置としての押さえ機構30と、接着剤ADに紫外線を照射する照射装置としてのUV照射器40と、接着剤ADを加熱する加熱装置としての加熱炉50と、上記各装置(機器)の間で基板Wを搬送するコンベア91と、配線機1の動作を制御する制御装置95を備えている。本実施の形態では、基板Wが太陽電池セルであるとして説明する。また、リボン電線Rは、取り出し電極として機能する。
ここで図2を参照して、基板Wの構成について説明する。図2は、基板Wの構造を説明する概略図である。基板Wは、薄膜系太陽電池に用いられる半導体基板である。基板Wは、矩形(長方形又は正方形)のガラス基板gの上に、透明電極e1、半導体膜s、裏面電極e2が以下の要領で形成されている。まず、ガラス基板gの上に、透明電極e1を形成したのち、透明電極e1の一部を除去して、複数の帯状の透明電極e1を間隔を開けて形成する。続いて、透明電極e1の上に、半導体膜sを形成する。その後、半導体膜sの一部を除去して、半導体膜sが、隣り合う透明電極e1にわたって形成される。続いて、複数の半導体膜s及び透明電極e1の上に、裏面電極e2を形成し、その一部を除去して、裏面電極e2と透明電極e1とが、電気的に接続された部分が形成されている。ガラス基板g上に複数配設された透明電極e1のうち、両端の透明電極e1には、リボン電線Rを接合するために接着剤ADを塗布するスペースとして半導体膜s及び裏面電極e2が形成されていない部分(以下「被接着部分eAD」という)が長手方向に沿って形成されている。本実施の形態では、透明電極e1は酸化インジウム錫で、半導体膜sはアモルファスシリコンで、裏面電極e2はアルミニウムでそれぞれ構成されている。基板Wは、表面Wfがガラス面に、裏面Wrが裏面電極e2の面に形成されている。基板Wは、例えば大きさ1300mm×1000mm、厚さ5mm程度である。図2(a)では、説明の便宜上、ガラス基板gの厚さと電極部分(透明電極e1、半導体膜s、裏面電極e2を積層した部分)の厚さとが同程度に示されているが、実際には、電極部分の厚さは例えば数μm以下程度である。図2(a)に示すように、リボン電線Rが基板Wに接合される際には、両端の透明電極e1の被接着部分eADに接着剤ADの層が形成され、その上にリボン電線Rが接合される。基板Wは、表面Wfから入射した光がガラス基板g及び透明電極e1を透過して接着剤ADに照射されるように形成されている。
なお、上記の基板Wの構成はあくまでも例示であって、上記以外の構成の基板であってもよい。上記以外の基板Wの構成として、リボン電線Rが接合される箇所に他の領域同様に半導体膜s及び裏面電極e2が形成されている場合において、リボン電線Rが接合される半導体膜s及び裏面電極e2の所定の箇所に、他の領域との絶縁のための絶縁溝を形成し、さらに接着剤ADによりリボン電線Rと透明電極e1とを接合するために接着剤ADの層を形成するための貫通溝を形成した構成としてもよい。この場合、表面Wfから入射した光は絶縁溝及び貫通溝を通して接着剤ADに照射されることになる。
図1に戻って配線機1の構成の説明を続ける。コンベア91は、基板Wの搬送方向Dに直角かつ基板Wの裏面Wrに平行に伸びる軸91aに、複数のローラ91bが取り付けられ、このローラ91b付の軸91aが基板Wの搬送方向Dに複数配設されて構成されている。ローラ91bは、1つの軸91aに対して安定した基板Wの搬送ができる個数が設けられている。ローラ91b付の軸91aは、典型的には常に3つ以上で基板Wを支持搬送できるような間隔で配設されている。コンベア91には、基板Wが、透明電極e1の被接着部分eAD(図2参照)が搬送方向Dに伸びる向きで裏面Wrを上方に向けて載置される。コンベア91は、制御装置95に制御される駆動装置(不図示)によって軸91aが回転させられることにより、載置された基板Wを搬送することができるように構成されている。
接着剤塗布装置10は、接着剤ADを吐出するノズル11を有している。本実施の形態では、両端の被接着部分eAD(図2参照)のうちの一方に接着剤を塗布する第1ノズル11Aと、他方の被接着部分eADに接着剤ADを塗布する第2ノズル11Bとを有している。以下の説明において、第1ノズル11Aと第2ノズル11Bとを特に区別しない場合は「ノズル11」と総称する。ノズル11は、接着剤ADが蓄えられているタンク13と、接着剤ADが供給されるチューブ12を介して接続されている。タンク13の内部には、接着剤ADが蓄えられている領域と空気が充満されている空気領域とを隔てるダイアフラム(不図示)が設けられており、空気領域内を加圧することにより接着剤ADをノズル11に供給することができるように構成されている。
本実施の形態で用いられる接着剤ADは、紫外線を照射することにより基板Wとリボン電線Rとを仮止めすることができる程度に硬化するラジカル重合型UV硬化型アクリル樹脂と、所定の温度に加熱することにより本硬化させることができる熱硬化型エポキシ樹脂と、基板Wとリボン電線Rとの導電性を確保する導電性物質とを含んで構成されている。ここで「仮止め」とは、基板Wを加熱炉50に搬送して接着剤ADを本硬化させるまでの間に基板Wとリボン電線Rとが剥がれない程度に(基板Wとリボン電線Rとの相対的な位置が変わらない程度に)基板Wに対してリボン電線Rを接合することであり、本発明の第1の接着強度に相当する。仮止めにおいては、接着剤ADは第2の所定の接着強度にまで硬化しなくてもよい。また「本硬化」とは、太陽電池モジュール(不図示)中において実用可能な程度の強度で基板Wに対してリボン電線Rを接合することであり、本発明の第2の接着強度に相当する。
接着剤塗布装置10のノズル11は、吐出口を下方に向けた状態で直交フレーム14に取り付けられている。直交フレーム14は、基板Wの搬送方向Dと平行な平行方向D2に伸びる平行フレーム15に取り付けられている。制御装置95に制御される駆動装置(不図示)により、直交フレーム14は平行方向D2に往復移動することができるように、また、平行フレーム15は上下方向に往復移動することができるように構成されている。接着剤塗布装置10は、直交フレーム14及び平行フレーム15が平行方向D2及び上下方向に移動することにより、基板Wに対して平行方向D2に伸びる辺に沿って所定の間隔をあけて点状(あるいは楕円状又は短線状)に接着剤ADを塗布することができるように構成されている。接着剤塗布装置10の搬送方向Dの下流側には、リボン供給機20と、押さえ機構30と、UV照射器40とが連関して配設されている。
ここで図3を、図1と併せて参照して、リボン供給機20及び押さえ機構30の構成を説明する。図3は、リボン供給機20及び押さえ機構30を示す模式的平面図である。図3では、説明の便宜上、基板Wの左側の押さえ機構30が省略されているが、実際は基板Wの左側にも押さえ機構30が設けられている。つまり、リボン供給機20及び押さえ機構30は、基板Wの両側に対称に合計2つずつ設けられている。図3の紙面の上下が平行方向D2となる。リボン供給機20及び押さえ機構30は、共に基板Wよりも上方の位置(図3において紙面の手前側)に設けられている。
リボン供給装置20は、リボン電線Rの先端を摘んで引き出す把持部材21と、リボン電線Rが巻かれたボビンBが設置される設置軸24と、リボン電線Rが引き出される際にリボン電線Rの高さを保持する保持ローラ22と、リボン電線Rに張力を与えるテンションローラ23と、ボビンB側のリボン電線Rの先端が落下しないように把持する落下防止部材26とを有している。リボン電線Rは、帯状の導電体で、本実施の形態では、幅が2mm、厚さが0.16mmの帯状の銅線であり、ボビンBに巻かれているものが設置軸24に取り付けられる。把持部材21は、制御装置95に制御される駆動装置(不図示)により、リボン電線Rをその下側から吸引することができると共に、搬送方向Dに平行な平行方向D2に往復移動可能に構成されている。リボン供給装置20は、把持部材21によって引き出されたリボン電線Rを所定の長さ(本実施の形態では平行方向D2に伸びる基板Wの一辺の長さ)で切断するカッター(不図示)を有している。落下防止部材26は、引き出されたリボン電線Rが切断されたときに、ボビンB側のリボン電線Rの先端が落下しないようにリボン電線Rの上下面から把持するように構成されている。リボン供給装置20は、平面視において、搬送されてきた基板Wよりも外側に配設されている。なお、把持部材21は、リボン電線Rを下側から吸引する構成のほか、リボン電線Rを上下面から把持するように構成されていてもよい。
押さえ機構30は、引き出されたリボン電線Rを吸引保持して基板Wに押さえつける押さえ部材31と、押さえ部材31から鉛直上方に伸びて押さえ部材を支持する支柱32と、押さえ部材31よりも上方で支柱32に取り付けられた平行方向D2に伸びる平行フレーム33と、平行フレーム33の両端で平行フレーム33を支える直交方向D1に伸びる直交フレーム34とを有している。押さえ部材31は、基板Wの平行方向D2に伸びる辺の長さ以上の長さを有する細長い部材であり、その下面はリボン電線Rの幅以下の幅を有する平らな面に形成されている。押さえ部材31は、下面に吸引用の小孔が複数形成されており、制御装置95に制御される吸引装置(不図示)によりリボン電線Rをその上側から吸引することができるように構成されている。また、平行フレーム33は、制御装置95に制御される駆動装置(不図示)により、直交フレーム34の長手方向に沿って、少なくともリボン供給装置20により引き出されたリボン電線Rが存在する位置と搬送されてきた基板Wに塗布されている接着剤ADが存在する位置との間を往復移動することができるように構成されている。
図1に戻って配線機1の構成の説明を続ける。UV照射器40は、紫外線を照射する照射部41と、照射部41を平行方向D2に往復移動可能に保持するレール44とを有している。UV照射器40は、基板Wに取り付けられるリボン電線Rの本数と同じ数(本実施の形態では2つ)が設けられている。照射部41は、例えば集光レンズであり、光ファイバ42を介して光源43から導入された光を集光する。レール44は、平行方向D2に伸びるように、搬送されてきた基板Wの下方に位置するように、それぞれ設置されている。照射部41は、搬送されてきた基板Wの接着剤ADが塗布されている位置の下方に配設され、上方に向けて(すなわち基板Wのガラス基板g(図2参照)に向けて)照射するようにレール44に取り付けられている。照射部41は、制御装置95に制御される駆動装置(不図示)により、レール44に沿って往復移動することができるように構成されている。なお、照射部41は、発光ダイオードであってもよい。この場合には、光ファイバ42及び発光ダイオードとは別の光源43が不要となる。
加熱炉50は、複数枚の基板Wを収容し、電気又はガスを熱源として炉内に設置された発熱器(不図示)を発熱させ、炉内に収容された基板Wに塗布された接着剤ADを加熱することができるように構成されている。本実施の形態では、加熱炉50は、制御装置95によって熱源の導入量が調節されることにより、常温よりも高く200℃以下に炉内を加熱することができるように構成されている。加熱炉50に収容された複数枚の基板Wは、隣り合う基板Wの対向する面間の距離N(基板Wの表面Wfとその直下の基板Wの裏面Wrとの距離)が所定の小間隔となるようにラック(不図示)に保持されている。所定の小間隔は、各基板Wに塗布された接着剤ADを、接着剤ADが第2の接着強度で硬化する温度に加熱することができる最小の間隔(この間隔は典型的には押さえ機構30を配置することができる間隔よりも狭い)とすると、加熱炉50をコンパクトにすることができて好適である。ラック(不図示)は、基板Wを上下に移動させることができるように構成されている。
制御装置95は、接着剤塗布装置10と信号ケーブルで接続されており、ノズル11を平行方向D2及び上下に往復移動させることができるように構成されている。また、制御装置95は、リボン供給機20と信号ケーブルで接続されており、リボン電線Rを供給するタイミングを調節することができるように構成されている。また、制御装置95は、押さえ機構30と信号ケーブルで接続されており、リボン電線Rの保持及び基板Wへ押しつけるタイミングを調節することができるように構成されている。また、制御装置95は、UV照射器40と信号ケーブルで接続されており、紫外線を照射する位置及びタイミングを調節することができるように構成されている。また、制御装置95は、加熱炉50と信号ケーブルで接続されており、基板Wの収容及び炉内温度を調節することができるように構成されている。また、制御装置95は、コンベア91と信号ケーブルで接続されており、基板Wの搬送及び停止を制御することができるように構成されている。
次に図4のフローチャートを参照して配線機1の作用を説明する。なお、以下の説明において言及する配線機1の構成部材の符号については、適宜図1〜図3を参照する。半導体膜sや電極e1、e2が形成された基板Wが、両端の被接着部分eADが平行方向D2に伸びる向きで裏面Wrを上方に向けて、コンベア91に載置されることにより、基板Wが配線機1に搬入される(S11)。基板Wがコンベア91に載置されると、制御装置95はコンベア91を起動して基板Wを接着剤塗布装置10の位置まで搬送して停止する。
次に制御装置95は、両ノズル11を搬送方向Dの下流から上流に向けて移動させて基板Wに接着剤ADを塗布する(S12)。ノズル11は、搬送方向Dの下流から上流に向けて所定の距離だけ移動すると吐出口が基板Wに近接するが触れない高さまで下降して一旦停止し、接着剤ADを吐出口から吐出する。吐出された接着剤ADは基板Wの両端の被接着部分eADに点状に塗布される。接着剤ADを互いに所定の距離だけ離して点状に塗布したら、ノズル11は再び上昇して搬送方向Dの下流から上流に向けて所定の距離だけ移動した後に下降して一旦停止し、接着剤ADを吐出口から吐出する。以降、基板Wの端部までこの要領で接着剤ADを塗布していく。このように接着剤ADを基板Wに対して点状に塗布することで、後にリボン電線Rを接合して加熱炉50で加熱した際に、リボン電線Rが熱膨張した場合であってもリボン電線Rに生じる応力を緩和することができ、リボン電線Rが基板Wから剥離することを抑制することができる。ここでの「所定の距離」は、太陽電池モジュール(不図示)中において実用可能な程度の強度で基板Wに対してリボン電線Rを接合することと、リボン電線Rの弾性変形の範囲内で加熱炉50における熱膨張による伸びを吸収することとを両立できる、基板Wに対してリボン電線Rを固定する位置の距離である。
基板Wに接着剤ADが塗布されると、制御装置95はコンベア91を起動して基板Wをリボン供給機20に搬送してコンベア91を一旦停止する。次いで制御装置95は、基板Wの両脇の把持部材21で搬送方向Dの下流側にあるリボン電線Rの先端を吸引把持し、把持部材21を搬送方向Dの下流から上流に向けて移動させてリボン電線Rを基板Wの上流側端部まで引き出す(S13)。その後、押さえ機構30の押さえ部材31を引き出されたリボン電線Rの上方から接触させる。リボン電線Rに接触した押さえ部材31は、リボン電線Rを吸引保持し、ここで把持部材21の吸引を解除する。そしてリボン供給機20は、カッター(不図示)でリボン電線Rを平行方向D2に伸びる辺の長さで切断する。リボン電線Rを切断しとき、ボビンBに巻かれた方のリボン電線Rは、落下防止部材26によって先端が把持されている。
基板Wの外側に位置している両方の押さえ部材31は、リボン電線Rを吸引保持したまま基板Wの接着剤ADが塗布されているラインの上方まで水平移動した後に下降してリボン電線Rを接着剤ADを介して基板Wの裏面Wrに重ねる(S14)。リボン電線Rを基板Wに重ねたら、押さえ部材31は基板Wとリボン電線Rとの位置が変わらないようにリボン電線Rを基板Wに押さえつける(S15)。リボン電線Rを基板Wに押さえつけると、基板W上で球状だった接着剤ADが水平方向に広がる。なお、図2(a)では、説明の便宜上、電極部分(透明電極e1、半導体膜s、裏面電極e2を積層した部分)及び接着剤ADがリボン電線Rよりも厚く示されているが、実際の電極部分はリボン電線Rよりも薄く、したがって塗布された接着剤ADも薄いため、リボン電線Rを基板Wに押さえつけても接着剤ADが半導体膜s及び裏面電極e2並びに隣に塗布された接着剤ADに接触するほどは広がらない。そして、押さえ部材31によりリボン電線Rを基板Wに押さえつけた状態で、UV照射器40の照射部41を、紫外線を発光させたまま、平行方向D2に基板Wの一端から他端まで移動させることにより、紫外線を接着剤ADに照射する(S16)。これにより、接着剤ADは第1の接着強度で硬化する。一般に、紫外線等の光を照射して第1の接着強度で硬化する接着剤は、加熱によって硬化する接着剤よりも硬化するまでの時間が短い。したがって、本実施の形態によれば、基板Wとリボン電線Rとを仮止めするのに要するプロセスタイムを加熱によって硬化する場合に比べて短縮することができる。また、本実施の形態では、基板Wの被接着部分eADに半導体膜s及び裏面電極e2が形成されておらず、表面Wfから入射した紫外線がガラス基板g及び透明電極e1を透過するように構成されているため、基板Wの表面Wf(図1に示されている基板Wの下側の面)側から、つまりガラス基板g側から紫外線を照射しても接着剤ADに対して紫外線を照射することができる。基板Wの表面Wf側から紫外線を照射することにより、広がった接着剤AD全体に対してほぼ均一に紫外線を照射することができ、平面視において接着剤ADが第1の接着強度で硬化する面積を最大化することができる。また、紫外線(光)を透過させることが困難な押さえ部材31及びリボン電線Rを回避して接着剤ADを硬化させることができる。
基板Wとリボン電線Rとを仮止めしたら、押さえ部材31によるリボン電線Rの吸引保持を解除し、押さえ部材31をホームポジション(引き出されるリボン電線Rの上方の基板Wの両側)に戻す。そして制御装置95は、コンベア91を起動してリボン電線Rが仮止めされた基板Wを加熱炉50に搬送し、基板Wを加熱炉50内に投入する(S17)。これまで説明した基板Wにリボン電線Rを仮止めするまでの工程は順次行われ、リボン電線Rが仮止めされた基板Wは順次加熱炉50内に投入される。収容可能な枚数の基板Wが加熱炉50内に投入されたら、加熱炉50の基板投入口(不図示)を閉じ、加熱炉50内を所定の温度に加熱する(S18)。ここでの所定の温度は、基板Wに塗布された接着剤ADを第2の接着強度で硬化させることができる温度であり、接着剤ADの硬化速度を上げる観点から下限を100℃程度、さらには120℃程度とすることが好ましく、基板Wの損傷を回避する観点から上限を200℃程度、さらには180℃程度とすることが好ましいところ、本実施の形態では150℃としている。加熱炉50における加熱は、約30分程度行われる。接着剤ADを加熱炉50で加熱することにより、光のような電磁波では得ることが困難な第2の接着強度で接着剤ADを本硬化させることができる。加熱炉50における加熱は相当のプロセスタイムを要するが、本実施の形態の加熱炉50は基板Wの1枚あたりが占有する容積が比較的小さいため多数の基板Wを収容することができ、1度に処理できる基板Wの枚数を増加することで生産性を向上させることができる。
これまでの配線機1の作用の説明において、図3には、構成の説明の便宜上、基板Wの両側のリボン電線Rの状態が左右で異なるように示されているが、リボン電線Rの引き出し、押さえ部材31によるリボン電線Rの吸引保持及び基板Wへのリボン電線Rの押さえつけは、基板Wの左右において同じタイミングで行われる。
以上の第1の実施の形態の説明では、接着剤ADが、ラジカル重合型UV硬化型アクリル樹脂と、熱硬化型エポキシ樹脂と、導電性物質とを含んで構成されているとした。しかしながら、上述した以外の、所定の波長の電磁波を照射すると第1の接着強度で硬化し、所定の温度に加熱すると第2の接着強度で硬化し、導電性を有する、既存のあるいは将来開発される物質(混合物あるいは単一物)で構成されていてもよい。この場合、照射装置として、配線機1におけるUV照射器40に代えて、接着剤ADを第1の接着強度で硬化させることができる所定の波長の電磁波を照射可能な照射装置が設けられる。所定の波長の電磁波は、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線といった区別で規定することができるほか、特定の波長(ナノメートル)の範囲を持って規定することもできる。
以上の第1の実施の形態の説明では、リボン電線Rが押しつけられた基板Wに対して表面Wf側から紫外線を照射することとしたが、基板Wの側面から内側に向けて水平方向に紫外線を照射するようにUV照射器40を構成してもよい。このようにすると、裏面電極e2が紫外線を透過することができない場合であっても、リボン電線Rを基板Wに仮止めすることができる。しかしながら、上述したような、表面Wf側から紫外線を照射して紫外線を透過させることができる基板Wとすると、広がった接着剤AD全体に対してほぼ均一に紫外線を照射することができ、接着剤ADを満遍なく第1の接着強度で硬化させることができ好適である。
以上の第1の実施の形態の説明では、UV照射器40の照射部41を、紫外線を発光させたまま、平行方向D2に基板Wの一端から他端まで移動させることとしたが、照射部41が接着剤ADに紫外線を照射できる位置に来たときだけ発光させてその他のときは発光させないようにしてもよい。また、照射部41は、基板W上に点状に塗布されて押さえられて広がる各接着剤ADが第1の接着強度で硬化するように、連続的あるいは各接着剤ADの下方で一時的に止まるように間欠的に移動するように構成されているとよい。あるいは、基板Wに塗布された各接着剤ADの複数又は全部に対して一度に(同時に)紫外線を照射できるようにUV照射器40を構成して、処理時間を短縮するようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。以下には、本発明の第1の実施の形態との相違点を主に説明する。第2の実施の形態では、まず、用いられる接着剤(以下、説明において第1の実施の形態で用いられる接着剤ADとの区別を容易にするために、第2の実施の形態で用いられる接着剤を符号「AD2」と表示する)の成分が異なっている。接着剤AD2は、第1の温度に加熱することで熱硬化反応を開始して基板Wとリボン電線Rとを仮止めすることができる程度に硬化し、第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するとさらに熱硬化反応が促進され本硬化させることができる熱硬化型エポキシ樹脂であり、基板Wとリボン電線Rとの導電性を確保する導電性物質が含まれている。「仮止め」及び「本硬化」の意味は第1の実施の形態と同じであり、それぞれ本発明の「第1の接着強度」及び「第2の接着強度」に相当する。第1の温度(接着剤AD2を第1の接着強度で硬化させることができる温度)は約50℃〜90℃であり、第2の温度(接着剤AD2を第2の接着強度で硬化させることができる温度)は約100℃〜200℃、好ましくは約120℃〜180℃、典型的には約150℃である。
第2の実施の形態の配線機(以下図示はしていないが、説明において第1の実施の形態の配線機1との区別を容易にするために、第2の実施の形態の配線機を符号「2」で表示する)は、第1の実施の形態における配線機1が備えるUV照射器40に代えて、加熱装置としての仮止め加熱器60(図5参照)を備えている。これ以外の、接着剤塗布装置10、リボン供給機20及び押さえ機構30、加熱炉50、制御装置95、並びにコンベア91の構成及び配置は、第1の実施の形態における配線機1と同様である。
図5(a)に仮止め加熱器60の一例としてのハロゲン加熱器60Aの概略構成を示す。ハロゲン加熱器60Aは、ハロゲンランプ61と、ハロゲンランプ61を平行方向D2に往復移動可能に保持するレール62とを有している。ハロゲン加熱器60Aは、基板Wに取り付けられるリボン電線Rの本数と同じ数(本実施の形態では2つ)が設けられている。両レール62は、平行方向D2に伸びるように、平面視において基板Wの外側に位置するように、鉛直方向において基板Wとリボン供給機20(図1参照)との間に、それぞれ配設されている。ハロゲンランプ61は、近赤外線領域の900nm〜1600nm付近にピークをもつ電磁波を基板Wに塗布された接着剤AD2に照射できる向きでレール62に取り付けられている。ハロゲンランプ61は、制御装置95に制御される駆動装置(不図示)により、レール62に沿って往復移動することができるように構成されている。ハロゲン加熱器60Aは、基板Wに塗布された接着剤AD2に電磁波(ハロゲンランプ61から放射される光)を照射するものであるが、接着剤AD2が第1の接着強度で硬化するのに寄与する要素は、ハロゲンランプ61から放射される光に起因する熱である。
図5(b)に示す熱風加熱器60Bを、仮止め加熱器60として用いることもできる。熱風加熱器60Bは、ハロゲン加熱器60A(図5(a)参照)におけるハロゲンランプ61を熱風供給ノズル64に置き換えた以外はハロゲン加熱器60Aと同様の構成を有している。熱風供給ノズル64は、接着剤AD2を第1の温度に加熱することができる温度の風を基板Wに塗布された接着剤AD2に供給することができる向きでレール62に取り付けられている。熱風供給ノズル64は、制御装置95に制御される駆動装置(不図示)により、レール62に沿って往復移動することができるように構成されている。また、仮止め加熱器60を図5(c)に示す押さえ加熱器31Hとして構成してもよい。押さえ加熱器31Hは、押さえ部材31(図3参照)に加熱機能を付加したものである。押さえ加熱器31Hは、電源(不図示)に接続され、電気の供給を受けて第1の温度に発熱できるように構成されている。押さえ加熱器31Hは、制御装置95により発熱量(出力)が制御されるように構成されている。押さえ加熱器31Hは、押さえ部材としての側面からは、第1の実施の形態の押さえ部材31(図3参照)と同様の機能及び作用を奏するものである。
次に図6のフローチャートをも併せて参照して配線機2の作用を説明する。半導体膜sや電極e1、e2が形成された基板Wを搬入し(S21)、基板Wに接着剤AD2を塗布し(S22)、リボン電線Rを基板Wの上流側端部まで引き出し(S23)、リボン電線Rを接着剤AD2を介して基板Wに重ね(S24)、リボン電線Rを基板Wに押さえつける(S25)までの要領は、図4に示す第1の実施の形態における配線機1の作用における基板搬入工程(S11)から、接着剤塗布工程(S12)、リボン電線Rを引き出す工程(S13)、重ね工程(S14)を経て、リボン電線Rを基板Wに押さえつける工程(S15)までの要領と同様である。リボン電線Rを基板Wに押さえつけたら(S25)、押さえつけた状態で、基板Wに塗布された接着剤AD2を仮止め加熱器60により第1の温度で加熱する(S26)。これにより、接着剤AD2は第1の接着強度で硬化し、リボン電線Rを基板Wに仮止めすることができる。仮止めは、本硬化よりも短い時間で完了するため、1度の加熱で本硬化まで完了させる場合に比べて短時間で押さえ部材31(31H)をリボン電線Rから開放することが可能になる。
その後第1の実施の形態における配線機1の作用における基板Wを加熱炉50内に投入する工程(S17:図4参照)及び加熱炉50内を所定の温度に加熱する工程(S18:図4参照)と同様の要領で、基板Wを加熱炉50内に投入し(S27)、加熱炉50内を第2の温度(第1の実施の形態における「所定の温度」に相当)に加熱する(S28)。接着剤AD2を加熱炉50で加熱することにより、第2の接着強度で接着剤AD2を本硬化させることができる。
なお、第2の実施の形態では、基板Wに塗布された接着剤AD2を第1の温度に加熱する工程(S26)において、仮止め加熱器60としてハロゲン加熱器60A(図5(a)参照)又は熱風加熱器60B(図5(b)参照)を用いる場合は、ハロゲンランプ61又は熱風供給ノズル64を、ハロゲンランプ61から光を放射したまま又は熱風供給ノズル64から熱風を供給したまま、平行方向D2に基板Wの一端から他端まで移動させることにより接着剤AD2を第1の温度に加熱するとよい。あるいは、基板Wに塗布された各接着剤AD2の複数又は全部に対して同時に、ハロゲンランプ61からの光の放射又は熱風供給ノズル64からの熱風の供給をできるように、ハロゲン加熱器60A又は熱風加熱器60Bを構成して、処理時間を短縮するようにしてもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。以下には、本発明の第1の実施の形態との相違点を主に説明する。第3の実施の形態では、まず、用いられる接着剤(以下、説明において第1及び第2の実施の形態で用いられる接着剤AD、AD2との区別を容易にするために、第3の実施の形態で用いられる接着剤を符号「AD3」と表示する)の成分が異なっている。接着剤AD3は、紫外線を照射すると所定の時間経過後に基板Wとリボン電線Rとを仮止めすることができる程度に硬化する遅効性カチオン重合型接着剤と、所定の温度に加熱することにより本硬化させることができる熱硬化型エポキシ樹脂と、基板Wとリボン電線Rとの導電性を確保する導電性物質とを含んで構成されている。「仮止め」及び「本硬化」の意味は第1の実施の形態と同じであり、それぞれ本発明の「第1の接着強度」及び「第2の接着強度」に相当する。また、熱硬化型エポキシ樹脂は、典型的には、第1の実施の形態における接着剤ADに含まれているものと同じものである。
第3の実施の形態の配線機(以下図示はしていないが、説明において第1及び第2の実施の形態の配線機1、2との区別を容易にするために、第3の実施の形態の配線機を符号「3」で表示する)は、第1の実施の形態における配線機1が備えるUV照射器40の配置が、コンベア91に搬送されてくる基板Wの下方かつ平面的に2つのリボン供給機20の間ではなく、鉛直方向においてコンベア91に搬送される基板Wの上方、平面視において接着剤塗布装置10とリボン供給機20との間に配設されている。したがって、配線機3における接着剤塗布装置10とリボン供給機20との間には、UV照射器70を設置可能なスペースが設けられている。以下、配線機3が備えるUV照射器の符号を「40」に代えて「70」とする。これ以外の、接着剤塗布装置10、リボン供給機20及び押さえ機構30、加熱炉50、制御装置95、並びにコンベア91の構成及び配置は、第1の実施の形態における配線機1と同様である。
図7にUV照射器70の概略構成を示す。UV照射器70は、紫外線を照射する照射部71と、照射部71を平行方向D2に往復移動可能に保持するレール74とを有している。UV照射器70は、基板Wに取り付けられるリボン電線Rの本数と同じ数(本実施の形態では2つ)が設けられている。照射部71は、光ファイバ(不図示)を介して紫外線を発光する光源(不図示)と接続されている。照射部71は例えば集光レンズであり、光源(不図示)で発光された紫外線は、光ファイバ(不図示)を介して照射部71に導入され、照射部71で集光されて照射される。レール74は、平行方向D2に伸びるように、搬送されてきた基板Wの上方に位置するように、それぞれ設置されている。照射部71は、搬送されてきた基板Wの接着剤AD3が塗布されている位置の上方に配設され、下方に向けて(すなわち基板W上の接着剤AD3に向けて)照射するようにレール74に取り付けられている。照射部71は、制御装置95に制御される駆動装置(不図示)により、レール74に沿って往復移動することができるように構成されている。なお、照射部71は、発光ダイオードであってもよい。この場合には、光ファイバ及び発光ダイオードとは別の光源が不要となる。
次に図8のフローチャートをも併せて参照して配線機3の作用を説明する。半導体膜sや電極e1、e2が形成された基板Wを搬入し(S31)、基板Wに接着剤AD3を塗布する(S32)までの要領は、図4に示す第1の実施の形態における配線機1の作用における基板搬入工程(S11)及び接着剤塗布工程(S12)の要領と同様である。基板Wに接着剤AD3を塗布したら(S32)、制御装置95はコンベア91を起動して基板WをUV照射器70の下方に搬送して停止する。次いで制御装置95は、UV照射器70の照射部71を、紫外線を発光させたまま、平行方向D2に基板Wの一端から他端まで移動させることにより、紫外線を接着剤AD3に照射する(S33)。接着剤AD3は、紫外線を照射されても直ちに硬化が開始される訳ではない。
制御装置95は、紫外線を接着剤AD3に照射したら(S33)、コンベア91を起動して基板Wをリボン供給機20の間に搬送して停止する。その後制御装置95は、リボン電線Rを基板Wの搬送方向Dの上流側端部まで引き出し(S34)、リボン電線Rを接着剤AD3を介して基板Wの裏面Wrに重ね(S35)、リボン電線Rを基板Wに押さえつける(S36)。これらの引き出し工程(S34)、重ね工程(S35)、押さえ工程(S36)は、図4に示す第1の実施の形態における配線機1の作用における引き出し工程(S13)、重ね工程(S14)、押さえ工程(S15)とそれぞれ同様の要領で行われる。ただし、押さえ工程(S36)は、接着剤AD3が第1の接着強度で硬化するまで継続する。接着剤AD3は、紫外線を照射された後の所定の時間経過後に第1の接着強度で硬化する性質を有するためである。ここで「所定の時間」は接着剤AD3に含有されている遅効性カチオン重合型接着剤に依存する固有値であり、あらかじめ把握することができるから、押さえ工程(S36)における押さえ部材31がリボン電線Rを押さえつけている時間は、制御装置95を介して接着剤AD3に紫外線を照射した時点からの時間を計測することにより管理することができる。
押さえ工程(S36)において接着剤AD3が第1の接着強度で硬化したら(リボン電線Rを基板Wに仮止めしたら)、押さえ部材31をリボン電線Rから開放して押さえ工程(S36)を終了する。その後第1の実施の形態における配線機1の作用における基板Wを加熱炉50内に投入する工程(S17:図4参照)及び加熱炉50内を所定の温度に加熱する工程(S18:図4参照)と同様の要領で、基板Wを加熱炉50内に投入し(S37)、加熱炉50内を所定の温度に加熱する(S38)。接着剤AD3を加熱炉50で加熱することにより、第2の接着強度で接着剤AD3を本硬化させることができる。
以上の第3の実施の形態の説明では、接着剤AD3が、遅効性カチオン重合型接着剤と、熱硬化型エポキシ樹脂と、導電性物質とを含んで構成されているとした。しかしながら、上述した以外の、所定の波長の電磁波を照射すると所定の時間経過後に第1の接着強度で硬化し、所定の温度に加熱すると第2の接着強度で硬化し、導電性を有する、既存のあるいは将来開発される物質(混合物あるいは単一物)で構成されていてもよい。この場合照射装置として、配線機3におけるUV照射器70に代えて、接着剤AD3を第1の接着強度で硬化させることができる所定の波長の電磁波を照射可能な照射装置が設けられる。
以上の第3の実施の形態の説明では、UV照射器70の照射部71を、紫外線を発光させたまま、搬送方向Dに基板Wの一端から他端まで移動させることとしたが、照射部71が接着剤AD3に紫外線を照射できる位置に来たときだけ発光させてその他のときは発光させないようにしてもよい。また、基板Wに塗布された各接着剤AD3の複数又は全部に対して一度に(同時に)紫外線を照射できるようにUV照射器70を構成して、処理時間を短縮するようにしてもよい。
以上の説明では、基板Wが太陽電池セルであるとしたが、半導体の薄板でできた集積回路の基板等の、太陽電池セル以外の半導体基板であってもよい。
以上の説明では、電線がリボン電線Rであるとしたが、接着剤を介して半導体基板に接合できるものであれば、断面が円形や楕円形の電線であってもよい。
以上の説明では、1枚の基板Wに対して2本のリボン電線Rを接合することとしたが、3本以上のリボン電線Rを1枚の基板Wに対して接合して抵抗を低減させるようにしてもよい。この場合、以上の説明で2本のノズル11を有していることとした接着剤塗布装置10について、基板Wに接合するリボン電線Rの本数に応じた本数のノズル11を設けることとしてもよい。