JP5137890B2 - 光学フィルム、及びその製造方法、ならびにそれを有する偏光板、及び画像表示装置 - Google Patents
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Description
また、本発明は、白表示時の正面輝度が高く且つ画面内において均一であり、しかも薄型化に対応可能な、画像表示装置を提供することを課題とする。
[2] 2つの前記くぼみ間の平均間隔が0.5〜100μmであることを特徴とする[1]に記載の光学フィルム。
[3] フィルム表面における前記くぼみの個数分布の標準偏差が平均個数に対して±20%であることを特徴とする[1]または[2]に記載の光学フィルム。
[4] 前記くぼみの深さの標準偏差が平均深さに対して±20%であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[5] フィルムの表面における前記くぼみが、下に凸で、フィルム表面と概ね平行な底部と、前記底部とくぼみ開口部とを連結する側部を有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[6] ガラス転移温度前後における前記くぼみの寸法変化率が5%以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[7] ヘイズが15%以上であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[8] 全光透過率が50%以上であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[9] 前記ポリマー組成物が、セルロースアシレート系ポリマーを主成分として含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[10] 誘電率が35以上の溶媒を含む少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含む溶媒中に、ポリマー組成物を溶解してポリマー溶液を調製する工程、及びポリマー溶液を製膜することを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
[11] 前記溶媒が、誘電率が35以上の溶媒を0.3〜30質量%含む溶媒であることを特徴とする[10]に記載の光学フィルムの製造方法。
[12] 前記ポリマーがセルロースアシレートであることを特徴とする[10]または[11]に記載の光学フィルムの製造方法。
[13] 前記溶媒が、誘電率が4〜10の溶媒および誘電率が10〜35の溶媒を含むことを特徴とする[10]〜[12]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[14] 前記誘電率が35以上の溶媒が、水であることを特徴とする[10]〜[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15] 誘電率が35以上の溶媒を含む少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含む溶媒中に、ポリマー組成物を溶解してポリマー溶液を調製する工程、及びポリマー溶液を製膜することを含む光学フィルムの製造方法において、ポリマー溶液を支持体上に流延して製膜し、その後、支持体から膜を剥離する工程を含み、更に製膜時、製膜後またはその両方のときに溶媒を蒸発させる工程を含む[10]〜[14]のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
[16] [10]〜[15]のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学フィルム。
[17] 偏光膜と、少なくとも1枚の[1]〜[9]および[16]のいずれか一項に記載の光学フィルムとを有することを特徴とする偏光板。
[18] [1]〜[9]および[16]のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは[17]に記載の偏光板を少なくとも1枚有することを特徴とする画像表示装置。
[19] 液晶セルとバックライトを有し、前記偏光板が液晶セルとバックライトの間に、[1]〜[9]および[16]のいずれか一項に記載の光学フィルムをバックライト側にして配置されていることを特徴とする[18]に記載の画像表示装置。
また、本発明の製造方法によれば、本発明の光学フィルムを簡易に製造することができる。
本発明の光学フィルムは、均一な組成物からなる光学フィルムであり、そのフィルム表面にくぼみを有し、該くぼみの深さの平均が5μm以下であり、該くぼみの平均長径長が0.5〜100μmであり、フィルム表面における該くぼみの個数が25〜1000000個/mm2であることを特徴とする。
本発明の光学フィルムは上記所定の表面形状に基づく光拡散性を示す。従って、本発明の光学フィルムを有する偏光板を画像表示装置に利用することにより、モアレ等の干渉縞を発生させることなく、光拡散フィルムを省略することができる。
本発明の光学フィルムの有するくぼみについて説明する。本明細書中、くぼみとは、平均長径長が0.5〜100μmであるものを言う。
本発明の光学フィルムのくぼみの平均長径長は0.5〜100μmであり、1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。なお、本明細書中、くぼみの長径とは、フィルム表面に形成されているくぼみ開口部(くぼみの端部)を結ぶ径の内、最も長い径のことを言う。くぼみの直径は画像処理ソフト(例えば、Image Pro Plus)を使用して、フィルムの面方向の各くぼみを認識し、それぞれの最も長い部分を測定することによって測定を行った。くぼみの平均長径長は、フィルム表面1mm2を1つ任意に選び、そこに存在するくぼみの長径の平均値のことをいう。
本発明の光学フィルムのくぼみの深さの平均は5μm以下であり、高拡散性能の観点では、1〜3μmであるのがより好ましい。くぼみの深さとは、特定の大きさのサンプルフィルム表面における、平均長径長が0.5〜100μmであるくぼみの深さを言い、また、くぼみの深さの平均(平均深さともいう)とは、特定の大きさのサンプルフィルム表面における、平均長径長が0.5〜100μmである全くぼみの深さの平均値のことを言う。
また、前記くぼみの2つのくぼみ間の平均間隔は拡散性能の調整の観点から1〜100μmであるのが好ましく、1〜50μmであるのがより好ましい。なお、本明細書中、2つのくぼみ間の平均間隔とは、すべてのくぼみについて、それに最も近いくぼみとの中心間の距離を測定し、その合計をくぼみの数で割った値のことを言う。
ここで平均個数とは、フィルム表面から1mm2の領域を100ヶ所任意に選び、それぞれに存在するくぼみの個数の平均値のことをいう。このように、均一に分布をすることで本願の光散乱性の効果を有している。
ここで平均深さとは、くぼみを100個任意に選び、それらの深さの平均値のことをいう。
また、前記くぼみの平均長径長と平均短径長の比(アスペクト比)は、0.8〜1.2であることが高全光透過率の観点から好ましく、0.85〜1.15であることがより好ましく、0.9〜1.1であることが特に好ましい。
前記くぼみの断面形状の好ましい形状について説明する。なお、ここでいう断面形状とは、フィルムを面に置いた時に厚み方向に垂直に切削した断面図における形状を表す。
前記くぼみの断面形状は最深部の深さが5μm以下であり、開口部の平均長径長が0.5〜100μmである以外に特に制限はないが、下に凸であることが好ましく、フィルム表面と概ね平行な底部と、前記底部とくぼみ開口部とを連結する側部から構成されることがより好ましい。このような形状の代表例として、カップ状のような形状が好ましい。前記カップ状とは、コーヒーカップやティーカップのように、くぼみの横幅のうち少なくとも25%がフィルム表面と概ね平行なくぼみ底部と、前記底部からくぼみ開口部に向かってゆるやかにカーブを描き、くぼみ端部の開口部ではフィルム表面に対して概ね垂直な面になっているくぼみ側部(両側部)とをもつ形状を言う。その意味でクレーター状やサイクロイド曲線状などもカップ状の形状に含まれる。
くぼみの断面形状として球状、方形状が考えられるが、球状では曲率が高いため、ヘイズを高くすることができるが、曲がる光も多いことから、前方への透過率がやや低くなり、結果全光透過率が低くなる。一方、方形状では、表面と平行な平面が多いため、全光透過率は高いが、光を曲げる面が少ないため、ヘイズがやや低くなる。
これらを考慮すると、前記くぼみの断面形状がカップ状であると、光を曲げる面(例えば、くぼみ側部)と、表面と平行な平面(例えば、くぼみ底部)とが共に存在するため、高ヘイズ、かつ、高全光透過率な光学フィルムの作成が可能となる。
前記くぼみの断面形状の確認方法に特に制限はないが、例えばSEMで確認することができる。
前記くぼみの底部は、任意の場所におけるフィルム断面において、くぼみの横幅を100%とすると、少なくとも25〜85%の幅に形成されていることが好ましく、35〜80%の幅に形成されていることがより好ましく、45〜75%の幅に形成されていることが特に好ましい。
本発明の光学フィルムのヘイズは、15%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのが特に好ましく、70%以上であるのがさらに好ましい。ヘイズが高いほど、光拡散性能は高くなるが、一方、全光透過率の低下により、画像表示装置に利用すると、正面白輝度の低下の一因になる。その観点では、本発明の光学フィルムのヘイズは、50〜95%であるのが好ましく、60〜90%であるのがより好ましい。
なお、ヘイズは、ヘイズメーター(NDH2000;日本電色工業(株)製)により測定することができる。ポリマー溶液の測定の際には、間隔が1mmに調整された一対のガラス板の間にドープを注入した上で測定を実施した。
本発明の光学フィルムは、均一な組成物からなる。すなわち、均一な組成物であればフィルム内部で発生する後方散乱を低減させることができるため、ヘイズの高さと全光透過率の高さとを両立することができ、また、均一な組成物であれば製造過程で発生するフィルム屑を回収して原料に混ぜて使っても品質が低下しないため、コストを低減させることが可能となる。ここで、均一な組成物とは、光の散乱を起こすサイズの、例えば粒子のような物質を実質的に含まないことを表し、実質的に含まないとは、光の散乱を起こすサイズの異物起因のヘイズが、全ヘイズ中の5%未満の寄与率であることを表す。
同様に、本発明の光学フィルムは、前記くぼみも均一な組成物で形成されているため、全光透過率を上昇させ、かつコストを低減することができる。
セルロースアシレートフィルムの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
セルロースアシレートは、セルロースと複数のカルボン酸とのエステルであってもよい。すなわち、セルロースアシレートは、複数のアシル基で置換されていてもよい。
本発明の光学フィルムである、本発明の製造方法により製造されるセルロースアシレートフィルムに求めるヘイズにより、適宜、SA+SBを調整することとなるが、好ましくは2.70<SA+SB≦3.00、より好ましくは2.80≦SA+SB≦3.00であり、さらに好ましくは2.85≦SA+SB≦2.98である。SA+SBを大きくすることによりヘイズを高くしやすい傾向がある。
また、SBを調整することによっても、本発明の製造方法により製造されるセルロースアシレートフィルムのヘイズを調整することができる。SBを大きくすることにより、ヘイズを高くしやすい傾向があると同時に、フィルムの弾性率や融点が下がる。フィルムのヘイズとその他の物性とのバランスを考慮すると、SBの範囲は、好ましくは0≦SB≦2.9、より好ましくは0.5≦SB≦2.5であり、さらに好ましくは1≦SB≦2.0である。なお、セルロースの水酸基がすべて置換されているとき、上記の置換度は3となる。
本発明の光学フィルムの製造方法の一例は、以下の通りである。以下の方法によれば、煩雑な操作や特別な装置等が不要であり、簡易に本発明の光学フィルムを製造することができる。
まず、ポリマー組成物の溶液を調製する。該溶液中のポリマーの濃度は、5〜40質量%であるのが好ましく、10〜25質量%であるのがより好ましく、10〜15質量%であることがさらに好ましい。濃度が好ましい範囲であると、製膜性向上の観点や、ロングランに伴ってフィルムに発生するスジ状故障低減の観点から好ましい。
本発明では、ポリマー溶液の調製の際に、溶媒として、誘電率が35以上の溶媒を含み、かつ、少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含む溶媒を用いることを特徴とし、これにより表面形状が適切に制御されたフィルムを製造することができる。通常は互いに相溶する溶剤でポリマー溶液を作成するため、表面にくぼみがないフィルムであることが多く、また、溶剤組成の調整により表面にくぼみを形成させたとしても、同時にフィルム内部に空隙のあるフィルムとなってしまう。そして、このようなフィルムでは、ヘイズ上昇に伴って全光透過率も低下してしまうため、ヘイズ値と全光透過率とを両立させることができない。本発明では誘電率が35以上の溶媒を含む少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含む溶媒中に、ポリマー組成物を溶解してポリマー溶液を調製する工程、及びポリマー溶液を製膜することで、本発明で規定する形状の微細なくぼみを表面に有するフィルムが得ることができる。なお、本発明のフィルムは、フィルムの内部空隙率が低いという特徴も有しており、具体的には、フィルムの内部空隙率が10%以下(体積比)であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
(I) τ0<τ1
ポリマー溶液のヘイズτ0は、0.2〜50%程度であることが好ましく、0.2〜30%であることがより好ましく、0.3〜10%であることがさらに好ましい。
前記エステルとしては、例えば、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテートなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
膨潤工程では、溶媒の温度を−10〜39℃程度の低温に維持する。膨潤工程時には、攪拌を実施し、ポリマー等の一部又は全部について、溶媒中への溶解を進行させるのが好ましい。膨潤工程は、一般的には、0.1〜6時間程度行うことが好ましい。
次に、溶解工程では、溶媒の温度を40〜240℃程度の温度まで加熱するとともに、0.2〜30MPa程度まで加圧するのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではなく、溶質及び溶媒の種類に応じて決定される。溶解工程は、0.1〜6時間程度行うことが好ましい。
ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、例えば、特開昭58−127737号公報、同61−106628号公報、特開平2−276830号公報、同4−259511号公報、同5−163301号公報、同9−95544号公報、同10−45950号公報、同10−95854号公報、同11−71463号公報、同11−302388号公報、同11−322946号公報、同11−322947号公報、同11−323017号公報、特開2000−53784号公報、同2000−273184号公報、同2000−273239号公報、米国特許第2336310号明細書、米国特許第2367603号明細書、米国特許第2492078号明細書、米国特許第2492977号明細書、米国特許第2492978号明細書、米国特許第2607704号明細書、米国特許第2739069号明細書、米国特許第2739070号明細書、英国特許第640731号明細書、英国特許第736892号明細書、特公昭45−4554号公報、特公昭49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、特開昭60−203430号公報、特開昭62−115035号公報に記載のものを採用できる。
前記ドープは、表面温度が10℃以下の、ドラム及びバンド等の支持体上に流延することが好ましい。
延伸は、ロール延伸機を利用して実施することができる。縦又は横一軸延伸処理を行っても、二軸延伸処理を行ってもよい。一般的には、長尺状のフィルムを長手方向に延伸する、縦一軸延伸処理が行われるであろう。
本発明の光学フィルムは、偏光膜(以下、偏光子とも言う)に貼合されて、画像表示装置等、種々の用途に用いられる。偏光膜と貼合する前に、前記偏光板保護フィルムの貼合面を、表面処理してもよい。表面処理によって、偏光膜との接着性が改善される。表面処理の例には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理(鹸化処理)及び紫外線照射処理等が含まれる。前記偏光板保護フィルムが、セルロースアシレートを主成分として含有する場合は、鹸化処理を施すことが特に好ましい。
前記偏光子の、本発明の光学フィルムを貼合する面と反対側の面にも、保護フィルムが貼合されているのが好ましい。該保護フィルムのポリマー材料の例は、本発明の光学フィルムの作製に用いられるポリマー材料の例と同様である。中でも、セルロースアシレートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましい。
まず、以下の実施例において測定した種々の特性の測定法及び評価法を以下に示す。
1.ガラス転移点(Tg)
DSC測定装置(DSC8230:(株)リガク製)を用い、DSCのアルミニウム製測定パン(Cat.No.8578:(株)リガク製)に、熱処理前のポリマーフィルムのサンプルを5〜6mg入れる。これを50mL/分の窒素気流中で、25℃から120℃まで、20℃/分の昇温速度で昇温して15分保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却する。その後、再度、30℃から250℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、その際に測定されるサンプルのサーモグラムと2本のベースラインの中線との交点の温度を、フィルムのガラス転移点とした。
DSC測定装置(DSC8230:(株)リガク製)を用い、DSCのアルミニウム製測定パン(Cat.No.8578:(株)リガク製)に、熱処理前のポリマーフィルムのサンプルを5〜6mg入れる。これを50mL/分の窒素気流中で、25℃から120℃まで20℃/分の昇温速度で昇温して15分保持した後、30℃まで−20℃/分で冷却する。さらに、再度、30℃から320℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、この際に現れた発熱ピークの開始温度をフィルムの結晶化温度とした。
セルロースアシレートのアシル置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
フィルムの幅方向5点(フィルムの中央部、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置)、及び中央部と端部の中間部2点)とを長手方向に100mごとにサンプリングし、5cm□の大きさのサンプルを取り出す。このサンプルを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて各サンプルのヘイズを測定し、その平均値をフィルムのヘイズとした。なお、ポリマー溶液の場合には、前述の方法に従って測定を実施した。
全光透過率及び平行透過率についても、同様にサンプリングし、各サンプルについてそれらを、前述の方法に従って測定し、その平均値をフィルムの全光透過率及び平行透過率とした。
フィルムの搬送方向の5点をフィルムの中心部を基準としてサンプリングし、5cm□の大きさのサンプルを取り出す。このサンプル中に含まれるくぼみのうち、1000点について、三次元非接触型表面形状計測システム((株)菱化システム製)を用いて、くぼみの深さ、深さの標準偏差、くぼみ開口部の平均長径長、くぼみ開口部の平均短径長、一定面積あたりのくぼみの個数、くぼみの個数の標準偏差、くぼみ間の平均間隔(くぼみとくぼみの中心間隔)を測定した。
セルロース(広葉樹パルプ)150g、酢酸75gを、反応容器である還流装置を付けた5Lセパラブルフラスコに取り、60℃に調節したオイルバスにて加熱しながら、2時間激しく攪拌した。このような前処理を行ったセルロースは膨潤、解砕されて、フラッフ状を呈した。反応容器を2℃の氷水浴に30分間置き冷却した。
別途、アシル化剤としてプロピオン酸無水物1545g、硫酸10.5gの混合物を作製し、−30℃に冷却した後に、上記の前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に一度に加えた。30分経過後、外設温度を徐々に上昇させ、アシル化剤の添加から2時間経過後に内温が25℃になるように調節した。反応容器を5℃の氷水浴にて冷却し、アシル化剤の添加から0.5時間後に内温が10℃、2時間後に内温が23℃になるように調節し、内温を23℃に保ってさらに3時間攪拌した。反応容器を5℃の氷水浴にて冷却し、5℃に冷却した25質量%含水酢酸120gを1時間かけて添加した。内温を40℃に上昇させ、1.5時間攪拌した。次いで反応容器に、50質量%含水酢酸に酢酸マグネシウム4水和物を硫酸の2倍モル溶解した溶液を添加し、30分間攪拌した。25質量%含水酢酸1L、33質量%含水酢酸500mL、50質量%含水酢酸1L、水1Lをこの順に加え、セルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートプロピオネートの沈殿は温水にて洗浄を行った。このときの洗浄条件を変化させることで、残硫酸根量を変化させたセルロースアセテートプロピオネートを得ることができる。硫酸根の含有量は、ASTM D−817−96により測定できる。洗浄後、20℃の0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌し、洗浄液のpHが7になるまで、さらに水で洗浄を行った後、70℃で真空乾燥させた。
1H−NMR及び、GPC測定によって、得られたセルロースアシレートのアセチル置換度、プロピオニル置換度、及び重合度を測定した。
下記実施例で使用したセルロースアシレートA及びBについては、上述の従来の方法を参照して製造した。
(光学フィルムの製造と評価)
下記表に示す通り、以下のセルロースアシレートAまたはBのいずれかを表中に記載の割合で添加し、下記の溶媒のいずれかに溶解し、ならびに添加剤A〜Eのいずれかを選択して添加し、セルロースアシレートのドープをそれぞれ調製した。調製法の詳細も、以下に示す。
なお、各セルロースアシレートは120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、表1記載の量[質量部]を使用した。
1)<セルロースアシレート>
・セルロースアシレートA(セルロースアセテート):
置換度が2.94のセルロースアセテートの粉体を用いた。セルロースアシレートAの粘度平均重合度は300、6位のアセチル基置換度は0.94であった。
・セルロースアシレートB(セルロースアセテート):
置換度が2.86のセルロースアセテートの粉体を用いた。セルロースアシレートBの粘度平均重合度は300、6位のアセチル置換度は0.89、アセトン抽出分は7質量%、質量平均分子量/数平均分子量比は2.3、含水率は0.2質量%、6質量%ジクロロメタン溶液中の粘度は305mPa・s、残存酢酸量は0.1質量%以下、Ca含有量は65ppm、Mg含有量は26ppm、鉄含有量は0.8ppm、硫酸イオン含有量は18ppm、イエローインデックスは1.9、遊離酢酸量は47ppmであった。粉体の平均粒子サイズは1.5mm、標準偏差は0.5mmであった。
溶媒として、ジクロロメタン(誘電率9)、メタノール(誘電率33)、1−ブタノール(誘電率17)、及び水(誘電率78)から一種又は二種以上を選択し、下記表に記載の量[質量部]だけ溶媒として用いた。これらの溶媒の含水率は0.2質量%以下であった。
下記の添加剤A〜Eの中から表1に記載されるものを選択し、表1記載のセルロースアシレート量に対して下記括弧内の添加量[質量%]を使用した。
・添加剤A:
添加剤なし
・添加剤B:
トリフェニルホスフェート(8.0質量%)
ビフェニルジフェニルホスフェート(4.0質量%)
・添加剤C:
エタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)との縮合物(数平均分子量1000)(12.0質量%)
・添加剤D:
二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm、モース硬度約7)(0.4質量%)
・添加剤E:
二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ200nm、モース硬度約7)(30.0質量%)
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、前記溶媒及び添加剤を投入して撹拌、分散させながら、セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2〔4.9×105N/m/sec2〕)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2〔9.8×104N/m/sec2〕)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
膨潤した溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、さらに2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。この際、高温にさらされるフィルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
次に36℃まで温度を下げ、セルロースアシレート溶液を得た。
得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過してポリマー溶液を得た。
セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは50m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥して、膜厚80μmのセルロースアシレートフィルムを得た。なお、実施例13〜16では、実施例12と同様の組成のセルロースアシレート溶液を用い、得られるフィルムの膜厚を変化させてセルロースアシレートフィルムを得た。
6−2)<フィルムの作製(2)>(実施例17)
実施例12のドープが空気界面側に、比較例4のドープがステンレス支持体側に来るように、フィードブロック法に準じて共流延した以外は、前記<フィルムの作製(1)>と同様に実施し、空気界面側40μm、支持体側40μmの、膜厚80μmのセルロースアシレートフィルムを得た。
6−3)<フィルムの作製(3)>(実施例18)
前記<フィルムの作製(2)>において、空気界面側のドープと支持体側のドープとを入れ替えた以外は、<フィルムの作製(2)>と同様に実施し、空気界面側40μm、支持体側40μmの、膜厚80μmのセルロースアシレートフィルムを得た。
得られたセルロースアシレートを、表1に示す延伸条件で、以下の記載の通り延伸した。なお、フィルムの延伸倍率は、フィルムの搬送方向と直交する方向に一定間隔の標線を入れ、その間隔を延伸工程前後で計測し、下記式から求めた。
フィルムの延伸倍率(%)=100×(延伸後の標線の間隔−延伸工程前の標線の間隔)/延伸工程前の標線の間隔
また、各例において、延伸後のフィルム幅の減少率は、10〜25%程度であった。
特開2001−172403号公報の実施例1、フィルム3と同様にセルロースアシレートフィルムを作製し、比較例3の光学フィルムとして用いた。なお、下記表1では比較例3の製造方法の詳細を「*1」と記載した。
得られた各セルロースアシレートフィルムの評価を行った。結果を下記表1に示す。なお、得られた各実施例において、フィルム面に垂直な方向から観察した際のくぼみ開口部の形状は、円形状に近く、その円相当径(投影面積円相当径)は、約5〜15μmの範囲であった。同様に、くぼみのフィルム面に垂直な方向から観察した際のくぼみ底部の形状は、円形状に近く、その円相当径(投影面積円相当径)は、約3〜10μmの範囲であった。また、各実施例における表1に記載した以外のフィルムの厚み方向断面の詳細は、くぼみ底部はくぼみ全体の横幅を100%とすると60〜70%の幅で形成されており、フィルム表面に対する前記くぼみ底部の面の傾きは±2.5°以内であり、くぼみ底部からくぼみ端部に向かって、徐々に曲率半径が小さくなる形状であった。また、得られたフィルムの内部空隙率は、いずれも3%(体積比)以下であった。くぼみの寸法変化率は、0.5%以下であった。
上記作製したフィルムの裏面をそれぞれアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各フィルムと、同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を用意し、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、各フィルムとTD80ULが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板をそれぞれ作製した。
上記作製した各偏光板を用いて、液晶表示装置をそれぞれ作製した。具体的には、液晶セルとして、VAモード液晶セルを用い、バックライト側の偏光板を剥がし、上記作製した偏光板を、拡散性保護フィルムの表面がバックライト側になるように粘着剤で貼合して、液晶表示装置を作製した。
輝度分布変化率(均一性)は、BM−5を画面横方向(CCFLと垂直方向)にスキャンし、横方向(CCFLと垂直方向)に対する輝度プロファイルを測定した。それらの値に各背景輝度で割った値、つまり変化率を求めた。変化率は人間の目の明るさに対する弁別閾(JND)と対応し、一般に10%を超えると明るさが変化していると認識し、それ以下では認識しないといわれているため、10%を超えないことを評価基準とした。
正面白輝度は、これまで販売されてきたVAモード液晶TVの正面白輝度が350〜600[cd/m2]であるため、350[cd/m2]を超えることを評価基準とした。
結果を下記表1に示す。
Claims (18)
- 均一な組成物からなる光学フィルムであり、そのフィルム表面に独立したくぼみを有し、該くぼみの深さが5μm以下であり、該くぼみの平均長径長が0.5〜100μmであり、フィルム表面における該くぼみの個数が25〜1000000個/mm 2 である光学フィルム。
- 2つの前記くぼみ間の平均間隔が0.5〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
- フィルム表面における前記くぼみの個数分布の標準偏差が平均個数に対して±20%であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
- 前記くぼみの深さの標準偏差が平均深さに対して±20%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- フィルムの表面における前記くぼみが、下に凸で、フィルム表面と概ね平行な底部と、前記底部とくぼみ開口部とを連結する側部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- ヘイズが15%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 全光透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 前記ポリマー組成物が、セルロースアシレート系ポリマーを主成分として含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 誘電率が35以上の溶媒を含む少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含む溶媒中に、ポリマー組成物を溶解してポリマー溶液を調製する工程、及びポリマー溶液を製膜することを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
- 前記溶媒が、誘電率が35以上の溶媒を0.3〜30質量%含む溶媒であることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記ポリマーがセルロースアシレートであることを特徴とする請求項9または10に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記溶媒が、誘電率が4〜10の溶媒および誘電率が10〜35の溶媒を含むことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
- 前記誘電率が35以上の溶媒が、水であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
- 誘電率が35以上の溶媒を含む少なくとも2種類以上の互いに相溶しない溶媒を含む溶媒中に、ポリマー組成物を溶解してポリマー溶液を調製する工程、及び
ポリマー溶液を製膜することを含む光学フィルムの製造方法において、
ポリマー溶液を支持体上に流延して製膜し、その後、支持体から膜を剥離する工程を含み、更に製膜時、製膜後またはその両方のときに溶媒を蒸発させる工程を含む請求項9〜13のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。 - 請求項9〜14のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学フィルム。
- 偏光膜と、少なくとも1枚の請求項1〜8および15のいずれか一項に記載の光学フィルムとを有することを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜8および15のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは請求項16に記載の偏光板を少なくとも1枚有することを特徴とする画像表示装置。
- 液晶セルとバックライトを有し、前記偏光板が液晶セルとバックライトの間に、請求項1〜8および15のいずれか一項に記載の光学フィルムをバックライト側にして配置されていることを特徴とする請求項17に記載の画像表示装置。
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