JP5137341B2 - 表面処理銅箔 - Google Patents

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Description

本発明は、プリント配線板、FPC、COF等に用いる表面処理銅箔に関し、特にエッチング性に優れ、かつ良好な剥離強度を有し、耐熱性、耐薬品性にも優れる表面処理銅箔に関するものである。
最近、各種の家電製品、電子製品群、コンピュータ等に組み込まれるプリント配線は微細化、複雑化してきたことに伴い、過酷な条件に耐えられるプリント配線板が要望されるようになり、かかるプリント配線板に用いられる銅箔に対しても、配線板作成後の銅箔部分と基板との接着強度が大きいこと、耐薬品性に優れていること、加熱時の耐熱性に優れていること等の特性向上が求められている。
銅張積層板を用いてプリント配線板を作製する場合には、酸洗工程やめっき前処理の各種活性化処理工程で銅箔と基板との接着境界層が塩酸を含む溶液にさらされ、また、レジスト塗布後、回路をパターンエッチングする際にはエッチング液にさらされる。このとき、耐酸性(耐塩酸性、耐硝酸性)やエッチング液に対する耐酸性に劣る銅箔では回路部分の銅箔とその下の基板との接合面に塩酸溶液やエッチング液が侵入し、その部分を侵食する、いわゆるアンダーカット現象が起こる。
また、プリント配線板の用途が拡大するに伴いプリント配線板が高温下で用いられる場合があり、プリント配線板が長時間加熱されると、プリント配線板において回路部分の銅が基板樹脂に対して触媒として作用し、該基板樹脂が銅箔との接合面で分解して銅箔一基板間の剥離強度が劣化する現象が起こる。
これらの問題点を解決すべく銅箔表面に、耐薬品性をもたせ、且つ耐熱劣化性を有する金属層を設ける提案がなされている。例えば、耐薬品性、耐熱劣化性を有する金属層の一例として、ニッケル層にクロムを含有させたものなどが提案されている。しかし、ニッケルにクロムを含有させた金属層は耐酸性、耐熱性の向上には優れるものの、回路を作成する時のエッチング性が悪化する課題が指摘されている。
そこで新たにニッケル−コバルトからなる金属層を設けることが提案されている(例えば特許文献1<特公平6−54829号公報>参照)。
特許文献1には、0.2mg/dm≦Co+Ni≦4.7mg/dm(0.1mg/dm≦Ni≦1.0mg/dm)のめっきを行うとの記載がなされている。しかしこの場合も、被覆量にして下限に近い値、すなわち(Co+Ni)が0.2mg/dm(Niが0.lmg/dm)という値付近では確かにエッチング性は阻害されずに良好であるが、更に耐熱性をも満足させるべく(Co+Ni)が0.5mg/dm以上の厚いめっきを析出させるとエッチング性が悪くなる傾向がある。
そこで上記エッチング性の悪さを改善すべくNi−Co中に燐を含有させる方法が提案されている(特許文献2<特開平10−135594>参照)。この提案では、エッチング性が向上し、エポキシ系の樹脂ではピール強度も向上する、と開示しているが、同条件にて作成した表面処理箔をCOFもしくはFPCに使用されているポリイミドフィルムへ貼り付けて密着性を測定すると目標とするピール強度がでないことが実証されている。
特公平6−54829号公報 特開平10−135594号公報
本発明は、プリント配線板、COF及びFPC用銅箔の被接合面に存在する上述した種々の問題点を解消したプリント配線板、COF及びFPC用表面処理銅箔を提供することを目的とする。
本発明の第一の観点の表面処理銅箔は、未処理銅箔の少なくとも一方の面上に燐含有ニッケル又は燐含有ニッケル合金からなる表面処理層が形成され、該表面処理層上に、モリブデン層又はモリブデン合金層が形成されていることを特徴とする表面処理銅箔である。
前記表面処理に含まれる燐量は、表面処理金属量をAmg/dm とし、含有する燐量をBmg/dm とした場合、
0.01≦B×100/(A+B)≦15
あることが好ましい。
前記モリブデン合金層を形成するモリブデン合金の層の組成が、Ni又はMo以外の金属付着量をCmg/dm とし、Moの付着量をDmg/dm とした場合、
1≦D×100/(C+D)≦70
あることが好ましい。
本発明の表面処理銅箔はポリイミドとの密着性が向上し、エッチング性、耐酸性、耐熱性に優れた、プリント配線板、COF及びFPC用の表面処理銅箔を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、表面処理を実施する前の銅箔(以下単に銅箔、又は未処理銅箔という)の表面に表面処理層を設けた表面処理銅箔である。未処理銅箔としては、通常のプリント配線板、COF及びFPC用銅箔として用いられている電解銅箔、圧延銅箔又は銅合金箔等が挙げられる。また、銅箔表面の接着性を向上させるために、該銅箔表面に粗面化処理、例えば酸洗いやエッチング等の粗面化処理(例えば米国特許第3,220,897号明細書に記載の処理)又は電着的粗面化処理(例えば米国特許第3,293,109号明細書に記載の処理)を施した未処理銅箔を用いることも好適である。
表面処理を行う表面処理としては、P(燐)を含有するNi−Mo層、又はPを含有するNi−Mo合金層又はPを含有するNi層上にMo又はMo合金の層を設ける。なお、Ni層上に設けるMo又はMo合金中にPを含有させても良い。Mo又はMo合金については酸化物又は水和物であっても、合金でなくMoと他の金属との複合材であっても良い。上記Moの合金もしくは複合材(以下合金と複合材とを区別する必要がないときは単に合金と表現する)は、MoとCo、Cr、Cuの内少なくとも1つの金属によって構成することが好ましい。特にエッチング性、耐熱性などを考えるとCo合金、又はCoとの複合材が最適である。
Pを含有するNi−Moからなる表面処理層、又はP−Ni―Moを少なくとも含有する表面処理層、又はP含有Ni層又はP含有Ni合金層上に付着させるMo又はMo合金の層の組成は、Ni又はMo合金のMo以外の金属付着量をCmg/dm2とし、Moの付着量をDmg/dm2とした場合、
1(%)≦D×100/(C+D)≦70(%)
の範囲であることが好ましい。この範囲を選択するのは、Moが1%以下では、ポリイミドとの密着性を向上させる効果がほとんど期待できず、また、Moを70%以上にするとめっきのムラやエッチング性に支障をきたすようになるためである。
また、付着量としては、(C+D)が0.01mg/dm以上5mg/dm以下であることが望ましい。(C+D)が0.01mg/dm以下では、耐熱性又はピール強度などを考えると効果があまり見られず、また、5mg/dm2以上では、エッチングに支障をきたす恐れがある。表面処理金属に含有する燐量は、表面処理金属量を、Amg/dm2とし、含有する燐量をBmg/dm2とした場合、
0.01(%)≦B×100/(A+B)(%)≦15(%)
であることが望ましい。
表面処理金属量とは、上記に述べた金属量をいう。(なお、後述する防錆処理として付着させる金属は、ここでは金属量として加算しない。)
燐含有量が0.01(%)以下では、エッチング性に効果が見られず、また、15%以上と含有量が多過ぎるとポリイミドフィルムへの密着性が悪くなる。
上記表面処理層の形成は、電気めっき法、無電解めっき法、真空蒸着法、スパッタリング法等のいずれの方法によっても良いが量産性等を考慮すると電気めっきによる方法が実用上最も適していると考えられる。
以下、電気めっき法による表面処理層の形成方法につき説明する。
燐含有ニッケル−モリブデン浴としては、ニッケル十モリブデンめっき液に燐化合物を溶解した浴を用い、通常の方法に従い銅箔表面上に燐含有ニッケル−モリブデン層を形成する。
また、燐含有ニッケルめっき層上にモリブデン層をめっきする場合には、ニッケルめっき浴に燐化合物を溶解しためっき浴にてニッケルめっきを行った後、モリブデンもしくはモリブデン合金めっきを行う。なお、モリブデン又はモリブデン合金浴に燐化合物を溶解させることによりモリブデン又はモリブデン合金層のエッチング性を良くすることができる。
上記めっき浴に溶解させる燐化合物としては、例えば、亜燐酸ナトリウム、次亜燐酸2ナトリウム、燐タングステン酸ナトリウム、メタ燐酸ナトリウム、燐酸1ナトリウム、燐酸ニッケル、亜燐酸ニッケル等が挙げられる。本発明において、電気めっき法による場合、燐化合物を添加する以外は、通常のニッケルめっき又は、モリブデン又はモリブデン合金めっき浴を使用する。
めっき浴の組成、浴温、電流密度等も通常のめっき処方と同様で良く、何ら特別の方法を採用する必要はない。
未処理銅箔に上記表面処理が行った表面処理銅箔に防錆処理を施すことが好ましい。
防錆処理は、クロメート処理あるいは亜鉛皮膜形成とクロメート処理を併用する。これらの処理は、銅箔表面の耐食性を高める働きをする。クロムはピール強度に効果を示す場合もある。クロメート処理の場合は、銅箔表面の耐塩酸性を高める効果がある。クロメート処理は、クロム酸処理液中で陰極電解を行うことにより施すことができ、被処理面にクロムの酸化物あるいはクロム水和酸化物を析出させる。ここで用いるクロム酸処理液は、クロム酸単独の水溶液のほか、クロム酸又は重クロム酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の水溶液である。亜鉛皮膜とクロメート処理の場合は、主として、樹脂基板と銅箔をプレスする時の銅箔の基板と接合していない面の加熱変色を防ぐ目的で施される。また一方で、銅箔−樹脂基板間の加熱時のビールの低下を防ぐ役割も果たす。しかし、必要以上に亜鉛皮膜を厚くすると耐塩酸性が悪くなる。
シランカップリング剤処理は、ピールの向上を目的とする。シランカップリング剤としては、エポキシ、アミノ、ビニル系などがあげられ、塗布又は貼り付ける樹脂材質によって一番効果のあるものを選定し表面処理層上又は防錆処理層上に塗布する。
次に、表面処理層の処理を行うめっき浴及びめっき条件の一例を説明する。
条件1) 燐を含有するニッケル−モリブデンめっきの条件
NiSO・6HO 10〜500g/l
NaMoO・2HO 1〜50g/l
クエン酸3ナトリム2水和物 30〜200g/l
NaPH・HO 1〜30g/l
電流密度 1〜50A/dm2
浴温 10〜70℃
条件2) 燐を含有するニッケル−モリブデン−コバルトめっきの条件
NiSO・6HO 10〜500g/l
NaMoO・2HO 1〜30g/l
CoSO・7HO 1〜50g/l
クエン酸3ナトリム2水和物 30〜200g/l
NaPH・HO 1〜30g/l
電流密度 1〜50A/dm2
浴温 10〜70℃
条件3)燐を含有するニッケルめっきの条件
NiSO・6HO 10〜500g/l
BO 1〜50g/l
NaPH・HO 0.1〜30g/l
電流密度 1〜50A/dm2
浴温 10〜70℃
条件4)モリブデン−コバルトめっきの条件
NaMoO・2HO 1〜30g/l
CoSO・7HO 1〜50g/l
クエン酸3ナトリム2水和物 30〜200g/l
電流密度 1〜50A/dm2
浴温 10〜70℃
条件5) 燐を含有するモリブデン−コバルトめっきの条件
NaMo0・2HO 1〜30g/l
CoSO・7HO 1〜50g/l
クエン酸3ナトリム2水和物 30〜200g/l
NaPHO・HO 1〜30g/l
電流密度 1〜50A/dm2
浴温 10〜70℃
条件6)モリブデン−クロムめっきの条件
NaMoO・2HO 1〜50g/l
無水クロム酸 1〜50g/l
クエン酸3ナトリム2水和物 30〜200g/l
電流密度 1〜50A/dm2
浴温 10〜70℃
下記の未処理銅箔に各実施例、各比較例に記載の条件で表面処理を施した。
銅箔: 電解銅箔(結晶粒状晶)
箔厚: 12μm
表面処理を施す面の粗さ: 0.7μm
実施例1
前記条件1の条件範囲内にて10秒めっきして燐を含有するニッケル−モリブデン層を成膜し、その後防錆金属Zn・Crを付着させ、シラン処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
実施例2
前記条件2の条件範囲内にて15秒めっきして燐を含有するニッケル−モリブデン−コバルト層を成膜し、その後防錆金属Zn・Crを付着させ、シラン処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
実施例3
前記条件3の条件範囲内にて12秒めっきして燐を含有するニッケル層を成膜し、その上に、前記条件4の条件範囲内にて10秒めっきしてモリブデン−コバルト層を成膜し、その上に防錆金属Zn・Crを付着させ、シラン処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
実施例4
前記条件3の条件範囲内にて15秒めっきして燐を含有するニッケル層を成膜し、その上に、前記条件5の条件範囲内にて20秒めっきして燐を含有するモリブデン−コバルト層を成膜し、その上に防錆金属Zn・Crを付着させ、シラン処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
実施例5
前記条件3の条件範囲内にて10秒めっきして燐を含有するニッケル層を成膜し、その上に、前記条件6の条件範囲内にて8秒めっきしてモリブデン−クロム層を成膜し、その上に防錆金属Zn・Crを付着させ、シラン処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
比較例1
ニッケル−コバルトめっき条件
NiSO・6HO 60〜180g/l
CoSO・7HO 5〜35g/l
NaCL 15g/l
温度 20℃
電流密度 1〜5a/dm
時間 1〜15秒
の条件下にて表面処理を行った後、Zn・Cr、シランの順番にて表面処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
比較例2
ニッケル−燐めっき条件
燐を含有するニッケルめっき条件
NiSO・6HO 10〜500g/l
BO 1〜50g/l
NaPH・HO 0.1〜30g/l
電流密度 3A/dm
浴温 30℃
時間 4秒
の条件下にて表面処理を行った後、Zn・Cr、シランの順番にて表面処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
比較例3
燐含有ニッケルーコバルトめっき条件
NiSO・6HO 60〜180g/l
CoSO・7HO 5〜35g/l
NaCI 15g/l
NaPH・HO 10g/l
温度 20℃
電流密度 1〜5A/dm
時間 1〜15秒
の条件下にて表面処理を行った後、Zn・Cr、シランの順番にて表面処理を行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
比較例4
比較例3のめっき液濃度のNaPH2・HOを100g/lとした他は比較例3と同一条件でめっきを行った。銅箔表面に析出した各金属の付着量を表1に示す。
<評価用サンプルの作成>
各実施例、各比較例で作成した表面処理銅箔にポリイミド樹脂を塗り(厚さ50μm)、温度300℃、窒素雰囲気中で硬化させ、評価用銅貼フィルムを作成し評価用サンプルとした。
<初期ピールの測定>
各評価用サンプルをJISC6511に規定する方法に準拠して、測定試料幅10mmのピール強度を測定した。測定結果を表2に示す。
<耐熱劣化試験>
各評価用サンプルを温度150℃、168時間、大気中に放置後、JISC6511に規定する方法に準拠して、測定試料幅10mmのピール強度を測定した。測定結果を表2に示す。
<エッチング性の評価>
エッチング溶液に塩化第2銅を使用し、各評価用サンプルから銅を溶解し、フィルム上に金属等が残っていない状態を、目視で確認できるまでに要した時間を測定した。測定結果を表2に示す。
<耐酸性の確認>
評価用サンプルに1mm幅のテープを貼り1mmの回路を形成後、50g/l硫酸に5分間浸漬させフィルムと銅層の接合部に侵食等が起きていないかどうかを顕微鏡を使用し観察した。観察結果を表2に示す。

〔表1〕 各実施例、比較例の表面処理層における金属組成
Figure 0005137341
注1)表内の金属組成(金属付着量)は、Cr防錆処理以外の量である。
〔表2〕 評価結果
Figure 0005137341
<評価結果>
(1)常態ピール
各実施例の常態ピールは約1(KN/m)であり、比較例の約0.5(KN/m)と比較して明らかに接着強度は向上している。
(2)耐熱ピール
各実施例の耐熱ピールは常態ピールに対してやや低下しているが1(KN/m)程度はたもっている。一方比較例2の耐熱ピールは極端に劣化している。
(3)エッチング性と耐酸性
実施例のP−Ni−Mo含有表面処理層は比較例2〜4と比べてエッチング時間は同等であり、耐酸性は明らかに優れている。燐を含有していない比較例1の表面処理層は、耐酸性は優れているもののエッチング時間が長い。
本発明は上述したように、銅箔表面にP−Ni−Mo含有表面処理層を設けることで、銅箔とポリイミドとの密着性が向上し、耐熱性、耐薬品性(耐酸性)を維持しながらエッチングし易い表面処理銅箔を提供し得る優れた効果を有するものである。
したがって、本発明の表面処理銅箔は、プリント配線板用として、あるいはCOF用、FPC用として優れた効果を発揮するものである。

Claims (3)

  1. 未処理銅箔の少なくとも一方の面上に燐含有ニッケル又は燐含有ニッケル合金からなる表面処理層が形成され、該表面処理層上に、モリブデン層又はモリブデン合金層が形成されていることを特徴とする表面処理銅箔。
  2. 前記表面処理に含まれる燐量は、表面処理金属量をAmg/dm とし、含有する燐量をBmg/dm とした場合、
    0.01≦B×100/(A+B)≦15
    あることを特徴とする請求項1に記載の表面処理銅箔。
  3. 前記モリブデン合金層を形成するモリブデン合金の層の組成が、Ni又はMo以外の金属付着量をCmg/dm とし、Moの付着量をDmg/dm とした場合、
    1≦D×100/(C+D)≦70
    あることを特徴とする請求項1に記載の表面処理銅箔。
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