JP5137227B2 - 中空状吸水性樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は特定の形状を有する吸水性樹脂に関するものである。この吸水性樹脂は、紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料を始め、様々な用途において好適に用いられる吸水性樹脂に関するものである。
近年、合成高分子の1種として、大量の水を吸収してゲル化する吸水性樹脂が開発され、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛材分野、農林業分野、土木分野等に幅広く利用されている。この様な吸水性樹脂として例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体(例えば特許文献1参照)、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物(例えば特許文献2参照)、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物(例えば特許文献3参照)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の鹸化物(例えば特許文献4参照)、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物(例えば特許文献5参照)など多くが知られている。これらの吸水性樹脂が備えるべき特性としては、従来より、体液等の水性液体に接した際の高い吸水倍率や優れた吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引量等が求められている。
また近年、平均寿命の上昇に伴い高齢者向けの紙おむつの需要が増している。さらに近年、意匠性の問題、流通の問題、ゴミ問題等から衛生材料に対して薄型化、軽量化という要求が強まっている。これに対応するため現在の衛生材料において一般的に行われている方法としては、繊維などの衛生材料中の吸水性樹脂支持担体を減らし、大量の吸水性樹脂を使用するという方法がある。このように親水性繊維の比率を低め、吸水性樹脂を増加させた衛生材料は単純に液体を貯蔵するという観点からは好ましい方向であるが、実際のおむつの使用状況における液体の分配・拡散に関する性能が低下するという問題を抱えている。すなわち、多量の吸水性樹脂は吸水により柔らかいゲル状となり、いわゆるゲルブロッキングという液の拡散を大きく妨げる現象が生じるという問題がある。このため、用いられる吸水性樹脂はゲルブロッキングを防ぐためゲル強度の高いものを好んで用いられる。しかし、一般的にゲル強度の高い吸水性樹脂は高分子鎖間の架橋点が増加するため保水力は低くなる。そのため保水力を補うために、このような吸収体では大量の吸水性樹脂を用いることとなる。
その他に繊維を低減し、吸水性樹脂を大量に使用した時におこるゲルブロッキングを防ぐ手段として、吸水性能の異なる2種類の吸水性樹脂を使用する方法(例えば、特許文献6参照。)、カチオン性イオン交換ヒドロゲル形成ポリマーとアニオン性イオン交換ヒドロゲル形成ポリマーとを含む組成物を用いる方法(例えば、特許文献7参照。)、表面の架橋密度を高い吸水性樹脂を用いる方法(例えば、特許文献8参照。)、吸水性樹脂と熱可塑性樹脂の混合物を発泡押し出ししてシート化する方法(例えば、特許文献9参照。)などが提案されているが、いずれの場合も2種類の樹脂を用いたり、アニオン性イオン交換ヒドロゲル形成ポリマーなど特殊な樹脂を用いる必要があり、結果として保水力の小さい樹脂を混合しなければいけないので、吸水剤として大量の樹脂を投入する必要がある。
これらの問題点から、支持担体に吸水性樹脂を固着する方法も検討されてきた。例えば、吸収体をエンボス処理する方法、熱可塑性のバインダー繊維を吸水性樹脂と親水性繊維からなる吸収体に含有させて吸収体を熱融着させる方法、歪みからの回復率の高い合成樹脂を吸水性樹脂と親水性繊維からなる吸収体に含有させて吸収体を熱融着させる方法(例えば、特許文献10および特許文献11参照。)、アニオン性基を有する吸水性樹脂の表面にカチオン性ポリマーをコーティングして、膨潤時に粒子同士を接着固定化する方法(例えば、特許文献12および特許文献13参照。)、エマルジョンバインダーを用いて吸水性樹脂と親水性繊維を固定化する方法、ホットメルト接着剤を用いて吸水性樹脂を基材に固定化する方法(例えば、特許文献14および特許文献15参照。)等である。これらの方法により高保水力の架橋度の比較的低い樹脂の使用が可能となり、使用樹脂量の低減は可能であるが、その結果、吸収体としての吸水速度が低下してしまい軽量・薄型の状態では体液投入時の漏れが生じるという問題がある。
そこで軽量・薄型の吸収体で体液投入時の漏れを無くす方法としては、吸水性樹脂に接触した体液が瞬時に樹脂中に吸収され、かつ、当該樹脂の保水力が高い必要がある。高吸水速度の吸水性樹脂として、数十ミクロンの微粒子の吸水性樹脂を固めて数百ミクロンの粒径にしたものが使用されているが、この樹脂でも薄型・軽量化品で漏れを生じない吸収体として使用可能な体液投入量は15cc程度であり、それを超える量の体液を一瞬吸収されようとするとパルプ等の嵩高い素材を大量に共存させ、当該嵩高い素材中に一時的に液体を捕獲しておく必要があり、現実的に軽量・薄型化には限界がある。
このように、体液を大量に投入される場合に、パルプ等の嵩高い素材を大量に使用しない状態で漏れを防止できる吸収体はこれまで得られていなかった。これは、高速に体液を吸収し、かつ、高い保水力を有する吸水性樹脂が得られていなかったからである。

特開昭55−84304号公報 特公昭49−43395号公報 特開昭51−125468号公報 特開昭52−14689号公報 特公昭53−15959号公報 特開2001−252307号公報 国際公開第98/037149号パンフレット 特開平06−057010号公報 国際公開第01/64153号パンフレット 特開平10−118114号公報 特開平10−118115号公報 特開平5−31362号公報 特開平6−370号公報 特開2000−238161号公報 特表平10−510447号公報
従って本発明の目的は、軽量・薄型で、漏れが防止できる吸収体を提供することにあり、それを可能にするため吸収速度が速く、かつ、高い保水力を有する吸水性樹脂を提供することにある。
本発明者等らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、吸水性樹脂の形態を内部に空間を有する形態とし、その樹脂層の厚みが特定の範囲にあり、樹脂の嵩比重が比較的低くしたものが、特に吸収速度が速く、同時に、高い保水力を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は次の[1]〜[]である。
[1]内部に空間を有している中空の粒状吸水性樹脂であって、該吸水性樹脂のポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基中和塩単位のうち10〜80mol%アンモニウム塩であり、樹脂の皮膜の厚みが1〜30μmであり、嵩比重が0.60以下であり、中空の粒状吸水樹脂の平均粒径が、5〜1000μmでることを特徴とする粒状吸水性樹脂。
[]吸水性樹脂のポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基含有単位の含有率が50mol%以上である[1]に記載の粒状吸水性樹脂。
[]ポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基含有単位の50%以上が中和塩である[]に記載の粒状吸水性樹脂。
[] 吸水性樹脂がポリアクリル酸である請求項1−のいずれか一項に記載の粒状吸水性樹脂。
本発明の吸水性樹脂は、吸水速度が速く、かつ、高い保水力を有するため、軽量・薄型吸収体の吸収層として使用すると、パルプなどの嵩高い素材を大量にしなくとも大量の体液を一度に投入しても漏れない吸収体が可能となる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明は、吸水性樹脂の形態を工夫することによって、従来の吸水性樹脂では不可能であった吸収速度と保水力のバランスが高い吸水性樹脂に至ったものである。
通常、吸水速度を高めるためには、樹脂の比表面積を向上させる必要があると考えられる。その方法としては、より小さな粒径の微粒子の吸水性樹脂を使用することが挙げられる。しかし、通常、吸水性樹脂は数百μmの粒径の物が使用されるため、数μmから数十μm程度の微粒子の吸水性樹脂をそのまま使用することは不可能であり、当該微粒子を集合させて、数百μmの粒径のものとして使用されていた。その結果、集合体の内部に取り込まれた微粒子はその樹脂表面は体液と直接接触させることができず、理想的な高比表面積樹脂からはかなり離れたものであった。そこで、理想に近い高比表面積吸水性樹脂として、厚みの薄い膜から構成された樹脂層をその樹脂層が体液と直接接触できる確率を向上させるという考えで、鋭意検討した結果、内部に空間を有する吸水性樹脂を製造することに成功し、本発明に至った。
本発明の中空樹脂とは、その形には特に限定される必要はない。逆相懸濁重合法や噴霧重合法で製造されるような球状に近い構造をしていてもよいし、水溶液重合法で製造された吸水性樹脂の塊を粉砕し製造される粉砕品のような不定形の構造であってもよい。また、サイコロ状や三角錐状、円錐状に近いような形で構わない。勿論、重合時球状に近い形で製造された樹脂が後処理工程で変形破壊された構造であっても構わない。高速かつ高保水力の性能を向上させるためには、樹脂層の厚みを所定範囲内で均質に近づける方が好ましいので、球状に近い形をした中空樹脂は製造方法上樹脂の皮膜の厚みを所定範囲内で均質に近づけ易く、好ましい形である。また、中空は樹脂皮膜に完全に包み込まれている必要はなく、外部の空気と接触する穴が空いていても構わない。穴が空いている場合は、体液との接触面積として中空内部も利用できるので、好ましい構造である。また、穴の大きさによっては、中空内部へ入り込んだ体液を捕獲した形となり、吸収倍率が向上するので、好ましい構造である。
ここで穴は、内部の液体が乾燥時に抜けるときにできる穴と粉砕時に割れる穴の二種類がある。粉砕時に割れる穴には、一次粒子がそのまま割れる場合に出来る穴と接着していた一次粒子が分離する時に接着部の膜がどちらかの粒子にへばりついて剥がれる時にできる穴がある。
本発明の吸水性樹脂は、粒子状でその内部に空間を有する結果、中空部とその中空部を取り囲む樹脂皮膜からなる。本発明の樹脂皮膜の厚みについては、1〜30μmとする。厚みはより薄いほど体液との接触時の吸収呼応時間が著しく短くなり、結果として吸収速度が向上するので、好ましいが、1μm未満となると中空構造を維持するための強度に問題が生じてしまう。また、厚みが30μm以上となってしまうと吸収速度が低下してしまい、通常の微粒子凝集体程度の吸収速度しか発現しない。構造維持のための強度と吸収速度の両方を両立させるためには、樹脂皮膜の厚みは5〜25μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、6〜18μmである。この樹脂皮膜の厚みは、中空樹脂を粉砕等で物理的に破壊した後、電子顕微鏡で観察することで確認できる。具体的には、当該樹脂を電子顕微鏡で写し、樹脂皮膜の厚みが観察できる樹脂を任意に20個取り出し、その平均値を樹脂皮膜の厚みとする。
樹脂皮膜が薄くなると後処理工程の加熱処理等でアンモニウム塩の多くがアンモニアとして遊離してしまうので、その場合は、Na、K等の不揮発性のアルカリ金属をカルボキシル基中和塩含有単位の5〜80mol%含有させることが好ましい。
また本発明の中空の吸水性樹脂は、嵩比重が一定値以下とする必要がある。これは、樹脂皮膜の厚みが所定の範囲に入っている場合でも、嵩比重が高い場合は、中空の吸水性樹脂の粒径が著しく小さいことを意味し、当該中空の吸水性樹脂を使用可能粒径まで上げるために凝集させた場合、凝集粒子の内部にとりこまれた中空の吸水性樹脂は、体液との接触が困難となり、吸収速度が著しく低下するからである。嵩比重は、できるだけ小さい方が、比表面積が大きくなり好ましい。一方で、嵩比重が小さすぎる場合は、樹脂層の厚みが1μmより薄くなってしまうので、壊れやすい樹脂となり吸収体中での使用が困難になる。樹脂の嵩比重として好ましい範囲は、0.60以下であり、さらに好ましくは0.55以下である。ここで言う嵩比重とは乾燥状態の吸水性樹脂を一定粒径へ分級し、室温下にて所定体積の容器中へ細密状態となるように充填する。この間隙を含んだ細密状態の樹脂重量を計測し体積で割った値を嵩比重とする。
本発明の中空の吸水性樹脂は、一次粒子でもその凝集体の形態でもいずれも使用することができる。50μm以上の粒径であれば、そのまま使用する事もできるが、粒径が小さい場合は、凝集させて数百μm程度して使用することもできる。樹脂の強度を高めるためには、中空の吸水性樹脂の粒径が小さい粒子を凝集させたものを使用することが好ましが、粒径が小さすぎると凝集粒子内部に取り込まれた内部の中空の吸水性樹脂に体液が直接接触せず、吸収速度を低下させるので、あまり好ましくない。したがって、好ましい中空の吸水性樹脂の平均粒径は、一次粒子として5〜1000μmであり、さらに好ましくは、10〜500μm、最も好ましくは、30〜200μmである。
ここで、平均粒径とは、電子顕微鏡で写し、粒径が観察できる樹脂を任意に20個取り出し、その平均値を平均粒径とする。
本発明の中空の吸水性樹脂は、その構造に起因した高吸収速度かつ高保水力を有し、吸水性樹脂の化学組成には、特に拘らないが、より吸収速度が高速で高保水性を有する樹脂を使用することが好ましい。
吸水性樹脂の具体例としては、側鎖に酸基を有した吸水性樹脂であることが好ましく、側鎖にカルボキシル基を有した樹脂であることが更に好ましい。特に、吸水性樹脂のポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基含有単位の含有率が50mol%以上であるものが好ましい。
また、カルボキシル基含有単位の50%以上が中和塩であることが好ましく、70%以上が中和塩であることが更に好ましい。塩の種類としては、アンモニアを含む少なくとも1種類以上で部分中和されることが好ましい。吸水性能の観点から、ポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基中和塩単位のうち10〜80mol%がアンモニウム塩であることが好ましく、より好ましくは30〜70mol%がアンモニウム塩である。
なお、吸水性樹脂中のアンモニウム塩の割合は、吸水性樹脂中の全窒素原子量を求めることで計算することができる。吸水性樹脂中の全窒素原子量はケルダール法により求めることができる。また、アルカリ金属の含有量は、原子吸光やICP等の金属の定量分析法を用いて測定できる。
側鎖に酸基をもった吸水性樹脂は、体液吸収時に酸基同士の静電反発が起こり、吸収速度が速くなるため好ましい。また、酸基が中和されていると、浸透圧により体液が吸水性樹脂内部に吸収されるため好ましい。アンモニウム塩の形で中和されていると、アンモニウム塩は水への親和性が高く吸収量が多くなるため好ましい。吸水性樹脂の種類としては、ポリアクリル酸部分中和物架橋体(例えば特開昭55−84304号公報参照)、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物(例えば特公昭49−43395号公報参照)、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物(例えば特開昭51−125468号公報参照)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の鹸化物(例えば特開昭52−14689号公報参照)、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物(例えば特公昭53−15959号公報参照)、ポリグルタミン酸塩(例えば特開2003−192794号広報参照)など多くが知られている。吸水性能、コストなどの観点からは通常衛生材料用途に使用されているカルボン酸基を有するポリマーが好ましい。
カルボン酸基を有するポリマーを主成分とする吸水性樹脂の重合に供する単量体としては、通常、不飽和結合を有するものが用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸、エタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、ソルビン酸、けい皮酸、それらの無水物、不飽和カルボン酸単量体の中和塩があげられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸の中和塩を用いる。中和塩の種類はリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニア等の含窒素塩基性物質であることが好ましい。
アクリル酸の中和塩を単量体の主成分とするポリアクリル酸では、ポリマー分子鎖中における繰り返し単位は好ましくは50mol%以上がカルボキシル基含有単位である。より好ましくは80mol%以上、最も好ましくは90mol%以上である。繰り返し単位のうちのカルボキシル基含有単位が50mol%以下では吸水性能の低下が見られるため好ましくない。
その他単量体を共重合してもよく、共重合してもよい不飽和単量体は(メタ)アクリル酸、エタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、ソルビン酸、けい皮酸、それらの無水物、ビニルスルフォン酸、アリルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸、ビニルトルエンフルフォン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルフォン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルフォン酸、2−ヒドロキシルエチルアクリロイルオフォスフェート、2−ヒドロキシルエチルメタクリロイルフォスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルフォスフェート、ビニルリン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクレリート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペジリン、N−アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水性基含有不飽和単量体、また、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニルなどの様に重合後の官能基の加水分解によって、吸水性樹脂を形成する親水性単量体を用いてもよい。また、併用できる疎水性単量体としては、スチレン、塩化ビニル、ブタジエン、イソブテン、エチレン、プロピレン、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中で1種類、もしくは2種類以上を添加することができる。また、重合物を架橋させて吸水性樹脂としてもよい。架橋の方法としては、単量体中に重合性の架橋剤を共存させて共重合する方法、カルボン酸と反応する架橋剤を用いて架橋する方法、樹脂に電子線や放射線を照射し架橋する方法等が挙げられる。これらの方法の中では、重合性の架橋剤を使用する方法とカルボン酸と反応する架橋剤を用いる方法が、架橋度の制御が正確に行い易く、好ましい方法である。架橋度は吸水性樹脂の種々の性能に大きく影響を及ぼす因子であるため、精密に吸水性樹脂の性能を調整したい場合は、重合性架橋剤とカルボン酸と反応する架橋剤を併用することが好ましい。
重合性の架橋剤としては、一分子内に2個以上の不飽和結合を有するものが使用できる。例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、N,N‘−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ビスフェノールジアクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルオキシ酢酸塩などがあげられ、これら架橋剤は2種以上用いてもよい。
カルボン酸と反応する架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物;(ポリ)グリセリン、(ポリ)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの多価アルコール類;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンジアミンなどの多価アミン類;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの多価イオンなどがあげられこれら架橋剤は2種以上用いてもよい。
また、上記単官能性不飽和単量体と内部架橋剤の他、必要に応じて、発泡剤、連鎖移動剤、界面活性剤、キレート剤等を添加して重合してもよい。
不飽和結合を有する単量体の重合方法は特に限定されず、水溶液重合、逆相懸濁重合、逆相乳化重合、噴霧重合、ベルト重合など一般に広く用いられている方法が適用できる。重合開始方法も特に限定されず、ラジカル重合開始剤による重合、放射線、電子線などの照射による重合、光増感剤による紫外線重合を行うこともできる。かかるラジカル重合に用いられる開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酢酸など有機化酸化物などの公知の開始剤が挙げられる。酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合はL−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤を併用しても構わない。
吸水性樹脂の重合開始前には予め単量体溶液中の脱酸素操作を行うことが好ましい。具体的な方法として、十分な時間、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスによるバブリング等により溶存酸素を取り除く方法があげられる。また、反応器内雰囲気も窒素、ヘリウムなどの不活性ガスに置換されていることは好ましい。重合中の反応器内は減圧、常圧、加圧のいずれであっても良い。重合開始温度は通常0〜100℃の範囲で行うことが好ましい。さらに好ましくは、20〜70℃の範囲である。重合開始温度が高すぎると、開始剤を加える前から熱による重合が開始してしまい好ましくない。また、開始温度が低すぎると、重合開始に時間がかかりすぎるため生産効率上好ましくない。重合中の反応器内の温度は成り行きに任せてもよく、外部から冷却もしくは加熱により温度制御を行ってもよい。重合中の昇温速度や最高温度は特に問題とならず、最高温度が100℃を超えても問題はない。重合時の最高温度は、通常20〜140℃で、好ましくは、40〜120℃の範囲であり、更に好ましくは50〜100℃である。単量体溶液の濃度は10〜80%が好ましく、30〜70%が最も好ましい。単量体溶液の濃度が濃すぎると、反応が暴走しやすいため好ましくなく、濃度が薄すぎると、反応に時間がかかりすぎ、また、その後の乾燥工程にも負荷がかかるため好ましくない。重合時間は特に限定されないが、反応溶液からの発熱が止まる時間付近に設定することが好ましい。重合後の後工程として、乾燥工程、後架橋工程等などの加熱工程が存在するため、反応溶液からの発熱が止まる前に重合を終了しても構わない。また、発熱終了後、数時間加温、保温しても構わない。
上記重合後に得られる重合体が含水ゲルである場合は乾燥を行う。この乾燥方法は特に限定されるものではないが、例えば共沸脱水、流動乾燥、熱風乾燥、真空乾燥など一般に広く用いられている方法が適用でき、特に熱風乾燥、真空乾燥が好ましい。また、乾燥前の重合樹脂をスプレー状態にできる場合は、スプレードライという乾燥方法も可能である。樹脂中の含水率としては特に限定されるものではないが30質量%以下が好ましく、10質量%以下まで乾燥することが更に好ましい。乾燥はどのような形態の含水ゲルで行ってもよいが、粗解砕して表面積を増やしてから乾燥するのが乾燥効率上好ましい。乾燥温度は70℃〜180℃の範囲が好ましく、特に好ましくは90〜150℃である。
乾燥後の重合樹脂体は、必要に応じて粉砕や分級等の操作によって粒子径が調整される。
その後、後架橋のために所定の粒子径に調整された乾燥樹脂を加熱処理しても構わない。この加熱処理の方法は特に限定されるものではないが、使用するカルボキシル基と反応する架橋剤を共存させておくことが好ましい。カルボキシル基と反応する架橋剤の添加方法は特に限定されるものではなく、重合前からいれておいてもいいし、加熱処理前の粒子に加えても構わない。加熱処理前の粒子に入れる場合には、水、アルコール類、エーテル類などの親水性溶媒に溶解させて、粒子表面に均一に散布することが好ましい。加熱処理の温度は特に限定されるものではないが、好ましくは90〜250℃の範囲である。更に好ましくは120〜200℃、最も好ましくは150〜180℃である。加熱処理は、乾燥終了後に連続的に同じ装置内で加熱処理しても良く、乾燥工程とは独立の工程としても構わない。加熱処理は、通常の乾燥機や加熱炉など一般に広く用いられている装置を用いる事ができ、例えば、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、ディスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、赤外線乾燥機等が挙げられる。
この様にして得られる吸水性樹脂に、必要に応じて消臭剤、香料、各種無機粉末、発泡剤、顔料、染料、抗菌剤、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、キレート剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、水、塩類等を添加してもかまわない。
上記、無機粉末としては、例えば、水及び親水性有機溶媒に対して不活性な各種無機化合物の微粒子、粘土鉱物の微粒子等が挙げられる。特に無機粉末としては水に対して適度な親和性を有し、かつ、水に不溶或いは難溶のものが好ましく、例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等が挙げられる。無機粉末の使用量は特に限定されるものではないが、通常は吸水性樹脂100重量部に対して0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。吸水性樹脂と無機粉末の混合方法に特に制限はなく、ドライブレンド法、湿式混合法等一般的な方法で行われる。
また、製造された樹脂に透水剤を塗布し、吸水性樹脂表面に体液が高速に拡散させるようにすることは大変好ましい方法である。透水剤塗布方法は、特に限定されるものではなく、透水剤または透水剤を溶解した溶液を樹脂上に噴霧し乾燥する方法、透水剤または透水剤を溶解した溶液に樹脂を含浸させ乾燥する方法等が挙げられ、吸水性樹脂表面の透水剤塗布面積を向上させやすいという点が好ましい方法である。
透水剤は、親水性が高く、かつ、吸水性樹脂表面に付着可能なものであれば構わない。通常、透水剤としては、低分子親水性化合物や親水性高分子樹脂などが挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、Dow Chemical Companyで製造されているボラノール(VoranolTM)2070、ボラノール2100、ボラノール3100ポリオール、トリトン(TRITONTM)X−100界面活性剤(Rohm&Haasから入手可能)、タージトール(TERGITOLTM)15−5−9、エトキシル化界面活性剤(Union Carbideから入手可能)、ポリエチレングリコール、花王で製造されているエマルゲンLS−106、エマルゲンLS−110、エマルゲンLS−114、エマルゲンMS−1110、エマルゲン1118S−70、エマルゲン1135S−70、エマルゲン1150S−70、レオドールTW−O106V、レオドールTW−O120V、日本国特許第3057521号に記載されているポリオレフィン系繊維用耐久親水化剤等の非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホネート、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル等のアニオン界面活性剤、ラウリルジメチルベタイン、ヤシアミドプロピルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、特開平1−148879、特開平10−53955に記載されているシリコーン系の親水性処理剤等が挙げられる。これらのうち、HLB値が7以上の非イオン系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤は高い透水性を示すので特に好ましい。
透水剤を溶液状態で塗布する際に使用する溶媒としては特に限定されないが、透水剤を溶解し、塗布後蒸発除去しやすい溶媒である事が好ましく、例えば親水性の液体を使用することが最も好ましい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトンなどに代表されるケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等に代表されるニトリル類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等に代表されるアミド類、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等に代表されるエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等に代表されるエーテル類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノ−ル等に代表されるモノアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等に代表される多価アルコール類、また水などが挙げられる。この中で、透水剤塗布後の溶媒乾燥の点から常圧時の沸点が100℃以下であるのものが好ましく利用される。また、プロセス上の安全性も考慮すると、水やエタノールが好ましく使用され、水である事が最も好ましい。
次に、中空樹脂の製造方法として最も簡便な代表的な方法を示す。
本発明の中空樹脂を製造する方法としては、不飽和カルボン酸塩を含む単量体水溶液を有機溶媒中に懸濁させ重合する逆相懸濁重合方法が好ましい方法として用いられる。反応器の形式は特に限定するものではなく回分式もしくは連続式のいずれでも構わない。例えばループリアクターの様な連続式装置や一般的に広く用いられているバッチ式の攪拌層などが挙げられる。
中空樹脂の具体的な重合方法の例としては、まず、不飽和カルボン酸塩の水溶液と有機溶媒(以後、有機溶媒1と称す。)を界面活性剤(以後、界面活性剤1と称す。)存在下で混合し、水溶液中に油滴が安定に存在するエマルジョンを作成する。その後、この水溶液エマルジョンと有機溶媒(有機溶媒2と称す。)を界面活性剤(界面活性剤2)存在下で混合する。有機溶媒2中に水溶液エマルジョンを水滴として安定に存在させ、その状態で重合させる方法が簡便な方法として挙げられる。
また、中空状態の形成法としては、重合後に内部に蒸発除去が可能な物質を包含した粒子を製造し、その後当該物質を蒸発除去し、中空状態を形成することが好ましい方法である。
中空樹脂の製造のし易さという点では、用いられる不飽和カルボン酸塩として、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。好ましくはアンモニウム塩及びナトリウム塩、最も好ましい塩はアンモニウム塩である。不飽和カルボン酸塩としてアンモニウム塩を主とする単量体を用いて中空状態の樹脂を作り出した後に、ナトリウム塩やカリウム塩などの別の塩に一部または全部置換をすることも目的によっては構わない。
不飽和カルボン酸アンモニウムには、一部不飽和カルボン酸アミドが含有されていても構わない。不飽和アミドとは分子内に不飽和結合と一般式RCONH−(Rはアルキル基、アリール基など任意の有機基)で表される官能基の両方含む化合物のことをいう。このような化合物としては、シンナムアミド、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられるが、アクリルアミド及びメタクリルアミドが好ましく、アクリルアミドがより好ましい。
不飽和カルボン酸塩として最も好ましい不飽和カルボン酸アンモニウムは、如何なる製法で製造されたものでも構わない。例えば、a.不飽和ニトリル及び/又は不飽和アミドを微生物による加水分解反応に供する方法、b.不飽和カルボン酸をアンモニアで中和する方法が挙げられる。次にそれぞれの具体的な製法を説明する。
a.不飽和ニトリル及び/又は不飽和アミドを微生物による加水分解法
微生物による加水分解反応に供される不飽和ニトリルとは、分子内に不飽和結合とシアン基を両方含む化合物のことをいう。また、不飽和結合とシアン基をそれぞれ多数含んでいても構わない。不飽和結合とは、炭素原子間に二重結合(エチレン結合)あるいは三重結合(アセチレン結合)を含むものをいい、このような化合物の例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトンニトリル、ケイ皮酸ニトリルなどが挙げられる。なかでもアクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。また、微生物による加水分解反応に供される不飽和アミドとは、分子内に不飽和結合と一般式RCONH−(Rはアルキル基、アリール基など任意の有機基)で表される官能基を両方含む化合物のことをいう。このような化合物の例として、シンナムアミド、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられるが、アクリルアミド及びメタクリルアミドが好ましく、特にアクリルアミドが好ましい。
不飽和ニトリル及び/又は不飽和アミドの微生物による加水分解条件には特に制限されるものではないが、該微生物としては20重量%以上の濃度の不飽和カルボン酸アンモニウム水溶液を生産できる微生物が好ましい。このような微生物としては、アシネトバクター属、アルカリゲネス属、コリネバクテリウム属、ロドコッカス属、ゴルドナ属からなる群から選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。上記微生物の中ではアシネトバクター属の微生物がより好ましく、その中でも該微生物がアシネトバクターsp.AK226菌株(FERM BP−08590)、あるいはアシネトバクターsp.AK227菌株(FERM BP−08591)、であることが最も好ましい。なお、アシネトバクターsp.AK226菌株(FERM BP−08590)及びアシネトバクターsp.AK227菌株(FERM BP−08591)の微生物学的性質は表1に示す通りである。

表1続き


この微生物による加水分解法で生成される不飽和カルボン酸アンモニウム水溶液は、不飽和カルボン酸の二量体及び/又は水和物などの不純物量が極めて微量であるので、該製法は好ましい方法である。不純物の具体的例としては、アクリル酸の場合では、アクリル酸の二量体であるβ−アクリロイルオキシプロピオン酸及びアクリル酸の水和物であるβ−ヒドロキシプロピオン酸、及びそれらの塩等が挙げられる。
b.不飽和カルボン酸をアンモニアで中和する方法
不飽和カルボン酸をアンモニアで中和する方法に供される不飽和カルボン酸は、前述の不飽和カルボン酸と同様のものが使用される。
この不飽和カルボン酸はどのような製法で作られたものでも構わない。このような不飽和カルボン酸に、不純物が多量に含まれている場合は、精製して不純物を低減させることが好ましい。ここでいう不純物とは、分解して単量体成分となりうる化合物のことをいう。例えば、不飽和結合が水和したものやオリゴマー、アクリル酸においてはβ−ヒドロキシプロピオン酸やβ−アクリロイルオキシプロピオン酸などが挙げられる。精製の方法は、不純物の量を規定量以下に低減することができればどのような方法でもよく、手段は特に制限されるものではなく、具体的な精製の方法として蒸留などの一般的に用いられる方法で行ってもよい。不純物の量は1000ppm以下まで低減させることが好ましく、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。不純物が多いと、得られた吸水性樹脂の残存モノマーが多く、さらにその後の製造工程によって残存モノマーが増加するという現象を示し、さらにはポリマーの諸物性が不十分となる場合もあり好ましくない。
中和方法としては特に制限されるものではなく、アンモニア水を用いてもよいし、アンモニアのガスを用いても構わない。また、少なくとも中和工程中の一時期は不飽和カルボン酸の中和率が100モル%を超える状態を経過する条件下にて中和しても構わない。中和工程においては、冷却によって温度を0〜50℃に保つことが好ましい。温度が上がりすぎると、β―ヒドロキシプロピオン酸やオリゴマーが生成してしまい好ましくないため中和時の温度は0〜30℃以下にする事がより好ましい。
また、不飽和カルボン酸アンモニウム単量体の使用量は、不飽和カルボン酸とその塩の総モル量に対して50〜100モル%の範囲であることが、製造される吸水性樹脂の吸収倍率の観点から好ましい。製造される吸水性樹脂の吸収倍率を向上させるためには、不飽和カルボン酸アンモニウムの含有モル%が高い方が好ましく、80〜100モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。この時、アンモニウム塩以外の不飽和カルボン酸塩としてアルカリ金属塩の使用量は、不飽和カルボン酸とその塩の総モル量(これは、不飽和カルボン酸アンモニウムと不飽和カルボン酸アルカリ金属塩と不飽和カルボン酸それぞれのモル量の総和である。)に対して、0〜45モル%の範囲であることが好ましい。製造される吸水性樹脂の吸収倍率を向上させるためには、不飽和カルボン酸アルカリ金属塩の含有モル%が低い方が好ましく、0〜20モル%の範囲であることがより好ましい。さらに好ましくは0〜10%である。
次に、重合に供する不飽和カルボン酸アンモニウム単量体の水溶液中濃度は特に限定は無いが、安定的に中空樹脂を製造したい場合は、比較的高い濃度で実施することが好ましい。重合性単量体の水溶液中の濃度としては、20重量%以上であることが好ましく、更に好ましくは40重量%以上、最も好ましくは60重量%以上である。また、当該濃度の実施的上限値は重合条件下における重合性単量体の水に対する溶解度である。ここで言う実質的上限値とは、例え一部の単量体が溶解せずに固体として水溶液中に存在しても重合反応で溶解している単量体が消費された後に固体が水溶液中に溶解し、重合できる程度の不溶固体分も溶解成分と考えた場合の溶解度の上限値である。
重合性架橋剤および/またはカルボン酸基と反応できる架橋剤は特に限定されるものではないが、重合性単量体の水溶液中に添加しておくことが好ましい方法である。
重合開始剤は、結果的に不飽和カルボン酸塩水溶液中に、できるだけ均質に溶解するように投入すれば、どの段階で投入しても構わない。例えば、不飽和カルボン酸塩水溶液が有機溶媒1と混合する前から、不飽和カルボン酸塩水溶液と有機溶媒1からなるエマルジョン溶液を有機溶媒2と混合される前の間のいずれかの時に投入する方法が挙げられる。
有機溶媒1は、不飽和カルボン酸塩水溶液中、界面活性剤1存在下で油滴が生成できるものであれば特に限定されるものではない。通常、プロセス溶媒としては、蒸発潜熱が小さく、水との分離性がよく、界面活性剤と化学に反応しにくい溶媒が好ましい。具体的には炭化水素系溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。より好ましくは、脂肪族炭化水素系溶媒であり、さらに好ましくは飽和脂肪族炭化水素系溶媒である。飽和脂肪族炭化水素系溶媒としては、直鎖構造でも、分岐を有する構造でも、環状構造を有してもいても構わない。勿論、一分子内に、直鎖構造、分岐構造、環状構造の複数の構造を有する化合物であっても構わない。飽和脂肪族炭化水素系溶媒の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状構造を有する飽和脂肪族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、リグロイン等の鎖状構造を有する飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。得られるエマルジョンの安定性及び、溶媒の沸点、比重などの諸物性から、中でもシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、n−ペンタン、n−ヘキサンが好ましく、より好ましくはシクロヘキサンである。
界面活性剤1は、不飽和カルボン酸塩を主成分とする単量体水溶液中に有機溶媒1を撹拌状態または静置状態で安定的に油滴として分散でき、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。使用できる界面活性剤1の具体例としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの内、界面活性剤1としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレートなどのポリオキシエチレン誘導体類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル類、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビト−ル脂肪酸エステルやグリセロールモノステアレートなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。懸濁状態または乳化状態の安定性を向上させるためには、非イオン性界面活性剤のうちHLB値が4〜14であるものを使用することが好ましく、さらに好ましくはHLB値が7〜13のものである。また、曇点が30℃以下には存在しないものが好ましく、さらに好ましくは曇点が存在しないものである。界面活性剤1の添加量は有機溶媒1の重量に対して10重量%以下とし、通常は0.05〜8重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%である。
有機溶媒2は、等量の水と撹拌・混合した後静止状態として二層分離し、原料単量体のラジカル重合反応を著しく阻害しない有機溶媒であれば、官能基の種類や量、構成原子等に関して特に限定される必要はない。通常、プロセス溶媒としては、蒸発潜熱が小さく、水との分離性がよく、界面活性剤1、界面活性剤2と化学反応しにくい溶媒が好ましく使用される。具体的には、炭化水素系溶媒が好ましい溶媒として挙げられる。より好ましくは脂肪族炭化水素系溶媒であり、さらに好ましくは飽和脂肪族炭化水素系溶媒である。飽和脂肪族炭化水素系溶媒としては、直鎖構造でも、分岐を有する構造でも、環状構造を有してもいても構わない。勿論、一分子内に、直鎖構造、分岐構造、環状構造の複数の構造を有する化合物でも構わない。飽和脂肪族炭化水素系溶媒の具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の環状構造を有する飽和脂肪族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、リグロイン等の鎖状構造を有する飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。
得られるエマルジョンの安定性及び、溶媒の沸点、比重などの諸物性から、この中でもシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、n−ペンタン、n−ヘキサンが好ましく、より好ましくはシクロヘキサンである。
界面活性剤2は、有機溶媒1を油滴として含む単量体水溶液の懸濁液または乳化液を撹拌条件下または静置条件下、有機溶媒2中で懸濁状態または乳化状態として安定化できるものであれば特に限定されるものではない。使用できる界面活性剤2の具体例としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらの内、界面活性剤2としては、原料単量体として用いられる不飽和カルボン酸塩がイオン性であり、イオン交換等による性能の変化が起り難いため、非イオン性界面活性剤を用いる事が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、HLB値が4〜12の範囲のものが懸濁状態または乳化状態時に高い安定性を示すため好ましく用いられる。また、比較的大きな水相の液滴を生成したい場合は、HLB値が5〜10の範囲の非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。HLB値が4〜12の非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビトール脂肪酸エステル系、ソルビトール脂肪酸エステルエーテル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステルエーテル系などが挙げられる。その中でもソルビタン脂肪酸エステル系とソルビタン脂肪酸エステルエーテル系が好ましい。また、HLB値が5〜10の非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウリレートやオキシエチレンソルビタンモノステアレートエーテルが好ましい。より好ましくはソルビタンモノステアレートである。
本発明におけるHLB値は、三洋化成工業株式会社出版の新・界面活性剤入門に記載、グリフィンのHLB値のことである。HLB値の計算式は以下のように定義される。
非イオン性界面活性剤のHLB=(親水基部分の分子量÷界面活性剤の分子量)×20
界面活性剤の使用量は単量体に対して0.1〜15重量%が適切な範囲であり、好ましくは0.2〜5重量%である。実質的に界面活性剤の使用量は安定したエマルジョンが状態を保つ事ができれば特に限定されるものではないが、界面活性剤の使用量が少なすぎても安定したエマルジョン状態を保つことができず、15重量%以上使用してもこれに伴う好結果が得られない。
重合反応温度は特に限定されるものではないが、使用する重合開始剤のラジカル発生速度の温度依存性によって調整することが好ましい。重合時のポリマーの粘度変化や重合熱に伴う温度変化による懸濁状態や乳化状態が不安定になることもあるので、重合初期は70℃以下の比較的低温で重合を開始し、ある程度重合が進行した後、70℃以上の高温に上げて重合を完結させることが好ましい方法である。
重合終了後、粒子径が小さい場合は、凝集させて平均粒径100μm以上とすることも構わない。凝集方法としては、第三成分を入れて界面活性剤2を粒子表面からはがし粒子同士を接着させる方法、粒子同士が接触している状況で溶媒を蒸留除去し粒子同士を接着させる方法等が挙げられる。
界面活性剤2を粒子表面からはがし凝集する方法としては、重合後のエマルジョン溶液と水への溶解度を示す有機溶媒を混合することが好ましく、その混合方法は特に限定されるものではない。例えば、エマルジョンに水溶性溶媒を添加しても、水溶性溶媒にエマルジョンを添加しても、エマルジョンと水溶性溶媒を同時に反応容器の中に投入しても構わない。製造上簡便な方法は、重合後のエマルジョン溶液中に水溶性溶媒を添加する方法であり、撹拌されたエマルジョン溶液に水溶性溶媒を添加する方法が好ましい方法である。
エマルジョンと水溶性溶媒が混合されることにより、エマルジョンを保っている界面活性剤の安定化効果を崩壊させ粒子を凝集させる。界面活性剤の安定化効果を崩壊させるには、混合される水溶性溶媒の水への溶解度が1重量%以上である必要があり、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上である。
添加する水への溶解度が1重量%以上の水溶性溶媒は1種類でも構わないし、複数種類であっても構わないが、好ましくは2種類以上の水溶性溶媒を用いることである。より好ましくは、多価アルコールを含む2種類以上の水溶性溶媒を用いることである。アルコール基を2個以上含む多価アルコールが添加する水溶性溶媒に含まれていることは、凝集工程で生成する水可溶分を低減させる効果が高いため好ましい。複数種のアルコールを用いる場合、添加するタイミングは特に限定されるものではなく同時であってもよいし、それぞれ独立に添加しても構わない。添加する水への溶解度が1重量%以上の水溶性溶媒の例としてはアセトン、メチルエチルケトンなどに代表されるケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等に代表されるニトリル類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等に代表されるアミド類、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等に代表されるエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等に代表されるエーテル類、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノ−ル等に代表されるモノアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等に代表される多価アルコール類などが挙げられる。この中で、モノアルコール類と多価アルコール類を組み合わせた水溶性溶媒を使用することが好ましく、モノアルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが、多価アルコール類としてはプロピオングリコール、グリセリン、エチレングリコールを組み合わせて使用することが好ましく、エチルアルコールとグリセリンの組み合わせかイソプロピルアルコールとグリセリンの組み合わせが最も好ましい。
水溶性溶媒の添加量は特に限定されるものではなく凝集体が所望の粒径になるように調整する事が好ましく、例えばエマルジョン中の固形分に対して0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
添加時の温度もエマルジョンが保たれる範囲であれば、特に限定されることはない。例えば、重合温度でそのまま行ってもよく、加温してから添加してもよい。あるいは室温付近まで冷却して行っても構わない。
凝集工程を経た後に、溶媒との共沸脱水によりゲルの含水率を下げる工程を経てもよく、その条件は圧力及び温度等、特に限定されるものではない。
凝集体の粒径は、添加する水溶性溶媒の量及び攪拌動力の大きさによりコントロールする事が可能であり、任意の粒径を得ることができる。本発明においては、凝集体粒径を特に限定するものではないが、吸水性樹脂が最も用いられる衛生材料用途では、粒径の小さなものでは粉塵の発生が問題となるため使用されず、また粒径の極端に大きなものは吸水速度が遅いために使用されない。以上のことを勘案すると凝集体の粒径は100〜5000μmが好ましく、100μm〜1500μmの粒径が特に好ましい。
凝集体形成後にエマルジョンを40℃以上に保ち粒子同士を融着させる工程を用いることは凝集体の結合強度を上げるうえで有効である。加熱処理が有効な理由は明らかではないが、接触した粒子同士のフリーのポリマー鎖ないしそのセグメントが相互に拡散し、いわゆる自着が進行しているものと推測される。ポリマー鎖の相互拡散を促進するためには凝集させている含水ゲルのガラス転移点温度以上の温度に加熱することが好ましい。ゲルのガラス転移点温度はゲルの含水率・中和率・中和塩の種類により変化するが、加熱する温度は40〜200℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、さらに好ましくは60〜150℃である。加熱する時間1〜120分が好ましい。加熱温度、加熱時間ともにゲルの融着を十分に行うことができ、製品の性能を劣化しない範囲であれば特に制限するものではない。そこで加熱温度を高めるためには重合装置内を加圧することも有効であり、重合時と異なる溶媒を用いても構わない。また、凝集粒子の結合強度は特に制限するものではないが、製造した樹脂をハンドリングすることを考えると高強度であることが好ましい。
凝集工程後、粒子凝集体と溶媒を分離回収する方法は一般的に広く用いられる固液分離方法を用いる事が出来る。例えば、ろ過分別、遠心分離による分離、加熱による溶媒の除去などが挙げられるが、いずれの方法を用いても構わない。
粒子凝集体ゲルの乾燥方法としては特に限定されるものではなく、通常真空乾燥、熱風乾燥が用いられる。乾燥温度は70℃〜180℃の範囲が好ましく、より好ましくは90〜140℃である。乾燥温度は低すぎると乾燥に時間がかかりすぎるため経済的でなく、高すぎると吸水性樹脂の分解等が起こるため吸水性能の低下を招く。乾燥工程はこれらの問題を起こさない範囲であれば特に限定されることはなく多段昇温してもよく、一定温度での乾燥でも構わない。
吸水性樹脂として、アンモニウム塩を使用する場合は、前述の乾燥後、特開2005−200630号公報に示されるように吸水性樹脂に加熱処理工程を行い、アンモニアを遊離させ、アンモニア中和率を任意の割合にコントロールすることができる。この時、アンモニアの遊離は樹脂表面から起こるために、吸水性樹脂凝集体の内部と表面近傍の中和率に差ができる状態となる。またアンモニアが遊離して中和率が低下した部分に、後にリチウム、ナトリウム、カリウム等の不揮発性のアルカリ金属を含有させ中和率を制御する事も可能である。同時に凝集工程の際に添加した多価アルコールと水可溶分となる低分子量ポリマー中の官能基とを反応させ、低分子量ポリマーを高分子量化して、水可溶分を低減させることも可能となり、これにより、樹脂吸水時のゲルブロッキング現象を低減させることができる。本加熱処理工程は、乾燥後の吸水性樹脂を不織布やパルプと接触、接着、付着など共存させた状態で行ってもよく、吸水性樹脂単独で行っても構わない。加熱処理は100〜250℃の範囲で行う事が好ましく、より好ましくは130〜200℃である。また、吸水性樹脂体中の中和率の分布構造及び吸水性能の面から、加熱温度は乾燥温度よりも10〜150℃高い温度で行われることが好ましく、より好ましくは30〜100℃高い温度で行われることである。加熱時間は0.5分〜5時間で行う事が好ましく、より好ましくは2〜60分であり、さらに好ましくは3〜15分である。加熱温度、時間は特に限定されるものではなく、吸水性樹脂の性能が劣化しない範囲内であれば構わない。加熱処理工程の雰囲気は特に限定されるものではないが、不要な反応が起らない様、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上含有する化合物を乾燥後の吸水性樹脂に含浸させ、加熱処理により架橋反応を起こさせることでいわゆる表面架橋処理を行うことも本発明の範囲内である。
本発明の中空樹脂は、樹脂層が薄い膜状の効果、即ち、体液との接触時の呼応速度が著しく向上する効果と、樹脂の高比表面積の効果、即ち、体液と直接接触する確率の向上効果の二つの効果により吸収速度が高速となり、かつ、その樹脂中空部位への水の捕獲能力により高い保水量を示す。
本発明ではボルテックス法(測定方法の詳細は下記。)で測定される吸収速度が10秒以下で、保水力(測定方法の詳細は下記。)が25g/gを超える吸水性樹脂が製造可能となる。さらに、本発明の中空吸水性樹脂は最終工程となる加熱処理工程を含水状態でセルロース系繊維と接触させて実施することにより樹脂と繊維との複合化が可能となり、さらなる吸収速度の高速化と高保水力化が可能となる樹脂である。
次に、吸水性樹脂性能の評価について説明する。
吸水性樹脂1gが1秒間で60g以上の生理食塩水を捕獲する性能を発揮すると、非常に薄く漏れる事がない「薄型・軽量吸収体」として使用することが可能となる。しかし、現状のボルテックス法は、所定速度で撹拌される50g生理食塩水中に2gの吸水性樹脂を投入し、投入直後から液表面が平らになるまでの時間(ボルテックスが消える時間)を測定する方法であり、この方法では吸水性樹脂が生理食塩水中に均一に拡散されるだけで3〜4秒を有す。これは計算上の最高速でも8.3g/sec・g−吸水性樹脂となり、実質的に10g/sec・g−吸水性樹脂以上の速度を有する吸水性樹脂の吸収速度を測定する事はできない。そこで、新たな吸収速度の測定方法として次の方法にて60g/sec・g−吸水性樹脂以上の速度を有する吸水性樹脂の吸収速度を測定する事が可能となった。
新たな測定方法しては、まず、所定サイズの布間に所定量の樹脂を挟み込み、その布の中央部へ生理食塩水を一定時間で投下する。その際に、生理食塩水投下開始から布の端より生理食塩水が漏れ出すまでの時間を測定する。この測定方法により該樹脂の吸水速度を測定した結果、本発明の樹脂は、60g/sec・g−吸水性樹脂以上の性能が出ることが確認された。
(シート間挟み込み法の吸収速度の測定法)
25g/m目付のレーヨンスパンレース(国光製紙製)を縦15cm、横10cmの長方形に切り取る。切り取られたレーヨンスパンレース2枚の間に、吸水性樹脂0.75gを出来るだけ均質にばら撒いて配置し、吸収体を作成する。吸収体の短手方向へ生理食塩水が漏れ出さないように吸収体の長手方向に堰を設け、短手方向に漏れ出す生理食塩水を長手方向へ走らせるようにしておく。(図1参照)この吸収体の中央部に、25℃に調温された0.9%生理食塩水を1.5cmの高さから5g/secの速度で投下する。吸収体の長手方向のエッジから外側に液体が漏れでた時点で生理食塩水の投下を終了する。最終的に投下された生理食塩水量(g)を測り取る。投下時間(秒)は、投下された生理食塩水量を5g/secで割った値とする。(式1)に従って、シート挟み込み法の吸収速度を算出する。
(式1)
シート挟み込み法の吸収速度(g/sec・g−吸水性樹脂)=5(g/sec)/{0.75g×1(sec)/投下時間(sec)}

また、T−バッグ法の吸水倍率測定試験(測定法の詳細は下記。)においては、35g/g以上の性能が発現する吸水性樹脂となる。通常、吸水速度60g/sec・g−吸水性樹脂以上、保水力25g/g以上、吸収倍率35g/g以上という吸水性樹脂は確認できていない。本発明は、当該樹脂層の厚みを30μm以下とし、樹脂の液体接触時の呼応速度を上げることで体液の超高速吸収を可能にした。また、当該樹脂は樹脂部以外にも樹脂内部に中空状の空間を有することで空間保水するため高保水化が可能となった。
(T−バッグ法の吸収倍率測定試験)
本発明の吸水性樹脂の吸収倍率とは0.9%の生理食塩水を、吸水性樹脂に荷重がかからない状態において、自由に膨潤吸収できる量のことである。吸水性樹脂の吸収倍率は以下のような方法で測定する。
吸水性樹脂0.5gを不織布製のティーバッグ式袋(60×40mm)に均一に入れ、23℃の0.9%生理食塩水中に浸漬する。60分後にバッグを取り出し、ティーバッグの角を固定し斜めの状態で10分間吊るして水切り後、重量を測定する。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、重量を測定しブランクとする。(式2)に従って吸収倍率を算出する。測定は3回行い、平均値を吸収倍率とする。
(式2)
吸水性樹脂の吸収倍率(g/g)={(吸水後のティーバッグの重量)−(吸水後のブランクのティーバッグ重量)−(吸水性樹脂の重量)}/(吸水性樹脂の重量)
(保水力の測定試験)
前記T−バッグ法の吸収倍率測定試験実施直後の含水樹脂を包含したT−バッグを遠心分離機に入れ、250Gで3分間脱水し、重量を測定する。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、重量を測定しブランクとする。(式3)に従って吸水倍率を算出する。測定は3回行い、平均値を保水力とする。
(式3)
吸水性樹脂の保水力(g/g)={(吸水後遠心分離機で脱水後のティーバッグの重量)−(吸水後のブランクのティーバッグ重量)−(吸水性樹脂の重量)}/(吸水性樹脂の重量)
(ボルテックス法による吸収速度の測定法)
100ccのガラス製ビーカーに25℃に調整した0.9%の生理食塩水を50g測り取る。ここに30*8mmの回転子を入れ、回転計のついたマグネチックスターラーの上にのせ、600rpmで回転させる。非接触式回転計にて、回転数を確認する。吸水性樹脂を2.00g測り取り、ビーカーに投入する。吸水性樹脂投入後から、液表面が平らになるまでの時間を吸収時間とする。(式4)に従って吸収速度を算出する。
(式4)
吸水性樹脂のボルテックス法による吸収速度(g/sec・g−吸水性樹脂)=50g/(2g×吸収時間(秒))
本発明の吸水性樹脂は、吸収倍率、保水力、吸水速度のバランスが非常に優れた樹脂であり、当該樹脂を単独しても構わないが、上記性能の異なる樹脂と併用して使用することも好ましい方法である。
(嵩比重測定法)
乾燥状態の吸水性樹脂をふるいを用い室温下にて所定粒径へ分級する(粒径106〜300μm)。分級後の測定試料を十分に混合し、受器(2cc台付メスフラスコ:許容誤差+−0.015cc)中へ充填する。この時、受器中への試料の充填は、試料の体積変化がなくなるまで十分に振動を与え所定体積において細密状態となるよう充填する。この間隙を含んだ細密状態の測定試料重量を測定し所定体積で割った値を嵩比重とする。(式5)に従って嵩比重を算出する。
(式5)
嵩比重=(試料の入った受器の重量−受器の重量)/受器の体積
以下に本発明の具体的な実施例および比較例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
製造例1
(アクリルニトリルの加水分解によるアクリル酸アンモニウムの調製)
アクリルニトリルの加水分解は特願2003−101199号公報の実施例1の方法に従い、生体触媒を調製し、実施例4の方法に従って加水分解を行った。
(生体触媒の調製)
ニトリラーゼ活性を有するアシネトバクター エスピー AK226(FERM BP−08590)を塩化ナトリウム0.1%、リン酸2水素カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、硫酸鉄7水和物0.005%、硫酸マンガン5水和物0.005%、硫酸アンモニウム0.1%、硝酸カリウム0.1%(何れも重量%)を含む水溶液をpH=7に調製した培地で、栄養源としてアセトニトリル0.5重量%を添加し、30℃で好気的に培養した。これを30mMリン酸バッファー(pH=7.0)にて洗浄し菌体懸濁液(乾燥菌体15重量%)を得た。続いてアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、5%N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン水溶液、菌体懸濁液、30mMリン酸緩衝液の混合液に、2.5%過硫酸カリウム水溶液を混合して重量物を得た。最終的な組成は、乾燥菌体濃度3%、30mMリン酸バッファー(pH=7)52%、アクリルアミド18%、メチレンビスアクリルアミド1%、5%N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン水溶液12%、2.5%過硫酸カリウム水溶液14%(何れも重量%)とした。該重合物を約1×3×3mm角の粒子に裁断し固定化菌体を得た。この固定化菌体を30mMリン酸バッファー(pH=7)で洗浄し固定化菌体触媒(以下生体触媒)を調製した。
(生体触媒による加水分解)
内容積500mlの三角フラスコに蒸留水400gを入れ、これに前述の生体触媒1g(乾燥菌体0.03gに相当)を金網かごに入れたものを液中にセットし、ゴム栓で封をした後、恒温水槽に浸けて内温を20℃に保ち、スターラーで攪拌した。
アクリロニトリルを間欠的に2重量%分フィード(アクリロニトリル濃度は0.5重量%以上で管理)し、アクリル酸アンモニウムの蓄積反応を行ったところ30重量%まで蓄積できた。
得られたアクリル酸アンモニウム水溶液は無色透明であった。また、同一条件で反応液を5L作製し、UF膜(旭化成ペンシル型モジュールSIP−0013)による精製操作を行ったところ、目詰まり等の現象は見られず、全液を処理することができ、高純度30重量%アクリル酸アンモニウム水溶液を得た。この水溶液にメトキシキノン200ppm加え、遮光減圧下にて60重量%まで濃縮し重合に使用した。
実施例1
試薬アクリル酸(和光純薬製、試薬特級品)100gを200mlフラスコに量り取り、撹拌下、内温30℃以下に保つよう冷却しながら25重量%アンモニア水95.7gを滴下し、100モル%中和のアクリル酸アンモニウム水溶液195.7gを生成した。
重合装置としてあらかじめ系内を窒素置換した還流冷却管付きの2Lセパラブルフラスコに前述のアクリル酸アンモニウム水溶液、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.0087gを仕込み、十分に溶解させた後、エマルゲンLS−106(花王株式会社製、非イオン性界面活性剤)0.55gとシクロヘキサン11.29gを投入し、窒素フロー下にて撹拌を行い懸濁させて、水溶液中に油滴が安定に存在するエマルジョンを調製した。この時、重合装置内が65kPaとなるようコントロールし装置内の酸素を完全に脱気した。次に、500mlフラスコ中で界面活性剤ソルビタンモノステアレート2.24gをシクロヘキサン450g中へ溶解させ、窒素バブリングにより溶媒中の酸素脱気を十分に行った。その後、過硫酸アンモニウム0.0925gを蒸留水2gに溶解させ、重合装置内縣濁液中へ添加した。重合装置内を十分に攪拌しながら酸素脱気しておいたシクロヘキサン溶液を投入した。投入終了後60℃のオイルバスにより加温して重合を開始し、1時間重合した。その後重合装置内部圧力を窒素雰囲気下で常圧まで上昇させ、オイルバス温度を80℃まで上昇させ1時間重合し、含水ゲルを含んだエマルジョンを得た。次にエタノール20.0g、グリセリン1.15g、シクロヘキサン180gの混合溶液を80℃に保持したエマルジョン溶液中へゆっくり滴下し、粒子が適当な粒径となるように凝集させた。凝集粒子を取り出し、シクロヘキサンを用いて洗浄後、ろ過回収し100℃の真空乾燥を行った。この際粒子内部のシクロヘキサンが蒸発除去され、その結果中空状態となる。乾燥後の樹脂を粉砕・分級し粒径106〜300μmの粒子にて吸水性樹脂の分析を実施した。結果を表2に示した。
取り出した樹脂の一部の電子顕微鏡写真を図2に示した。
実施例2
実施例1で使用したアクリル酸アンモニウム195.7gを製造例1で製造したアクリル酸アンモニウム水溶液を1955.0gに変えた以外は実施例1と同じ条件で重合した。
生成した吸水性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例3
実施例1の乾燥条件を100℃の真空乾燥から、150℃窒素雰囲気下のイナートオーブンでの乾燥に変えた以外は実施例1と同じ条件で重合した。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例4
実施例1で使用したN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.0087gを0.0200gに、エマルゲンLS−106、0.55gを2.25gに、シクロヘキサン11.29gを44.68gに、そして、ソルビタンモノステアレート2.24gを11.22gに変えた以外は実施例1と同じ条件で重合した。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例5
実施例1のエマルゲンLS−106、0.55gをエマルゲンLS−110(花王株式会社製、非イオン性界面活性剤)1.16gに、シクロヘキサン11.3gを22.2gに、そして、ソルビタンモノステアレート2.24gを4.46gに変えた以外は実施例1と同じ条件で重合した。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例6
実施例1で使用したエマルゲンLS−106、0.55gを0.28gに、シクロヘキサン11.29gを5.56gに、そして、ソルビタンモノステアレート2.24gを1.68gに変えた以外は実施例1と同じ条件で重合した。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例7
実施例6で使用したN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.0087gを0.0050gに変え、燥条件を100℃の真空乾燥から、150℃窒素雰囲気下のイナートオーブンでの乾燥に変えた以外は実施例6と同じ条件で重合した。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例8
実施例1で使用したエタノール20.0g、グリセリン1.15g、シクロヘキサン180gの混合溶液をエタノール15.0g、グリセリン1.15g、シクロヘキサン45g、水酸化ナトリウム10.0g、蒸留水40.1gに変え凝集を行い、燥条件を100℃の真空乾燥から、150℃窒素雰囲気下のイナートオーブンでの乾燥に変えた以外は実施例1と同じ条件で重合した。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例9
実施例1で得られた吸水性樹脂をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下150℃で20分加熱処理した。次に水酸化ナトリウム0.19g、蒸留水1.09g、エマルゲンLS−110、0.16g、エタノール6.84g中へ溶解しこの混合溶液を、加熱処理後の樹脂3.15gへ添加し均一に分散させた後、常温で真空乾燥を行った。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例10
実施例4で得られた吸水性樹脂をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下150℃で20分加熱処理する。次に水酸化ナトリウム0.23g、蒸留水1.31g、エマルゲンLS−110、0.15g、エタノール7.24g中へ溶解しこの混合溶液を、加熱処理後の樹脂3.01gへ添加し均一に分散させた後、常温で真空乾燥を行った。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
実施例11
実施例5で得られた吸水性樹脂をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下150℃で20分加熱処理する。次に水酸化ナトリウム0.19g、蒸留水0.99g、エマルゲンLS−110、0.13gをエタノール5.78g中へ溶解しこの混合溶液を、加熱処理後の樹脂3.01gへ添加し均一に分散させた後、常温で真空乾燥を行った。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
比較例1
試薬アクリル酸100gに蒸留水10.14g添加後、活性炭(日本エンバイロケミカル株式会社製 白鷺WH2C)を7.25g添加して内温が30℃以下に保つように冷却をしながら1時間撹拌し重合禁止剤を活性炭にて吸着除去し、ろ過によりアクリル酸水溶液を回収する。このアクリル酸水溶液105.6gを200mlフラスコに量り取り、撹拌下、内温30℃以下に保つよう冷却しながら28重量%アンモニア水80.13gを滴下し、100モル%中和のアクリル酸アンモニウム水溶液185.7gを生成した。
重合装置としてあらかじめ系内を窒素置換した還流冷却管付きの2Lセパラブルフラスコにシクロヘキサン450gとソルビタンモノステアレート1.11gを添加し、完全に溶解させ油相を調合した後、重合装置内が65kPaとなるようコントロールし装置内の酸素を完全に脱気した。次に、前述アクリル酸アンモニウム水溶液にN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.0025gを添加し、十分に溶解させ窒素バブリングにより水溶液中の酸素脱気を十分に行った。
重合装置内シクロヘキサンを60℃に加温する。内温が設定温度まで到達したら、アクリル酸アンモニウム水溶液中に過硫酸アンモニウム0.0920gを蒸留水2gに溶解させた液を添加し均一になるよう撹拌する。その後、重合装置内へアクリル酸アンモニウム水溶液を投入し重合を開始し、そのまま2時間保持した。投入開始から2時間後、圧力を常圧まで解放し含水ゲルを含んだエマルジョンを得た。次に、エタノール8.5g、グリセリン1.06g、シクロヘキサン90gの混合液を80℃に保持したエマルジョン溶液エマルジョン中へゆっくり滴下し、粒子が適当な粒径となるように凝集させた。生成した含水ゲルはシクロヘキサンを用いて洗浄後、ろ過回収し100℃の真空乾燥を行い回収した。乾燥後の樹脂を粉砕・分級し粒径106〜300μmの粒子にて吸水性樹脂の分析を実施し、その分析結果を表2に示した。
取り出した樹脂の電子顕微鏡写真を図3に示した。
比較例2
比較例1で得られた吸水性樹脂をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下150℃で30分加熱処理する。次に水酸化ナトリウム0.16g、蒸留水0.98g、エマルゲンLS−110、0.18gをエタノール6.63g中へ溶解しこの混合溶液を、加熱処理後の樹脂3.01gへ添加し均一に分散させた後、常温で真空乾燥を行った。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
比較例3
アクリル酸は和光純薬製、試薬特級品を蒸留精製して使用した。試薬アクリル酸100gを水91.02gに溶解した。この水溶液を氷浴にて冷却し、液温30℃以下に保ちながら、25質量%のアンモニア水溶液117.94gを攪拌しながら徐々に加え40質量%のアクリル酸アンモニウム水溶液を得た(中和率100%)。
300mlセパラブルフラスコにこの40質量%アクリル酸アンモニウム水溶液を90g、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.0187g添加する。フラスコは30℃に液温が保たれるようにウォーターバスに浴す。水溶液を窒素ガスでバブリングすることにより脱気し、反応系中を窒素置換した。次に42質量%グリセリン水溶液をシリンジにて0.43g添加、よく攪拌した後にそれぞれ1gの水に溶かした30質量%過酸化水素水溶液 0.0917gとロンガリット 0.0415gを添加し重合を開始する。内部温度は30℃から開始して反応開始5分で100℃まで上昇する。その後、内部温度が70℃に保たれるように水浴にて3時間加熱する。その後、セパラフラスコよりゲルを取り出し粗解砕を行ってから100℃にてイナートオーブンを用いて4時間乾燥させる。乾燥終了後、ホモジナイザーにて粉砕した。この樹脂を分級し、粒径106〜300μmの樹脂を取り出し、イナートオーブンを用いて、180℃にて10分間加熱処理を行った。
生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
取り出した樹脂の電子顕微鏡写真を図4に示した。
比較例4
300mlセパラブルフラスコに40重量%アクリル酸アンモニウム水溶液を90g、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを0.0062g、シクロヘキサンを72.00g、花王株式会社製 非イオン性界面活性剤エマルゲンLS−110を1.1250g添加する。フラスコは30℃に液温が保たれるようにウォーターバスに浴しながらマグネティックスターラーを用いて20分間、400rpmで攪拌する。水溶液を窒素ガスでバブリングすることにより脱気し、反応系中を窒素置換した。次に42重量%グリセリン水溶液をシリンジにて0.86g添加、よく攪拌した後にそれぞれ1gの水に溶かした30重量%過酸化水素水溶液 0.0917gとロンガリット 0.0830gを添加し重合を開始する。内部温度は30℃から開始して反応開始10分で80℃まで上昇する。その後、内部温度が70℃に保たれるように水浴にて1時間加熱する。その後、セパラフラスコよりゲルを取り出し粗解砕を行ってから100℃にて窒素雰囲気のイナートオーブンを用いて乾燥させる。乾燥終了後、ホモジナイザーにて粉砕し、篩い分けにて100〜850μmを回収する。これをイナートオーブンにて窒素雰囲気下で30分間、130℃で加熱する。生成した吸収性樹脂の分析結果を表2に示した。
取り出した樹脂の電子顕微鏡写真を図5に示した。
比較例5
2006年8月3日に倉敷市の金光薬局で購入したユニ・チャーム株式会社製ライフリーさわやかパッド 快適タイプ15cc 尿吸収パッドに含まれている吸水性樹脂を取り出し、分析を実施した結果を表2に示した。
取り出した樹脂の電子顕微鏡写真を図6に示した。
以上の各比較例で得られた樹脂は、図3〜6に示すように、いずれも中空の無い樹脂である。なお、図5に示す比較例4で得られた樹脂は、内部に微細気泡を有するが、樹脂皮膜を表現できる状態ではない。また、比較例5の樹脂は超微粒子の凝集体である。

本発明を好ましい実施態様に関連して説明してきたが、当業者が容易に理解されるように本発明の原理及び範囲を逸脱することなく改変及び変更を実施し得ることを理解すべきである。従って、前記改変は本発明の範囲内で実施され得る。
本発明の吸水性樹脂は、吸水速度が速く、高い保水力を有するため、軽量・薄型でかつ高い吸収能力を発揮する吸収体の吸収層として使用することが出来る。その際、パルプなどの嵩高い素材を多量に使用しなくとも大量の液体を一度に投入しても漏れることの無い吸収体が可能となる。
シート間挟み込み法の吸収速度の測定法の装置概要図 内部に空間を有している中空の吸水性樹脂の電子顕微鏡写真 球状粒子凝集体の吸水性樹脂の電子顕微鏡写真 破砕状の吸水性樹脂の電子顕微鏡写真 多孔質破砕状の吸水性樹脂の電子顕微鏡写真 ユニ・チャーム社製尿吸収パッド中の吸水性樹脂の電子顕微鏡写真

Claims (4)

  1. 内部に空間を有している中空の粒状吸水性樹脂であって、該吸水性樹脂のポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基中和塩単位のうち10〜80mol%アンモニウム塩であり、樹脂の皮膜の厚みが1〜30μmであり、嵩比重が0.60以下であり、中空の粒状吸水樹脂の平均粒径が、5〜1000μmであることを特徴とする粒状吸水性樹脂。
  2. 吸水性樹脂のポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基含有単位の含有率が50mol%以上である請求項1に記載の粒状吸水性樹脂。
  3. ポリマー分子鎖中におけるカルボキシル基含有単位の50%以上が中和塩である請求項に記載の粒状吸水性樹脂。
  4. 吸水性樹脂がポリアクリル酸である請求項1−のいずれか一項に記載の粒状吸水性樹脂。
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