JP5135801B2 - 電気二重層キャパシタ用電極材、その製造方法及び電気二重層キャパシタ - Google Patents

電気二重層キャパシタ用電極材、その製造方法及び電気二重層キャパシタ Download PDF

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Description

本発明は、電気二重層キャパシタ用電極材、その製造方法及び電気二重層キャパシタに関する。
電気二重層キャパシタは、ファラッド級の大容量を有し、充放電サイクル特性にも優れることから、電気機器のバックアップ電源、車載バッテリー等の用途に使用されている。
電気二重層キャパシタは、その内部に2つの電極を備えている。これらの2つの電極がセパレータにより分離され、それぞれ陽極および陰極として作用するよう構成されている。このような電気二重層キャパシタの電極には、微細な細孔を有する活性炭が用いられている。活性炭からなる電気二重層キャパシタの電極には、溶媒と電解質とからなる電解液が含浸されている。電解液中で溶媒和している電解質イオンが活性炭の細孔中に吸着集合することにより、電気二重層キャパシタの陽極および陰極が構成される。
このような電気二重層キャパシタにおける活性炭は、溶媒や電解質イオンが電気化学的に作用するための場を提供するものであると考えることができる。したがって、その物性や微細構造によって、電気二重層キャパシタの性能が大きく左右される。
電気二重層キャパシタの性能を向上させるためには、活性炭の微細構造を改良することが重要であるため、多くの試みがなされている。活性炭の比表面積を増加させることにより、吸着される電解質イオンの量を増加させ、これにより電極密度や静電容量を向上させようとする試みが主としてなされているが、近年、車載用等さまざまな分野で用いられるようになった電気二重層キャパシタには使用温度などの環境に左右されない、これまで以上の電極材高出力化が求められている。キャパシタ用電極材を高出力化するためには、用いられる活性炭のメソポアを発達させるなど、細孔径を拡大させる手法を用いるのが一般的である。しかしながら、細孔径を大きくすると必然的にかさ密度の低下を招き、結果的に体積容量が低下するという問題があった。
このように従来は活性炭の性能向上のため、賦活の条件を制御し、比表面積及び細孔径の最適化を図ることに主眼が置かれていた。しかしながら電気二重層キャパシタの設計には充放電前の電極材の設計のみでは、その性能発現は不十分である。キャパシタの電極材には充電時に構造変化を起こすものが存在し、それによって充電後の細孔構造が充電前のそれと変化するためである。これらの事実は、ソフト系カーボンを前駆体とする材料では起こることが知られおり、ソフト系カーボン電極材の充放電時の膨張収縮の問題点について検討されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
特開2002−265215号公報 特開2004−175660号公報
しかしながら、ハード系カーボンを前駆体とする電極材については、これまでこのような報告がなされた例はない。従来より、ハード系カーボンは炭素結晶子が等方的に並んでおり、十分な固さを持っているため充放電による構造変化は起こらないものと考えられていた。しかしながら発明者らは、このハード系カーボンを用いた電極材においても充放電時に構造変化を起こしており、これらがキャパシタの出力特性等に悪影響を与えることを突き止めた。
本発明は、使用される温度領域によらず高い出力特性を有する電気二重層キャパシタ用電極材、その製造方法及び電気二重層キャパシタを提供する。
発明者らは、鋭意検討の結果、電気二重層キャパシタ用として種々の電極材を作製し検討を行ってきた結果、充放電によって構造変化が起こりにくくすることで、使用される温度領域によらず高出力特性な電気二重層キャパシタに好適な電極材を得ることができることを見出し、本発明に至った。
具体的には下記の[1]〜[6]に記載の事項を特徴とするものである。
[1]ノボラック型フェノール樹脂を硬化剤によって硬化処理した硬化物を熱処理して炭化物を得ることと、前記炭化物をアルカリ化合物共存下で加熱することと、さらに不活性雰囲気下で熱処理することとを有する製造方法で得られ、電気二重層キャパシタ用電極材の充電前後において、ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の変化率が5%以下である電気二重層キャパシタ用電極材。
[2]2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率が5%以下である[1]記載の電気二重層キャパシタ用電極材。
[3]充電前後での電極材層の厚さの変化率が5%以下である[1]又は[2]に記載の電気二重層キャパシタ用電極材。
[4]比表面積が1800〜2400m/g、細孔容量0.7〜1.2ml/g、平均細孔径が1.60〜1.80nm、表面官能基濃度が0.4〜0.7mmol/g、平均粒径が1〜20μmであり、ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)が、65〜80cm−1である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ用電極材。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ用電極材の製造方法であって、ノボラック型フェノール樹脂を硬化剤によって硬化処理した硬化物を熱処理して炭化物を得ることと、前記炭化物をアルカリ化合物共存下に加熱処理することと、さらに不活性雰囲気下で熱処理することと、を有する電気二重層キャパシタ用電極材の製造方法。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の電気二重層キャパシタ用電極材を電極材として用いてなる電気二重層キャパシタ。
本発明によれば、使用される温度領域によらず高い出力特性を有する電気二重層キャパシタ用電極材、その製造方法及び電気二重層キャパシタを得ることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電気二重層キャパシタ用電極材は、ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の充電前後の変化率が5%以下であることを特徴とする。ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)は、炭素結晶子の結晶構造をあらわしており、充電前後でのこの値の変化率を見ることで、充電の前後で炭素の微細構造がどの程度変化しているのかを判断することが可能である。
ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の充電前後の変化率は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。該変化率が5%を超えると、充電による電極材の構造変化が大きくなり、低温での出力特性が低下する傾向にある。該変化率が小さくなるほど、電極材の構造変化が少ないものとなる。
なお、本発明におけるラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の変化率は、通常、下記の方法で測定するものとする。
[ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の充電前後の変化率の測定方法]
(a)電気二重層キャパシタ用電極材、CMC(カルボキシメチルセルロース)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を100:4:3の割合で混合し、電気二重層キャパシタ用電極材と等量の水を加えスラリを作製する。
(b)膜厚20μmのアルミエッチング箔にアプリケーターによってスラリを塗布し、塗布電極を作製する。
(c)この塗布電極を乾燥機にて50℃1時間、80℃1時間、100℃1時間で乾燥する。
(d)乾燥した塗布電極を直径15mmの大きさに打ち抜き測定用電極を作製する。
(e)測定用電極は正極用及び負極用2枚用意するが、正極及び負極とも同じ電極材を使用し、正極における電極材と負極における電極材の重量比(正極電極材/負極電極材)が1.4、正極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミエッチング箔の厚みは含む)が100μm、負極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミ箔の厚みは含む)が70μmになるようにする。また、作製する電極のプレス処理はしないものとする。
(f)正極、負極、紙セパレータ(例えば、宝泉製 TF4050(19φ))、コインセル上下蓋(例えば、宝泉製 2016型コインセル)、厚さ400μmアルミスペーサーを真空乾燥機にて120℃3時間の条件で真空乾燥する。
(g)乾燥後、アルゴン置換グローブボックス内で、上記(f)の材料を用いてコイン型電気二重層キャパシタを作製する。この際、乾燥した電極(正極、負極)及び紙セパレータはサイドボックス内で10torr以下の減圧度で10分間減圧脱気処理を行うものとする。電解液としては、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1.4Mプロピオンカーボネート溶液を1コイン当たり0.5ml使用する。このようにして作製した電気二重層キャパシタの電極を充電前の電極とする。
(h)作製した電気二重層キャパシタを、負極電極材基準で40mA/gの充電電流、3.0Vの印加電圧を充電条件CC/CV(定電流/定電圧)で24時間充電する。この状態の電気二重層キャパシタの電極を充電後の電極とする。
(i)上記に従い作製した充電前の電極及び充電後の電極(ここで測定する電極は負極)をコインセル(キャパシタ)から取り出し、電解液を充分に洗い流し洗浄し、室温で乾燥させる。ここで、洗浄はプロピレンカーボネートで2回、アセトンで1回行う。
(j)レーザーラマン分光光度計(励起光:アルゴンレーザ514.5nm)によって電極材のラマンスペクトルを波長範囲830cm−1〜1940cm−1で測定する。電極材はアルミエッチング箔からははずさず、電極のまま測定する。
(k)得られたスペクトルについて解析ソフト(例えばspectra manager(日本分光製))でフィッティングを行い、成分(a)(ピーク:1595cm−1 半値幅75cm−1)、成分(b)(ピーク:1510cm−1 半値幅:65cm−1)、成分(c)(ピーク:1355cm−1 半値幅:175cm−1)、成分(d)(ピーク:1200cm−1 半値幅:200cm−1)の4成分を仮設定し、4成分フィッティングを行い、1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)を算出する。
(l)同様の測定を3回繰り返しその平均値を本発明におけるラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)とし、充電前後での半値幅(Δν1)の変化率を下記式より算出し、発明におけるラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の充電前後の変化率とする。
Figure 0005135801
本発明の電気二重層キャパシタ用電極材は、2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率が5%以下であることが好ましく、4%で以下あることがより好ましく、3%であることがさらに好ましい。2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率は、充電電圧の変化による電極材の構造変化を示すと考えられ、該静電容量の変化率が5%を超えると、低温での出力特性が低下する傾向にある。
なお、本発明における2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率は、通常、下記の測定条件及び測定方法で測定するものとする。
[2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率の測定方法]
(a)電気二重層キャパシタ用電極材、導電助剤(カーボンブラック)、CMC(カルボキシメチルセルロース)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を100:10:4:3の割合で混合し、電気二重層キャパシタ用電極材と等量の水を加えスラリを作製する。
(b)膜厚20μmのアルミエッチング箔にアプリケーターによってスラリを塗布し、塗布電極を作製する。
(c)この塗布電極を乾燥機にて50℃1時間、80℃1時間、100℃1時間で乾燥する。
(d)乾燥した塗布電極を直径15mmの大きさに打ち抜き測定用電極を作製する。
(e)測定用電極は正極用及び負極用2枚用意するが、正極及び負極とも同じ電極材を使用し、正極における電極材と負極における電極材の重量比(正極電極材/負極電極材)が1.4、正極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミ箔の厚みは含む)が100μm、負極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミ箔の厚みは含む)が70μmになるようにする。また、作製する電極のプレス処理はしないものとする。
(f)正極、負極、紙セパレータ(例えば、宝泉製 TF4050(19φ))、コインセル上下蓋(例えば、宝泉製 2016型コインセル)、厚さ400μmアルミスペーサーを真空乾燥機にて120℃3時間の条件で真空乾燥する。
(g)乾燥後、アルゴン置換グローブボックス内で、上記(f)の材料を用いてコイン型電気二重層キャパシタを作製する。この際、乾燥した電極(正極、負極)及び紙セパレータはサイドボックス内で10torr以下の減圧度で10分間減圧脱気処理を行うものとする。電解液としては、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1.4Mプロピオンカーボネート溶液を1コイン当たり0.5ml使用する。
(h)作製した電気二重層キャパシタを、負極電極材基準で40mA/gの充電電流、2.7V又は3.0Vの印加電圧を充電条件CC/CV(定電流/定電圧)で24時間充電する。
(i)その後、負極電極材基準で40mA/gの放電電流、放電条件CC(定電流)で放電する。
(j)静電容量は、前記記載の充放電試験で得られた放電曲線の2.3V(電圧:V1、時間:T1(秒))から1.7V(電圧:V2、時間:T2(秒))の傾きから下記式に従い算出する。
Figure 0005135801
(G:電気二重層キャパシタ用電極材量(g))
(k)上記により算出された2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率を下記式により算出する。
Figure 0005135801
また、本発明の電気二重層キャパシタ用電極材は、充電前後での電極材層の厚さの変化率が5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。該変化率が大きくなると電極材が大きく構造変化していると考えられ、該変化率が5%を超えると、低温時の出力特性の悪化を招く傾向があり、セルに余分な圧力がかかり、圧力に耐えうるセル設計を必要とする等、コスト上昇等の要因となる傾向がある。
なお、本発明における充電前後での電極材層の厚さの変化率は、通常、下記の測定条件及び測定方法で測定するものとする。
[充電前後での電極材層の厚さの変化率の測定方法]
(a)電気二重層キャパシタ用電極材、CMC(カルボキシメチルセルロース)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を100:4:3の割合で混合し、電気二重層キャパシタ用電極材と等量の水を加えスラリを作製する。
(b)膜厚20μmのアルミエッチング箔にアプリケーターによってスラリを塗布し、塗布電極を作製する。
(c)この塗布電極を乾燥機にて50℃1時間、80℃1時間、100℃1時間で乾燥する。
(d)乾燥した塗布電極を直径15mmの大きさに打ち抜き測定用電極を作製する。
(e)測定用電極は正極用及び負極用2枚用意するが、正極及び負極とも同じ電極材を使用し、正極における電極材と負極における電極材の重量比(正極電極材/負極電極材)が1.4、正極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミ箔の厚みは含む)が100μm、負極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミ箔の厚みは含む)が70μmになるようにする。また、作製する電極のプレス処理はしないものとする。
(f)正極、負極、紙セパレータ(例えば、宝泉製 TF4050(19φ))、コインセル上下蓋(例えば、宝泉製 2016型コインセル)、厚さ400μmアルミスペーサーを真空乾燥機にて120℃3時間の条件で真空乾燥する。
(g)乾燥後、アルゴン置換グローブボックス内で、上記(f)の材料を用いてコイン型電気二重層キャパシタを作製する。この際、乾燥した電極(正極、負極)及び紙セパレータはサイドボックス内で10torr以下の減圧度で10分間減圧脱気処理を行うものとする。電解液としては、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1.4Mプロピオンカーボネート溶液を1コイン当たり0.5ml使用する。このようにして作製した電気二重層キャパシタの電極を充電前の電極とする。
(h)作製した電気二重層キャパシタを、負極電極材基準で40mA/gの充電電流、3.0Vの印加電圧を充電条件CC/CV(定電流/定電圧)で24時間充電する。この状態の電気二重層キャパシタの電極を充電後の電極とする。
(i)マイクロメータ(例えば、Mitutoyo製 CLM1−15QM)を用いて、充電前の電極及び充電後の電極の厚さを測定する。二回測定の平均値を用い下記式より電極厚さの変化率を算出する。
Figure 0005135801
また、本発明における電気二重層キャパシタ用電極材は、比表面積が1800〜2600m/gであることが好ましく、1900〜2550m/gであることがより好ましく、2000〜2500m/gであることがさらに好ましい。比表面積が1800m/g未満であると、十分な静電容量が得られない傾向があり、2600m/gを超えるとかさ密度が低くなり、キャパシタの体積容量が低下する傾向がある。なお、本発明における比表面積は窒素ガス吸着測定によって測定することが可能である。
また、本発明における電気二重層キャパシタ用電極材は、細孔容量が0.7〜1.5ml/g、であることが好ましく、0.8〜1.4ml/gであることがより好ましく、0.9〜1.3ml/gであることがさらに好ましい。細孔容量が0.7ml/g未満であると、レート特性及び出力特性が低下する傾向があり、1.5ml/gを超えると(体積容量が低下する)な傾向がある。なお、本発明における細孔容量は窒素ガス吸着測定によって測定することが可能である。
また、本発明における電気二重層キャパシタ用電極材は、平均細孔径が1.60〜2.00nmであることが好ましく、1.70〜1.90nmであることがより好ましく、1.75〜1.85nmであることがさらに好ましい。平均細孔径が1.60nm未満であると、細孔表面に吸着するイオンの拡散が不充分であるため、レート特性及び出力特性が低下する傾向があり、2.00nmを超えると余分な細孔幅のため、体積容量が低下する傾向がある。なお、本発明における平均細孔径は窒素ガス吸着測定によって測定することが可能である。
また、本発明における電気二重層キャパシタ用電極材は、表面官能基濃度が0.1〜1.0mmol/gであることが好ましく、0.1〜0.8mmol/gであることがより好ましく、0.1〜0.6mmol/gであることがさらに好ましい。表面官能基濃度が0.1mmol/g未満であると、水などの極性溶媒に対する濡れ性が著しく低下し、電極スラリの作製に支障をきたす傾向があり、1.0mmol/gを超えると充放電時の分解反応により寿命特性に悪影響を及ぼす傾向がある。なお、本発明における表面官能基濃度は(Bohem法)によって測定することが可能である。
また、本発明における電気二重層キャパシタ用電極材は、平均粒径が1〜20μmであることが好ましく、1〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。平均粒径が1μm未満であると、電極材の取り扱い性が低下する傾向があり、自己放電特性が悪化する傾向があり、20μmを超えるとレート特性及び出力特性が低下する傾向がある。なお、本発明における平均粒径はレーザー回折粒度測定によって測定することが可能である。
また、ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)が、65〜80であることが好ましく、65〜78であることがより好ましく、65〜75であることがさらに好ましい。該半値幅(Δν1)が65未満であると、静電容量が低下する傾向があり、80を超えると出力特性が低下する傾向がある。なお、本発明におけるラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)はレーザーラマン分光光度計によって測定することが可能である。
本発明の電気二重層キャパシタ用電極材は、例えば、フェノール樹脂を原料として、不活性雰囲気下で炭化し、その後賦活することによって得ることが可能である。原料としてフェノール樹脂を用いる場合はノボラック型フェノール樹脂を用いることが好ましく、ノボラック型フェノール樹脂を、硬化剤によって硬化処理を施すことが好ましい。ノボラック樹脂を硬化させた原料は、充電時に構造変化をより抑制し、出力特性の悪化をも抑制することが可能である点で好ましい。
原料となるノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としては特に制限はないが、具体的にはヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド供給源が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。また、硬化の手法としてはノボラック型フェノール樹脂を溶融させ硬化剤と混合する溶融硬化が一般的であるが、ノボラック型フェノール樹脂を水溶液中に縣濁させた後硬化剤を添加し、水溶液中で熱処理する縣濁硬化法、また、乾燥機等の加熱処理装置を用いた加熱硬化等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
硬化した樹脂は粉砕して用いられることが好ましい。粉砕については、通常の粉砕機が用いられるが、具体的にはカッターミル、ピンミル、ジェットミル等によって粉砕することが挙げられる。ここれらは、単独行ってもよく又は2種以上の方法を組み合わせて行ってもよい。
硬化し、粉砕処理を施した樹脂は熱処理によって炭化することが好ましい。炭化については、通常不活性雰囲気下500〜1000℃の範囲で行うのが好ましく、600〜800℃で行うのがより好ましく、650〜750℃で行うことがさらに好ましい。炭化温度が500℃未満であると、炭素マトリクスの形成が不充分になり、後の賦活処理時の収率が低下する傾向がある。炭化温度が1000℃を超えると、炭素マトリクスの形成が進行しすぎるため、後の賦活処理時に細孔形成が抑制される傾向があり、そのため、賦活の際、高い処理温度または多量のアルカリ化合物が必要となる傾向がある。
また、得られた炭化物はさらに目的平均粒径まで粉砕することが好ましい。粉砕機はピンミル、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル等挙げられる。これらは、単独行ってもよく又は2種以上の方法を組み合わせて行ってもよい。
樹脂の炭化後、アルカリ賦活を行うことが好ましい。アルカリ賦活は、通常の方法により行うことができる。アルカリ賦活は下記のようにして行うことが好ましい。炭化物と水酸化カリウムをプラネタリミキサ等の混合機を用い混合する。この混合物をNi製容器に入れ、不活性雰囲気下で700〜900℃の範囲で0.5〜3時間熱処理を行う。この際の賦活温度は750〜850℃がより好ましく、770〜830℃がさらに好ましい。また、賦活時間は1〜2時間がより好ましい。賦活温度が700℃未満であると賦活が進みにくく、所望の比表面積を持つ活性炭が得られない傾向があり、賦活温度が900℃を超えると、Ni製容器中のアルカリ化合物が容器を腐食する傾向がある。また、賦活時間が0.5時間未満であると賦活が充分にいきわたらない傾向があり、所望の比表面積を持つ電極材が得られない傾向がある。賦活時間が3時間を超えて行っても細孔形成にほとんど変化はない傾向がある。
賦活後は、アルカリ化合物またはNi容器から混入した金属不純物を、酸により溶解抽出する。この方法については特に限定されるものではないが、例えば、賦活後の炭素・アルカリ混合物を4重量%の塩酸中で80℃以上に加熱しながら攪拌し、金属不純物を溶解させる。その後酸溶液をろ過し、再度、同濃度塩酸を用いて前記工程を3〜4回繰り返す。次いで純水を用いて前記同様の工程を3回以上行い、電極材に付着した塩酸を除去することにより、高純度な電極材が得られる。
精製した電極材は表面の酸性官能基を低減させるため、不活性雰囲気下で熱処理を行うことが好ましい。該熱処理温度は500〜1000℃が好ましく、600〜900℃がより好ましい。500℃未満の温度では表面官能基が充分低減できない傾向があり、寿命特性が低下する傾向があり、また、不要なガス発生がしやすい傾向がある。また、熱処理温度が1000℃を超えると、比表面積や細孔容量などが低下する傾向があり、静電容量が低下する傾向がある。
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
攪拌装置、還流冷却器、及び温度系を備えた3Lの三口フラスコ中にフェノール282g、38%ホルムアルデヒド水溶液146g、1M塩酸30gを入れ、100℃まで加熱し、一時間保持した。その後150℃で4時間加熱還流し、180℃で系内の残存モノマと水を除去した。残存モノマは3%以下となることをGPCで確認した。得られたノボラック樹脂を100g秤量しヘキサミン10gとともに粉砕・混合した。混合物をホットプレート上のポリテトラフルオロエチレンバットで溶融混合し、フェノール樹脂の半硬化物を得た。得られたフェノール樹脂半硬化物を熱風乾燥機で180℃、4hアフターキュアを行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から700℃まで昇温した。700℃で2時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は4μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.5倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温から800℃まで昇温し、2時間保持し賦活を行った。温度が室温(25℃)に戻ったらサンプルを取り出し、前述の方法で金属不純物を除去し、再び熱処理を800℃、1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
(実施例2)
攪拌装置、還流冷却器、及び温度系を備えた2Lの三口フラスコ中にフェノール198g、p−t−ブチルフェノール135g、38%ホルムアルデヒド水溶液146g、1M塩酸30gを入れ、100℃まで加熱し、一時間保持した。その後150℃で4時間加熱還流し、180℃で系内の残存モノマと水を除去した。残存モノマは3%以下となることをGPCで確認した。得られたノボラック樹脂を100g秤量しヘキサミン10gとともに粉砕・混合した。混合物をホットプレート上のポリテトラフルオロエチレンバットで溶融混合し、フェノール樹脂の半硬化物を得た。得られたフェノール樹脂半硬化物を熱風乾燥機で180℃、4hアフターキュアを行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から700℃まで昇温した。700℃で2時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は4μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.4倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から800℃まで昇温し、2時間保持し賦活を行った。温度が室温(25℃)に戻ったらサンプルを取り出し金属不純物を除去し、再び熱処理を800℃、1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
(実施例3)
攪拌装置、還流冷却器、及び温度系を備えた2Lの三口フラスコ中にm−クレゾール324g、38%ホルムアルデヒド水溶液146g、1M塩酸30gを入れ、100℃まで加熱し、一時間保持した。その後150℃で4時間加熱還流し、180℃で系内の残存モノマと水を除去した。残存モノマは3%以下となることをGPCで確認した。得られたノボラック樹脂を100g秤量しヘキサミン10gとともに粉砕・混合した。混合物をホットプレート上のポリテトラフルオロエチレンバットで溶融混合し、フェノール樹脂の半硬化物を得た。得られたフェノール樹脂半硬化物を熱風乾燥機で180℃、4hアフターキュアを行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から700℃まで昇温した。700℃で2時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は6μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.8倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から800℃まで昇温し、2時間保持し賦活を行った。温度が室温に戻ったらサンプルを取り出し金属不純物を除去し、再び熱処理を800℃1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
(実施例4)
フェノール樹脂(日立化成工業株式会社製ノボラック型フェノール樹脂J3)を100g秤量しヘキサミン10gとともに粉砕・混合した。混合物をホットプレート上のポリテトラフルオロエチレンバットで溶融混合し、フェノール樹脂の半硬化物を得た。得られたフェノール樹脂半硬化物を熱風乾燥機で180℃、4hアフターキュアを行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から700℃まで昇温した。700℃で2時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は6μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.5倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から800℃まで昇温し、1時間保持し賦活を行った。温度が室温(25℃)に戻ったらサンプルを取り出し金属不純物を除去し再び熱処理を800℃、1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
(比較例1)
フェノール樹脂溶液(日立化成工業株式会社製レゾール型フェノール樹脂VP801)を熱風乾燥機で180℃、4hで硬化処理を行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から600℃まで昇温した。600℃で5時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は5μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.15倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温から800℃まで昇温し、1時間保持し賦活を行った。温度が室温(25℃)に戻ったらサンプルを取り出し金属不純物を除去し再び熱処理を800℃1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
(比較例2)
攪拌装置、還流冷却器、及び温度系を備えた3Lの三口フラスコ中にフェノール282g、38%ホルムアルデヒド水溶液146g、1M塩酸30gを入れ、100℃まで加熱し、1時間保持した。その後150℃で4時間加熱還流し、180℃で系内の残存モノマと水を除去した。残存モノマは3%以下となることをGPCで確認した。得られたノボラック樹脂を100g秤量しヘキサミン10gとともに粉砕・混合した。混合物をホットプレート上のポリテトラフルオロエチレンバットで溶融混合し、フェノール樹脂の半硬化物を得た。得られたフェノール樹脂半硬化物を熱風乾燥機で180℃、4hアフターキュアを行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から600℃まで昇温した。600℃で5時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は5μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.15倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から800℃まで昇温し、1時間保持し賦活を行った。温度が室温(25℃)に戻ったらサンプルを取り出し金属不純物を除去し再び熱処理を800℃、1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
(比較例3)
フェノール樹脂(日立化成工業株式会社製ノボラック型フェノール樹脂HP190R)を100g秤量し、熱風乾燥機で180℃、4hアフターキュアを行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から600℃まで昇温した。600℃で5時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は5μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.15倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から800℃まで昇温し、1時間保持し賦活を行った。温度が室温(25℃)に戻ったらサンプルを取り出し金属不純物を除去し再び熱処理を800℃、1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
(比較例4)
フェノール樹脂溶液(日立化成工業株式会社製レゾール型フェノール樹脂VP801)を熱風乾燥機で180℃4hで硬化処理を行い樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物をカッターミルで100μm程度に粉砕し、雰囲気焼成炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から700℃まで昇温した。700℃で2時間保持しフェノール樹脂炭化物を作製した。得られた炭化物は5μmまで粉砕し、これと炭化物の重量に対し2.2倍量の水酸化カリウムと混合し、ボックス炉にて窒素気流中、300ml/minの流量、室温(25℃)から800℃まで昇温し、1時間保持し賦活を行った。温度が室温(25℃)に戻ったらサンプルを取り出し金属不純物を水洗し再び加熱処理を800℃、1時間不活性雰囲気下で行い活性炭を得た。
以上、実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた電気二重層キャパシタ用電極材の比表面積、平均細孔径、細孔容積、平均粒径、電気二重層キャパシタ用電極材のラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)を下記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
[比表面積の測定]
活性炭の細孔特性は、ガス吸着測定装置(島津製作所製 ASAP2010)を用いて評価した。所定のサンプルチューブに電気二重層キャパシタ用電極材を0.1g秤量し、ガス吸着測定装置の乾燥ポートにセットし、200℃2時間減圧乾燥を行った。乾燥したサンプルチューブを測定ポートにセットし、窒素ガスを吸着質として用い、77Kにおいて相対圧0.00001〜1.0の範囲で窒素吸脱着測定を行う。測定プログラムの所定の場所に電気二重層キャパシタ用電極材秤量値を入力し、得られた吸着等温線から、相対圧0.001〜0.1の範囲でBET法を用いて解析し、得られた値を比表面積として算出した。
[細孔容積の測定]
前述の比表面積測定で得られた吸着等温線において、相対圧が最も1.0に近い測定点の吸着量を細孔容積として算出した。
[平均細孔径の測定]
平均細孔径は、比表面積と細孔容量から算出した。関係式は以下の通りである。
Figure 0005135801
[平均粒径の測定]
平均粒子径はレーザー回折粒度測定装置(島津製作所製SALD−3000J)を用いて測定した。測定サンプルを0.1g秤量し、粒度測定装置のサンプル測定部に投入した。手順に従い測定を行い、得られた粒度分布の50%D値を平均粒子径とした。
[電気二重層キャパシタ用電極材のラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)]
レーザーラマン分光光度計(日本分光製NRS−1000型 励起光:アルゴンレーザ514.5nm)によって電気二重層キャパシタ用電極材のラマンスペクトルを波長範囲830cm−1〜1940cm−1で測定した。得られたスペクトルについて解析ソフト(日本分光製 spectra manager)でフィッティングを行い、成分(a)(ピーク:1595cm−1 半値幅75cm−1)、成分(b)(ピーク:1510cm−1 半値幅:65cm−1)、成分(c)(ピーク:1355cm−1 半値幅:175cm−1)、成分(d)(ピーク:1200cm−1 半値幅:200cm−1)の4成分を仮設定し、4成分フィッティングを行い、1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)を算出した。同様の測定を3回繰り返しその平均値を目的の値とした。
また、ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の充電前後の変化率、2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率、充電前後での電極材層の厚さの変化率を測定した。その結果を、表2に示した。
[ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の充電前後の変化率]
上述の、[ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の充電前後の変化率の測定方法]に記載の事項に従い測定を行った。その際、紙セパレータは宝泉製 TF4050(19φ)を、コインセル上下蓋は宝泉製 2016型コインセルを用いた。また、レーザーラマン分光光度計は日本分光製NRS−1000型を用い、得られたスペクトルの解析は日本分光製spectra managerで行った。
[2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率]
上述の、[2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率の測定方法]に記載の事項に従い測定を行った。その際、紙セパレータは宝泉製 TF4050(19φ)を、コインセル上下蓋は宝泉製 2016型コインセルを用いた。
[充電前後での電極材層の厚さの変化率]
上述の、[充電前後での電極材層の厚さの変化率の測定方法]に記載の事項に従い測定を行った。その際、紙セパレータは宝泉製 TF4050(19φ)を、コインセル上下蓋は宝泉製 2016型コインセルを用いた。
また、実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた電気二重層キャパシタ用電極材を用いて下記の方法により電気二重層キャパシタを作製し、25℃および−30℃における内部抵抗を測定し出力特性の評価を行った。結果を表3に示す。
[電気二重層キャパシタの製造]
(a)電気二重層キャパシタ用電極材、導電助剤(カーボンブラック)、CMC(カルボキシメチルセルロース)及びPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を100:10:4:3の割合で混合し、電気二重層キャパシタ用電極材と等量の水を加えスラリを作製した。
(b)膜厚20μmのアルミエッチング箔にアプリケーターによってスラリを塗布し、塗布電極を作製した。
(c)この塗布電極を乾燥機にて50℃1時間、80℃1時間、100℃1時間で乾燥した。
(d)乾燥した塗布電極を直径15mmの大きさに打ち抜き測定用電極を作製した。
(e)正極用及び負極用2枚用意したが、正極及び負極とも同じ電極材を使用し、正極における電極材と負極における電極材の重量比(正極電極材/負極電極材)が1、正極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミ箔の厚みは含む)が70μm、負極の膜厚(乾燥後の塗布層の厚さ、アルミ箔の厚みは含む)が70μmになるようにした。また、作製する電極のプレス処理はしなかった。
(f)正極、負極、紙セパレータ(宝泉製 TF4050(19φ))、コインセル上下蓋(宝泉製 2016型コインセル)、厚さ400μmアルミスペーサーを真空乾燥機にて120℃3時間の条件で真空乾燥した。
(g)乾燥後、アルゴン置換グローブボックス内で、上記(f)の材料を用いてコイン型電気二重層キャパシタを作製した。この際、乾燥した電極(正極、負極)及び紙セパレータはサイドボックス内で10torr以下の減圧度で10分間減圧脱気処理を行った。電解液としては、テトラエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1.4Mプロピオンカーボネート溶液を1コインセル当たり0.5ml使用した。
[25℃、−30℃出力特性の評価]
上記で作製した電気二重層キャパシタを用いて、25℃、−30℃における出力特性を下記のように測定した。
(a)作製した電気二重層キャパシタを、負極電極材基準で40mA/gの充電電流、2.7Vの印加電圧を充電条件CC/CV(定電流/定電圧)で24時間充電した。
(b)その後、負極電極材基準で40mA/gの放電電流、放電条件CC(定電流)で放電した。
(c)放電開始後10〜40秒の放電カーブについて近似直線を引き、その切片値と満充電電圧の差分を直流抵抗による電圧降下として見積り、直流抵抗値を算出した。同サンプルにつき2回の測定を行い、平均値を目的の値とした。
Figure 0005135801
Figure 0005135801
Figure 0005135801
以上より、実施例1〜4は、比較例1〜4と比較して、特に低温時(−30℃)での抵抗値に優れ、使用される温度領域によらず高い出力特性を有し、かつ、高い体積当りの静電容量が得られることがわかる。
ラマンスペクトルによる1580cm−1付近と1360cm−1付近のピークをGバンドおよびDバンドとして半値幅を算出するための方法を示す図である。

Claims (6)

  1. ノボラック型フェノール樹脂を硬化剤によって硬化処理した硬化物を熱処理して炭化物を得ることと、前記炭化物をアルカリ化合物共存下で加熱することと、さらに不活性雰囲気下で熱処理することとを有する製造方法で得られ、
    電気二重層キャパシタ用電極材の充電前後において、ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)の変化率が5%以下である電気二重層キャパシタ用電極材。
  2. 2.7V充電時の静電容量に対する3.0V充電時の静電容量の変化率が5%以下である請求項1記載の電気二重層キャパシタ用電極材。
  3. 充電前後での電極材層の厚さの変化率が5%以下である請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ用電極材。
  4. 比表面積が1800〜2600m/g、細孔容量0.7〜1.5ml/g、平均細孔径が1.60〜2.00nm、表面官能基濃度が0.1〜1.0mmol/g、平均粒径が1〜20μmであり、ラマンスペクトルに観察される1580cm−1付近のピーク(G1)の半値幅(Δν1)が、65〜80cm−1である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ用電極材。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ用電極材の製造方法であって、ノボラック型フェノール樹脂を硬化剤によって硬化処理した硬化物を熱処理して炭化物を得ることと、前記炭化物をアルカリ化合物共存下で加熱処理することと、さらに不活性雰囲気下で熱処理することと、を有する電気二重層キャパシタ用電極材の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気二重層キャパシタ用電極材を電極材として用いてなる電気二重層キャパシタ。
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