JP5131676B2 - ジオトリカム属菌を用いたキチン・キトサンを含む多糖体含有物の製造方法 - Google Patents

ジオトリカム属菌を用いたキチン・キトサンを含む多糖体含有物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ジオトリカム(Geotrichum)属菌株を用いたキチン・キトサンを含む多糖体含有物の製造方法、及びその利用に関するものである。本発明によれば、キチン・キトサンを主成分に他の微量の不溶性多糖類、水溶性多糖類などで構成される繊維状の多糖体含有物を多重積層構造の形状で安全且つ容易に、多量に効率よく生産することができる。得られた多糖体含有物は、食品素材、化粧品素材、医療用素材(創傷保護被覆素材)、さらには、再生医療分野で用いられる幹細胞(全能性及び多能性幹細胞を含む)や細胞を培養するときに供される細胞培養シート及びDDSに用いる薬物担体などに利用可能であり、種々の分野に利用可能なバイオマテリアルとして提供するものである。
キチン・キトサンは、自然界では海老や蟹などの甲殻類表皮以外に、昆虫類や真菌類などの細胞壁に存在する成分でもあることが広く知られている。そこで、真菌類である糸状菌の菌糸体や、一部の細菌が菌体外に産生する多糖体からキチン・キトサンを製造する方法が考え出されてきた。それら従来法のうち代表的なものが、下記の特許文献1〜7などに記載されているが、これらの技術と用いられる菌体での製造方法では多重積層構造の繊維状のキチン・キトサンを多量に効率よく生産することはできなかった。
例えば、キチン・キトサンを含有する糸状菌を固形培地上で培養し、その菌糸体を熱処理、アルカリ処理してキチン不織布を製造する従来法では培地のロスが極めて多く、これによって得られる菌糸体、キチン・キトサン含有多糖体は収量が少なく非効率なものであり、不織布らしきものは得られず細い糸状になった多糖体が得られるのみであった。
また、その他の従来法である、糸状菌を用いて液体培地で菌糸体を培養し、キチン・キトサンを含む多糖体を製造する方法においてもその生産高が少ないものや、明示されていないものなど、海老や蟹由来のキチン・キトサン製造法に比べて少なくとも十数倍ものコストアップが見込まれる。更に生産された菌糸体が、多重積層構造のパルプスラリー様ではなく、直径2mm〜10mmほどの大きさのボール状に固形化した形状で、そのままでは化粧品素材として、また、不織布並びにシート状に加工するには適さない構造であった。同様に、細菌の菌体外に産生されるキチン・キトサン量も多くはなく、安全性についても未知である。このような背景から工業的に実用化しようとする試みはこれまで殆ど為されず、微生物由来のキチン・キトサンの製造を真に工業化するには、高生産コスト要因を解決するか、新たな機能性を見出し、付加価値を高める以外に道はなかった。
特開平4−343762号公報 特開平5−184378号公報 特開平5−199892号公報 特開平7−97721号公報 特開平8-9922号公報 特開平10-316702号公報 特開平11−276160号公報
キチン・キトサンは、食品、化粧品、医療品など様々な分野の製品又は材料に利用されているが、これらの製品等で必要とされる素材物性は、高い生理活性能および生体適合性のほか、加工に適した構造である。本発明の目的・課題は、これら様々な分野の製品(又は材料)要件に適う新規なバイオマテリアルとして、キチン・キトサンを含む多糖体含有物を安全かつ多量に、効率よく製造する方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するため研究を積み重ねた結果、これまでに発表された糸状菌や細菌類によるキチン・キトサン製造法に比べてキチン・キトサン含有の繊維状菌糸体、及びその細胞壁を多量に産生するジオトリカム属菌を見いだすとともに、効率よくキチン・キトサン含有の繊維状菌糸体を生産することによって多糖体含有物を製造する好ましい製造条件を確立し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ジオトリカム属菌を培養増殖させ、キチン・キトサンを含む多糖体含有物を製造する方法であり、好ましくは、ジオトリカム属菌を液体培地で培養増殖させる工程を含むものである。
本発明の「多糖体含有物」には、(1)キチン・キトサンを含む繊維状の菌糸体、(2)菌糸体の細胞壁からなる多糖体含有物、及び、(3)後工程のアセチル化処理によりキチン成分を高めた多糖体含有物、が含まれる(なお以下では、多糖体含有物を単に「多糖体」という場合がある)。(1)の繊維状の菌糸体は、ジオトリカム属菌を液体培地で培養増殖させる工程と、得られた菌糸体を培養液から分離後、滅菌処理する工程とによって製造可能である。(2)の菌糸体の細胞壁からなる多糖体含有物は、(1)の繊維状の菌糸体から細胞質成分を脱離させることによって製造可能である。(3)のキチン成分を高めた多糖体含有物は、(2)の菌糸体の細胞壁からなる多糖体含有物をアセチル化処理することによって製造可能である(図13参照)。
本発明の製造方法において、所望の菌糸体を得るため、好ましくは、ジオトリカム アミラリエ(Geotrichum armillariae),ジオトリカム キャピタタム(Geotrichum capitatum),ジオトリカム リンキ(Geotrichum linkii),ジオトリカム セリシュウム(Geotrichum sericeum),ジオトリカム シトリ‐アウランティ(Geotrichum citri-aurantii),ジオトリカム カンディダム(Geotrichum candidum),ジオトリカム プルモニュウム(Geotrichum pulmoneum),ジオトリカム クレバタム(Geotrichum clavatum),ジオトリカム エリエンス(Geotrichum eriense),ジオトリカム ファメンタンス(Geotrichum fermentans),ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)およびジオトリカム クレバニィ(Geotrichum klebahnii)種から選ばれる1又は複数のジオトリカム属菌を用いてキチン・キトサンを含む多糖体含有物を製造するとよい。
菌糸体は、好ましくは後述するように、ジオトリカム属菌が成長増殖する過程において、菌糸がランダムに分節し、分節胞子(分節分生子)として径5μm前後、長さ1,000μm以上の繊維状になり、複雑に重なって積層した集合体の形をしたものである。また、菌糸体細胞壁の好ましい組成としては、主にキチン・キトサンのほか、微量の不溶性多糖類、水溶性多糖類を含有している。
一例として、ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76菌株、及びジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS164.32菌株を用いて、本発明のキチン・キトサンを含む多糖体含有物を製造することができる。CBSとは、オランダに在る微生物保存機関の略称であり、研究者などからの要請があれば菌体を分譲するなどで、微生物研究に寄与している。CBS127.76菌株及びCBS164.32菌株はこの機関に登録された固有の種であり、他に同一の菌体は存在しない。
本発明のキチン・キトサンを含む多糖体含有物は、食品及び化粧品の原材料に利用することができるほか、医療用の創傷保護被覆材、さらには細胞培養シートの材料、DDSに用いる薬物担体などとしても利用することができる。この点については後に詳述する。とりわけ、ジオトリカム フラグランス種を用いて製造された多糖体含有物からなる創傷保護材は、生体親和性(適合性)に優れ、更に新生血管誘導能を備えるなど従来品には見られない優れた特長を示した。したがって、ジオトリカム フラグランス種を用いて製造された多糖体含有物を、創傷保護材の用途に使用することは好ましい。また、ジオトリカム フラグランス種を用いて製造された多糖体含有物は、上記のように生体親和性(適合性)に非常に優れていたので、これを細胞培養シートや薬物担体の用途に使用することは好ましい。本発明は、このような創傷保護材、細胞培養シートおよび薬物担体を包含するものである。なお、本明細書において、「創傷保護材」および「創傷保護被覆材」の語はいずれも医療用の創傷保護材の意味であり、創傷部位を被覆して保護するシート状のものが例示されるが、その他の形状、使用方法の創傷保護材であってもよい。
ジオトリカム属菌の菌糸体の細胞壁を構成する主たる物質は、化学的にはグルコサミンがβ-1,4結合した直鎖型の高分子多糖体、キチン・キトサンであり、このほか微量の不溶性多糖類などと、水溶性の糖類が含まれている。また、菌糸体は形状的には繊維状の菌糸体が複雑に絡み合い積層した多重積層構造が特徴である。これらの構造ゆえ優れた特長を備えている。
これまで、海老や蟹由来のキチンは、生体適合性に優れていることから、外科用縫合糸や創傷保護被覆材として既に製品化されている。また、皮膚表面に塗布すれば潤いが保たれ、肌荒れの防止やピーリング効果による角質の軟化が期待できるので化粧品素材として利用されている。さらに、キチンを脱アセチル化したキトサンは、細菌類に対して広い抗菌性を示すことから食品添加剤として用いられている。このほか基本骨格に化学修飾性に富む水酸基およびアミノ基を有することから、ミネラルや金属成分、薬物などの担体としての応用化など、利用範囲は多岐にわたっている。
本発明のジオトリカム属菌の菌糸体細胞壁から得られるキチン・キトサン含有多糖体は、これら既知の機能性に加えて、繊維状の複雑に絡み合い積層した多重積層構造と、水に容易に分散させる事が可能な特長から、海老や蟹由来のキチン・キトサンのように特殊な溶媒に溶解させる必要がなく様々に利用できる。しかも非常に優れた生体親和性と多くの生理活性能を有している。ゆえに、従来のキチン・キトサン化粧品素材と比べて極めて優位な機能性を保持しているといえる。
適量を食すれば腸管の免疫機構に働き、免疫細胞の活性を高める機能性食物繊維としても利用できる。
更に、前述のとおり形状的に多重積層構造を有するため、簡単な方法で不織布およびシート状に加工することができ、医療用の創傷保護被覆材として製品化が可能である。また、再生医療分野で用いられる幹細胞などを培養する時に足場となる細胞培養シートとして、更にDDSに用いる薬物担体としての利用も可能であり、全く新しい機能性バイオマテリアルとして広く利用できる。
以下、本発明の実施の一形態について図13を参照しつつ説明する。
本実施形態では、ジオトリカム属菌をグルコース、廃糖蜜などの炭素源、及びポリペプトン、イーストエキストラクト、マルトエキスなどの窒素・燐酸、ミネラル成分などを含む液体培地にて、好気的条件下で振盪もしくは攪拌培養、あるいは静置培養して繊維状の多糖体をパルプスラリー様、ゲル様、あるいはシート様で生産する。
利用するジオトリカム属の菌類は、欧米ではチーズ(カマンベール)製造のスタータ菌として、また、中国では蒸留酒である白酒のもろみ醗酵時に働く微生物群に含まれており、アフリカ、中東圏ではパームワイン(palm wine)のエタノール醗酵に関与するなど、世界各地で伝統的に食品加工に利用されている。しかし、これまでこのジオトリカム属菌から繊維状の多糖体を取り出して加工調製し、バイオマテリアルとして利用する例はなかった。
ジオトリカム属菌の培養は、図13に示すように、通気攪拌液体培養などによって行うことができる(S1)。例えば、ジャーファメンター5L容量において培養液を3L、pH4.0〜7.5とし、培養条件は、温度27℃〜30℃、回転数は150〜400rpm、通気量は0.3〜1.5vvm、培養時間は72〜168時間とする。
液体培養されたジオトリカム属菌の繊維状の菌糸体は、複雑に絡み合い積層した多重積層構造である。菌糸体は、遠心分離機などにより培養液と概ね分離した後に、水洗して更にミクロフィルターなどにより吸引濾化して収集することができる(S2)。また、遠心分離を行わずに、筒型の大型フィルター(ポア径1〜3μm)へ圧力ポンプにより圧送することで、繊維状の菌糸体を短時間で効率よく大量に収集することができる。
さらに、上記菌糸体を脱塩水中で温度100〜121℃で加熱滅菌処理、次いで脱水処理することによって(S3)、多重積層構造の繊維状の菌糸体を得る(S4)。このジオトリカム属菌の菌糸体は、細胞壁を含む細胞周辺部と細胞質とに大別される。組成としては、細胞質にはタンパク質、核酸、脂質など、栄養価の高い成分が多いのでそのままでも食品、化粧品素材として利用することができるが、菌糸体から細胞壁の多糖体のみを利用する場合は、細胞質の内容物を効果的に除去する工程(S5)が必要になる。
この工程としては、例えば菌糸体を1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に1〜20w/v%となるように加え、100〜121℃で60分間以上加熱するなどの方法がある。この加熱操作により、滅菌が行われるとともに細胞質成分のほとんどが菌糸体から分離溶出する。また、必要に応じて僅かに残存するタンパクを分解するためのプロテアーゼ処理を行ってもよい。このようにして脱タンパク処理された菌糸体を濾別水洗することで菌糸体細胞壁から成る繊維状のキチン・キトサン含有多糖体(S6)が得られる。
なお、菌糸体を1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に5〜20w/v%となるように加え、加熱温度120℃、加熱時間6時間以下の処理では、菌糸体の細胞質成分の溶出などによって細胞壁成分である繊維状の多糖体は、直径が10%程度細くなるものの多重積層構造に大きな変化は生じなかった。この繊維状の多糖体は、海老・蟹由来のキチン・キトサンの紅色や緩黄色を有するのとは異なり、白色もしくは薄肌色を呈するので漂白も不要である。食味は、海老・蟹由来のキチン・キトサンのように独特のえぐみや匂いなども無く、無味無臭であった。こうした特長は食品や化粧品に添加するときに重要であり優位に働く。
さらに、上記多糖体をアセチル化処理することで、キチン成分を高めた多重積層構造の繊維状の多糖体を得ることができる(S7)。これを不織布、あるいはシート様に加工することによって(S8)、医療用の創傷保護被覆材や細胞培養シートとして利用可能である。なお、アセチル化処理前の繊維状の多糖体をそのまま用いてもなんら不都合はない。このアセチル化処理した、もしくはアセチル化処理前の繊維状の多糖体は、超音波破砕機あるいはホモジナイザーなどにより、ナノレベルまで破砕することでDDSに用いる薬物担体として用いることも可能である。
本発明のジオトリカム属菌を用いた繊維状の多糖体の製造法により、近年、種々の生理活性効果が期待されているキチン・キトサンを主成分とした繊維状の多糖体が、安全且つ容易に多量に効率よく安価に生産できる。たとえば後述の実施例に示すように、固形培地を用いた製造法に比べて、液体培地を用いた本発明の製造法では数百倍以上の収量が得られ、キチン・キトサンを含む繊維状の多糖体を非常に効率良く製造することができた。さらに利用する製品の目的に合わせて精製・加工すれば、食品、化粧品、医療品、再生医療用の細胞培養シート、DDSに用いる薬物担体など、次代のバイオマテリアルとして求められる機能性を十分に備え、これに応えることができる。
以下では、本発明のキチン・キトサンを含む多糖体の利用方法の具体例について説明する。
(1)食品素材として利用する方法の具体例
ムコ多糖体であるキチンおよびキチンの脱アセチル化誘導体であるキトサンは、低毒性であり、人腸内では難消化性であるため食物性繊維などとしての利用価値が認められている。既に、海老・蟹由来のキチン・キトサンは、乾燥粉末状に加工されて市場に流通している。使用例としては、菓子や麺類、アイスクリーム、チーズなどに適量を添加することで、増粘作用、保水・保湿作用、乳化作用などの効果が得られ、これらの製造に用いられている。
また、キトサンは、人腸内では胆汁酸と吸着し、排泄されることによってコレステロールを低減させる効果があるとして、特定栄養食品にも認められている。このほか様々な細菌や糸状菌に対して広い抗菌性を示すことから、食品の防腐を目的に利用されている。しかし、このような効果を発揮させるには一旦水溶性にし、かつ食品中にムラなく全体に混練させなければならないが、海老・蟹由来のキチン・キトサンは、そのままでは水に溶解しない。
キチンは、一般的にジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等と塩化リチウムとを組み合わせた溶媒に、また、キトサンは、リンゴ酸や酢酸などの有機酸、あるいは無機酸などの酸性溶媒に溶解させなければならない。よってこれらの特殊な溶媒に溶かした海老・蟹由来のキチンは、食品には用いることが極めて難しい。キトサンも酸性溶媒であるために味、香りが変質するため、微量でしか用いることができないなどの制約がある。
このような事実から本発明のジオトリカム属菌から得られるキチン・キトサンを含む繊維状の多糖体は、前述同様の効果が期待できる上に、水に容易に分散させパルプスラリー様にすることができるので、食品中にムラなく混練させることができる。しかも配合率の自由度が高く、その設定が任意に行える利点がある。よって食品工業分野へ大いに寄与できる。
(2)化粧品素材として利用する方法の具体例
前述したように、海老・蟹由来のキチン・キトサンは、そのままでは水に溶解、もしくは分散させることが不可能である。化粧品として利用するには特殊な溶媒に溶かせ、化学修飾して水溶性誘導体とするなどの複雑な処理が必要である。さらに肌に対して毒性を有しないようにする処理も必要とされる。
これに対して本発明のジオトリカム属菌から得られるキチン・キトサンを含む繊維状の多糖体は、特長として繊維状であることに加えて親水性に富む構造ゆえ、水に容易に分散させることが可能であり、pH値も中性である。これらの特質(特性)により適宜、分散濃度の調整が行え、乳液様、クリーム様、ゲル様に容易に加工できる。肌に塗れば、十分な保湿性と膜形成能を有することから表皮と外気との間にバリアを形成することができる。よって肌や髪の毛を紫外線や外気から守ることが可能となる。また、超音波破砕機やホモジナイザーなどにより、超微細に破砕し、ナノ粒子化することで肌から真皮層への浸透性が向上し、しかも極めて高い生理活性能を有することから肌の新陳代謝を促進させることが期待できる。
更に、このキチン・キトサンは、基本骨格に化学修飾性に富む水酸基およびアミノ基を有することから正または負の電荷を示す化合物などを添加することにより、これらの物質が反応して吸着・保持される特長がある。また、構成糖の架橋間では疎水性の高分子化合物も保持しやすいと考えられる。したがって、この性質を利用して、生理活性能や高機能性を有する化合物を添加することで、DDSの薬物担体として、また、様々な化粧品の素材として応用範囲が大きく広がる。
(3)医療用の創傷保護被覆材として利用する方法の具体例
医療用の創傷保護被覆材としては、既に海老・蟹由来の製品が臨床の場で使用されており、下記の参考文献1〜4に記述されている内容の治療効果が得られている。すなわち熱傷や深い創、滲出液の多い創などの表面を被覆することにより、滲出液を吸収して創傷部に適度な湿潤環境を創出し、表皮形成および肉芽組織生成の促進効果などである。
1.新薬と臨牀41(8):192-202,1992
2.西日皮膚54(6):1182-1189,1992
3.西日皮膚55(5):941-946,1992
4.キチン、キトサンハンドブック:324-354,キチン、キトサン研究会編
しかるに本発明のジオトリカム属の菌糸体から得られるキチン・キトサン含有の多糖体は、脱タンパク処理したものをそのまま創傷保護被覆材の材料として利用可能であり、また、化学的処理により、アセチル化を促進してキチン成分を更に高めることで、海老・蟹由来のキチン成分組成と同等以上のものが得られる。これを不織布、あるいはシート様に精製加工する事で創傷保護被覆材として利用可能となる。この創傷保護被覆材の製造では、ジオトリカム属の菌糸体の特質(特性)である多重積層構造を有することなどにより、従来の製造工程(方法)と比較してより簡単な工程(方法)で不織布およびシート状に加工することができる。その詳細は実施例7で述べる。また、その優れた効果については実施例9で述べる。
(4)細胞培養シートとして利用する方法の具体例
現在、細胞培養シートとしてはポリグルコール酸、あるいはポリグルコール酸とポリ乳酸の共重合体を材料にした合成品と、生物由来の材料として人羊膜由来のコラーゲンシートの他、豚、魚類(鮭皮)由来のコラーゲンシートなどがある。それらに求められる生物学的物性は、毒性、病原性、抗原性のないことが必須である。例えば、人羊膜には上皮細胞が含まれているため、これを取り除くプロセスが必要であるが、病原性、抗原性を限りなくゼロに近く取り除き、精製コラーゲンシートとして得るためには極めて複雑な化学処理工程が必要となる。従って製造コストが高くなる。豚、魚類(鮭皮)由来のコラーゲンシートなども同様の問題点を抱えている。現状では再生医療で用いられる細胞培養シートとしては、合成材料を主原料とした方向に研究は進んでいるが、合成材料については、生体内で新生血管を誘導したり、免疫に働きかけるといった生理活性能を顕著に示す研究の報告例は、ほとんど見受けられない。生物由来の材料については、現在、人羊膜由来のコラーゲンシートが総合的に優位であることが示唆されており、この細胞培養シートは、既に角膜細胞を培養する足場として医科大などにおいて臨床応用が進められているが、製造コストが極めて高くつく。
こうした事実から、本発明のジオトリカム属の菌糸体から得られる繊維状のキチン・キトサン含有多糖体の特長である優れた生理活性能が大いに生かせることを認識し、細胞培養シートとして利用する方法を新たに見出した。すなわち多重積層構造を有した繊維状のキチン・キトサン含有多糖体をアルカリ熱水処理、プロテアーゼ処理などによって、病原性、抗原性の主な原因であるタンパク質や核酸などの物質を溶出、除去し、更にアセチル化を促進する化学処理でキチン成分を高めるなどにより、より生体適合性、生体内消化性に優れた細胞培養シートを得る方法である。詳細は実施例8によって述べる。
(5)DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の薬物担体として利用する方法の具体例
生体内で薬物を効かすためには、薬物をその必要とする部位に適切に作用させなければならない。しかし、ほとんどの薬物は部位選択性がなく、その薬理作用を発現させるために必要以上の投与が行われ、これにより様々な副作用が生じている。そこで、薬物を必要な部位へ、必要な濃度で、必要な時期にだけ働かせることが求められる。これがDDSの考えである。現在、DDSに用いる薬物担体としては、前述のポリグルコール酸、ポリ乳酸、あるいはポリグルコール酸とポリ乳酸の共重合体を材料にした合成品のほか、生物由来の材料として大豆由来のレシチンをナノ粒子レベルまで加工し、リボソーム化したものなどが人への臨床応用を目指して動物試験に用いられている。本発明のキチン・キトサン含有多糖体を脱タンパク処理し、ナノレベルへ微細に破砕することにより、生体内に導入し易くすることが可能となる。キチン・キトサンの基本構造は化学修飾性に富むアミノ基と水酸基を有することから、目的の薬物を当該キチン・キトサン含有多糖体内に包含させることにより、生体内では予め設計した時期に薬物を徐放させることで、目的の部位で必要とされる効果を得ることが期待できる。このDDSに用いる薬物担体への応用は、本発明のキチン・キトサン含有多糖体の特長である優れた生体適合性、生体内消化性を生かしたものである。
次に、実施例により液体培地における多重積層構造を有した繊維状のキチン・キトサン含有多糖体の製造方法をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。また、固形培地による生産性との差異を確かめるための培養も併せて行った。
[実施例1]
脱塩水3,000ml、D-グルコース60g(2%)、ポリペプトン15g(0.5%)、イーストエキストラクト9g(0.3%)、マルトエキス5g(0.0167%)からなる培地をpH5.6に調製した後、5L容量のジャーファメンターに入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理後に28℃まで冷却した。これを本培養液(培地)として用いる。なお、各栄養成分の配合比率は適宜変更して用いても良い。
前述同様の成分組成の滅菌済み培地を試験管5本に各々7ml分注し、冷却後ジオトリカム属フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76菌株をクリーンベンチにて1白金耳植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振とう培養した。この前培養菌液の中から最も生育の良い菌体液10mlをジャーファメンターの本培養液(培地)に植菌して培養を開始した。なお、前培養菌液の植菌量は、概ね1ml以上であればよい。培養条件は次のとおりで各設定値を任意に組み合わせ、計7回実施した。通気量は0.3vvmから1.5vvmで、培養液温度は24℃から32℃の範囲で、回転翼は100rpm〜400rpmで攪拌し、培養した。
培養時間は40時間から160時間、好ましくは90時間前後で収量は最大であった。なお、培養時間を短縮したい場合は、植菌量を適宜増量すればよい。培養終了後の菌体液のpHは平均値で7.0から7.3の範囲であった。
また、培養開始30時間経過後にサンプルを取り出し、顕微鏡観察(×1,000倍)した結果、繊維状の菌糸体が複雑に絡み合い多重に積層していることが容易に観察できた(図1参照)。菌糸体の径は、平均で5μm前後、長さは1,000μm以上であった。
この菌糸体培養液を公知の方法により、遠心分離機で培養液と菌糸体とに分離し、さらに濾紙を用いてアスピレーターで吸引濾過し、湿重量102.34gの菌糸体を得た。次いで恒温乾燥機にて100℃で3時間乾燥した。得られた菌糸体の乾燥重量は、14.44gであった。対糖収率(D−グルコース比)は24.06%であった。また、菌糸体を分離した培養上清中のD−グルコース残量をソモギネルソン法にて確認したところ、約96%が資化および多糖体の重合などに用いられていることが確認できた。なお、これらの数値は培養条件によって若干変動する。
次に、未加工の繊維状菌糸体を100℃の脱塩水中で6時間熱を加えたところ、水溶性の物質と不溶性の物質とに分画できた。このうち水溶性の物質を70℃にて乾燥させた後、99%濃度エタノールにて沈殿後、再び90℃にて乾燥した。これをSoluble Part(水溶性物質:キチン・キトサン含まず)とした。不溶性の物質はUnsoluble Part(不溶性の物質:キチン・キトサン含有)とした。また、未加工の繊維状菌糸体を熱水処理を加えずにそのまま90℃にて乾燥させた。これをOriginal Sample(キチン・キトサン含有)とした。これらを赤外吸収スペクトル法(FT−IR)で分析したところ、Unsoluble Partの大部分はアセチル化度が約63%のキチン、Original Sampleはアセチル化度が約61%のキチンであると判断された。また、水溶性の物質Soluble Partは、カルボキシル基を持つ多糖体が含まれていると判断された(図2参照)。
上記方法により得られた繊維状の菌糸体は、化学的処理を行わずにそのまま食品、化粧品素材として利用可能であり、また、化学的に処理を加えて精製・加工すれば、医療品の創傷保護被覆材、再生医療用細胞培養シート、DDSの薬物担体として、目的に適う製品化が可能となる。
[実施例2]
脱塩水200ml、D-グルコース2%、ポリペプトン0.5%、イーストエキストラクト0.3%、マルトエキス0.016%、粉末寒天2%からなる培地をpH5.6に調製した後、121℃で15分間オートクレーブ処理した。そして、クリーンベンチにて前もって滅菌済みのペトリ皿10枚に各々15ml分注し、28℃まで冷却した。これを本培地として用いる。
粉末寒天を除いて他は上記同様の成分組成の滅菌済み液体培地を試験管5本に各々7ml分注し、冷却後ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76菌株をクリーンベンチにて1白金耳植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振盪培養した。この前培養菌液の中から最も生育の良い菌体液をペトリ皿の培地1体に対してマイクロピペットにて50μl分注、植菌してスプレッダーにて全面に広げ培養を開始した。なお、前培養菌液の植菌量は、概ね30μl〜100μlの範囲であればよい。培養条件は、恒温機にて温度を27℃〜32℃の範囲に設定し、好気的条件で培養した。これを計5回実施した。
培養時間は40時間から160時間、好ましくは70時間前後で菌糸体(コロニー)の発育は最大であった(図3参照)。
また、培養開始30時間経過後にサンプルを取り出し、顕微鏡観察(×1,000倍)した結果、液体培養で観察したように菌糸体が複雑に絡み合って積層している箇所はほとんどなく、酵母やバチルスの生育状況と酷似していた。
こうした事実はこのジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)の大きな特徴である2形性真菌に似た特徴を有するためと考えられる。つまりジオトリカム属の菌体は糸状菌に酷似するが、分子系統学的には子嚢菌酵母系統群に含まれるので、アスペルギウス属(麹菌)やリゾープス属(テンペ菌)などのような糸状菌と異なり、固形培地上では菌糸の発育、増殖は大きく進展せず、気中菌糸はほとんど見られない。しかし液体培地内では圧倒的なスピードで菌糸(分節分生子)の増殖を始める。その比率は恐らく数百倍から数千倍であろうと考えられる。キチン・キトサンを含む多糖体含有物は、この菌糸に多く含まれている。ゆえにこのジオトリカム属菌体を工業的に用いる場合は液体培地であることが好ましい。
[実施例3]
実施例1のとおりに培地を調製し、滅菌済み液体培地を試験管5本に各々7ml分注し、冷却後ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS164.32菌株をクリーンベンチにて1白金耳植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振盪培養した。この前培養菌液の中から最も生育の良い菌体液10mlを、実施例1のとおりに調製したジャーファメンターの本培養液(培地)に植菌して培養を開始した。なお、前培養菌液の植菌量は、1ml以上であればよい。培養条件は次のとおりで各設定値を任意に設定して組み合わせ、計3回実施した。通気量は0.3vvmから1.5vvmで、培養液温度は24℃から32℃の範囲で、回転翼は100rpm〜400rpmで攪拌し、培養した。
培養時間は40時間から160時間、好ましくは90時間前後で収量は最大であった。なお、培養時間を短縮したい場合は、植菌量を適宜増量すればよい。培養終了後の菌体液のpHは平均値で7.0から7.3の範囲であった。
また、培養開始30時間経過後にサンプルを取り出し、顕微鏡観察(×1,000倍)した結果、繊維状の菌糸体が複雑に絡み合い多重に積層していることが容易に観察できた(図4)。菌糸体の径は、平均で5μm前後、長さは1,000μm以上であった。
この菌糸体培養液を遠心分離機で培養液と菌糸体とに分離し、さらに濾紙を用いてアスピレーターで吸引濾過し、湿重量86.98gの菌糸体を得た。次いで恒温乾燥機にて100℃で3時間乾燥した。得られた菌糸体の乾燥重量は、12.27gであった。なお、これらの数値は培養条件によって若干変動する。この乾燥品を1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に1〜10w/v%となるように加え、100〜121℃で60〜300分間加熱し、冷却後、脱塩水で十分に洗浄し中和した。その不溶性物質を乾燥させ、赤外吸収スペクトル法(FT−IR法)により分析した結果、キチン・キトサンが含まれていることが確認できた(図5参照)。
[実施例4]
5,000ml容量のフラスコに脱塩水1,000ml、ポリペプトン5gを容れ、オートクレーブにて滅菌した後50℃に冷却し、これにアスペルギウス・オリゼーで40時間醗酵処理した米麹200gを加え、50℃の恒温機で20時間加水分解した。これを培地として28℃に冷却した後、試験管にて24時間前培養したジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76菌株を1ml植菌し、振盪培養機にて好気的条件で振盪速度100rpm〜140rpm、温度27℃〜31℃の範囲で30時間振盪培養した。
その後、恒温機にて28℃で静置培養した。静置培養開始後30時間を経過したころから培地液表層に乳白色の菌膜が覆い始めた。その菌膜は、時間を経過するたびに徐々に厚く積層していき、240時間経過時には最大で約3.5mm厚、約150mm径のシート状の物質に成長した。この間、気中菌糸の生育はほとんど見られなかった(図6参照)。これを脱塩水にて洗浄し、菌糸体シート以外の培地成分を取り除いた。このシートの物性は引張り強さも備えており、容易には破断しなかった。
この実験により、ジオトリカム属菌は培地組成、培養条件によりシート状に容易に形成することが見出された。この特長を利用することで再生医療分野に用いる細胞培養シートを容易に創り出すことが可能となる。
成分を確認するため培養シートは、水洗したのち、1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に1〜10w/v%となるように加え、100〜121℃で60〜300分間加熱した。冷却後、脱塩水で十分に洗浄し中和した。これを乾燥させて赤外吸収スペクトル法(FT−IR法)により分析した結果、アセチル化度約45%のキチン・キトサンが含まれていることが確認できた(図7参照)。
[実施例5]
クリーンベンチにて、フランスの菌体販売会社ETS Andre COQUARDより取り寄せた商品名SIGMA-54のジオトリカム カンジダム菌株を、実施例1のとおりに調製した滅菌冷却済み液体培地7mlがそれぞれ入った試験管5本に1白金耳づつ植菌し、振盪培養機で温度30℃、振盪速度140rpm、好気的条件で24時間振盪培養した。この前培養菌液の中から最も生育の良い菌体液10mlを、実施例1のとおりに調製したジャーファメンターの本培養液に植菌して培養を開始した。なお、前培養菌液の植菌量は、1ml以上であればよい。培養条件は次のとおりで各設定値を任意に設定して組み合わせ、計3回実施した。通気量は0.3vvmから1.5vvmで、培養液温度は24℃から32℃の範囲で、回転翼は100rpm〜400rpmで攪拌し、培養した。
培養時間は40時間から160時間、好ましくは90時間前後で収量は最大であった。なお、培養時間を短縮したい場合は、前培養菌液の植菌量を適宜増量すればよい。培養終了後の菌体液のpHは平均値で6.9から7.3の範囲であった。
また、培養開始30時間経過後にサンプルを取り出し、顕微鏡観察(×1,000倍)した結果、繊維状の菌糸体が複雑に絡み合い多重に積層していることが容易に観察できた(図8参照)。菌糸体は平均で、径は5μm前後、長さは100μm前後であった。
この菌糸体培養液を、遠心分離機で培養液と菌糸体とに分離し、さらに濾紙を用いてアスピレーターで吸引濾過し、湿重量46.95gの菌糸体を得た。次いで恒温乾燥機にて100℃で3時間乾燥した。得られた菌糸体の乾燥重量は、6.35gであった。なお、これらの数値は培養条件によって若干変動する。この乾燥品を1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に1〜10w/v%となるように加え、100〜121℃で60〜300分間加熱した。冷却後、脱塩水で十分に洗浄し中和した。これを乾燥させて赤外吸収スペクトル法(FT−IR法)により分析した結果、キチン・キトサンが含まれていることが確認できた(図9参照)。
[実施例6]
海老・蟹由来のキチン・キトサンは、そのままでは水に溶解、もしくは分散させることが不可能である。化粧品として利用するには特殊な溶媒に溶かせるなどの複雑な処理が必要であり、さらに肌に対して毒性を有しないようにする処理も必要とされる。キチンは、一般的にジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等と塩化リチウムとを組み合わせた溶媒に、また、キトサンは、リンゴ酸や酢酸などの有機酸、あるいは無機酸などの酸性溶媒に溶解させなければならない。このような溶媒に溶かした海老・蟹由来のキチン・キトサンは、そのままでは化粧品として用いることが困難であった。化粧品として用いるには、より温和な溶剤で溶かさなければない。そのため、キチンはカルボキシメチルキチンとしたものを水溶液として、また、キトサンは、プロピレンオキサイドにより合成されたヒドロキシプロピルエーテルの水溶液として用いられている等の例がある。しかし、いずれも極めて濃度の薄い性状に調製しなければ化粧品として用いることはできない。
これに対して本発明のジオトリカム属菌から得られるキチン・キトサン含有の繊維状の多糖体は、親水性に富む特長を生かして水に容易に分散させ、パルプスラリー様にすることが可能である(図10参照)。超音波破砕機やホモジナイザーなどを用いて超微細に破砕し、ナノ粒子化することで、特殊溶媒を用いることなく乳液様、クリーム様、ゲル様に容易に加工できる。また、pH値が中性であることからそのまま用いることができる。肌からの浸透性が高いことに加え、極めて高い生理活性能を有することから肌の新陳代謝を促進させることはもとより、十分な保湿性と膜形成能により、表皮と外気との間にバリアを形成することができる。よって、肌や髪の毛を紫外線や外気から守ることが可能となる。
[実施例7]
医療用の創傷保護被覆材としては、現在、海老・蟹由来のキチン質(ポリ‐N‐アセチルグルコサミン)を素材に、不織布に加工した製品が臨床の場で使用されている。しかしこの不織布の製造工程は極めて複雑であり、前段階の繊維の製造には特殊な溶媒を用いて紡錘加工しなければならない。ゆえに製造コストが高くつく。また、紡錘加工した繊維を不織布にするには特殊な接着剤を必要とし、このことで生体親和性が若干損なわれるなど、解決すべき課題として顕在化している。
これに対して本発明のジオトリカム属から得られるキチン・キトサン含有の繊維状の多糖体は、公知の方法により、細胞質成分を溶出させ、病原性や、抗原性成分を取り除くためにアルカリ溶液中にて熱水処理する。また、必要に応じてプロテアーゼ処理及びアセチル化処理などにより、創傷保護被覆材の材料として利用可能となる。この創傷保護被覆材の製造では、ジオトリカム属の菌糸体の特質である多重積層構造、並びに親水性に富む特長を利用することで、従来の海老・蟹由来のキチン質を素材にした不織布製造工程と比較して、より簡単な工程で不織布状に加工することができる。以下に、CBS127.76株を用いた製造法を詳細に記述する。
まず、培養された菌糸体は、公知の方法で収集した後、1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に1〜10w/v%となるように加え、100〜121℃で60〜300分間加熱する。この加熱操作により、滅菌が行われるとともに細胞質成分が菌糸体から分離溶出し、キチン・キトサンの純度が高まる。このアルカリ熱水処理で得られたパルプスラリー様の菌糸体細胞壁は、濾別水洗を数回行うことでpH値が中性の清浄な多重積層構造の繊維状のキチン・キトサン含有多糖体として得られる。また、必要に応じてプロテアーゼ処理などにより微量のタンパク質成分を取り除く。
次いで、キチン成分を高めるアセチル化処理を行うが、前述のタンパク除去処理で得られた繊維状のキチン・キトサンは、アセチル化度が平均で60%以上と高く、そのままでも生体用材料としての利用が可能である。アセチル化の操作は、まず、脱塩水に90w/v%以上となるように混合する。そして公知の方法と同様の化学処理(参考文献・キチンキトサン研究会編、キチン、キトサンハンドブック:228-354)により必要なアセチル化率の組成を得る。その後、脱塩水でpH値6.8〜7.1の範囲に水洗・中和処理する。ジオトリカム属の菌糸体の特質である多重積層構造を構成する分節胞子(分節分生子)は、平均で径が5μm、長さが1,000μm以上の繊維状である。この多重積層構造は、長時間に及ぶアセチル化処理を経ても繊維の径が10%程度細くなるもののほとんど変化しない。
次に、前述のとおりの方法で得られた多重積層構造の繊維状のキチン・キトサン含有多糖体を脱塩水中に0.02w/v%〜1w/v%の範囲になるように加え、ミキサーにてよく攪拌し、分散濃度にムラが生じないようにして上部が開放した平底・長方形のステンレス製容器に貯めておく。そして、伝統的な和紙の製造法である溜め漉き法を用い、和紙を漉く要領で繊維状のキチン・キトサン含有多糖体を漉くい取っていく。漉くい取る器具、簀桁の簀は、古来から用いられている構造が好ましい。この器具で数回漉くっていくと不織布状になるので、不織布の厚さが200μm〜2,000μmのところで漉くい取りを停止し、テフロン(登録商標)加工を施したステンレス製の平板の上に不織布のみ取り出し、広げて30℃〜80℃の温度範囲で自然乾燥、もしくは通風乾燥させる。これらの操作によって不織布が得られる(図11参照)。
ここで注意しなければならないのは、不織布は完全に脱湿を行うと弾力、塑性、柔軟性を失い、強度が不足するので水分含量が90%〜5%の範囲になるように脱水、乾燥、調製することが重要である。なお、作り出す不織布面積の大小は、繊維状のキチン・キトサン含有多糖体の水溶液を貯めておくステンレス製容器の大きさと、漉くい取る器具の大きさを適宜変更することで最大1m2程度まで調製が可能である。この不織布の製造方法には他の優れた技術があるので最適のものを用いればよい。これらの操作は全て無菌的にコントロールされた条件下(クリーンルームなど)で行うことが重要である。
[実施例8]
再生医療分野で用いられる、細胞培養シートの製造法について述べる。細胞培養シートに求められる生物学的物性は、病原性、抗原性のないことが最も重要である。本発明のジオトリカム属から得られる多重積層構造を有した繊維状のキチン・キトサン含有多糖体の特長を生かした細胞培養シートの製造方法を見出した。すなわち多重積層構造を有した繊維状のキチン・キトサン含有多糖体をアルカリ熱水処理、更に必要に応じてプロテアーゼ処理するなどにより、病原性、抗原性の主な原因であるタンパク質や核酸などの物質を溶出、除去し、更にアセチル化を進める化学処理によってキチン成分を高め、生体適合性、生体内消化性に優れた細胞培養シートを得る方法である。以下に、CBS127.76株を用いた製造法を詳細に記述する。
実施例7で記述した不織布の製造法と同様に、まず、培養された菌糸体は、公知の方法で収集した後、1〜3Mの水酸化ナトリウムもしくは炭酸ナトリウム水溶液中に1〜10w/v%となるように加え、100〜121℃で60〜360分間加熱する。この加熱操作により、滅菌が行われるとともに細胞質成分のほとんどが菌糸体から分離溶出し、キチン・キトサンの純度が高まる。このアルカリ熱水処理で得られたパルプスラリー様の菌糸体細胞壁は、濾別水洗を数回行い、中和することで多重積層構造の繊維状のキチン・キトサン含有多糖体として得られる。また、必要に応じてプロテアーゼ処理することで、微量のタンパク質も取り除く。
次いで、キチン成分を高めるアセチル化処理を行うが、前述のタンパク除去処理で得られた繊維状のキチン・キトサンは、アセチル化度が平均で60%以上と高く、そのままでも生体用材料としての利用が可能である。アセチル化の操作は、公知の方法と同様の化学処理(参考文献・キチンキトサン研究会編、キチン、キトサンハンドブック:228-354)により、必要なアセチル化率の組成を得る。ジオトリカム属の菌糸体の特質である多重積層構造を構成する分節胞子(分節分生子)は、平均で径が5μm、長さが1,000μm以上の繊維状である。この多重積層構造は、長時間に及ぶアセチル化の処理を経ても繊維の径が10%程度細くなるもののほとんど変化しない。
前述のとおりの方法で得られた繊維状のキチン・キトサン含有多糖体をpH値6.8〜7.1の範囲に水洗中和処理し、更に遠心分離して脱水処理した後に、脱塩水中に1w/v%〜5w/v%の範囲になるように加えて、ミキサーにてよく攪拌する。続いて公知の方法により、濾紙を用いてアスピレーターで吸引濾過する。シートの厚さが100μm〜5,000μmの範囲のところで吸引濾過操作を停止し、濾紙からはがして取り出す。得られたシートの水分含有量は約90%であるので、必要とする水分含量まで恒温機にて脱湿操作(乾燥処理)を行うが、30℃〜80℃の温度範囲で乾燥させる。ここで注意しなければならないのは、シートは完全に脱湿を行うと弾力、塑性、柔軟性を失い、強度が不足するので水分含量が20%〜8%の範囲になるように乾燥、調製することが重要である。この細胞培養シートの表面積の大小は、ろ過機の口径を適宜変更することで最大0.5m2程度まで調製が可能である(図12参照)。これらの操作は全て無菌的にコントロールされた条件下(クリーンルームなど)で行うことが重要である。
[実施例9]
次に、本発明のキチン・キトサン含有多糖体シートが、医療用の創傷保護被覆材として適合する特性・機能を備えているか否かの検証を、財団法人先端医療振興財団の協力を得て行った。実験に用いたマウスは、近交系C57BL/6 Cr Slcの生後7週目の雄(体重21g〜23g)3匹で、SPFの条件下で飼育管理したものである。材料としては、実施例7・8記載の方法と同様の方法で調製したキチン・キトサン含有多糖体シート(以下、「本発明シート」という)を8mm四方の大きさで重量を18ミリグラムの断片に裁断して使用した。対照として、市販の海老・かに由来の医療材料、キチン創傷保護材(以下、「市販シート」という)を同様の大きさ、重量に裁断し、使用した。
この両生体材料をそれぞれマウスの皮下へ埋没するため、前処置としてまず、麻酔を行い、背部の全面の脱毛処理を行った。そして、背部の左右2箇所の皮膚をそれぞれ幅12mmにわたって切開し、鑷子にて皮下を広げ、皮下と真皮との間に、背部左側には本発明シートを、背部右側には市販シートをそれぞれ個別に挿入し、丸くならないように平に広げて納めた後、切開部位を閉じて縫合した。この後、3匹とも同一の飼育ケージにて同じ条件で飼育管理して経過観察を行い、施術後35日、63日、91日目にそれぞれ犠牲死させて施術部位を解剖し、生体内でどのような生理活性が見られるかを検証、確認した。
施術後、3匹共に食餌、行動に特別の変化は見られず、犠牲死を迎えるまで異常行動はなかった。しかし、施術後5日目頃から両生体材料の埋没部位には、視認できる外的変化として炎症反応である腫脹が3匹共に生じた。その腫れの程度は徐々に進行し、2週目でピークを迎えたが、そのいずれも市販シート側が幾分か小さいことを確認した。この腫脹は日数経過と共に徐々に収まっていき、施術後4週目には縫合部の瘢痕のみとなった。これらの経緯から炎症反応は、生体に致命的影響を及ぼすことのない緩やかなもので、いずれのシートも生体に対する毒性はないか、非常に少ないと考えられる。
施術後35日目で剖検した個体では、対照との間で大きな差が見られた。本発明シートの埋没部位では、シートの約50%が生体内に吸収されていた。そして何より、シートの埋没部位に向かって新生血管の発現が多数(市販シートに比べ約10倍)認められた(図14、20参照)。これに対して、対照の市販シートの埋没部位では、市販シートのほとんどが生体内で吸収されずにほぼ原形をとどめて癒着していた。また、新生血管の発現は埋没部位に向かって1本のみ認められた(図15参照)。
このように両生体材料間で大きな差異が生じた要因としては、新生血管の発現を誘導する因子が、市販シートよりも本発明シートにおいて顕著に含有されているためであることが考えられる。なお、新生血管の発現は、施術により誘導される自己治癒のメカニズムであり、早期に傷を修復する上で優位に働く。本発明のキチン・キトサン含有多糖体シートには、そうしたメカニズムを促進する生理活性能が備わっていることが判断できる。
図16、17は、施術後63日目で剖検した個体での結果である。本発明シートの埋没部位では、当該シートの100%近くが生体内に吸収され、癒着も起きていなかった。しかし、新生血管は、35日目に剖検した個体と比較して明らかに減じていた(図16、20参照)。これに対して、対照の市販シートの埋没部位では、市販シートのほとんどが生体内で吸収されずにそのまま留まっており、真皮部位に癒着していた。また、新生血管は認められなかった(図17参照)。
図18、19は、施術後91日目で剖検した個体での結果である。本発明シートの埋没部位では、当該シートは既に生体内に吸収され、癒着もなかった。新生血管は減じているのが認められた(図18、20参照)。これに対して、対照の市販シートの埋没部位では、市販シートの約30%が生体内で吸収されずにそのまま留まっており、真皮部位に癒着していた。また、新生血管は認められなかった(図19参照)。
これまでの結果から判断して、本発明のキチン・キトサン含有多糖体シートは、対照の市販シートと比較して生体内に吸収される速度が100%以上も速く、また、生体内での毒性も認められない。すなわち生体親和性(適合性)に優れていると認められる。更に、シート埋没後35日前後では市販シートの約10倍もの新生血管誘導能を備えていることが確認できた(図20参照)。これらの生理的反応の機序については今後詳細を検討していくが、これまでの知見(前記キチン、キトサンハンドブック: 324-354頁の記載など)に照らして、生体防御機構の免疫・炎症反応が関与するものと考えられる。
まず、生体内への吸収機序については、本発明のキチン・キトサン含有多糖体シートと接する細胞(組織)周辺に存在する樹状細胞やマクロファージ(あるいはまた、リゾチーム陽性細胞)などによって異物として貧食され、抗原として他の免疫担当細胞に提示される。これらの細胞によって本発明のキチン・キトサン含有多糖体シートが、徐々に貧食、分解・吸収されるものと考えられる。
次に新生血管誘導能についてであるが、本発明のキチン・キトサン含有多糖体シートの生体移植によって、異物による炎症反応が惹起され、生体内に広く分布する血管成長因子が活性化されることが考えられる。その活性化の主たる原因物質は、本発明シートに含まれるキチン・キトサンであるか、本発明シートに含まれる他の多糖体や糖鎖であるか、あるいはまた、それらの複合物質である可能性がある。なお、今回使用した市販シートを赤外吸収スペクトル法(FT−IR)で分析したところ、アセチル化度が約56%のキチン・キトサンであり、アセチル化度が約63%の本発明シートと有意な差が見られた。このことが生理活性能の差に影響を与える一因となっている可能性がある。次に、新生血管が減少していく機序については、本発明シートが、生体内に吸収されていくと共に、埋没部位での肉芽が新しく形成され、創傷の治癒が進むことによって埋没部位での新生血管そのものの存在、役割が必要でなくなり、減少していったものと考えられる。すなわち生体の恒常性が保たれていく現象と考えられる。
結論として、本発明のキチン・キトサン含有多糖体シートは、現在、医療現場で数多く用いられている市販シート(海老・かに由来の医療材料、キチン創傷保護材)を凌駕する特長を備えていることから、火傷や創などの治癒を促進する医療用具として、更には細胞培養シートとして用いるに相応しい生体適合材料である。
以上のように、本発明は、ジオトリカム属菌を用いてキチン・キトサンを含む多糖体含有物を製造する方法に関するものであり、前述したとおり、食品、化粧品、医療品、再生医療で用いる細胞培養シート、DDSの薬物担体など様々な分野におけるバイオマテリアルとしての利用が可能である。
ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76の液体培養での繊維状菌糸体の顕微鏡写真(×1,000倍)である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76の繊維状菌糸体の赤外吸収スペクトル法(FT−IR)での解析図である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76の固形培地上での菌糸体の写真である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS164.32の液体培養での繊維状菌糸体の写真(×1,000倍)である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS164.32の繊維状菌糸体の赤外吸収スペクトル法(FT−IR)での解析図である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76のシート様物質の写真である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76のシート様物質の赤外吸収スペクトル法(FT−IR)の解析図である。 ジオトリカム カンジダム菌SIGMA-54の液体培養での繊維状菌糸体の顕微鏡写真(×1,000倍)である。 ジオトリカム カンジダム菌SIGMA-54の繊維状菌糸体の赤外吸収スペクトル法(FT−IR)での解析図である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76の繊維状菌糸体を水に分散させ、パルプスラリー様にした状態の写真である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76から得た繊維状多糖体を不織布様にしたものの写真である。 ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76から得た繊維状多糖体をシート様にしたものの写真である。 本発明の実施の一形態に係る、キチン・キトサンを含む多糖体含有物の製造工程を示すフローチャートである。 (a)(b)は、マウス背部皮下組織へ本発明シートを埋没する施術後35日目にその施術部位の様子を観察した結果を示す写真である。 (a)(b)は、マウス背部皮下組織へ市販シートを埋没する施術後35日目にその施術部位の様子を観察した結果を示す写真である。 マウス背部皮下組織へ本発明シートを埋没する施術後63日目にその施術部位の様子を観察した結果を示す写真である。 (a)(b)は、マウス背部皮下組織へ市販シートを埋没する施術後63日目にその施術部位の様子を観察した結果を示す写真である。 マウス背部皮下組織へ本発明シートを埋没する施術後91日目にその施術部位の様子を観察した結果を示す写真である。 マウス背部皮下組織へ市販シートを埋没する施術後91日目にその施術部位の様子を観察した結果を示す写真である。 マウス背部皮下組織へ本発明シートおよび市販シート(コントロール)をそれぞれ埋没する施術後、両シートの生体吸収率および施術部位での新生血管発現量を経時的に調べ、その結果を比較して示すグラフである。

Claims (16)

  1. (1)ジオトリカム属菌を液体培地で培養増殖させる工程、
    (2)得られた菌糸体を培養液から分離後、滅菌処理する工程、
    (3)得られた繊維状の菌糸体から細胞質成分を脱離させ、菌糸体の細胞壁からなる多糖体含有物を得る工程、
    (4)得られた菌糸体の細胞壁からなる多糖体含有物をアセチル化処理する工程
    を含むことを特徴とする、キチン・キトサンを含む多重積層構造の多糖体含有物を製造する方法。
  2. 多糖体含有物が、キチン成分を高めた多糖体含有物である、請求項記載の製造方法。
  3. ジオトリカム アミラリエ(Geotrichum armillariae),ジオトリカム キャピタタム(Geotrichum capitatum),ジオトリカム リンキ(Geotrichum linkii),ジオトリカム セリシュウム(Geotrichum sericeum),ジオトリカム シトリ‐アウランティ(Geotrichum citri-aurantii),ジオトリカム カンディダム(Geotrichum candidum),ジオトリカム プルモニュウム(Geotrichum pulmoneum),ジオトリカム クレバタム(Geotrichum clavatum),ジオトリカム エリエンス(Geotrichum eriense),ジオトリカム ファメンタンス(Geotrichum fermentans),ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)およびジオトリカム クレバニィ(Geotrichum klebahnii)種から選ばれる1又は複数のジオトリカム属菌を用いることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
  4. ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)種のジオトリカム属菌を用いることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
  5. ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS127.76菌株を用いることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
  6. ジオトリカム フラグランス(Geotrichum fragrans)CBS164.32菌株を用いることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によりキチン・キトサンを含む多重積層構造の多糖体含有物を製造する工程、及び
    該多糖体含有物を原材料に使用して食品を製造する工程
    を含む、食品の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によりキチン・キトサンを含む多重積層構造の多糖体含有物を製造する工程、及び
    該多糖体含有物を原材料に使用して化粧品を製造する工程
    を含む、化粧品の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によりキチン・キトサンを含む多重積層構造の多糖体含有物を製造する工程、及び
    該多糖体含有物を材料に使用して、医療用の創傷保護被覆材を製造する工程
    を含む、医療用の創傷保護被覆材の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によりキチン・キトサンを含む多重積層構造の多糖体含有物を製造する工程、及び
    該多糖体含有物を材料に使用して、細胞培養シートを製造する工程
    を含む、細胞培養シートの製造方法。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法により製造された多重積層構造の多糖体含有物を含む、食用組成物。
  12. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法により製造された多重積層構造の多糖体含有物を含む、化粧用組成物。
  13. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法により製造された多重積層構造の多糖体含有物を材料に使用して製造された、医療用の創傷保護被覆材。
  14. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法により製造された多重積層構造の多糖体含有物を材料に使用して製造された、細胞培養シート。
  15. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法により製造された多重積層構造の多糖体含有物を材料に使用して製造された、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)に用いる薬物担体。
  16. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によりキチン・キトサンを含む多重積層構造の多糖体含有物を製造する工程、及び
    該多糖体含有物を材料に使用して、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)に用いる薬物担体を製造する工程
    を含む、DDSに用いる薬物担体の製造方法。
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