以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。各実施形態においては、半導体装置の構成を製造工程順に説明する。
(第1実施形態)
本発明の半導体装置の製造方法に係る実施の形態の一例として、PMOSFETの製造方法を例にとり、図1〜図2の製造工程断面図を用いて説明する。なお、背景技術で説明したものと同様の構成には、同一の番号を付して説明する。
まず、図1(a)に示すように、単結晶シリコンからなるシリコン基板11を用意し、その表面側に素子分離領域を形成する。この際、例えば、シリコン基板11の表面側に溝を形成し、この溝内に例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜を埋め込んだSTI(shallow trench isolation)構造の素子分離領域を形成する。
次に、素子分離領域で分離されたシリコン基板11上に、例えばシリコン酸窒化膜からなるゲート絶縁膜12を介して、例えばポリシリコンからなるゲート電極13をパターン形成する。この際、ゲート電極13上に例えばシリコン窒化膜からなるオフセット絶縁膜14が設けられるように、ゲート絶縁膜12、ゲート電極13、およびオフセット絶縁膜14を構成する各材料膜を積層成膜した後に、これらの積層膜をパターンエッチングする。
ここで、上記ゲート絶縁膜12の構成材料としては、シリコン酸窒化膜に限定されず、シリコン酸化膜でもよく、ハフニウムやアルミニウムを含む金属酸化膜であってもよい。また、ゲート電極13としては、ポリシリコンに限定されるものではなく、金属材料を含有してもよい。
次いで、図1(b)に示すように、ゲート絶縁膜12、ゲート電極13、およびオフセット絶縁膜14を覆う状態で、シリコン基板11上に、例えばシリコン窒化膜15’を成膜する。続いて、図1(c)に示すように、例えばドライエッチング法により、シリコン窒化膜15’(前記図1(b)参照)をエッチバックすることにより、ゲート絶縁膜12、ゲート電極13、およびオフセット絶縁膜14の側壁に、絶縁性のサイドウォール15を形成する。ここでは、このサイドウォール15が、例えばシリコン窒化膜で構成されることとするが、シリコン窒化膜以外でもよく、シリコン酸化膜またはこれらの積層構造で構成されていてもよい。
次に、図1(d)に示すように、シリコン基板11の表面を掘り下げるリセスエッチングを行う。この場合には、ゲート電極13上のオフセット絶縁膜14およびサイドウォール15をマスクにしたエッチングにより、シリコン基板11の表面層を掘り下げるリセスエッチングを行うことで、80nm程度の深さのリセス領域16を形成する。このリセスエッチングにおいては、等方性のエッチングを行うことにより、サイドウォール15の下方にまでリセス領域16が広げられるようにする。その後、希フッ酸を用いた洗浄処理により、シリコン基板11表面の自然酸化膜を除去する。なお、ここでは、サイドウォール15が設けられた状態で、リセスエッチングを行う例について説明するが、サイドウォール15を設けずに、リセスエッチングを行う場合であっても、本発明は適用可能である。
次いで、リセス領域16の表面、すなわち掘り下げられたシリコン基板11の表面に、シリコンとシリコンとは格子定数の異なる原子との混晶層をエピタキシャル成長させる。ここでは、PMOSFETを形成することから、この混晶層に挟まれるチャネル領域に圧縮応力を印加するため、シリコン(Si)とシリコンよりも格子定数の大きいゲルマニウム(Ge)とからなるSiGe層(混晶層)をエピタキシャル成長させる。
この際、本発明の特徴的な構成として、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側からSiGe層の膜厚方向の中央部に向かって高濃度となり、この中央部からSiGe層の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、上記SiGe層をエピタキシャル成長させる。ここでは、上記SiGe層が、第1のSiGe層(第1の層)、第2のSiGe層(第2の層)および第3のSiGe層(第3の層)からなる3層を順次積層して構成されることとする。
具体的には、図2(e)に示すように、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側から表面に向かって、後述する第2のSiGe層のGe濃度まで高濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第1のSiGe層21aをエピタキシャル成長させる。ここでは、Ge濃度が0〜30vol%の濃度範囲から30vol%〜50vol%の濃度範囲まで、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、1nm〜30nmの膜厚で第1のSiGe層21aを形成する。
上記第1のSiGe層21aの成膜条件としては、成膜ガスとして、ジクロロシラン(Dichlorosilane(DCS))、塩化水素(HCl)、水素(H2)により1.5vol%に希釈された水素化ゲルマニウム(GeH4)、を用い、ガス流量をDCS/HCl=10〜100/10〜100(ml/min)とし、GeH4は0〜50(ml/min)から100〜200(ml/min)まで連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。ただし、上記ガス流量は、標準状態における体積流量を示すものとし、これ以降に示すガス流量についても同様であることとする。
ここで、SiGe層を構成する第1のSiGe層21aを、上述したような濃度勾配を有して形成することで、同じ膜厚で一定濃度のGeを含有させたSiGe層を形成する場合と比較して、後述する第2のSiGe層を臨界膜厚以下で高濃度化することが可能となる。また、シリコン基板11と、後述する最も高濃度のGeが含有される第2のSiGe層との間に、上記第1のSiGe層21aが介在されることで、第1のSiGe層21aと第2のSiGe層とのGeの濃度差による成膜の不具合が緩和される。なお、ここでは、シリコン基板11側から表面に向かって、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第1のSiGe層21aを形成することとしたが、この濃度勾配は段階的であってもよい。この場合には、上記GeH4のガス流量を段階的に変化させる。
また、背景技術で説明したように、リセス領域の表面に、全体に一定濃度のGeが含有されるようにSiGe層を直接形成する場合でも、成膜の都合上、リセス領域の表面に低濃度のGeが含有されるSiGe層が形成される場合もあるが、本実施形態はそれとは異なり、後述する第2のSiGe層とは成膜条件を変えて、上述したような濃度勾配を有してGeが含有されるように、所定の膜厚で、第1のSiGe層21aを形成する。
次に、図2(f)に示すように、第1のSiGe層21a上に、3層のうちで最も高濃度のGeが含有されるように、第2のSiGe層21bをエピタキシャル成長させる。ここでは、Ge濃度が30vol%〜50vol%となるように、20nm〜100nmの膜厚で第2のSiGe層21bを形成する。
この第2のSiGe層21bの成膜条件としては、上記第1のSiGe層21aと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/GeH4=10〜100/10〜100/100〜200(ml/min)とする。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、第2のSiGe層22bは、Ge濃度が高く、臨界膜厚の範囲内で、できるだけ膜厚が厚い方が好ましい。これにより、形成するPMOSFETのチャネル領域に効果的にストレスを印加することが可能となる。ここでは、上述したように、シリコン基板11側から表面に向かって、第2のSiGe層21bのGe濃度まで高濃度となるような濃度勾配を有して第1のSiGe層21aを形成し、かつ、後述するように、第2のSiGe層22b側から表面に向かって、第2のSiGe層22bのGe濃度から低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように第3のSiGe層を形成することで、SiGe層全体に一定濃度のGeを含有させる場合と比較して、臨界膜厚の範囲内で上記第2のSiGe層21bの高濃度化が可能となる。
次に、図2(g)に示すように、第2のSiGe層21b上に、第2のSiGe層21b側から表面に向かって、第2のSiGe層21bのGe濃度から低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第3のSiGe層21cをエピタキシャル成長させる。ここでは、第2のSiGe層21bのGe濃度が30vol%〜50vol%であることから、第2のSiGe層21b側から表面に向かって、30vol%〜50vol%の濃度範囲から0vol%〜30vol%の濃度範囲まで連続的に低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、10nm〜50nmの膜厚で第3のSiGe層21cを形成する。
この第3のSiGe層21cの成膜条件としては、上記第1のSiGe層21a、第2のSiGe層21bと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl=10〜100/10〜100(ml/min)とする。そして、GeH4のガス流量を100〜200(ml/min)から0〜50(ml/min)まで連続的に変化させる。処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、上述したような濃度勾配を有して第3のSiGe層21cを形成することで、第3のSiGe層21cのGe濃度は、第2のSiGe層21bと比較して低濃度となることから、後述するように、第3のSiGe層21cをシリサイド化して、均一な膜状のシリサイド層を形成することが可能となる。なお、ここでは、第2のSiGe層21b側から表面に向かって、連続的に低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第3のSiGe層21cを形成することとしたが、この濃度勾配は段階的であってもよい。この場合には、上記GeH4のガス流量を段階的に変化させる。
以上のようにして、第3のSiGe層21cを形成することで、リセス領域16の表面に、第1のSiGe層21a、第2のSiGe層21bおよび第3のSiGe層21cを順次積層してなるSiGe層21が形成される。ここで、上記リセス領域16は80nm程度の深さで形成されることから、第1のSiGe層21a、第2のSiGe層21bおよび第3のSiGe層21cで順次埋め込まれ、第3のSiGe層21cは、シリコン基板11の表面から盛り上がった状態となる。そして、このSiGe層21には、シリコン基板11側からSiGe層21の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiGe層21の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されている。
その後、オフセット絶縁膜14、サイドウォール15をマスクとしたイオン注入法により、例えばボロンからなるp型不純物をドーピングする。これにより、主として上記SiGe層21が、本実施形態の製造方法により形成されるPMOSFETのソース・ドレイン領域となり、SiGe層21により挟まれたゲート電極13直下のシリコン基板11の領域がチャネル領域18となる。
次いで、図2(h)に示すように、オフセット絶縁膜14上、サイドウォール15上およびSiGe層21上に、例えばニッケルからなる高融点金属膜(図示省略)を形成した後、アニール処理を行い、SiGe層21の表面側をシリサイド化して、ニッケルシリサイドからなるシリサイド層Sを形成する。ここでは、第3のSiGe層21c(前記図2(g)参照)がシリサイド化されることとする。この際、第3のSiGe層21cに第2のSiGe層21bと比較して低濃度の不純物が含有されるため、SiGe層21の表面側に均一な膜状のシリサイド層Sが形成される。その後、未反応の高融点金属膜を除去する。なお、ここでは、シリサイド層Sとして、ニッケルシリサイドを形成することとしたが、本発明はこれに限定されず、コバルトシリサイド、チタンシリサイドからなるシリサイド層Sを形成してもよい。
以上のようにして、SiGe層21によるチャネル領域18へのストレス印加(圧縮応力)により、チャネル領域18を歪ませたPMOSFETが製造される。
このような半導体装置の製造方法およびこれにより得られる半導体装置によれば、シリコン基板11側からSiGe層21の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiGe層21の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、SiGe層21を形成することで、SiGe層全体に一定濃度のGeを含有させる場合と比較して、臨界膜厚の範囲内で、中央部(第2のSiGe層21b)のGeの高濃度化が図れる。これにより、チャネル領域18に効果的にストレスを印加することが可能となる。したがって、チャネル領域18を歪ませて、キャリア移動度を向上させることができる。また、第3のSiGe層21cに、第2のSiGe層21bと比較して低濃度のGeが含有されることで、SiGe層21の表面側に均一な膜状のシリサイド層Sを形成することできる。したがって、SiGe層21のコンタクト抵抗の低抵抗化を図ることができ、このSiGe層21に接続する際のリーク電流の発生を防止することができる。以上のことから、トランジスタの特性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、成膜ガスを変えずに、成膜条件を変更するだけの一連の作業で、Geの濃度勾配を有するSiGe層21を成膜することができるため、生産性にも優れている。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、PMOSFETの製造方法を例にとり説明したが、本実施形態においてはNMOSFETの製造方法を例にとり、図3を用いて説明する。なお、シリコン基板11の表面を掘り下げるまでの工程は、図1(a)〜(d)を用いて説明した工程と同様に行うこととする。
NMOSFETを製造する場合にも、図3(a)に示すように、リセス領域16の表面、すなわち、掘り下げられたシリコン基板11の表面に、シリコンとシリコンとは格子定数の異なる原子とからなる混晶層をエピタキシャル成長させる。この場合には、この混晶層に挟まれるチャネル領域に引っ張り応力を印加するため、シリコン(Si)とシリコンよりも格子定数の小さい炭素(C)とからなるシリコン炭素(SiC)層(混晶層)をエピタキシャル成長させる。
この場合であっても、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側からSiC層の膜厚方向の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiC層の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、上記SiC層をエピタキシャル成長させる。ここでは、第1実施形態と同様に、上記SiC層が、第1のSiC層(第1の層)、第2のSiC層(第2の層)および第3のSiC層(第3の層)からなる3層を順次積層して構成されることとする。
具体的には、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側から表面に向かって、後述する第2のSiC層のC濃度まで高濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第1のSiC層22aをエピタキシャル成長させる。ここでは、C濃度が0〜1.0vol%の濃度範囲から1.0vol%〜3.0vol%の濃度範囲まで、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、1nm〜30nmの膜厚で第1のSiC層22aを形成する。
この第1のSiC層22aの成膜条件としては、成膜ガスとして、DCS、HCl、水素(H2)により1vol%に希釈されたモノメチルシラン(SiH3CH3)を用い、ガス流量をDCS/HCl=10〜100/10〜100とし、SiH3CH3は0〜25(ml/min)から25〜50(ml/min)まで連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、上述したような濃度勾配を有する第1のSiC層22aを形成することで、同じ膜厚で一定濃度のCを含有させたSiC層を形成する場合と比較して、後述する第2のSiC層を臨界膜厚以下で高濃度化することが可能となる。また、シリコン基板11と、後述する最も高濃度のCが含有される第2のSiC層との間に、上記第1のSiC層22aが介在されることで、第1のSiC層22aと第2のSiC層とのCの濃度差による成膜の不具合が緩和される。なお、ここでは、シリコン基板11側から表面に向かって、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第1のSiC層22aを形成することとしたが、この濃度勾配は段階的であってもよい。この場合には、上記SiH3CH3のガス流量を段階的に変化させる。
また、リセス領域の表面に、全体に一定濃度のCが含有されるようにSiC層を直接形成する場合でも、成膜の都合上、リセス領域の表面に低濃度のCが含有されるSiC層が形成される場合もあるが、本実施形態はそれとは異なり、後述する第2のSiC層とは成膜条件を変えて、上述したような濃度勾配を有してCが含有されるように、所定の膜厚で、第1のSiC層21aを形成する。
次に、図3(b)に示すように、第1のSiC層22a上に、3層のうちで最も高濃度に不純物が含有されるように、第2のSiC層22bをエピタキシャル成長させる。ここでは、C濃度が1.0vol%〜3.0vol%となるように、20nm〜100nmの膜厚で第2のSiC層22bを形成する。
この第2のSiC層22bの成膜条件としては、上記第1のSiC層22aと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/SiH3CH3=10〜100/10〜100/25〜50(ml/min)とする。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、第2のSiC層22bは、C濃度が高く、臨界膜厚の範囲内で、できるだけ膜厚が厚い方が好ましい。これにより、形成するNMOSFETのチャネル領域に効果的にストレスを印加することが可能となる。ここでは、上述したように、シリコン基板11側から表面に向かって、第2のSiC層22bのC濃度まで高濃度となるような濃度勾配を有して第1のSiC層22aを形成し、かつ、後述するように、第2のSiC層22b側から表面に向かって、第2のSiC層22bのC濃度から低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように第3のSiC層を形成することで、SiC層全体に一定濃度のCを含有させる場合と比較して、臨界膜厚の範囲内で上記第2のSiC層22bの高濃度化が可能となる。
次に、図3(c)に示すように、第2のSiC層22b上に、第2のSiC層22b側から表面に向かって、第2のSiC層22bのC濃度から低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第3のSiC層22cをエピタキシャル成長させる。ここでは、第2のSiC層21bのC濃度が1.0vol%〜3.0vol%であることから、第2のSiC層22b側から表面に向かって、1.0vol%〜3.0vol%の濃度範囲から0vol%〜1.0vol%の濃度範囲まで連続的に低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、10nm〜50nmの膜厚で、第3のSiC層22cを形成する。
この第3のSiC層22cの成膜条件としては、上記第1のSiC層22a、第2のSiC層22bと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl=10〜100/10〜100(ml/min)とする。そして、SiH3CH3のガス流量を25〜50(ml/min)から0〜25(ml/min)まで連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、上述したような濃度勾配を有して第3のSiC層22cを形成することで、第3のSiC層22cのC濃度は、第2のSiC層22bと比較して低濃度となることから、後述するように、第3のSiC層22cをシリサイド化して、均一な膜状のシリサイド層を形成することが可能となる。なお、ここでは、第2のSiC層22b側から表面に向かって、連続的に低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第3のSiC層22cを形成することとしたが、この濃度勾配は段階的であってもよい。この場合には、上記SiH3CH3のガス流量を段階的に変化させる。
以上のようにして、第3のSiC層22cを形成することで、リセス領域16の表面に、第1のSiC層22a、第2のSiC層22bおよび第3のSiC層22cを順次積層してなるSiC層22が形成される。ここで、上記リセス領域16は80nm程度の深さで形成されることから、第1のSiC層22a、第2のSiC層22bおよび第3のSiC層22cで順次埋め込まれ、第3のSiC層22cは、シリコン基板11の表面から盛り上がった状態となる。そして、このSiC層22には、シリコン基板11側からSiC層22の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiC層22の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されている。
その後、オフセット絶縁膜14、サイドウォール15をマスクとしたイオン注入法により、例えばAsからなるn型不純物をドーピングする。これにより、主として上記SiC層22が、本実施形態の製造方法により形成されるNMOSFETのソース・ドレイン領域となり、SiC層22により挟まれたゲート電極13直下のシリコン基板11の領域がチャネル領域18となる。
次いで、図3(d)に示すように、オフセット絶縁膜14上、サイドウォール15上およびSiC層22上に、例えばニッケルからなる高融点金属膜(図示省略)を形成した後、アニール処理を行い、SiC層22の表面側をシリサイド化して、ニッケルシリサイドからなるシリサイド層Sを形成する。ここでは、第3のSiC層22c(前記図3(c)参照)がシリサイド化されることとする。この際、第3のSiC層22cに第2のSiC層22bと比較して低濃度の不純物が含有されるため、SiC層22の表面側に均一な膜状のシリサイド層Sが形成される。その後、未反応の高融点金属膜を除去する。なお、ここでは、シリサイド層Sとして、ニッケルシリサイドを形成することとしたが、本発明はこれに限定されず、コバルトシリサイド、チタンシリサイドからなるシリサイド層Sを形成してもよい。
以上のようにして、SiC層21によるチャネル領域18へのストレス印加(引っ張り応力)により、チャネル領域18を歪ませたNMOSFETが製造される。
このような半導体装置の製造方法およびこれにより得られる半導体装置によっても、シリコン基板11側からSiC層22の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiC層22の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、SiC層22を形成することで、SiC層全体に一定濃度のCを含有させる場合と比較して、臨界膜厚の範囲内で、第2のSiC層22bのCの高濃度化が図れる。これにより、チャネル領域18に効果的にストレスを印加することが可能となる。したがって、チャネル領域18を歪ませて、キャリア移動度を向上させることができる。また、第3のSiC層22cに第2のSiC層22bと比較して低濃度のCが含有されることで、SiC層22の表面側に均一な膜状のシリサイド層Sを形成することできる。したがって、SiC層22のコンタクト抵抗の低抵抗化を図ることができ、このSiC層22に接続する際のリーク電流の発生を防止することができる。以上のことから、トランジスタの特性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、成膜ガスを変えずに、成膜条件を変更するだけの一連の作業で、Cの濃度勾配を有するSiC層22を成膜することができるため、生産性にも優れている。
なお、上述した第1実施形態および第2実施形態においては、SiGe層またはSiC層からなる混晶層が、3層で構成された例について説明したが、シリコン基板側から混晶層の中央部に向かって高濃度となり、中央部から混晶層の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してGeまたはCが含有されるように、混晶層が形成されていればよく、3層以上の複数層で構成されていてもよい。また、上記濃度勾配を有するように連続的に変化させた単一層で構成されていてもよい。
(第3実施形態)
上記第1実施形態および第2実施形態では、混晶層を形成した後にイオンドーピング法により、混晶層に不純物を導入する例について説明したが、本実施形態においては、不純物を導入した状態の混晶層をエピタキシャル成長させる例について、図4を用いて説明する。ここでは、PMOSFETの製造方法を例にとり、例えばボロンからなる不純物を含むSiGe層(混晶層)をエピタキシャル成長させる。なお、シリコン基板11の表面を掘り下げるまでの工程は、図1(a)〜(d)を用いて説明した工程と同様に行うこととする。
本実施形態では、第1実施形態で図2を用いて説明したように、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側からSiGe層の膜厚方向の中央部に向かって高濃度となり、この中央部からSiGe層の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、上記SiGe層をエピタキシャル成長させる。また、この際、シリコン基板11側から表面に向かって高濃度となるような濃度勾配を有して、例えばボロンからなるp型不純物が含有されるようにする。
ここでは、第1実施形態と同様に、上記SiGe層が、第1のSiGe層、第2のSiGe層および第3のSiGe層からなる3層を順次積層して構成されることとする。また、これら3層のGeの濃度勾配は第1実施形態のSiGe層と同様であることとする。
具体的には、まず、図4(a)に示すように、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側から表面に向かって、後述する第2のSiGe層のGe濃度まで高濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第1のSiGe層23aをエピタキシャル成長させる。ここでは、Ge濃度が0〜30vol%の濃度範囲から30vol%〜50vol%の濃度範囲まで、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第1のSiGe層23aを形成する。この際、上記3層のうち、最も低濃度のボロンが含有されるように、例えばボロン濃度が1×1018cm3〜1×1019cm3の第1のSiGe層23aを形成する。また、この第1のSiGe層23aの膜厚は1nm〜30nmであることとする。
上記第1のSiGe層23aの成膜条件としては、成膜ガスとして、DCS、HCl、水素(H2)により1.5vol%に希釈されたGeH4および水素(H2)により100ppmに希釈されたジボラン(B2H6)を用い、ガス流量をDCS/HCl/B2H6=10〜100/10〜100/1〜50(ml/min)とし、GeH4は0〜50(ml/min)から100〜200(ml/min)まで変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、この低濃度の不純物が含有される第1のSiGe層23aは、後述するように、形成するSiGe層の中でもチャネル領域に近くに配置されるため、熱処理によるSiGe層からのボロンの拡散が抑制され、ショートチャネル効果が防止される。そして、ショートチャネル効果を確実に防止するため、形成するPMOSFETのキャリア移動度を低下させない範囲で、上記第1のSiGe層23aは、上記膜厚の範囲内でも10nm〜30nm程度の膜厚を有して形成されることが、さらに好ましい。
なお、リセス領域の表面に、全体に一定濃度のボロンを含むSiGe層を直接形成する場合でも、成膜の都合上、リセス領域の表面に低濃度のボロンが含有されるSiGe層が形成される場合もあるが、本実施形態はそれとは異なり、後述する第2のSiGe層とは成膜条件を変えて、所定の膜厚となるように、低濃度の不純物が含有される第1のSiGe層23aを形成する。
次に、図4(b)に示すように、第1のSiGe層23a上に、3層のうちで最も高濃度のGeが含有されるように、第2のSiGe層23bをエピタキシャル成長させる。ここでは、Ge濃度が30vol%〜50vol%となるように、第2のSiGe層23bを20nm〜100nmの膜厚で形成する。
この際、第2のSiGe層23b’と第2のSiGe層23b''とを順次積層することで、第2のSiGe層23bを形成する。ここで、下層側となる第2のSiGe層23b’は、第1のSiGe層23a側から表面に向かって、第1のSiGe層23aの不純物濃度から後述する第2のSiGe層23b''の不純物濃度まで連続的に変化するような濃度勾配を有して不純物が含有されるように、第2のSiGe層23b’を形成する。ここでは、第1のSiGe層23aのボロンの濃度範囲が1×1018cm3〜1×1019cm3であり、後述するように、第2のSiGe層23b''のボロンの濃度範囲が1×1019cm3〜5×1020cm3であることから、第1のSiGe層23a側から表面に向かって、1×1018cm3〜1×1019cm3の濃度範囲から1×1019cm3〜5×1020cm3の濃度範囲まで連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してボロンが含有されるように、第2のSiGe層23b’を形成する。この第2のSiGe層23b’の膜厚は、1nm〜20nmであることとする。
この第2のSiGe層23b’の成膜条件としては、上記第1のSiGe層23aと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/GeH4=10〜100/10〜100/100〜200(ml/min)とする。そして、H2により100ppmに希釈されたB2H6のガス流量を1〜50(ml/min)から50〜300(ml/min)に連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、3層のうちで最も不純物濃度の低い第1のSiGe層23aと、後述する第1のSiGe層23aよりも不純物濃度の高い第2のSiGe層b''との間に、上記第2のSiGe層23b’が介在されることで、第1のSiGe層23aと第2のSiGe層23b’との不純物の濃度差による成膜の不具合が緩和される。このため、第1のSiGe層23aと第2のSiGe層23b’の不純物の濃度差が小さい場合には、第2のSiGe層23b’を形成しなくてもよい。また、ここでは、第1のSiGe層23a側から第2のSiGe層b''側に向かって、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有して不純物が含有されるように、第2のSiGe層23bを形成することとしたが、濃度勾配は段階的であってもよい。この場合には、上記B2H6のガス流量を段階的に変化させる。
次いで、第2のSiGe層23b’上に、第1のSiGe層23aよりも高濃度の不純物が含有されるように、第2のSiGe層23b''を形成する。ここでは、ボロン濃度を1×1019cm3〜5×1020cm3とし、上記第2のSiGe層23b’と第2のSiGe層23b''との総膜厚が20nm〜100nmとなるように、第2のSiGe層23b''を形成する。
この第2のSiGe層23b''の成膜条件としては、上記第1のSiGe層23a、第2のSiGe層23b’と同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/GeH4/B2H6=10〜100/10〜100/100〜200/50〜300(ml/min)とし、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
次に、図4(c)に示すように、第2のSiGe層23b上に、第2のSiGe層23b側から表面に向かって、第2のSiGe層23bのGe濃度から低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第3のSiGe層23cをエピタキシャル成長させる。ここでは、第2のSiGe層23bのGe濃度が30vol%〜50vol%であることから、第2のSiGe層23b側から表面に向かって、30vol%〜50vol%の濃度範囲から0vol%〜30vol%の濃度範囲まで連続的に低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されるように、第3のSiGe層23cを形成する。
この際、第2のSiGe層23b''と同程度の高濃度の不純物が含有されるように、上記第3のSiGe層23cを形成する。ここでは、ボロン濃度が1×1019cm3〜5×1020cm3となるように、上記第3のSiGe層23cを形成する。第3のSiGe層23cの膜厚は10nm〜50nmであることとする。
この第3のSiGe層23cの成膜条件としては、上記第1のSiGe層23a、第2のSiGe層23bと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/B2H6=10〜100/10〜100/50〜300(ml/min)とする。そして、GeH4のガス流量を100〜200(ml/min)から0〜50(ml/min)まで連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
以上のようにして、第3のSiGe層23cを形成することで、リセス領域16の表面に、第1のSiGe層23a、第2のSiGe層23bおよび第3のSiGe層23cを順次積層してなるSiGe層23が形成される。このSiGe層23には、シリコン基板11側からSiGe層23の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiGe層23の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してGeが含有されているとともに、シリコン基板11側から表面に向かって、高濃度となるような濃度勾配を有してボロンが含有されている。そして、このSiGe層23がPMOSFETのソース・ドレイン領域となり、SiGe層23によって挟まれたゲート電極13直下のシリコン基板11の領域がチャネル領域18となる。
次いで、図4(d)に示すように、第1実施形態と同様に、SiGe層23の表面側、ここでは、第3のSiGe層23cをシリサイド化し、シリサイド層Sを形成する。
以上のようにして、SiGe層23によるチャネル領域18へのストレス印加(圧縮応力)により、チャネル領域18を歪ませたPMOSFETが製造される。
このような半導体装置の製造方法およびこれにより得られる半導体装置によれば、第1実施形態と同様の濃度勾配を有してGeが含有されるようにSiGe層23を形成することから、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態の半導体装置の製造方法および半導体装置によれば、シリコン基板11側から表面に向かって高濃度となるような濃度勾配を有してボロンからなる不純物が含有されるように、SiGe層23をエピタキシャル成長させることから、熱処理による不純物の拡散が抑制され、ショートチャネル効果が防止される。特に、本実施形態によれば、チャネル領域18に近い第1のSiGe層23aを他の層と比較して低濃度の不純物が含有されるように形成するため、ショートチャネル効果を確実に防止することができる。また、上記SiGe層23とゲート電極13の直下領域からの距離を広げなくてもよいため、十分なキャリア移動度が得られる。
なお、上記第3実施形態においては、SiGe層23に、不純物としてボロンを含有させる例について説明したが、不純物としては、上記ボロン以外に、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)を用いてもよい。不純物として、例えばGaを用いる場合には、上述した第3実施形態において、成膜ガスとして用いたB2H6の代わりに、トリエチルガリウム(Ga(C2H5)3)またはトリメチルガリウム(Ga(CH3)3)を適用する。また、不純物として、例えばInを用いる場合には、成膜ガスとして用いたB2H6の代わりに、トリエチルインジウム(In(C2H5)3)またはトリメチルインジウム(In(CH3)3)を適用する。
(第4実施形態)
上記第3実施形態では、PMOSFETの製造方法を例にとり説明したが、本実施形態においてはNMOSFETの製造方法を例にとり、図5を用いて説明する。なお、シリコン基板11の表面を掘り下げるまでの工程は、図1(a)〜(d)を用いて説明した工程と同様に行うこととする。
本実施形態では、第2実施形態で図3を用いて説明したように、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側からSiC層の膜厚方向の中央部に向かって高濃度となり、この中央部からSiC層の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、上記SiC層をエピタキシャル成長させる。また、この際、シリコン基板11側から表面に向かって高濃度となるような濃度勾配を有して例えばAsからなるn型不純物が含有されるようにする。
ここでは、第2実施形態と同様に、上記SiC層が、第1のSiC層、第2のSiC層および第3のSiC層からなる3層を順次積層して構成されることとする。また、これら3層のCの濃度勾配は第2実施形態のSiC層と同様であることとする。
具体的には、まず、図5(a)に示すように、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側から表面に向かって、後述する第2のSiC層のC濃度まで高濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第1のSiC層24aをエピタキシャル成長させる。ここでは、C濃度が0〜1.0vol%の濃度範囲から1.0vol%〜3.0vol%の濃度範囲まで、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第1のSiC層24aを形成する。この際、上記3層のうち、最も低濃度のAsが含有されるように、例えばAs濃度が1×1018cm3〜1×1019cm3の第1のSiC層24aを形成する。また、この第1のSiC層24aの膜厚は1nm〜30nmであることとする。
上記第1のSiC層24aの成膜条件としては、成膜ガスとして、DCS、HCl、H2により1vol%に希釈されたSiH3CH3およびH2により1vol%に希釈された水素化砒素(AsH3)を用い、ガス流量をDCS/HCl/AsH3=10〜100/10〜100/1〜25(ml/min)とし、SiH3CH3は0〜25(ml/min)から25〜50(ml/min)まで変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、この低濃度の不純物が含有される第1のSiC層24aは、後述するように、形成するSiC層の中でもチャネル領域に近くに配置されるため、熱処理によるSiC層からのAsの拡散が抑制され、ショートチャネル効果が防止される。そして、ショートチャネル効果を確実に防止するため、形成するNMOSFETのキャリア移動度を低下させない範囲で、上記第1のSiC層24aは、上記膜厚の範囲内でも10nm〜30nm程度の膜厚を有して形成されることが、さらに好ましい。
なお、リセス領域の表面に、全体に一定濃度のAsを含むSiC層を直接形成する場合でも、成膜の都合上、リセス領域の表面に低濃度のAsが含有されるSiC層が形成される場合もあるが、本実施形態はそれとは異なり、後述する第2のSiC層とは成膜条件を変えて、所定の膜厚となるように、低濃度の不純物が含有される第1のSiC層24aを形成する。
次に、図5(b)に示すように、第1のSiC層24a上に、3層のうちで最も高濃度のCが含有されるように、第2のSiC層24bをエピタキシャル成長させる。ここでは、C濃度が1.0vol%〜3.0vol%となるように、第2のSiC層24bを20nm〜100nmの膜厚で形成する。
この際、第2のSiC層24b’と第2のSiC層24b''とを順次積層することで、第2のSiC層24bを形成する。ここで、下層側となる第2のSiC層24b’は、第1のSiC層24a側から表面に向かって、第1のSiC層24aの不純物濃度から後述する第2のSiC層24b''の不純物濃度まで連続的に変化するような濃度勾配を有して不純物が含有されるように、第2のSiC層24b’を形成する。ここでは、第1のSiC層24aのAsの濃度範囲が1×1018cm3〜1×1019cm3であり、後述するように、第2のSiC層24b''のAsの濃度範囲が1×1019cm3〜5×1020cm3であることから、第1のSiC層24a側から表面に向かって、1×1018cm3〜1×1019cm3の濃度範囲から1×1019cm3〜5×1020cm3の濃度範囲まで連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してAsが含有されるように、第2のSiC層24b’を形成する。この第2のSiC層24b’の膜厚は、1nm〜20nmであることとする。
この第2のSiC層24b’の成膜条件としては、上記第1のSiC層24aと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/SiH3CH3=10〜100/10〜100/25〜50(ml/min)とする。そして、H2により1vol%に希釈されたAsH3のガス流量を1〜25(ml/min)から25〜50(ml/min)に連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
ここで、3層のうちで最も不純物濃度の低い第1のSiC層24aと、後述するように、第1のSiC層24aよりも不純物濃度の高い第2のSiC層24b''との間に、上記第2のSiC層24b’が介在されることで、第1のSiC層24aと第2のSiC層24b''との不純物の濃度差による成膜の不具合が緩和される。このため、第1のSiC層24aと第2のSiC層24b''の不純物の濃度差が小さい場合には、第2のSiC層24b’を形成しなくてもよい。また、ここでは、第1のSiC層24a側から第2のSiC層24b''側に向かって、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有して不純物が含有されるように、第2のSiC層24b’を形成することとしたが、この濃度勾配は段階的であってもよい。この場合には、上記AsH3のガス流量を段階的に変化させる。
次いで、第2のSiC層24b’上に、第1のSiC層24aよりも高濃度の不純物が含有されるように、第2のSiC層24b''を形成する。ここでは、As濃度を1×1019cm3〜5×1020cm3とし、上記第2のSiC層24b’と第2のSiC層24b''との総膜厚が20nm〜100nmとなるように、第2のSiC層24b''を形成する。
この第2のSiC層24b''の成膜条件としては、上記第1のSiC層24a、第2のSiC層24b’と同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/SiH3CH3/AsH3=10〜100/10〜100/25〜50/25〜50(ml/min)とし、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
次に、図5(c)に示すように、第2のSiC層24b上に、第2のSiC層24b側から表面に向かって、第2のSiC層24bのC濃度から低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第3のSiC層24cをエピタキシャル成長させる。ここでは、第2のSiC層24bのC濃度が1.0vol%〜3.0vol%であることから、第2のSiC層24b側から表面に向かって、1.0vol%〜3.0vol%の濃度範囲から0vol%〜1.0vol%の濃度範囲まで連続的に低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるように、第3のSiC層24cを形成する。
この際、第2のSiC層24b''と同程度の高濃度の不純物が含有されるように、上記第3のSiC層24cを形成する。ここでは、ボロン濃度が1×1019cm3〜5×1020cm3となるように、上記第3のSiC層24cを形成する。第3のSiC層24cの膜厚は10nm〜50nmであることとする。
この第3のSiC層24cの成膜条件としては、上記第1のSiC層24a、第2のSiC層24bと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/AsH3=10〜100/10〜100/25〜50(ml/min)とする。そして、SiH3CH3のガス流量を25〜50(ml/min)から0〜25(ml/min)まで連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
以上のようにして、第3のSiC層24cを形成することで、リセス領域16の表面に、第1のSiC層24a、第2のSiC層24bおよび第3のSiC層24cを順次積層してなるSiC層24が形成される。このSiC層24には、シリコン基板11側からSiC層24の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiC層24の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されているとともに、シリコン基板11側から表面に向かって、高濃度となるような濃度勾配を有してAsが含有されている。そして、このSiC層24がNMOSFETのソース・ドレイン領域となり、SiC層24によって挟まれたゲート電極13直下のシリコン基板11の領域がチャネル領域18となる
次いで、図5(d)に示すように、第2実施形態と同様に、SiC層24の表面側、ここでは、第3のSiC層24cをシリサイド化し、シリサイド層Sを形成する。
以上のようにして、SiC層24によるチャネル領域18へのストレス印加(引っ張り応力)により、チャネル領域18を歪ませたNMOSFETが製造される。
このような半導体装置の製造方法およびこれにより得られる半導体装置によれば、第2実施形態と同様の濃度勾配を有してCが含有されるようにSiC層24を形成することから、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態の半導体装置の製造方法および半導体装置によれば、シリコン基板11側から表面に向かって高濃度となるような濃度勾配を有して不純物が含有されるように、SiC層24をエピタキシャル成長させることから、熱処理による不純物の拡散が抑制され、ショートチャネル効果が防止される。特に、本実施形態によれば、チャネル領域18に近い第1のSiC層24aを他の層と比較して低濃度の不純物が含有されるように形成するため、ショートチャネル効果を確実に防止することができる。また、上記SiC層24とゲート電極13の直下領域からの距離を広げなくてもよいため、十分なキャリア移動度が得られる。
(変形例1)
なお、上記第4実施形態においては、NMOSFETのソース・ドレイン領域となるSiC層に、不純物としてAsを含有させる例について説明したが、不純物としては、上記As以外に、リン(P)を用いてもよい。
この場合にも、リセス領域16の表面に、シリコン基板11側から表面に向かって、C濃度が0〜1.0vol%の濃度範囲から1.0vol%〜3.0vol%の濃度範囲まで、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるとともに、1×1018cm3〜1×1019cm3の濃度範囲でPからなる不純物が含有されるように、1nm〜30nmの膜厚で第1のSiC層24aをエピタキシャル成長させる(前記図5(a)参照)。
この第1のSiC層24aの成膜条件としては、成膜ガスとして、DCS、HCl、H2により1vol%に希釈されたSiH3CH3およびH2により50ppmに希釈された水素化リン(PH3)を用い、ガス流量をDCS/HCl/PH3=10〜100/10〜100/1〜150(ml/min)とし、SiH3CH3は0〜25(ml/min)から25〜50(ml/min)まで変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
次に、第1のSiC層24a上に、C濃度が1.0vol%〜3.0vol%となるように、第2のSiC層24b’と第2のSiC層24b''とを順次積層してなる第2のSiC層24bを20nm〜100nmの膜厚でエピタキシャル成長させる(前記図5(b)参照)。
ここで、第1のSiC層24a側から表面に向かって、1×1018cm3〜1×1019cm3の濃度範囲から1×1019cm3〜5×1020cm3の濃度範囲まで連続的に高濃度となるような濃度勾配を有してPが含有されるように、下層側となる第2のSiC層24b’を1nm〜20nmの膜厚で形成する。
この第2のSiC層24b’の成膜条件としては、上記第1のSiC層24aと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/SiH3CH3=10〜100/10〜100/25〜50(ml/min)とする。そして、H2により50ppmに希釈されたPH3のガス流量を1〜150(ml/min)から150〜300(ml/min)に連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
次いで、第2のSiC層24b’上に、P濃度を1×1019cm3〜5×1020cm3とし、上記第2のSiC層24b’と第2のSiC層24b''との総膜厚が20nm〜100nmとなるように、第2のSiC層24b''を形成する。
この第2のSiC層24b''の成膜条件としては、上記第1のSiC層24a、第2のSiC層24b’と同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/SiH3CH3/PH3=10〜100/10〜100/25〜50/150〜300(ml/min)とし、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
次に、第2のSiC層24b上に、第2のSiC層24b側から表面に向かって、1.0vol%〜3.0vol%の濃度範囲から0vol%〜1.0vol%の濃度範囲まで連続的に低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されるとともに、P濃度が1×1019cm3〜5×1020cm3となるように、10nm〜50nmの膜厚で、第3のSiC層24cをエピタキシャル成長させる(前記図5(c)参照)。
この第3のSiC層24cの成膜条件としては、上記第1のSiC層24a、第2のSiC層24bと同一の成膜ガスを用い、ガス流量をDCS/HCl/PH3=10〜100/10〜100/150〜300(ml/min)とする。そして、SiH3CH3のガス流量を25〜50(ml/min)から0〜25(ml/min)まで連続的に変化させる。また、処理温度を650℃〜750℃、処理圧力を1.3kPa〜13.3kPaに設定する。
以上のようにして、第3のSiC層24cを形成することで、リセス領域16の表面に、第1のSiC層24a、第2のSiC層24bおよび第3のSiC層24cを順次積層してなるSiC層24が形成される。このSiC層24には、シリコン基板11側からSiC層24の中央部に向かって高濃度となり、中央部からSiGe層24の表面に向かって低濃度となるような濃度勾配を有してCが含有されているとともに、シリコン基板11側から表面に向かって、高濃度となるような濃度勾配を有してPが含有されている。
この後の工程は、第4実施形態と同様に行い、SiC層24の表面側、ここでは、第3のSiC層24cをシリサイド化して、シリサイド層Sを形成する(前記図5(d)参照)。
このような半導体装置の製造方法およびこれにより得られる半導体装置によっても、第4実施形態と同様に、Cの濃度勾配とPからなる不純物の濃度勾配を有してSiC層24が形成されることから、上述した第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上述した第3実施形態および第4実施形態ならびに変形例1においては、SiGe層またはSiC層からなる混晶層を、第1の層、第2の層および第3の層が順次積層された3層で、GeまたはCの濃度勾配を有するように構成した。また、不純物濃度の濃度勾配としては、低濃度の不純物が含有された第1の層と、高濃度の不純物が含有された第2の層の上層および第3の層とを備え、第1の層側から第2の層の上層側に向かって連続的に高濃度となるような濃度勾配を有して第2の層の下層を形成する例について説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、シリコン基板側から表面に向かって段階的に高濃度となるような濃度勾配を有して不純物が含有される複数層からなる混晶層を形成してもよく、連続的に高濃度となるような濃度勾配を有して不純物が含有される単一層からなる混晶層を形成してもよい。ただし、混晶層の中でもチャネル領域に近い部分は、不純物が低濃度で維持された領域が、10nm〜30nmの膜厚で構成されることが好ましい。
また、上述した実施形態においては、PMOSFETとNMOSFETとをそれぞれ形成する半導体装置の製造方法の例について説明したが、PMOSFETとNMOSFETの両方を搭載したCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)FETを形成する場合にも本発明は適用可能である。
11…シリコン基板、12…ゲート絶縁膜、13…ゲート電極、21,23…SiGe層、21a,23a…第1のSiGe層、21b,23b…第2のSiGe層、21c,23c…第3のSiGe層、22,24…第1のSiC層、22a,24a…第1のSiC層、22b,24b…第2のSiC層、22c,24c…第3のSiC層