JP5126997B2 - 水棲生物生育促進材 - Google Patents

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Description

本発明は、魚類、貝類及び藻類等に代表される水棲生物の生育を促進するための水棲生物生育促進材に関し、特に、魚類、貝類及び海草類を養殖する際に用いたり、藻場の再生のために藻類を繁殖させる際に用いる水棲生物生育促進材に関するものである。
従来より、カキ、ホタテガイ、海苔、モズク等の水棲生物を養殖する際に、水棲生物の生育に供しうる肥料等の有効物質を施すことが行われている。本件出願人は、テープ状不織布に小室を設け、この小室に肥料等の有効物質を収納した水棲生物養殖用施肥テープを提案した(特許文献1)。
実用新案登録第3145475号公報(実用新案登録請求の範囲の項)
本件出願人の提案した水棲生物養殖用施肥テープは、テープ状不織布に小室を設けることに関する工夫が施されてなるものである。本件出願人は、かかる水棲生物養殖用施肥テープを用いて、カキやホタテガイ等の貝類の養殖を行っていたところ、特定の有効物質を用いれば、カキやホタテガイ等の貝類の生育促進が、より向上することを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、粉状集合体が布材中に収納されてなり、海水中に浸漬して用いられる水棲生物生育促進材であって、該粉状集合体は、鉄粉、炭粉及び砂又は高炉スラグ粉を含有するものであり、該布材は、該粉状集合体を粉状のまま海水中に漏出させず、かつ海水を自由に透過させるものであることを特徴とする水棲生物生育促進材に関するものである。
本発明に係る水棲生物生育促進材は、粉状集合体1が布材2中に収納されてなるものである。本発明は粉状集合体1の構成に特徴を有するものであり、粉状集合体1は、鉄粉、炭粉及び砂又は高炉スラグ粉を含有するものである。鉄粉としては、Feを含有する金属であれば、どのようなものでも用いられる。たとえば、シリコン鉄粉が安価で好適である。また、製鋼スラグ粉等のスラグ粉もFeの含有量は比較的少ないが、安価であるので好適である。炭粉としては、炭素を主成分とする粉であれば、どのようなものでも用いられる。たとえば、木炭粉、竹炭粉、ヤシガラ炭粉、練炭粉、コークス粉等が用いられる。砂としては、従来周知のものが用いられ、たとえば、山砂、川砂、海砂、浜砂、陸砂等が用いられる。また、砂と共に又は砂に代えて、高炉スラグ粉を用いることもできる。高炉スラグ粉は、天然の岩石に類似した成分を有しており、砂の代替品として用いうるのである。鉄粉、炭粉及び砂又は高炉スラグ粉の配合割合は任意である。
また、粉状集合体1のみではなく、その他の肥料も粉状集合体1と共に布材2中に収納してもよい。その他の肥料としては、窒素質肥料、リン酸質肥料、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、有機酸、無機酸、キトサン、固形人糞等を単独で又は混合して用いることができる。その他の肥料は、一般的には粉末状、顆粒状又はゲル状で、粉状集合体1と共に布材2中に収納される。その他の肥料を収納することにより、特に海苔養殖において、海苔の色落ちを防止しうるという効果を奏する。
布材2は、粉状集合体1を収納するものである。したがって、粉状集合体1が布材1の外へ漏出するものであってはならない。海水に浸漬した場合に粉状集合体1が外部へ漏出すると、鉄粉と炭粉との間で電触作用が生じにくくなるからである。粉状集合体1の各粉が大きいものであれば、織物や編物であって、比較的目の粗いものであっても、各粉が漏出しないため用いることができる。また、粉状集合体1の各粉が小さいものであれば、目の細かい不織布や編織物が用いられる。そして、布材2は、海水を自由に透過させるものである。これにより、電触作用によって鉄粉から溶出した2価の鉄イオンが、布材2を通して、海水中に放出されるのである。
本発明において、布材2としては、以下のような不織布が好適である。すなわち、熱可塑性繊維を構成繊維の主体とし、熱可塑性繊維が低融点成分と高融点成分とからなる複合繊維であって、低融点成分が融着固化することにより、構成繊維相互間が結合している不織布を採用するのが好ましい。かかる不織布は、高強度であるため、波等の衝撃を受けても破損しにくいからである。
布材2に粉状集合体1を収納する方法としては、任意の方法が採用しうる。たとえば、布材2で袋を形成した後、この袋の中に粉状集合体1を収納し、袋の口を緊締、溶着、縫製等の手段で封すればよい。本発明において特に好ましいのは、前記した特許文献1に記載した方法である。
具体的には以下のとおりである。まず、熱可塑性繊維を構成繊維の主体とするテープ状不織布よりなる布材1を、その長手方向に沿って二つ折りする。そして、幅方向に亙って、熱可塑性繊維を融着固化して、間歇的に幅方向熱シール領域6,6,6・・・を作成する。幅方向熱シール領域6,6の間に、二つ折りした折り目に対向する長手方向端縁が開いた袋が形成されるので、その長手方向端縁から粉状集合体1を投入する。この後、折り目に対向する長手方向端縁において、熱可塑性繊維を融着固化し、長手方向端縁を熱シールして長手方向熱シール領域9を作成して、粉状集合体1を封すればよい。かかる方法で形成されたテープ状の水棲生物生育促進材は、その長手方向に直列に配置している小室群内に粉状集合体1が収納されており、小室群以外の箇所は、熱可塑性繊維が融着固化して、各小室を区画しているものである。かかるテープ状の水棲生物生育促進材は、図1に示すように小室を3個以上有する態様で使用してもよいし、これを裁断して図3に示すように小室を2個有する態様又は図4に示すように小室を1個有する態様で使用してもよい。
本発明に係る水棲生物生育促進材は、海水中に浸漬して任意の方法で用いることができる。たとえば、カキやホタテガイ等の貝類を駕籠内で養殖する際には、駕籠に取り付けて使用したり、駕籠内に収納して使用してもよい。また、カキ等の貝類を筏式垂下法で養殖する際には、筏の周縁に取り付けて使用してもよいし、筏に吊るして使用してもよい。海苔養殖場で使用する場合、水棲生物生育促進材の一端を、養殖場に設置した一つの支柱に縛り付け、他の一端を他の支柱に縛り付けて、取り付けることができる。また、海苔養殖網の周縁に沿って数カ所縛りつけ、網に取り付けることもできる。さらに、古網等の繊維製品に任意に取り付けて、これを海底に沈めて藻場の再生を図ることもできる。
また、水棲生物生育促進材をテープ状として、これを芯とし、これを編組体で被覆することもできる。すなわち、水棲生物生育促進材を芯として供給しながら、合成繊維製ストランドを用い、編組機械で編組し、製紐して水棲生物生育促進ロープとすることもできる。合成繊維製ストランドとしては、合成繊維製マルチフィラメント糸条,合成繊維製モノフィラメント糸条,合成繊維製紡績糸条等が用いられる。この水棲生物生育促進ロープもまた、水棲生物生育促進材と同様にして使用しうるものであり、たとえば、支柱に縛り付けたり、網に縛り付けたりして使用することができる。
本発明に係る水棲生物生育促進材は、以下の作用により、カキやホタテガイ等の貝類等の水棲生物の生育促進が図られるものである。すなわち、鉄粉中のFeは多くの場合3価として存在する。この鉄粉を炭粉と共に海水中に浸漬すると、鉄粉中のFeと炭粉中の炭素(C)との間で電触作用が生じ、FeとCとの間で電池が形成される。そうすると、電流が流れ、Feは2価の鉄イオンになって、布材を通して海水中に溶け出す。そして、水棲生物は、この2価の鉄イオンを直接体内に取り入れて、生育促進が図られるものと考えられる。あるいはまた、2価の鉄イオンが海水中に存在することにより、海水中のプランクトンの繁殖が盛んになり、このプランクトンを栄養分として水棲生物の生育促進が図られるものと考えられる。なお、粉状集合体中の砂又は高炉スラグ粉は、鉄粉が固まらないようにしたものであり、鉄粉から有効に2価の鉄イオンが溶け出すようにするためのものである。
実施例1
鉄粉10体積部、炭粉10体積部及び海砂10体積部よりなる粉状集合体を布材に収納して、図1及び2に示したような長手方向に連続した水棲生物生育促進材を得た。この水棲生物生育促進材の幅は2.5cmで、収納されている粉状集合体の重量は100g/mである。そして、水棲成分生育促進材に設けられている小室は、その幅が1.7cmで長さが11.2cmであり、小室間の間隔(すなわち、隣り合う小室間に設けられた幅方向熱シール領域6の長手方向長さ)は0.8cmである。この水棲生物生育促進材を長さ約1mに裁断して、ホタテガイ養殖用駕籠内に稚貝と共に入れた。そして、このホタテガイ養殖用駕籠を函館噴火湾の海水中に1ケ月間浸漬して、ホタテガイを養殖した。養殖後のホタテガイの重量は、一個当たり平均約37.2gであった。
比較例1
水棲生物生育促進材をホタテガイ養殖用駕籠内に入れない他は、実施例1と同一の方法で、稚貝を養殖した。養殖後のホタテガイの重量は、一個当たり平均約31.3gであった。
実施例1と比較例1を対比すれば明らかなように、本発明に係る水棲生物生育促進材を用いてホタテガイの養殖をした場合、一個当たりの重量が約19%増加しており、ホタテガイの生育促進が図られていることが分かる。
実施例2
実施例1で用いた水棲生物生育促進材を長さ約24cmに切断し、小室が2個存在する水棲生物生育促進材を得た。したがって、粉状集合体の重量は約20gである。そして、本垂下した後の殻付きカキを、養殖用駕籠内にこの水棲生物生育促進材と共に入れ、この養殖用駕籠を岡山県邑久町虫明の海水中に1ケ月間浸漬して、殼付きカキを育成した。育成後の殼付きカキは、その身が締まっていた。
比較例2
水棲生物生育促進材を養殖用駕籠内に入れない他は、実施例2と同一の方法で、殼付きカキを育成した。育成後の殼付きカキは、実施例2のものに比べて、その身が締まっていなかった。
実施例3
実施例1で用いた水棲生物生育促進材を長さ約5mに切断して、テープ状水棲生物生育促進材を得た。このテープ状水棲生物生育促進材10本を、岡山県邑久町虫明でのカキ養殖において、本垂下した筏(幅10mで長さ20m)の後ろ半分10mに適宜の間隔で垂下した。テープ状水棲生物生育促進材を垂下した時点では、筏は平衡を保っていたが、約1ケ月経過には筏が後ろに傾いた。この結果から、水棲生物生育促進材と近接して垂下されているカキの生育が促進されていることが分かる。
本発明の一例に係る水棲生物生育促進材の平面図である。 図1の水棲生物生育促進材のA−A線断面図である。 本発明の他の例に係る水棲生物生育促進材の平面図である。 本発明の他の例に係る水棲生物生育促進材の平面図である。
1 粉状集合体
2 布材
6 幅方向熱シール領域
9 長手方向熱シール領域

Claims (6)

  1. 粉状集合体が布材中に収納されてなり、海水中に浸漬して用いられる水棲生物生育促進材であって、
    該粉状集合体は、鉄粉、炭粉及び砂又は高炉スラグ粉を含有するものであり、
    該布材は、該粉状集合体を粉状のまま海水中に漏出させず、かつ、海水を自由に透過させるものであることを特徴とする水棲生物生育促進材。
  2. 鉄粉がシリコン鉄粉である請求項1記載の水棲生物生育促進材。
  3. 布材が熱可塑性繊維を構成繊維の主体とする不織布であって、熱可塑性繊維が低融点成分と高融点成分とからなる複合繊維であり、該低融点成分が融着固化することにより、該構成繊維相互間が結合している請求項1記載の水棲生物生育促進材。
  4. 熱可塑性繊維を構成繊維の主体とするテープ状不織布が、その長手方向に直列に配置している小室群を備えており、各小室内には粉状集合体が収納されており、該小室群以外の箇所は、該熱可塑性繊維が融着固化して、各小室を区画している請求項1記載の水棲生物生育促進材。
  5. 水棲生物が、海苔やモズク等の藻類、カキやホタテガイ等の貝類又は魚類である請求項1記載の水棲生物生育促進材。
  6. 貝類を駕籠内で養殖する際に、駕籠内に収納して海水中で用いられる請求項1記載の水棲生物生育促進材。
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