始めに、実施例1の車両用シートの構成について、図1〜図14を用いて説明する。ここで、図1には、車両用シートのシート本体1の概略構成が示されている。このシート本体1は、背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3とを有する。これらシートバック2やシートクッション3は、フロアF上に左右一対で設けられたスライダ装置30,30を介して設置された支持ベース4に対して連結されている。
この車両用シートは、シート本体1をその後方側の乗降スペースを広げられるように動作させるウォークイン機能と、シート本体1をより下方側に小さく畳み込めるように動作させるチルトダウン機能とを備えている。前者のウォークイン機能は、シートバック2を背凭れとして使用される使用位置から前倒れ回転させて前傾姿勢とし、シートクッション3と共に車両前方側にスライドさせられるようにする構成となっている。
このウォークイン機能は、図示されているシートクッション3の左側部に設けられたウォークインレバー10を操作することで作動するようになっている。具体的には、ウォークインレバー10の操作を行うと、シートバック2が通常着座使用される使用位置から前傾位置まで前倒れ回転するようになっている。そして、このシートバック2の前倒れ回転に伴って、シートクッション3は、その後部を下方側に沈み込ませる格好で、前部を後方側に引き込んだ後傾姿勢に切り換えられるようになっている。
したがって、このシートクッション3の後傾運動に伴って、シート本体1全体としての前後方向の幅長が後方側に狭められるため、シート本体1を前方側へ移動させるためのスペースを広げることができる。よって、シート本体1を前方側に大きくスライドさせることができるため、その後方側に広い乗降スペースを確保することができる。一方、後者のチルトダウン機能は、図6に示されるように、シートバック2を前倒れ回転させる動きに連動させて、シートクッション3を下方側に大きく沈み込ませる構成となっている。このチルトダウン機能は、シートバック2の肩口に設けられたチルトダウンレバー20を操作することによって作動するようになっている。
以下、シート本体1をウォークイン動作させたりチルトダウン動作させたりするように切り換える切換機構の構成について詳しく説明していく。先ず、図1を参照しながら、シート本体1の基本的構成について説明する。同図に示されるように、シートバック2は、その骨格を成す門型のバックフレーム2Fの両脚部が、それらの外側部に配設された支持ベース4の板部に対して、リクライニング装置8,8を介してそれぞれ回転可能に連結されている。
ここで、各リクライニング装置8,8の基本的な構成は、特開2002−360368号公報や特開2005−312891号公報等の文献に開示されているため、これらの詳細な説明については省略することとする。これらリクライニング装置8,8は、常時はシートバック2の回転をロックした回転留め状態とされて保持されている。これにより、シートバック2は、常時は着座者が背凭れとして使用可能な起立した姿勢状態に保持されている。そして、シートバック2は、上述したリクライニング装置8,8の回転留め状態が解除されることにより、これらの回転中心(中心軸8R,8R)のまわりに前後に回転できる状態に切り換えられる。
ここで、各リクライニング装置8,8は、常時は附勢によってシートバック2の回転をロックした状態に保持されている。そして、各リクライニング装置8,8は、上述したウォークインレバー10やチルトダウンレバー20の操作を行うことによって、上記の附勢に抗してロック状態が解かれるようになっている。ここで、各リクライニング装置8,8には、上述したウォークインレバー10やチルトダウンレバー20の操作をやめることで附勢によってロック状態に戻されるロックゾーンと、解除操作をやめてもロック状態には戻されないフリーゾーンとが設定されている。
前者のロックゾーンは、通常、シート本体1が着座使用される角度領域、具体的にはシートバック2がフロアFに対して直立姿勢となる角度位置から後方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。そして、後者のフリーゾーンは、乗員が着座使用することのない角度領域、具体的にはシートバック2がフロアFに対して直立姿勢となる角度位置から前方側に倒し込まれる角度領域に設定されている。
したがって、シートバック2が直立姿勢の角度位置から少しでも前に傾けば、あとはウォークインレバー10やチルトダウンレバー20の操作をやめてしまっても、シートバック2は自然と前倒しされていく。ここで、シートバック2は、前述したウォークインレバー10の操作によって前倒しされていく時には、後述するストッパ機構の作動によって、図示された前傾姿勢となる角度位置のところでその前倒れ回転が止められるようになっている。なお、ストッパ機構の構成についは、図8〜図14を用いて後に詳しく説明することとする。
一方、図8に示されるように、シートバック2は、チルトダウンレバー20の操作によって前倒しされていく時には、バックフレーム2Fの前下部に形成された爪状の前倒れストッパ2Aが支持ベース4に設けられたストッパ片4Sと当接することによってその前倒れ回転が止められるようになっている。なお、シートバック2の後倒れ回転は、バックフレーム2Fの後下部に形成された爪状の後倒れストッパ2Bが支持ベース4に設けられたストッパ片4Sと当接する位置で止められるようになっている。
ここで、図1に戻って、シートバック2がウォークインレバー10の操作によって前傾位置まで倒れ込む時には、前述したように、シートクッション3の後部が下方側に沈み込むようになっている。これにより、シートバック2の前傾移動時に、シートバック2の下部がシートクッション3の後部に深く食い込まないように互いの干渉が回避されるようになっている。したがって、シートバック2を前傾回転させても、シートバック2の下部やシートクッション3の後部には、互いの干渉による凹み跡が付きにくくなっている。
また、シートバック2の下部がシートクッション3の後部に深く食い込まない構成であるため、シートバック2の前傾移動が阻害されることなくスムーズに行われるようになっている。そして、このウォークインレバー10の操作によるシートバック2の前傾移動時には、この動作に連動して、前述したスライダ装置30,30のスライドロック状態が解除されるようになっている。ここで、スライダ装置30,30は、フロアFに対して一体的に固定設置された車両前後方向に長尺なロアレール31,31と、これらロアレール31,31に対してレールの延びる方向にそれぞれスライド可能に嵌め込まれたアッパレール32,32と、を有する。
そして、各アッパレール32,32の上面部には、前述した支持ベース4が一体的に固定設置されている。これにより、アッパレール32,32のスライドに伴って、シート本体1全体が車両前後方向に移動操作されるようになっている。ここで、スライダ装置30,30は、図示は省略されているが、常時はアッパレール32,32とロアレール31,31との間に設けられたロック機構によって、アッパレール32,32のスライドがロックされた状態に保持されている。
そして、これらスライダ装置30,30のスライドロック状態は、シート本体1の前下部に配設された図示しない操作レバーを引き上げる操作によって解除されるようになっている。なお、スライダ装置30,30のスライドロック状態は、後述するウォークインレバー10の操作時に機能するストッパ機構の作動によっても解除操作されるようになっている。ここで、前述したロアレール31,31とアッパレール32,32との間には、アッパレール32,32を常時前方側の移動方向に附勢する引張ばね(図示省略)が掛着されている。したがって、ウォークインレバー10の操作を行うことにより、シートバック2を前傾姿勢に切り換えたシート本体1全体を附勢によって車両前方側にスライドさせることができる。
次に、シートクッション3の連結構造について説明する。このシートクッション3は、その骨格を成す門型のクッションフレーム3Fの前側の両側部が、左右一対で設けられたフロントリンク5,5によって、それぞれ支持ベース4の側板部に回転可能に軸支連結されている。これらフロントリンク5,5は、その下端部が連結軸5A,5Aによってそれぞれ支持ベース4に回転可能に軸支連結されており、上端部が連結軸5B,5Bによってそれぞれクッションフレーム3Fの両側部に回転可能に軸支連結されている。
上述した各フロントリンク5,5は、図1に示されるように、シート本体1が着座使用される初期状態時には、その下端側の連結点(連結軸5A,5A)を中心に前傾姿勢の状態に保持されている。そして、各フロントリンク5,5は、ウォークインレバー10の操作によってシートバック2が前傾姿勢まで前倒れ回転することにより、後述するリヤリンク6,6によって後方側に引き込まれる格好で、後傾姿勢となる位置まで後倒れ回転するようになっている。
これにより、各フロントリンク5,5は、ウォークインレバー10の操作時には、その上端側の連結点であるシートクッション3の前部を、主として後方側に移動させる回転軌跡を通るようになっている。これにより、ウォークイン操作時には、シートクッション3の前部をより大きく後方側に引き込んで、シート本体1の前方側への移動スペースをより広く確保できるようになっている。また、フロントリンク5,5は、チルトダウンレバー20の操作時には、シートバック2が大きく前倒れ回転する動きによって、後述するリヤリンク6,6によって前方側に押し出される格好で、そのまま下方側に前倒れ回転するようになっている。
前述したクッションフレーム3Fは、その後側の両脚部が、左右一対で設けられたL字状のリヤリンク6,6によって、それぞれシートバック2の骨格を成すバックフレーム2Fの側板部に回転可能に軸支連結されている。これらリヤリンク6,6は、そのL字の前端部が、連結軸6A,6Aによってそれぞれクッションフレーム3Fに回転可能に軸支連結されており、L字の上端部が、連結軸6B,6Bによってそれぞれバックフレーム2Fの両側部に回転可能に軸支連結されている。
上記した各リヤリンク6,6は、そのL字の前端部に形成されたロア凹部6D,6Dに、クッションフレーム3Fに連結されたロアフック12,12が掛けられることによって、それらのクッションフレーム3Fに対する回転がロックされるようになっている。また、各リヤリンク6,6は、そのL字の上端部に形成されたアッパ凹部6C,6Cに、バックフレーム2Fに連結されたアッパフック22,22が掛けられることによって、それらのバックフレーム2Fに対する回転がロックされるようになっている。
上記した各ロアフック12,12は、図3に示されるように、連結軸11,11によってクッションフレーム3Fに回転可能に軸支連結されている。ここで、図示向かって右側に示されたロアフック12は、ウォークインレバー10と一体的に連結されており、ウォークインレバー10と共に連結軸11によってクッションフレーム3Fに回転可能に軸支連結されている。そして、両ロアフック12,12は、常時はクッションフレーム3Fとの間に掛着された捩りばね13,13の附勢力によって、その先端部をロア凹部6D,6Dに掛け入れる方向に回転附勢されている。
したがって、図示向かって右側に示されたロアフック12は、ウォークインレバー10を引き上げる回転操作によって、ロア凹部6Dとの掛着状態から外されて、同側のリヤリンク6の回転ロック状態を解除する。また、図示向かって左側に示されたロアフック12は、第1ケーブル14によってウォークインレバー10と繋がれており、ウォークインレバー10を引き上げる回転操作によって、第1ケーブル14の牽引操作を介してロア凹部6Dとの掛着状態から外されて、同側のリヤリンク6の回転ロック状態を解除する。
また、上述したウォークインレバー10には、更にリクライニング装置8,8の回転留め状態を解除操作するための第2ケーブル15が繋がれている。この第2ケーブル15は、解除ケーブル8Jを介して、一方のリクライニング装置8の操作軸8Cに連結された連結レバー8Aと繋がれている。これにより、第2ケーブル15は、ウォークインレバー10を引き上げる回転操作によって、解除ケーブル8Jを介して連結レバー8Aを回転操作して、両リクライニング装置8,8の回転留め状態を一斉に解除操作するようになっている。
ここで、各リクライニング装置8,8は、それらのロック・アンロックの作動操作を行う操作軸8C,8C同士が、ロッドArによって互いに一体的に連結されている。これにより、両リクライニング装置8,8は、その一方に連結された連結レバー8Aの操作に伴って、互いに同期してロック・アンロックの作動状態に切り換え操作されるようになっている。
一方、アッパフック22,22は、図3に示されるように、連結軸22A,22Aによってバックフレーム2Fに回転可能に軸支連結されている。そして、図示向かって右側に示されたアッパフック22は、第3ケーブル24によって同右側の肩口に設けられたチルトダウンレバー20と繋がれており、左側に示されたアッパフック22は、第4ケーブル25によってチルトダウンレバー20と繋がれている。そして、これら両アッパフック22,22は、常時はバックフレーム2Fとの間に掛着された捩りばね23,23の附勢力によって、その先端部をアッパ凹部6C,6Cに掛け入れる回転方向に附勢されている。
上記した各アッパフック22,22は、チルトダウンレバー20をバックフレーム2Fとの連結点(連結軸21)を中心に引き上げる回転操作によって、それぞれアッパ凹部6C,6Cに掛けられた状態から外されて、各リヤリンク6,6の回転ロック状態を解除する。ここで、上述したチルトダウンレバー20には、更に、ウォークインレバー10の操作時にシートバック2の前倒れ回転を前傾姿勢位置で留めるためのストッパ機構を操作する第5ケーブル26が繋がれている。なお、上述した第3ケーブル24、第4ケーブル25及び第5ケーブル26は、第7ケーブル28を介してチルトダウンレバー20と繋がれており、第7ケーブル28から分岐される格好で配索されている。
上記したストッパ機構は、詳細は後述するが、ウォークインレバー10の操作時には、シートバック2の前倒れ回転を前傾姿勢位置で留められる状態に保持されているが、チルトダウンレバー20の操作が行われると、上述したストッパ機能が働かない作動状態に切り換えられる。ここで、上述したチルトダウンレバー20には、更にリクライニング装置8,8の回転留め状態を解除操作するための第6ケーブル27が繋がれている。
この第6ケーブル27は、前述したウォークインレバー10に繋がれた第2ケーブル15と同じように解除ケーブル8Jに繋がれており、チルトダウンレバー20を引き上げる回転操作によってリクライニング装置8,8の回転留め状態を解除操作できるようになっている。したがって、上記構成のシート本体1は、ウォークインレバー10やチルトダウンレバー20の操作を行うことによって、次のように作動操作される。
先ず、図4に示されるように、シート本体1が着座使用される初期姿勢となっている状態で、ウォークインレバー10の操作が行われると、リクライニング装置8,8によるシートバック2の回転留め状態が解除され、更に、ロアフック12,12によるリヤリンク6,6の回転ロック状態が解除される。なお、このとき、アッパフック22,22によるリヤリンク6,6の回転ロック状態は維持されたままである。
そして、図1に示されるように、これによってシートバック2が前倒れ回転すると、リヤリンク6,6は、シートバック2に対して一体的に固定された姿勢状態のままシートクッション3との連結点(連結軸6A,6A)を後方かつ下方側に沈み込ませるように回転動作する。このとき、リヤリンク6,6とシートクッション3との連結点(連結軸6A,6A)は、リクライニング装置8,8の回転中心(中心軸8R,8R)よりも低い領域を移動する。これにより、シートクッション3の後部が同方向に引き込まれて、シートクッション3全体がフロントリンク5,5の後傾回転を伴いながら後傾した姿勢状態に切り換えられる。
そして、上記したシートバック2の前倒れ回転は、後述するストッパ機構によって前傾姿勢となる角度位置で留められ、この動きに伴って、スライダ装置30,30のスライドロック状態が解除される。これにより、シート本体1は、シートバック2が前傾姿勢に切り換えられ、シートクッション3が後傾姿勢に切り換えられた状態として、スライダ装置30,30に掛着された図示しない引張ばねの附勢力によって車両前方側にスライド操作される。
次に、図5を参照して、シート本体1が着座使用される初期姿勢に戻された状態で、チルトダウンレバー20の操作が行われると、リクライニング装置8,8によるシートバック2の回転留め状態が解除されると共に、アッパフック22,22によるリヤリンク6,6の回転ロック状態が解除される。なお、このとき、ロアフック12,12によるリヤリンク6,6の回転ロック状態は維持されたままである。そして、これによってシートバック2が前倒れ回転すると、図6に示されるように、リヤリンク6,6は、シートクッション3に対して一体的に固定された姿勢状態を保ちながら、シートバック2との連結点(連結軸6B,6B)を前方かつ下方側に沈み込ませるように動作する。
これにより、シートクッション3の後部が同方向に押し出されて、シートクッション3全体がフロントリンク5,5の前倒れ回転に伴って下方側に大きく沈み込んだ姿勢状態に切り換えられる。そして、この下方側に沈み込んだシートクッション3の上面部にシートバック2が倒し込まれることにより、シート本体1が下方側に小さく畳み込まれた状態となる。なお、図7には、上記したウォークインレバー10やチルトダウンレバー20の操作によって作動操作される各構成部品の制御ブロック図が示されている。
次に、前述したウォークインレバー10の操作時に、シートバック2の前倒れ回転を前傾姿勢位置で規制するストッパ機構の構成について説明する。ここで、図8には、ストッパ機構の構成が分解斜視図によって示されている。同図では、シート本体1の前方に向かって右側に配置形成されている支持ベース4とバックフレーム2Fの内側部の構造が示されている。この支持ベース4の内側面には、バックフレーム2Fの下側でシート幅方向内側に突設された板材からなるストッパ片4Sが接合されている。
そして、バックフレーム2Fの下端側の前後位置には、前述した爪状の前倒れストッパ2Aや後倒れストッパ2Bが形成されている。なお、これら前倒れストッパ2Aや後倒れストッパ2Bの回動軌跡上にストッパ片4Sが配置されている。前倒れストッパ2Aは、シートバック2を前方に大倒しするチルトダウン時において支持ベース4に対するバックフレーム2Fの回動角度を規制するためのものであり、後倒れストッパ2Bは、シートバック2を後方に倒すときの支持ベース4に対するバックフレーム2Fの回動角度を規制するためのものである。
また、バックフレーム2Fの内側面には、中心軸8Rの周縁で板材からなる押圧部材2Pが接合されるとともに、この押圧部材2Pには、前倒れストッパ2Aと後倒れストッパ2Bとの間でバックフレーム2Fからシート幅方向内側に離隔されて中心軸8Rの径方向外側に突出する押圧部Paが形成されている。さらに、押圧部材2Pの接合されたバックフレーム2Fの内側面には、中心軸8Rの周縁で板材からなるガイド部材2Gが接合されるとともに、このガイド部材2Gには、バックフレーム2Fから押圧部Paよりも更にシート幅方向内側に離隔されて中心軸8Rの径方向外側に突出するガイド部Gaが形成されている。
なお、中心軸8Rの周方向において、ガイド部Gaは、押圧部Paよりも後倒れストッパ2B側に配置されている。また、中心軸8Rの径方向において、ガイド部Gaの先端までの距離は、押圧部Paの基端までの距離よりも短く設定されている。つまり、これら押圧部Paやガイド部Gaは、バックフレーム2Fとの一体回動において、径方向及びシート幅方向で回転軌跡が重ならないように形成されている。
さらに、これら押圧部材2Pやガイド部材2Gは、中心軸8Rを中心とする円形に開口されて、リクライニング装置8とこれをロック解除する回転操作式の操作軸8C(図14参照)とを連結可能としている。この操作軸8Cには、図14に示した連結レバー8Aが固着されるとともに、この連結レバー8Aの先端部には、ケーブル支持片Ahが形成されている。このケーブル支持片Ahには、先端金具Jaにおいてバックフレーム2Fに支持された解除ケーブル8Jのボール状の端末部Jbが係止されている。
この解除ケーブル8Jは、前述したウォークインレバー10やチルトダウンレバー20と連結されており、いずれかのレバーが選択的に操作されて端末部Jbが引っ張られることにより、操作軸8Cを図示時計回り方向に回動させてリクライニング装置8のロック状態を解除する。なお、同図では、説明の便宜上、シート本体1の前方に向かって右側に配置形成された支持ベース4とバックフレーム2Fの内側部の構造に解除ケーブル8Jが配索されているが、実際には、図3において前述したように、解除ケーブル8Jはシート本体1の前方に向かって左側に配置形成されている支持ベース4とバックフレーム2Fの内側部の構造に配索されている。
支持ベース4の内側面には、ストッパ片4Sとの干渉を避けてベース部材41がボルト−ナットの締結にて固定されている。このベース部材41は、シート幅方向で対をなす第1ベースブラケット42及び第2ベースブラケット43が一体化されてなるとともに、一方の第1ベースブラケット42がストッパ片4Sの接合された支持ベース4の内側面に重ねられ、他方の第2ベースブラケット43が第1ベースブラケット42の内側面に重ねられて、支持ベース4に固定されている。
第1ベースブラケット42の中央部には、シート幅方向に貫通する断面略四角形の取付孔42aが形成されるとともに、上側に突出する板状の第1ストッパ片42bが形成されている。なお、この第1ストッパ片42bは、取付孔42aの上側であり且つシート幅方向で前倒れストッパ2Aと押圧部Paとの間に配置される。
第2ベースブラケット43の中央部には、シート幅方向に貫通する断面略四角形の取付孔43aが形成されるとともに、上側に突出する板状の第2ストッパ片43bが形成されている。なお、この第2ストッパ片43bは、取付孔43aの上側であり且つシート幅方向で押圧部Paとガイド部Gaとの間に配置される。つまり、これら第1及び第2ストッパ片42b,43bは、シート幅方向で押圧部Paが中間部に配置されるように当該方向に離隔されている。また、第2ベースブラケット43には、シート幅方向に突出するケーブル支持片43cが形成されている。このケーブル支持片43cには、図14に示した第5ケーブル26の先端金具26aが支持される。
第2ベースブラケット43の内側面には、取付孔43a等との干渉を避けたその中央部において板材からなるセンサブラケット44が固着されている。このセンサブラケット44には、第2ベースブラケット43の内側面からシート幅方向内側に突出するストッパ壁部44aと、同ストッパ壁部44aから上側に屈曲されたガイド壁部44bとが形成されている。そして、上記ガイド壁部44bには、シート前後方向に伸びる長孔45が形成されるとともに、その一側端部には、上側に鋭角に凹む係合凹部45aが形成されている。
第1及び第2ベースブラケット42,43間には、取付孔42a,43aと同軸でねじりコイルスプリングからなるケーブルスプリング46が介在されるとともに、同ケーブルスプリング46の一端は第1ベースブラケット42に係止されている。そして、ベース部材41には、取付孔43a及びケーブルスプリング46に挿通された一端が取付孔42aに嵌合する態様でヒンジピン47が固定されている。ヒンジピン47が第1及び第2ストッパ片42b,43bよりも下側に配置されていることはいうまでもない。
なお、上記ヒンジピン47の軸方向中間部には、径方向外側に突出する円板状のフランジ47aが一体形成されるとともに、フランジ47aと第2ベースブラケット43の対向面との間には、板材からなるアーム状のメインリンク48がその長手方向中間部において回動自在に支持されている。上記メインリンク48は、ヒンジピン47の固定された第2ベースブラケット43(ベース部材41)の対向面とフランジ47aとの間で所定の間隙を有して、ヒンジピン47を中心とする円滑な回動が許容されている。なお、このメインリンク48は、シート幅方向で第2ストッパ片43bとガイド壁部44bとの間に配置されている。
また、上記ヒンジピン47には、フランジ47aを挟んだメインリンク48の反対側で、板材からなる扇状のサブリンク49が挿通されるとともに、更に板材からなる操作リンクとしてのケーブルリンク50が挿通されている。そして、上記サブリンク49及びケーブルリンク50は、ヒンジピン47の先端に固着された円環状のワッシャ51により抜け止めされて、ヒンジピン47を中心に回動自在に支持されている。つまり、上記メインリンク48、サブリンク49及びケーブルリンク50の回転軸は、ヒンジピン47において同軸に配置されている。また、上記サブリンク49及びケーブルリンク50は、ワッシャ51とフランジ47aの対向面との間で所定の間隙を有して、ヒンジピン47を中心とする円滑な回動が許容されている。
メインリンク48の一側端部には、シート幅方向に中心軸が伸びる略円柱体のウォークインストッパピン52が固着されている。このウォークインストッパピン52の軸方向の長さは、メインリンク48の回動に伴い両第1及び第2ストッパ片42b,43b間を橋渡しする態様でこれらに当接するように設定されている。従って、メインリンク48のヒンジピン47を中心とする回動は、ウォークインストッパピン52が第1及び第2ストッパ片42b,43bに当接するまでの範囲に規制されている。
メインリンク48には、ウォークインストッパピン52の反対側で、これと同軸の回転軸を有する板材からなるアーム状のセンサリンク53が回動自在に支持されている。このセンサリンク53の先端部には、第2ベースブラケット43側からセンサブラケット44の長孔45に挿通されるセンサピン54が突設されている。このセンサピン54は、一端及び他端がメインリンク48及びセンサリンク53に係止されたコイルスプリングからなるセンサスプリング55により長孔45の上側の内壁面に当接するように付勢されている。なお、ガイド部材2Gのガイド部Gaのシート幅方向の位置は、センサブラケット44とセンサリンク53との間に設定されている。
メインリンク48の他側端部には、シート幅方向に屈曲された係合片48aが形成されるとともに、この係合片48aは、サブリンク49に形成されたヒンジピン47を中心とする円弧状の長孔49aに挿通されている。従って、メインリンク48及びサブリンク49は、係合片48aが上記長孔49aの内壁面に係止されるまでの範囲で相対回動が許容されている。
なお、サブリンク49には、径方向外側にアーム状に延出する延出部49bが形成されており、その先端部には、同サブリンク49の回動に伴って押し引きされる連結リンク56が回動自在に連結されている。上記サブリンク49は、ヒンジピン47を中心とする図示時計回り方向への回動に伴い連結リンク56を押し出して、前述したスライダ装置30,30(図1参照)のスライドロック状態を解除する操作を行う。なお、このサブリンク49は、図示しないスライダ装置30,30の付勢手段により連結リンク56を介してヒンジピン47を中心に図示反時計回り方向に回動する側に付勢されている。
ケーブルリンク50の一側端部には、第1ベースブラケット42に一端の係止されたケーブルスプリング46の他端が係止される支持片50aが形成されるとともに、他側端部には、同ケーブルスプリング46によりヒンジピン47を中心に図示時計回り方向に回動する側に付勢されてセンサブラケット44のストッパ壁部44aに係止されるフック部50bが形成されている。
また、ケーブルリンク50には、シート幅方向にコ字状に突出する規制壁部50cが形成されており、その下側の支持片50dには、長孔49aに挿通された係合片48aの先端部に一端の係止されたメインスプリング57の他端が係止されている。なお、メインスプリング57は、ケーブルリンク50に対しメインリンク48をヒンジピン47を中心に図示反時計回り方向に回動する側に付勢する。
さらに、上記規制壁部50cには、ケーブル支持片43cに先端金具26aの支持された第5ケーブル26のボール状の端末部26b(図14参照)が係止される長孔50eが形成されている。この長孔50eは、規制壁部50cのコ字形状に沿って伸びるとともにその下端側でU字状に折り返されて、端末部26bを着脱するための取付孔50fに連続している。つまり、取付孔50fから装着された端末部26bは、長孔50eに沿って下側に向かった後、上側へと折り返されてその先端部に係止されている。
この第5ケーブル26は、前述したようにチルトダウンレバー20に連結されており、同レバーからの操作力の伝達により端末部26bが引っ張られることで、ケーブルリンク50をケーブルスプリング46に抗して図示反時計回り方向に回動させる。本実施形態では、チルトダウンレバー20に加えられる操作力は、第5ケーブル26とともに解除ケーブル8Jに伝達されるようになっている。つまり、第5ケーブル26及び解除ケーブル8Jには、互いに連動して操作力が伝達される。
なお、ケーブルリンク50の回動に伴い、メインスプリング57を介して連結されたメインリンク48は一体回動する。上記メインスプリング57の弾性力は、このときの弾性変形が実質的に皆無と見なし得るように設定されている。
次に、本実施形態の動作について説明する。図9に示されるように、着座時の状態では、チルトダウンレバー20の操作力が解放されていることで、ケーブルリンク50は、ケーブルスプリング46の付勢力によりそのフック部50bがセンサブラケット44のストッパ壁部44aに係止されて、ベース部材41に位置決め・保持されている。このとき、第5ケーブル26は、長孔50eの先端部に係止された端末部26bが規制壁部50cの上部に形成される角部に嵌まり込むように伸びている。そして、このケーブルリンク50にメインスプリング57を介して連結されたメインリンク48は、同メインスプリング57の付勢力により係合片48aがケーブルリンク50のケーブルリンクストッパ部50gに当接される態様で位置決め・保持されている。つまり、メインリンク48は、ケーブルリンク50を介してベース部材41に位置決め・保持されている。
このとき、メインリンク48に設けられたウォークインストッパピン52は、押圧部Paの中心軸8Rを中心とする回動軌跡上に配置されている。そして、センサリンク53に設けられたセンサピン54は、長孔45の長手方向中間部に配置され、且つ、センサスプリング55に付勢されて同長孔45の上側の内壁面に当接されている。なお、この着座時の状態(ウォークイン待機状態)を設定するメインリンク48の回動位置は、同メインリンク48の設計基準位置を規定するものであり、従って、この設計基準位置は、長孔45内でのセンサピン54の移動範囲に応じたメインリンク48の作動範囲の中間位置に設定されている。また、スライダ装置30,30の付勢手段により連結リンク56を介して付勢されたサブリンク49は、長孔49aの周方向一側(図示時計回り方向の側)端部に係合片48aが位置するように配置されている。
この状態で、ウォークインレバー10からの操作力の伝達により解除ケーブル8Jの端末部Jbが引っ張られてリクライニング装置8がロック解除されるとともにシートバック2が前倒しされ、バックフレーム2Fが中心軸8Rを中心に図示反時計回り方向に回動されたとする。このとき、押圧部Paの回動に伴いその回動軌跡上に配置されたウォークインストッパピン52が押圧される。そして、メインリンク48は、長孔45内でセンサリンク53に設けられたセンサピン54を一側(図9の右側)に摺動させつつ、メインスプリング57に抗して図示時計回り方向に回動する。そして、図10に示したように、ウォークインストッパピン52が第1及び第2ストッパ片42b,43bに当接されると、同ウォークインストッパピン52を介して押圧部Paの回動が規制され、バックフレーム2F(シートバック2)はウォークイン姿勢となる前傾姿勢位置に保持される。つまり、ウォークインストッパピン52の設けられたメインリンク48は、ウォークイン時のストッパとして機能する。
また、メインリンク48は、図示時計回り方向の回動に伴い係合片48aにより長孔49aの内壁面を押圧することで、スライダ装置30,30の付勢手段に抗してサブリンク49を図示時計回り方向に回動させる。これにより、サブリンク49に連結された連結リンク56が押し出され、バックフレーム2Fの回動に連動したスライダ装置30,30のロック解除が行われる。従って、当該シートの前方への摺動が可能とされる。
なお、ケーブルリンク50は、センサブラケット44を介してベース部材41に保持されているため、第5ケーブル26の作動に影響を及ぼすことはない。一方、ウォークインからの復帰時(ウォークイン復帰時)には、シートバック2が後方に起こされ、バックフレーム2Fが中心軸8Rを中心に図示時計回り方向に回動されることで、メインリンク48は、メインスプリング57に付勢されて、ウォークインストッパピン52が押圧部Paに追従する態様で、着座時の状態まで復帰する。このとき、メインリンク48は、係合片48aがケーブルリンクストッパ部50gに当接することで位置決め・保持される。同時に、係合片48aからの長孔49aの解放に伴い、サブリンク49は、スライダ装置30,30の付勢手段に付勢されて着座時の状態まで復帰する。
次に、図9に示した着座時の状態で、チルトダウンレバー20からの操作力の伝達により第5ケーブル26の端末部26bが引っ張られると、ケーブルリンク50は、ケーブルスプリング46に抗して図示反時計回り方向に回動する。また、メインスプリング57を介して連結されたメインリンク48は、長孔45内でセンサリンク53に設けられたセンサピン54を他側(図9の左側)に摺動させつつ、同ケーブルリンク50と一体回動する。
このとき、図12に示したように、メインリンク48に設けられたウォークインストッパピン52は、押圧部Paの中心軸8Rを中心とする回動軌跡外に移動する。ただし、センサピン54は、ガイド部Gaに遮られることで未だ係合凹部45aに嵌まり込んでおらず、従って、メインリンク48は、ヒンジピン47を中心に揺動可能となっている。また、第5ケーブル26に連動して解除ケーブル8Jの端末部Jbが引っ張られ、操作軸8Cが回動されるものの、未だリクライニング装置8のロック解除には至っていない。
そして、第5ケーブル26に連動して解除ケーブル8Jの端末部Jbが更に引っ張られると、リクライニング装置8がロック解除される。このとき、メインリンク48に設けられたウォークインストッパピン52は、押圧部Paの中心軸8Rを中心とする回動軌跡外に既に移動しているものの、解除ケーブル8Jに連動して第5ケーブル26の端末部26bが更に引っ張られることで、図13に示したように、ケーブルリンク50は、メインスプリング57を介して連結されたメインリンク48とともに図示反時計回り方向に更に回動する。ただし、端末部26bは、長孔50eの伸びる方向に対し鋭角をなして引っ張られることで、当該方向の分力を得て長孔50eに沿って摺動する。これにより、第5ケーブル26の操作量としての引き量に対するケーブルリンク50等の回動角度の変化量が低減される。つまり、ケーブルリンク50の回動角度が所定角度を超えたときに、第5ケーブル26の引き量に対するケーブルリンク50等の回動角度の変化量が低減されるようになっている。
次いで、シートバック2が前倒しされ、バックフレーム2Fが中心軸8Rを中心に図示反時計回り方向に回動されたとする。このとき、ガイド部材2Gの回動に伴い、センサピン54は、ガイド部Gaから解放されることで係合凹部45aに嵌まり込み、メインリンク48は、回り止めされてウォークインストッパピン52とともに当該位置に保持される(図11参照)。つまり、メインリンク48は、センサリンク53を介してベース部材41に位置決め・保持されている。従って、この状態では、チルトダウンレバー20からの操作力が解放されても、ウォークインストッパピン52は押圧部Paの回動軌跡外に配置されたまま、即ちウォークインがキャンセルされたままとなる。つまり、ケーブルリンク50は、ウォークイン動作からチルトダウン動作へと切り替えるための操作入力を行うものである。
なお、メインリンク48の図示反時計回り方向への回動では、係合片48aはサブリンク49の長孔49a内を移動することで同サブリンク49と干渉することはなく、従って、スライダ装置30,30の作動に影響を及ぼすことはない。
そして、シートバック2が更に前倒しされ、バックフレーム2Fが中心軸8Rを中心に図示反時計回り方向に更に回動されたとする。このとき、押圧部Paは、回動に伴いその回動軌跡外に配置されたウォークインストッパピン52と干渉することなく第1及び第2ストッパ片42b,43b間をすり抜けて後方に移動する。そして、図11に示したように、前倒れストッパ2Aがストッパ片4Sに当接されると、バックフレーム2Fはチルトダウン姿勢となる前倒れ姿勢位置に保持される。
一方、チルトダウンからの復帰時には、シートバック2が後方に起こされ、バックフレーム2Fが中心軸8Rを中心に図示時計回り方向に回動されることで、図12に示したように、係合凹部45aに嵌まり込んだセンサピン54は、ガイド部材2Gの回動に伴いガイド部Gaにより押し出されつつ、同ガイド部Gaに案内される。そして、メインスプリング57を介してケーブルリンク50に連結されたメインリンク48は、ケーブルスプリング46に付勢されて図9に示した着座時の状態まで復帰する。
以上、本発明の実施形態を一つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施ができるものである。例えば、上記実施例では、ウォークイン機能として、シートバック2を前傾位置まで前倒しすることでスライダ装置30,30のスライドロックが解除された後、シート本体1が附勢によって前方側に移動操作される形式のものを示した。しかし、本発明が対象とするウォークイン機能は、上記のタイプに限定されるものではなく、例えばシート本体1を、スライドロックが解除された時に、手動操作によって前方側に移動操作する形式のものであってもよい。また、シートバック2をウォークイン姿勢の角度まで前倒しした後、スライドロックを手動で解除して、シート本体1を手動で前方移動させる形式のものであってもよい。
また、シート本体1をウォークイン動作させたりチルトダウン動作させたりするように切り換えるリヤリンク、アッパフック及びロアフック等の切換機構の構成部材が左右一対で配設された構成を示したが、これらの構成部材はシート本体の少なくとも一方側のサイドに設けられていればよい。また、図3において前述したように、一方側のロアフックがウォークインレバーと一体的に連結された構成を例示したが、両側のロアフックがケーブルを介してウォークインレバーと繋がれる構成であってもよい。