本実施形態で例示するハイドロブレーキシステムは、ブレーキアシストが機能している状態でアンチロックブレーキシステムが働いた場合でも制動性能の低下を生じることを低減できる。このハイドロブレーキシステムは、アンチロックブレーキシステムの作動により、ブレーキシリンダと分離されたブレーキ液圧検出センサ部(制御圧センサ部)の上昇変動検出分を増圧処理等によりキャンセルする制御機能を有する。
これにより、アンチロックブレーキシステムの作動によって、ブレーキ液圧の見かけ上の上昇が生じても、ブレーキECUがブレーキシリンダ液圧の過大認識をすることがなく、本来の所望の制動能力を維持するブレーキアシスト制御が可能となる。
また、実施形態においては、ABS作動によって生じるブレーキ液圧の見かけ上検出される上昇変動分をキャンセル等する方法として、上昇変動分を算出して上乗せした目標制御圧でブレーキECUが液圧制御する。また、ブレーキECUが、見かけ上の上昇変動分を検出しないように、ブレーキ液圧検出センサ部(制御圧センサ部)の出力値から極小値をホールドし、出力値と見なして制御する例を示す。そこで、以下、図面を参照しながら第一の実施形態について詳細に説明する。
(第一の実施形態)
図1に示すのは、第一の実施形態にかかるハイドロブレーキ制御装置1の構成概要を説明する図である。ハイドロブレーキ制御装置1は、ブレーキ制御を司るブレーキECU70と、ブレーキECU70により制御される油圧制御系統10とを含む。
油圧制御系統10は、ブレーキペダル(ブレーキ操作部材の典型例)24からブレーキ踏力が伝達されるマスタシリンダハイドロブースタ31(マスタシリンダユニット)と、マスタシリンダハイドロブースタ31に制御油を供給するリザーバ34とポンプ36とアキュムレータ圧センサ72とを有する。
また、油圧制御系統10は、油圧系統を切り替える切り替えソレノイド11とアンチロックブレーキ動作を制御する制御ソレノイド12とを有し、各ソレノイドはアンチロックブレーキ作動時に動作する。切り替えソレノイド11は、ブレーキアシスト動作時に開となってアキュムレータ35から油圧を伝えるリニア弁(STR弁)66と、分離弁(SREA弁)60と有する。
また、切り替えソレノイド11は、通常ブレーキ動作時に開となってマスタシリンダハイドロブースタ31から油圧を伝えるレギュレータカット弁(SREC弁)65と、マスタカット弁(SMCF弁)64とを備える。また、マスタシリンダハイドロブースタ31とレギュレータカット弁65との間に、レギュレータ圧センサ71を備える。レギュレータ圧センサ71は、ブレーキペダル24の踏力に対応するマスタシリンダハイドロブースタ31の圧力を示すセンサである。
また、制御ソレノイド12は、通常ブレーキ動作時やブレーキアシスト動作時に開となりマスタシリンダハイドロブースタ31やアキュムレータ35から油圧を伝えるABS保持弁51,52,53及び54を備える。また、制御ソレノイド12は、アンチロックブレーキの作動時等に開となり制御油圧を減圧するABS減圧弁56,57,58及び59を備える。
図1に示すようにブレーキアシストが作動する場合には、アキュムレータ35の油圧は、図中に太線で示すアキュムレータ経路39に沿ってブレーキキャリパ20に伝達される。ブレーキキャリパ20は、伝達された油圧により、不図示のブレーキパッドをディスクに圧接させるようにブレーキ動作するディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLを有する。
また、アキュムレータ経路39上には、制御ソレノイド12を制御するための油圧を検出する制御圧センサ73が、制御ソレノイド12と切り替えソレノイド11との間に設けられる。制御圧センサ73で検出する油圧値は、ブレーキECU70に入力される。また、油圧制御系統10が備える複数のソレノイドは、ブレーキECU70からの制御指示に基づいて動作する。
図2は、通常ブレーキ動作時の第一の実施形態に係るハイドロブレーキ制御装置1を示す図である。図2に示す油圧制御系統10やブレーキECU70は、図1に示すものと同様の構成であるので、ここでは説明を省略する。
通常ブレーキ動作時には、ハイドロブレーキ制御装置1の油圧制御系統10は、図中に太線で示す通常ブレーキ系統37,38に沿ってマスタシリンダハイドロブースタ31からブレーキキャリパ20へと油圧が伝達される。
マスタシリンダハイドロブースタ31から通常ブレーキ系統37を経由して伝達される制御油圧は、レギュレータカット弁65とABS保持弁53,54とを介してディスクブレーキユニット21RRと21RLとに伝達される。
また、マスタシリンダハイドロブースタ31から通常ブレーキ系統37を経由して伝達される制御油圧は、マスタカット弁64とABS保持弁51,52とを介してディスクブレーキユニット21FRと21FLとに伝達される。通常ブレーキ動作時においては、ブレーキペダル24の踏力に、マスタシリンダハイドロブースタ31による重畳分を加圧してブレーキ制御圧としている。
そして、特に図1に示すようにブレーキアシスト機能が作動する緊急制動時には、より大きな制動能力を発揮できるように、制御ソレノイド12には大きな油圧がかけられている。制御ソレノイド12に大きな油圧がかけられた状態で、アンチロックブレーキシステムが作動すると、ABS保持弁51,52、53及び54が閉じられて遮断されるので、制御圧センサ73の検出値が不安定となる。一般には、制御圧センサ73の検出値が、ABS作動前より大きな値側に振れて変動して検出される。
大きな値側に触れて検出される制御圧センサ73の値は、ABS保持弁51,52、53及び54の上流側(増圧リニア制御弁66側)の制御圧を示す値であり、現実にブレーキキャリパ20に伝達される制御圧はABS保持弁51,52、53及び54の下流側(ブレーキキャリパ20側)である。
すなわち、ABS作動時に制御圧センサ73でブレーキECU70に検出される制御圧は、ディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLに現実に伝達される油圧よりも大きな値側にシフトした値と考えられる。ブレーキECU70は、ディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLに現実に伝達される油圧よりも大きな値を制御圧として認識し、この大きな値に基づいて油圧制御系統10の油圧制御を行うこととなる。
すなわち、ブレーキECU70は、ディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLに現実に伝達される油圧と分離され、大きな値を示す制御圧センサ73の検出値が、ブレーキアシスト制御の制御目標値となるように油圧制御系統10を調整する。
この状態で対応をとらなければ、ブレーキECU70は、現実にディスクブレーキユニット21FR,21FL、21RRおよび21RLに伝達されている油圧と一時分離された制御圧センサ73の検出値に基づき、ブレーキECU70の目標制御圧値がABSの作動前後で同じであったとしても、制動力を実質的に低下させる制御を行うこととなる。
そこで、実施形態で例示するハイドロブレーキ制御装置1は、ブレーキECU70がABSの作動前後において、制御圧センサ73の値の変動分を勘案した増圧制御を行う。そこで、以下図面に基づいてハイドロブレーキ制御装置1の動作例を説明する。
(動作例1)
図3に示すのは、ハイドロブレーキ制御装置1の動作例1にかかるブレーキECU70aのブロック構成を例示するものである。図3(a)において、ブレーキECU70aは、制御圧センサ73が検出する制御圧値が入力される制御圧検知部7dを備える。また、ブレーキECU70aは、アンチロックブレーキシステムが作動しているか否かを検知するABS作動検出部7aを備える。
制御圧検知部7dで認識された制御圧センサ73の制御圧値は、ABS作動検出部7aによりアンチロックブレーキシステムの作動が検出されると、制御圧値の変動分を算出する圧力変動値算出部7bに入力される。
圧力変動値算出部7bは、アンチロックブレーキシステムの作動により図3(b)に示すように変動する制御圧センサ73の出力値から、圧力変動成分Pp−pを算出する。圧力変動成分Pp−pは、制御圧センサ73の出力値の、所定期間内での最大値と最小値との差を示す値である。圧力変動成分Pp−pは、極大値と最大値、最小値と極大値、極大値と極小値の間の差を示す値であってもよい。極大値又は極小値は、一般に最大値よりも短時間で演算できるので、迅速な演算処理と迅速な制御の観点から望ましい。一方、所定期間内の最大値と最小値との差異を示す値とすれば、所定期間を長く設定すれば、より信頼性の高い圧力変動成分が検出可能となる。また、所定期間を短く設定すれば、より迅速に圧力変動成分を検出可能となるので好ましい。
そして、BA制御目標圧算出部7cは、圧力変動値算出部7bで算出した圧力変動成分Pp−pとマスタシリンダ圧とブレーキアシスト嵩上げ狙い値とを加算処理する。マスシリンダ圧はレギュレータ圧センサ71からの入力をもとにマスタシリンダ圧検出部7iで検出され、ブレーキアシスト嵩上げ狙い値はBA嵩上げ狙い値演算部7jで算出される。また、油圧制御系統10は、不図示のマスタシリンダ圧センサを備える構成としてもよい。
BA嵩上げ狙い値演算部7jは、ブレーキECU70aが、緊急制動時等のアシスト動作が必要と判断する場合に、ブレーキペダル24から入力されるペダル踏力に応じて、最適な重畳圧力分を算出する。しかし、BA嵩上げ狙い値演算部7jは、算出する事に代えてブレーキペダル24から入力されるペダル踏力に応じて最適な重畳圧力分を、予め不図示の記憶部に格納されている不図示のBA嵩上げ狙い値テーブルから読み出すこととしてもよい。加算処理されたBA制御目標圧は、油圧制御系統10のブレーキアシスト動作を制御するBA制御部7eに入力される。
BA制御部7eは、制御圧検知部7dから入力される制御圧センサ73の制御圧値と、BA制御目標圧算出部7cから入力されるBA制御目標圧と、を比較して制御圧値がBA制御目標圧となっているか否かを監視する比較演算部7fを備える。ABSが作動すると、制御圧センサ73の制御圧値は圧力変動成分Pp−p相当分高く検出される傾向にあるが、油圧制御系統10は目標制御圧を高く変更して設定するので油圧を低下させる制御動作を緩和できる。
また、BA制御部7eは、比較演算部7fを備え、比較演算部7fで演算されたBA制御目標圧と制御圧値との差異に対応する最適な制御パラメータ値を、予め制御パラメータテーブルが格納されているBA制御パラメータテーブル格納部7gから読み出し処理するパラメータ読み出し部7tを備える。パラメータ読み出し部7tで読み出された制御パラメータは、油圧制御系統10の各ソレノイドや各デバイスの現実の制御電流値を算出するBA制御値算出部7hに入力され、BA制御値算出部7hで算出された制御電流値に基づきBA制御部7eが各ソレノイド等を駆動制御する。
上述のような処理により決定されたBA制御値は、アンチロックブレーキシステムの作動による制御圧センサ73の増大変動分の影響を低減したブレーキアシスト制御を行うことができる。すなわち、ブレーキECU70aは、制御圧センサ73の検出値の振れがあると、マスシリンダ圧とBA嵩上げ狙い値に加えて圧力変動成分Pp−pを加えた値を目標値として制御する。これにより、制動力の低下を生じることなく、安定的にブレーキアシスト動作を行わせることができる。
次に、図4を用いてハイドロブレーキ制御装置1の動作例1にかかる動作フローについて説明する。図4に示すのは、動作例1のBA制御目標圧の算出にかかる動作フローを説明する図である。
(ステップS41)
ブレーキECU70aは、ブレーキアシスト作動状態か否かを判断する。ブレーキアシスト作動状態であればステップS42へと進み、ブレーキアシスト作動状態でなければステップS41で待機する。なお、ブレーキECU70aのBA制御部7eは、ブレーキアシストを行う際には制御圧センサ73のブレーキ制御圧値を、ブレーキペダル24の踏力に対応する圧力値を示すマスタシリンダ圧値と、ブレーキアシストとして嵩上げする圧力分に相当するBA嵩上げ狙い圧値とを加えた圧力値となるように制御する。また、ブレーキECU70aのBA制御部7eは、ブレーキアシストを行う際には通常ブレーキ系統37,38からアキュムレータ経路39へと切り替え処理する。
(ステップS42)
ブレーキECU70aのABS作動検出部7aは、アンチロックブレーキシステムが作動しているか否かを検出する。アンチロックブレーキシステムが作動していればステップS43へと進み、アンチロックブレーキシステムが作動していなければステップS41へと戻る。
(ステップS43)
ブレーキECU70aの圧力変動値算出部7bは、制御圧センサ73のセンサ出力値に基づき、ABS作動直後の所定期間内の最大値と最小値との差異である圧力変動成分Pp−pを算出する。圧力変動値算出部7bが圧力変動成分Pp−pの算出に要する時間は、大凡10ミリ秒以下と短時間である。このため、圧力変動値算出部7bによる圧力変動成分Pp−pの演算時間は、ブレーキECU70aのブレーキ制御に遅延を生じさせることはなく、迅速なブレーキ駆動制御を維持できる。
(ステップS44)
ブレーキECU70aのBA制御目標圧算出部7cは、ステップS43で算出した圧力変動成分Pp−pと通常のブレーキアシスト制御目標圧(マスシリンダ圧とアシスト嵩上げ分との和に相当)とを加算処理し、アンチロックブレーキシステム作動時のBA制御目標圧を算出する。そして、ブレーキECU70aは、制御圧センサ73のセンサ出力値が、BA制御目標圧算出部7cから入力されるアンチロックブレーキシステム作動時のBA制御目標圧となるように油圧制御処理を行う。
なお、通常の制御目標値は、BA制御目標圧算出部7cがABS非作動時に、ブレーキペダル24の踏力に対応するマスタシリンダハイドロブースタ31の圧力を示すマスシリンダ圧と、ブレーキペダル24の踏力に応じたBA嵩上げ狙い値とを加えて算出するものである。
(ステップS45)
ブレーキECU70aの比較演算部7fは、制御圧検知部7dから入力される制御圧センサ73の検出値と、BA制御目標圧算出部7cから入力されるBA制御目標圧と、を比較し差異を算出する。
(ステップS46)
ブレーキECU70aのパラメータ読み出し部7tは、ステップS45で算出した差異と制御圧センサ73の検出値とBA制御目標圧等とに基づく最適な制御パラメータを、BA制御パラメータテーブル格納部7gから読み出す。BA制御パラメータテーブル格納部7gには、予め制御圧センサ73の検出値等との関係で予め決定された、車両に適合する最適なブレーキアシスト制御パラメータテーブルが記録されている。
なお、BA制御パラメータテーブル格納部7gに、予めABS非作動モードとABS作動モードとに対応して二モードのブレーキアシスト(BA)制御パラメータテーブルを準備し、記憶させておいてもよい。そして、パラメータ読み出し部7tは、BA制御パラメータテーブル格納部7gに格納されるパラメータの中から、ABSが作動しないブレーキアシスト動作の際にはABS非作動モードのテーブルから制御パラメータを読み出すこととできる。
また、パラメータ読み出し部7tは、BA制御パラメータテーブル格納部7gに格納されるパラメータの中から、ABS作動時にはABS作動モードのテーブルから、制御パラメータを読み出すこととできる。
また、ABS作動モードとして格納される制御パラメータは、当該車両が搭載するブレーキシステムに固有のABSの作動時の圧力変動成分Pp−pを考慮した制御値を予め測定等により決定し、記憶させておくこととできる。この場合には、BA制御目標圧算出部7cでBA制御目標圧の演算処理をリアルタイム駆動時にしなくてもよいので、さらに迅速な処理が行えることとなり好ましい。
なお、車両に搭載されるブレーキシステムに固有の圧力変動分Pp−pは、予め設計計算してシミュレーションにより求めることとしてもよいし、予め測定して計測した予備実測値を用いることとしてもよい。ABS作動による圧力変動成分Pp−pが、現実の実車使用時や現実の制動動作時に信頼性高く再現できる場合には、予めBA制御パラメータテーブル格納部7gに格納しておき読み出し処理する事が、迅速な処理の観点からは好ましい。
(ステップS47)
ブレーキECU70aのBA制御値算出部7hは、ステップS46で読み出した制御パラメータに基づき、油圧制御系統10がブレーキアシスト動作を行なう為の電流値を算出する。なお、BA制御値算出部7hで行う電流値演算は、予めシミュレーションを実施したり、予め計測測定等を行ったりして得た結果に基づき、事前に算出処理して導出した値をBA制御パラメータテーブル格納部7gに記憶させておくこととしてもよい。
この場合には、パラメータ読み出し部7tが、必要な制御電流出力値を読み出し処理するだけで済むので、BA制御値算出部7hでの演算時間を短縮でき迅速な処理とする観点からは好ましい。
また、ステップS47で算出される制御出力値は、ステップS44で算出した圧力変動分を加算処理して得たBA制御目標圧に対応する制御出力値であり、制御圧センサ73のABS作動に起因する圧力変動分が考慮された制御出力値である。
(ステップS48)
ブレーキECU70aは、制御圧センサ73で検出する圧力を制御圧検知部7dで検知する。また、比較演算部7fは、BA制御目標圧算出部7cから入力される制御目標値と制御圧検知部7dで検出する検出値とを比較し、所望の制御目標値となっているか否かを監視する。すなわち、ブレーキECU70aは、制御圧センサ73の出力値をモニタしながら、所望の油圧となるようにリアルタイムでフィードバック制御を行う。検出値が所望の制御目標値となっていれば、ステップS49へと進む。また、検出値が所望の制御目標値となっていなければ、ステップS47へと戻る。
(ステップS49)
ブレーキECU70aのABS作動検出部7aは、アンチロックブレーキシステムが解除されたか否かを検出する。アンチロックブレーキシステムが解除されていればフローを終了し、アンチロックブレーキシステムが解除されていなければステップS43へと戻る。
この動作例1においては、ABS作動により制御圧センサ73が高圧側に振れた値を出力しても、ブレーキECU70aはABS作動前に比べて振れ出力相当分だけ高い目標制御圧に設定変更して油圧制御する。このため、ABS作動前とABS作動後との間で、ブレーキ制動力が実質的に低減する制御動作を行うことなく、ABS作動前後で実質的に同程度のブレーキ制動性能を維持できる。次に、ABS作動時に、動作例1とは異なる動作処理を行う動作例2について図面を用いて説明する。
(動作例2)
図5に示すのは、ハイドロブレーキ制御装置1の動作例2にかかるブレーキECU70bのブロック構成を例示するものである。図5(a)において、ブレーキECU70bは、アンチロックブレーキシステムの作動有無を検出するABS作動検出部7mと、制御圧センサ73の制御圧出力値が入力される制御圧検知部7rとを備える。
また、制御圧センサ73の出力値は制御圧検知部7rで制御圧値として検知された後、センサ出力値の極小値を算出する極小値算出部7nに入力され、二階微分等の演算処理によって時間軸に対する極小値が算出される。また、極小値算出部7nで算出されたセンサ出力値の極小値は、極小値を所定時間保持して出力する極小値ホールド演算部7oに入力される。また、極小値ホールド演算部7oは、次の極小値が極小値算出部7nから入力されるまでの間、先に入力された極小値をホールドし、ホールドした極小値をBA制御部7kに出力する。
また、BA制御部7kは、制御圧検知部7rから入力されるセンサ出力値と、極小値ホールド演算部7oから入力される極小値と、を適宜選択する入力値選択部7lを備える。入力値選択部7lは、ABS作動検出部7mからアンチロックブレーキシステムの作動を検出する信号が入力されなければ、制御圧検知部7rから入力される制御圧センサ73のセンサ出力値を選択する。また、入力値選択部7lは、ABS作動検出部7mからアンチロックブレーキシステムの作動を検出する信号が入力されると、極小値ホールド演算部7oから入力されるホールドされた極小値を選択する。すなわち、BA制御部7kは、ABSが作動すると、制御圧センサ73の検出値と極小値のホールド値とを差し替えて制御演算する。
また、パラメータ読み出し部7sは、入力値選択部7lが選択した入力値に対応する最適なBA制御パラメータを、BA制御パラメータテーブル格納部7pから読み出し処理する。なお、BA制御パラメータテーブル格納部7pには、予め制御圧センサ73の指示値、若しくは極小値ホールド演算部7oのホールド極小値に対応して、最適なブレーキアシスト動作を行うためのパラメータ変数テーブルが記録されている。
なお、パラメータ読み出し部7sは、ブレーキペダル24の踏力に対応してブレーキアシストの強弱レベルを決定するBA制御目標圧と、入力値選択部7lで選択された入力値と、を比較判断して、BA制御目標圧となるような制御パラメータを読み出してもよい。BA制御目標圧と入力値選択部7lで選択された入力値とを比較して、入力値選択部7lで選択された入力値がBA制御目標圧となるように、両者の差異等に基づいて最適な制御パラメータをBA制御パラメータテーブル格納部7pから読み出すフィードバック制御とできる。なお、動作例2においてBA制御目標圧は、ABS非作動時であってもABS作動時であっても、BA制御部7kが、レギュレータ圧センサ71又は不図示のマスタシリンダ圧センサで検出されるマスタシリンダ圧と、ブレーキアシストによる嵩上げ相当圧とを加算して算出する。
そして、BA制御部7kは、ABS非作動時にはBA制御目標圧が制御圧センサ73のセンサ出力値と合致するように油圧制御する。また、BA制御部7kは、ABS作動時にはBA制御目標圧がホールドされた極小値に合致するように油圧制御する。
また、BA制御値算出部7qは、パラメータ読み出し部7sで読み出された変数パラメータを基に、最適な制御信号(制御電流値)を算出し油圧制御系統10に出力して油圧制御する。
動作例2で例示するブレーキECU70bは、BA制御部7kが、入力値選択部7lで選択された入力値を基にブレーキアシストの油圧制御を行う。このため、アンチロックブレーキシステムの作動により、制御圧センサ73の出力値が見かけ上上昇して検出される場合でも、その影響を低減した油圧制御を行える。
次に、図6を用いてハイドロブレーキ制御装置1の動作例2にかかる動作フローについて簡単に説明する。下記の説明において、動作例1等で既に説明した動作処理については重複するので、ここでは説明を省略するか又は簡略に行うこととする。図6に例示するのは、動作例2のBA制御かかる動作フローを説明する図である。
(ステップS61)
ブレーキECU70bは、ブレーキアシスト作動状態か否かを判断する。ブレーキアシスト作動状態であればステップS62へと進み、ブレーキアシスト作動状態でなければステップS61で待機する。なお、ブレーキECU70bのBA制御部7kは、ブレーキアシストを行う際には制御圧センサ73のブレーキ制御圧値を制御圧検知部7rで検出したセンサ出力値が、ブレーキペダル24の踏力に対応する圧力値を示すマスタシリンダ圧値と、ブレーキアシストとして嵩上げする圧力分に相当するBA嵩上げ狙い圧値とを加えた圧力値となるように制御する。マスシリンダ圧値は、マスタシリンダハイドロブースタ31の油圧出力値であり、レギュレータ圧センサ71や不図示のマスシリンダ圧センサの出力値により検出できる。
(ステップS62)
ABS作動検出部7mは、アンチロックブレーキシステムが作動しているか否かを検出する。ABSが作動していればステップS63へと進み、ABSが作動していなければステップS61へと戻る。
(ステップS63)
極小値算出部7nは、制御圧検知部7rが検出する制御圧センサ73の出力値から極小値を算出する。極小値算出部7nは、時間に対して二階微分等の演算処理を行い極小値を算出する。極小値算出部7nは、算出した極小値を極小値ホールド演算部7oに出力する。
(ステップS64)
極小値ホールド演算部7oは、ステップS63で極小値算出部7nが算出した極小値を、典型的には次の極小値が入力されるまでの間保持し、BA制御部7kにホールド値を出力する。なお、極小値ホールド演算部7oは、極小値を保持する期間を任意に設定できる。例えば、極小値ホールド演算部7oは、次の極小値までではなく、例えば極小値複数個ごとにホールドする等の任意の期間のホールド処理ができる。また、極小値ホールド演算部7oは、連続する前後複数の極小値を、例えば平均化するなど所望の演算処理を行い出力することとできる。複数個相当分の極小値をホールドしたり、平均化したりするとホールド値の周期が長くなり、CPU等の演算付加を低減して省電力な制御演算が可能となるので好ましい。
極小値ホールド演算部7oが平均化処理する平均対象期間を長くすれば、突発的なスパイクノイズ調の振れ変動に対して、ある程度平均化されて安定した値を出力することが可能となるので、振れの少ない安定した処理が行えることとなり好ましい。
また、極小値ホールド演算部7oは、所定の曲率以上の極小値のみに対してホールド処理等を行ってもよい。制御圧センサの振れ周波数が著しく高い場合等においては、全ての振れ変動の極小値を算出すると、演算処理負担が大きくなるので種々の方法で、極小値をいわゆる間引き処理を行うこととしてもよい。これにより、迅速かつ低消費電力な演算処理とできる。
(ステップS65)
入力値選択部7lは、アンチロックブレーキシステムが作動している場合には極小値ホールド演算部7oから入力されるホールド極小値を選択する。また、入力値選択部7lは、アンチロックブレーキシステムが作動していない場合には制御圧検知部7rから入力される制御圧センサ出力値を選択する。
(ステップS66)
パラメータ読み出し部7rは、制御圧センサ73の出力値又は演算処理されたホールド極小値に基づき、必要な変数パラメータをBA制御パラメータテーブル格納部7pから読み出す。
例えば、パラメータ読み出し部7rは、演算処理されたホールド極小値に対応付けされてBA制御パラメータテーブル格納部7pに予め記録されている制御パラメータを読み出す。また、例えば、パラメータ読み出し部7rは、演算処理されたホールド極小値と制御目標値との差異に対応付けされて、BA制御パラメータテーブル格納部7pに予め記録されている制御パラメータを読み出す。
(ステップS67)
BA制御値算出部7qは、ステップS66で読み出したパラメータを用いて、油圧制御系統10の制御ソレノイドを駆動する制御信号(制御電流値)を生成して出力し、油圧制御する。
(ステップS68)
BA制御部7kは、制御圧センサ73の出力値又は演算処理されたホールド極小値と制御圧センサ73の出力値とを比較し、所望の制御目標値に制御できているか否かを監視する。所望の制御目標値は、一般にはブレーキペダル24の踏力に対応する圧力値を示すマスタシリンダ圧値と、ブレーキアシストとして嵩上げする圧力分に相当するBA嵩上げ狙い圧値とを加えた圧力値である。所望の制御目標圧になっていれば動作フローを一旦終了する。また、所望の制御目標圧になっていなければステップS61へと戻る。
動作例2に示すブレーキECU70bは、ABSの作動により制御圧センサ出力値に振れ振動が重畳されて不安定な値で検出される場合でも、検出値から極小値を算出して振れ振動相当分の影響を低減した圧力値を算出できる。これにより、ABS作動に伴う制御圧センサ出力値の振れ振動の影響を低減し、より実質的な圧力値に近い極小値を制御圧検出値と見なし、この見なし極小値が所望の目標圧となるように制御可能である。次に、いわゆるハイブリッド電動自動車のブレーキ制御について、下記の第二の実施形態で説明する。
(第二の実施形態)
第二の実施形態に係るハイドロブレーキ制御装置100は、例えば、走行駆動源として電動モータとガソリンエンジン等の内燃機関とを備えるハイブリッド車両に搭載される。このようなハイブリッド車両においては、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに回生することによって車両を制動する回生制動と、ハイドロブレーキ制御装置100による液圧制動とのそれぞれを車両の制動に用いることができる。また、第二の実施形態における車両は、これらの回生制動と液圧制動とを併用して所望の制動力を発生させるブレーキ回生協調制御を実行することができるものとする。
ハイドロブレーキ制御装置100は、図7に示すように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLと、マスタシリンダユニット270と、動力液圧源300と、液圧アクチュエータ400とを含む。ここで図7は、第二の実施形態で例示するハイドロブレーキ制御装置100の油圧系統を概念的に示す図である。
ディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット270は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル240の運転者による操作量(典型的には踏力やストローク踏量)に応じて加圧されたブレーキフルードをディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLに対して送出する。
動力液圧源300は、動力の供給により加圧された作動流体としてのブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル240の操作から独立してディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLに対して送出することも可能である。
液圧アクチュエータ400は、動力液圧源300またはマスタシリンダユニット270から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。
続いて、ディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RL、マスタシリンダユニット270、動力液圧源300、および液圧アクチュエータ400のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。なお、各ディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLは、それぞれブレーキディスク220とブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLを含むものとする。
また、各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ400に接続されている。ディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLにおいては、ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに液圧アクチュエータ400からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク220に摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。
これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、第二の実施形態においてはディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLを含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
図7に示すハイドロブレーキ制御装置100では、マスタシリンダユニット270は、液圧(ハイドロ)ブースタ付きマスタシリンダであり、ハイドロブースタ310、マスタシリンダ320、レギュレータ330、およびリザーバ340を含む。
ハイドロブースタ310は、ブレーキペダル240に連結されており、ブレーキアシスト動作時には、ブレーキペダル240に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ320に伝達する。また、動力液圧源300からレギュレータ330を介してハイドロブースタ310にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ320は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生し、ブレーキアシスト作動源となる。
マスタシリンダ320とレギュレータ330との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ340が配置されている。マスタシリンダ320は、ブレーキペダル240の踏み込みが解除されているときにリザーバ340と連通する。
一方、レギュレータ330は、リザーバ340と動力液圧源300のアキュムレータ350との双方と連通しており、リザーバ340を低圧源とすると共に、アキュムレータ350を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。
レギュレータ330における液圧を、以下ではレギュレータ圧という。なお、第二の実施形態においては、マスタシリンダ圧とレギュレータ圧とは厳密に同一圧にされる必要はなく、例えばレギュレータ圧のほうが若干高圧となるようにマスタシリンダユニット270を設計することも可能である。
動力液圧源300は、アキュムレータ350とポンプ360とを含む。アキュムレータ350は、ポンプ360により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。
ポンプ360は、駆動源としてモータ360aを有し、その吸込口がリザーバ340に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ350に接続される。また、アキュムレータ350は、マスタシリンダユニット270に設けられたリリーフバルブ350aにも接続されている。
アキュムレータ350におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まり、例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ350aが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ340へと戻される。
上述のように、ハイドロブレーキ制御装置100は、ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ320、レギュレータ330およびアキュムレータ350を有している。
そして、マスタシリンダ320にはマスタ配管370が、レギュレータ330にはレギュレータ配管380が、アキュムレータ350にはアキュムレータ配管390が接続されている。これらのマスタ配管370、レギュレータ配管380およびアキュムレータ配管390は、それぞれ液圧アクチュエータ400に接続されている。
液圧アクチュエータ400は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路410、420,430および440と、主流路450とが含まれる。
個別流路410、420,430および440は、それぞれ主流路450から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット210FR、210FL,210RR,210RLのホイールシリンダ230FR、230FL,230RR,230RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLは主流路450と連通可能となる。
また、個別流路410,420,430および440の中途には、ABS保持弁510,520,530および540が設けられている。各ABS保持弁510,520,530および540は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有している。
そして、各ABS保持弁510,520,530および540は、各々のソレノイドが非通電状態にある場合に、開とされる常開型電磁制御弁である。開状態とされた各ABS保持弁510,520,530および540は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
つまり、主流路450からホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLへとブレーキフルードを流すことができるとともに、逆にホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLから主流路450へもブレーキフルードを流すことができる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁510,520,530および540が閉弁されると、個別流路410,420,430および440におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
更に、ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLは、個別流路410,420,430および440にそれぞれ接続された減圧用流路460,470,480および490を介してリザーバ流路550に接続されている。
減圧用流路460,470,480および490の中途には、ABS減圧弁560,570,580および590が設けられている。各ABS減圧弁560,570,580および590は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有している。各ABS保持弁510,520,530および540と、各ABS減圧弁560,570,580および590とは、ABS制御を行う制御ソレノイドである。
そして、各ABS減圧弁560,570,580および590は、各々のソレノイドが非通電状態にある場合に、閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁560,570,580および590が閉状態であるときには、減圧用流路460,470,480および490におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁560,570,580および590が開弁されると、減圧用流路460,470,480および490におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLから減圧用流路460,470,480および490およびリザーバ流路550を介してリザーバ340へと還流する。なお、リザーバ流路550は、リザーバ配管770を介してマスタシリンダユニット270のリザーバ340に接続されている。
また、主流路450は、中途に分離弁600を有する。この分離弁600により、主流路450は、個別流路410および420と接続される第1流路450aと、個別流路430および440と接続される第2流路450bとに区分けされている。
第1流路450aは、個別流路410および420を介して前輪側のホイールシリンダ230FRと230FLとに接続される。また、第2流路450bは、個別流路430および440を介して後輪側のホイールシリンダ230RRと230RLとに接続される。
分離弁600は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁600が閉状態であるときには、主流路450におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁600が開弁されると、第1流路450aと第2流路450bとの間で、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
また、液圧アクチュエータ400においては、主流路450に連通するマスタ流路610およびレギュレータ流路620が形成されている。より詳細には、マスタ流路610は、主流路450の第1流路450aに接続されており、レギュレータ流路620は、主流路450の第2流路450bに接続されている。
また、マスタ流路610は、マスタシリンダ320と連通するマスタ配管370に接続される。レギュレータ流路620は、レギュレータ330と連通するレギュレータ配管380に接続される。
マスタ流路610は、中途にマスタカット弁640を有する。マスタカット弁640は、マスタシリンダ320から各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLへのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。
マスタカット弁640は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
開状態とされたマスタカット弁640は、マスタシリンダ320と主流路450の第1流路450aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに規定の制御電流が通電されてマスタカット弁640が閉弁されると、マスタ流路610におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
また、マスタ流路610には、マスタカット弁640よりも上流側において、シミュレータカット弁680を介してストロークシミュレータ690が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁680は、マスタシリンダ320とストロークシミュレータ690とを接続する流路に設けられている。
シミュレータカット弁680は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により開弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。
シミュレータカット弁680が閉状態であるときには、マスタ流路610とストロークシミュレータ690との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁680が開弁されると、マスタシリンダ320とストロークシミュレータ690との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
ストロークシミュレータ690は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁680の開放時に運転者によるブレーキペダル240の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ690としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、多段のバネ特性を有するものが採用されると好ましい。
レギュレータ流路620は、中途にレギュレータカット弁650を有する。レギュレータカット弁650は、レギュレータ330から各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLへのブレーキフルードの供給経路上に設けられている。
レギュレータカット弁650も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、規定の制御電流の供給を受けてソレノイドが発生させる電磁力により閉弁状態が保証され、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
開状態とされたレギュレータカット弁650は、レギュレータ330と主流路450の第2流路450bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁650が閉弁されると、レギュレータ流路620におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
液圧アクチュエータ400には、マスタ流路610およびレギュレータ流路620に加えて、アキュムレータ流路630も形成されている。アキュムレータ流路630の一端は、主流路450の第2流路450bに接続され、他端は、アキュムレータ350と連通するアキュムレータ配管390に接続される。
アキュムレータ流路630は、中途に増圧リニア制御弁660を有する。また、アキュムレータ流路630および主流路450の第2流路450bは、減圧リニア制御弁670を介してリザーバ流路550に接続されている。
増圧リニア制御弁660と減圧リニア制御弁670とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁660および減圧リニア制御弁670は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
また、増圧リニア制御弁660は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに対して共通の増圧用制御弁として設けられている。
また、減圧リニア制御弁670も同様に、各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに対して共通の減圧用制御弁として設けられている。つまり、ハイドロブレーキ制御装置100においては、増圧リニア制御弁660および減圧リニア制御弁670は、動力液圧源300から送出される作動流体を各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLへ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。
このように増圧リニア制御弁660等を各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに対して共通化すれば、ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLごとにリニア制御弁を設けるのと比べて、コストの観点からは好ましい。
なお、ここで、増圧リニア制御弁660の出入口間の差圧は、アキュムレータ350におけるブレーキフルードの圧力と主流路450におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、減圧リニア制御弁670の出入口間の差圧は、主流路450におけるブレーキフルードの圧力とリザーバ340におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。
また、増圧リニア制御弁660および減圧リニア制御弁670のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁670の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。
従って、増圧リニア制御弁660および減圧リニア制御弁670のリニアソレノイドへの供給電力(F1に対応)を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁660および減圧リニア制御弁670の出入口間の差圧(F3に対応)を制御することができる。
また、図7に示すように、動力液圧源300および液圧アクチュエータ400は、ハイドロブレーキ制御装置100の制御部としてのブレーキECU700により制御される。ブレーキECU700は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。また、CPUは、複数のプロセッサを有するマルチプロセッサとしてもよい。
そして、ブレーキECU700は、上位のハイブリッドECU(図示せず)などとバス接続等により通信可能に構成し、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源300のポンプ360や、液圧アクチュエータ400を構成する電磁制御弁を制御する。
ブレーキECU700の指示により、ブレーキアシストが機能している場合には上述のようにアキュムレータ350の油圧が増圧源としてマスタシリンダユニット270を介して供給される。そして、ブレーキアシストが機能している時に、アンチロックブレーキシステムが機能してブレーキECU700が、各ABS保持弁510,520,530および540を遮断すると、制御圧センサ730の検出出力値にスパイクノイズ調の振れ振動が重畳される。
これにより、ブレーキECU700は、ABSの作動直前とABSの作動直後とで制御圧センサ730が設けられる油圧配管の油圧を変更制御していないにもかかわらず、振れ振動により制御圧センサ730の検出出力値が高くなったものとして検知する。
従来のブレーキECUでは、制御圧センサ730の検出出力値が高くなったものとして検知すると、この高くなった値を基準に、ABS作動時の油圧制御目標値となるように制御することとなる。その結果、ブレーキECU700は、ABS作動直後に、制御圧センサ730が設けられる油圧配管の油圧を下げる方向に調整制御することとなり、ブレーキ制動能力の低減を招来する。
そこで、第二の実施形態で例示するブレーキECU700は、ABS作動により、スパイクノイズ調の振れ振動が重畳される制御圧センサ730の検出出力値に対し演算処理を行いブレーキ制動能力の低下を招来しないような制御処理とする。具体的には、ブレーキECUは、ブレーキアシスト作動時にABSが作動すると、制御圧センサ730の検出出力値の圧力変動成分Pp−pを算出し、ABS作動時の目標制御圧値に圧力変動成分Pp−p分を上乗せして油圧制御する。
また、ブレーキECU700は、ブレーキアシスト作動時にABSが作動すると、制御圧センサ730の検出出力値に二階微分処理等を行い、極小値を算出する。さらに、ブレーキECUは、算出した極小値を一定期間ホールドし、このホールドされた極小値を制御圧センサ730の検出出力値であると見なして油圧制御を行う。ホールドされた極小値は、スパイクノイズ調の振れ振動の影響が低減された制御圧値であるので、ABSの作動による影響を実質的に低減した油圧制御が行える。従って、ブレーキECUは、ABSの作動による制御圧センサ730の出力変動に起因してブレーキ制御油圧を低下させる動作をせずに、所望のブレーキ制動力を発揮できるような制御目標油圧値を維持する制御が行える。
また、液圧アクチュエータ400を構成する電磁制御弁とは、ABS保持弁510,520,530および540と、ABS減圧弁560,570,580および590と、分離弁600と、マスタカット弁640と、レギュレータカット弁650と、増圧リニア制御弁660と、減圧リニア制御弁670と、シミュレータカット弁680とを含むものとする。
また、ブレーキECU700には、レギュレータ圧センサ710、アキュムレータ圧センサ720、および制御圧センサ730、マスタシリンダ圧センサ740が接続される。レギュレータ圧センサ710は、レギュレータカット弁650の上流側でレギュレータ流路620内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU700に与える。
アキュムレータ圧センサ720は、増圧リニア制御弁660の上流側でアキュムレータ流路630内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU700に与える。
制御圧センサ730は、主流路450の第1流路450a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU700に与える。また、マスタシリンダ圧センサ740は、マスタシリンダ320から出力するマスタ流路610の圧力を検出し、検出した値を示す信号をブレーキECU700に与える。レギュレータ圧センサ710とマスタシリンダ圧センサ740とは、いずれもマスタシリンダユニット270の油圧出力を検出するものである。
各圧力センサ710,720,730,740の検出値は、所定時間おきにブレーキECU700に順次与えられ、ブレーキECU700の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
分離弁600が開状態とされて主流路450の第1流路450aと第2流路450bとが互いに連通している場合、制御圧センサ730の出力値は、増圧リニア制御弁660の低圧側(下流側)の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁670の高圧側(上流側)の液圧を示すので、この出力値を増圧リニア制御弁660および減圧リニア制御弁670の制御に利用することができる。
また、増圧リニア制御弁660および減圧リニア制御弁670が閉鎖されていると共に、マスタカット弁640が開状態とされている場合、制御圧センサ730の出力値は、マスタシリンダ圧センサ740の出力値であるマスタシリンダ圧と同じ値を示す。
更に、分離弁600が開放されて主流路450の第1流路450aと第2流路450bとが互いに連通しており、各ABS保持弁510,520,530及び540が開放される一方、各ABS減圧弁560,570,580及び590が閉鎖されている場合、制御圧センサの730の出力値は、各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
さらに、ブレーキECU700に接続されるセンサには、ブレーキペダル240に設けられたストロークセンサ250も含まれる。ストロークセンサ250は、ブレーキペダル240の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキECU700に与える。ストロークセンサ250の出力値も、所定時間おきにブレーキECU700に順次与えられ、ブレーキECU700の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
なお、ストロークセンサ250以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ250に加えて、あるいは、ストロークセンサ250に代えて設け、ブレーキECU700に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、例えば、ブレーキペダル240の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル240が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチなどがある。
上述のように構成されたハイドロブレーキ制御装置100は、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。ハイドロブレーキ制御装置100は制動要求を受けて制動を開始する。制動要求は、例えば運転者がブレーキペダル240を操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときに生起される。
制動要求を受けてブレーキECU700は要求制動力を演算し、要求制動力から回生による制動力を減じることによりハイドロブレーキ制御装置100により発生させるべき制動力である要求液圧制動力を算出する。ここで、回生による制動力は、ハイブリッドECUからハイドロブレーキ制御装置100に供給される。
そして、ブレーキECU700は、算出した要求液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ230FR,230FL,230RR及び230RLの目標液圧を算出する。ブレーキECU700は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御により増圧リニア制御弁660や減圧リニア制御弁670に供給する制御電流の値を決定する。すなわち、ブレーキECU700は、算出した要求液圧制動力に対応するアキュムレータ圧をアキュムレータ配管390から供給できるように、増圧リニア制御弁660等を制御する。
その結果、ハイドロブレーキ制御装置100においては、ブレーキフルードが動力液圧源300から増圧リニア制御弁660を介して各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに供給され、車輪に制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLからブレーキフルードが減圧リニア制御弁670を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が調整される。
第二の実施形態においては、動力液圧源300、増圧リニア制御弁660及び減圧リニア制御弁670等を含んでホイールシリンダ圧制御系統が構成されている。ホイールシリンダ圧制御系統によりいわゆるブレーキバイワイヤによる制動力制御が行われる。ホイールシリンダ圧制御系統は、マスタシリンダユニット270からホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLへのブレーキフルードの供給経路に並列に設けられている。
なお、第二の実施形態に係るハイドロブレーキ制御装置100は、回生制動力を利用せずに液圧制動力だけで要求制動力をまかなう場合にも、ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御することができる。また、ブレーキ回生協調制御を実行しているか否かにかかわらず、ホイールシリンダ圧制御系統により制動力を制御する制御モードは、リニア制御モード、あるいはブレーキバイワイヤによる制御と呼ばれる場合もある。
例えば、各車輪の路面に対する滑りを抑制して車両の挙動を安定化させるための、いわゆるVSC(Vehicle Stability Control)制御やTRC(Traction Control)制御などはリニア制御モードにおいて実行される。VSC制御は、車両の旋回時における車輪の横滑りを抑制するための制御である。TRC制御は、車両の発進時や加速時に駆動輪の空転を抑制するための制御である。また、緊急ブレーキ時に運転者によるペダル踏力を補完して制動力を高めるブレーキアシスト制御もリニア制御モードにおいて実行され得る。緊急ブレーキ時とは、ブレーキペダルが所定の速度以上で踏み込まれた場合、ブレーキペダルが所定の踏力以上で踏み込まれた場合、ブレーキペダルが所定のストローク以上のストロークで踏み込まれた場合等としてもよい。
ハイドロブレーキ制御装置100において、アキュムレータ350圧の重畳等によるブレーキ制御圧のアシスト増大制御は、ブレーキECU700が、制御圧センサ730の圧力を監視しながら増圧リニア制御弁660と減圧リニア制御弁670とを開閉制御することにより行う。また、ハイドロブレーキ制御装置100において、アキュムレータ350圧の重畳等によるブレーキ制御圧のアシスト増大制御は、ブレーキECU700が、レギュレータ圧センサ710の圧力を監視しながらストロークセンサ250の出力に応じてレギュレータ330の圧を調整する事で行う。また、ハイドロブレーキ制御装置100において、アキュムレータ350圧の重畳等によるブレーキ制御圧のアシスト増大制御は、ブレーキECU700が、マスタシリンダ圧センサ740の圧力を監視しながらストロークセンサ250の出力に応じてマスタシリンダ320の圧を調整する事で行う。
上述するように、ハイドロブレーキ制御装置100は、ブレーキアシスト非動作時にアキュムレータ配管390を経由する経路を用いて制動し、ブレーキアシスト動作時にマスタ配管370、レギュレータ配管380を経由する経路を用いて制動してもよい。ハイドロブレーキ制御装置100において、ブレーキアシストを行う状態とは、通常のブレーキペダル240による制動時とは異なり、ブレーキペダル240に加えて特に緊急に制動力を高める動作を行う状態であるとできる。
また、ブレーキECU700は、ブレーキペダル240の踏力に応じた目標制御圧を予め与えられ又は演算により算出する。また、ブレーキECU700は、制御圧センサ730の圧力値が、ブレーキECU700が算出等した目標制御圧となるように、増圧リニア制御弁660と減圧リニア制御弁670とを開閉制御する。この場合の目標制御圧は、必要制動力から回生制動による制動力相当分を減算したものとなる。
また、ブレーキアシストが作動している時に、アンチロックブレーキシステム(ABS)が作動すると、ブレーキECU700は、ABS保持弁510,520,530及び540を閉じる動作を行う。このABS動作により、各ディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLが、各タイヤと道路との間の摩擦制動力を超越する制動力をタイヤに付与することによって、タイヤがロック状態となる事を抑止できる。
ところで、アンチロックブレーキシステムの作動によりABS保持弁510,520,530及び540が閉じられると、センサ圧検出値が上昇し、そのままでは見かけ上の制動性能が低下するように油圧制御される。すなわち、ABS保持弁510,520,530及び540が閉じられると、その上流側にある制御圧センサ730で検出する圧力値に、乱れが生じたり振動による変動が生じたりする。
典型的には、ABS保持弁510,520,530及び540が通電状態とされ閉弁されると、その上流側では、制御圧力が高圧側へ変動するように検出される。すなわち、制御圧センサ730の検出値が、高圧側へ変動した値としてブレーキECU700に認識される。一般に、アンチロックブレーキシステムの作動直前には、制御圧センサ730の圧力値は、ブレーキECU700により目標制御圧となるように制御されている。
従って、アンチロックブレーキシステムの作動により弁が作動すると、ブレーキECU700は、制御圧センサ730の出力値がABS作動直前の目標制御圧値よりも高くなったように認識することとなる。
これにより、ブレーキECU700は、例えば減圧リニア制御弁670等を制御して、ブレーキアシストするアシスト圧力を減らす制御を行うこととなる。典型的には、ブレーキECU700は、アキュムレータ配管390を経由して伝達するアシスト圧を減圧する動作を、減圧リニア制御弁670を非通電状態にして開とすること等で行わせる。これにより、そのままでは各ディスクブレーキユニット210FR,210FL、210RRおよび210RLの制動性能が低下する。
第二の実施形態においては、ハイドロブレーキ制御装置100は、アキュムレータ350の油圧の利用により増圧されるブレーキアシスト状態において、アンチロックブレーキシステムが作動した場合に、ブレーキECU700が、ブレーキの制動性能が低下しないように油圧制御する。
具体的には、ブレーキECU700は、制御圧センサ730の目標制御圧値を、ABSの作動に伴う圧力変動相当分高く設定してフィードバック制御する。また、典型的には、ブレーキECU700は、増圧リニア制御弁660の制御電流を、ABSの作動に伴う油圧変動相当分増大させた増圧制御を行う。また、ABSの作動に伴う圧力変動が予め測定され記憶されていればその記憶を読み出し、あるいはABSの作動に伴う圧力変動をリアルタイムで検出することにより、圧力変動に相当する電流値を加え、増圧リニア制御弁660の制御電流を増大した増圧制御を行う。
また、具体的には、ブレーキECU700は、制御圧センサ730の検出出力値の極小値、又は最小値を演算ホールドした値を、制御圧センサ730の検出出力値であると見なして油圧制御を行う。この演算処理により、制御圧センサ730の検出値に振れ変動による増大が生じても、ブレーキECU700が増大分を実質的に認識しない。
ハイドロブレーキ制御装置100は、上述するようにブレーキアシスト制御を行うに際し、アキュムレータ350の圧を各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに供給する二つの経路を有する。
一つは、動力液圧源300からレギュレータ330を介してハイドロブースタ310にブレーキフルードが供給され、ハイドロブースタ310が、ブレーキペダル240に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ320に伝達するものである。
他の一つは、アキュムレータ350から増圧リニア制御弁660を介して、各ホイールシリンダ230FR,230FL、230RRおよび230RLに伝達するものである。これらの二つの経路は、ブレーキアシスト時にどちらか一方の経路のみ選択的に用いることとしてもよいし、ブレーキアシスト時に両方とも用いることとしてもよい。ブレーキアシスト時に両方用いる場合には、油圧供給系統が複数となるので単一経路のみの油圧供給系統に比して、ブレーキ制御の信頼性が高まり、油圧配管故障等に強いブレーキ制御となることが期待できる。
また、増圧リニア制御弁660を介してアキュムレータ350圧を供給する経路は、緊急制動時のみのブレーキアシスト制御としてもよい。すなわち、通常ブレーキ作動時のブレーキアシストモードと緊急制動時のブレーキアシストモードとで、各々油圧供給系統を変更してもよいし、各々油圧供給系統を同じとしてもよい。
ハイドロブレーキ制御装置100では、マスタシリンダ320とレギュレータ330とからの油圧供給系統でブレーキアシスト制御を行う場合には、ABS作動後のBA制御目標圧は、マスシリンダ圧とBA嵩上げ狙い値と圧力変動成分Pp−pを加えた値とできる。また、ハイドロブレーキ制御装置100では、増圧リニア制御弁660を介する油圧供給系統でブレーキ制御を行う場合には、ABS作動後のBA制御目標圧は、ブレーキペダル240の踏力に応じた所定の設定圧力とBA嵩上げ狙い値と圧力変動成分Pp−pとを加えた値とできる。
また、この場合には、ABS作動時の増圧リニア制御弁660の弁開閉度に応じて、ブレーキECU700が、制御圧センサ730の目標制御圧値を、圧力変動相当分高く設定してもよい。増圧リニア制御弁660の開度が大きい場合にはアシスト量も大きいので、ABS作動による油圧変動も大きいものと思われる。従って、高く設定する量も大きくする。また、増圧リニア制御弁660の開度が小さい場合にはアシスト量も小さいので、ABS作動による油圧変動は小さいものと思われる。従って、高く設定する量を小さくする。
ハイドロブレーキ制御装置1とハイドロブレーキ制御装置100とは、自明な範囲で適宜、その構成と動作処理を変更して用いることができる。
1・・ハイドロブレーキ制御装置、7a・・ABS作動検出部、7b・・圧力変動値算出部、7c・・BA制御目標圧算出部、7d・・制御圧検知部、7e・・BA制御部、7f・・比較演算部、7g・・BA制御パラメータテーブル格納部、7h・・BA制御値算出部、7i・・マスタシリンダ圧検出部、7j・・BA嵩上げ狙い値演算部、7k・・BA制御部、7l・・入力値選択部、7m・・ABS作動検出部、7n・・極小値算出部、7o・・極小値ホールド演算部、7p・・BA制御パラメータテーブル格納部、7q・・BA制御値算出部、7r・・制御圧検知部、7s・・パラメータ読み出し部、7t・・パラメータ読み出し部、10・・油圧制御系統、11・・切り替えソレノイド、12・・制御ソレノイド、20・・ブレーキキャリパ、21FR・・ディスクブレーキユニット、21RR・・ディスクブレーキユニット、24・・ブレーキペダル、31・・マスタシリンダハイドロブースタ、34・・リザーバ、35・・アキュムレータ、36・・ポンプ、37・・通常ブレーキ系統、39・・アキュムレータ経路、51・・ABS保持弁、56・・ABS減圧弁、64・・マスタカット弁、65・・レギュレータカット弁、66・・増圧リニア制御弁、70・・ブレーキECU、70a・・ブレーキECU、70b・・ブレーキECU、71・・レギュレータ圧センサ、72・・アキュムレータ圧センサ、73・・制御圧センサ。