JP5125037B2 - 鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法 - Google Patents
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Description
一方、従来、路盤材等の土木用資材として粒径が20〜50mm程度の塊状の製鋼スラグが製造されており、特許文献1には、このような塊状の製鋼スラグを用いて潜堤を構築することが示されている。製鋼スラグは鉄鋼製造プロセスで発生するスラグ(鉄鋼スラグ)であり、安価に且つ大量に調達できる利点がある。
また、例えば、護岸の構築や水底の基礎・基盤工事などにおいても塊状の製鋼スラグを使用することが考えられるが、この場合も上述した潜堤と同様に波浪安定性に大きな問題がある。
したがって本発明の目的は、鉄鋼スラグを水中に安定的に設置することができ、これにより鉄鋼スラグを用いて高い波浪安定性を有する水中構造体や基礎・基盤などを容易に施工することができる施工法を提供することにある。
[1]鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを50mass%以上含む材料(但し、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグのみからなる材料の場合を含む)を、透水性がある容器に入れ、該容器を水中に置いて容器内の材料を前記スラグの水硬作用により固結させる施工方法であって、
容器が水中で経時的に分解又は/及び腐蝕する容器であり、容器内の材料が固結した後に、該容器を分解又は/及び腐蝕により消失させることを特徴とする、鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
[2]上記[1]の施工方法において、容器が袋体であることを特徴とする、鉄鋼スラグの水中施工法。
[4]上記[1]又は[2]の施工方法において、容器内の材料を、粘着力(但し、JIS A 1216の「土の一軸圧縮試験方法」に基づき求められた試料の一軸圧縮強さquの1/2の値)が20kN/m2以上となるように固結させた後、容器を分解又は/及び腐蝕により消失させることを特徴とする、鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの施工方法において、容器内の材料は、高炉水砕スラグの割合が30mass%以上であることを特徴とする、鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
[6]上記[1]〜[4]のいずれかの施工方法において、容器内の材料は、高炉水砕スラグと製鋼スラグを高炉水砕スラグ:製鋼スラグ=6:1〜1:1の質量比で混合したものであることを特徴とする、鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの施工方法において、材料を入れた容器により、少なくとも潜堤外層部の一部を構築することを特徴とする、鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
容器は、スラグを水中設置するための施工場所(例えば、構造体や基礎などの施工場所)以外の水中において中身の材料Aを固結させた後、施工場所に移動させてもよいが、直接施工場所に設置した状態で容器内の材料Aを固結させた方が、施工が容易であるため好ましい。
上記材料Aは、粒状又は/及び塊状の形態を有するものであり、粒度としては、通常100mm程度以下のものが使用可能である。通常使用する製鋼スラグの粒度は85mm以下、高炉水砕スラグの粒度は5mm以下であるが、既に固結しているような場合には、それ以上の粒度のものを用いることもできる。
上記材料Aは、上記鉄鋼スラグのみで構成してもよいが、鉄鋼スラグ以外の粒状物や塊状物、例えば、天然砂、天然砕石、天然砕石を加工した人工砂、リサイクルコンクリート等の1種以上を固結特性を阻害しない範囲で含むことができる。但し、本発明は鉄鋼スラグの水硬作用を利用して材料Aを固結させるものであるため、材料Aは鉄鋼スラグを主体とするものであること、すなわち鉄鋼スラグの割合が50mass%以上、好ましくは70mass%以上であることが必要である。
容器は透水性があることが必要であるが、透水性を有する容器には、容器を構成する素材自体が透水性を有するものの他に、容器を構成する素材は非透水性であるが、容器内に水を浸透させることができる隙間や孔を有する容器も含まれる。
ここで、容器の透水性は容器内の材料Aに水が浸透する程度の透水性でよく、海水交換が行われるような透水性は必要ない。むしろ、容器内の材料Aの固結を早めるには海水交換をなるべく少なくすることが好ましく、この観点からは、容器は水が浸透できる程度の隙間を有するシート製の袋体や透水性の低い網袋などで構成するのが好ましい。
また、水底などの形状に合わせて容器を積み上げて構造体などを構築するためには、材料Aを入れた容器は変形できることが好ましく、この観点からは、容器は袋体(例えば、一般にフレコンバッグと呼ばれるような袋体)であることが好ましいが、ある程度の剛性を有する容器(例えば、箱、篭など)であってもよい。
材料Aはスラグの水硬作用によって比較的短期間に固結することが必要であり、例えば、容器を水中に設置してから6ヶ月以内、望ましくは3ヶ月以内に所定の固結状態(望ましくは粘着力15kN/m2以上、より望ましく20kN/m2以上、特に望ましく35kN/m2以上)になることが好ましい。
材料(a):高炉水砕スラグのみ
材料(b):高炉水砕スラグ(質量比:2)+製鋼スラグ(質量比:1)
材料(c):高炉水砕スラグ(質量比:1)+製鋼スラグ(質量比:1)
材料(d):高炉水砕スラグ(質量比:1)+製鋼スラグ(質量比:1)+海砂(質量比:1)
材料(e):高炉水砕スラグ(質量比:1)+製鋼スラグ(質量比:2)+海砂(質量比:2)
材料(f):製鋼スラグのみ
材料(a) 91日後に粘着力:20kN/m2以上。上面が最大8mm流失。
材料(b) 21日後に粘着力:20kN/m2以上。上面が最大3mm流失。
材料(c) 28日後に粘着力:20kN/m2以上。上面が最大3mm流失。
材料(d) 56日後に粘着力:20kN/m2以上。上面が最大5mm流失。
材料(e) 91日後に粘着力:18kN/m2。上面が最大5mm流失。
材料(f) 91日後でも粘着力は測定不可(固化せず)。上面が最大1mm流失。
○被覆供試体
材料(a)〜(f)ともに、上記各日数経過後の粘着力は上記非被覆供試体と同じ。但し、いずれの材料も上面の流失なし。
ここで、高炉水砕スラグは、粒度が細かいほど水硬後の粘着力が大きいため、材料A中には粒径2mm以下(篩目2mmの篩下)の高炉水砕スラグが20mass%以上含まれることが好ましい。高炉水砕スラグの粒度が細かいほど水硬後の粘着力が大きくなるのは、スラグ粒子どうしの接点数が多くなるからであり、上記粒度が好ましい理由は以下のとおりである。
d:スラグ粒子径(cm)
で表されるものとすると、接点数Nが概ね500個/cm3以上あれば、高炉水砕スラグは水硬作用により固結しやすくなることが本発明者らの実験で確認されている。ここで、スラグ粒子径が2mm以下のスラグの平均粒径を求めたところ約0.92mmであり、水中自由落下により堆積したスラグの間隙比は平均で1.05であったことから、粒径2mm以下の割合が20mass%である場合の接点数Nを求めると、
さらに、製鋼スラグ(特に好ましくは、脱炭スラグ又は/及び脱燐スラグ)は高炉水砕スラグのアルカリ刺激剤として有効に作用するため、高炉水砕スラグと製鋼スラグとを適当な割合で混合して用いるのが最も好ましい。以上の点は、さきに挙げた固結試験の結果や後述する実施例2などの結果からも裏付けられる。すなわち、これらの結果によれば、高炉水砕スラグ:製鋼スラグの質量比がほぼ6:1〜1:1の範囲において、特に高い波浪安定性が得られている。
この粘着力は、JIS A 1216の「土の一軸圧縮試験方法」に基づき求められた試料の一軸圧縮強さquの1/2の値である。粘着力は、一般的には、三軸圧縮試験(例えば、地盤工学会基準JGS 0521−2000 土の非圧密非排水(UU)三軸圧縮試験方法)により直接求めた方が、スラグ粒子の噛み合わせ効果も考慮されるため望ましい。しかし、水中施工材料(例えば、潜堤材料)の流失のような設計的事項には、設計上の安全を見てスラグ粒子の噛み合わせ効果を考えなくてもよい。このため本発明では、より簡便且つ低コストに比較的精度の高い粘着力を求めることができる上記一軸圧縮強さquを基に粘着力を規定した。
本発明法では、容器内の材料Aを粘着力が15kN/m2以上、望ましくは20kN/m2以上、特に望ましくは35kN/m2以上となるように固結させることが好ましい。
潜堤は、実物200kg/個相当の長方形コンクリートブロックで構築したもの、粘土(含水比等を調整して粘着力をパラメーターとした)で構築したものの2種類とした。
表1に実験結果を示すが、これによれば、粘着力がほぼ15kN/m2以上、好ましくはほぼ20kN/m2以上あれば、高い波浪安定性が得られ、潜堤として十分機能することが判る。また、粘着力がほぼ35kN/m2以上では、特に高い波浪安定性が得られることが判る。
図3は、この方法で潜堤を施工する場合の一実施形態(潜堤縦断面)を示しており、2は材料A(以下、潜堤材という)を入れた容器(袋体)である。この方法では、透水性があり且つ水中で経時的に分解又は/及び腐蝕する容器2内に潜堤材を入れ、この容器2を積み上げることにより堤構造体1(潜堤)を構築する。
また、先に述べたように、水底などの形状に合わせて容器2を積み上げて構造体などを構築するためには、容器2は上記材質などからなる袋体であることが好ましい。
また、容器2は、その内部の材料Aが固結しないうちは消失せず、必要な流失防止機能を果たすようにするため、その種類・組成や厚さなどを選択すればよい。
また、図5は、傾斜護岸を施工する場合の一実施形態(護岸縦断面)を示しており、傾斜護岸3のアンコ材として材料Aを入れた容器2(特に袋体が好ましい)を設置し、その上に他の護岸材4を設置したものである。
使用する生分解性プラスチックの種類に特別な制限はないが、例えば、トウモロコシなどの植物性のデンプンを主原料としたポリ乳酸、微生物が作るPHB、バクテリアセルロースなどを用いることができる。また、これらを用いる場合、例えば、分解速度が速いバクテリアセルロースと分解速度が遅いポリ乳酸を混合し、それらの混合率を調整することにより容器2の分解速度を調整することができる。
生分解性プラスチックは分解してCO2と水になるため、自然環境に悪影響を与える恐れは全くない。
本発明法は、例えば、潜堤や護岸などの構造体の施工、水底での各種基礎・基盤の施工などに好適であり、なかでも潜堤の施工・構築に特に好適であるが、これらに限らず、鉄鋼スラグを水中設置するためのあらゆる施工工事に適用できる。また、適用される水域も、港湾や内海などの沿岸海域だけでなく、河川、河口、湖沼など任意である。
高炉水砕スラグ14kgと粒径40mm以下の脱燐スラグ(製鋼スラグ)6kgの混合物を麻袋に入れ、護岸の緊急補修工事において、前記スラグ入りの麻袋を、図6(A)に示すような形態で海面下5〜2mに1000体投入した。投入して1ヵ月後に調査した結果、波に流されることなく、内部のスラグが固結したことにより麻袋は変形した状態で保形していた。さらに、投入3ヶ月後、一部の麻袋から固結したスラグの試料を採取してその粘着力を測定したところ、粘着力は28kN/m2であった。
高炉水砕スラグ850kgと粒径20mm以下の脱燐スラグ(製鋼スラグ)150kgの混合物を生分解性プラスチック製のトン袋に入れ、潜堤工事において、前記スラグ入りのトン袋を、潜堤材の一部として図6(B)に示すような形態で海面下10〜3mに24体投入した。投入して3ヶ月後に調査した結果、波に流されることなく、内部のスラグが固結したことによりトン袋は変形した状態で保形していた。また、一部のトン袋から固結したスラグの試料を採取してその粘着力を測定したところ、粘着力は37kN/m2であった。さらに、投入から1年後に調べたところ、生分解性プラスチック製トン袋は半分以上の部分が分解消失し、固結したスラグ表層には、貝などの付着が認められた。
2 容器
3 傾斜護岸
4 護岸材
Claims (7)
- 鉄鋼製造プロセスで発生したスラグを50mass%以上含む材料(但し、鉄鋼製造プロセスで発生したスラグのみからなる材料の場合を含む)を、透水性がある容器に入れ、該容器を水中に置いて容器内の材料を前記スラグの水硬作用により固結させる施工方法であって、
容器が水中で経時的に分解又は/及び腐蝕する容器であり、容器内の材料が固結した後に、該容器を分解又は/及び腐蝕により消失させることを特徴とする、鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。 - 容器が袋体であることを特徴とする、請求項1に記載の鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
- 容器内の材料を、粘着力(但し、JIS A 1216の「土の一軸圧縮試験方法」に基づき求められた試料の一軸圧縮強さquの1/2の値)が15kN/m2以上となるように固結させた後、容器を分解又は/及び腐蝕により消失させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
- 容器内の材料を、粘着力(但し、JIS A 1216の「土の一軸圧縮試験方法」に基づき求められた試料の一軸圧縮強さquの1/2の値)が20kN/m2以上となるように固結させた後、容器を分解又は/及び腐蝕により消失させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
- 容器内の材料は、高炉水砕スラグの割合が30mass%以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
- 容器内の材料は、高炉水砕スラグと製鋼スラグを高炉水砕スラグ:製鋼スラグ=6:1〜1:1の質量比で混合したものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
- 材料を入れた容器により、少なくとも潜堤外層部の一部を構築することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の鉄鋼スラグを水中設置するための施工方法。
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