以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[第1の例]
本発明の第1の実施の形態を、図1〜図11に基づいて説明する。
<構成>
本例は、一軸上に整列した3個のホールセンサを使用する位置検出装置の例である。
図1(a)、(b)は、本発明に係る位置検出装置の概略構成を示す。
位置検出装置30は、N極S極をそれぞれ1極ずつ着磁した直方体磁石(磁束発生手段)31と、3個を1組としたホールセンサ(磁気センサ/磁束検出手段)32a,32b,32cと、ホールセンサ32a(第1のホールセンサ)と、ホールセンサ32b(第2のホールセンサ)と、ホールセンサ32c(第3のホールセンサ)と、これら3つのホールセンサを実装した基板33とを備えている。なお、本発明に係る位置検出装置30は、様々な形状の磁石と、種々なホールセンサとを用いて構成できる。
ホールセンサ32a,32b,32cは、基板33上に等間隔に配置され、感磁方向が基板33に対して垂直である。直方体磁石31は、ホールセンサ32a,32b,32cを実装した基板33に対して垂直に着磁された構成となっており、基板33と対向する1平面100内で、X方向に沿って移動可能に配置されている。
直方体磁石31は、ホールセンサ32a,32b,32cの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向でかつ基板33に平行な平面内を移動可能に支持され、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁されている。
ここで、ホールセンサ32a,32b,32cの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向でかつ基板33に平行な平面内を移動可能という意味は、ホールセンサ32a,32b,32cの感磁部の中心間を結ぶ直線と直方体磁石31の移動方向を示す直線とを、基板33に平行な任意の同一平面上に投影した場合にそれぞれの延長線が平行であることを意味するものである。また、ホールセンサ32aの感磁部の中点とホールセンサ32cの感磁部の中点とを結んだ直線の中点と、直方体磁石31の移動範囲の中点とが同じである。
直方体磁石31は、フェライトやネオジ鉄ボロン、サマリウムコバルト磁石などが適用可能であり、薄型の磁石の場合は、プラスチック磁石やゴム磁石を用いることも可能である。磁石の着磁方向は、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁された方向にするとよい。
1組のホールセンサとして構成された、第1のホールセンサ32aの感磁部中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部中心を結ぶ直線もx方向である。また、ホールセンサ32a乃至32cは、直方体磁石31の面と対向した位置に配置されている。
図1において、A1は直方体磁石31の長辺方向Xの長さ、A2は直方体磁石31の短辺方向Yの長さ、A3は直方体磁石31の厚み(着磁)方向Zの長さをそれぞれ示す。また、B1は、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32cの基板33に対向する平面100から、ホールセンサ32a乃至32cの感磁部の中心までの距離を示す。B2は、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心とを結ぶ距離、および、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心とを結ぶ距離を示す。
ホールセンサ32a,32b,32cは、GaAs、InAs、InSbなどの III−V族化合物半導体を含むものである。また、Si、GeなどのIV族半導体を含むものでもよい。
図2は、図1に示した位置検出装置30内の位置検出回路の構成を示す。
位置検出装置30は、3個のホールセンサ32a,32b,32cを有する駆動回路19と、このホールセンサ32a,32b,32cからのそれぞれの出力に基づいて位置検出を行う信号処理回路20とを備えている。
駆動回路19は、1組のホールセンサ32a,32b,32cと、これらのホールセンサ32a,32b,32cに電圧を供給する電源部Vddとから構成される。
第1のホールセンサ32aは、正極入力端子32a(A)と、正極出力端子32a(B)と、負極入力端子32a(C)と、負極出力端子32a(D)とから構成される。
第2のホールセンサ32bは、正極入力端子32b(E)と、正極出力端子32b(F)と、負極入力端子32b(G)と、負極出力端子32b(H)とから構成される。
第3のホールセンサ32cは、正極入力端子32c(I)と、正極出力端子32c(J)と、負極入力端子32c(K)と、負極出力端子32c(L)とから構成される。
正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)とは、差動増幅器21aの入力信号となり、差動増幅器21aからはV1が出力される。
正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)とは、差動増幅器21bの入力信号となり、差動増幅器21bからはV3が出力される。
正極出力端子32c(J)と負極出力端子32c(L)とは、差動増幅器21cの入力信号となり、差動増幅器21cからはV2が出力される。
信号処理部20は、差動増幅器21a,21b,21cと、計算処理部22とにより構成される。この信号処理部20では、ホールセンサ32a,32b,32cからのそれぞれの出力に基づいて位置検出を行う。以下の比較例でも例示するが、数mmの位置検出を行う場合、ホールセンサは所定の間隔を設けた2素子を使用するのが一般的であり、その場合一般に、直方体磁石31とホールセンサ32a、32cとの位置関係など、位置検出装置30の構成を最適化しても、直方体磁石31の移動に伴って直線的に磁束密度が変化する範囲というのは、概ね移動する直方体磁石31の長辺の長さの7〜8割程度である。本発明においては、ホールセンサ32a、32cの中心にホールセンサ32bを設ける。
<回路動作>
本位置検出装置30の動作について説明する。
図2に示す信号処理部20は、複数の磁気センサを搭載した基板に対して、磁石を移動方向へ所定の距離だけ移動した場合において、磁石の移動方向への移動距離に対する、基板上の最外位置に配置された複数個の磁気センサからの出力値と、最外位置以外に配置された他の残りの磁気センサからの出力値との所定の相関関係を用いて位置検出を行うことができる。
例えば、磁石の移動方向への移動距離に対する、基板上の最外位置に配置された複数個の磁気センサからの出力値と、最外位置以外に配置された他の残りの磁気センサからの出力値とから得られた演算値の所定の相関関係を用いて位置検出を行うようにしてもよい。
さらに、磁石の移動方向への移動距離に対する、基板上の最外位置に配置された複数個の磁気センサからのそれぞれの出力を所定倍した出力値と、最外位置以外に配置された他の残りの磁気センサからのそれぞれの出力を所定倍した出力値を含む総和値との比の所定の相関関係を用いて位置検出を行うようにしてもよい。
以下、位置検出回路の具体的な動作について詳細に説明する。
信号処理部20は、基板33上の最外位置に配置された2個の磁気センサ32a,32cにおいて、磁気センサ32aおよび32cからのそれぞれの出力をV1,V2とし、最外位置以外の位置に配置された他の残りの磁気センサ32bからの出力をV3とした場合、出力V1,V2,V3をそれぞれ実数倍した値を用いて、
Vo=(aV1−bV2+c)/(dV3+e) …(1)
の関係式から求められる値Voを用いて位置検出を行う。
ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数であり、c及びeは実数である。また、このcはゼロである。つまり、cの値には、磁石サイズや磁石とホールセンサとの距離等の構成により最適値が存在するが、ゼロとすることで、精度が良くなる場合が多い。また、このeはaV1+bV2である。つまり、eの値には、磁石サイズや磁石とホールセンサとの距離等の構成により最適値が存在するが、aV1+bV2とすることで、精度が良くなる場合が多い。
駆動回路19において、第1のホールセンサ32aの正極入力端子32a(A)と、第2のホールセンサ32bの正極入力端子32b(E)と、第3のホールセンサ32cの正極入力端子32c(I)とが接続されることによって入力端子とされ、第1のホールセンサ32aの負極入力端子32a(C)と、第2のホールセンサ32bの負極入力端子32b(G)と、第3のホールセンサ32cの負極入力端子32c(K)とが接続されることによって入力端子とされる。
第1のホールセンサ32aの正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)は、信号処理回路20の第1の差動増幅器21aに接続され、第2のホールセンサ32bの正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)は、信号処理回路20の第2の差動増幅器21bに接続され、第3のホールセンサ32cの正極出力端子32c(J)と負極出力端子32c(L)は、信号処理回路20の第3の差動増幅器21cに接続される。
第1の差動増幅器21aの出力端子と第2の差動増幅器21bの出力端子と第3の差動増幅器21cの出力端子は、ADコンバータに入力され、適宜出力を計算する計算処理部22に伝達される。
このような駆動回路19と信号処理部20とによって、第1のホールセンサ32aのホール出力電圧を実数倍した出力V1と、第2のホールセンサ32bのホール出力電圧を実数倍した出力V3と、第3のホールセンサ32cのホール出力電圧を実数倍した出力V2とを用いて、(aV1−bV2+c)/(dV3+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0の実数、c及びeは実数)である出力値Voが、直方体磁石31の位置に対応したものになる。
なお、本例では、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cとの入力端子を並列に接続しているが、これは特に並列接続に限定されるものではない。また、差動増幅器21a,21b,21cについても、より高精度な計装アンプを用いてもよいことは言うまでもない。
また、差動増幅器21a,21b,21cの信号をAD変換して、(aV1−bV2+c)/(dV3+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0の実数、c及びeは実数)を計算処理部22で計算して求めたが、別途差動増幅器を設けて、アナログ信号のままで、(aV1−bV2+c)/(dV3+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0の実数、cおよびeは実数)を求めることもできる。
本発明では、位置検出を行うのに除算を行う必要があるが、除算とは分子と分母の比を取ることであるから、磁石の全移動範囲において、分母を一定に制御可能であれば、分子の値が、分母を制御せずに行った除算後の値と同じ線形性を示す。
例えば、上記(1)式において、分母(=dV3+e)が一定となるように、ホールセンサの入力値を制御すれば、分子(=aV1−bV2+c)の値をそのまま位置出力とすることが可能となる。また、分母(=dV3+e)が一定となるように、ホールセンサの出力値にゲインを掛けることによって、分子(=aV1−bV2+c)の値をそのまま位置出力とすることが可能となる。
<比較例>
位置検出装置30の構成を、従来の構成と比較して説明する。
図3は、図1に示した位置検出装置30に対応する構成例を示す。なお、図3におけるホールセンサ32a,32b,32cは、1つのパッケージに一体に封入されたセンサを示す。
図4は、従来の位置検出装置40の構成例を示す。位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出を行うには、図4に示すように、直方体磁石41の長辺方向Xの長さC1=15.4mm、直方体磁石41の短辺方向Yの長さC2=15.3mm、直方体磁石41の厚み方向Zの長さC3=4.3mm、直方体磁石41のホールセンサに対向する面からホールセンサの感磁部までの距離D1=6.3mm、ホールセンサ42aの感磁部の中心とホールセンサ42bの感磁部の中心との距離D2=11.6mmとなる。
図5は、比較用として示した従来の磁石とホールセンサを用いた図4の位置検出装置40の概略構成を拡大して示す。
この図5を用いて、広い温度範囲において、7mm(±3.5mm)の位置検出範囲を、位置検出する場合について説明する。
41は、ホールセンサに対向する平面200に垂直に単極着磁された直方体磁石である。42a,42bは、ホールセンサである。43は、ホールセンサ42a,42bを実装した基板である。
C1は直方体磁石41の長辺方向Xの長さ、C2は直方体磁石41の短辺方向Yの長さ、C3は直方体磁石41の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)を示す。D1は、直方体磁石41のホールセンサ42a,42bに対向する平面200からホールセンサ42a,42bの感磁部の中心までの距離、D2はホールセンサ42aの感磁部の中心とホールセンサ42bの感磁部の中心との距離を示す。
この比較例では、直方体磁石41は、図5中に示すX軸方向にのみ移動する。また、直方体磁石41の移動方向Xに対して水平な平面状にホールセンサ42a、42bを配置する。
以上より、本発明に係る図3に示す位置検出装置30の構成は、比較用の図4および図5に示す従来の位置検出装置40の構成に比べて、位置検出装置全体の大きさおよび厚さを著しく小さくすることができるという効果を奏する。
<位置検出例>
次に、本発明に係る位置検出装置30の具体的な位置検出例について説明する。
広い温度範囲において、7mm(±3.5mm)の位置検出範囲を、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出する場合について示す。図1における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
図3に示すように、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1=3.5mm、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2=3.1mm、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3=1.9mmとする。
また、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32cに対向する平面100からホールセンサ32a,32b,32cの感磁部の中心までの距離B1=3.4mm、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と第2のホールセンサ32bの感磁部の中心との距離及び第2のホールセンサ32bの感磁部の中心と第3のホールセンサ32cの感磁部の中心との距離B2=1.85mmとする。
上記設計の際、ホールセンサ32a,32b,32cを1つのパッケージ内に搭載する方が、ホールセンサ32a,32b,32cの配置誤差が小さくなり、位置検出装置の高精度化に貢献できる。また、例えばSi基板上にホールセンサ32a,32b,32cを設けることも可能である。
従って、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cとを、1つのパッケージ内に封入することが望ましい。
図6〜図9は、直方体磁石の移動距離に対するホールセンサの出力電圧の関係を示す。
図6は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aの出力電圧を実数倍した値V1の変化L1を示す。
図7は、磁石の移動距離に対する第2のホールセンサ32bの出力電圧を実数倍した値V3の変化L2を示す。
図8は、磁石の移動距離に対する第3のホールセンサ32cの出力電圧を実数倍した値V2の変化L3である。
図9は、磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)の変化L4および(dV3+e)の変化L5を示す。ここで、演算中の係数a〜eの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=3.1、e=V1+V2として計算する。
図10は、演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す。
磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)/(dV3+e)の変化L5および理想直線L6を示す。ここで、演算中の係数a〜eの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=3.1、e=V1+V2として計算する。
磁気シミュレーションの前提として、3個のホールセンサ32a,32b,32cの感度を2.2mV/mT(一般的なホールセンサの感度)、直方体磁石31の残留磁束密度Brを1400mT(一般的なネオジム焼結磁石の値)として行う。
図10に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離に対して、V1乃至V3の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(dV3+e)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。ここで、演算中の係数a〜eの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=3.1、e=V1+V2として計算してある。
ここで、図10に記載した理想直線L6は、直方体磁石31の移動距離が−3.5mmにおける3個の出力電圧V1,V2,V3の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(dV3+e)と、この直方体磁石31の移動距離が+3.5mmにおける3個の出力電圧V1,V2,V3の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(dV3+e)とを結んだ直線である。ここで、演算中の係数a〜eの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=3.1、e=V1+V2として計算してある。
一般的には、この理想直線上の値を用いて位置検出を行うため、磁気シミュレーション結果L5は理想直線L6からのズレが大きい場合、位置検出誤差が大きくなる。
図11は、理想直線L6と、磁気シミュレーション結果L5とのズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す。
図11に示す結果より、位置検出誤差は最大でも2.2um程度であり、分解能は全ストローク7mmに対して0.03%と高精度な位置検出を達成していることがわかる。
当然、図10で示したシミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線L6としてもかまわない。最小2乗法で求めた直線を理想直線とすると、さらに位置検出誤差は小さくなり、分解能は高くなる。
上述のように演算中の係数a〜eの値をそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=3.1、e=V1+V2として演算を行ったが、この数値が異なっても、位置検出装置30において、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32cに対向する平面100からホールセンサ32a,32b,32cの感磁部の中心までの距離B1、ホールセンサ32aの感磁部の中心とホールセンサ32bの感磁部の中心との距離及びホールセンサ32bの感磁部の中心とホールセンサ32cの感磁部の中心との距離B2を最適化することで、比較例よりも良い結果が得られる。
例えば、位置検出範囲7mmにおいて、A1=3.5mm、A2=2.7mm、A3=2.0mm、B1=4.3mm、B2=1.15mmの構成において、演算中の係数a〜eの値がそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=3.1、e=V1+V2の場合には、位置検出誤差は105um程度であり、分解能は全ストローク7mmに対して1.5%であるが、a=1、b=1、c=V3、d=1、e=0とすることで、位置検出誤差は3.5um程度となり、分解能は全ストローク7mmに対して0.05%まで改善され、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度での位置検出が可能となる。
以上のような位置検出処理を行うことによって、以下に示す効果を得ることができる。
ホールセンサ32bは、ホールセンサ32a、32cの中心に設けることにより、位置検出精度が向上する。すなわち、ホールセンサ32bは、ホールセンサ32a、32cからの距離が等間隔であれば、位置検出精度は良好なまま保つことが可能となる。すなわち、以下でも例示するが、位置検出方向に対し直角にズレて配置させた場合においても、位置検出精度は良好である。ホールセンサ32bのズレ量が概ねホールセンサ32a、32cの距離と同程度以内であれば、位置検出精度が良好であることが多い。
また、ホールセンサ32a,32b,32cは、3個を1つのパッケージに一体に封入している。3個のホールセンサの特性(感度やオフセット)が、あまりにかけはなれていると位置検出精度が悪化する。3個のホールセンサの特性を揃えるために、例えば、製造段階でウェハのとなりあった場所にある3個のホールセンサを1つのパッケージに納めることで、上述した問題が解決でき、高精度な位置検出装置を構成することができる。
また、ホールセンサ32a,32b,32cは、磁気増幅を行うための磁性体チップを有していない。ホールセンサ32a,32b,32cが内部に磁性体チップを有しており、センサ部分の検出磁場を増幅する構成が知られているが、本発明の構成では磁性体チップの磁気飽和が問題になり、広い範囲で正確に位置検出を行うのが困難である。磁気増幅していないホールセンサを用いることで、広い範囲を正確に位置検出できる。
また、位置検出装置30の構成により、磁石の移動に伴い直線的に磁束密度が変化する範囲が、移動磁石の長辺の長さを10としたとき、20程度まで広がる。つまり、磁石のサイズを小さくしても、5mmをこえる範囲で高精度に位置検出を行うことができる。ホールセンサが、増幅器を有したホールICの場合、出力信号線の数をホールセンサに比べて低減できるので、実装基板の省スペース化と、外部ノイズの影響を低減できる。
以上説明したように、感磁方向が、配置された基板に対して垂直な少なくとも3個以上のホールセンサを1組とし、このホールセンサの最外の2個の中心を結ぶ直線および基板に平行に可動可能に支持し、基板に対して垂直にN極とS極が着磁された磁石を配置し、最外の2個のホールセンサの出力を実数倍した出力をV1,V2とし、それ以外のホールセンサの各々の出力を実数倍した総和をV3とした場合、(aV1−bV2+c)/(dV3+e)の関係式を用いて位置検出を行う(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0の実数、c及びeは実数)信号処理回路を設けたので、ホールセンサを磁気センサとして用いて構成部品を汎用品や入手が容易な部品などにより構成した場合においても、簡易な構成で小型化を実現することができ、また、広範囲な距離を高精度に、かつ連続的に検出することが可能な、位置検出装置とその位置検出装置を用いた電子機器を作製することが可能になる。
<応用例>
応用例として、本例のような位置検出装置30を備えた電子機器として構成することも可能である。例として、位置検出装置30は、デジタルカメラ、カムコーダ、カメラ付き携帯電話などに代表される、カメラ部を有した電子機器に好適である。さらに、オートフォーカスや光学ズーム、光学手ブレ補正など、内部で高精度にレンズやCCDなどの位置検出を行う際にも好適に使用可能である。
電子機器の具体例としては、位置検出装置30と、位置検出装置30からの出力信号が入力される、オートフォーカス(AF)機構およびズーム(Zoom)機構とを備えて構成してもよい。AF機構及びZoom機構は、デジタルカメラ、又は携帯電話のオートフォーカスおよびズームを行うことができる。
[第2の例]
本発明の第2の実施の形態を、図12に基づいて説明する。なお、前述した第1の例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
本例は、第1の例の変形例であり、位置検出装置30において、基板上での各ホールセンサの配設位置を変更した場合の例である。
図12は、第2のホールセンサ32bが、第1のホールセンサ32aと第3のホールセンサ32cとのそれぞれの感磁部の中心を結んだ直線上に無い場合の構成を示す。
第2のホールセンサ32bが、第1のホールセンサ32aの感磁部と第3のホールセンサ32cの感磁部との中心を結んだ直線上に無い場合においても、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bとの距離と、第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cとの距離とが等しければ、図1に示したような位置検出装置30において、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32cに対向する平面100からホールセンサ32a,32b,32cの感磁部の中心までの距離B1、ホールセンサ32aの感磁部の中心とホールセンサ32bの感磁部の中心との距離、および、ホールセンサ32bの感磁部の中心とホールセンサ32cの感磁部の中心との距離B2、および、演算中の係数a〜eの値を最適化することで、比較例よりも良い結果が得られる。
例えば、位置検出範囲7mmにおいて、A1=3.5mm、A2=3.4mm、A3=1.8mm、B1=3.2mm、B2=2.0mm、第1のホールセンサ32aの感磁面と第3のホールセンサ32cの感磁面とを結んだ中点と第2のホールセンサ32bの感磁面と結んだ距離が1.5mmの構成において、演算中の係数a及至eの値がそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=3.6、e=V1+V2の場合には、位置検出誤差は4.5um程度であり、分解能は全ストローク7mmに対して0.06%であり、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度での位置検出が可能となる。
さらに、ホールセンサ32a,32b,32cが一軸上に整列していないため、第1のホールセンサ32aと第3のホールセンサ32cとの間に演算処理計算部22を配置するのに好適となる。さらに、1つのパッケージ内にホールセンサ32a,32b,32c、および、演算処理計算部22を納める場合、ホールセンサ32a,32b,32cが一軸上に整列していた場合では、パッケージサイズが大きくなってしまうし、演算処理計算部22上にホールセンサをダイボンディングする方法が知られているが、この方法では、パッケージが厚くなってしまう。ホールセンサ32aとホールセンサ32cとの間に演算処理計算部22を設けることで、パッケージサイズを小さくできる。
図12において、第1のホールセンサ32aの感磁面と第3のホールセンサ32cの感磁面との距離が4.0mmであり、第1のホールセンサ32aの感磁面と第3のホールセンサ32cの感磁面とを結んだ直線の中点と第2のホールセンサ32bの感磁面との距離は1.5mmであるため、演算処理計算部22の大きさがおよそ3.0mm×1.0mm以下であれば、ホールセンサ32a,32b,32cと同様に1つのパッケージ内に納めるのに好適となる。34はホールセンサ32a,32b,32c、および、演算処理部22が内包された1つのパッケージである。
また、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bとの距離と、第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cとの距離とが等間隔の場合を計算したが、等間隔では無い場合でも、演算中の係数a〜eの値を変更することで、比較例よりも良い結果が得られる。
例えば、位置検出範囲7mmにおいて、A1=3.5mm、A2=3.1mm、A3=1.9mm、B1=3.4mm、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bとの距離が1.8mm、第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cとの距離が1.9mmの構成において、演算中の係数a及至eの値がそれぞれ、a=2.2、b=1.6、c=1.2V3、d=2.5、e=0.8V1+0.8V2とすることで、位置検出誤差は5.3um程度となり、分解能は全ストローク7mmに対して0.08%まで改善され、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度での位置検出が可能となる。
すなわち、実装誤差や公差等の影響があった場合においても、演算中の係数a乃至eの値を変更させることで、良好な位置検出精度が得られることがわかる。
このように、本発明の位置検出装置30を用いることにより、比較例で説明する位置検出装置と比較して、小型な位置検出装置を実現できる。
[第3の例]
本発明の第3の実施の形態を、図13〜図22に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
本例は、位置検出装置50において、一軸上に整列した4個のホールセンサを用いて位置検出を行う場合の例である。
<構成>
図13は、位置検出装置50の概略構成を示す。
位置検出装置50は、N極S極をそれぞれ1極ずつ着磁した直方体磁石31と、4個を1組としたホールセンサ32a,32b,32c,32dと、ホールセンサ32a(第1のホールセンサ)と、ホールセンサ32b(第2のホールセンサ)と、ホールセンサ32c(第3のホールセンサ)と、ホールセンサ32d(第4のホールセンサ)とを実装した基板33とを備えている。
この位置検出装置50は、様々な形状の磁石と、種々なホールセンサとを用いて構成できる。
4個のホールセンサは、ホールセンサ32aとホールセンサ32bとの距離と、ホールセンサ32cとホールセンサ32dとの距離とが同値となるように、基板33上に配置され、感磁方向が基板33に対して垂直である。直方体磁石31は、ホールセンサ32a乃至32dを実装した基板33に対して垂直に着磁された構成となっており、基板33と対向する1平面100内で、X方向に沿って移動可能に配置されている。
直方体磁石31は、ホールセンサ32a,32b,32c,32dの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向で、かつ基板33に平行な平面内を移動可能に支持され、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁されている。
ここで、ホールセンサ32a,32b,32c,32dの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向で、かつ基板33に平行な平面内を移動可能という意味は、ホールセンサ32a,32b,32c,32dの感磁部の中心間を結ぶ直線と直方体磁石31の移動方向を示す直線を、基板33に平行な任意の同一平面上に投影した場合にそれぞれの延長線が平行であることを意味するものである。また、第1のホールセンサ32aの感磁部と第4のホールセンサ33dの感磁部とを結んだ直線の中点と、直方体磁石31の移動範囲の中点とが同じである。磁石の着磁方向は、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁された方向にするとよい。
1組のホールセンサとして構成された、第1のホールセンサ32aの感磁部中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部中心と第4のホールセンサ32dの感磁部中心とを結ぶ直線もX方向である。また、ホールセンサ32a,32b,32c,32dは、直方体磁石31の面と対向した位置に配置されている。
A1は、直方体磁石31の長辺方向Xの長さ、A2は直方体磁石31の短辺方向Yの長さ、A3は直方体磁石31の厚み(着磁)方向Zの長さを示す。また、B1は、直方体磁石31のホールセンサ32a乃至32dの基板33に対向する平面100から、ホールセンサ32a乃至32dの感磁部の中心までの距離を示す。B3は、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心とを結ぶ距離、および、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心と、第4のホールセンサ32dの感磁部の中心とを結ぶ距離を示す。B4は、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心とを結ぶ距離を示す。
ホールセンサ32a,32b,32c,32dは、GaAs、InAs、InSbなどのIII−V族化合物半導体を含むものである。また、Si、GeなどのIV族半導体を含むものでもよい。
図14は、図13に示したホールセンサを4個用いた位置検出装置50の位置検出回路の構成例を示す。
位置検出回路は、駆動回路19と、信号処理部20とを備えている。信号処理部20は、差動増幅器21a,21b,21c,21dと、計算処理部22とからなる。
駆動回路19は、1組のホールセンサ32a,32b,32c,32dと、これらのホールセンサ32a,32b,32c,32dに電圧を供給する電源部Vddとから構成されている。第1のホールセンサ32aは、正極入力端子32a(A)と正極出力端子32a(B)と負極入力端子32a(C)と負極出力端子32a(D)とから構成される。
第2のホールセンサ32bは、正極入力端子32b(E)と正極出力端子32b(F)と負極入力端子32b(G)と負極出力端子32b(H)とから構成される。
第3のホールセンサ32cは、正極入力端子32c(I)と正極出力端子32c(J)と負極入力端子32c(K)と負極出力端子32c(L)とから構成される。
第4のホールセンサ32dは、正極入力端子32d(M)と正極出力端子32d(N)と負極入力端子32d(O)と負極出力端子32d(P)とから構成される。
正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)は、差動増幅器21aの入力信号となり、差動増幅器21aからはV1が出力される。正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)は、差動増幅器21bの入力信号となり、差動増幅器21bからはV4が出力される。正極出力端子32c(J)と負極出力端子32c(L)は、差動増幅器21cの入力信号となり、差動増幅器21cからはV5が出力される。正極出力端子32d(N)と負極出力端子32d(P)とは、差動増幅器21dの入力信号となり、差動増幅器21dからはV2が出力される。
信号処理部20は、ホールセンサ32a,32b,32c,32dからの出力に基づいて位置検出を行うものである。
本発明における信号処理部20は、差動増幅器21aの出力をV1、差動増幅器21bの出力をV4、差動増幅器21cの出力をV5、差動増幅器21dの出力をV2とした場合、
Vo=(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e) …(2)
の関係式から求められる値Voを用いて位置検出を行う。
ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数であり、cおよびeは実数であり、fおよびgは両者若しくはどちらか一方はゼロでは無い実数である。
cはゼロである。cの値には、磁石サイズや磁石とホールセンサとの距離等の構成により最適値が存在するが、ゼロとすることで、精度が良くなる場合が多い。
eはaV1+bV2である。eの値には、磁石サイズや磁石とホールセンサとの距離等の構成により最適値が存在するが、aV1+bV2とすることで、精度が良くなる場合が多い。
ホールセンサ32a,32b,32c,32dは、4個を1つのパッケージに一体に封入している。4個のホールセンサの特性(感度やオフセット)が、あまりにかけはなれていると位置検出精度が悪化する。4個のホールセンサの特性を揃えるために、例えば、製造段階でウェハのとなりあった場所にある4個のホールセンサを1つのパッケージに納めることで、上述した問題が解決でき、高精度な位置検出装置を構成することができる。
ホールセンサ32a,32b,32c,32dは、磁気増幅を行うための磁性体チップを有していない。ホールセンサ32a,32b,32c,32dが内部に磁性体チップを有しており、センサ部分の検出磁場を増幅する構成が知られているが、本発明の構成では磁性体チップの磁気飽和が問題になり、広い範囲で正確に位置検出を行うのが困難である。磁気増幅していないホールセンサを用いることで、広い範囲を正確に位置検出できる。
このような構成とすることにより、磁石の移動に伴い直線的に磁束密度が変化する範囲が、移動磁石の長辺の長さを10としたとき、20程度まで広がる。つまり、磁石のサイズを小さくしても、10mmを超える範囲で高精度に位置検出を行うことができる。
<回路動作>
図14の位置検出回路の動作について説明する。
位置検出装置50は、4個のホールセンサ32a,32b,32c,32dの駆動回路19と、このホールセンサ32a,32b,32c,32dからの出力に基づいて位置検出を行う信号処理回路20とを備えている。
第1のホールセンサ32aの正極入力端子32a(A)と、第2のホールセンサ32bの正極入力端子32b(E)と、第3のホールセンサ32cの正極入力端子32c(I)と、第4のホールセンサ32dの正極入力端子32d(M)とを接続し、第1のホールセンサ32aの負極入力端子32a(C)と、第2のホールセンサ32bの負極入力端子32b(G)と、第3のホールセンサ32cの負極入力端子32c(K)と、第4のホールセンサ32dの負極入力端子32d(O)とを接続して駆動回路19の入力端子とする。
第1のホールセンサ32aの正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)は、信号処理回路20の第1の差動増幅器21aに接続され、第2のホールセンサ32bの正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)は、信号処理回路20の第2の差動増幅器21bに接続され、第3のホールセンサ32cの正極出力端子32c(J)と負極出力端子32c(L)は、信号処理回路20の第3の差動増幅器21cに接続され、第4のホールセンサ32dの正極出力端子32d(N)と負極出力端子32d(P)は、信号処理回路20の第4の差動増幅器21dに接続される。
第1の差動増幅器21aの出力端子と第2の差動増幅器21bの出力端子と第3の差動増幅器21cの出力端子と第4の差動増幅器21dの出力端子とは、ADコンバータに入力され、適宜出力を計算する計算処理部22に伝達される。
このような駆動回路19と信号処理回路によって、第1のホールセンサ32aのホール出力電圧を実数倍した出力V1と第2のホールセンサ32bのホール出力電圧を実数倍した出力V4と第3のホールセンサ32cのホール出力電圧を実数倍した出力V5と第4のホールセンサ32dのホール出力電圧を実数倍した出力V2とを用いた(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数、cおよびeは実数、fおよびgは両者若しくはどちらか一方はゼロでは無い実数)である出力値Voが、直方体磁石31の位置に対応したものになる。
本例の構成では、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cと第4のホールセンサ32dの入力端子を並列に接続しているが、これは特に並列接続に限定されるものではない。
また、差動増幅器21a,21b,21c,21dについても、より高精度な計装アンプを用いてもよいことは言うまでもない。
また、差動増幅器21a,21b,21c,21dの信号をAD変換して、(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数、cおよびeは実数、fおよびgは両者若しくはどちらか一方はゼロでは無い実数)を計算処理部22で計算して求めたが、別途差動増幅器を設けて、アナログ信号のままで、(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数、cおよびeは実数、fおよびgは両者若しくはどちらか一方はゼロでは無い実数)を求めることもできる。
本例では、位置検出を行うのに除算を行うが、除算とは分子と分母の比を取ることであるから、磁石の全移動範囲において、分母を一定に制御可能であれば、分子の値が、分母を制御せずに行った除算後の値と同じ線形性を示す。
例えば、分母(=d(fV4+gV5)+e)が一定となるように、ホールセンサの入力値を制御すれば、分子(=aV1−bV2+c)の値をそのまま位置出力とすることが可能となる。また、分母(=d(fV4+gV5)+e)が一定となるように、ホールセンサの出力値にゲインを掛けることで、分子(=aV1−bV2+c)の値をそのまま位置出力とすることが可能となる。
<位置検出例>
次に、位置検出装置50の具体的な位置検出の例について説明する。
図15は、位置検出装置50の具体的な構成例を示す。ホールセンサ32a,32b,32c,32dは、1つのパッケージに一体に封入されたセンサとして構成されている。
本例では、広い温度範囲において、15mm(±7.5mm)の位置検出範囲を、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出する場合について示す。図13に示した各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
図15に示すように、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1=7.0mm、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2=4.8mm、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3=5.3mmとする。
また、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32c,32dに対向する平面100からホールセンサ32a,32b,32c,32dの感磁部の中心までの距離B1=5.0mm、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と第2のホールセンサ32bの感磁部の中心との距離及び第3のホールセンサ32cの感磁部の中心と第4のホールセンサ32dの感磁部の中心との距離B3=2.4mm、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心とを結ぶ距離B4=0.9mmとする。
上記設計の際、ホールセンサ32a乃至32dを1つのパッケージ内に搭載する方が、ホールセンサ32a乃至32dの配置誤差が小さくなり、位置検出装置の高精度化に貢献できる。また、例えばSi基板上にホールセンサ32a,32b,32c,32dを設ける事も可能である。
従って、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cと第4のホールセンサ32dとを、1つのパッケージ内に封入することが望ましい。
図16〜図20は、直方体磁石の移動距離に対するホールセンサの出力電圧、および、演算後の値を示す。
図16は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aの出力電圧を実数倍した値V1の変化L10を示す。
図17は、磁石の移動距離に対する第2のホールセンサ32bの出力電圧を実数倍した値V4の変化L11を示す。
図18は、磁石の移動距離に対する第3のホールセンサ32cの出力電圧を実数倍した値V5の変化L12である。
図19は、磁石の移動距離に対する第4のホールセンサ32dの出力電圧を実数倍した値V2の変化L13である。
図20は、磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)の変化L14および(d(fV4+gV5)+e)の変化L15を示す。ここで、演算中の係数a〜gの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1.5、g=1.5で計算してある。
図21は、演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す。
磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e)の変化L16および理想直線L17を示す。
ここで、演算中の係数a〜gの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1.5、g=1.5で計算してある。
磁気シミュレーションの前提として、4個のホールセンサ32a,32b,32c,32dの感度を2.2mV/mT(一般的なホールセンサの感度)、直方体磁石31の残留磁束密度Brを1400mT(一般的なネオジム焼結磁石の値)として行う。
図21に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離に対して、V1、V2、V4、V5の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。ここで、演算中の係数a〜gの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1.5、g=1.5で計算してある。
ここで、図21に記載した理想直線L17は、直方体磁石31の移動距離が−7.5mmにおける4個の出力電圧V1、V2、V4、V5の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e)と、この直方体磁石31の移動距離が+7.5mmにおける4個の出力電圧V1、V2、V4、V5の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5)+e)とを結んだ直線である。ここで、演算中の係数a〜gの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1.5、g=1.5で計算してある。
一般的には、この理想直線上の値を用いて位置検出を行うため、磁気シミュレーション結果L16は理想直線L17からのズレが大きい場合、位置検出誤差が大きくなる。
図22は、理想直線L17と磁気シミュレーション結果L16とのズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す。
図22に示す結果より、位置検出誤差は最大でも9.5um程度であり、分解能は全ストローク15mmに対して0.06%と高精度な位置検出を達成していることがわかる。
本例では、前述した各例と同様に、実装誤差や公差等の影響があった場合においても、演算中の係数a乃至gの値を変更させることで、良好な位置検出精度が得ることが可能となる。
[第4の例]
本発明の第4の実施の形態を、図23〜図33に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
本例は、位置検出装置50において、一軸上に整列した5個のホールセンサを用いて位置検出を行う場合の例である。
<構成>
図23は、位置検出装置60の概略構成を示す。
位置検出装置60は、N極S極をそれぞれ1極ずつ着磁した直方体磁石31と、5個を1組としたホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eと、ホールセンサ32a(第1のホールセンサ)と、ホールセンサ32b(第2のホールセンサ)と、ホールセンサ32c(第3のホールセンサ)と、ホールセンサ32d(第4のホールセンサ)と、ホールセンサ32e(第5のホールセンサ)とを実装した基板33とからなる。
本発明に係る位置検出装置は、様々な形状の磁石と、種々なホールセンサとを用いて構成できる。
5個のホールセンサ32a〜32eは、ホールセンサ32aとホールセンサ32bとの距離と、ホールセンサ32dとホールセンサ32eとの距離とが同値となるように、さらに、ホールセンサ32bとホールセンサ32cとの距離と、ホールセンサ32cとホールセンサ32dとの距離とが同値となるように、基板33上に配置され、感磁方向が基板33に対して垂直である。
直方体磁石31は、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eを実装した基板33に対して垂直に着磁された構成となっており、基板33と対向する1平面100内で、x方向に沿って移動可能に配置されている。
直方体磁石31は、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向でかつ基板33に平行な平面内を移動可能に支持され、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁されている。
ここで、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向で、かつ基板33に平行な平面内を移動可能という意味は、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの感磁部の中心間を結ぶ直線と直方体磁石31の移動方向を示す直線を、基板33に平行な任意の同一平面上に投影した場合にそれぞれの延長線が平行であることを意味するものである。
また、第1のホールセンサ32aの感磁部と第5のホールセンサ32eの感磁部とを結んだ直線の中点と、直方体磁石31の移動範囲の中点とが同じである。磁石の着磁方向は、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁された方向にするとよい。
1組のホールセンサとして構成された、第1のホールセンサ32aの感磁部中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部中心と、第4のホールセンサ32dの感磁部中心と、第5のホールセンサ32eの感磁部中心とを結ぶ直線もX方向である。また、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eは、直方体磁石31の面と対向した位置に配置されている。
A1は直方体磁石31の長辺方向Xの長さ、A2は直方体磁石31の短辺方向Yの長さ、A3は直方体磁石31の厚み(着磁)方向Zの長さをそれぞれ示す。
B1は、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの基板33に対向する平面100から、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの感磁部の中心までの距離を示す。
B5は、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心とを結ぶ距離、および、第4のホールセンサ32dの感磁部の中心と、第5のホールセンサ32eの感磁部の中心とを結ぶ距離を示す。
B6は、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心とを結ぶ距離、および、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心と、第4のホールセンサ32dの感磁部の中心とを結ぶ距離を示す。
ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eは、GaAs、InAs、InSbなどのIII−V族化合物半導体を含むものである。また、Si、GeなどのIV族半導体を含むものでもよい。
図24は、図23に示したホールセンサを5個用いた位置検出装置60の位置検出回路の構成例を示す。
位置検出回路は、駆動回路19と、信号処理部20とを備えている。信号処理部20は、差動増幅器21a,21b,21c,21d,21eと、計算処理部22とからなる。
駆動回路19は、1組のホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eと、これらのホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eに電圧を供給する電源部Vddとから構成される。
第1のホールセンサ32aは、正極入力端子32a(A)と、正極出力端子32a(B)と、負極入力端子32a(C)と、負極出力端子32a(D)とから構成される。
第2のホールセンサ32bは、正極入力端子32b(E)と、正極出力端子32b(F)と、負極入力端子32b(G)と、負極出力端子32b(H)とから構成される。
第3のホールセンサ32cは、正極入力端子32c(I)と、正極出力端子32c(J)と、負極入力端子32c(K)と、負極出力端子32c(L)とから構成される。
第4のホールセンサ32dは、正極入力端子32d(M)と、正極出力端子32d(N)と、負極入力端子32d(O)と、負極出力端子32d(P)とから構成される。
第5のホールセンサ32eは、正極入力端子32e(Q)と、正極出力端子32e(R)と、負極入力端子32e(S)と、負極出力端子32e(T)とから構成される。
正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)とは、差動増幅器21aの入力信号となり、差動増幅器21aからはV1が出力される。
正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)は、差動増幅器21bの入力信号となり、差動増幅器21bからはV4が出力される。
正極出力端子32c(J)と負極出力端子32c(L)は、差動増幅器21cの入力信号となり、差動増幅器21cからはV5が出力される。
正極出力端子32d(N)と負極出力端子32d(P)は、差動増幅器21dの入力信号となり、差動増幅器21dからはV6が出力される。
正極出力端子32e(R)と負極出力端子32e(T)は、差動増幅器21eの入力信号となり、差動増幅器21eからはV2が出力される。
信号処理部20は、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eからの出力に基づいて位置検出を行う。
本例における信号処理部20は、差動増幅器21aの出力をV1、差動増幅器21bの出力をV4、差動増幅器21cの出力をV5、差動増幅器21dの出力をV6、差動増幅器21eの出力をV2とした場合、
Vo=(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e) …(3)
の関係式から求められる値Voを用いて位置検出を行う。
ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数であり、cおよびeは実数であり、f〜hはどれか一つ以上はゼロでは無い実数である。
cはゼロである。cの値には、磁石サイズや磁石とホールセンサとの距離等の構成により最適値が存在するが、ゼロとすることで、精度が良くなる場合が多い。
eはaV1+bV2である。eの値には、磁石サイズや磁石とホールセンサとの距離等の構成により最適値が存在するが、aV1+bV2とすることで、精度が良くなる場合が多い。
ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eは、5個を1つのパッケージに一体に封入している。5個のホールセンサの特性(感度やオフセット)が、あまりにかけはなれていると位置検出精度が悪化する。5個のホールセンサの特性を揃えるために、例えば、製造段階でウェハのとなりあった場所にある5個のホールセンサを1つのパッケージに納めることで、上述した問題が解決でき、高精度な位置検出装置を構成することができる。
ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eは、磁気増幅を行うための磁性体チップを有していない。ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eが内部に磁性体チップを有しており、センサ部分の検出磁場を増幅する構成が知られているが、本発明の構成では磁性体チップの磁気飽和が問題になり、広い範囲で正確に位置検出を行うのが困難である。磁気増幅していないホールセンサを用いることで、広い範囲を正確に位置検出できる。
このような構成とすることにより、磁石の移動に伴い直線的に磁束密度が変化する範囲が、移動磁石の長辺の長さを10としたとき、20程度まで広がる。つまり、磁石のサイズを小さくしても、15mmをこえる範囲で高精度に位置検出を行うことができる。
<回路動作>
図24の位置検出回路の動作について説明する。
位置検出装置60は、5個のホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの駆動回路19と、このホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eからの出力に基づいて位置検出を行う信号処理回路20とを備えている。
第1のホールセンサ32aの正極入力端子32a(A)と、第2のホールセンサ32bの正極入力端子32b(E)と、第3のホールセンサ32cの正極入力端子32c(I)と、第4のホールセンサ32dの正極入力端子32d(M)と、第5のホールセンサ32eの正極入力端子32e(Q)とを接続し、第1のホールセンサ32aの負極入力端子32a(C)と、第2のホールセンサ32bの負極入力端子32b(G)と、第3のホールセンサ32cの負極入力端子32c(K)と、第4のホールセンサ32dの負極入力端子32d(O)と、第5のホールセンサ32eの負極入力端子32e(S)とを接続して駆動回路19の入力端子とする。
第1のホールセンサ32aの正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)は、信号処理回路20の第1の差動増幅器21aに接続され、第2のホールセンサ32bの正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)は、信号処理回路20の第2の差動増幅器21bに接続され、第3のホールセンサ32cの正極出力端子32c(J)と負極出力端子32c(L)は、信号処理回路20の第3の差動増幅器21cに接続され、第4のホールセンサ32dの正極出力端子32d(N)と負極出力端子32d(P)は、信号処理回路20の第4の差動増幅器21dに接続され、第5のホールセンサ32eの正極出力端子32e(R)と負極出力端子32e(T)は、信号処理回路20の第5の差動増幅器21eに接続される。
第1の差動増幅器21aの出力端子と第2の差動増幅器21bの出力端子と第3の差動増幅器21cの出力端子と第4の差動増幅器21dの出力端子と第5の差動増幅器21eの出力端子とは、ADコンバータに入力され、適宜出力を計算する計算処理部22に伝達される。
このような駆動回路19と信号処理回路によって、第1のホールセンサ32aのホール出力電圧を実数倍した出力V1と第2のホールセンサ32bのホール出力電圧を実数倍した出力V4と第3のホールセンサ32cのホール出力電圧を実数倍した出力V5と第4のホールセンサ32dのホール出力電圧を実数倍した出力V6と第5のホールセンサ32eのホール出力電圧を実数倍した出力V2とを用いた(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数、c及びeは実数、f〜hはどれか一つ以上はゼロでは無い実数)である出力値Voが、直方体磁石31の位置に対応したものになる。
本例の構成では、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cと第4のホールセンサ32dと第5のホールセンサ32eの入力端子を並列に接続しているが、これは特に並列接続に限定されるものではない。
また、差動増幅器21a,21b,21c,21d,21eについても、より高精度な計装アンプを用いてもよいことは言うまでもない。
また、差動増幅器21a,21b,21c,21d,21eの信号をAD変換して、(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数、cおよびeは実数、f〜hはどれか一つ以上はゼロでは無い実数)を計算処理部22で計算して求めたが、別途差動増幅器を設けて、アナログ信号のままで、(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)の値(ただし、a≠0かつb≠0かつd≠0である実数、cおよびeは実数、f〜hはどれか一つ以上はゼロでは無い実数)を求めることもできる。
本例では、位置検出を行うのに除算を行う必要があるが、除算とは分子と分母の比を取ることであるから、磁石の全移動範囲において、分母を一定に制御可能であれば、分子の値が、分母を制御せずに行った除算後の値と同じ線形性を示す。
例えば、分母(=d(fV4+gV5+hV6)+e)が一定となるように、ホールセンサの入力値を制御すれば、分子(=aV1−bV2+c)の値をそのまま位置出力とすることが可能となる。また、分母(=d(fV4+gV5+hV6)+e)が一定となるように、ホールセンサの出力値にゲインを掛けることで、分子(=aV1−bV2+c)の値をそのまま位置出力とすることが可能となる。
<位置検出例>
次に、位置検出装置60の具体的な位置検出の例について説明する。
図25は、位置検出装置60の具体的な構成例を示す。ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eは、1つのパッケージに一体に封入されたセンサとして構成されている。
本例では、広い温度範囲において、20mm(±10mm)の位置検出範囲を、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出する場合について示す。図15における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
図25に示すように、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1=10.3mm、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2=10.0mm、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3=7.0mmとする。
また、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eに対向する平面100からホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの感磁部の中心までの距離B1=7.5mm、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と第2のホールセンサ32bの感磁部の中心との距離及び第4のホールセンサ32dの感磁部の中心と第5のホールセンサ32eの感磁部の中心との距離B5=1.75mm、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心とを結ぶ距離及び第3のホールセンサ32cの感磁部の中心と、第4のホールセンサ32dの感磁部の中心とを結ぶ距離B6=2.05mmとする。
上記設計の際、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eを1つのパッケージ内に搭載する方が、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの配置誤差が小さくなり、位置検出装置の高精度化に貢献できる。また、例えばSi基板上にホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eを設けることも可能である。
従って、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cと第4のホールセンサ32dと第5のホールセンサ32eを、1つのパッケージ内に封入することが望ましい。
図26〜図31は、直方体磁石の移動距離に対するホールセンサの出力電圧、および、演算後の値を示す。
図26は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aの出力電圧を実数倍した値V1の変化L20を示す。
図27は、磁石の移動距離に対する第2のホールセンサ32bの出力電圧を実数倍した値V4の変化L21を示す。
図28は、磁石の移動距離に対する第3のホールセンサ32cの出力電圧を実数倍した値V5の変化L22である。
図29は、磁石の移動距離に対する第4のホールセンサ32dの出力電圧を実数倍した値V6の変化L23である。
図30は、磁石の移動距離に対する第5のホールセンサ32eの出力電圧を実数倍した値V2の変化L24である。
図31は、磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)の変化L25、および、(d(fV4+gV5+hV6)+e)の変化L26を示す。ここで、演算中の係数a〜hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
図32は、演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す。磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)の変化L27、および、理想直線L28を示す。ここで、演算中の係数a〜hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
磁気シミュレーションの前提として、5個のホールセンサ32a〜32eの感度を2.2mV/mT(一般的なホールセンサの感度)、直方体磁石31の残留磁束密度Brを1400mT(一般的なネオジム焼結磁石の値)として行う。
図32に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離に対して、V1、V2、V4、V5、V6の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。ここで、演算中の係数a〜hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
ここで、図32に記載した理想直線L28は、直方体磁石31の移動距離が−10mmにおける5個の出力電圧V1、V2、V4、V5、V6の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)と、この直方体磁石31の移動距離が+10mmにおける5個の出力電圧V1、V2、V4、V5、V6の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)とを結んだ直線である。ここで、演算中の係数a〜hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
一般的には、この理想直線上の値を用いて位置検出を行うため、磁気シミュレーション結果L27は理想直線L28からのズレが大きい場合、位置検出誤差が大きくなる。
図33は、理想直線L28と磁気シミュレーション結果L27とのズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す。
図33に示す結果より、位置検出誤差は最大でも11um程度であり、分解能は全ストローク20mmに対して0.055%と高精度な位置検出を達成していることがわかる。
本例では、前述した各例と同様に、実装誤差や公差等の影響があった場合においても、演算中の係数a〜hの値を変更させることで、良好な位置検出精度が得ることが可能となる。
[第5の例]
本発明の第5の実施の形態を、図34〜図42に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
本例は、第4の例の変形例であり、位置検出装置60の位置検出範囲を変更させた場合の例である。
図34は、位置検出装置60の具体的な構成例を示す。ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eは、1つのパッケージに一体に封入されたセンサとして構成されている。
本例では、広い温度範囲において、7mm(±3.5mm)の位置検出範囲を、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出する場合について示す。図23における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
図34に示すように、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1=8.3mm、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2=6.7mm、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3=6.7mmとする。
また、直方体磁石31のホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eに対向する平面100からホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの感磁部の中心までの距離B1=6.8mm、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と第2のホールセンサ32bの感磁部の中心との距離および第4のホールセンサ32dの感磁部の中心と第5のホールセンサ32eの感磁部の中心との距離B5=1.95mm、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心と、第3のホールセンサ32cの感磁部の中心とを結ぶ距離および第3のホールセンサ32cの感磁部の中心と、第4のホールセンサ32dの感磁部の中心とを結ぶ距離B6=1.0mmとする。
上記設計の際、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eを1つのパッケージ内に搭載する方が、ホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの配置誤差が小さくなり、位置検出装置の高精度化に貢献できる。また、例えばSi基板上にホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eを設けることも可能である。
従って、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bと第3のホールセンサ32cと第4のホールセンサ32dと第5のホールセンサ32eを、1つのパッケージ内に封入することが望ましい。
図35〜図40は、直方体磁石の移動距離に対するホールセンサの出力電圧、および、演算後の値を示す。
図35は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aの出力電圧を実数倍した値V1の変化L30を示す。
図36は、磁石の移動距離に対する第2のホールセンサ32bの出力電圧を実数倍した値V4の変化L31を示す。
図37は、磁石の移動距離に対する第3のホールセンサ32cの出力電圧を実数倍した値V5の変化L32を示す。
図38は、磁石の移動距離に対する第4のホールセンサ32dの出力電圧を実数倍した値V6の変化L33を示す。
図39は、磁石の移動距離に対する第5のホールセンサ32eの出力電圧を実数倍した値V2の変化L34を示す。
図40は、磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)の変化L35、および、(d(fV4+gV5+hV6)+e)の変化L36を示す。ここで、演算中の係数a〜hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
図41は、演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す。磁石の移動距離に対する(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)の変化L37、および、理想直線L38を示す。ここで、演算中の係数a〜hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
磁気シミュレーションの前提として、5個のホールセンサ32a,32b,32c,32d,32eの感度を2.2mV/mT(一般的なホールセンサの感度)、直方体磁石31の残留磁束密度Brを1400mT(一般的なネオジム焼結磁石の値)として行う。
図41に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離に対して、V1、V2、V4、V5、V6の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。ここで、演算中の係数a及至hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
ここで、図41に記載した理想直線L38は、直方体磁石31の移動距離が−3.5mmにおける5個の出力電圧V1、V2、V4、V5、V6の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)と、この直方体磁石31の移動距離が+3.5mmにおける5個の出力電圧V1、V2、V4、V5、V6の値を用いて演算した値(aV1−bV2+c)/(d(fV4+gV5+hV6)+e)とを結んだ直線である。ここで、演算中の係数a〜hの値はそれぞれ、a=1、b=1、c=0、d=1、e=V1+V2、f=1、g=2、h=1で計算してある。
一般的には、この理想直線上の値を用いて位置検出を行うため、磁気シミュレーション結果L37は理想直線L38からのズレが大きい場合、位置検出誤差が大きくなる。
図42は、理想直線L38と磁気シミュレーション結果L37とのズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す。
図42に示す結果より、位置検出誤差は最大でも0.06um程度であり、分解能は全ストローク7mmに対して0.0009%と高精度な位置検出を達成していることがわかる。すなわち、従来の方法による位置検出誤差(=位置検出範囲の0.1%相当)に対し、本構成による位置検出誤差は、およそ1/110に抑えることが可能となる。
本例では、前述した各例と同様に、実装誤差や公差等の影響があった場合においても、演算中の係数a〜hの値を変更させることで、良好な位置検出精度が得ることが可能となる。