以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置について図1の模式的構成図を参照して説明する。
この画像形成装置は、記録媒体手段である記録紙101にトナーを飛翔付着させて直接記録方式で画像を形成する画像形成部102と、この画像形成部102に対して記録紙101を搬送する紙ベルト103と、画像形成部102の上流側で、すなわち記録紙101にトナー画像を形成する前に、記録紙101に対してトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることで前記トナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を記録紙101に塗布する液塗布手段104と、画像形成部102で記録紙101に形成されたトナー画像を溶融定着する定着ユニット105と、その他記録紙101を搬送する搬送ローラ対106、搬送ガイド107〜109などを備えている。
画像形成部102は、後に詳述するように、帯電したトナーTを担持するトナー担持体1、トナー担持体111にトナーTを補給するトナー補給ローラ112、トナー担持体111上のトナー厚みを規制するブレード113を含む供給ユニット111と、記録媒体手段である記録紙101との間に介在され、トナー通過穴41、制御電極42、共通電極43を含むトナー制御手段4と、記録紙101の背面側に配置されたバイアス電圧が印加されるバイアス電圧印加手段である背面電極31とを含み、トナー担持体1上でクラウド化されたトナーTをON/OFF制御されるトナー制御手段4のトナー通過穴41を介して、記録紙101に形成する画像に応じて、バイアス電圧が印加された記録紙101に選択的に飛翔され付着することで、記録紙101上に直接画像を形成する。
なお、紙搬送ベルト103は、2つのローラ121、122間に掛け回されて矢示方向に周回移動し、図示しない帯電ローラなどの帯電手段によって帯電されることで記録紙101を静電的に吸着保持して搬送する。
このような直接記録方式の画像形成部102において、印刷画像の十分な濃度を確保して印刷速度を上げるためには、トナー制御手段4のトナー通過穴41を通過するトナー量の確保と通過するトナーの速度及び通過した後印写面(記録媒体手段の表面)に到達するまでの速度を上げる必要がある。そのため、トナーが記録媒体手段の表面(印写面)に衝突したときの飛び散りという特有な問題が生じる。特に、トナーの記録媒体面に到達するときの飛翔速度が1m/sを超えて2〜4m/sの高速になると、衝突時の運動エネルギーが大きくなり、記録媒体手段面でバウンドして周辺への飛び散りのトナーが発生して画質が低下する。このトナーの飛び散りは、トナー粒径が大きいほど、また環境湿度が低いほど顕著である。
そこで、この画像形成装置では、トナー制御手段4でトナーの通過を制御してトナー画像を形成する前に、液塗布手段104によって、記録媒体手段である記録紙101の表面に対して、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を記録紙101の表面(印写面)に塗布する。なお、液塗布手段104の詳細については後述する。
これによって、予め記録媒体手段である記録紙101の表面(印写面)に軟化剤を含む塗布液が塗布されて印写面の湿度が上がり、トナーが衝突した時のトナーと印写面との付着力が大きくなり、トナーの飛び散りが抑制、低減され、また、同時にトナーが衝突した時の印写面の反発力が低減して、この点からもトナーの飛び散りが少なくなる。さらに、塗布液に含まれる軟化剤によりトナーに含まれる樹脂が溶解又は膨潤して、トナーの記録媒体手段面(印写面)への定着が促進され、加熱定着で必要となる加熱エネルギーが大きく低減され、或いは、十分な塗布液量を塗布することで熱エネルギーが不要になり、圧力だけによる定着も可能となる。つまり、定着ユニット105として供給電力の小さい定着ユニットとし、或いは、定着ユニット105を加圧だけを行う定着ユニットとすることができる。
このように、直接記録方式でトナー画像を形成する前に、記録媒体手段に対してトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を塗布する液塗布手段を備えていることで、直接記録方式でトナー画像を形成するときにトナーの飛び散りを低減し、更にトナーの定着が促進されて、良好な品質の画像が得られる。
次に、本発明に係る画像形成装置を構成する画像形成部102の構成の第1例について図2の模式的構成図を参照して説明する。
この画像形成部においては、トナーTを飛翔させ、クラウド化した状態で担持するローラ状のトナー担持体1と、トナーTが付着させられる記録媒体手段3(例えば前述した記録紙101や中間転写記録媒体など)と、トナー担持体1と記録媒体手段3との間に配置された複数のトナー通過穴41を有するトナー制御手段4とを備えている。
トナー担持体1は、表面側にトナーTを搬送する方向(ここでは周方向)に所定の間隔でトナーTを搬送する方向と直交する方向(ここでは軸方向)に沿って形成された所定ピッチで設けられた複数の電極11を有し、このトナー担持体1の各電極11には、電圧印加手段5から時間によって電位の異なる平均電位Vsのパルス電圧(クラウドパスル)が印加される。これにより、トナーTをクラウド化する手段を構成している。
例えば、0.5KHz〜7KHzの周波数のパルス電圧が印加され、各電極11、11の間隔はファインピッチに設けられているため、電極11、11間で強い電界が形成される。そのため、トナーTの帯電極性に対して反発する電位にある電極11表面からトナーTは勢いよく飛翔し、飛翔したトナーTは吸引する極性の電位が印加されている電極11に引き寄せられ、パルスが切り替わることでパルス周波数に応じた上下方向の飛翔を繰り返し、トナーTがクラウド化された状態になる。なお、パルスの周波数が高い領域では、上方高くに飛翔したトナーTは、飛翔している間にパルスが切り替わり、電極11表面に戻る前に再び上方に飛翔する場合もある。
トナー制御手段4は、トナーTが通過可能なトナー通過穴(開口)41が複数設けられ、このトナー制御手段4のトナー供給側面(トナー担持体1側の面)の各トナー通過穴41周辺には各トナー通過穴41に対して個別的にリング状に制御電極(個別制御電極、個別電極ともいう。)42が設けられ、更にトナー通過穴41に対し制御電極42の外側に絶縁領域を介して複数のトナー通過穴41に共通の共通電極43が設けられている。なお、「共通の」とは同じ電位が印加されること、ないし、電気的に繋がっていることを意味する。
このトナー制御手段4の制御電極42には制御パスル発生手段6から例えば図3に示すような制御パルスVcが印加される。この場合、トナー通過穴41をトナーTが通過可能な状態(ON状態)にするときには制御電極42に電圧Vc-onが印加され、トナーTが通過不可能な状態(OFF状態)にするときには制御電極42に電圧Vc-offが印加される。また、共通電極43には常時電源手段7から電圧Vgが印加される。トナー制御手段4の制御電極42は、通過穴41周囲だけでも動作が可能であるが、通過穴41の内壁面又は通過穴41の内壁面とトナー担持体1側の周囲の両方に設けたものであってもよい。
記録媒体手段3側には、記録媒体手段3の背面に、トナー制御手段4を通過したトナーTを記録媒体手段3に付着させるためのバイアス電圧が印加されるバイアス電圧印加手段となる電極手段としての背面電極31が配置され、トナー制御手段4を通過したトナーTを記録媒体手段3に付着させるため、バイアス電源手段8からのバイアス電圧Vpが印加される。この記録媒体手段3は、この上に一度画像を形成し、その後紙に転写する中間転写記録媒体、あるいは、記録紙であってもよい。この記録媒体手段3に対するバイアス電圧Vpの印加は、例えば記録媒体手段3の背面側(トナー担持体1と反対側面)に背面電極31を配置し、この背面電極31上面に記録媒体手段3を通過させる構成、あるいは、中間転写記録媒体であれば内部に電極を埋め込んだ構成(記録媒体手段側の電極を内部電極とする構成)又は中間転写記録媒体の背面に背面電極31を配置した構成とすることができる。
ここで、トナー担持体1表面のトナーをクラウド化する手段として、トナー担持体1表面に設けられた複数の電極11を備え、各電極11に平均電位Vsのパルス電圧を印加する。このとき、隣接する電極11相互の間でトナーTを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧を印加する2相の電極間ピッチp(又は、n本毎の各電極11にn相の位相電圧を印加するn相の電極間ピッチ)に対し、トナー担持体1表面とトナー制御手段4のトナー担持体1側面(トナー担持体1側の表面の意味)の間の距離dが大きくなる関係(p<d)でトナー担持体1とトナー制御手段4とを配置している。
つまり、p>dの関係ではトナー担持体1の電極11表面に形成される飛翔電界がトナー制御手段4のトナー担持体1側表面のON/OFF電界と干渉を起こし、後述するトナー制御手段4のループ電界が乱れるためである。そのため、制御電極42表面へのトナー付着の発生が起きやすくなる。p<dの条件においては、制御電極42へトナーが付着することを確実に防止でき、連続したドットを印写しても濃度が変化することなく、良好な画像が得られる。
次に、トナー制御手段4の具体的構成の一例について図4を参照して説明する。なお、図4(a)は同トナー制御手段の印写面側の説明図、(b)は同じくトナー供給側面の説明図である。
この例は、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体11側)面に、トナー通過穴41を囲む形で10〜100μm幅のリング状の制御電極42を設け、この制御電極42から20〜50μmの間隔を置いて、つまり、絶縁基材45で形成される絶縁領域を介して、制御電極42と同一面に、複数のトナー通過穴41に共通のバイアス電圧Vgを印加する共通電極43を設けた構成である。
トナー通過穴41は、形成するドット径のサイズで決定するが直径φ30μm〜φ150μmである。制御電極42は個々にトナーTの通過をON、OFF制御するためのドライバ回路(駆動回路)に接続するためのリードパターン42aが接続され、また共通電極43は共通のリードパターン43aに接続されている。また、絶縁基板45の印写面側(記録媒体手段3側の面)はトナー通過穴41が開口した状態である。
このように、トナー制御手段の共通電極は、制御電極の外側を絶縁領域を介してリング状に囲む形状である構成とすることで、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成する電気力を各トナー通過穴独立の電気力線として形成できるため、マルチ駆動(複数のノズル通過穴からトナーを飛翔させる駆動)のときの相互干渉(他のトナー通過穴の状態を受けること)が発生しない。
また、トナー制御手段の制御電極と共通電極を同一面上形成することで、一回の製造プロセスで同時に形成でき、精度よく低コストに電極を作ることができる。
また、トナー制御手段4の具体的構成の他の例について図5を参照して説明する。なお、図5(a)は同トナー制御手段の印写面側の説明図、(b)は同じくトナー供給側面の説明図である。
この例は、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体1側)面に、トナー通過穴41を囲む形で10〜100μm幅のリング状の制御電極42を設け、この制御電極42から20〜50μmの絶縁領域の間隔を置いて複数のトナー通過穴41に共通のバイアス電圧Vgを印加する共通電極43が空いたスペース全体を覆うようにベタ状に設けられた構成としている。
このように、トナー制御手段の共通電極は、制御電極の外側に絶縁領域を介してベタ状に設けられている構成、つまり、共通電極を制御電極の外側領域全体にわたり形成することで、記録媒体手段側のバイアス電位の電界をシールドすることができ、かつ制御電極へのトナー付着低減、およびトナーの利用効率向上を図れる。
このようなトナー制御手段4の具体的製造方法は、基材45である絶縁性部材として、コスト、製造プロセスの観点から樹脂フィルム、例えば、ポリイミド、PET、PEN、PES等で、厚さは30μm〜100μmのものを使用し、まずフィルム面に0.2μm〜1μmのAl蒸着膜を形成する。次に、フォトリソ工程で、フォトレジストをスピンナで塗布後、プリベーク、マスク露光を行ない、現像した後、フォトレジストの加熱硬化を進めた後、Alエッチング液によるAlのパタンニングを行う。フィルムの裏面にも電極パターンが必要な場合は上記と同様に可能であるが、穴加工用のマスクとして使用するパターンを裏面に形成してもよい。トナー通過穴41となる貫通穴の形成は、パターン形成後プレスによる機械的な加工、または裏面に形成したパターンを利用したエキシマレーザー加工、またはスパッタエッチング加工等のドライエッチング加工によれば、位置ずれの無い高精度な穴加工が可能である。
このように構成した画像形成部においては、トナー担持体1の電極11に対して平均電位Vsのパルス電圧を印加することによって、トナー担持体1上でトナーTが飛翔してクラウド化され、トナー担持体1の回転又は進行波電界による搬送によってトナーTが搬送される。一方、記録媒体手段3側の背面電極31に印写バイアス電圧Vpが印加される。
この状態で、トナー制御手段4の共通電極43に対して電圧Vgを印加し、制御電極42に対してトナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にするときには図3に示すON時の電圧Vc-onを印加し、トナーTがトナー通過穴41を通過不可能な状態(OFF状態)にするときには図3に示すOFF時の電圧Vc-offを印加する。
この場合、これらの各電極11,31,42,43に対する電圧を後述するように設定することで、トナー制御手段4をトナー担持体1のトナーTが記録媒体手段3に向かって通過可能な状態にするときに、記録媒体手段3側とトナー制御手段4の共通電極53との間にトナーの通過を制御する制御電極42を迂回してループ状に電気力線10が形成される。
これにより、トナー担持体1上でクラウド化しているトナーは電気力線10による電界に乗ってトナー制御手段4のトナー通過穴41を通過して記録媒体手段3上に着弾する。したがって、画像に応じてトナー制御手段41の各トナー通過穴41をON/OFF制御(開閉制御)することで、記録媒体手段3上に直接トナー画像を形成することができる。そして、記録媒体手段3側とトナー制御手段4の共通電極53との間にトナーの通過を制御する制御電極42を迂回してループ状に電気力線10が形成されることから、制御電極42やトナー通過穴41周辺へのトナーの付着が低減され、またトナーをクラウド化していることでトナーの利用効率が向上する。
次に、トナー担持体1の電極11に対するパルス電圧の平均電位Vs、記録媒体手段3側のバイアス電圧Vp、トナー制御手段4の制御電極42に対する制御パルス電圧Vc、共通電極43に対する電圧Vgについて、図6をも参照して説明する。なお、図5は、トナー担持体1、トナー制御手段4、記録媒体手段3の二次元断面電界強度分布のシミュレーション結果に基づくトナー通過穴を通過する電気力線を示す説明図である。
トナー担持体1の電極11には平均電位Vsのパルス電圧(電位が時間的に変動する電位)を印加する。この場合、バイアス電圧の波高値は電極ピッチ、使用するトナー等に応じて設定する。例えば、±60〜±300Vpp(ppはピーク−ピーク)の範囲内で設定することが好ましく、ここでは、±150Vpp、DC電圧成分0Vの電圧を印加している。したがって、トナー制御手段4に対するトナー担持体側1側のDCバイアスとしては0Vであり、平均電位Vs=0Vとなる。なお、トナー担持体1とトナー制御手段4の間隔dは0.3mmとしている。
また、この例では、トナー制御手段4のトナー通過穴41の直径φ100μm、リング状の制御電極42の穴中心方向の幅は30μm、制御電極42は共通電極43の間隔は50μmである。
このトナー制御手段4の共通電極43へのバイアスVgはDC−125Vであり、トナー担持体1への平均電位Vsのパルス電圧との関係はトナーTを常にトナー担持体1側へ向ける方向のバイアスであるため、この共通電極43面へのトナー付着はない。
そして、トナー制御手段4の制御電極42には、トナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にする場合、制御パルス電圧Vc-onは+50V、トナーTを通過させる時以外の阻止状態の(通過不可能な状態にする)場合の電圧Vc-offは−125Vとしている。記録媒体手段3の背面電極31へのバイアス電圧Vpはトナー制御手段4と記録媒体手段3との間隔にもよるが、例えば+200〜+1500VのDC電圧を印加すればよい。ここでは、トナー制御手段4と記録媒体手段3との間隔0.3mmとしてDC+300Vを印加し、マイナス帯電トナーを記録媒体手段3の表面にを引き寄せる電位勾配としている。
各電極11、42,43、31に印加する電位の関係を以上のように設定することで、マイナスに帯電したトナーをトナー通過穴31を通過可能な状態にする場合においては、最もプラス側に電位が高い記録媒体手段3側の電極31から出る電気力線のうち、トナー制御手段4のトナー通過穴41を通る電気力線の多くが、トナー通過穴41を通過した後、一番電位の低い共通電極43に入ることになる。このとき、近接した距離にあるトナー制御手段4の制御電極42と共通電極43にも175Vの電位があるため、その間にも強い電気力線が生じる。
そのため、図6(a)に示すように、トナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にしたときには、先の記録媒体手段3側の電極31からトナー通過穴41を通る電気力線10は、制御電極42に入ること無く(制御電極42を迂回して)、−125Vと最も電位の低い共通電極43に多くが入るため、ループ状に拡がった形状となる。つまり、記録媒体手段3側とトナー制御手段4の共通電極43との間に制御電極42を迂回してループ状に電気力線10が形成される。
したがって、トナー担持体1上でクラウド状態にあるマイナス帯電トナーTがこの電気力線10に沿ってトナー通過穴41を通過し、記録媒体手段3の表面に多くのトナーTが移動することができる。
このとき制御電極42には+50Vが印加され、トナー担持体1の0Vとの関係は、トナーTを制御電極42へ吸着する関係にあるため、本来であればこの+50Vが印加されている間に制御電極42表面にトナーが付着するはずであるが、図6(a)のシミュレーションの結果から分かる様に、+50Vが印加されている制御電極42上方を記録媒体手段3側電極31からトナー通過穴41を通って共通電極43に入る電気力線10が覆っているため、制御電極41へトナーTが付着することが防止される。
一方、トナーTがトナー通過穴41を通過不可能な阻止状態(OFF状態)にした場合、制御電極42には−125Vが印加され、共通電極43に対する電位と同じ電位であり、トナー担持体1の電位0Vとの関係は、トナーTをトナー担持体1側に反発する関係であり、トナー制御手段4へのトナーTの付着はないし、図6(b)に示すように記録媒体手段3側電極31からの電気力がトナー通過穴41を通り抜ける電気力線もないため、トナーTがトナー通過穴41を通過することもなく、地汚れ画像は発生しない。なお、阻止状態(OFF状態)の制御電極42への印加電圧は共通電極43の電位と同じ電位である必要はなく、よりマイナス側の電位であってもトナーTの通過を阻止する(OFF状態にする)ことはできる。
このように、トナーを飛翔させ、クラウド化して担持するトナー担持体と、トナーが付着させられる記録媒体手段と、トナー担持体と記録媒体手段との間に配置された複数のトナー通過穴を有するトナー制御手段と、を備え、トナー制御手段は、トナー担持体側表面に、トナー通過穴の周囲及び穴内壁の少なくともいずれかにトナーの通過を制御する制御電極が設けられ、この制御電極の外側に複数のトナー通過穴に共通の共通電極が設けられ、トナー制御手段のトナー通過穴をトナー担持体のトナーが記録媒体手段に向かって通過可能な状態にするとき、記録媒体手段側とトナー制御手段の共通電極との間に制御電極を迂回してループ状に電気力線が形成されることにより、トナーを吸引する電位が印加される制御電極表面やその周囲へのトナー付着を大幅に低減でき、トナーの通過のオン/オフの制御を安定して行うことができるとともに、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成される電気力線はトナー担持体側ではトナー通過穴の径より大きく広がり、クラウド化されたトナーを広範囲に捕獲して印写面側に向けて飛翔させることが可能となってトナーの利用効率が上がり、印刷濃度の確保、印刷速度の向上を図れる。
また、各電極に印加する電位の関係として、トナー担持体1の電極11のDCバイアスとして−50V、パルスの波高値を+150V〜−150Vとして、±150Vpp−50VDCを印加すると、平均電位Vsは−50Vとなる。そして、トナー制御手段4の制御電極42のトナー通過ON時の電位Vc-onが0V、トナー通過OFF時の電位Vc-offが−175Vであっても、上述した例と等価である。この場合、制御電極42に印加する電圧Vcが0〜−175Vの一極性電圧のON、OFFであるため、ドライバ回路の構成が簡単になりコスト的にも有利である。
このように、上述したトナー通過ON時に各電極に対して印加する電位の関係を、次のように設定することで、記録媒体手段側とトナー制御手段の共通電極との間に制御電極を迂回してループ状に電気力線を形成することができる。
つまり、トナー担持体1の電極11に対し時間的に変動する平均電位Vsの電位を印加し、トナー制御手段4の制御電極42に対しトナーがトナー通過穴41を通過可能な状態にするときに電圧Vc-onを、トナーがトナー通過穴41を通過不可能な状態にするときに電圧Vc-offを印加し、共通電極43に電圧Vgを印加し、トナー制御手段4を通過したトナーを記録媒体手段3に導いてトナーを付着させるために記録媒体手段3側にバイアス電圧Vpを印加するとき、
トナーがトナー通過穴41を通過可能な状態にするときの各電位の関係は、
Vp>Vc-on>Vs>Vg
とし、トナーが負帯電トナーの場合はバイアス電圧Vpがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合はバイアス電圧Vpがマイナス電位側に高くなる設定とする。
また、この場合、トナーがトナー通過穴41を通過不可能な状態にするときの各電位の関係は、
Vs>Vg であり、且つ、Vs>Vc-off
であって、トナーが負帯電トナーの場合は平均電位Vsがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合は平均電位Vsがマイナス電位側に高くなる設定とすることが好ましい。
各電極11、42、43、31に対する電位の関係を上述した関係に設定することにより、記録媒体手段側のバイアス電位とトナー担持体の電位間に直接形成される電気力線が低減され、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に電気力を形成することができ、これにより、トナーを吸引する電位が印加される制御電極へのトナー付着を大幅に低減できて、制御電位が安定する。また、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成される電気力線は、トナー供給側ではトナー通過穴の径より大きく広がるため、クラウド化されたトナーを広範囲に捕獲して印写面側に向けて飛翔させることが可能となり、トナーの利用効率が上がり、印刷濃度の確保、印刷速度の向上を図ることができる。さらに、トナー制御手段の共通電極はトナーを常に反発する関係の電位にあるため、トナーの付着が発生することがなく、共通電極の電位を一定に保つことが可能となり信頼性の高い画像形成装置を実現できる。
さらに、高速印刷のためにトナー担持体1表面のトナー量が多くなった場合、また帯電電荷量が大きいトナーを使用して印刷を行う場合は、トナーが有する電荷によるトナー電位を無視できなくなり、各電極に印加する電位決定に考慮が必要となる。
具体的に説明すると、トナー担持体1表面の供給トナー量m/Amg/cm2に対するトナー電位の変化は図7に示すようになる。ここでは、トナーはマイナスに帯電したトナーの例であり、トナー担持体1表面の単位面積当たりのトナー量が増加するに従って、制御電極42側からみた表面電位はマイナス電位に上昇する。そして、供給したトナーがトナー担持体1表面に単に付着したままの電位Voに対して、トナー担持体1表面の電極に電圧を印加してトナーが電極11相互の電気力線に沿って上下の飛翔を繰り返すクラウド状態の電位Vtは大きく上昇する。これは、トナーがトナー担持体1表面より上方の空間にある方が、個々のトナーの周囲に対する結合静電容量が小さくなり、その結果電位が上昇するためである。
このクラウド状態のトナー電位Vtの測定は、トナー担持体1表面の各電極11にパルス電圧を印加しながら、供給したトナーをクラウド状態にしてその上方に表面電位計を設定することで、容易に測定することができる。具体的には、クラウド化を起こすパルスを印加して、後述する一成分、または二成分ローラからトナーを供給しながらトナー担持体1を回転、又は進行波パルスでトナーを搬送し、トナー制御手段4が設定される位置にてトナー担持体1表面から2mm程度上方に表面電位計を設置して測定する。図7の結果は、帯電電荷量が−15〜−25μC/gのトナー供給した場合のVo、そのトナーを飛翔高さが表面近傍から200μmの範囲でクラウド状態にした場合のトナー電位Vtの場合の例である。
この図7に示す各供給トナー量においてトナー制御手段4によりトナーの通過のON/OFF制御を行って印刷を行った結果、トナー制御手段4の電極42、43表面に付着したトナー量を評価した結果を図8に示している。この図8の結果において、供給トナー量が少ない領域は電極42、43へのトナー付着はないが、供給トナー量が増加して0.9mg/cm2はトナー電位Vtが−80Vとなり、制御電極42へのトナー付着が起き始める。
これは、等価的にトナー担持体1の電位がマイナス側に電位上昇してトナー制御手段4の共通電極42との電位差が小さくなった結果、記録媒体手段3側電極から出てトナー通過穴42を通る電気力線のうち、トナー担持体1に直接入る電気力線が増加し、共通電極43へ入るループ状の電気力線が減ったためである。すなわち、ループ状の電気力線が少なくなると、飛翔エネルギーの高いトナーがループ状の電気力線に乗って印写面の方向に飛翔することなく、ON電圧が印加されている制御電極42まで飛翔するためである。
さらに、供給トナー量が増加して1.2mg/cm2超えると、トナー電位Vtは−120V以上の値となる。この領域では、トナー制御手段4の共通電極43のバイアス電位Vg(−125V)との電位差がなくなり、飛翔エネルギーを有するトナーが共通電極43まで到達し始めてトナー付着が起きた結果である。また、制御電極42へのトナー付着量も増えてくる。
これらのトナー付着は、定期的な電極クリーニングの頻度を上げることで、使用できないことはないが、画質低下が発生する。トナー付着が発生しない条件であれば、連続印刷においても画像濃度が低下することなく、信頼性の高い画像記録装置が可能となる。
そこで、トナー量が多い場合、また帯電電荷量が大きいトナーを使用して画像を形成する場合は、各電極に対する電位を、次の条件で設定することで、電極へのトナー付着回避、トナー利用効率の向上で画像濃度が低下することなく高速印刷が可能になる。
すなわち、電荷を有するトナーがトナー担持体1表面から飛翔してクラウド状態にある制御電極42側からみたトナー電位をVtとしたとき、トナーの通過をONさせる場合の各電位の関係は、
Vp>Vc-on>(Vs+Vt)>Vg
と、負帯電トナーの場合はVpがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合はVpがマイナス電位側に高くなる設定とする。
また、トナーの通過をOFFさせる場合の各電位の関係は、
(Vs+Vt)>Vg であり、且つ、(Vs+Vt)>Vc-off
と、負帯電トナーの場合は(Vs+Vt)がプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合は(Vs+Vt)がマイナス電位側に高くなる関係に設定する。
各電極11、42、43、31に対する電位を上記のように設定する、つまり、トナー供給側の電位として、トナー担持体表面のトナーが飛翔することによる電位も考慮して各電極電位を適正に設定することで、印刷速度が速い供給トナー量が多い場合、またトナーの帯電電荷量が大きい場合においても、制御電極などへのトナー付着の低減、トナー利用効率の向上を図れ、高濃度、高速印刷の画像形成装置を実現することができる。この場合、トナーをクラウド化していない(パルスを印加していない)状態でも、上述した電位の関係に設定することで、制御電極などにトナー付着が発生しないため、信頼性が向上する。
また、前述したように、トナー担持体は、表面側に所定の間隔で配設された複数の電極を有し、隣接電極相互の間でトナーを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧が印加され、電極に印加する2相の電極間ピッチp(又はn本毎の各電極にn相の位相電圧を印加するときのn相の電極間ピッチ)に対して、トナー担持体表面とトナー制御手段のトナー担持体側面の間の距離dが大きい構成とする。
これにより、記録媒体手段側の印写バイアスからトナー制御手段の共通電極に向けて形成されるループ状電気力線を強いものとし、クラウド化されたトナーを印写面に向けてより多く飛翔させることができ、高速、高品質のドット形成が可能となる。
なお、上記の例では、トナー担持体表面の複数の電極にクラウドパルスを印加してトナーがクラウド状態にある場合の条件について説明したが、トナーを飛翔させていない状態の制御電極側からみたトナーによる電位をVtとしたとき前記と同条件に設定することで、電極へのトナー付着を回避する効果がある。つまり、クラウドパルスの印加をOFFしてトナーのクラウドが無い状態においても、僅かなトナーが浮遊している。この僅かな浮遊トナーの電位は無視できるが、トナー担持体表面に着地して乗っているトナー電位があり、この電位Vtを考慮した(Vs+Vt)も前記と同条件の範囲に設定することで、同じ効果が得られる。
上述したように、ここでは、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段に時間的に変動する電位を印加する。例えば、トナーの供給はトナーを搬送供給するトナー担持体の表面にトナーを搬送する方向と直交する方向に所定ピッチで設けられた複数の電極を有するトナー担持体から供給する。ここで、トナー制御手段の共通電極がない場合、各電極への電位の設定が上述した範囲に無い場合は、電極へのトナー付着が急速に発生する等、信頼性の低下は避けられない。また、クラウド化したトナーの利用効率が非常に低下するため、画像濃度の確保、高速印刷の画像形成装置を達成することはできなくなる。
次に、本発明に係る画像形成装置を構成する画像形成部102の構成の第2例について図9に示す模式的説明図を参照して説明する。
この画像形成部において、トナー制御手段4には、前述したように、トナーTが通過可能なトナー通過穴(開口)41が複数設けられ、このトナー制御手段4のトナー供給側面(トナー担持体1側の面)の各トナー通過穴41周辺には各トナー通過穴41に対して個別的にリング状に制御電極42が設けられ、トナー通過穴41に対し制御電極42の外側に絶縁領域を介して複数のトナー通過穴41に共通の共通電極43が設けられている。
さらに、このトナー制御手段4の記録媒体手段3側面(記録媒体手段3側の面)の各トナー通過穴41周辺には、各トナー通過穴41に対して個別的に、制御電極42よりも面積が大きい個別背面電極44が設けられ、この個別背面電極44には常時制御電極42と同じ電位Vs(=Vr)が印加されている。
このようなトナー制御手段4の具体的構成の一例について図10を参照して説明する。
このトナー制御手段4は、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体11側)面に、図5で説明したと同様に、トナー通過穴41を囲む形で10〜100μm幅のリング状の制御電極42を設け、この制御電極42から20〜50μmの絶縁領域の間隔を置いて複数のトナー通過穴41に共通のバイアス電圧Vgを印加する共通電極43が空いたスペース全体を覆うようにベタ状に設けられている。
一方、絶縁基板45の記録媒体手段側(印写面側)にはトナー通過穴41を囲む形で制御電極42よりも径が大きいリング状の個別背面電極44が設けられている。この個別背面電極44は例えばAl蒸着で形成されている。
なお、その他のトナー担持体1、記録媒体手段3などの構成については基本構成と同じであるので説明を省略する。
このように構成したトナー制御手段4の各制御電極42に対する電位Vc、共通電極43に対する電位Vg、個別背面電極44に対する電位Vrとして、それぞれ+50V、−125V、+50Vを印加したときの電極電界分布のシミュレーション結果を図11に示している。
ここでは、個別背面電極44の電位Vrと制御電極41の電位Vcとは同電位であり、また、トナー担持体1の電極11に対する平均電位Vsは0Vとしている。
この結果、トナーがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にするとき、クラウド状態のトナーを取り込んで印写面側に飛翔させるループ状の電界(電気力線10)は、前述した図6(a)の場合(個別背面電極44がない場合)に比べて、幅が広く、トナー通過穴41を通過する電気力線10の量が多いことが分かる。
これは、図6(a)の場合には、共通電極43の電圧Vgの電界が印写面側に作用し、印写面側のトナー通過穴41近傍にも作用して印写バイアスVpからの電気力線の通過量を制限しているのに対して、図11の例では個別背面電極44の電圧Vrが電圧Vcと同じ電位で、制御電極印写面側のトナー通過穴41近傍の表面電位が図6(a)の場合に比較して高い電位であるため、トナー通過穴41を通過する電気力線が多くなった結果である。
このとき、トナー制御手段4の各制御電極42の面積に対して個別背面電極44の面積がより大きい形状に設定することで、前記の効果はより顕著となる。または、トナー制御手段4の各制御電極42と各個別背面電極44の形状をトナー通過穴44を囲む形でリング形状とし、制御電極44の外径に対して個別背面電極44の外径寸法をより大きく設定することでも前記の効果は顕著になる。
ここで、トナー制御手段4の個別背面電極44の電位Vrと制御電極42の電位Vcとを異なる電位とした場合について図12及び図13を参照して説明する。
図12(a)、(b)は、図9の構成において、制御電極42に印加する電位Vc(+50V)に対し、個別背面電極44に印加する電圧Vrを、+10V、+30Vと低くした(−40V、−20V低くなる。)場合の電界分布を示している。また、図13(a)、(b)は、図9の構成において、制御電極42に印加する電位Vc(+50V)に対し、個別背面電極44に印加する電圧Vrを、+70V、+90Vと高くした(+20V、+40V高くなる。)場合の電界分布を示している。なお、その他の電圧は図11の例(実施形態)と同様である。
この結果から、個別背面電極44の電圧Vrが制御電極42の電圧Vcよりマイナス側の電位である図12(a)、(b)の場合には、印写面バイアス電圧Vpが印加される記録媒体手段3側からトナー通過穴41を通る電気力線10の量が減少し、その結果クラウド化されたトナーを印写面(記録媒体手段3)側に飛翔させる力が減って印写濃度が低下する。これは、個別背面電極44の電圧Vrと印写面バイアス電圧Vpの間で形成される電気力線がトナー通過穴41の開口エッジ部にはみ出すために、トナー通過穴41を通過する電気力線が減少することによる。
また、個別背面電極44の電圧Vrが制御電極42の電圧Vcよりプラス側の電位である図13(a)、(b)の場合には、印写面バイアス電圧Vpが印加される記録媒体手段3側からトナー通過穴41を通る電気力線10はトナー通過穴41の全体に拡がっており、形成されるドット径が図11の例に比較して大きくなる。そのため、トナー通過穴41の開口径を小さくする必要があり、トナー通過穴41にトナー、微粉、紙粉等が付着した場合、飛翔トナーが衝突してドット欠けが発生し易く、図11の例に比較して信頼性が低下する。
また、制御電極42の電圧Vc及び個別背面電極44の電圧Vrをドット毎にそれぞれ異なる電圧で印加する構成では、トナー通過穴41の数の2倍のドライバ(回路)を必要とするため、コストアップとなる。
したがって、上述したように制御電極42の電圧Vcと個別背面電極44の電圧Vrは同じ電圧を印加することにより、トナーを印写面に飛翔させる電界の強度を保ち、且つトナー通過穴41の穴径に対して形成ドット径を小さくして高解像度の画像が得られ、しかもドライバコストの上昇を抑えることができる。
そして、より大きい効果を得るための制御電極42と個別背面電極44の形状については、前述したように、トナー制御手段41の各制御電極42の面積に対して個別背面電極44の面積がより大きい形状に設定する。または、トナー制御手段41の各制御電極42と各個別背面電極44の形状をトナー通過穴41を囲む形でほぼリング形状とし、制御電極42の外径に対して個別背面電極44の外径寸法をより大きく設定する。
次に、本発明に係る画像形成装置を構成する画像形成部102の構成の第3例について図14に示す模式的説明図を参照して説明する。
この画像形成部では、トナー制御手段41の制御電極42と個別背面電極44がトナー通過穴41の内壁面に設けた導通パターン46を介して接続されている。この導通パターン46の形成は、例えば、トナー通過穴41以外をメタルマスクで覆い、Al、Au、ITO等の導電性材料の蒸着、スパッタで内壁面に成膜する、または、トナー通過穴41以外の部分にレジスト膜を形成した後メッキによる導電性膜を成膜することなどで行うことができる。
これにより、トナー制御手段41の制御電極42に印加する電圧Vcと個別背面電極44に印加する電圧Vrは常に同じ電圧になる。この場合、個別背面電極44の引出しパターン44aを図示しないドライバに接続して電圧Vc(=Vr)を印加することで、前述した第1例で説明した図4、図5に示す制御電極42からの引出しパターン42aが不要になるので、制御電極42側へのトナー付着が一層低減されることになる。また、各トナー通過穴41によってトナードットを形成するための制御信号発生用のドライバは、各ノズル通過穴41の数に対応した数があればよいことになる。
なお、ここでは、トナー通過穴41の内壁面に設けた導通パターン46によって制御電極42と個別背面電極44の導通をとったが、これに限らず、トナー通過穴41以外の箇所に導通用のスルーホール(穴)を設け、制御電極42と個別背面電極44を導通することも可能である。このときの導通用スルーホールは導通のみを考慮すればよいため、必要最低限の穴でよく、導通処理も穴内壁を埋め尽くすものであってもよいことから、導通用穴に導電性インクを噴射して埋めることもできる。
トナー通過穴41の内壁面全体を導電性膜(導通パターン46)で覆うことは、トナーを飛翔させるためのループ状電気力線のトナー通過穴41内部での歪みが大きくなるが、トナー通過穴41以外の箇所に導通用の穴を設ける構成とすることで、そのループ状電気力線の歪みが抑えられ、トナーの飛翔にとっては印写面への飛翔経路の曲がりが減少し、ドット品質が向上する。
次に、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について図15を参照して説明する。
なお、図15は同画像形成装置の模式的構成図である。
この画像形成装置は、前述した実施形態の画像形成部102(102y、102m、102c、102k)を4個設けてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーのクラウド化とトナー制御手段によるON/OFF制御を行ってカラー画像を形成する画像形成装置の例である。
つまり、この画像形成装置は、記録媒体手段である中間転写記録体130に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーのクラウド化して供給する4個のトナー供給ユニット111y、111m、111c、111k(色を区別しないときは「トナー供給ユニット111」という。以下同様。)を配置し、各トナー供給ユニット111と中間転写記録体130との間に、それぞれ前述したいずれかの例のトナー制御手段44を配置している。
ここで、中間転写記録体130は、2つのローラ132、133との間に掛け回されて矢示方向に周回移動する。この中間転写記録体130の背面(内側)には各トナー供給ユニット111に対応して記録媒体手段側電極である背面電極31が配置されている。また、転写後の中間転写記録体130上の残トナーを除去するクリーニングユニット135が備えられる。
トナー供給ユニット111は、トナーをクラウド化させるために電圧を印加する複数の電極11を並べて配置した円筒状のトナー担持体1と、このトナー担持体1にトナーを補給する回転するトナー補給ローラ112と、トナー担持体1上のトナー量を規制するブレード113を備えている。
ここでは、トナー補給ローラ112からトナー担持体1にトナーが補給されるとともに、トナー補給ローラ112上のトナーとトナー担持体1との摩擦によってトナーの摩擦帯電が行われる。また、トナー補給ローラ112の下流側のブレード113は、トナー担持体1表面のトナー量を薄層で一定量にするとともに、トナー帯電量の安定化も図っている。
さらに、最も上流側のトナー供給ユニット111y(画像形成部102y)よりも上流側に、印写面となる中間転写記録媒体130の表面にトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を塗布する液塗布手段104を配置している。
そして、トナー供給ユニット111で供給されるトナーがトナー制御手段4によって画像に応じてON/OFF制御されることで中間転写記録体130上に飛翔され、中間転写記録体130上にカラーのトナー画像が形成される。
このとき、トナー画像形成前に、液塗布手段104で、中間転写記録媒体130表面に対してトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を塗布することによって、前述したように、トナーが衝突した時のトナーと印写面との付着力を大きくし、また、同時にトナーが衝突した時の印写面の反発力を低減して、トナーの飛び散りを少なくし、更に塗布液に含まれる軟化剤によりトナーに含まれる樹脂が溶解又は膨潤させることで中間転写記録媒体130表面(印写面)上においてトナーの軟化が促進されるので、転写ユニット152で記録紙101面へトナー画像を転写した後加熱定着するが、この時従来よりも非常に小さいエネルギー定着ができ、あるいは、十分な塗布液量を塗布することにより熱エネルギーが不要で圧力だけによる定着が可能となる。
一方、下方に記録紙101を収容する給紙部150が配置され、給紙部150から記録紙101がピックアップローラ(給紙ローラ)151で給紙されて、中間転写記録体130を掛け回したローラ132に対向して配置した転写ローラ152で中間転写記録体130上のトナー画像が転写され、定着ユニット105でトナーが記録紙101上に溶融定着されて排紙される。
なお、ここでは図示していないが、記録紙101の裏面側の転写ローラ152に+バイアスが印加されることで中間転写記録体130から記録紙101面へのトナー画像の転写が行われる。また、上述したように中間転写記録体120はクリーニングユニット135で残トナーがクリーニングされて、次の画像形成が行われる。
このように、この画像形成装置は、中間転写記録体に4色画像を形成した後、給紙部から供給される記録紙に転写を行う中間転写記録方式である。この中間転写記録方式の場合は、印写面(トナーが着弾する面、画像形成面ともいう。)とトナー制御手段との間隔を一定に保つ精度確保が容易であり、トナー飛翔速度が低い条件で高画質化を図ることができる。また、平滑で体積抵抗率の調整によって電荷が蓄積しない、電位変動のない印写面が得られ、クラウド化したトナーの通過のON/OFFで直接印刷する画像形成装置は電位に対する感度が高く、印写面バイアス電位の変動に対して画質変動が発生しやすいが、この構成であれば信頼性の高い、高画質のカラー画像を得ることができる。
次に、本発明に係る画像形成装置の第3実施形態について図16を参照して説明する。なお、図16は同画像形成装置の模式的構成図である。
この画像形成装置は、第1実施形態記録媒体手段を記録紙として、記録紙上に直接画像を形成する例である。つまり、ここでは、給紙部105から供給される記録紙101を紙搬送ベルト103に静電的に吸着してトナー供給ユニット111の領域を通過させ、トナー制御手段4の画像に応じたON/OFF制御によって記録紙101上に直接カラー画像を形成する。
なお、紙搬送ベルト103は、ポリイミド等から形成され、2つのローラ121、122に掛け回されて矢示方向に周回移動し、図示しない帯電ローラなどの帯電手段によって帯電されることで記録紙101を静電的に吸着保持して搬送する。なお、給紙部105から記録紙101を紙搬送ベルト103に導くためのガイド154、レジストローラ155なども配置されている。
さらに、最も上流側のトナー供給ユニット111y(画像形成部102)よりも上流側に、印写面となる記録紙101の表面(印写面)にトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を塗布する液塗布手段104を配置している。
これにより、トナー画像形成前に、液塗布手段104で、記録紙101の表面に対してトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を塗布することによって、前述したように、トナーが衝突した時のトナーと印写面との付着力を大きくし、また、同時にトナーが衝突した時の印写面の反発力を低減して、トナーの飛び散りを少なくし、更に塗布液に含まれる軟化剤によりトナーに含まれる樹脂が溶解又は膨潤させることで記録紙101表面(印写面)上においてトナーの軟化が促進されるので、記録紙101面へトナー画像を形成した後加熱定着するが、この時従来よりも非常に小さいエネルギー定着ができ、あるいは、十分な塗布液量を塗布することにより熱エネルギーが不要で圧力だけによる定着が可能となる。
この構成では、トナー通過を制御するトナー制御手段4と通過後のトナーを記録紙101に導くためのバイアスを印加する背面電極31の間にポリイミド等の紙搬送ベルト103及び記録紙101があるため、トナー制御手段4と背面電極31の間隔を非常に狭く設定することが難しいが、他方、前記第2実施形態のようなベルトクリーニング機構を必要としないこと等もあり、小型、低コストの画像形成装置の実現に有利である。
次に、上述した画像形成装置で用いるトナー担持体の一例について図17を参照して説明する。なお、図17(a)はトナー担持体を展開した状態で示す模式的平面説明図、図17(b)は同じく模式的断面説明図である。
この例は、トナー担持体表面に複数の電極を設け、1本おきの2組を共通にした2相用電極を備え、180°位相の異なる2相パルス(図18参照)を印加して、隣接電極同士で吸引と反発を繰り返す2相電界を形成するトナー担持体の例である。
このトナー担持体1は、絶縁性基板1Aの表面上に複数の電極11としてA相用電極11Aと、B相用電極11Bとを設け、その上に表面保護層1Bを設けたものである。櫛歯状の電極11A、11Bは、トナーの搬送方向と直交する方向に微細なピッチに並行に設け、両サイドには共通のバスライン11Aa、11Baで外部の図示しない2相パルス発生回路(電圧印加手段5)にそれぞれ接続されている。
電極11A、11Bに印加するパルス電圧は、周波数が0.5KHz〜7KHz、DC電圧をバイアスに含むパルス電圧であるが、その波高値は±60〜±300V等、電極幅、電極間隔に応じたパルス電圧を印加する。この2相電界の場合は、隣接同士の電界方向の切り替わりに応じてトナーの反発飛翔と吸引飛翔を繰り返し、トナーは相互の電極間を往復移動する。そして、トナー担持体1全体は、トナーを搬送する方向に回転移動するものである。
このように、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段が、トナー担持体表面にトナーの搬送方向と直交する方向に長く延びて所定の間隔で配設された複数の電極を有し、各電極に印加する電圧は隣接電極相互の間でトナーを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧を印加し、トナー担持体が回転移動することでトナーの搬送とクラウド化を行う構成とすることで、トナー担持体表面のトナーの搬送に関して、トナーの帯電品質に左右されない安定なトナーの搬送が可能となり、装置全体としても信頼性の高い画像形成装置を実現できる。
次に、上述した画像形成装置で用いるトナー担持体の他の例について図19を参照して説明する。なお、図19(a)はトナー担持体を展開した状態で示す模式的平面説明図、図19(b)は同じく模式的断面説明図である。
この例は、3相進行波電界を形成するトナー担持体の例である。絶縁性基材1A上にA相、B相の電極11A、11B、その上層に絶縁層1Cを形成した後C相電極11Cを形成し、このC相電極11Cの上に表面保護層1Bを設けている。
各ABC3相の電極11A、11B、11Cは、トナーの搬送方向と直交する方向に微細なピッチに並行に設け、両サイドには共通のバスライン11Aa、11Ba、11Caで外部の図示しない3相パルス発生回路にそれぞれ接続されている。
この3相進行波電界を用いる場合は、図20に示すように、1周期で120°位相がシフトしたパルス電圧を順次印加することで、トナー担持体1表面にはパルスの切り替わりに伴って電界も順次シフトする進行波電界が発生し、電界が切り替わる方向に帯電トナーは上方への飛翔を繰り返すと同時に搬送されるため、基本的にトナー担持体1は回転しないで静止したままで良い。
このように、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段が、トナー担持体表面にトナーの搬送方向と直交する方向に長く延びて所定の間隔で配設された複数の電極を有し、n本毎の各電極にn相の位相電圧を印加して電極相互の間で進行波電界を形成することでトナーの搬送とクラウド化を行う構成とすることで、トナー担持体表面のトナーの搬送に関して、トナー搬送を行う部分が回転駆動を必要としないため、平面的なベルト形状も可能となり、レイアウトの自由度から装置全体の小形化、低コスト化が可能となる。
また、長期間の使用に際し、電極表面にはトナーの外添剤等微細な粒子が堆積する場合は、画像形成の時間以外に行うクリーニングモードのシーケンスによって、トナー担持体101表面をクリーニングすることで搬送の信頼性が確保できる。クリーニングは、クリーニングモードの時のみトナー担持体1表面に接する構成で、回転ブラシ、ブレート、吸引スリット等でクリーニングを行う。電極11A、11B、11Cに印加するパルス電圧は、前記と同様に、周波数が0.5KHz〜7KHz、DC電圧をバイアスに含むパルス電圧であるが、その波高値は±60〜±300V等、電極幅、電極間隔に応じたパルスを印加する。
これらのトナー担持体1の具体的構成において、ベース基板である絶縁性基板1Aは、例えば、樹脂或いはセラミックス等の絶縁性材料からなるもの、或いは、アルミなどの導電性材料からなる基材にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなるものなどを用いることができる。また、電極111は、ベース基板上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜1μm厚さで成膜し、フォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成、または銅箔を積層、メッキ等で形成した後フォトリソでパターン化してもよい。
表面保護層1Bとしては、例えば、SiO2、TiO2、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜2μmで蒸着成膜して形成、またはポリカーボネート、ポリイミド、メチルメタアクリレート等の有機材料を2〜10μm厚に薄膜印刷塗布して加熱硬化したものでもよい。
このように構成したトナー担持体においては、駆動回路から飛翔用のパルスを印加して飛翔電界を形成することで、トナー担持体上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて上下方向への飛翔、進行波方向への搬送が行われる。
次に、上記画像形成装置におけるトナー供給ユニット111の具体的な構成の一例について図21を参照して説明する。
このトナー供給ユニット111は、磁性キャリアと非磁性トナーから成る二成分記録剤を用いる例である。記録剤収容部201は2つの室201A、201Bに分けられており、トナー供給ユニット111内の両端部の記録剤通路(図示せず)によって繋がっている。記録剤収容部201には二成分記録剤が収容されており、各室201A、201Bにある攪拌搬送スクリュー202A、202Bによって攪拌されながら記録剤収容部201内を搬送されている。
記録剤収容部201の室201Aにはトナー補給口203が配置されており、図示しないトナー収容部からトナー補給口203を通って、記録剤収容部201内に補給される。記録剤収容部201には記録剤の透磁率を検知する図示しないトナー濃度センサが設置されており、記録剤の濃度を検知している。記録剤収容部201のトナー濃度が減少すると、トナー補給口203から記録剤収容部201内にトナーが補給される。
そして、攪拌搬送スクリュー202Bと対向する位置には、トナー補給ローラとしてのマグブラシローラ204が配置されている。マグブラシローラ204の内部には固定された磁石が配置されおり、マグブラシローラ204の回転と磁力によって、記録剤収容部201内の記録剤はマグブラシローラ204表面に汲み上げられる。記録剤の汲み上げ位置よりマグブラシローラ204の回転方向上流において、マグブラシローラ204と対向する位置に記録剤層規制部材205が設けられている。
汲み上げ位置で汲み上げたれた記録剤は記録剤層規制部材205によって一定量の記録剤層厚に規制される。記録剤層規制部材205を通った記録剤はマグブラシローラ204の回転に伴って、トナー担持体1と対向する位置まで搬送される。マグブラシローラ204には、第一電圧印加手段211によって供給バイアスが印加されている。
トナー担持体1には、第二電圧印加手段212によって前述した図11或いは図13に示す電圧が電極11に印加されている。マグブラシローラ204と対向する位置においては、第一、第二電圧印加手段211、212によってトナー担持体1とマグブラシローラ204との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーはキャリアから分離し、トナー担持体1表面に移動する。トナー担持体1表面に達したトナーは、第二電圧印加手段212から電極11に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体1の回転、またはトナー担持体1の進行波電界によって搬送される。
そして、トナー制御手段4と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体手段側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
次に、上記画像形成装置におけるトナー供給ユニット111の具体的な構成の他の例について図22を参照して説明する。
このトナー供給ユニット111は、非磁性トナーから成る一成分記録剤を用いる例である。トナーは記録剤収容部201に収容されており、帯電ローラ220によってトナーはトナー補給ローラ113と摩擦帯電を行い、静電気力によってトナー補給ローラ112上に汲み上げられる。トナー補給ローラ112上のトナーは記録剤層規制部材113によって薄層とされ、トナー補給ローラ112の回転に伴ってトナー担持体1と対向する位置に搬送される。
このとき、トナー補給ローラ112には、第一電圧印加手段221によって供給バイアスが印加されている。トナー担持体1には、第二電圧印加手段222によって電極11に電圧が印加されている。したがって、トナー担持体1と対向する位置においては、第一、第二電圧印加手段221、222によってトナー担持体1とトナー補給ローラ112との間に電界が生じ、その電界からの静電気力を受け、トナーはトナー補給ローラ112から分離し、トナー担持体1表面に移動する。
前記の例と同様に、トナー担持体1表面に達したトナーは、第二電圧印加手段222から電極11に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体1の回転、またはトナー担持体1の進行波電界によって搬送される。
そして、トナー制御手段4と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体手段側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
なお、これらの各トナー供給ユニット111において、印写に寄与しなかったトナーはトナー担持体1によってさらに搬送され、図示しない回収手段によってトナー担持体1表面から回収される。回収されたトナーは再び記録剤収容部201に戻され、トナー供給ユニット111内を循環する。
なお、上記の説明では主に負帯電トナーを例にしているが、正帯電トナーを用いることもできる。
次に、液塗布手段104の第1例について図23及び図24を参照して説明する。なお、図23は同手段の模式的構成図、図24は要部斜視説明図である。
記録媒体手段の印写面にトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する塗布液を塗布する場合、塗布液を泡で構成されたフォーム状塗布液とすることで、液のカサ密度を低くすることができ、塗布ローラなどの塗布手段上における塗布液層の層厚の設定が容易に得られ、その結果、記録媒体手段表面(印写面)への微量塗布が可能である。
この記録媒体手段への微量塗布とトナー散りを抑える効果の両立のためには、フォーム状塗布液の泡径範囲が5μmから50μm程度が必要である。
ここで、一般的に、0.5mmから1mm程度の大きな泡の場合、単なる撹拌等により比較的容易に泡を生成可能であり、大きな泡の生成には1秒以下の時間(0.1秒もかからない)で生成することができる。そこで、この所望の泡径よりも大きな泡(目視で観察できる程度の大きさの泡)の生成が容易、且つ、すばやく得ることができる点に着目し、大きな泡からさらに短時間に5μmから50μm程度の微細な泡を生成する。この場合、大きな泡にせん断力を加えることで大きな泡を分泡すると、液状態から微細な泡を起泡させる方法に比べて極めて短時間に所望の大きさの微細な泡が生成できる。
なお、フォーム状の塗布液のかさ密度としては、0.01g/cm3〜0.1g/cm3程度の範囲が好ましい。更に、塗布液は、記録紙等の記録媒体手段上への塗布時にフォーム状となっていればよく、保存容器内でフォーム状である必要はない。保存容器中では気泡を含有しない液体で、容器から液を供給する時点や、印写面に塗布するまでの液搬送経路でフォーム状にする手段を設ける構成が好ましい。これは、保存容器では液体で、容器から液を取り出した後にフォーム状とする構成のほうが、容器の小型化ができるという大きな利点を有するためである。
そこで、この液塗布手段104においては、フォーム状の液を生成する液生成手段301と、生成されたフォーム状の液の膜厚を規制する膜厚規制手段302と、膜厚が規制されたフォーム状の液を記録媒体手段3(ここでは記録紙101で説明する。)の表面に塗布する塗布手段として塗布ローラ303とを有する。
液生成手段301は、塗布液容器311内の液状塗布液310を、送液パイプ312を通じて、搬送ポンプ等の液輸送手段313を用いて気体・液体混合部314へ供給する。この気体・液体混合部314は、空気口315が設けられ、液310の流れとともに、空気口315に負圧が発生し、空気口315から気体が気体・液体混合部314に導入され、液体310と気体が混合し、更に、微細孔シート316を通過することで、泡径のそろった大きな泡を生成する。孔径としては、30μmから100μm程度が好ましく、また、微細孔シート316に限らず、連泡構造の多孔質部材であればよく、孔径30μmから100μm程度を有する焼結セラミックス板や不織布や発泡樹脂シートであってもよい。
なお、大きな泡の生成方法としては、上記の搬送ポンプ等の液輸送手段313より供給された液状塗布液310と空気口315からの空気を羽根状攪拌子で攪拌しながら、液に気泡を巻き込みながら大きな泡を生成させる構成や、上記の液輸送手段313より供給された液状塗布液310に空気供給ポンプ等でバブリングを行って大きな泡を生成する構成などを用いることもできる。
この気体・液体混合部314で生成された大きな泡は送液パイプ312を通じて泡生成手段317に送られる。この泡生成手段317では、大きな泡を分割して2つ以上に分泡化するために、大きな泡にせん断力が加える。つまり、泡生成手段317は、閉じた内側円筒318及び外側円筒319を有し、内側円筒318が回転可能な構成とし、外側円筒319の一部より、大きな泡状塗布液を供給し、内部の回転する内側円筒318と固定又は逆方向に回転する外側円筒319の隙間320(ここが流路となる)を通過させながら、回転する内側円筒318により泡にせん断力を与える。このせん断力により、大きな泡は微細な泡へと変化し、外側円筒319に設けられた泡の出口321より、所望の微細な泡径を有するフォーム状塗布液330を生成する。
ここで、回転する内側円筒318の回転数と円筒の長さにより液搬送速度は決定される。外側円筒319の内径をd1(mm)、円筒長さがL(mm)とし、内側円筒318の外径をd2(mm)とし、回転数をR(rpm)とすると、微細な泡を生成するための液搬送速度V(mm3/秒)は、
V=L×π×(d12−d22)/4/(1000/R)
の式で決まる。
例えば、d1が10mm、d2が8mm、Lが50mm、回転数が1000rpmとすると、液搬送速度は、約1400mm3/秒(1.4cc/秒)となる。A4の紙を塗布するために必要なフォーム状塗布液が3ccであるとすると、液状塗布液から必要量のフォーム状塗布液を生成する立上がり時間は2秒ですみ、極めて素早く、所望の泡径を有するフォーム状塗布液330を生成可能となる。
この場合、内側円筒318にらせん状の溝を設けて泡生成手段317内での液搬送性を向上することができる。
このように、液状塗布液を大きな泡径を有する液へと変化させる機構と、大きな泡にせん断力を加える構成を組み合わせることで、液状塗布液を極めて短時間に5μmから50μm程度の微細な泡径を有するフォーム状塗布液を生成させることができる。
そして、液生成手段301の泡生成手段317で生成されたフォーム状塗布液330は、塗布ローラ303に滴下されて付与され、膜厚制御ブレード(膜厚規制手段)302によって膜厚が所要の厚さに規制されて、塗布ローラ303の回転によって塗布ローラ303表面のフォーム状塗布液330が記録紙101に接触して塗布される。なお、塗布ローラ303に対向して記録紙101を塗布ローラ303側に押し付ける加圧ローラ305が配置されている。
このようにして、塗布ローラ303の周面には、図25に示すようにフォーム状塗布液330の層が形成され、記録紙101に接触する塗布ローラ303の矢示方向(図24参照)への回転によってフォーム状塗布液330が記録紙101に転写塗布される。ここで、泡で構成されたフォーム状塗布液330は、図26に示すように、気泡330bと気泡330bどうしを区切る液体である液膜境界(プラトー境界)330aから構成される。
なお、フォーム状塗布液330の塗布ローラ303上での膜厚を塗布ローラ303の記録紙101への接触圧に応じて変更できるようにすることが好ましい。この場合には、図27にも示すように、膜厚制御ブレード302を回転軸306に固定し、回転軸306を回転することによって膜厚制御ブレード302を揺動させ、膜厚制御ブレード302と塗布ローラ303とのギャップを変化させる。例えば、図27(a)に示すように、膜厚を薄くするときは、塗布ローラ303と膜厚制御ブレード303とのギャップを狭くし、膜厚を厚くするときは、同図(b)に示すように、膜厚制御ブレード303を矢示方向に揺動させて同ギャップを広くする。
また、上記の例では、塗布液容器311から液状塗布液310を泡化する機構に搬送する手段としては搬送ポンプなどの液輸送手段313を用いている。搬送ポンプとしては、ギヤポンプ、ベローズポンプ等があるが、チューブポンプが好ましい。チューブポンプはチューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であるため、塗布液と接する部材はチューブだけであり、塗布液に対し耐液性を有する部材を用いることで、液の汚染やポンプ系部品の劣化がない。また、チューブを変形させるだけなので、液が起泡せず、搬送能力の低下を防止できる。
また、塗布ローラ303上におけるフォーム状塗布液330の膜厚制御(規制)は、膜厚制御ブレード302に代えて、ワイヤーバーを用いることもできる。ワイヤーバーを膜厚規制手段(膜厚制御手段)として用いることで、ブレード302に比べ、塗布ローラ303面の軸方向のフォーム状塗布液330の膜厚均一性を向上させることができる。
次に、液塗布手段104の第2例について図28を参照して説明する。なお、図28は同手段の模式的構成図である。
この例では、塗布手段として、塗布ローラに代わりに、塗布ベルト340を用いている。塗布ベルト340としては、例えばシームレスニッケルベルトやシームレスPETファイルなどの部材を用いる。この塗布ベルト340はローラ341〜343間に掛け回されて矢示方向に周回移動し、ローラ341、342間で記録媒体手段としての記録紙101に接触する。また、記録紙101を介して塗布ベルト340に対向する位置に、ローラ346、347間に掛け回された加圧ベルト345を配置して、記録紙101を塗布ベルト340側に押し付けるようにしている。
この構成でも、液生成手段301で生成したフォーム状塗布液330を塗布ベルト340上に滴下して、ブレード302と塗布ベルト340のギャップを調整し、塗布ベルト340上のフォーム状塗布液330の層膜厚を制御した後、記録紙101の印写面にフォーム状塗布液330を塗布する。
このように、塗布ベルトを用いる構成では、ニップ幅を容易に広くすることが可能となり、加湿時間を十分稼ぐことが可能となる。なお、塗布手段は塗布ベルトとし、加圧側をベルトではなく加圧ローラとする構成とすることも、また、塗布手段は塗布ローラとし、加圧側をベルトとする構成とすることもできる。
ここで、上述した塗布ローラや塗布ベルト等の塗布手段の表面において、トナーの飛び散りを抑えた高画質画像を達成するための十分な効果を得るフォーム状塗布液は連続したフォーム状態であることが好ましい。
つまり、図29に示すように気泡330bを含む液体330aが不連続な状態では、記録媒体手段への転写時の加湿効果、記録媒体手段へのフォームの広がりはあるものの、トナーの飛び散りに対してさらなる効果を得るためのより好ましい状態は、図30に示すとうに、塗布手段の表面において連続したフォーム状態が維持されていることである。そして、この連続したフォーム状態は塗布手段表面の80%以上であることがより好ましい。
この連続したフォーム状態を形成するためには、塗布手段(塗布ローラや塗布ベルト)の表面に親水性、粗面化等の処理を施すのが良い。親水性膜としては、例えば厚さ5μm程度のシランカップリング剤層の形成、光触媒を酸化チタンとする厚さ5μm程度の親水性膜の形成、またはアルミローラ表面にサンドブラスト加工を施した粗面化による親水性面としても良い。粗面化の場合は、泡径>面粗さ、の関係が好ましいため、平均面粗さは少なくとも5μm以下とする。
また、連続したフォーム状態を形成し、且つ塗布手段表面において時間が経過しても泡がはじけない状態(泡沫安定性に優れる)を保つことで、記録媒体手段に転写後も連続した泡状態(フォーム状態)を保つことになり、トナーの飛び散り抑制効果が大きいことが判った。そのための塗布液処方としては、増泡剤を含むことが好ましい。具体的には、塗布液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが好ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、泡沫安定性には(1:1)型が適することが確認された。
次に、塗布液の液処方について説明する。フォーム状の塗布液は、起泡剤を含有した液体中に気泡を含有した構成であり、ここでは、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有している。起泡剤を含有した液体は、気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成するフォーム状とするため、増泡剤を有することが好ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが好ましい。
起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が好ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する塗布液の表面張力を下げ、塗布液を発泡しやすくするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなるまた、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、塗布液には水を含有することが好ましい。
脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が好ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する塗布液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5℃〜15℃までの低気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において起泡安定を可能とし、また、塗布液長期放置中の脂肪酸塩の塗布液中分離を防止することができる。
飽和脂肪酸塩に用いる脂肪酸としては、炭素数12、14、16及び18の飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が適する。炭素数が11以下の飽和脂肪酸塩は臭気が大きくなり、当該塗布液を用いるオフィス・家庭で用いる画像形成機器に適さない。また、炭素数19以上の飽和脂肪酸塩は、水に対する溶解性が低下し、塗布液の放置安定性を著しく低下させてしまう。これらの飽和脂肪酸による飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。
更に、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が好ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、塗布液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
また、上記飽和脂肪酸塩又は不飽和脂肪酸塩において、当該塗布液の起泡剤として用いる場合、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアミン塩であることが好ましい。塗布装置に電源を投入後、素早く塗布可能な状態にすることは塗布装置の商品価値として重要な要素である。液塗布手段104(ここでは塗布装置)において塗布可能な状態とするためには、塗布液が適切なフォーム状となっていることが必須であるが、上記の脂肪酸塩は素早く起泡することで、電源投入後塗布可能な状態を短時間でつくることができる。特に、アミン塩とすることで、塗布液にせん断力を加えたときに最も短時間で起泡し、フォーム状塗布液を容易に作製することが可能であり、塗布装置への電源投入後の塗布可能な状態が短時間で可能となる。
トナー樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含む。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
また、軟化剤については、人体に対する安全性の観点から、その急性経口毒性LD50が3g/kgよりも大きい、更に好ましくは5g/kgであることが好ましい。脂肪族エステルは、化粧品原料として多用されているように、人体に対する安全性が高い。
更に、記録媒体手段に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
本発明における塗布液において、好ましくは、上記の脂肪族エステルは、飽和脂肪族エステルを含む。上記の脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、飽和脂肪族エステルは、人体に対する安全性が高く、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
本発明における塗布液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
本発明における塗布液において、好ましくは、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルの一般式は、
R5(COOR6−O−R7)2
で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。
即ち、上記の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルは、一般式R5(COOR6−O−R7)2で表される化合物を含み、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基であり、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基であり、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基である場合には、トナーに含まれる樹脂に対する溶解性又は膨潤性を向上させることができる。また、上記の化合物の臭気指数は、10以下であり、上記の化合物は、不快臭及び刺激臭を有さない。
上記の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として塗布液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
上記の樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本発明における塗布液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。
また、フォーム状となった塗布液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、フォーム状となった塗布液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20mN/m程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30mN/mであると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、フォーム状となった塗布液の表面張力は、20〜30mN/mであることが好ましい。
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30mN/mとすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、フォーム状の塗布液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
次に、本発明における塗布液の具体例について説明する。
[実施例1]
<塗布液の処方>
希釈溶媒:イオン交換水 53wt%
軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES) 10wt%
炭酸プロピレン 20wt%
増粘剤:プロピレングリコール 10wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM)
0.5wt%
起泡剤:パルミチン酸アミン 2.5wt%
ミリスチン酸アミン 1.5wt%
ステアリン酸アミン 0.5wt%
分散剤:POE(20)ラウリルソルビタン(花王 レオドールTW−S120V)
1wt%
ポリエチレングリコールモノステアレート(花王 エマノーン3199)
1wt%
なお、分散剤は、軟化剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。
<液塗布手段:塗布装置>
〔大きな泡生成手段〕
液保存容器:PET樹脂からなるボトル
液搬送ポンプ:チューブポンプ(チューブ内径2mm、チューブ材質:シリコーンゴム)
搬送流路:内径2mmのシリコーンゴムチューブ
大きな泡を作るための微細孔シート:#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40μm)
〔大きな泡から微細な泡を生成する手段〕
2重円筒の内側円筒は、回転軸に固定され、回転駆動モータにより回転する。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒内径:10mm・長さ120mm、内側円筒外形:8mm・長さ100mmとした。回転数は、1000rpmから2000rpmの範囲で可変とした。
〔塗布液付与手段:塗布手段〕
上記の微細な泡を生成する手段を用い、フォーム状の塗布液を作成しブレードに供給する構成とした。ブレードと塗布ローラとのギャップは25μmと40μmの二通り実施した。
加圧ローラ:アルミ合金製ローラ(φ10mm)を芯金とし、外径Φ50mmのポリウレタンフォーム材(イノアック社商品名「カラーフォームEMO」)を形成したスポンジローラ
塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30mm)
膜厚制御ブレード:アルミ合金製支持板に厚み1mmの並板ガラスを接着。ガラス面を塗布ローラ側に向け、10μmから100μmの範囲で塗布ローラとガラス面の隙間を制御できるようにした。
以上の構成により、図1に示す画像形成装置によりトナー制御手段4に制御パルスを印加して画像形成を行った。ここで使用したトナー制御手段4は図9に示す構成のものを用いた。記録媒体手段(記録紙101)の搬送タイミングで、液搬送ポンプ(液輸送手段313)を駆動し、塗布液容器311から液状塗布液をくみ上げ、液流路312を通過させながら、大きな泡を生成する部位と泡を微細にする部位に塗布液を通過させると、液排出口(供給口321)から泡径5μmから30μmの微細な泡を有するフォーム状塗布液を塗布ローラ303に供給することができ、フォーム状塗布液のかさ密度はおおよそ0.05g/cm3であった。その結果、環境湿度30%の条件においてもトナーの飛び散りが無い非常に高画質の画像が得られ、同時に加熱定着に必要な供給エネルギーは塗布液を使用しない場合に比較して、この場合は1/2以下に低減することを確認した。
次に、塗布液処方及び液塗布手段(塗布装置)の第3例について説明する。
[具体例1]
<塗布液の処方>
〔軟化剤を含有する液体〕
希釈溶媒:イオン交換水 59wt%
軟化剤:コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES)
5wt%
浸透剤:ポリエーテル変性シリコーン
(東レダウコーニングシリコーン SS2802)1wt%
増粘剤:プロピレングリコール 30wt%
増泡剤:ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド 2wt%
発泡剤:アルキル硫酸ナトリウム 2wt%
pH調整剤:トリエタノールアミン 1wt%
上記成分比にて混合攪拌し溶液を作製した。
〔高圧密封容器への封入〕
塗布液を含有する液体 95wt%
液化ガス(LPG) 5wt%
上記成分比にて大気開放用のアクチュエータ部とノズル部を有する密封容器に混合し、攪拌によりO/Wエマルジョン液を作製した。
<液塗布手段:塗布装置>
図31に示すような、塗布液と液化ガス又は圧縮性ガスを混合した状態で封入した塗布液高圧密封容器401からアクチュエータ406によって塗布液を噴出してガス膨張により気泡を混合させてフォーム状の塗布液を生成し、チューブ404を介してブレード402に供給する構成とした。ブレード402と塗布ローラ403とのギャップは75μmに設定した。なお、塗布ローラ403に対向して加圧ローラ405を配置している。
ここで、
加圧ローラ:アルミ製ローラ(φ30)
塗布ローラ:PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30)
ブレード:SUS製シート
紙搬送速度:150mm/s
加圧ローラと塗布ローラ間の加重:片側196N
とした。
そして、高圧密封容器401から噴射しフォーム状となった塗布液を、チューブ404を通してブレード402と塗布ローラ403の隙間に供給した。フォーム状の塗布液のかさ密度は0.06g/cm3であった。
また、塗布液中の気泡は30μm〜100μmの範囲で分布し、70μm付近の気泡が多い状態であり、塗布ローラ面に対し複数層の気泡層となっていた。
以上の構成により、図1に示す画像形成装置によりトナー制御手段4に制御パルスを印加して画像形成を行った。ここで使用したトナー制御手段4は図9に示す構成のものも用いた。記録媒体手段の搬送タイミングで、高圧密封容器401から噴射しフォーム状となった塗布液を塗布ローラ403に供給した。このときのフォーム状塗布液のかさ密度はおおよそ0.05g/cm3であった。その結果、環境湿度30%の条件においてもトナーの飛び散りが無い非常に高画質の画像が得られ、同時に加熱定着に必要な供給エネルギーは塗布液を使用しない場合に比較して、この場合は1/2以下に低減することを確認した。
次に、液塗布手段(塗布装置)の第4例について図32を参照して説明する。
ここでは、塗布ローラ413は表面が多孔性であり、このローラ413に接触して塗布液を含浸させた塗布液含浸ローラ414を設けている。塗布液含浸ローラ414が塗布ローラ413に接触することで表面に塗布液を常時保持が可能で、記録媒体手段(記録紙101)との加圧接触で記録媒体手段に塗布液の塗布を行う。
塗布液含浸ローラ414はアルミ製ローラ表面に2〜3mm厚さのスポンジフォーム体層を成形したもので、下部がパン415に収容されるフォーム状塗布液に接しており、図示しない液面検知センサの検出結果に基づいて塗布液収容容器421から送液チューブ424を介してパン415への塗布液の補充を行う。なお、ここでは、塗布ローラ413を使用しているが、塗布液含浸ローラ414が記録媒体手段(記録紙や中間転写記録媒体)と直接接触する構成とすることもできる。
次に、液塗布手段の第5例について図33を参照して説明する。
ここでは、塗布液収容容器431からミスト発生タンク432に塗布液を供給し、ミスト発生タンク432ではPZTなどを用いた超音波加振器433によって塗布液のミストを形成し、ブロワ434で記録媒体手段(記録紙101や中間転写記録媒体)の下方からミスト435を噴出させて記録紙101などの印写面に塗布する。なお、ミスト発生タンク432への塗布液収容容器431から塗布液の補充は図示しない液面検知センサの検出結果に基づいて行うようにしている。
これらの液塗布手段は、別途設けた環境湿度を検出する検出手段の検出結果に基づいて、環境湿度が低い場合のみ動作する構成とすることで、記録媒体手段表面を必要以上に加湿することなく、効率的な画像形成装置を実現することができる。
また、上記の説明では、トナー担持体表面に設けた複数の電極の電界によってトナーをクラウド化しトナーの飛翔を制御する構成で説明しているが、これに限らずトナー担持体が従来方式の磁性キャリアと非磁性トナーから成る二成分記録剤、または非磁性トナーから成る一成分記録剤を用いたトナー供給ユニットのトナー担持体表面からトナーを直接飛翔制御する構成であっても同様な効果が得られる。