以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態について図1の模式的構成図を参照して説明する。
この実施形態においては、トナーTを飛翔させ、クラウド化した状態で担持するローラ状のトナー担持体1と、トナーが付着させられる記録媒体手段3と、トナー担持体1と記録媒体手段3との間に配置され、複数のトナー通過穴41を有するトナー制御手段4と、トナー担持体1に対向する位置に配置され、記録媒体手段3にトナーを移動させる方向であってトナー担持体1側から飛翔させるトナーを付着させるバイアス電圧を印加する対向電極手段(背面電極)5とを備えている。
トナー担持体1は、表面側にトナーTを搬送する方向(ここでは周方向)に所定の間隔でトナーTを搬送する方向と直交する方向(ここでは軸方向)に沿って形成された所定ピッチで設けられた複数の電極11を有し、このトナー担持体1の各電極11には、電圧印加手段電源6から時間によって電位の異なる平均電位Vsのパルス電圧(クラウドパルス)が印加される。これにより、トナーTをクラウド化する手段を構成している。
例えば、0.5KHz〜7KHzの周波数のパルス電圧が印加され、各電極11、11の間隔はファインピッチに設けられているため、電極11、11間で強い電界が形成される。そのため、トナーTの帯電極性に対して反発する電位にある電極11表面からトナーTは勢いよく飛翔し、飛翔したトナーTは吸引する極性の電位が印加されている電極11に引き寄せられ、パルスが切り替わることでパルス周波数に応じた上下方向の飛翔を繰り返し、トナーTがクラウド化された状態になる。なお、パルスの周波数が高い領域では、上方高くに飛翔したトナーTは、飛翔している間にパルスが切り替わり、電極11表面に戻る前に再び上方に飛翔する場合もある。
トナー制御手段4は、トナーTが通過可能なトナー通過穴(開口)41が複数設けられ、このトナー制御手段4のトナー供給側面(トナー担持体1側の面)のトナー通過穴41周辺にはリング状に制御電極42が設けられ、更にトナー通過穴41に対し制御電極42の外側に絶縁領域を介して複数のトナー通過穴41に共通の共通電極43が設けられている。ここで、トナー担持体1とトナー制御手段4との最も近接した距離がdであり、トナー制御手段4の複数のトナー通過穴41の配列方向におけるトナー通過穴41の中心を通る線上での共通電極43の間隔がdtであるとき、d>dt、の関係にある構成としている。
このトナー制御手段4の制御電極42には制御パスル発生手段7から例えば図2に示すような制御パルスVcが印加される。この場合、トナー通過穴41をトナーTが通過可能な状態(ON状態)にするときには制御電極42に電圧Vc-onが印加され、トナーTが通過不可能な状態(OFF状態)にするときには制御電極42に電圧Vc-offが印加される。また、共通電極43には常時電源手段8から電圧Vgが印加される。トナー制御手段4の制御電極42は、通過穴41周囲だけでも動作が可能であるが、通過穴41の内壁面又は通過穴41の内壁面とトナー担持体1側の周囲の両方に設けたものであってもよい。
記録媒体手段3側には、記録媒体手段3の背面に、トナー制御手段4を通過したトナーTを記録媒体手段3に付着させるためのバイアス電圧が印加されるバイアス電圧印加手段となる対向電極手段5が配置され、トナー制御手段4を通過したトナーTを記録媒体手段3に付着させるため、バイアス電源手段9からのバイアス電圧Vpが印加される。
この記録媒体手段3は、この上に一度画像を形成し、その後紙に転写する中間記録媒体、あるいは、記録紙であってもよい。この記録媒体手段3に対するバイアス電圧Vpの印加は、例えば記録媒体手段3の背面側(トナー担持体1と反対側面)に対向電極手段(背面電極)5を配置し、この背面電極5上面に記録媒体手段3を通過させる構成、あるいは、中間記録媒体であれば内部に対向電極手段を埋め込んで一体化した構成(記録媒体手段側の電極を内部電極とする構成)又は中間記録媒体の背面に対向電極手段(背面電極)5を配置した構成とすることができる。
ここで、トナー担持体1表面のトナーをクラウド化する手段として、トナー担持体1表面に設けられた複数の電極11を備え、各電極11に電圧Vsを印加する。このとき、隣接する電極11相互の間でトナーTを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧を印加する2相の電極間ピッチp(又は、n本毎の各電極11にn相の位相電圧を印加するn相の電極間ピッチ)に対し、トナー担持体1表面とトナー制御手段4のトナー担持体1側面(トナー担持体1側の表面の意味)の間の距離dが大きくなる関係(p<d)でトナー担持体1とトナー制御手段4とを配置している。
つまり、p>dの関係ではトナー担持体1の電極11表面に形成される飛翔電界がトナー制御手段4のトナー担持体1側表面のON/OFF電界と干渉を起こし、後述するトナー制御手段4のループ電界が乱れるためである。そのため、制御電極42表面へのトナー付着の発生が起きやすくなる。p<dの条件においては、制御電極42へトナーが付着することを確実に防止でき、連続したドットを印写しても濃度が変化することなく、良好な画像が得られる。
次に、トナー制御手段4の具体的構成の一例について図3を参照して説明する。なお、
図3(a)は同トナー制御手段の印写面側の説明図、(b)は同じくトナー供給側面の説明図である。
この例は、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体11側)面に、トナー通過穴41を囲む形で10〜100μm幅のリング状の制御電極42を設け、この制御電極42から20〜50μmの間隔を置いて、つまり、絶縁基材45で形成される絶縁領域を介して、制御電極42と同一面に、複数のトナー通過穴41に共通のバイアス電圧Vgを印加する共通電極43を設けた構成である。
トナー通過穴41は、形成するドット径のサイズで決定するが直径φ30μm〜φ150μmである。制御電極42は個々にトナーTの通過をON、OFF制御するためのドライバ回路(駆動回路)に接続するためのリードパターン42aが接続され、また共通電極43は共通のリードパターン43aに接続されている。また、絶縁基板45の印写面側(記録媒体手段3側の面)はトナー通過穴41が開口した状態である。
このように、トナー制御手段の共通電極は、制御電極の外側を絶縁領域を介してリング状に囲む形状である構成とすることで、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成する電気力を各トナー通過穴独立の電気力線として形成できるため、マルチ駆動(複数のノズル通過穴からトナーを飛翔させる駆動)のときの相互干渉(他のトナー通過穴の状態を受けること)が発生しない。
また、トナー制御手段の制御電極と共通電極を同一面上形成することで、一回の製造プロセスで同時に形成でき、精度よく低コストに電極を作ることができる。
また、トナー制御手段4の具体的構成の他の例について図4を参照して説明する。なお、図4(a)は同トナー制御手段の印写面側の説明図、(b)は同じくトナー供給側面の説明図である。
この例は、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体11側)面に、トナー通過穴41を囲む形で10〜100μm幅のリング状の制御電極42を設け、この制御電極42から20〜50μmの絶縁領域の間隔を置いて複数のトナー通過穴41に共通のバイアス電圧Vgを印加する共通電極43が空いたスペース全体を覆うようにベタ状に設けられた構成としている。
このように、トナー制御手段の共通電極は、制御電極の外側に絶縁領域を介してベタ状に設けられている構成、つまり、共通電極を制御電極の外側領域全体にわたり形成することで、記録媒体手段側のバイアス電位の電界をシールドすることができ、かつ制御電極へのトナー付着低減、およびトナーの利用効率向上を図れる。
このようなトナー制御手段4の具体的製造方法は、基材45である絶縁性部材として、コスト、製造プロセスの観点から樹脂フィルム、例えば、ポリイミド、PET、PEN、PES等で、厚さは30μm〜100μmのものを使用し、まずフィルム面に0.2μm〜1μmのAl蒸着膜を形成する。次に、フォトリソ工程で、フォトレジストをスピンナで塗布後、プリベーク、マスク露光を行ない、現像した後、フォトレジストの加熱硬化を進めた後、Alエッチング液によるAlのパタンニングを行う。フィルムの裏面にも電極パターンが必要な場合は上記と同様に可能であるが、穴加工用のマスクとして使用するパターンを裏面に形成してもよい。トナー通過穴41となる貫通穴の形成は、パターン形成後プレスによる機械的な加工、または裏面に形成したパターンを利用したエキシマレーザー加工、またはスパッタエッチング加工等のドライエッチング加工によれば、位置ずれの無い高精度な穴加工が可能である。
このように構成した画像形成装置においては、トナー担持体1の電極11に対して平均電位Vsのパルス電圧を印加することによって、トナー担持体1上でトナーTが飛翔してクラウド化され、トナー担持体1の回転又は進行波電界による搬送によってトナーTが搬送される。一方、記録媒体手段3側の背面電極5に印写バイアス電圧Vpが印加される。
この状態で、トナー制御手段4の共通電極43に対して電圧Vgを印加し、制御電極42に対してトナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にするときには図2に示すON時の電圧Vc-onを印加し、トナーTがトナー通過穴41を通過不可能な状態(OFF状態)にするときには図2に示すOFF時の電圧Vc-offを印加する。
この場合、これらの各電極11,5,42,43に対する電圧を後述するように設定することで、トナー制御手段4をトナー担持体1のトナーTが記録媒体手段3に向かって通過可能な状態にするときに、記録媒体手段3側とトナー制御手段4の共通電極53との間にトナーの通過を制御する制御電極42を迂回してループ状に電気力線10が形成される。
これにより、トナー担持体1上でクラウド化しているトナーは電気力線10による電界に乗ってトナー制御手段4のトナー通過穴41を通過して記録媒体手段3上に着弾する。したがって、画像に応じてトナー制御手段41の各トナー通過穴41をON/OFF制御(開閉制御)することで、記録媒体手段3上に直接トナー画像を形成することができる。そして、記録媒体手段3側とトナー制御手段4の共通電極43との間にトナーの通過を制御する制御電極42を迂回してループ状に電気力線10が形成されることから、制御電極42やトナー通過穴41周辺へのトナーの付着が低減され、またトナーをクラウド化していることでトナーの利用効率が向上する。
そこで、トナー担持体1の電極11に対するパルス電圧の平均電位Vs、記録媒体手段3側のバイアス電圧Vp、トナー制御手段4の制御電極42に対する制御パルス電圧Vc、共通電極43に対する電圧Vgについて、図5をも参照して説明する。なお、図5は、トナー担持体1、トナー制御手段4、記録媒体手段3の二次元断面電界強度分布のシミュレーション結果に基づくトナー通過穴を通過する電気力線を示す説明図である。
トナー担持体1の電極11には平均電位Vsのパルス電圧(電位が時間的に変動する電位)を印加する。この場合、バイアス電圧の波高値は電極ピッチ、使用するトナー等に応じて設定する。例えば、±60〜±300Vpp(ppはピーク−ピーク)の範囲内で設定することが好ましく、ここでは、±150Vpp、DC電圧成分0Vの電圧を印加している。したがって、トナー制御手段4に対するトナー担持体側1側のDCバイアスとしては0Vであり、平均電位Vs=0Vとなる。なお、トナー担持体1とトナー制御手段4の間隔dは0.3mmとしている。
また、この例では、トナー制御手段4のトナー通過穴41の直径φ100μm、リング状の制御電極42の穴中心方向の幅は30μm、制御電極42は共通電極43の間隔は50μmである。
このトナー制御手段4の共通電極43へのバイアスVgはDC−125Vであり、トナー担持体1へのパルス電圧の平均電位Vsとの関係はトナーTを常にトナー担持体1側へ向ける方向のバイアスであるため、この共通電極43面へのトナー付着はない。
そして、トナー制御手段4の制御電極42には、トナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にする場合、制御パルス電圧Vc-onは+50V、トナーTを通過させる時以外の阻止状態の(通過不可能な状態にする)場合の電圧Vc-offは−125Vとしている。記録媒体手段3の背面電極5へのバイアス電圧Vpはトナー制御手段4と記録媒体手段3との間隔にもよるが、例えば+200〜+1500VのDC電圧を印加すればよい。ここでは、トナー制御手段4と記録媒体手段3との間隔0.3mmとしてDC+300Vを印加し、マイナス帯電トナーを記録媒体手段3の表面にを引き寄せる電位勾配としている。
各電極11、42,43、5に印加する電位の関係を以上のように設定することで、マイナスに帯電したトナーを、トナー通過穴5を通過可能な状態にする場合においては、最もプラス側に電位が高い記録媒体手段3側の電極5から出る電気力線のうち、トナー制御手段4のトナー通過穴41を通る電気力線の多くが、トナー通過穴41を通過した後、一番電位の低い共通電極43に入ることになる。このとき、近接した距離にあるトナー制御手段4の制御電極42と共通電極43にも175Vの電位があるため、その間にも強い電気力線が生じる。
そのため、図5(a)に示すように、トナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にしたときには、先の記録媒体手段3側の電極5からトナー通過穴41を通る電気力線10は、制御電極42に入ること無く(制御電極42を迂回して)、−125Vと最も電位の低い共通電極43に多くが入るため、ループ状に拡がった形状となる。つまり、記録媒体手段3側とトナー制御手段4の共通電極43との間に制御電極42を迂回してループ状に電気力線10が形成される。
したがって、トナー担持体1上でクラウド状態にあるマイナス帯電トナーTがこの電気力線10に沿ってトナー通過穴41を通過し、記録媒体手段3の表面に多くのトナーTが移動することができる。
このとき制御電極42には+50Vが印加され、トナー担持体1の0Vとの関係は、トナーTを制御電極42へ吸着する関係にあるため、本来であればこの+50Vが印加されている間に制御電極42表面にトナーが付着するはずであるが、図5(a)のシミュレーションの結果から分かる様に、+50Vが印加されている制御電極42上方を記録媒体手段3側電極からトナー通過穴41を通って共通電極43に入る電気力線10が覆っているため、制御電極41へトナーTが付着することが防止される。
一方、トナーTがトナー通過穴41を通過不可能な阻止状態(OFF状態)にした場合、制御電極42には−125Vが印加され、共通電極43に対する電位と同じ電位であり、トナー担持体1の電位0Vとの関係は、トナーTをトナー担持体1側に反発する関係であり、トナー制御手段4へのトナーTの付着はないし、図5(b)に示すように記録媒体手段3側電極からの電気力がトナー通過穴41を通り抜ける電気力線もないため、トナーTがトナー通過穴41を通過することもなく、地汚れ画像は発生しない。なお、阻止状態(OFF状態)の制御電極42への印加電圧は共通電極43の電位と同じ電位である必要はなく、よりマイナス側の電位であってもトナーTの通過を阻止する(OFF状態にする)ことはできる。
このように、トナーを飛翔させ、クラウド化して担持するトナー担持体と、トナーが付着させられる記録媒体手段と、トナー担持体と記録媒体手段との間に配置された複数のトナー通過穴を有するトナー制御手段と、を備え、トナー制御手段は、トナー担持体側表面に、トナー通過穴の周囲及び穴内壁の少なくともいずれかにトナーの通過を制御する制御電極が設けられ、この制御電極の外側に複数のトナー通過穴に共通の共通電極が設けられ、トナー制御手段のトナー通過穴をトナー担持体のトナーが記録媒体手段に向かって通過可能な状態にするとき、記録媒体手段側とトナー制御手段の共通電極との間に制御電極を迂回してループ状に電気力線が形成されることにより、トナーを吸引する電位が印加される制御電極表面やその周囲へのトナー付着を大幅に低減でき、トナーの通過のオン/オフの制御を安定して行うことができるとともに、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成される電気力線はトナー担持体側ではトナー通過穴の径より大きく広がり、クラウド化されたトナーを広範囲に捕獲して印写面側に向けて飛翔させることが可能となってトナーの利用効率が上がり、印刷濃度の確保、印刷速度の向上を図れる。
また、各電極に印加する電位の関係として、トナー担持体1の電極11のDCバイアスとして−50V、パルスの波高値を+150V〜−150Vとして、±150Vpp−50VDCを印加すると、平均電位Vsは−50Vとなる。そして、トナー制御手段4の制御電極42のトナー通過ON時の電位Vc-onが0V、トナー通過OFF時の電位Vc-offが−175Vであっても、上述した例と等価である。この場合、制御電極42に印加する電圧Vcが0〜−175Vの一極性電圧のON、OFFであるため、ドライバ回路の構成が簡単になりコスト的にも有利である。
このように、上述したトナー通過ON時に各電極に対して印加する電位の関係を、次のように設定することで、記録媒体手段側とトナー制御手段の共通電極との間に制御電極を迂回してループ状に電気力線を形成することができる。
つまり、トナー担持体1の電極11に対し時間的に変動する平均電位Vsのパルス電圧を印加し、トナー制御手段4の制御電極42に対しトナーがトナー通過穴41を通過可能な状態にするときに電圧Vc-onを、トナーがトナー通過穴41を通過不可能な状態にするときに電圧Vc-offを印加し、共通電極43に電圧Vgを印加し、トナー制御手段4を通過したトナーを記録媒体手段3に導いてトナーを付着させるために記録媒体手段3側にバイアス電圧Vpを印加するとき、
トナーがトナー通過穴41を通過可能な状態にするときの各電位の関係は、
Vp>Vc-on>Vs>Vg
とし、トナーが負帯電トナーの場合はバイアス電圧Vpがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合はバイアス電圧Vpがマイナス電位側に高くなる設定とする。
また、この場合、トナーがトナー通過穴41を通過不可能な状態にするときの各電位の関係は、
Vs>Vg であり、且つ、Vs>Vc-off
であって、トナーが負帯電トナーの場合は平均電位Vsがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合は平均電位Vsがマイナス電位側に高くなる設定とすることが好ましい。
各電極11、42、43、5に対する電位の関係を上述した関係に設定することにより、記録媒体手段側のバイアス電位とトナー担持体の電位間に直接形成される電気力線が低減され、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に電気力を形成することができ、これにより、トナーを吸引する電位が印加される制御電極へのトナー付着を大幅に低減できて、制御電位が安定する。また、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成される電気力線は、トナー供給側ではトナー通過穴の径より大きく広がるため、クラウド化されたトナーを広範囲に捕獲して印写面側に向けて飛翔させることが可能となり、トナーの利用効率が上がり、印刷濃度の確保、印刷速度の向上を図ることができる。さらに、トナー制御手段の共通電極はトナーを常に反発する関係の電位にあるため、トナーの付着が発生することがなく、共通電極の電位を一定に保つことが可能となり信頼性の高い画像形成装置を実現できる。
さらに、高速印刷のためにトナー担持体1表面のトナー量が多くなった場合、また帯電電荷量が大きいトナーを使用して印刷を行う場合は、トナーが有する電荷によるトナー電位を無視できなくなり、各電極に印加する電位決定に考慮が必要となる。
具体的に説明すると、トナー担持体1表面の供給トナー量m/Amg/cm2に対するトナー電位の変化は図6に示すようになる。ここでは、トナーはマイナスに帯電したトナーの例であり、トナー担持体1表面の単位面積当たりのトナー量が増加するに従って、制御電極42側からみた表面電位はマイナス電位に上昇する。そして、供給したトナーがトナー担持体1表面に単に付着したままの電位Voに対して、トナー担持体1表面の電極に電圧を印加してトナーが電極11相互の電気力線に沿って上下の飛翔を繰り返すクラウド状態の電位Vtは大きく上昇する。これは、トナーがトナー担持体1表面より上方の空間にある方が、個々のトナーの周囲に対する結合静電容量が小さくなり、その結果電位が上昇するためである。
このクラウド状態のトナー電位Vtの測定は、トナー担持体1表面の各電極11にパルス電圧を印加しながら、供給したトナーをクラウド状態にしてその上方に表面電位計を設定することで、容易に測定することができる。具体的には、クラウド化を起こすパルスを印加して、後述する一成分、または二成分ローラからトナーを供給しながらトナー担持体1を回転、又は進行波パルスでトナーを搬送し、トナー制御手段4が設定される位置にてトナー担持体1表面から2mm程度上方に表面電位計を設置して測定する。図6の結果は、帯電電荷量が−15〜−25μC/gのトナー供給した場合のVo、そのトナーを飛翔高さが表面近傍から200μmの範囲でクラウド状態にした場合のトナー電位Vtの場合の例である。
この図6に示す各供給トナー量においてトナー制御手段4によりトナーの通過のON/OFF制御を行って印刷を行った結果、トナー制御手段4の電極42、43表面に付着したトナー量を評価した結果を図7に示している。この図7の結果において、供給トナー量が少ない領域は電極42、43へのトナー付着はないが、供給トナー量が増加して0.9mg/cm2はトナー電位Vtが−80Vとなり、制御電極42へのトナー付着が起き始める。
これは、等価的にトナー担持体1の電位がマイナス側に電位上昇してトナー制御手段4の共通電極42との電位差が小さくなった結果、記録媒体手段3側電極から出てトナー通過穴42を通る電気力線のうち、トナー担持体1に直接入る電気力線が増加し、共通電極43へ入るループ状の電気力線が減ったためである。すなわち、ループ状の電気力線が少なくなると、飛翔エネルギーの高いトナーがループ状の電気力線に乗って印写面の方向に飛翔することなく、ON電圧が印加されている制御電極42まで飛翔するためである。
さらに、供給トナー量が増加して1.2mg/cm2超えると、トナー電位Vtは−120V以上の値となる。この領域では、トナー制御手段4の共通電極43のバイアス電位Vg(−125V)との電位差がなくなり、飛翔エネルギーを有するトナーが共通電極43まで到達し始めてトナー付着が起きた結果である。また、制御電極42へのトナー付着量も増えてくる。
これらのトナー付着は、定期的な電極クリーニングの頻度を上げることで、使用できないことはないが、画質低下が発生する。トナー付着が発生しない条件であれば、連続印刷においても画像濃度が低下することなく、信頼性の高い画像記録装置が可能となる。
そこで、トナー量が多い場合、また帯電電荷量が大きいトナーを使用して画像を形成する場合は、各電極に対する電位を、次の条件で設定することで、電極へのトナー付着回避、トナー利用効率の向上で画像濃度が低下することなく高速印刷が可能になる。
すなわち、電荷を有するトナーがトナー担持体1表面から飛翔してクラウド状態にある制御電極42側からみたトナー電位をVtとしたとき(その他は前記の条件と同じ)、トナーの通過をONさせる場合の各電位の関係は、
Vp>Vc-on>(Vs+Vt)>Vg
と、負帯電トナーの場合はVpがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合はVpがマイナス電位側に高くなる設定とする。
また、トナーの通過をOFFさせる場合の各電位の関係は、
(Vs+Vt)>Vg であり、且つ、(Vs+Vt)>Vc-off
とし、負帯電トナーの場合は(Vs+Vt)がプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合は(Vs+Vt)がマイナス電位側に高くなる関係に設定する。
各電極11、42、43、5に対する電位を上記のように設定する、つまり、トナー供給側の電位として、トナー担持体表面のトナーが飛翔することによる電位も考慮して各電極電位を適正に設定することで、印刷速度が速い供給トナー量が多い場合、またトナーの帯電電荷量が大きい場合においても、制御電極などへのトナー付着の低減、トナー利用効率の向上を図れ、高濃度、高速印刷の画像形成装置を実現することができる。この場合、トナーをクラウド化していない(パルスを印加していない)状態でも、上述した電位の関係に設定することで、制御電極などにトナー付着が発生しないため、信頼性が向上する。
ところが、更に実験を重ねた結果、各電極11、42、43、5に対する電位を上記のように設定したにもかかわらず、記録媒体手段3へのトナーの付着量には電位条件によって違いが発生することが判明した。具体的には、Vp>Vc-on>(Vs+Vt)>Vg、の関係を保っていても、共通電極43に印加する電位(電圧)Vgが低すぎる場合、トナーの付着量が少なくなってしまうことが確認された。
共通電極43の電位Vgの作用としては、前述したように、バイアス電位Vpとの間でループ電界を形成するとともに、トナー担持体1に担持されたトナーに対し、付着させない方向の電位(マイナストナーの場合マイナスに大)を印加することで、制御電極42の周辺部への汚れを防いでいる。トナーと同極性の大きな電位Vgを印加した場合、トナークラウドのトナー制御手段4側への広がりは抑えられる。これにより、汚れの抑制が可能であるのだが、トナークラウドの広がりを過剰に抑制すると、ループ電界により捕らえられるトナーの数も減少し、記録媒体手段3へのトナーの付着量が低減する。
具体的には、トナー担持体1上のクラウドトナーをトナー制御手段4側から見た電位が(Vs+Vt)であり、クラウド化しているトナーがトナー制御手段4側に広がるには、トナー担持体1側から見たトナー制御手段4の表面電位(平均電位)が重要である。すなわち、ループ電界が作用する領域より、トナー制御手段4から遠いトナークラウドは、トナー担持体1とトナー制御手段4側との平均的な電位勾配により広がり状態が変わると考えられる。
ここで、トナー担持体1側から見たときのトナー制御手段4の表面電位(平均電位)Vaと(Vs+Vt)との差(電位差)に対するトナー付着量の関係を測定した結果を図8に示している。なお、ここでは、トナー通過ONの電位Vc-on、バイアス電位Vpは一定とし、また(Vs+Vt)を一定とし、共通電極43に対する電位Vgの値を変化させたときの記録媒体手段3へのトナー付着量を測定している。
この図8における横軸は、同図で右に行くほど表面電位Vaが高い方向である。付着量測定実験では、トナー担持体1とトナー制御手段4を0.3mmの空隙を介して対向させているが、この状態での表面電位の測定は不可能であるため、それぞれ独立に測定した値としている。
この結果、電位差が大きいほどトナーの付着量が多くなっていることが分かる。なお、印字のために必要な付着量は、図8の横方向の実線aで示している。
一方、図8の縦方向の破線bは、表面電位Vaと(Vs+Vt)の差が「0」となる電位差を示す線である。印字のために必要な付着量を得るには、表面電位Vaが(Vs+Vt)より大きいことが好ましい。表面電位Vaを直接測定しないので、シミュレーションにより確認することが望ましいが、簡易的に電位Vg,Vcの値の平均値{(Vc-on+Vg)/2}を表面電位Vaとして示している。
上記はマイナス帯電トナーを使用した実験であるが、図8では左に向かうほどマイナス側に大きい電位Vgの値である。共通電極43に印加する電位Vgが(Vs+Vt)に近づくほど、多くのトナー付着量が得られている。すなわち、トナーの飛翔により形成されているクラウドは、電位に非常に敏感であって、トナー担持体1上を飛翔しているトナーに対し、対向する電位がマイナス側に低ければ、負帯電トナーによるクラウドは広がり、マイナス側に高ければ、トナークラウドは圧縮された状態になる。この結果、ループ電界により捕らえられるトナーの数に違いが生じる。
このように、トナーの利用効率の一層の向上を図るためには、トナークラウドがトナー制御手段4の制御電極42近傍まで広がった状態とすることが好ましいが、トナー担持体1の表面でのトナーの飛翔により形成されるクラウドは、トナー制御手段4との間の隙間の電位状態によって影響を受け、トナー制御手段4の制御電極42及び共通電極43によるトナー制御手段4の(トナー担持体1側)表面電位Vaによって高さ方向の広がりが変化する。そこで、トナー制御手段4の制御電極42に対する電位Vcに代えてトナー制御手段4の表面電位Vaによって、各電位の関係を特定することが必要である。
そのため、本実施形態ではトナー担持体1側から見たときのトナー制御手段4の表面電位をVaとし、トナー制御手段4の制御電極42に対しトナー通過ONとするときに電圧Vc-onを印加し、共通電極43に電圧Vgを印加し、このときの制御電極42周辺の表面電位がVa-onとなるとき、トナーを通過可能な状態にするときの各電位の関係を、
Vs+Vt>Vg、かつ、
Vp>Va-on>(Vs+Vt)、
に設定するようにしている。
なお、上述したように、表面電位Va-onは{(Vc-on+Vg)/2}で代替することができる。
これによって、トナー担持体1上におけるトナークラウドを制御電極42付近まで広がった状態にしてトナーの利用効率を更に向上しつつ、トナーが制御電極42に付着することを防止できる。
また、前述したように、トナー担持体は、表面側に所定の間隔で配設された複数の電極を有し、隣接電極相互の間でトナーを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧が印加され、電極に印加する2相の電極間ピッチp(又はn本毎の各電極にn相の位相電圧を印加するときのn相の電極間ピッチ)に対して、トナー担持体表面とトナー制御手段のトナー担持体側面の間の距離dが大きい構成とする。
これにより、記録媒体手段側の印写バイアスからトナー制御手段の共通電極に向けて形成されるループ状電気力線を強いものとし、クラウド化されたトナーを印写面に向けてより多く飛翔させることができ、高速、高品質のドット形成が可能となる。
なお、上記の例では、トナー担持体表面の複数の電極にクラウドパルスを印加してトナーがクラウド状態にある場合の条件について説明したが、トナーを飛翔させていない状態の制御電極側からみたトナーによる電位をVtとしたとき前記と同条件に設定することで、電極へのトナー付着を回避する効果がある。つまり、クラウドパルスの印加をOFFしてトナーのクラウドが無い状態においても、僅かなトナーが浮遊している。この僅かな浮遊トナーの電位は無視できるが、トナー担持体表面に着地して乗っているトナー電位があり、この電位Vtを考慮した(Vs+Vt)も前記と同条件の範囲に設定することで、同じ効果が得られる。
上述したように、本実施形態では、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段に時間的に変動する電位を印加する。例えば、トナーの供給はトナーを搬送供給するトナー担持体の表面にトナーを搬送する方向と直交する方向に所定ピッチで設けられた複数の電極を有するトナー担持体から供給する。ここで、トナー制御手段の共通電極がない場合、各電極への電位の設定が上述した範囲に無い場合は、電極へのトナー付着が急速に発生する等、信頼性の低下は避けられない。また、クラウド化したトナーの利用効率が非常に低下するため、画像濃度の確保、高速印刷の画像形成装置を達成することはできなくなる。
次に、本発明に係る画像形成装置の一例について図9を参照して説明する。なお、図9は同画像形成装置の模式的構成図である。
この画像形成装置は、前述した実施形態のユニットを4個設けてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーのクラウド化とトナー制御手段によるON/OFF制御を行ってカラー画像を形成する画像形成装置の例である。
つまり、この画像形成装置は、記録媒体手段である中間記録媒体103に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーのクラウド化して供給する4個のトナー供給ユニット100y、101m、101c、101k(色を区別しないときは「トナー供給ユニット100」という。以下同様。)を配置し、各トナー供給ユニット100と中間記録媒体(中間記録ベルト)103との間に、それぞれ前記実施形態のトナー制御手段4と同様な構成のトナー制御手段104を配置している。
ここで、中間記録媒体103は、2つのローラ132、133との間に掛け回されて矢示方向に周回移動する。この中間記録媒体103の背面(内側)には各トナー供給ユニット100に対応して対向電極手段である背面電極105が配置されている。また、転写後の中間記録媒体103上の残トナーを除去するクリーニングユニット135が備えられる。
トナー供給ユニット100は、トナーをクラウド化させるために電圧を印加する複数の電極111を並べて配置したトナー担持体1と同様な構成の円筒状のトナー担持体101と、このトナー担持体101にトナーを補給する回転するトナー補給ローラ113と、トナー担持体101上のトナー量を規制するブレード114を備えている。
ここでは、トナー補給ローラ113からトナー担持体101にトナーが補給されるとともに、トナー補給ローラ113上のトナーとトナー担持体101との摩擦によってトナーの摩擦帯電が行われる。また、トナー補給ローラ113の下流側のブレード114は、トナー担持体101表面のトナー量を薄層で一定量にするとともに、トナー帯電量の安定化も図っている。
そして、トナー供給ユニット100で供給されるトナーがトナー制御手段104によって画像に応じてON/OFF制御されることで中間記録媒体103上に飛翔され、中間記録媒体103上にカラーのトナー画像が形成される。
一方、下方に記録紙150を収容する給紙部151が配置され、給紙部151から記録紙150がピックアップローラ(給紙ローラ)152で給紙されて、中間記録媒体103を掛け回したローラ132に対向して配置した転写ローラ153で中間記録媒体103上のトナー画像が転写され、定着ユニット154でトナーが記録紙150上に溶融定着されて排紙される。
なお、ここでは図示していないが、記録紙150の裏面側の転写ローラ153に+バイアスが印加されることで中間記録媒体103から記録紙150面へのトナー画像の転写が行われる。また、上述したように中間記録媒体103はクリーニングユニット135で残トナーがクリーニングされて、次の画像形成が行われる。
このように、この画像形成装置は、中間記録媒体に4色画像を形成した後、給紙部から供給される記録紙に転写を行う中間転写記録方式である。この中間転写記録方式の場合は、印写面(トナーが着弾する面、画像形成面ともいう。)とトナー制御手段との間隔を一定に保つ精度確保が容易であり、トナー飛翔速度が低い条件で高画質化を図ることができる。また、平滑で体積抵抗率の調整によって電荷が蓄積しない、電位変動のない印写面が得られ、クラウド化したトナーの通過のON/OFFで直接印刷する画像形成装置は電位に対する感度が高く、印写面バイアス電位の変動に対して画質変動が発生しやすいが、この構成であれば信頼性の高い、高画質のカラー画像を得ることができる。
次に、本発明に係る画像形成装置の他の例について図10を参照して説明する。なお、図10は同画像形成装置の模式的構成図である。
この画像形成装置は、記録媒体手段を記録紙として、記録紙上に直接画像を形成する例である。つまり、ここでは、給紙部151から供給される記録紙150を紙搬送ベルト161に静電的に吸着してトナー供給ユニット100の領域を通過させ、トナー制御手段104の画像に応じたON/OFF制御によって記録紙150上に直接カラー画像を形成する。
なお、紙搬送ベルト161は、ポリイミド等から形成され、2つのローラ162、163に掛け回されて矢示方向に周回移動し、図示しない帯電ローラなどの帯電手段によって帯電されることで記録紙150を静電的に吸着保持して搬送する。なお、給紙部151から記録紙150を紙搬送ベルト161に導くためのガイド164、レジストローラ165なども配置されている。
この構成では、トナー通過を制御するトナー制御手段104と通過後のトナーを記録紙150に導くためのバイアスを印加する背面電極105の間にポリイミド等の紙搬送ベルト161及び記録紙150があるため、トナー制御手段104と背面電極105の間隔を非常に狭く設定することが難しいが、他方、記録紙150上に直接カラー画像を形成し、転写プロセスがないため、転写によるトナー散りで画質低下することがなくなる。
また、前記図9で説明した構成のようなベルトクリーニング機構を必要としないこと等もあり、小型、低コストの画像形成装置の実現に有利である。トナーをクラウド化する本構成では、印写面バイアスを低い設定にしてトナーを導くことも可能であるため、紙面へのトナーの着弾スピードも低く設定でき、トナーの散りが起きない高画質の画像形成装置を得ることができる。
次に、上述した画像形成装置で用いるトナー担持体の一例について図11を参照して説明する。なお、図11(a)はトナー担持体を展開した状態で示す模式的平面説明図、図11(b)は同じく模式的断面説明図である。
この例は、トナー担持体表面に複数の電極を設け、1本おきの2組を共通にした2相用電極を備え、180°位相の異なる2相パルス(図12参照)を印加して、隣接電極同士で吸引と反発を繰り返す2相電界を形成するトナー担持体の例である。
このトナー担持体101は、絶縁性基板101Aの表面上に複数の電極111としてA相用電極111Aと、B相用電極111Bとを設け、その上に表面保護層101Bを設けたものである。櫛歯状の電極111A、111Bは、トナーの搬送方向と直交する方向に微細なピッチに並行に設け、両サイドには共通のバスライン111Aa、111Baで外部の図示しない2相パルス発生回路にそれぞれ接続されている。
電極111A、111Bに印加するパルス電圧は、周波数が0.5KHz〜7KHz、DC電圧をバイアスに含むパルス電圧であるが、その波高値は±60〜±300V等、電極幅、電極間隔に応じたパルス電圧を印加する。この2相電界の場合は、隣接同士の電界方向の切り替わりに応じてトナーの反発飛翔と吸引飛翔を繰り返し、トナーは相互の電極間を往復移動する。そして、トナー担持体101全体は、トナーを搬送する方向に回転移動するものである。
このように、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段が、トナー担持体表面にトナーの搬送方向と直交する方向に長く延びて所定の間隔で配設された複数の電極を有し、各電極に印加する電圧は隣接電極相互の間でトナーを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧を印加し、トナー担持体が回転移動することでトナーの搬送とクラウド化を行う構成とすることで、トナー担持体表面のトナーの搬送に関して、トナーの帯電品質に左右されない安定なトナーの搬送が可能となり、装置全体としても信頼性の高い画像形成装置を実現できる。
次に、上述した画像形成装置で用いるトナー担持体の他の例について図13を参照して説明する。なお、図13(a)はトナー担持体を展開した状態で示す模式的平面説明図、図13(b)は同じく模式的断面説明図である。
この例は、3相進行波電界を形成するトナー担持体の例である。絶縁性基材101A上にA相、B相の電極111A、111B、その上層に絶縁層101Cを形成した後C相電極111Cを形成し、このC相電極111Cの上に表面保護層101Bを設けている。
各ABC3相の電極111A,111B、111Cは、トナーの搬送方向と直交する方向に微細なピッチに並行に設け、両サイドには共通のバスライン111Aa,111Ba、111Caで外部の図示しない3相パルス発生回路にそれぞれ接続されている。
この3相進行波電界を用いる場合は、図14に示すように、1周期で120°位相がシフトしたパルス電圧を順次印加することで、トナー担持体101表面にはパルスの切り替わりに伴って電界も順次シフトする進行波電界が発生し、電界が切り替わる方向に帯電トナーは上方への飛翔を繰り返すと同時に搬送されるため、基本的にトナー担持体101は回転しないで静止したままで良い。
このように、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段が、トナー担持体表面にトナーの搬送方向と直交する方向に長く延びて所定の間隔で配設された複数の電極を有し、n本毎の各電極にn相の位相電圧を印加して電極相互の間で進行波電界を形成することでトナーの搬送とクラウド化を行う構成とすることで、トナー担持体表面のトナーの搬送に関して、トナー搬送を行う部分が回転駆動を必要としないため、平面的なベルト形状も可能となり、レイアウトの自由度から装置全体の小形化、低コスト化が可能となる。
また、長期間の使用に際し、電極表面にはトナーの外添剤等微細な粒子が堆積する場合は、画像形成の時間以外に行うクリーニングモードのシーケンスによって、トナー担持体101表面をクリーニングすることで搬送の信頼性が確保できる。クリーニングは、クリーニングモードの時のみトナー担持体101表面に接する構成で、回転ブラシ、ブレート、吸引スリット等でクリーニングを行う。電極111A,111B、111Cに印加するパルス電圧は、前記と同様に、周波数が0.5KHz〜7KHz、DC電圧をバイアスに含むパルス電圧であるが、その波高値は±60〜±300V等、電極幅、電極間隔に応じたパルスを印加する。
これらのトナー担持体101の具体的構成において、ベース基板である絶縁性基板101Aは、例えば、樹脂或いはセラミックス等の絶縁性材料からなるもの、或いは、アルミなどの導電性材料からなる基材にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなるものなどを用いることができる。また、電極111は、ベース基板上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜1μm厚さで成膜し、フォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成、または銅箔を積層、メッキ等で形成した後フォトリソでパターン化してもよい。
表面保護層101Bとしては、例えば、SiO2、TiO2、TiN、Ta2O5などを厚さ0.5〜2μmで蒸着成膜して形成、またはポリカーボネート、ポリイミド、メチルメタアクリレート等の有機材料を2〜10μm厚に薄膜印刷塗布して加熱硬化したものでもよい。
このように構成したトナー担持体においては、駆動回路から飛翔用のパルスを印加して飛翔電界を形成することで、トナー担持体上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて上下方向への飛翔、進行波方向への搬送が行われる。
次に、上記画像形成装置におけるトナー供給ユニット100の具体的な構成の一例について図15を参照して説明する。
このトナー供給ユニット100は、磁性キャリアと非磁性トナーから成る二成分記録剤を用いる例である。記録剤収容部201は2つの室201A、201Bに分けられており、トナー供給ユニット100内の両端部の記録剤通路(図示せず)によって繋がっている。記録剤収容部201には二成分記録剤が収容されており、各室201A、201Bにある攪拌搬送スクリュー202A、202Bによって攪拌されながら記録剤収容部201内を搬送されている。
記録剤収容部201の室201Aにはトナー補給口203が配置されており、図示しないトナー収容部からトナー補給口203を通って、記録剤収容部201内に補給される。記録剤収容部201には記録剤の透磁率を検知する図示しないトナー濃度センサが設置されており、記録剤の濃度を検知している。記録剤収容部201のトナー濃度が減少すると、トナー補給口203から記録剤収容部201内にトナーが補給される。
そして、攪拌搬送スクリュー202Bと対向する位置には、トナー補給ローラとしてのマグブラシローラ204が配置されている。マグブラシローラ204の内部には固定された磁石が配置されおり、マグブラシローラ204の回転と磁力によって、記録剤収容部201内の記録剤はマグブラシローラ204表面に汲み上げられる。記録剤の汲み上げ位置よりマグブラシローラ204の回転方向上流において、マグブラシローラ204と対向する位置に記録剤層規制部材205が設けられている。
汲み上げ位置で汲み上げたれた記録剤は記録剤層規制部材205によって一定量の記録剤層厚に規制される。記録剤層規制部材205を通った記録剤はマグブラシローラ204の回転に伴って、トナー担持体101と対向する位置まで搬送される。マグブラシローラ204には、第一電圧印加手段211によって供給バイアスが印加されている。
トナー担持体101には、第二電圧印加手段212によって前述した図12或いは図14に示す電圧が電極111に印加されている。マグブラシローラ204と対向する位置においては、第一、第二電圧印加手段211、212によってトナー担持体101とマグブラシローラ204との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーはキャリアから分離し、トナー担持体101表面に移動する。トナー担持体101表面に達したトナーは、第二電圧印加手段212から電極111に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体101の回転、またはトナー担持体101の進行波電界によって搬送される。
そして、トナー制御手段104と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体手段側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
次に、上記画像形成装置におけるトナー供給ユニット100の具体的な構成の一例について図16を参照して説明する。
このトナー供給ユニット100は、非磁性トナーから成る一成分記録剤を用いる例である。トナーは記録剤収容部201に収容されており、帯電ローラ220によってトナーはトナー補給ローラ113と摩擦帯電を行い、静電気力によってトナー補給ローラ113上に汲み上げられる。トナー補給ローラ113上のトナーは記録剤層規制部材114によって薄層とされ、トナー補給ローラ113の回転に伴ってトナー担持体101と対向する位置に搬送される。
このとき、トナー補給ローラ113には、第一電圧印加手段221によって供給バイアスが印加されている。トナー担持体101には、第二電圧印加手段222によって電極111に電圧が印加されている。したがって、トナー担持体101と対向する位置においては、第一、第二電圧印加手段221、222によってトナー担持体101とトナー補給ローラ113との間に電界が生じ、その電界からの静電気力を受け、トナーはトナー補給ローラ113から分離し、トナー担持体101表面に移動する。
前記の例と同様に、トナー担持体101表面に達したトナーは、第二電圧印加手段222から電極11に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体101の回転、またはトナー担持体101の進行波電界によって搬送される。
そして、トナー制御手段104と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体手段側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
なお、これらの各トナー供給ユニット100において、印写に寄与しなかったトナーはトナー担持体101によってさらに搬送され、図示しない回収手段によってトナー担持体101表面から回収される。回収されたトナーは再び記録剤収容部201に戻され、トナー供給ユニット100内を循環する。
なお、上記の説明では主に負帯電トナーを例にしているが、正帯電トナーを用いることもできる。