JP5119697B2 - 繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents
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(1)環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%以上含み、かつ重量平均分子量が10,000未満であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、200〜300℃で加熱融解して融解粘度10Pa・s以下の融解液とし、ついで強化繊維基材が配置された成形型内に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解液を注入し、前記強化繊維束に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解液を含浸させた後、300〜400℃で加熱してポリアリーレンスルフィドプレポリマーを重合する、繊維強化複合材料の製造方法。
からなる。
本発明において用いる環式ポリアリーレンスルフィドとは、式 −(Ar−S)− の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上含有する下記一般式(O)のごとき化合物である。Arとしては式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましく、この場合、本発明により得られるFRTPは優れた耐熱性などの特性が得られやすい。
なお、環式ポリアリーレンスルフィドにおいては前記式(A)〜式(K)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド(前記式(A)、式(B)、式(F)〜式(K))、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン(前記式(D))、環式ポリフェニレンスルフィドケトン(前記式(C))、環式ポリフェニレンスルフィドエーテル(前記式(E))、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
本発明において用いるポリアリーレンスルフィドプレポリマーは、環式ポリアリーレンスルフィドが少なくとも50重量%以上含む必要があり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものである。ポリアリーレンスルフィドプレポリマーにおける環式ポリアリーレンスルフィドの重量比率が高いほど、重合後に得られるPASの重量平均分子量が高くなる傾向にあり、得られるFRTPの機械強度や耐薬品性等が向上するからである。
本発明において、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱して融解させる温度は、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが200〜300℃である必要がある。この温度範囲であれば、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの溶融粘度が10Pa・s以下となり、強化繊維への含浸性が容易となる。加熱温度が200℃未満ではポリアリーレンスルフィドプレポリマーが融解せず、強化繊維に含浸することができず好ましくない。一方、加熱温度が300℃を超えるとポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重合がおこるため好ましくない。
本発明において、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを加熱して重合する温度は、300〜400℃である必要があり、このましくは350〜400℃、より好ましくは380〜400℃である。加熱温度が300℃未満では重合に時間を要し、FRTPの製造に時間を要すため好ましくない。一方、400℃よりも高い場合だと、ポリアリーレンスルフィドプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、およびPASとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマー、PPS樹脂、およびポリフェニレンスルフィド混合物の重量平均分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<FRTP中のポリアリーレンスルフィドの重量分子量測定>
FRTP中のポリアリーレンスルフィドの重量分子量は、得られたFRTPから強化繊維を除いた樹脂部分のみを削り取り、前述のポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重量分子量と同一の方法により行った。
ポリアリーレンスルフィドプレポリマーおよびポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、動的粘弾性測定装置にて、以下の条件で行った。
装置:TA インスツルメント ARES
プレート:パラレルプレート 直径40mm
なお、実施例においては、加熱溶融温度における溶融粘度を測定した。
FRTPの曲げ強度はJIS K 7074−1988の3点曲げ(A法)に従い、以下の条件で測定した。
装置:万能材料試験機 インストロン5565
試験片寸法:長さ100mm×幅15mm×厚さ2mm
支点間距離:80mm
試験速度:5mm/分。
FRTPの層間せん断強度はJIS K 7078−1991に従い、以下の条件で測定した。
装置:万能材料試験機 インストロン5565
試験片寸法:長さ14mm×幅10mm×厚さ2mm
支点間距離:10mm
試験速度:1mm/分。
FRTPの繊維体積含有量は、JIS K 7075−1991に準拠し、PASを可溶な1−クロロナフタレンを用いた。
成形品を切断し、断面を耐水ペーパーの番手#240、400、800の順に、各番手で5分間研磨後、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製 VHX−500)顕微鏡(CCD)で50倍の倍率で撮影した。撮影した断面の正常部とボイド(空隙部)の面積率を測定し、ボイド率が1%未満のものを○○、1%以上5%以下のものを○、5%を超え10%以下のものを△、10%を超えるものを×と判定した。
<ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの調製1>
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2.96kg(71.0モル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略する場合もある)を11.44kg(116モル)、酢酸ナトリウム1.72kg(21.0モル)、およびイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水14.8kgおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
80℃に加熱したスラリー(B)1000gをふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別し、粗PPS樹脂とスラリー(C)を約750g得た。スラリー(C)をロータリーエバポレーターに仕込み、窒素で置換後、減圧下100〜160℃で1.5時間処理した後、真空乾燥機で160℃、1時間処理した。得られた固形物中のNMP量は3重量%であった。
参考例1で得られた粗PPS樹脂100gにNMP0.25リットルを加えて85℃で30分間洗浄し、ふるい(80mesh、目開き0.175mm)で濾別した。得られた固形物を0.5リットルのイオン交換水で希釈して、70℃で30分間攪拌後、80メッシュふるいで濾過して固形物を回収する操作を合計5回繰り返した。このようにして得られた固形物を、130℃で熱風乾燥し、乾燥ポリマーを得た。得られたポリマーの赤外分光分析による吸収スペクトルは参考例1で得られたポリフェニレンスルフィドプレポリマーの吸収と一致した。また、得られたPPS樹脂のGPC測定の結果、重量平均分子量は59600、300℃における溶融粘度は91Pa・sであった。
撹拌機付きの5リットルオートクレーブに、硫化ナトリウム9水和物60g(0.25モル)、96%水酸化ナトリウム0.52g(0.0125モル)、NMP2.56kg(25.9モル)及びp−ジクロロベンゼン37.7g(0.255モル)を仕込み、反応容器を窒素ガス下に密封した。
<レジントランスファーモールディング(RTM)法によるFRTPの成形>
[実施例1]
参考例1で得られたポリアリーレンスルフィドプレポリマーを250℃で30分間加熱融解して融解液とした。この融解液の250℃における溶融粘度は0.024Pa・sであった。ついで、長さ300mm×幅300mm×厚み2mmの板状キャビティーを持つ成形型内に、強化繊維基材として東レ株式会社製炭素繊維織物“トレカ(登録商標)”BT70−30(炭素繊維:T700−12K、組織:平織、目付:300g/m2)を8枚積層し、プレス装置で型締めを行った。次に、340℃に保持した型内を真空ポンプにより大気圧−0.1MPaに減圧し、樹脂注入機を用いて、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解液を注入し、強化繊維基材に含浸させた。注入開始後、340℃にて60分間ポリアリーレンスルフィドプレポリマーを重合して、型を開き、脱型して、FRTPを得た。
参考例1で得られたポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用い、成形型の温度を360℃とし、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重合条件を360℃×30分間に変更した以外は、実施例1と同様にしてFRTPを得た。
参考例1で得られたポリアリーレンスルフィドプレポリマーを用い、加熱融解を300℃で30分間としたこと、および成形型の温度を400℃とし、ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの重合条件を400℃×10分間とした以外は、実施例1と同様にしてFRTPを得た。
参考例2で得られたPPS樹脂を300℃で30分間加熱溶融して融解液とした。この融解液の300℃における溶融粘度は91Pa・sであった。ついで、実施例1と同様の成形型、および強化繊維基材を積層し、プレス装置で型締めを行った。次に、300℃に保持した型内を真空ポンプにより大気圧−0.1MPaに減圧し、樹脂注入機を用いて0.8MPaの樹脂注入圧でPPS樹脂の融解液を注入し、強化繊維基材に含浸させた。注入開始後、300℃にて30分間保持して、型を開き、脱型してFRTPを得た。
参考例3で得られたPPS、すなわち環状PPSを40重量%、線状PPSを60重量%含むPPS混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてFRTPを得た。
[実施例4]
図1および図2を参照しながら説明する。東レ株式会社製炭素繊維“トレカ(登録商標)”T700SC−24Kを3本引き揃え、参考例1で得られたポリアリーレンスルフィドプレポリマーを250℃に温調して含浸槽で含浸させながら、フィラメントワインディング法によって、φ70mmのマンドレルにその軸方向に対し内層に85°の螺旋巻き層2aとして0.2mmを形成した後、主層2bとして±12°で厚さ1mmを螺旋巻きした後、±45°にて厚さ0.5mm、さらに±12°で厚さ1mmの螺旋巻きした後、最外層を85°の螺旋巻き層2c厚さ0.2mmを実施した。主層は合計2.9mmで構成される。なお、継手の装着部となる、本体筒の両端部の110mmの長さに相当する部分には、継手との接合強度を向上させるために、軸方向に対し±83°で構成される厚みが2.5mmからなる補強層2dを形成した。補強層2dは、厚さ2.5mm、軸方向長さ60mmのストレート部および軸中央方向に向かった長さ50mmのテーパー部にて形成されている。その後、オーブンにて380℃×15分間重合し、FRTP製円筒体2を得た。ついで、FRTP製円筒体2の両端部に金属製継手3を圧入接合し、プロペラシャフト1とした。
<引き抜き法によるFRTPの成形>
[実施例5]
参考例1で得られたポリアリーレンスルフィドプレポリマーを250℃の含浸槽に2時間滞留させた。このポリアリーレンスルフィドプレポリマーの入った含浸槽に、強化繊維として東レ株式会社製炭素繊維“トレカ(登録商標)”T700SC−24Kを112本ひき通して樹脂を含浸させ、次いでこれを型材に挿通し、350℃で1時間加熱重合させ、さらに400℃×10分で後重合を行い、幅100mm、厚み1.4mmのFRTPを得た。
2 FRTP製円筒体
2a 内層
2b 主層
2c 外層
2d 補強層
3 金属製継手
Claims (3)
- 環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%以上含み、かつ重量平均分子量が10,000未満であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、200〜300℃で加熱融解して溶融粘度10Pa・s以下の融解液とし、ついで強化繊維基材が配置された成形型内に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解液を注入し、前記強化繊維束に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解液を含浸させた後、300〜400℃で加熱してポリアリーレンスルフィドプレポリマーを重合する、繊維強化複合材料の製造方法。
- 環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%以上含み、かつ重量平均分子量が10,000未満であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、200〜300℃で加熱融解して溶融粘度10Pa・s以下の融解液とした含浸槽に、引き揃えた強化繊維束を連続的に通して、該強化繊維束に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解液を含浸させ、含浸後の強化繊維束をマンドレルに巻き付けた後、マンドレル上で300〜400℃で加熱してポリアリーレンスルフィドプレポリマーを重合し、その後マンドレルを抜き取る、繊維強化複合材料の製造方法。
- 環式ポリアリーレンスルフィドを少なくとも50重量%以上含み、かつ重量平均分子量が10,000未満であるポリアリーレンスルフィドプレポリマーを、200〜300℃で加熱融解して溶融粘度10Pa・s以下の融解液とした含浸槽に、引き揃えた強化繊維束を連続的に通して、該強化繊維束に前記ポリアリーレンスルフィドプレポリマーの融解液を含浸させ、含浸後の強化繊維束をスクイーズダイ、および、金型を通して引張機によって連続的に引き抜き成形しつつ、300〜400℃で加熱してポリアリーレンスルフィドプレポリマーを重合する、繊維強化複合材料の製造方法。
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