次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るスペーサが組み込まれたエンジンの概略斜視図、図2は、エンジンを構成するシリンダブロック、スペーサ及びガスケットの分解斜視図、図3(a)は、図1に示されるスペーサの斜視図、図3(b)は、図3(a)の矢印Z側からみた斜視図、図4は、図1に示されるシリンダブロックの平面図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るスペーサ10が組み込まれたエンジン(内燃機関)12は、気筒列方向(シリンダボア列方向、図1中の一点鎖線T1参照)に沿って4つの気筒(シリンダボア14a、図2参照)が直線状に配置された直列4気筒エンジンからなり、図示しない車両のエンジンルーム内に設置される。このエンジン12は、例えば、アルミニウム合金製のシリンダブロック14と、前記シリンダブロック14の上側に組み付けられる、例えば、アルミニウム合金製のシリンダヘッド16と、前記シリンダヘッド16の上側に装着される図示しないヘッドカバーとによって構成される。
なお、本実施形態では、スペーサ10が組み込まれるエンジンとして、直列4気筒エンジンを例に挙げて以下説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、Vバンクに沿って複数の気筒が配置されたV型多気筒エンジンや水平対向エンジン等にも適用されるとともに、単気筒や複数気筒等の気筒数も問わない。単気筒エンジンの場合、図1中の一点鎖線T1は、クランク軸と平行な方向を示している。
以下の説明において、上下方向とは、シリンダボア14aの軸方向をいい、シリンダヘッド16側を上側として説明する。また、内側方向とは、シリンダボア14aの軸線方向を示す一点鎖線T2に接近する方向をいい、外側方向とは、前記一点鎖線T2から離間する方向をいう。さらに、周方向とは、前記一点鎖線T2又はシリンダボア14aを囲む方向をいう。さらにまた、気筒列方向(T1)とシリンダボア14aの軸線方向(T2)の両方に直交する方向を、ボア直交方向(図1中の一点鎖線T3参照)という。
シリンダブロック14及びシリンダヘッド16の内部には、冷却水が流通するウォータージャケット18,16b(シリンダヘッド16のウォータージャケット16bについて図11を参照)がそれぞれ設けられる。また、シリンダブロック14の気筒列方向に沿った一端側には、図示しないウォーターポンプを介して、図示しないラジエータから送給された冷却水をウォータージャケット18内へ供給する冷却水入口20aと、前記冷却水入口20aから導入された冷却水がウォータージャケット18に沿って複数の気筒を周回した後、シリンダヘッド16のウォータージャケット16bへ冷却水を導出する冷却水出口であるガスケット孔74とが設けられる。
なお、シリンダブロック14のウォータージャケット18が、特許請求の範囲における「ブロック側ウォータージャケット」に相当し、シリンダヘッド16のウォータージャケット16bが、特許請求の範囲における「ヘッド側ウォータージャケット」に相当する。
シリンダブロック14のウォータージャケット18は、図4に示されるように(図2も併せて参照)、平面視して、気筒列方向に沿った4つのシリンダボア14aの略外周を囲繞するように連続し、且つ周回するように形成される。前記シリンダブロック14の上下方向において、前記ウォータージャケット18の上端部は、開口して形成されるとともに、前記ウォータージャケット18の下端部(底壁)は、シリンダブロック14の内部で閉塞するように形成される。
図5は、図4のA−A線に沿った縦断面図である。この場合、図5に示されるように、ウォータージャケット18は、シリンダブロック14の上端面に開口部18aを有し、シリンダブロック14の内部で所定間隔離間し相互に対向して形成された内周壁18b及び外周壁18cと、前記内周壁18b及び前記外周壁18cを下部側で連結する底壁18dとによって形成された空間部によって構成される。
また、ウォータージャケット18は、シリンダブロック14の上下方向に沿った縦断面において、シリンダブロック14の上端面から下端面(底面)に向かってシリンダブロック14の内周壁18bと外周壁18cとの離間間隔D(図5参照)が徐々に幅狭となって先細りするテーパ形状に形成されている。換言すると、ウォータージャケット18は、シリンダブロック14の開口部18aから深さ方向に向かう底壁18dまで徐々に先細りとなるように形成されている。
シリンダボア14aには、薄肉の円筒体からなるシリンダライナ22が装着されてボア壁を構成している。また、シリンダブロック14とシリンダヘッド16との間には、ガスケット70(図2参照)が介装され、ガスケット70によってシリンダブロック14の上端面とシリンダヘッド16の下端面との間がシールされる。ガスケット70については、図10を参照して後に詳しく説明する。
シリンダブロック14のウォータージャケット18内には、樹脂製のスペーサ10が挿入され、前記スペーサ10の側面とウォータージャケット18の壁面との間で、冷却水を流通させるための流路が形成される。この流路は、ウォータージャケット18において、多量の、または大部分の冷却水を流通させるための主流路として機能する上部側流路24a及び下部側流路24bと、前記上部側流路24aと前記下部側流路24bとの間に形成され副流路として機能する中間流路24c,24dとから構成される(後記する図5、図11及び図13参照)。なお、本実施形態では、成形金型を用いた射出成形により製造された樹脂製のスペーサ10を例示しているが、例えば、鋳造成形やブロー成形等によって形成された金属製のスペーサを用いてもよい。
前記スペーサ10は、図3又は図4に示されるように、平面視して4つの帯状円環が連続して一体的に結合された筒状体からなり、内方に向って相互に近接するようにくびれたくびれ形状部25を有するスペーサ本体10aと、気筒列方向に沿った前記スペーサ本体10aの両端部の長溝26(図2参照)に装着される一対の弾性体28とを備える。なお、スペーサ本体10aの厚さ寸法は、後記する薄肉部分10b(図9参照)を除いて、例えば、ウォータージャケット18の幅寸法(内周壁18bと外周壁18cの水平方向に沿った離間間隔D)よりも僅かに小さい略同一寸法に設定されているが、少なくともシリンダボア14a側の内周壁18bに近接配置される厚さ寸法を有していればよい。
スペーサ本体10aの上面11であって気筒列方向に沿った一端部には、上方向に向かって延在する延出部30が設けられ、気筒列方向に沿った他端部には、前記延出部30と対向する第1引っ掛かり部32が上方向に向かって延在して設けられる。前記延出部30に近接するスペーサ本体10aの上面11には、上方向に向かって延在する第2引っ掛かり部34が設けられる。なお、前記延出部30、第1引っ掛かり部32及び第2引っ掛かり部34は、それぞれ同一の高さ寸法に設定される(図6参照)。
スペーサ10の上面11は、図6に示されるように、シリンダブロック14の冷却水入口20aに対向する箇所から冷却水出口となるガスケット孔74(図2参照)に対向する箇所まで、換言すれば、ウォータージャケット18に沿って流れる冷却水の上流側から下流側に向けて徐々にシリンダブロック14のウォータージャケット18の開口部18aへ近づくように上方向に向かって一定の勾配で傾斜する傾斜面で形成される。スペーサ10の上面11をこのような上方向に向かう一定勾配の傾斜面とすることにより、ウォータージャケット18の上流から下流へ向う冷却水の流れによってスペーサ10を下方側へ向って押圧する力が作用し、前記スペーサ10を安定させることができる。これに対して、スペーサ10の下面13は、ウォータージャケット18に沿って流れる冷却水の上流側から下流側に向けて勾配零の水平面で形成される。なお、図6では、スペーサ10の上面11を、便宜上、シリンダブロック14の冷却水入口20aに対向する箇所から第1引っ掛かり部32までを「スペーサ10の上面11a」として示し、第1引っ掛かり部32からガスケット孔74(図2参照)に対向する箇所までを「スペーサ10の上面11b」として示している。
図3に示されるように、スペーサ本体10aの下面部には、前記延出部30及び第1引っ掛かり部32の下方側に向かってそれぞれ延在し気筒列方向で対向する一対の脚部36a,36bと、第2引っ掛かり部34の上下方向に沿った下方側に設けられ下方側に向かって延在する他の脚部36cを有する。一対の脚部36a,36bは、周方向に分岐して設けられ、分岐する一方の脚部と他方の脚部との間に上下方向に沿って矩形状に延在するスリット38が形成される。前記スリット38の上部には、内周側と外周側とを貫通する横長矩形状の窓部40が形成され、前記窓部40には、後記する弾性体28の係止部28dが係止される。
くびれ形状部25に対応するスペーサ本体10aの内周であって上面11の近傍部位には、ウォータージャケット18の内周壁18bに向かって突出し、図6に示されるように側面から透過視して略矩形状を呈する複数の突起42が設けられる。各突起42は、それぞれ同一形状からなり、図7に示されるように、ゲート跡として突起42の略中央部に形成されたゲート残存部42a(材料導入部)と、前記ゲート残存部42aを間にして気筒列方向に沿った突起42の両側角部に設けられ、ウォータージャケット18の内周壁18bと接触する張出部42b,42bとから構成される。
張出部42b,42bは、気筒列方向に沿った突起42の両側角部に設けられてウォータージャケット18の内周壁18bと点接触又は線接触することにより、スペーサ10のボア直交方向(T3)におけるガタツキの抑制に加えて、スペーサ10の気筒列方向(T1)におけるガタツキを抑制することができる。なお、複数の突起42(張出部42b,42b)は、必ずしも常時内周壁18bに接触しているわけではなく、スペーサ10とウォータージャケット18の内周壁18bとの間のクリアランス(間隙、離間間隔)を突起42で狭めることにより、スペーサ10の回動範囲を規制するように構成してもよい。
図8(b)に示されるように、スペーサ本体10aの気筒列方向に沿った両端部には、ウォータージャケット18の内周壁18bに向かって膨出する膨出部45が形成される。以下、気筒列方向に沿った一方と他方とは同一形状からなるため、一方の膨出部45の形状のみを図8(b)、(c)に例示して他方の形状の説明を省略する。前記膨出部45には、図8(b)に示されるように、水平方向に沿った横断面が略T字状からなり上下方向に沿って延在する長溝26が形成される。この長溝26は、図8(b)に示される横断面において、ウォータージャケット18の内周壁18bに向って開口する縦長開口部26aと、前記縦長開口部26aを間にして連続する一対の側方溝部26bとから構成される。
長溝26の下端部は、二股に分岐する脚部36bの間に設けられたスリット38に連通し、長溝26の上端部は、スペーサ本体10aの上面11と略一致する部位で閉塞するように設けられる。この場合、図8(b)に示されるように、スリット38の横方向の寸法(S1)は、後記する弾性体28の幅寸法(S2)よりも若干大きく形成されているため、弾性体28をスリット38の下方側から上方側に向かって係合させることにより、スリット38に連通する長溝26に対して前記弾性体28を円滑に挿入することができる。この結果、組付性を向上させることができる。
弾性体28は、例えば、ゴム製材料で形成された矩形体からなり、図8(a)に示されるように、中心軸線Hの両側に前記中心軸線Hに沿って延在する薄肉状の薄肉側部28a,28aと、前記薄肉側部28aの間に設けられ中心軸線Hに沿って延在する厚肉状の厚肉矩形部28bと、前記厚肉矩形部28bの下部側に突出して設けられる突起部28cと、前記突起部28cが設けられた側と反対側に設けられ、中心軸線Hと直交する方向に延在する係止部28dとを有する。弾性体28の横断面形状は、図8(c)に示されるように、長溝26に合致する(長溝26の形状に対応する形状)略T字形状に形成されている。
弾性体28の突起部28cは、厚肉矩形部28bから外方に向って突出する頂部を有し、ウォータージャケット18の内周壁18bに対して接触する稜線部28eが設けられる。この突起部28cは、斜め上方向からみて三角柱状に形成され、密着部として機能するものである。前記突起部28cの稜線部28eに沿った傾斜角度は、ウォータージャケット18の内周壁18bの縦断面(シリンダボアの中心を通る縦断面)における傾斜角度と異なるように設定されている。換言すると、突起部28cの稜線部28eにおける稜線は、ウォータージャケット18の内周壁18bの縦断面と非平行で交差状に設定されている。これにより、スペーサ10をウォータージャケット18に挿入するにつれて、突起部28cの頂部に形成された稜線部28e乃至その近傍部位が、ウォータージャケット18の内周壁18bに当接して弾性変形して、点接触状態から線接触状態になり、ひいては面接触状態となる。
そして、スペーサ10は、シリンダ列方向に沿ったスペーサ本体10aの両端部にそれぞれ設けられた一対の弾性体28、28によって、ウォータージャケット18内の所定位置に保持固定される。例えば、冷却水の水圧やエンジン振動等によってスペーサ10が予め設置された所定位置からずれて、仮に、後記する延出部30、第1引っ掛かり部32及び第2引っ掛かり部34のいずれかがガスケット70の下面に当接する場合であっても、ウォータージャケット18の内周壁18bと弾性体28、28との間で発生する摩擦抵抗によりガスケット70へ付与される当接荷重を好適に緩和することができる。
突起部28cの背面側に設けられた係止部28dは、弾性体28がスペーサ本体10aの長溝26内に組み付けられるときに弾性変形し、スペーサ本体10aに形成された窓部40(図2参照)に係止される。このようにスペーサ本体10aの窓部40に対して弾性体28の係止部28dが係止されることにより、組付時において長溝26内に挿入された弾性体28がスペーサ本体10aの所定位置に位置決めされる。
なお、弾性体28は、前記とは表裏を逆転させて外周側に突起部28cを露呈させ、ウォータージャケット18を構成する外周壁18cに対して前記突起部28cが点接触又は線接触するようにしてもよい。この場合、係止部28dが係止される窓部40はスペーサ本体10aの内側に設けられる。
図3に戻って、第1引っ掛かり部32は、スペーサ本体10aの上面11から突出し気筒列方向に沿った他端側で弾性体28の上方に設けられる。この第1引っ掛かり部32は、前記上面11から延在し上方に向うにつれて幅寸法が徐々に減少するテーパ部32aと、前記テーパ部32aから延在し上方に向うにつれて幅寸法が拡大された頭部32bと、前記テーパ部32aと前記頭部32bとの間に設けられて幅狭に形成されたくびれ部32cとから構成される。この場合、第1引っ掛かり部32は、固定部として機能する弾性体28とシリンダボア14aの軸方向(上下方向)に沿って延在するように設けられる。
例えば、くびれ部32cに図示しない工具(例えば、針金等で構成された円環部を有する部材)を係合させて頭部32bに前記円環部を引っ掛けることにより、ウォータージャケット18内からスペーサ10を容易に引き抜く(引き出す)ことができる。
すなわち、第1引っ掛かり部32を図示しない工具等で係止してスペーサ10をウォータージャケット18の上方に向って引き出すとき、前記第1引っ掛かり部32が弾性体28(固定部)のシリンダボア14aの軸方向に沿った位置に設けられているため、前記第1引っ掛かり部32を引き抜く力の延長線上に弾性体28が位置することとなり、スペーサ10の変形を回避して容易に引き出すことができる。
スペーサ10に設けられる第1引っ掛かり部32は、シリンダボアの周方向に沿って形成されることにより、冷却水の流通方向と同一乃至略同一方向に延在して冷却水の流れを阻害しないように構成されている。すなわち、第1引っ掛かり部32を、例えば、第2引っ掛かり部34と同様に径方向(スペーサ10の厚み方向)に向って突出させて引っ掛かりを形成した場合、その径方向への突出部分が冷却水の流れを妨げるように作用する。このため、第1引っ掛かり部32の一方の頭部32bは、ウォータージャケット18の上流側に向けて延在し、第1引っ掛かり部32の他方の頭部32bは、ウォータージャケット18の下流側に向けて延在するように設けられ、冷却水の流れを極力妨げないシリンダボアの周方向に沿った形状に形成されている。
第2引っ掛かり部34は、スペーサ本体10aの上面から突出し気筒列方向に沿った一端側であって、ウォータージャケット18の冷却水入口20aと冷却水出口であるガスケット孔74(74a)とを仕切るためにスペーサ本体10aと一体的に厚肉に形成された仕切り部46の上方に設けられる。この第2引っ掛かり部34には、縦断面が略L字状からなり、スペーサ本体10aの上面から突出する胴部34aと、前記胴部34aの上端面から略水平方向に向かって所定長だけ突出する鉤部34bが設けられる。
第2引っ掛かり部34は、スペーサ本体10aの他の部分と比較して厚肉に形成され剛性を有する仕切り部46のシリンダボア14aの軸方向に沿った部位に設けられるため、図示しない工具等によってスペーサ10を引き出す際、スペーサ10の変形を抑制して容易に引き出すことができる。
この場合、前記鉤部34bに手や工具(例えば、針金等で構成された円環部を有する部材)を係合させて前記円環部を鉤部34bに引っ掛けることにより、ウォータージャケット18内からスペーサ10を容易に引き出すことができる。第2引っ掛かり部34の鉤部34bの近傍部位は、ウォータージャケット18の冷却水入口20aに連通する連通孔48(図1参照)が開口して、手の指で前記鉤部34bを引き出すことが可能なスペースが設けられている。なお、ウォータージャケット18内からのスペーサ10の引き出しは、第1引っ掛かり部32又は第2引っ掛かり部34のいずれか単独でスペーサ10を引き出すことも可能であるが、第1引っ掛かり部32と第2引っ掛かり部34とを略同時に引き出すことが好ましい。すなわち、スペーサ本体10aの上方に設けられた第1引っ掛かり部32及び第2引っ掛かり部34は、気筒列方向の一端側及び他端側にそれぞれ設けられ、略同時に引き出すことによりその引き出し荷重を気筒列方向の一端側と他端側とに略均等に分散させて付与することができるため、スペーサ10の長手方向の変形をより一層抑制することができる。
図9は、シリンダブロックの気筒列方向の一端側のシリンダボア付近を拡大して示した平面図である。
図9に示されるように、スペーサ本体10aのうち、第2引っ掛かり部34の周方向端部34cからシリンダボア14aを挟んで第2引っ掛かり部34とほぼ反対側の位置gまでの部分(以下、「薄肉部分10b」という場合がある。)は、シリンダボア14a側の肉厚を削ることにより、スペーサ本体10aのその他の部分よりも厚さ寸法が小さく(薄く)なっている。換言すれば、スペーサ本体10aのうち薄肉部分10bは、膨出部45を除いて、ウォータージャケット18内において外周壁18c側に偏って配置されている。これにより、気筒列方向の一端側においては、ウォータージャケット18の内周壁18bと薄肉部分10bとの間隔d1(すなわち中間流路24cの幅)が、ウォータージャケット18の外周壁18cと薄肉部分10bとの間隔d2(すなわち中間流路24dの幅)よりも大きくなっている。この薄肉部分10bは、シリンダボア14aの軸線方向に見て、後記するガスケット70に形成された冷却水の主出口としてのガスケット孔74a,74b,74c,74dの下方に配置されている(図10参照)。
なお、この「薄肉部分10b」が、特許請求の範囲における「シリンダボアの軸線方向で複数のガスケット孔に対向する対向部」に相当する。
延出部30は、スペーサ本体10aの気筒列方向に沿った一端側の上面11から、すなわち、薄肉部分10bの上面11bから、上方に延出して設けられている(図3参照)。延出部30は、略矩形状からなり、角部が面取りされて形成される。延出部30も、薄肉部分10bと同様に、ウォータージャケット18内において外周壁18c側に偏って配置されている。
この延出部30と前記した第1引っ掛かり部32(図3参照)は、エンジン12が振動してスペーサ10が揺動した場合に、後記するガスケット70に当接することにより、スペーサ10が上側へ移動することを規制する上側固定脚としての機能を有している。そのため、この延出部30を設けることにより、仮に、冷却水の水圧やエンジン振動等によってスペーサ10がウォータージャケット18内の所定位置からずれた場合であっても、前記延出部30がガスケット70に当接して、その位置ずれを規制することができる。
なお、延出部30及び第1引っ掛かり部32の上端面は、スペーサ10のウォータージャケット18内への設置が完了した状態で、ガスケット70に当接していてもよいし、ガスケット70に対して隙間を有していてもよい。ちなみに、本実施形態では、延出部30は、図12に示されるように、ウォータージャケット18内への設置が完了した状態で、シリンダブロック14の上面よりも下方に位置しており、後記するガスケット70に当接しない状態となっている。
図10は、ガスケットを載置したシリンダブロックの気筒列方向の一端側のシリンダボア付近を拡大して示した平面図である。
ガスケット70は、シリンダブロック14とシリンダヘッド16の間に配置される金属製の板状部材であり、シリンダブロック14とシリンダヘッド16の間をシールしてガスや冷却水が漏れるのを防止する機能を有している。ガスケット70は、例えば3枚の金属板70a,70b,70cを積層して構成されている(図11、図12参照)。
ガスケット70は、図10に示すように、シリンダボア14aに対応する位置にボア用開口部72を有している。ボア用開口部72は、シリンダボア14aと略同径に形成された円形の貫通孔である。
また、ガスケット70は、シリンダブロック14のウォータージャケット18の周方向に沿って、シリンダブロック14のウォータージャケット18とシリンダヘッド16のウォータージャケット16bとを連通する複数のガスケット孔74を有している。本実施形態では、ウォータージャケット18のうち、前記した薄肉部分10bの設置範囲に対応する部分に、4つのガスケット孔74a,74b,74c,74dが、互いに間隔を空けて形成されている。各ガスケット孔74は、それぞれ円弧状に湾曲する長孔形状に形成されている。この4つのガスケット孔74のうち、第2引っ掛かり部34に近い方の2つのガスケット孔74a,74bの間に、延出部30が配置されている。なお、延出部30の周方向の両端部は、シリンダボア14aの軸線方向(T2)にみたときに、2つのガスケット孔74a,74bに若干重なって(露出して)いる。
図10に示されるように、4つのガスケット孔74a,74b,74c,74dは、シリンダボア14aの軸線方向に見て、薄肉部分10bと重なる部分に開口している。例えば、ガスケット孔74dは、ガスケット70を構成する上下の金属板70a,70cに形成した貫通孔よりも中央の金属板70bの貫通孔が小さく形成されており、中央の金属板70bによって、スペーサ本体10aのうち、薄肉に形成されていない部分がガスケット孔74dに重ならないようになっている。ガスケット孔74a,74bの延出部30側の端部も、中央の金属板70bによって、孔の大きさが狭められている。
また、ガスケット70は、シリンダブロック14とシリンダヘッド16の間からガスや冷却水が漏れるのを防止するための複数のシールライン76を有している。シールライン76は、シリンダボア14aの周面に沿って環状に設けられた第1シールライン76aと、ガスケット孔74の外側(シリンダボア14aと反対側)においてウォータージャケット18の外周壁18cに沿って設けられた第2シールライン76bと、第2シールライン76bの更に外側に設けられた第3シールライン76cと、を備えている。
図11は、図10のJ−J線に沿ったシリンダブロック、ガスケット及びシリンダヘッドの断面図である。また、図12は、図10のK−K線に沿ったシリンダブロック、ガスケット及びシリンダヘッドの断面図である。
各シールライン76は、図11、図12に示されるように、ガスケット70を構成する3枚の金属板70a,70b,70cのうち、上側の金属板70aを、シールしたい部分に沿って上側に膨出させるとともに、下側の金属板70cを、シールしたい部分に沿って下側に膨出させることによって構成されている。これにより、シリンダブロック14とシリンダヘッド16とを締め付け固定した際に、上側の金属板70aの膨出部分がシリンダヘッド16の下端面に密着して弾性変形するとともに、下側の金属板70cの膨出部分がシリンダブロックの上端面に密着して弾性変形することにより、両者の間がシールされることになる。
シリンダヘッド16は、図11、図12に示されるように、燃焼室(シリンダボア14a)の天井部分を構成する凹部16aと、冷却水が流通するウォータージャケット16bと、を有している。また、図示は省略するが、シリンダヘッド16には、燃焼室に連通する吸気ポート及び排気ポートが形成されているとともに、吸気ポート及び排気ポートをそれぞれ開閉するための吸気弁及び排気弁、ロッカアーム、カムシャフト、などが組み付けられている。
シリンダヘッド16のウォータージャケット16bは、例えば、凹部16aや排気ポート(図示省略)などの比較的高温になり易い部位の周囲に主に設けられている。シリンダヘッド16のウォータージャケット16bの下端側16cは、図11に示されるように、シリンダヘッド16の下端面に開口しており、ガスケット孔74を介してシリンダブロック14のウォータージャケット18と部分的に連通している。
図10及び図11に示されるように、各ガスケット孔74の下方には、スペーサ10の薄肉部分10bが対向して配置されている。つまり、各ガスケット孔74の下方には、延出部30が配置されていない(延出部30の上方にはガスケット孔74が設けられていない)ので、延出部30がガスケット孔74の下方における冷却水の流れを阻害することがない。そのため、冷却水がシリンダブロック14のウォータージャケット18からシリンダヘッド16のウォータージャケット16bへ流れる過程における圧力損失を低減して、冷却水を円滑に流出させることができる。
一方、図10及び図12に示されるように、延出部30の上方には、ガスケット70が配置されている。また、延出部30は、ウォータージャケット18内において外周壁18c側に偏って設けられている。そのため、仮に、スペーサ10が揺動して延出部30が上方に移動すると、延出部30は、延出部30の上方に位置するガスケット70のうち、外周壁18cに近い部分に当接する。このとき、ガスケット70のうち、外周壁18cに近い部分には、上側の金属板70aと下側の金属板70cを膨出させて構成した第2シールライン76bが設けられているので、ガスケット70の剛性が高められている。その結果、当該部分に延出部30が当接したとしても、ガスケット70が変形しにくく、延出部30を好適に保持することができるとともに、ガスケット70の損傷を抑制することができる。
なお、第2シールライン76bは、第1シールライン76aよりもウォータージャケット18の開口部(外周壁18c)に近い位置に設けられているので、ガスケット70のうちウォータージャケット18の外周壁18cに近い部分の方が、ガスケット70のうちウォータージャケット18の内周壁18bに近い部分よりも剛性が高い。そのため、延出部30をウォータージャケット18の外周壁18cに偏らせることで、延出部30を一層好適に保持することができる。
本実施形態に係るエンジン12の冷却通路構造は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその組立手順と作用効果について説明する。
先ず、長溝26に弾性体28が装着されたスペーサ10をシリンダブロック14のウォータージャケット18内に挿入する。スペーサ10のウォータージャケット18内への挿入は、例えば、直交するXYZ軸等を含む複数軸に沿って変位可能な図示しないロボットハンドを用いてウォータージャケット18内へ押圧してもよいし、又は、例えば、手作業でスペーサ10をウォータージャケット18の開口部18aに挿入した後、図示しない治具を用いてスペーサ10をウォータージャケット18の奥部まで押圧するようにしてもよい。
スペーサ10のウォータージャケット18内への挿入は、例えば、スペーサ10の下部に設けられた脚部36b及び他の脚部36cがウォータージャケット18の底壁18dに当接することによって規制される。その際、スペーサ本体10aは、ウォータージャケット18の底壁18dに当接することがなく、スペーサ10の内周側に設けられた複数の突起42がウォータージャケット18の内周壁18bに当接するとともに、気筒列方向に沿った両端部に設けられた弾性体28の突起部28c(稜線部28e)がウォータージャケット18の内周壁18bに当接することによって、ウォータージャケット18の深さ方向中間位置に固定される。
なお、気筒列方向でスペーサ10の下部に設けられた脚部36a,36aは、気筒列方向で対向する脚部36b,36b及び他の脚部36cと比較して上下方向の長さが若干短く設定されているため、ウォータージャケット18の底壁18dに当接することがなく、浮いた状態でウォータージャケット18内に挿入される(図6参照)。この場合、スペーサ10は、下部に設けられた脚部36b,36b及び他の脚部36cからなる3点で支持されることにより(3点支持構造)、仮に、製造誤差(寸法誤差)があっても安定して支持することができ、スペーサ10の挙動安定性に寄与することができる。
スペーサ10をウォータージャケット18内に挿入する際、スペーサ10の気筒列方向に沿った両端部にそれぞれ弾性体28が配置され、この弾性体28の突起部28cがウォータージャケット18の内周壁18bに密着してスペーサ10を気筒列方向の外径側に向かって押圧する力が作用する。このため、スペーサ10の気筒列方向の部分を除いた中間部分が内側に向って変形しようとする力が働き、スペーサ本体10aの内側に設けられた複数の突起42がウォータージャケット18の内周壁18bに向って近接し、ウォータージャケット18の内周壁18bと突起42との離間間隔が狭まる。
前記離間間隔が零となって突起42が内周壁18bに当接(接触)する場合、ウォータージャケット18の内周壁18bに対する、スペーサ10の気筒列方向の両端部に配設された弾性体28の変形代(変形量)を調整することにより、スペーサ本体10aの内側に設けられた複数の突起42がウォータージャケット18の内周壁18bへ当接する力を増大させ、ウォータージャケット18の全周にわたってスペーサ10を均一に保持することができる。
また、本実施形態では、シリンダボア14aの軸線方向に沿った一方側(上側)に設けられ、隣接するシリンダボア14a間の連結部位(気筒間部位)に対向して配置された複数の突起42がウォータージャケット18の内周壁18bに当接するとともに、シリンダボア14aの軸線方向に沿った他方側(下側)に設けられ、シリンダボア14a列方向の両端部に対向して配置された一対の弾性体28の突起部28cがウォータージャケット18の内周壁18bに当接することによって、流路24を流通する冷却水やエンジン12の振動等に起因してスペーサ10が回動することを好適に回避することができる。
ウォータージャケット18へのスペーサ10の挿入が完了したら、シリンダブロック14の上にガスケット70を載置するとともに、さらにその上にシリンダヘッド16を載置し、図示しない長尺ボルトを用いてシリンダヘッド16をシリンダブロック14に締結固定する。
これにより、ガスケット70のシールライン76が弾性変形してシリンダブロック14の上端面とシリンダヘッド16の下端面に密着し、シリンダボア14aの周囲や、ウォータージャケット18の周囲がシールされることとなる。
そして、エンジン12をこのように組み立てることにより、シリンダブロック14のウォータージャケット18が、ガスケット70に設けた複数のガスケット孔74を介して、シリンダヘッド16のウォータージャケット16bと連通した状態となるとともに、ガスケット孔74a,74bの間に、スペーサ10の延出部30が配置された状態となる。
このとき、延出部30の上方には、ガスケット70が存在することとなるが、スペーサ10に形成された複数の突起42と一対の弾性体28とによって、スペーサ10の回動が回避されているので、延出部30がガスケット70に衝突することが抑制される。そのため、異音の発生やガスケット70の損傷を抑制することができる。
次に、スペーサ10がシリンダブロック14のウォータージャケット18内に挿入された状態における冷却水の流通経路について説明する。
図示しないウォーターポンプを介してシリンダブロック14の冷却水入口20aへ供給された冷却水は、一方の気筒列方向(図1中における手前側)に沿ってウォータージャケット18内を流通し、冷却水入口20aから遠い気筒列方向の端部でUターンした後、他方の気筒列方向(図1中における奥側)に沿ってウォータージャケット18内を流通し、ガスケット孔74からシリンダヘッド16のウォータージャケット16bへ導出される。このようにウォータージャケット18に沿って冷却水が流通することにより、シリンダボア14aまわりのボア壁が冷却され、図示しない燃焼室を外部から好適に冷却することができる。
次に、スペーサ10が挿入されたウォータージャケット18内の所定部位における冷却水の流通状態について以下説明する。
図13は、図4のB−B線に沿った、隣接する気筒間部位における縦断面図である。なお、図5は、前記気筒間部位を除いた一般部位であって、図4のA−A線に沿ったシリンダブロックのシリンダボアの縦断面図である。
図5に示されるように、一般部位では、シリンダボア14aの軸方向に沿った上死点近傍部位(ピストン60の上死点位置を実線で図示)と下死点近傍部位(ピストン60の下死点位置を2点鎖線で図示)との間の中間部位にスペーサ10(スペーサ本体10a)が配置され、前記上死点近傍部位及び下死点近傍部位ではスペーサ10(スペーサ本体10a)が何ら設けられていない空間部となっている。従って、ウォータージャケット18において、前記空間部で形成されたスペーサ本体10aの上部側及び下部側に冷却水が流通する主流路(上部側流路24a及び下部側流路24b)がそれぞれ形成される。換言すると、シリンダボア14a内を摺動変位するピストン60の上死点位置及び下死点位置に対応して、上部側流路24a及び下部側流路24bがそれぞれ形成される。同様に、図13に示される気筒間部位においても、ピストン60の上死点位置及び下死点位置に対応して、上部側流路24a及び下部側流路24bがそれぞれ形成される。
この場合、スペーサ本体10aの上部側流路24a及び下部側流路24bで冷却水の流通量が大きく設定され、スペーサ本体10aが配置された上死点近傍部位と下死点近傍部位との間の中間部位(中央部位)に設けられた中間流路24c,24dでは、冷却水の流通量が小さく設定されている。
この結果、冷却水の流通量が小さく設定された中間部位(中央部位)では、上死点及び下死点と比較してピストン摺動速度が高い範囲におけるボア壁がスペーサ10で暖められる(保温される)ことにより、シリンダボア14a内を摺動変位するピストン60とボア壁との間のクリアランスが拡大され、ピストン60及びボア壁間に発生するフリクション(摩擦抵抗)を低減させることができる。また、中間部位(中央部位)では、上死点及び下死点と比較してピストン摺動速度が高い範囲におけるボア壁がスペーサ10で暖められる(保温される)ことにより、ピストン60とボア壁との間の潤滑油の粘性(粘度)を低下させ摺動抵抗を低減することができる。なお、本実施形態のように、ウォータージャケット18内にスペーサ10を挿入した場合には、スペーサ10を挿入しない場合と比較して、冷却水全体の容量を低減させることができ、エンジン12の始動時における早期の暖機を遂行することができる。
一方、ピストン60の速度は、上支点近傍及び下死点近傍で最も遅くなるため、上支点近傍及び下死点近傍においてピストン60からシリンダブロック14に伝わる熱量が大きい。そこで、シリンダボア14a内を摺動変位するピストン60の上死点及び下死点に対応して、上部側流路24a及び下部側流路24bを形成することにより、ピストン60の上死点及び下死点に対応する部位を重点的に冷却して、ピストン60の温度上昇を抑制することができる。
図13に示されるように、気筒間部位には、ウォータージャケット18の内周壁18bの上部近傍部位に、縦断面略ハの字状に傾斜する一対の傾斜面からなるテーパ面62が形成されている。このテーパ面62は、前記テーパ面62の下部とスペーサ10の上面11とが水平方向で略一致又は近接する位置に設定され、冷却水が上部側流路24aに沿って流通する際、冷却水がテーパ面62(傾斜面)に沿って上部側流路24aの内側を迂回し大きくカーブするように流通することにより冷却水の流通量(流路面積)を増大させ(図13参照)、隣接するシリンダボア14a間で特に高温となる部位(上死点近傍部位)を好適に冷却することができる。
そして、図11、図12に示されるように、冷却水の出口であるガスケット孔74の下方には、延出部30が配置されていないので、延出部30によってガスケット孔74の下方における冷却水の流れが阻害されることがない。そのため、シリンダブロック14のウォータージャケット18からシリンダヘッド16のウォータージャケット16bへ、冷却水を円滑に流出させることができる。
また、延出部30の中心軸の位置にかかわらずに、ガスケット孔74の幅を設定することができるので、ガスケット孔74を広げて圧力損失を低減することができる。
さらに、図11に示されるように、冷却水の出口であるガスケット孔74の下方には、スペーサ本体10aの肉厚を薄くした薄肉部分10bが形成されているとともに、薄肉部分10bはウォータージャケット18内において外周壁18c側に偏って配置されているので、ウォータージャケット18の外周壁18cと薄肉部分10bとの間の中間流路24dを流れる冷却水よりも、ウォータージャケット18の内周壁18bと薄肉部分10bとの間の中間流路24cを流れる冷却水の方が多くなる。つまり、シリンダブロック14からシリンダヘッド16へ冷却水が流出する部分は、冷却水入口20aから最も遠いため、冷却水の温度が上昇しているが、ウォータージャケット18の内周壁18b側を冷却水が多く流れるようにしてあるので、冷却能力の低下が抑制される。
ちなみに、中間流路24c,24dは、図5に示されるように、薄肉部分10bが形成されている範囲以外では、外周壁18c側の中間流路24dよりも内周壁18b側の中間流路24cの方が幅狭に構成されており、内周壁18b側の中間流路24cに冷却水が流れ難くなっている。
また、図11に示されるように、薄肉部分10bは、スペーサ本体10aの他の部分よりも厚さ寸法が減じられているので、下部側流路24bから上部側流路24aに向かって(さらには冷却水の主出口であるガスケット孔74に向かって)冷却水が流れ易くなる。そのため、下部側流路24bを流れる冷却水をシリンダヘッド16に向かってスムーズに流すことができる。
さらにまた、図9に示すように、弾性体28が取り付けられた膨出部45の両側に、冷却水の流量が比較的大きい中間流路24cが形成されているので、弾性体28を好適に冷却することができる。これにより、弾性体28の極度な過熱を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、延出部30の両端部が、ガスケット孔74a,74bの下方に位置する(上方から見てガスケット孔74a,74bから露出する)構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、延出部30の全体が、ガスケット孔74a,74bの間に収まるように構成してもよい。
また、本実施形態では、スペーサ本体10aのうち、ウォータージャケット18の内周壁18b側の厚さ寸法を減じることで、薄肉部分10bをウォータージャケット18の外周壁18c側に偏って設ける構成としたが、本発明の「対向部」はこれに限定されるものではなく、例えば、スペーサ本体10aの厚さ寸法を変えることなく、スペーサ本体10aのうち、シリンダボア14aの軸線方向で複数のガスケット孔74に対向する部分(すなわち対向部)を、ウォータージャケット18の外周壁18c側に偏って設ける構成としてもよい。