JP5117034B2 - タイヤ騒音低減装置 - Google Patents

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本発明は、ホイールに装着されるタイヤ騒音低減装置に関し、更に詳しくは、タイヤ道路騒音を改善するようにしたタイヤ騒音低減装置に関する。
道路交通騒音の一つとしてタイヤ道路騒音がある。このタイヤ道路騒音は、タイヤのトレッド面が路面と接地してから離れるまでの過程で、タイヤと路面の相互作用により生じる複数の音の発生要因が絡み合って発生するものである。主要な音の発生源として、タイヤが接地した際に、トレッド溝内の空気が圧縮、放出のポンピング作用を受けて発生するパターンエアポンピング音や、タイヤのトレッドパターンの不連続な部分が接地する際に、路面から受けた衝撃によりサイドウォール部やリムが振動して発生するパターン加振音がある。
また、トロイダル状のタイヤが接地してトレッド部が平面状に変形する際に、トレッド部が路面に擦られ、その部分が局部的に振動して発生する接地摩擦振動音や、路面の小さな空隙がトレッド面でシールされることにより、路面空隙内の空気がポンプ作用を受けて発生する、路面空隙によるエアポンピング音、更には路面の細かい凹凸がトレッド部を加振することによって発生する、路面凹凸による加振音などがある。
従来、上記タイヤ道路騒音を改善するため、ホイールに、サイドウォール部の振動を抑制する制振材を配置したり、吸音材を取り付けたり、或いは共鳴筐を配置するなどの技術が提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
しかしながら、近年の環境意識の高まりから、道路交通騒音対策に対するニーズが強く、中でもタイヤ道路騒音の低減が重要な課題となっており、タイヤ道路騒音を更に低減できる新たな技術の提案が望まれていた。
特開2004−306729号公報 特開2000−335201号公報 特開2005−1535号公報
本発明の目的は、タイヤ道路騒音の改善に寄与するタイヤ騒音低減装置を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のタイヤ騒音低減装置は、ホイールに装着されるタイヤ騒音低減装置であって、前記ホイールの側面に固定され該ホイールと共に回転する回転部該回転部にベアリングを介してホイール回転軸を中心に前記回転部に対して回転自在に取り付けられ前記回転部の回転時に前記ホイール及び前記回転部と共に回転しない非回転部とを有し、該非回転部の下側部分に設けられた共鳴管取付部に一端が開口し他端が閉止された共鳴室を有する共鳴管を開口する一端が下向きとなるようにして複数配列したことを特徴とする。
上述した本発明によれば、ホイールに装着されるタイヤ騒音低減装置において、一端が開口する共鳴室を有する複数の共鳴管を開口する一端が下向きとなるようにして配列したので、タイヤのトレッド部と路面が接地する領域で発生して車両側方に放射される、タイヤ道路騒音として生活環境に大きく影響する騒音を、開口する一端から共鳴管の共鳴室内に効率良く導き入れ、侵入する騒音の音波と共鳴室内で反射して出ていく騒音の音波との打ち消し作用により、共鳴室内に侵入した騒音を消音することができる。従って、生活環境に大きく影響する車両側方に放射されるタイヤ道路騒音を効果的に低減することができる。
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1,2は、本発明のタイヤ騒音低減装置の一実施形態を示し、1はタイヤ騒音低減装置、2はホイール、Tはホイール2のリム2Rに装着した空気入りタイヤである。
タイヤ騒音低減装置1は、ホイール2の側面に固定される回転部3と、この回転部3にに取り付けられる非回転部4と、非回転部4に配設される複数の共鳴管5を有している。回転部3は、円盤状の回転部本体6と、この回転部本体6の裏面6aの外周端部から一体的突設される環状のフランジ部7を備えている。このフランジ部7をリム2Rに形成した環状の取付孔2bに嵌合させることにより、タイヤ騒音低減装置1がホイール2に着脱自在に装着され、ホイール2に取り付けられた回転部3は、ホイール2と共に回転可能になっている。
ここでは、回転部3のフランジ部7をリム2Rの取付孔2bに嵌合固定する構成にしたが、それに代えて、ボルトなどの締結手段により回転部3をホイール2に固定するようにしてもよい。
回転部本体6の表面6bの中心部には、非回転部4を支持する支持軸8がホイール回転軸2Xと同軸上に突設され、その支持軸8の先端にベアリング9を介して非回転部4が回転自在に設けられている。
非回転部4は、支持軸8に取り付けられる円盤状の非回転部本体10と、この非回転部本体10の下側に配置した矩形板状の共鳴管取付部11を有している。非回転部本体10の表面10bの下側部分に一体的に突設した突起部12に、共鳴管取付部11の裏面11aの上端部が固定されている。非回転部本体10と回転部本体6との間には環状のベアリング13が配置され、回転部3に対して非回転部4が回転自在になっている。
このように下方に共鳴管取付部11を配置したことで非回転部4の重心がホイール回転軸2Xより下方に位置し、ホイール2に装着された回転部3がホイール2と共に回転した際に、非回転部4は回転せず、非回転部4の回転が阻止される構成になっている。
路面RSの近くまで延びる共鳴管取付部11の裏面11aの下側領域に、直線状に延在する複数の共鳴管5が取り付けられている。各共鳴管5は、一端5aが開口し、他端5bが閉止されており、共鳴管5内にはタイヤ道路騒音と共鳴する長さを有する共鳴室5X(図3参照)が形成されている。複数の共鳴管5は、開口する一端5aを下向きにして、所定の間隔でホイール2のディスク面2Dに沿う方向となる横方向に配列されている。
開口する一端5aは、共鳴管取付部11の下端に位置し、路面RSに接地する空気入りタイヤTのトレッド部T1の接地部分T1aに近い位置に配置されている。路面RSから共鳴管5の開口する一端5aまでの距離としては、例えば、70mm程度にすることができる。
複数の共鳴管5は、接地領域全体をカバーするように、路面RSと接地する空気入りタイヤTの周方向におけるタイヤ接地長TLを超えるように配列されている。このようにタイヤ接地長TLを超える範囲に共鳴管5を配置することより、空気入りタイヤTのトレッド部T1の接地部分T1aから車両側方外側に向けて放射されるタイヤ道路騒音を共鳴管5により効果的に低減するようにしている。
共鳴管5を構成する材料としては、一端が開口する共鳴室5Xを形成できればいずれの材料を使用してもよく、例えば、金属、樹脂、ゴムなどを挙げることができる。好ましくは、ゴムや樹脂などの弾性材料を使用するのがよく、それにより路面RS上の突起物などが共鳴管5に衝突した際に、共鳴管5が弾性変形して損傷を回避することができる利点がある。
共鳴管5の共鳴室5Xの長さLとしては、略4cm〜15cmにすることができる。一端を開口し、他端を閉止した管は、管内の空洞部の長さL1と音の周波数fが、L1=c/(4f)の関係を満足すると、開口する一端から空洞部内に入った音が共鳴する。即ち、管の空洞部内に入ってくる音波と反射により空洞部から出ていく音波が打ち消し合い、消音する共鳴現象を発生する。前述したパターンエアポンピング音などのタイヤ道路騒音の周波数は約570Hzから約2.1kHzの範囲であり、この範囲において共鳴室5Xが共鳴する長さが略4cm〜15cmである。なお、式中cは音速である。
これら複数の共鳴管5は、図1に示すように、共鳴室5Xの長さLが異なる複数の共鳴管から構成するのが好ましい。これによりタイヤと路面の相互作用により生じる複数の音の発生要因が絡み合って発生するタイヤ道路騒音をより効果的に低減することができる。図1に示す例では、共鳴室5Xの長さLが異なる3種類の共鳴管5から構成されているが、これに限定されず、共鳴室5Xの長さLが異なる2種類以上複数種類の共鳴管5から構成することができる。当然のことながら、タイヤの騒音特性により、共鳴室5Xの長さLが同じ1種類の共鳴管5から構成することも可能である。
上記した複数の共鳴管5は、円管状であっても、角管状であってもよく、その断面形状は特に限定されない。
上記のように構成されるタイヤ騒音低減装置1は、ホイール2に装着した際に、タイヤハウス(フェンダー)から外側にはみ出さない寸法になっている。
走行する車両側方には歩道や人家があるため、車両通過時にタイヤハウス内から車両側方外側に放射される音が、タイヤ道路騒音として生活環境に大きく影響する。この外側に放射される騒音は、主としてトレッド部T1と路面RSが接地する領域で発生する。そこで、本発明では、一端5aが開口する共鳴室5Xを有する複数の共鳴管5を開口する一端5aが下向きとなるようにして配列し、開口する一端5aをトレッド部T1と路面RSが接地する領域の方に向くようにしたのである。
これによりトレッド部T1と路面RSが接地する領域で発生する、タイヤ道路騒音として生活環境に大きく影響する騒音を開口する一端5aから共鳴管5の共鳴室5X内に効率良く導き入れて共鳴させ、音波の打ち消し合い作用により共鳴室5X内に侵入した騒音を消音することができる。従って、生活環境に大きく影響する車両側方に放射されるタイヤ道路騒音を効果的に低減することが可能になり、タイヤ道路騒音の改善に大きく寄与する。
また、タイヤ道路騒音の音源と共鳴管5の開口する一端5aが波長に比べて十分に近い距離となるため、発生音響パワー自体の低減も期待することができる。更に、車両の側方外側に放射されるタイヤ道路騒音の一部を非回転部4(共鳴管取付部11)により反射させ、側方外側への放射を抑えることができる。従って、タイヤ道路騒音の一層の改善が可能になる。
図4は、本発明のタイヤ騒音低減装置の他の実施形態を示す。このタイヤ騒音低減装置1は、図1,2に示すタイヤ騒音低減装置1において、更に下記の構成要素を加えたものである。従って、図1,2に示すタイヤ騒音低減装置1と同じ構成要素は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
図4のタイヤ騒音低減装置1は、非回転部4が、更に第2の共鳴管取付部14を備えている。共鳴管取付部11の一端側に板状の第2の共鳴管取付部14が取り付けられており、その裏面14aの下方側に、開口する一端5aを下向きにした上記共鳴管5が複数固定されている。この複数の共鳴管5は、空気入りタイヤTをリム組みしたホイール2にタイヤ騒音低減装置1を取り付けた際に、空気入りタイヤTのトレッド面T1a(図2参照)に対面する位置となるようにして、ホイール幅方向となる方向に所定の間隔で配列されている。
このように空気入りタイヤTのトレッド面T1bに対面する位置にも、開口する一端5aを下向きにした共鳴管5を配置することにより、車両前方向あるいは後方向に放射されるタイヤ道路騒音の低減も可能になり、タイヤ道路騒音の一層の改善が可能になる。
図4のタイヤ騒音低減装置1は、共鳴管5を取り付けた第2の共鳴管取付部14を共鳴管取付部11の一端側に設けたが、共鳴管取付部11の他端側に配設するようにしてもよく、更には共鳴管取付部11の両端側に設けるようにしてもよい。
図5に示すように、音源21から共鳴管5(共鳴室5Xの長さLが85mm、直径が40mm)を111mm離して、中心間距離44mmで13個の共鳴管5を直線状に配列し、その配列した共鳴管5の中央から0.5m離れた高さ0.25mの各位置P1〜P13(0〜180°まで15°間隔)で、音源21からの音圧レベルを1/3オクターブ中心周波数1000Hz帯でシミュレートしたところ、図6に示す結果を得た。0°の位置P1と180°の位置P13は共鳴管5がない場合と同等であった。図6から、車両の側方(真横)となる位置P7(90°の位置)において約8dB減衰し、大きな低減効果を得ることができるのがわかる。
本発明において、共鳴管5は、上記のように直線状に延在する構成に代えて、曲線状であってもよく、更には図7に示すように、文字や記号、数字などの表示体を構成する形状に形成してもよい。騒音低減効果は共鳴管5内の共鳴室5Xの長さに依存するため、各表示体の下端に位置する部分を開口し、その下端から共鳴室5Xの長さを適宜設定するようにすればよい。
表示体の形状に共鳴管5を形成した際に、共鳴管取付部11が透明な材料から構成されている場合には、表示体が視認できるので上述したように裏面11aに設けることができるが、共鳴管取付部11が非透明な材料から構成されている場合には、図7に示すように、共鳴管取付部11の表面11bに共鳴管5を取り付け、視認できるようにする。その際に、表示体の下端(共鳴管5の一端5a)の開口が共鳴管取付部11の下端より上に位置すると、共鳴管取付部11に遮られて開口からタイヤ道路騒音が共鳴室5X内に入り難くなるため、表示体の下端の開口が共鳴管取付部11の下端と同じか、それより下側となるようにする。
当然のことながら、図1,2,4に示す共鳴管5も、同様にして共鳴管取付部11の表面11bに設けることができる。
また、図8に示すタイヤ騒音低減装置1のように、共鳴管取付部11の裏面11aに上記共鳴管5を上下2段に配置するようにしてもよい。上側に配置される共鳴管5Mは、サイドウォール部T2やリム2Rが加振されることにより発生する加振音のタイヤ道路騒音を低減するために配置するものであり、共鳴室5Xの長さLがそのタイヤ道路騒音を低減する長さとなるようにしてある。図8の例では、複数の共鳴管5Mが斜めに傾斜するようにして配置され、開口する一端5Maを下向きにして開口する一端5Maがサイドウォール部T2やリムR2の近傍となるようにしている。
共鳴管5Mの開口する一端5Maが、サイドウォール部T2やリムR2の近傍となる位置になれば、開口する一端5Maは上記した下向きに限定されず、横向きであっても上向きであってもよい。
非回転部4は、上記実施形態では、円盤状の非回転部本体10に矩形板状の共鳴管取付部11を固定する構成にしたが、非回転部本体10と共鳴管取付部11とを一体構造にしたものであってもよく、例えば、図9に示すタイヤ騒音低減装置1のように、1枚の二等辺三角形状の板体から非回転部4を構成するようにしてもよい。
本発明のタイヤ騒音低減装置1は、特にタイヤ道路騒音の大きいバスやトラックなどに使用される重荷重用空気入りタイヤ用のタイヤ騒音低減装置として好ましく用いることができるが、当然のことながらそれに限定されない。
本発明のタイヤ騒音低減装置の一実施形態を示す正面図である。 図1のタイヤ騒音低減装置を、空気入りタイヤを装着したホイールのリムに取り付けた状態で示す断面図である。 共鳴管の拡大断面図である。 本発明のタイヤ騒音低減装置の他の実施形態を示す側面図である。 シミュレート条件を示す説明図である。 シミュレート結果を示すグラフ図である。 共鳴管の他の例を示す説明図である。 本発明のタイヤ騒音低減装置の更に他の実施形態を示す正面図である。 本発明のタイヤ騒音低減装置の更に他の実施形態を示す正面図である。
符号の説明
1 タイヤ騒音低減装置
2 ホイール
2D ディスク面
2R リム
2X ホイール回転軸
3 回転部
4 非回転部
5 共鳴管
5X 共鳴室
5a 一端
5b 他端
L 長さ
T 空気入りタイヤ
TL タイヤ接地長

Claims (8)

  1. ホイールに装着されるタイヤ騒音低減装置であって、前記ホイールの側面に固定され該ホイールと共に回転する回転部該回転部にベアリングを介してホイール回転軸を中心に前記回転部に対して回転自在に取り付けられ前記回転部の回転時に前記ホイール及び前記回転部と共に回転しない非回転部とを有し、該非回転部の下側部分に設けられた共鳴管取付部に一端が開口し他端が閉止された共鳴室を有する共鳴管を開口する一端が下向きとなるようにして複数配列したタイヤ騒音低減装置。
  2. 前記共鳴管をホイールのディスク面に沿う方向となる横方向に配列した請求項1に記載のタイヤ騒音低減装置。
  3. 前記共鳴管をタイヤ接地長を超えるように配列した請求項2に記載のタイヤ騒音低減装置。
  4. 前記共鳴管は、共鳴室の長さが異なる複数の共鳴管からなる請求項1,2または3に記載のタイヤ騒音低減装置。
  5. 前記共鳴管の上側に、更に一端が開口し他端が閉止された共鳴室を有する複数の共鳴管を配置した請求項1,2,3または4に記載のタイヤ騒音低減装置。
  6. 開口する一端を下向きにした前記共鳴管を、更にホイールのリムに装着される空気入りタイヤのトレッド面に対面する位置となるようにホイール幅方向となる方向に複数配列した請求項1乃至5のいずれかに記載のタイヤ騒音低減装置。
  7. 前記共鳴管の共鳴室の長さが4cm〜15cmである請求項1乃至6のいずれかに記載のタイヤ騒音低減装置。
  8. 前記共鳴管が弾性材料からなる請求項1乃至7のいずれかに記載のタイヤ騒音低減装置。
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