JP5115475B2 - 溶融ガラスの泡除去方法およびガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス溶解時に発生する泡の除去方法であって、特に溶融ガラス表面にある浮遊泡の除去方法に関する。
従来より、ガラス基板はガラス原材料を高温で溶融し、溶融ガラスを十分に撹拌した後、溶融ガラスを平板形状に成形し、冷却することにより製造されているが、原材料の溶融時には溶融ガラス中に多数の気泡が発生する。
従来、上記課題を解決するために、清澄剤の投入、溶融ガラスの攪拌またはバブリング(特開2004−91307号公報、特開平11−349335号公報参照)などによる泡の浮上および溶融ガラス表面での破泡を促進し、泡の除去を行ってきた。しかしながら、これらの手法を用いても、ガラスの組成ムラや溶融ガラス表面で破泡せずに残存する泡があり、特に清澄槽で残留した溶融ガラス表面の泡が成形時に内部に巻き込まれ、ガラス基板内部において欠点となることがしばしば問題となっている。
特開2004−91307号公報 特開平11−349335号公報
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ガラス基板製造時における溶融ガラス表面に残存する泡を効率よく除去する方法、泡除去装置および前記泡除去方法を用いたガラスの製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、溶融ガラス表面の浮遊泡の除去方法であって、少なくとも1つのレーザ光線を溶融ガラス表面の浮遊泡に対し照射し、溶融ガラス表面の浮遊泡の直径が0.5〜50mmであり、前記レーザ光線は、波長が3〜11μmであり、前記レーザ光線の繰り返し周波数が0.1Hz以上であり、かつ前記レーザ光線を少なくとも0.05秒以上照射し、前記レーザ光線を溶融ガラス表面の浮遊泡に対し、速さ200mm/秒以下で相対的に走査することを特徴とする溶融ガラスの泡除去方法を提供する。
本発明においては、前記レーザ光線を溶融ガラス表面に対し45°以上で照射することが好ましい。
また本発明においては、前記レーザ光線の溶融ガラス表面の浮遊泡における照射面積を、前記浮遊泡における前記レーザ光線照射部のエネルギー密度分布が最大の1/e(eは自然対数の底。以下同様。)となる部分を繋いだ曲線で囲まれる部分としたとき、浮遊泡に照射されるレーザ光線照射部の平均パワー/照射面積で定義されるレーザ光線の平均パワー密度が5〜50,000,000W/cmであることが好ましい。
また本発明においては、前記レーザ光線の浮遊泡における前記照射面積が、前記浮遊泡の投射断面積以下であることが好ましい。
本発明は、ガラス原材料を溶融した際に溶融ガラス表面に残留する浮遊泡を前記の溶融ガラスの泡除去方法で除去した後、溶融ガラスを成形し、固化することを特徴とするガラスの製造方法を提供する。
また本発明においては、溶融ガラスを連続的に供給してガラス板を製造する工程中で、溶融ガラス表面の浮遊泡除去を行うことが好ましい。
本発明によれば、溶融ガラスの表面に残存する泡に起因する欠点を除去できるので、品質のよいガラス基板を提供できるとともに、ガラス基板の生産性を向上させることができる。
本発明に係る泡除去方法を説明する概略断面図である。 本発明に係る泡の除去方法を説明する部分概略斜視図である。 本発明に係る泡除去方法の原理を説明図する模式図である。 本発明に係る泡除去装置の概略説明図である。
符号の説明
1:溶解槽、2:溶融ガラス、3:浮遊泡、4:レーザ光線、6:レーザ光導入窓
7:レンズ、8:レーザ光源、9:ミラー、10:揺らぎ、11:破泡、
12:レーザ光線を走査させる機構、13:レーザ光線を照射する機構、
14:センサ。
以下添付図面に従って、本発明の溶融ガラス表面に残存する泡の除去方法および除去装置の好ましい実施の形態について詳説する。
本発明において、除去する溶融ガラスの表面に存在する泡は、その内包されるガス成分は特に限定されず、また、溶融ガラスを構成するガラス材料も特に限定されない。したがって、本発明の方法はほとんど全てのガラス材料に適用可能である。なお、本発明における泡の除去とは泡の縮小化をも含むものである。
図1は本発明に係る泡除去方法を説明する概略断面図であり、図2は本発明に係る泡の除去方法を説明する部分概略斜視図であり、図3は本発明に係る泡除去方法の原理を説明図する模式図である。図1に示すように、本発明の泡除去方法は、溶解槽1内で溶融されている溶融ガラス2の表面の浮遊泡3にレーザ光源8で発生させたレーザ光線4を照射する。
レーザ光線4は、レーザ光源8で発生させ、レーザ光導入窓6の上部に設置されたミラー9で経路を変更され、レンズ7を通過して所望のレーザ光線4の断面を形成させて、溶解槽1に設置されたレーザ光導入窓6を介して溶融ガラス2の表面の泡に照射される。
溶解槽1は高温であるので、レーザ光源8は溶解槽1の温度の影響を受けない場所に設置するか、冷却装置を備えることが好ましい。さらに溶解槽1の上部に設置されたレーザ光導入窓6からの放熱やレーザ光導入窓6のメンテナンスを考慮して、レーザ光源8は、出力であるレーザ光線4を直接溶解槽1内に照射せず、レーザ光導入窓6の上部に設置されたミラー9を介して照射できる位置に設置することが好ましい。
ミラー9は金コートミラーが好ましいが、レーザ光導入窓6からの放熱の影響を受けにくく、反射によるレーザ光線4のパワー低下が浮遊泡3の破泡に必要なパワーを確保できるものであれば特定されるものでなく、レーザ光源8の設置角度と照射部4の設置角度に併せて調整できる機構を備えていることが好ましい。さらに、溶融ガラス2の表面の任意の位置の浮遊泡3に照射位置を合わせられる角度調整機構を備えていることが好ましい。
レンズ7は、レーザ光源8からのレーザ光線4を、所望のレーザ光線4に形成することができ、かつ、所望のレーザ出力を浮遊泡3の位置で得られれば、その形状、材質は特定されない。また、その構成は焦点距離に合わせて1枚でもよいし、複数枚でもよい。
レーザ光導入窓6の材質は、放射熱による影響を受けにくく、かつ赤外線透過材料であるセレン化亜鉛(ZnSe)が好適であるが、低パルス周波数のレーザ光線を吸収しにくく、透視性がよければ材質を特定されるものでない。また、レーザ光導入窓6は溶解槽1の雰囲気を保ちつつ、溶解槽1の内部にレーザ光線4を照射できればよいので、溶解槽の構造上、レーザ光線照射部が開放されていても問題なければ省略することができる。
レーザ光線4は、溶融ガラス2の表面に対する角度Aが45°以上となるように照射される。溶融ガラス2の表面に対する照射の角度Aが45°よりも小さいと溶融ガラス2の表面におけるレーザ光線4の断面が大きくなりすぎて、所望の幅にできなくなる恐れがあるので、角度Aは45°以上であることが好ましく、55°以上で照射することがより好ましい。
図3に示すように、本発明の方法による泡除去の原理は次のように考えられる。図3の(a)に示すように、レーザ光線4を溶融ガラス2の表面の浮遊泡3に照射すると、浮遊泡3の泡壁がレーザ光線4を吸収し、浮遊泡3は部分的に温度上昇が誘起される。そのため図3の(b)に示すように、浮遊泡3の泡壁面にガラス温度、密度および表面張力などの揺らぎ10が局所的に生じる。図3(c)に示すように、浮遊泡3はその揺らぎ10を起点として破泡11が起こる。浮遊泡3の部分的な揺らぎ10や破泡11は、溶融ガラス2が溶融温度以上であり、また溶融ガラス2の素地表面積に対して無視できるほどに小さいため、ガラス2の成形や固化の際にも溶融ガラス2に悪影響を与えない。
レーザ光線4は、波長が3ミクロン以上11ミクロン以下であることが好ましい。波長が3ミクロンよりも短いと、溶融ガラス2の表面に残存する浮遊泡3の溶融ガラス2の泡壁がレーザ光線4を吸収せず、浮遊泡3の泡壁面を十分に加熱できない恐れがある。また、11ミクロンより長い場合、レーザ装置の入手が困難であり現実的でない。
図2に示すように、レーザ光線4の溶融ガラス2表面の浮遊泡3における照射面積S4を、浮遊泡3におけるレーザ光線4の断面のエネルギー密度分布が最大の1/eとなる部分を繋いだ曲線で囲まれる面としたとき、レーザ光線4が照射される照射部の平均パワー/照射面積で定義される平均パワー密度が5〜50,000,000W/cmであることが好ましい。平均パワー密度が5W/cmに達しない場合、浮遊泡3に十分な揺らぎ10を与えることができず、破泡させられない恐れがあるため好ましくない。平均パワー密度が50,000,000W/cmを超える場合、レーザ光線4が溶融ガラス2に過剰に吸収され、溶融ガラス2からの揮散が誘起され、ガラスの組成ムラなどの原因となり好ましくない。平均パワー密度は10〜20,000W/cmであることがより好ましい。
レーザ光線4の浮遊泡3における照射面積S4が、浮遊泡3の投射断面積S3すなわち投影面積よりも小となるようにレーザ光線4を照射することが好ましい。レーザ光線4の照射面積S4が浮遊泡3の投射断面積S3より大きくなると、泡壁面に局所的な揺らぎを誘起することが困難となり、破泡できない恐れがあり好ましくない。
浮遊泡3の直径D3は、50mm以下であることが好ましい。直径D3が50mmを超える浮遊泡3は本発明の泡除去方法を用いなくとも泡自体で破泡するので、直径D3が50mm以下である浮遊泡3に用いることが効率的である。
レーザ光線4は、発振形態も特に限定されない。連続発振光(CW光)またはパルス発振光、連続発振光の変調光(連続発振光をON/OFFで変調し周期的に強度変化を与える)のいずれであってもよいが、0.1Hz以上のレーザ光線を0.05秒以上照射することが好ましい。より好ましくは0.2秒以上照射することである。特には、発振波長10.6μmの光線が最も一般的であるCOレーザが好ましく、この波長領域のレーザ光線4を照射した場合、浮遊泡3にレーザ光線4がほとんど吸収されて、レーザ光線4を照射した浮遊泡3の一部分の温度を局所的に上昇させることができる。また、0.1Hz以上の連続波のレーザ光線を0.05秒以上照射することにより、レーザ光線4の照射面積S4が浮遊泡3の投射断面積S3より大きくても、浮遊泡3を破泡させることができる。
レーザ光線4がパルス発振光である場合、パルス幅は600msec以下であることが好ましい。パルス幅が短いとより局所的な強い揺らぎを浮遊泡3に与えられるので、パルス幅は200msec以下であることがより好ましい。
本発明の方法では、レーザ光線4を溶融ガラス2の表面の浮遊泡3に対し、速さ200mm/秒以下で相対的に走査することにより好ましく破泡できる。少なくとも0.1Hz以上のレーザ光線4を0.05秒以上照射することにより浮遊泡3が破泡するので、レーザ光線4がパルス発振光である場合、0.1Hz以上のレーザ光線4が0.05秒以上浮遊泡3に照射がなされるパルス周波数とスキャン速度を用いることが好ましい。また、0.1Hz以上のレーザ光線4が0.05秒以上浮遊泡3に照射がなされるパルス周波数とスキャン速度を用いることにより、レーザ光線4の照射面積S4が浮遊泡3の投射断面積S3より大きくても、浮遊泡3を破泡させることができる。
また、本発明の泡除去方法は、溶融ガラス2を連続的に供給してガラスを製造するライン中で、連続的に溶融ガラス2の表面の浮遊泡3を除去することができる。その際、清澄剤の投入、消泡剤の泡層への散布、溶解槽1でのバブラーの使用、清澄槽の減圧、清澄槽出口でのスターラーの使用等他の脱泡手段と併用するとより効果が高い。本発明の泡除去方法は減圧条件下の溶解槽1において用いられることが好ましい。
図4は、本発明に係る泡除去装置の概略説明図である。図4に示すように、本発明の泡除去装置は、少なくとも1つのレーザ光線4を溶融ガラス2の表面の浮遊泡3に対し照射する機構13と、前記溶融ガラス2の浮遊泡3に対し相対的にレーザ光線4を走査させる機構12とを備えている。本発明の泡除去装置は、清澄槽の出口および成形工程、例えばフロート法におけるガラス板成形用のバスの入り口等、溶融ガラス2中の泡が上昇して、表面に集まっている場所に用いることが好ましく、減圧脱泡の下降管の上端部等のように溶融ガラス2が下流に向かって狭い幅で流れるところが特に好ましい。なお、溶融ガラス2が下流に流れる幅が広いところでは、溶融ガラス2の表層部にガイドをつけて浮遊泡3を集めること、およびレーザ光線4を複数備えることが好ましい。
また、溶融ガラス2を連続的に供給してガラスを製造するライン中で本泡除去装置を使用する場合、溶融ガラス2の浮遊泡3を自動的に検知できるセンサ14を併用し、このセンサ14の情報を基にレーザ光線4を照射する装置構成、溶融ガラス2が下流に流れる幅に対して複数のレーザ光線4を溶融ガラス2の幅方向にカーテン状に設置して照射する装置構成、また、溶融ガラス2が下流に流れる幅に対してレーザ光線4を前記幅方向にスキャニングして照射する装置構成が好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳説する。
ガラス原材料を溶融し、溶融ガラスを減圧条件下(210mmHg(128kPa))の溶解槽内に通し、次いで溶融ガラスをガラス板成形工程へ供給して、ガラス基板(商品名AN100、旭硝子株式会社製)を製造する工程において、図4に示す泡除去装置を使用して、上記溶解槽内の溶融ガラス表面の浮遊泡に対し炭酸ガス(CO)レーザ(波長は10.6μm)でレーザ光線を照射した。なお、本実施例において、泡の検知は溶解槽に取り付けられた内部観察用窓(図示せず)を通して、内部観察用窓の外部に取り付けられたカメラにより行った。照射にあたっては、レーザ光線を前記溶融ガラス表面の浮遊泡に対し照射部が円形状断面となるように照射した。そのときの条件を以下および表1に示す。なお、レーザ光線の溶融ガラスの表面に対する照射角度Aは70°とした。
浮遊泡の直径(投射断面における直径):B(mm)
浮遊泡における照射部直径 :C(mm)
浮遊泡の投射断面積 :S3(mm
浮遊泡における照射面積 :S4(mm
レーザ光線発振形態 :タイプ1 パルス発振光
(以下、発振形態ともいう) (繰り返し周波数1Hz、パルス幅200msec)
:タイプ2 擬似連続発振光(CW光)
レーザ光線平均パワー :P(W)
レーザ光線の平均パワー密度 :Q(W/cm
レーザ光線相対走査速度 :U(mm/sec)
Figure 0005115475
テストの結果、レーザ光線照射後実施例1、2では0.16秒、実施例3では0.1秒、実施例4では0.13秒、実施例5、6では0.12秒で泡を除去できた。実施例7では、レーザ光線照射後12秒で浮遊泡は破泡したものと、0.4mmまで縮小されたが破泡しないものが残存した。これに対して、比較例1は従来通りの溶解工程であり、浮遊泡は破泡せず残存した。なお、本実施例は減圧条件下(210mmHg)の溶解槽におけるものであるが、常圧の溶解槽内の溶融ガラス表面の浮遊泡に対し、レーザ光線を照射しても同様の効果が得られる。
本発明の方法は、ガラス内部の泡に起因する欠点が問題とされるようなガラス板に広く適用することができる。中でも、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイといったフラットパネルディスプレイ用ガラス基板に好適である。
また、本発明の方法は、フロート法、フュージョン法またはダウンドロー法などのガラス製造方法の工程中で用いることができる。

なお、2006年5月11日に出願された日本特許出願2006−132406号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (6)

  1. 溶融ガラス表面の浮遊泡の除去方法であって、少なくとも1つのレーザ光線を溶融ガラス表面の浮遊泡に対し照射し、
    溶融ガラス表面の浮遊泡の直径が0.5〜50mmであり、
    前記レーザ光線は、波長が3〜11μmであり、
    前記レーザ光線の繰り返し周波数が0.1Hz以上であり、かつ前記レーザ光線を少なくとも0.05秒以上照射し、
    前記レーザ光線を溶融ガラス表面の浮遊泡に対し、速さ200mm/秒以下で相対的に走査することを特徴とする溶融ガラスの泡除去方法。
  2. 前記レーザ光線を溶融ガラス表面に対し45°以上で照射することを特徴とする請求項1に記載の溶融ガラスの泡除去方法。
  3. 前記レーザ光線の溶融ガラス表面の浮遊泡における照射面積を、前記浮遊泡における前記レーザ光線照射部のエネルギー密度分布が最大の1/e(eは自然対数の底)となる部分を繋いだ曲線で囲まれる部分としたとき、浮遊泡に照射されるレーザー光線照射部の平均パワー/照射面積で定義されるレーザ光線の平均パワー密度が5〜50,000,000W/cmであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融ガラスの泡除去方法。
  4. 前記レーザ光線の浮遊泡における前記照射面積が、前記浮遊泡の投射断面積以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の溶融ガラスの泡除去方法。
  5. ガラス原材料を溶融した際に溶融ガラス表面に残留する浮遊泡を請求項1〜のいずれか1項に記載の溶融ガラスの泡除去方法で除去した後、溶融ガラスを成形、固化することを特徴とするガラスの製造方法。
  6. 溶融ガラスを連続的に供給してガラス板を製造する工程中で、溶融ガラス表面の浮遊泡除去を行うことを特徴とする請求項に記載のガラスの製造方法。
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