JP5115164B2 - インクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物、インクジェット記録用多層シート及びその製造方法並びにインクジェット記録体 - Google Patents
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Description
近年、インクジェット記録の技術が急速に進歩し、一般的な銀塩写真法によるものと同等以上の画像品質を有する記録物が得られるようになってきた。これに伴い、インクジェット記録媒体にも、銀塩写真法に用いられる印画紙と同等の質感を有するものが求められている。
この水性樹脂組成物を用いて質感に優れたインクジェット記録媒体を得るために、種々の検討がなされている。
このインクジェット記録用材料は、本発明者の検討によれば、白紙光沢やインク吸収性には優れているが、表面強度が劣るという問題がある。
しかしながら、この方法によって十分なインク光沢やインク吸収性を得るためには非常に厚い塗工層を設ける必要があることから塗工工程における乾燥負荷が増大して生産性に劣るのみならず、インクジェット記録シートを屈曲させた場合に塗工層が基材から脱落しやすい等の強度上の問題がある。
これらの特許文献によれば、光沢性、インク吸収性、プリント保存後の画像滲み耐性に優れ、かつ柔軟なインク吸収層が得られ、丸めたり折り曲げたりしてもひび割れが発生しない高品質のインクジェット記録紙が得られるとされている。
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記各成分を配合した塗工液は、塗料配合安定性に劣る、即ち、経時により、塗工液が増粘したり、塗工液中に凝集物が生成したりするという問題があることが判明した。
しかしながら、本発明者が検討したところ、印字画像の鮮明性が必ずしも十分ではないことが分かった。
本発明者は、この目的を達成すべく、上記特定の水溶性高分子化合物を用いて得られる特定の重合体を用いて鋭意検討を進め、この特定の重合体と特定の組み合わせのコロイダルシリカとを用いればよいことを見出し、この知見に基づいて、更に検討を進めて、本発明を完成するに至った。
ポリビニルアルコールのうち少なくとも一部が重合体に結合又は吸着しており、他方、コロイダルシリカ(B)が、固形分換算で、酸性コロイダルシリカ20〜80重量%とカチオン性コロイダルシリカ80〜20重量%とからなるものである、インクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物が提供される。
本発明のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物において、コロイダルシリカ(B)が、固形分換算で、酸性コロイダルシリカ30〜70重量%とカチオン性コロイダルシリカ70〜30重量%とからなるものであることが好ましい。
本発明のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物において、疎水基を有するポリビニルアルコールがその分子末端に疎水基を有するものであることが好ましい。
また、本発明のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物において、ポリビニルアルコールが有する疎水基が、炭素数5以上、20以下の炭化水素基であることが好ましい。
また、本発明によれば、支持体表面に少なくとも1層のインク受理層を形成し、次いで、このインク受理層の最上層上に、本発明のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物を塗工し、次いでこれを乾燥して光沢発現層を設けるインクジェット記録用多層シートの製造方法が提供される。
本発明のインクジェット記録用多層シートの製造方法において、インクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物を塗工し、乾燥した後、カレンダー処理に付することにより、光沢発現層を設けることもできる。
更に、本発明によれば、本発明のインクジェット記録用多層シートを用いてなるインクジェット記録体が提供される。
本発明で用いるインクジェット記録媒体用バインダー(A)は、重合体とアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物とを含有してなり、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物のうち少なくとも一部が重合体に結合又は吸着している。
インクジェット記録媒体用バインダー(A)は、光沢発現層用塗工組成物へ配合される必要成分及び任意成分を分散させるための媒体として機能するとともに、それらを後述するインク受理層へ固着させ、光沢発現層を形成するためのバインダー機能を有する。
このような重合体を得るための単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩やカリウム塩、等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸及びそのエステル、アミド等の誘導体;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸及びそのエステル、無水物、アミド等の誘導体;スチレンスルホン酸等のエチレン性不飽和スルホン酸及びそのエステル、アミド等の誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン等の共役ジエン;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;酢酸アリル、酢酸メタリル、塩化アリル、塩化メタリル等のアリル化合物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物;ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のビニル複素環化合物;等を挙げることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び/又は「メタクリル酸」を意味する。同様に、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」及び/又は「メタクリロニトリル」を意味する。
エチレン性不飽和モノカルボン酸のエステル誘導体の好適な具体例としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸と炭素数1〜12のアルコールとのエステル及びその誘導体が挙げられ、その具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等を挙げることができる。
また、エチレン性不飽和モノカルボン酸のアミド誘導体の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩等を挙げることができる。
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール及びその各種変性物等のビニルアルコール系重合体;酢酸ビニルとアクリル酸、メタクリル酸又は無水マレイン酸との共重合体の完全鹸化物又は部分鹸化物;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシルメチル澱粉、酸化澱粉等の澱粉誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム;ポリアルキレングリコール等を挙げることができる。中でも、工業的に品質が安定したものを入手しやすい点から、ビニルアルコール系重合体が好ましい。
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物が有する疎水基は、炭素数が5以上、20以下の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、脂肪族基であっても、脂環基であっても、芳香族基であってもよい。
疎水基を有するアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物において、疎水基の位置は、特に限定されず、水溶性高分子化合物の分子末端に存在していても、分子鎖の中間位置に存在していてもよいが、分子末端に存在しているものが好ましい。
疎水基の量は、特に限定されないが、疎水基を有するアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の全重量に対して、通常、0.5〜20重量%である。
例えば、疎水基を有するアルコール性水酸基含有ポリビニルアルコールの場合は、炭素数5以上、20以下の炭化水素基を有する疎水性単量体を酢酸ビニルと共重合して得られる共重合体を部分ないし完全鹸化する方法や、アリルグリシジルエーテル、ブタジエンモノエポキシド、N−グリシドキシメチルアクリルアミド等を酢酸ビニルと共重合した後、チオール化合物の存在下に、鹸化することによって分子鎖の中間位置に疎水基を導入する方法を挙げることができる。この後者の方法によれば、共重合に使用するエポキシ基含有単量体の量を制御することにより、疎水基の量を制御することができる。更に、疎水基を有するアルコール性水酸基含有ポリビニルアルコールは、疎水基を有しないポリビニルアルコールを、炭素数5以上、20以下の炭化水素基を有する反応性化合物により、エーテル化、エステル化又はアセタール化することによっても得ることができる。
また、本発明で用いるインクジェット記録媒体用バインダー(A)において、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物のうち少なくとも30重量%が重合体に結合又は吸着していることが好ましい。結合又は吸着の程度は、使用するアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の種類及び使用量で調整することができる。
このアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物が重合体に結合又は吸着していることにより、得られるインクジェット記録媒体の表面強度及び耐水表面強度が優れ、これから得られるインクジェット記録体の印字濃度及び鮮明性が優れたものになるという効果が発揮される。
好適には、本発明で用いるインクジェット記録媒体用バインダー(A)は、アニオン性界面活性剤の存在下で第一の単量体の重合を行ない、次いで、得られたラテックスに、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物及び第二の単量体を添加して、更に重合を継続すること(この方法を「二段階重合法」という。)によって得られるが、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の存在下で、全単量体を一括して重合させること(この方法を「一括重合法」という。)によっても得ることができる。
なお、本発明において、「単量体」は、「単量体混合物」をも包含する概念である。
第一段階の重合に用いる単量体の比率は、特に限定されないが、全単量体のうち、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。
第一段階の重合に用いる単量体(この単量体を「第一の単量体」ということがある。)の組成は、特に限定されないが、第一段階の重合で得られる重合体のガラス転移温度が−85〜+60℃、好ましくは−60〜+20℃となるようなものであることが好ましい。
カルボン酸塩界面活性剤の具体例としては、脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等を挙げることができる。
スルホン酸塩界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルアルキルスルホン酸塩等を挙げることができる。
燐酸エステル塩界面活性剤の具体例としては、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩等を挙げることができる。
前記のアニオン性界面活性剤は、1種類を単独で使用し又は2種類以上を併用することができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステルを挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤の具体例としては、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤の具体例としては、フッ化アルキル脂肪酸エステル等を挙げることができる。
前記のノニオン性界面活性剤は、1種類を単独で使用し又は2種類以上を併用することができる。
水性媒体としては、水、又は水とこれと混和可能な有機溶媒との混合物を使用することができる。
第一段階の重合において、単量体と水性媒体との比率は、特に限定されないが、通常、水性媒体100重量部に対して、単量体が5〜100重量部、好ましくは10〜70重量部、より好ましくは10〜55重量部である。
無機過酸化物重合開始剤の具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過リン酸カリウム等の過リン酸塩;過酸化水素;等を挙げることができる。
有機過酸化物重合開始剤の具体例としては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド;等を挙げることができる。
アゾ化合物重合開始剤の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等を挙げることができる。
上記開始剤の中でも、水溶性ラジカル重合開始剤が好ましく、中でも過硫酸塩が好ましく、とりわけ、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムが好ましい。
これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、これらの重合開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。還元剤は特に限定されず、その具体例としては、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;等が挙げられる。これらの還元剤は1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
還元剤の使用量は、還元剤によって異なるが、重合開始剤1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
メルカプタン化合物の具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等を挙げることができる。
スルフィド化合物の具体例としては、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等を挙げることができる。
ニトリル化合物の具体例としては、2−メチル−3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリル等を挙げることができる。
チオグリコール酸エステルの具体例としては、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸オクチル等を挙げることができる。
β−メルカプトプロピオン酸エステルの具体例としては、β−メルカプトプロピオン酸メチル、β−メルカプトプロピオン酸オクチル等を挙げることができる。
これらの中でもメルカプタン化合物が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。
これらの連鎖移動剤は1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、単量体の添加方法も、特に限定されず、第一段階の重合に用いる単量体について、全量を一括添加しても、全量を逐次添加しても、一部を添加した後、残部を一括添加又は逐次添加してもよい。
なお、重合を安定化させ、得られるインクジェット記録媒体用バインダー(A)の安定性を向上させる観点からは、単量体を重合系に添加する場合は、水性媒体及び界面活性剤等を用いた乳化液として添加するのが好ましい。
更に、重合時の攪拌条件も特に限定されない。
第二段階の重合は、第一段階の重合で得られたラテックスに、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物及び全単量体のうち第一段階の重合で使用した残部(これを「第二の単量体」ということがある。)を添加して、更に重合を継続することによって行なう。
第一段階で用いる単量体と第二段階で用いる単量体とは、同一の組成であっても異なる組成であってもよい。第二の単量体の組成は、特に限定されないが、第二の単量体のみを重合したときに得られる重合体のガラス転移温度が−30〜+100℃、好ましくは−10〜+90℃の範囲となるようなものであることが好ましい。また、第二段階のガラス転移温度が第一段階のガラス転移温度よりも高いほうが好ましい。
第二段階の重合において、必要に応じて、重合触媒を追加添加してもよい。用いる重合触媒は、第一段階に用いるものと同じでも異なっていてもよい。
なお、第二段階の重合を、2段以上に分割して実施してもよい。即ち、第二の単量体の一部を重合した後、残部を更に何回かに分けて重合してもよい。
この使用量が上記範囲内にあることにより、重合時の分散安定効果が高くなり、また重合系の粘度も適正となり、重合が円滑に進行し、且つ、得られるインクジェット記録媒体用バインダー(A)を用いたインクジェット記録媒体の耐水性が優れたものとなる。
第二段階の重合時にノニオン性界面活性剤を追加添加することにより、得られるインクジェット記録媒体用バインダー(A)のカチオン安定性が向上するという効果が得られる。
使用できるノニオン界面活性剤の具体例は、第一段階の重合時に使用できるものに同じである。
第二段階の重合で追加添加するノニオン性界面活性剤の量は、特に限定されないが、第二段階で使用する単量体100重量部に対して、通常、5.0重量部以下、好ましくは3.0重量部以下である。この量が多すぎると、最終的に得られるインクジェット記録媒体の耐水性が低下する恐れがある。
第二段階の重合において、追加添加するノニオン性界面活性剤は、第二段階において添加する単量体及びアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物とともに分散液又は乳化液として添加するのが簡便である。
なお、第二段階の重合において、アニオン性界面活性剤を使用すること又は重合後にこれをラテックスに添加することは、得られるインクジェット記録媒体用バインダー(A)のカチオン安定性を低下させるので、好ましくない。
重合終了後、常法により、未反応単量体の除去、希釈又は濃縮等による濃度調整、pH調整等を行なって、インクジェット記録媒体用バインダー(A)を得る。
一括重合で得られるインクジェット記録媒体用バインダー(A)のガラス転移温度は、−30〜+100℃、好ましくは−10〜+90℃の範囲である。
重合は、水性媒体中、水溶性高分子の存在下で行なうことが好ましいが、アニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を存在させてもよい。このとき、使用する水性媒体の量は、特に限定されないが、通常、単量体とアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物との合計濃度が、20〜40重量%となる範囲である。
重合開始剤、連鎖移動剤等の重合副資材及び重合温度、攪拌条件、最終重合転化率等の重合条件並びに重合終了後の後処理等は、二段階重合法の場合と同じでよい。
pH調整の方法は、特に限定されず、塩基性化合物又は酸性化合物をインクジェット記録媒体用バインダー(A)に添加することにより行なうことができる。
塩基性化合物は、特に限定されないが、アンモニア又はアミンを使用することが好ましい。
アミンとしては、第三級アミンが好ましく、その具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン等を挙げることができる。
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
塩基性化合物としては、このほか、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を使用することもできる。
また、インクジェット記録媒体用バインダー(A)のpHを低下させるには、炭酸ガス、塩酸、硝酸、硫酸等の酸性化合物を用いればよい。
これらの塩基性化合物及び酸性化合物の使用量は、pHを上記範囲に設定できるように選定すればよく、特に限定されない。
コロイダルシリカ(B)は、固形分換算で、酸性コロイダルシリカ20〜80重量%とカチオン性コロイダルシリカ80〜20重量%とからなる。酸性コロイダルシリカとカチオン性コロイダルシリカとの比率は、固形分換算の重量比で、酸性コロイダルシリカ/カチオン性コロイダルシリカ=(30〜70)/(70〜30)であることが好ましく、(40〜70)/(60〜30)であることがより好ましい。この比率が上記の範囲内にあるときに、光沢度、印字濃度、耐水性、インク吸収性及び印字画像の鮮明性の全てに優れたインクジェット記録体を得ることができる。
コロイダルシリカ(B)は、無水ケイ酸(酸化ケイ素:SiO2)の超微粒子を安定に分散したコロイド溶液である。
酸性コロイダルシリカは、通常、5〜60重量%の酸化ケイ素を含有するシリカゾルの形態を有している。本発明においては、酸化ケイ素濃度が30〜50重量%程度のものを用いるのが好ましい。また固形分濃度が30〜50重量%程度のものを用いるのが好ましい。
酸化ケイ素のBET法による平均粒径は、50nm以下であることが好ましく、20〜30nmであることがより好ましい。
また、酸性コロイダルシリカゾルのpHは、1〜6であり、好ましくは2〜4である。なお、シリカゾルのpHは、pH計(HORIBA社製、商品名「pHMETER M−12」)を用いて、20℃で、コロイダルシリカ原液について測定する。
また、酸性コロイダルシリカゾルの粘度は、通常、1〜50mPa・sである。
カチオン性コロイダルシリカの調製に用いるシランカップリング剤は、アミノ基又は4級カチオン基を含有するものであればよい。その具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(α,γ−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン塩酸塩、オクタデシルジメチル−(γ−トリメトキシシリルプロピル)−アンモニウムクロライド等が挙げられる。
中でも、コロイダルシリカとの反応性が良好であることから、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含む有機溶媒溶液のpHは、7未満とすればよいが、コロイダルシリカとの反応性を向上させるために、5以下が好ましく、3以下が更に好ましく、1以下が特に好ましい。
コロイダルシリカとしては、pHを調整する前のコロイド溶液のpHが7以上のコロイダルシリカを用いてもよいが、シランカップリング剤との反応性から、塩酸等の酸により、予めpHを7未満、好ましくはpH5以下、より好ましくはpH3以下としたゾル状のものを用いるのが好ましい。
コロイダルシリカは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
コロイダルシリカ中のSiO2(固形分)濃度は、シランカップリング剤との反応性の観点から、5〜60重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、10〜30重量%が最も好ましい。
コロイダルシリカの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.15μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましい。
平均粒子径を0.15μm以下とすることにより、インクジェット用紙における記録画像の光沢度が向上する。また、解像度も向上し、鮮明な記録画像が得られる。
なお、ここで平均粒子径とは、光散乱法により測定した平均粒子径であり、全分散粒子の粒子径の平均をいう。
pHの調整には、無機酸、中でも塩酸、硝酸及び硫酸を用いるのが好ましい。また、酢酸等の有機酸を用いてもよい。
両者の混合方法は、シランカップリング剤を含む有機溶媒溶液をコロイダルシリカに滴下しながら混合してもよく、逆に、コロイダルシリカをシランカップリング剤を含む有機溶媒溶液に添加して混合してもよい。
反応温度は、特に限定されないが、シランカップリング剤とコロイダルシリカとを充分に反応させるため、両者を混合後、40〜95℃に加熱することが好ましい。
反応液中のシランカップリング剤とコロイダルシリカ中のSiO2との合計の濃度(固形分濃度)は、5〜60重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、10〜30重量%が最も好ましい。
ゼータ電位は、+5mV以上となることが好ましく、+10mV以上となることがより好ましい。
ゼータ電位が+5mV以上となることにより、得られるカチオン性コロイダルシリカの分散安定性が良好なものとなる。
また、ゼータ電位がプラスの値を示す場合は、得られるカチオン性コロイダルシリカを用いたインクジェット用紙における印刷後の記録画像の解像度が良好なものになり、鮮明な記録画像が得られる。
上記ゼータ電位範囲を得るためには、通常、コロイダルシリカ中のSiO2(固形分)100重量%に対して、シランカップリング剤0.01〜30重量%が好ましく用いられる。
ゼータ電位は、試料原液をESA法、具体的には、AcoustoSizer IIs(Colloidal DyNamics社製)測定装置により測定することができる。
酸化ケイ素のBET法による平均粒径は、50nm以下であることが好ましく、20〜30nmであることがより好ましい。
また、カチオン性コロイダルシリカゾルの粘度は、通常、1〜50mPa・sである。
これらのコロイダル粒子の配合量は、通常、コロイダルシリカ(B)の5〜40重量%程度である。
架橋剤は、インクジェット記録媒体用バインダー(A)を構成する重合体が有する基と反応しうる基を有する化合物又はインクジェット記録媒体用バインダー(A)を構成する重合体が有する反応基間の反応を促進する化合物であれば、特に限定されず、その具体例としては、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;ホルムアルデヒド、グリオキザール等のアルデヒド系架橋剤;2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等の活性ハロゲン系架橋剤;1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等の活性ビニル系化合物;ホウ酸及びその塩;ホウ砂;アルミ明礬;等が挙げられる。
これらの成分の使用量、光沢発現層用塗工組成物への配合方法等は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
本発明のインクジェット記録用多層シートは、必要に応じて、インク受理層を多層構成としてもよい。
インク受理層は、バインダーとして水溶性バインダーを有するものであることが好ましい。水溶性バインダーの存在により、光沢発現層とインク受理層との界面との間の接着性が発揮される。
これらのうち、原紙、塗工紙及び合成紙が好ましい。
支持体への塗布量も特に限定されないが、通常、1〜50g/m2、好ましくは3〜30g/m2である。全塗工層の厚さは、通常、10〜40μmである。
インク受理層用塗工組成物を支持体へ塗布した後、必要に応じて40〜150℃の範囲の適当な温度で加熱して乾燥することにより、支持体上にインク受理層を形成することができる。
次いで、このインク受理層上に光沢発現層用塗工組成物を塗布した後、必要に応じて40〜150℃の範囲の適当な温度で加熱して乾燥することにより、支持体上にインク受理層及び光沢発現層を有する本発明のインクジェット記録用多層シートを得ることができる。
また、各特性の評価方法は以下のとおりである。
固形分濃度30%のインクジェット記録媒体用バインダー40gを枠付きガラス板(16cm×23cm)に流延し、20℃で乾燥して、膜厚0.3mmのインクジェット記録媒体用バインダーのフィルムを得る。このフィルムを約4cm四方の正方形にカットし、325メッシュの金網の籠に約2.5gを精秤(X)(単位:g)して入れ、これをソックスレー抽出装置上部に入れて、蒸留水300mlをソックスレー抽出装置下部のフラスコに加え、100℃で100時間還流する。次いで、金網の籠の中のフィルム残渣を蒸留水で洗浄後、100℃で減圧乾燥し、残留物の重量(Y)(単位:g)を測定する。浸漬前後のフィルム重量(X)及び(Y)、並びに重合時の仕込み量及び重合転化率から計算される浸漬前フィルム中の水溶性高分子化合物量(Z)(単位:g)を下記式(1)に当てはめて、使用した水溶性高分子化合物量に対する、重合体に結合又は吸着した水溶性高分子化合物の割合(%)を算出する。
{〔Z−(X−Y)〕×100}/Z (%)(1)
インクジェット記録媒体用バインダーの固形分濃度を、減圧濃縮又は脱イオン水の添加により20重量%に調整した後、25℃で、B型粘度計を用いて測定する。
光散乱回折粒径測定装置(コールター社製、商品名「LS−230」)を用いて、インクジェット記録媒体用バインダーの体積基準の粒度分布に基づき、算術平均して計算される平均粒子径(「体積平均粒子径」という。)として求める。
インクジェット記録媒体用バインダーを、アルミ皿上に採取し、常温で乾燥後、更に40℃で真空乾燥して試料を得る。この試料について、高感度示差走査熱量計(セイコーインスツルメント社製、商品名「EXSTAR6000」)を用いて、昇温速度10℃/分で測定する。
pH計(HORIBA社製、商品名「pHMETER M−12」)を用いて、20℃の条件で測定する。
コロイダルシリカ100部に、インクジェット記録媒体用バインダーを固形分換算で20部添加し、固形分濃度を40%に調整した後、場合によりホウ酸を5%水溶液として添加し、更に、脱イオン水を添加して固形分濃度を35%に調整した後、25℃で、B型粘度計を用いて測定する。
グロスメーター(村上色彩社製、商品名「GM−26D」)を用いて、入射角75度、反射角75度の条件で、インクジェット記録用多層シート(インクジェット記録媒体)表面の光の反射率(%)を測定する。数値が大きいほど、白紙光沢に優れている。
23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、商品名「PM−870C」)を用いて、インクジェット記録用多層シートに、黒(BK)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びイエロー(Y)各々のインクをベタ塗り印刷する。この印刷物の各インクのベタ部の印字濃度を、マクベスインキ濃度計を用いて測定し、各インクについての印字濃度の数値を単純平均する。数値が高いほど、印字濃度が濃いことを示す。
インクジェット記録体に水滴を落とし、5分後に、この部分を手で軽く擦る。このときの光沢発現層の状況を下記の基準に従って判断して、耐水性を評価する。
○:光沢発現層に全く変化が見られなかった。
△:光沢発現層が僅かに剥がれた。
×:光沢発現層が部分的に剥がれた。
印字面に上質紙を貼り合わせてインクが上質紙に転写されるかどうかを、上質紙を印字面に貼り合わせる時間を、印字直後、5秒経過後、10秒経過後、のように、5秒間隔で30秒後まで変化させて、観察して、転写が起こらなくなるまでの時間を調べる。
インク吸収性を、下記の3段階で評価する。
○:5秒以内で転写しなくなる。
△:5秒超〜10秒以内で転写しなくなる。
×:10秒超〜30秒以内で転写しなくなる。
23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、商品名「PM−870C」)を用いて、インクジェット記録用多層シートに印字する。この印字画像の鮮明性を下記の基準に従い目視で判定する。
○:印字画像が非常に鮮明でコントラストがはっきりしている。
△:印字画像が鮮明であるが、コントラストはあまりはっきりせず、やや白ボケ気味であり、実用に耐えない。
×:印字画像が鮮明でなく、白ボケ気味であり、実用に耐えない。
(インクジェット記録媒体用バインダーL1)
攪拌機付きの耐圧容器(第一段階の重合用乳化液の調製容器)に、脱イオン水150部、スチレン15.2部、ブタジエン24部、メタクリル酸0.8部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)(ダウファックス社製、商品名「ダウファックス2AI」)1.6部及びt−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)0.05部を添加し、内温を57℃として、過硫酸カリウム(重合開始剤)0.12部を添加して重合を開始し、重合転化率が60%となった時点で温度を70℃として更に重合を継続した。
反応を開始してから11時間後(このときの重合転化率は97%であった。)、メタクリル酸メチル30部、アクリル酸ブチル30部、片末端に疎水基(炭素数12の炭化水素基)を有するポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「PVA−MP102」)(以下、「疎水基を有するポリビニルアルコールP1」という。)8部、過硫酸カリウム0.3部及び脱イオン水50部を撹拌混合して得た単量体乳化物を、3時間掛けて添加し、添加終了後、更に2時間反応を継続した。その後、冷却して反応を終了させた。この時の重合転化率は98.5%であり、得られたラテックスの固形分濃度は32.0%であり、重合体のテトラヒドロフラン不溶解分は96.3%であった。
未反応単量体を除去した後、固形分濃度を32.0%に調整して、インクジェット記録媒体用バインダーL1を得た。このもののpHは2.3であった。
得られたインクジェット記録媒体用バインダーL1の粘度は470mPa・sであり、体積平均粒子径は71nmであり、ガラス転移温度として、−32℃と16℃の2点が観測された。また、グラフト効率は87重量%であった。
(インクジェット記録媒体用バインダーL2)
耐圧オートクレーブに、脱イオン水150部、スチレン42.5部、メタクリル酸メチル21.2部、アクリロニトリル21.2部、ブタジエン14.2部及びメタクリル酸0.9部並びに鹸化度88モル%、重合度500のポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「PVA205」)15部を投入して、混合攪拌し、単量体乳化物を得た。
温度計を備えた耐圧オートクレーブに、脱イオン水66部及びエタノール6部を仕込み、60℃に加温した。反応系を60℃に維持した状態で、過硫酸カリウム3.0部を脱イオン水50部に溶解した開始剤溶液を添加し、直ちに、上記の単量体乳化物の添加を開始した。単量体乳化物の添加は、4時間半掛けて行なった。添加終了後、更に3時間重合反応を継続したのち、反応系を冷却して反応を終了させた。重合転化率は98%であった。
得られたラテックスから未反応単量体を除去した後、pHを水酸化ナトリウム水溶液で7.0に調整して、固形分濃度30%のインクジェット記録媒体用バインダーL2を得た。
得られたインクジェット記録媒体用バインダーL2の粘度は40mPa・sであり、体積平均粒子径は160nmであり、ガラス転移温度は18℃であった。また、重合体のテトラヒドロフラン不溶解分は95.0%であった。グラフト効率は40重量%であった。
分散機中で、湿式シリカ(トクヤマ社製、商品名「ファインシールX−45」)100部及びポリリン酸ナトリウム0.5部を水に分散させ、次いで、鹸化度約98.0〜99.0モル%、重合度1,700のポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「PVA117」)15部(固形分換算)を10%水溶液として添加し、更に、カチオン化剤ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(センカ社製、商品名「DADMAC、ポリダドマック」)10部(固形分換算)を30%水溶液として添加し、30分間混合して、固形分濃度17%のアンダー層(インク受理層)塗工組成物を得た。
分散機に、酸性コロイダルシリカ(日産化学工業社製、商品名「スノーテックスO−40」、固形分濃度=40%、粒子径25nm、pH3.9、粘度7.5mPa・s)を固形分換算で70部、カチオン性コロイダルシリカ(日産化学工業社製、商品名「スノーテックスAK」、固形分濃度=19%、pH4.0、粒径:10〜20nm、粘度12.5mPa・s)を固形分換算で30部及びインクジェット記録媒体用バインダーL1を固形分換算で20部添加して10分間分散させた。脱イオン水を添加して固形分濃度を27%に調整し、光沢発現層用塗工組成物S1を得た。このものの粘度は、180mPa・sであった。
アンダー層塗工組成物を坪量が130g/m2の上質原紙に、乾燥重量が片面15g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗工し、120℃の熱風乾燥機で60秒間乾燥した。この塗工紙上に光沢発現層用塗工組成物S1を、乾燥重量(以下、「塗被量」ともいう。)が片面で19.0g/m2となるように塗工し、120℃の熱風乾燥機で60秒間乾燥して、塗工紙を得た。得られた塗工紙を、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、一晩調湿した。その後、塗工紙を、実験用ミニカレンダーを用いて、80℃、線圧75Kg/cmの条件で、3回カレンダー処理して、インクジェット記録シートM1を得た。この記録シートM1の光沢度、印字濃度、耐水性、インク吸収性及び印字画像の鮮明性を評価した。その結果を表1に示す。
(光沢発現層用塗工組成物S2〜6)
インクジェット記録媒体用バインダーの種類並びに酸性コロイダルシリカ及びカチオン性コロイダルシリカの種類と量を表1に示すように、それぞれ、変更するほかは、実施例1と同様にして、光沢発現層用塗工組成物S2〜S6(全て固形分濃度は27%)を得た。
なお、表中、カチオン性コロイダルシリカK1は、日産化学工業社製、商品名「スノーテックスAK」、同K2は、日産化学社製、商品名「スノーテックスAK−L」(固形分濃度=20.3%、pH4.3、粒径:平均粒径45nm、粘度7.5mPa・s、Al2O3含有量1.1%)、同K3は、日産化学社製、「スノーテックスAK−YL」(固形分濃度=30.1%、pH4.2、粒径:平均粒径80nm、粘度7.0mPa・s、Al2O3含有量0.9%)である。
光沢発現層用塗工組成物S1に代えて光沢発現層用塗工組成物S2〜S6を、それぞれ、使用し、塗被量をそれぞれ表1に示すように変更したほかは実施例1と同様にしてインクジェット記録シートM2〜M6を得た。その特性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(光沢発現層用塗工組成物SC1〜SC2)
酸性コロイダルシリカ及びカチオン性コロイダルシリカの種類と量を表1に示すように、それぞれ、変更するほかは、実施例1と同様にして、光沢発現層用塗工組成物SC1〜SC2(全て固形分濃度は27%)を得た。
光沢発現層用塗工組成物S1に代えて光沢発現層用塗工組成物SC1(比較例1)又はSC2(比較例2)をそれぞれ使用し、塗被量をそれぞれ表1に示すように変更したほかは実施例1と同様にしてインクジェット記録シートMC1(比較例1)、MC2(比較例2)を得た。その特性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(光沢発現層用塗工組成物SC3)
カチオン性コロイダルシリカに代えてアルミナゾル(塩酸安定型、Al2O3含有量10%、Cl濃度3%以下、粘度7,500mPa・s。日産化学社製)を使用し、酸性コロイダルシリカ及びアルミナゾルの使用量(固形分換算)を表1に示すように、それぞれ、変更したほかは、実施例7と同様にして、光沢発現層用塗工組成物SC3(固形分濃度は27%)を得た。
光沢発現層用塗工組成物S1に代えて光沢発現層用塗工組成物SC3を使用し、塗被量を19.6g/m2に変更したほかは実施例1と同様にしてインクジェット記録シートMC3を得た。その特性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(光沢発現層用塗工組成物SC4)
酸性コロイダルシリカとアルミナゾルの使用量を表1に示すように変更したほかは、比較例3と同様にして、光沢発現層用塗工組成物SC4を得ようとしたが、酸性コロイダルシリカ、アルミナゾル及びインクジェット記録媒体用バインダーL2を添加したところ、系内の粘度が非常に高くなり、その後間もなく系内が固化してしまい、光沢発現層用塗工組成物SC4を得ることができなかった。
インクジェット記録媒体用バインダー(A)及びコロイダルシリカ(B)を含有してなるインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物において、コロイダルシリカ(B)として、酸性コロイダルシリカ20〜80重量%とカチオン性コロイダルシリカ80〜20重量%とからなるものを用いることにより、光沢度、印字濃度、耐水性、インク吸収性及び印字画像の鮮明性の各特性に優れたインクジェット記録体を得ることができる(各実施例)。
これに対して、酸性コロイダルシリカとカチオン性コロイダルシリカとの比率が本発明の規定を外れる場合、このコロイダルシリカを含有するインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組組成物から得られるインクジェット記録媒体は、光沢度、印字濃度、インク吸収性及び印字画像の鮮明性の各特性に劣ることが分かる(比較例1及び2)。
また、カチオン性コロイダルシリカに代えてアルミナゾルを使用した場合は、得られるインクジェット記録媒体は、光沢度、印字濃度、インク吸収性及び印字画像の鮮明性の各特性に劣ることが分かる(比較例3)。
また、カチオン性コロイダルシリカに代えてアルミナゾルをコロイダルシリカ全体の20重量%(固形分換算:本発明で規定したカチオン性コロイダルシリカの使用範囲内の量)使用した場合は、インクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物を得ることができず、固化してしまった(比較例4)。
Claims (11)
- インクジェット記録媒体用バインダー(A)及びコロイダルシリカ(B)を含有してなるインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物であって、インクジェット記録媒体用バインダー(A)が、アニオン性界面活性剤の存在下で第一の単量体の重合を行ない、次いで、得られたラテックスに、第二の単量体及び第二の単量体100重量部に対して3〜50重量部のポリビニルアルコールを添加して、更に重合を継続することによって得られた、重合体とポリビニルアルコールとを含有してなるラテックスであり、
ポリビニルアルコールのうち少なくとも一部が重合体に結合又は吸着しており、他方、コロイダルシリカ(B)が、固形分換算で、酸性コロイダルシリカ20〜80重量%とカチオン性コロイダルシリカ80〜20重量%とからなるものである、インクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物。 - コロイダルシリカ(B)が、固形分換算で、酸性コロイダルシリカ30〜70重量%とカチオン性コロイダルシリカ70〜30重量%とからなるものである請求項1に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物。
- インクジェット記録媒体用バインダー(A)が、重合体100重量部とポリビニルアルコール1〜35重量部とを含有してなり、ポリビニルアルコールのうち少なくとも30重量%が重合体に結合又は吸着しているものである請求項1又は2に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物。
- ポリビニルアルコールが疎水基を有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物。
- 疎水基を有するポリビニルアルコールがその分子末端に疎水基を有するものである請求項4に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物。
- ポリビニルアルコールが有する疎水基が、炭素数5以上、20以下の炭化水素基である請求項4又は5に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物。
- インクジェット記録媒体用バインダー(A)が10〜250nmの平均粒子径を有するものである請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物。
- 支持体、少なくとも1層のインク受理層及び請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物からなる光沢発現層がこの順で積層されてなるインクジェット記録用多層シート。
- 支持体表面に少なくとも1層のインク受理層を形成し、次いで、このインク受理層の最上層上に、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物を塗工し、次いでこれを乾燥して光沢発現層を設けることを特徴とするインクジェット記録用多層シートの製造方法。
- インクジェット記録媒体光沢発現層用塗工組成物を塗工し、乾燥した後、カレンダー処理に付することにより、光沢発現層を設けることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録用多層シートの製造方法。
- 請求項8に記載のインクジェット記録用多層シートを用いてなるインクジェット記録体。
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