JP5114721B2 - ダスト塊成鉱の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、この方法では、セメントを加えてから数日間養生させる必要があり、またセメントは、S(硫黄)を多量に含有しているため、高炉で使用した場合には、SOxガス増の原因となり、転炉で使用した場合には、製品のS分が上昇するため、必ずしも好ましい手段とは言えなかった。
本発明のダスト塊成鉱の製造方法は、製鉄工程において発生する高炉ダスト、転炉ダスト、鉄鉱石粉のうち2種以上の鉄分含有ダストが、高炉ダストの混合比率は5〜60質量%の範囲、転炉ダストの混合比率は10〜70質量%の範囲、鉄鉱石粉の混合比率は5〜65質量%の範囲で混合されてなる原料ダストに、原料ダストの全量に対して1質量%〜5質量%の水溶性有機系バインダと原料ダストの全量に対して10質量%〜25質量%の水とを添加して混練する際に、混練後の原料ダストに対する空隙飽和度が80%以上になるように混練時間を調整する工程と、混練後の原料ダストを含む混練物を成形してダスト塊成鉱とする工程と、を具備してなることを特徴とする。
また、本発明のダスト塊成鉱の製造方法においては、前記混練時間を調整する工程において、前記原料ダストの水に対する濡れ性を測定し、前記濡れ性の結果に基づいて、前記原料ダストに対する空隙飽和度が80%以上になるように混練時間を調整することが好ましい。
また、本発明のダスト塊成鉱の製造方法においては、前記原料ダストの水に対する濡れ性として前記原料ダストの毛管上昇速度を測定してから、下記式(1)に基づいて混練時間を決定することが好ましい。
空隙飽和度(%)=100×b×(1−(1/(a・t+1)))…(1)
ただし、式(1)において、aは原料ダストの毛管上昇速度(mm/秒)であり、tは混練時間(秒)であり、bは混練方法によって決まる混練定数であって、パドル式混練法でb=1.0として求めた空隙飽和度を基準としたときの各混練法での空隙飽和度の比である。濡れ性の評価としては毛管上昇速度に限定されるものではなく、例えば、化学工学便覧(1994年、丸善)の第246頁等に記載されている浸液重量法や浸漬熱量法を用いても良い。
また、本発明のダスト塊成鉱の製造方法においては、パドル式混練法によって混練する場合には前記bを1.0に設定し、回転式混練法によって混練する場合には前記bを0.8に設定することが好ましい。
また、上記のダスト塊成鉱の製造方法によれば、原料ダストの性質として、混練時の媒体として使用する水に対する濡れ性を利用するので、混練時間をより最適化することができる。
更に、上記のダスト塊成鉱の製造方法によれば、原料ダストの毛管上昇速度を測定し、これを上記(1)式に代入して混練時間を求めるので、混練時間を容易にかつ精度良く決めることができる。
また、上記式(1)には、混練条件によって定まる混練定数が導入されているので、混練条件に左右されることなく、混練時間を容易にかつ精度良く決めることができる。
まず、本実施形態のダスト塊成鉱の製造方法の手順を順に述べると、原料ダストを用意し、次いで、この原料ダストの水に対する濡れ性を測定し、次いで、この濡れ性の結果から原料ダストに最適な混練時間を算出し、次いで、原料ダストに水溶性有機系バインダ(以下、バインダという)と水を添加し、次いで、先に算出した混練時間に基づいて原料ダストとバインダと水を混練し、次いで、混練後の混練物を成形してダスト塊成鉱とする。
以下、各手順について詳細に説明する。
また、高炉周辺からは、高炉ダストと呼ばれる鉄分含有ダストも排出される。この高炉ダストは、粒径が10〜200μm程度、平均粒径が50μm程度のもので、Fe2O3を70質量%程度含み、グラファイトを5質量%程度含み、残部としてCaO、SiO2等を含んでいる。この高炉ダストは主に集塵機とバグフィルタによって集められて所定の集積場に集積される。
尚、上記の鉄分含有ダストはあくまで一例であり、本発明においてはこれ以外の鉄分含有ダストを用いて良いことは言うまでもない。
尚、原料ダストには、湿式集塵機によって集積された鉄分含有ダストが含まれるため、原料ダスト自体には数質量%程度の水分が含まれる。
次に、シャーレ4に水を満たし、このシャーレ4に満たされた水中に、アクリル製円筒管2を浸漬させる。アクリル製円筒管2の浸漬高さが20mmになるように、アクリル製円筒管2とシャーレ4の相対位置を調整する。その後、シャーレ4に水を注いでシャーレ4における水面高さが常に30mmになるように調整する。
ここで得られた毛管上昇速度は、数値が高いほど原料ダストに対する水の濡れ性が高いことを示し、数値が低いほど水の濡れ性が低いことを示すことになる。
従って、混練物から成形されたダスト塊成鉱が十分な機械的強度を備えるためには、混練の段階で、バインダ含有水11が、混練時にダスト粒子12の周囲に十分に行き渡る必要がある。図2に示すように、ダスト粒子の一部に、バインダ含有水が行き渡らない部分13が発生すると、この行き渡らない部分13にはバインダが付着せず、ダスト塊成鉱の機械的強度を低下させる要因になる。
本発明においては、混練後の原料ダストの空隙飽和度が80%以上になることが望ましい。空隙飽和度が80%以上であれば、後で実証するようにダスト塊成鉱の1個当たりの圧潰強度が50kg以上となり、ダスト塊成鉱の集合体を重機等で取り扱った場合でもダスト塊成鉱が粉化、崩壊することがない。
水溶性有機系バインダの添加量は、原料ダストの全量に対して1質量%〜5質量%の範囲とすることが好ましく、2質量%〜5質量%の範囲とすることがより好ましく、2質量%〜3質量%の範囲とすることが最も好ましい。バインダの添加量が1質量%未満になると、バインダ量が少なくなりすぎて、ダスト塊成鉱の機械的強度を高めることができなくなる。また、バインダの添加量が5質量%を超えると、原料ダストと水との配合バランスが悪くなり、却ってダスト塊成鉱の機械的強度が低下するので好ましくない。
ただし、式(2)において、aは原料ダストの毛管上昇速度(mm/秒)であり、tは混練時間(秒)であり、bは混練方法によって決まる混練定数であって、パドル式混練法でb=1.0として求めた空隙飽和度を基準としたときの各混練法での空隙飽和度の比であある。
また、原料ダストの性状として、混練時の媒体として使用する水に対する濡れ性を利用するので、混練時間をより最適化することができる。
更に、原料ダストの毛管上昇速度を測定し、これを上記(2)式に代入して混練時間を求めるので、混練時間を容易にかつ精度良く決めることができる。
また、上記式(2)には、混練条件によって定まる混練定数が導入されているので、混練条件に左右されることなく、混練時間を容易にかつ精度良く決めることができる。
また、上記のダスト塊成鉱の製造方法によれば、バインダとして澱粉を用いるので、調製されたダスト塊成鉱にはSOxガス発生原因となる硫黄(S)が含まれず、これによりSOx排出量の低減を図ることができ、更に、転炉で使用した場合でも、製品のS分が上昇せず、品質面でも優れている。
「実験例1(ダスト塊製鋼の空隙飽和度と圧潰強度との関係)」
原料ダストとして、転炉ダスト80質量%部、高炉ダスト20質量%部が混合されてなる原料ダストを用意した。
尚、転炉ダストは、粒径が1〜50μm程度、平均粒径が7〜8μm程度のもので、Fe2O3とFeOを合計で85質量%程度含み、残部としてCaO、SiO2等を含んでおり、Fe2O3とFeOの割合はほぼ1:1であり、含水率は数質量%である。また、高炉ダストは、粒径が10〜200μm程度、平均粒径が50μm程度のもので、Fe2O3を70質量%程度含み、グラファイトを5質量%程度含み、残部としてCaO、SiO2等を含んでおり、水分量はほぼ0質量%である。
図3に、空隙飽和度と圧潰強度との関係をグラフで示す。
従って、本発明において、ダスト塊成鉱の機械的強度を50kg/個以上にするためには、混練条件等を制御して、混練後の原料ダストの空隙飽和度を80%以上まで高める必要があることがわかる。尚、図3に示す圧潰強度と空隙飽和度の関係は、たとえ原料ダストの組成が変わったとしても変わるものではなく、原料ダストに対するバインダの添加量が1〜5質量%の範囲で、かつ水の添加量が10〜25質量%の範囲であれば、空隙飽和度が80%のときの圧潰強度は50kg/個程度になる。
原料ダストとして、転炉ダスト、高炉ダスト及び鉄鉱石粉をそれぞれ用意した。転炉ダスト及び高炉ダストについては、実験例1と同じものを用いた。また、鉄鉱石粉は、粒径が10〜100μm程度のもので、Fe2O3を85質量%程度含み、残部としてCaO、SiO2等を含み、含水率はほぼ0質量%のものである。
図4に示すように、経過時間が400秒を超えた時点からどの原料ダストのプロットも安定していると認められるので、経過時間400秒〜1000秒の区間における、水位の変化量(毛管高さ)から、各原料ダストの毛管上昇速度を算出すると、高炉ダストの場合に0.025mm/秒となり、鉄鉱石粉の場合に0.017mm/秒となり、転炉ダストの場合に0.010mm/秒になることがわかった。
原料ダストとして、転炉ダスト、高炉ダスト及び鉄鉱石粉をそれぞれ用意した。これらはいずれも、実験例1及び実験例2で使用したものと同じものを用いた。
次に、各原料ダストに、原料ダスト全量の2質量%相当量のコーンスターチと、原料ダスト全量の15質量%相当量の水とをそれぞれ添加して混合物とし、この混合物に対してパドル式混練機によって0〜300秒の範囲の混練時間で混練を行った。混練後の混練物について、空隙飽和度を測定した。空隙飽和度の測定は、混練物を走査型電子顕微鏡で観察し、ダスト粒子間の全空隙面積に対する、バインダ含有水で満たされた空隙の割合を、画像処理することによって求めた。
各原料ダストについての、混練時間と空隙飽和度との関係を図5に示す。
原料ダストとして、高炉ダスト60質量%部、転炉ダスト20質量%部及び鉄鉱石粉20質量%部が混合されてなる原料ダストを用意した。これらはいずれも、実験例1及び実験例2で使用したものと同じものである。この原料ダストについて、毛管上昇速度を実験例2と同様にして測定した。
また、この原料ダストに、原料ダスト全量の2質量%相当量のコーンスターチと、原料ダスト全量の15質量%相当量の水とをそれぞれ添加して混合物とし、この混合物に対してパドル式混練機によって0〜300秒の範囲の混練時間で混練を行った。混練後の混練物について、空隙飽和度を測定した。空隙飽和度の測定は、実験例3と同様にして行った。
原料ダストについての混練時間と空隙飽和度との関係を図6に示す。
また、図6に示すように、混練時間が0〜100秒の間で空隙飽和度が急激に上昇し、100秒を過ぎてから空隙飽和度の上昇が緩やかになった。
図6に示すプロットの回帰曲線を最小自乗法により算出したところ、下記の実験式(4)が導出された。ただし、式(4)において、aは原料ダストの毛管上昇速度(mm/秒)であり、tは混練時間(秒)である。
図8に示すように、回転式混練機を用いた場合は、パドル式混練機を用いた場合に比べて、空隙飽和度が若干低下する傾向がある。このように、混練方式によって空隙飽和度が変化する場合には、混練条件によって決まる混練定数を上記式(4)に導入することで、一般化できるものと考えられる。パドル式混練機の場合の空隙飽和度を基準にすると、回転式混練機による空隙飽和度はパドル式の0.8倍であるので、上記式(4)に混練係数bを導入して式(5)とし、回転式混練法によって混練する場合にはbを0.8に設定し、パドル式混練法によって混練する場合にはbを1.0に設定することで、混練時間を精度良く決定できることが判明した。
原料ダストとして、下記の表1に示すNo.1〜No.5の5種類の原料ダストを用意した。各原料ダストを構成する高炉ダスト等はいずれも、実験例1及び実験例2で使用したものと同じものである。この原料ダストについて、毛管上昇速度を実験例2と同様にして測定した。そして、得られた毛管上昇速度を、上記式(5)に代入することによって、各原料ダストに最適な混練時間を算出した。
毛管上昇速度と混練時間の計算値を表1に示す。
混練後の混練物について、空隙飽和度を測定した。空隙飽和度の測定は、実験例3と同様にして行った。
空隙飽和度を測定後の混練物に対して押出成形を行い、直径20mm、高さ20mmの円柱状のペレットに成形した。その後、150℃、1時間で乾燥してペレットの含水率を1質量%以下に低減させた。このようにして実施例のダスト塊成鉱を製造した。
得られたダスト塊成鉱について、圧潰強度を測定するとともに、圧潰強度測定の際に、ペレットが潰れて粉化したかどうか確認した。
表2には、実際の混練時間、空隙飽和度、圧潰強度、粉化の有無、平均混練時間、粉化率を示す。
*2) 混練時間不足による粉化発生。
次に、No.3の原料ダストの場合は、混練時間が計算値(300秒)よりも30秒ほど短かったために、空隙飽和度が77%程度になり、これにより圧潰強度も32kg/個に低下していることがわかる。
Claims (4)
- 製鉄工程において発生する高炉ダスト、転炉ダスト、鉄鉱石粉のうち2種以上の鉄分含有ダストが、高炉ダストの混合比率は5〜60質量%の範囲、転炉ダストの混合比率は10〜70質量%の範囲、鉄鉱石粉の混合比率は5〜65質量%の範囲で混合されてなる原料ダストに、原料ダストの全量に対して1質量%〜5質量%の水溶性有機系バインダと原料ダストの全量に対して10質量%〜25質量%の水とを添加して混練する際に、混練後の原料ダストに対する空隙飽和度が80%以上になるように混練時間を調整する工程と、
混練後の原料ダストを含む混練物を成形してダスト塊成鉱とする工程と、を具備してなることを特徴とするダスト塊成鉱の製造方法。 - 前記混練時間を調整する工程において、前記原料ダストの水に対する濡れ性を測定し、前記濡れ性の結果に基づいて、前記原料ダストに対する空隙飽和度が80%以上になるように混練時間を調整することを特徴とする請求項1に記載のダスト塊成鉱の製造方法。
- 前記原料ダストの水に対する濡れ性として前記原料ダストの毛管上昇速度を測定してから、下記式(1)に基づいて混練時間を決定することを特徴とする請求項2に記載のダスト塊成鉱の製造方法。
空隙飽和度(%)=100×b×(1−(1/(a・t+1)))…(1)
ただし、式(1)において、aは原料ダストの毛管上昇速度(mm/秒)であり、tは混練時間(秒)であり、bは混練方法によって決まる混練定数であって、パドル式混練法でb=1.0として求めた空隙飽和度を基準としたときの各混練法での空隙飽和度の比である。 - パドル式混練法によって混練する場合には前記bを1.0に設定し、回転式混練法によって混練する場合には前記bを0.8に設定することを特徴とする請求項3に記載のダスト塊成鉱の製造方法。
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