JP5114217B2 - 電子走査型レーダ装置、受信波方向推定方法及び受信波方向推定プログラム - Google Patents
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Description
上記各レーダにおいては、送信波に対するターゲットからの反射波である到来波(あるいは受信波)の方向検知の技術として、アレーアンテナの到来波方向推定方法が用いられている。
この到来波方向推定方法は、ビームフォーマ法、Capon法などのビーム走査方法と、最大エントロピー(MEM:Maximum Entropy Method )法などの線形予測法、最小ノルム法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法等の超分解能(高精度)アルゴリズムといわれるヌル操作方法がある(例えば、非特許文献1及び2参照)
さらに、MUSICなどの超分解能アルゴリズムを車載レーダ用に応用させるる目的で処理の簡易化に思考を凝らした構成(例えば、特許文献4及び5参照)など、通常のパーソナルコンピュータに比較し、演算処理機能が低い車載用に適用するよう開発されている。
非特許文献1及び2においては、到来波数の推定手法として、統計処理における最尤法に基づいて、AIC(Akaike Information Criteria)や、MDL(Minimum Description Length)などが紹介されている。
しかしながら、上述した非特許文献1及び2の推定手法においては、多数のデータを収集して分散評価する必要があるため、ターゲットとの相対距離及び相対速度の変動が早い車載レーダの用途としては適していない。
この場合、測定距離が遠くなるにつれて、レーダの受信強度が低下するため、ターゲットとの相対距離毎に閾値を記憶・設定しておき、この閾値と固有値(受信強度に比例)とを比較することにより、到来波数の推定を行う。
また、車載用を目的とした構成ではないが、固有値を元の共分散行列(すなわち、相関行列)の対角成分値の一つにて正規化した後、一つの閾値で区別するものがある(例えば、特許文献6参照)。
菊間 信良著、アレーアンテナによる適応信号処理、科学技術出版社、1998 菊間 信良著、アダプティブアンテナ技術、オーム社、2003年
すなわち、可変ステップΔθを大きくすると、θを可変する全範囲にわたる演算量が減少するが、正確に到来方向評価関数のピーク方向を検出することができず精度が劣化することになる。
一方、可変ステップΔθを小さくすることで、正確に到来方向評価関数のピーク方向を検出することが可能となるが、θを可変する全範囲にわたる演算量は増大するという欠点を有している。
本発明の電子走査型レーダ装置は、前記角度範囲設定部が、前記DBF処理部が算出した角度チャンネル毎のスペクトラム強度により、角度チャンネル方向にターゲットの存在の有無により複数のグループに分割し、ターゲットの存在していない角度チャンネルのスペクトラム強度を「0」とするチャンネル削除部と、前記角度チャンネル毎のスペクトラム強度をIDBFして、アンテナ毎の複素数データに戻し、再生複素数データとして出力するIDBF処理部とをさらに有し、前記方位検出部が、前記再生複素数データと、受信波数推定値とに基づいて、角度に相当する解を算出することを特徴とする。
本発明の電子走査型レーダ装置は、前記受信波数推定値が、固定値であることを特徴とする。
さらに、本発明によれば、検出可能な全角度範囲から複数の角度範囲に分割するので、分割した狭い角度範囲であれば実使用上の到来波数(ターゲット数)の最大値を想定することが可能となるため、設定された固定の到来波数により、スペクトラム推定を行うことが可能である。
以下、本発明の第1の実施形態による電子走査型レーダ装置(FMCW方式ミリ波レーダ)を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成例を示すブロック図である。
この図において、本実施形態による電子走査型レーダ装置は、受信アンテナ11〜1n、ミキサ21〜2n、送信アンテナ3、分配器4、フィルタ51〜5n、SW(スイッチ)6、ADC(A/Dコンバータ)7、制御部8、三角波生成部9、VCO10、信号処理部20を有している。
上記信号処理部20は、メモリ21、周波数分離処理部22、ピーク検知部23、ピーク組合せ部24、距離検出部25、速度検出部26、相関行列算出部28、方位検出部30、固有値算出部31、判定部32及び角度範囲設定部50とを有している。ここで、角度範囲設定部50は、ターゲットの存在する角度範囲を推定する者であり構成であり、本発明の特徴部分である。第1の実施形態においては、図2に示すように、角度範囲設定部50は、DBF処理部33と範囲検出部36とにより構成されている。
受信アンテナ11〜1nは、送信波がターゲットにて反射し、このターゲットから到来する反射波、すなわち受信波を受信する。
ミキサ21〜2n各々は、送信アンテナ3から送信される送信波と、各受信アンテナ11〜1nそれぞれにおいて受信された受信波が増幅器により増幅された信号とを混合して、それぞれの周波数差に対応したビート信号を生成する。
上記送信アンテナ3は、三角波生成部9において生成された三角波信号を、VCO(Voltage Controlled Oscillator )10において周波数変調した送信信号をターゲットに対して送信波として送信する。
分配器4は、VCO10からの周波数変調された送信信号を、上記ミキサ21〜2nおよび送信アンテナ3に分配する。
SW6は、制御部8から入力されるサンプリング信号に対応して、フィルタ51〜5n各々を通過した各受信アンテナ11〜1nに対応したCh1〜Chnのビート信号を、順次切り替えて、ADC(A/Dコンバータ)7に出力する。
ADC7は、上記W6から上記サンプリング信号に同期して入力される各受信アンテナ11〜1n各々に対応したCh1〜Chnのビート信号を、上記サンプリング信号に同期してA/D変換してデジタル信号に変換し、信号処理部20におけるメモリ21の波形記憶領域に順次記憶させる。
制御部8は、マイクロコンピュータなどにより構成されており、図示しないROMなどに格納された制御プログラムに基づき、図1に示す電子走査型レーダ装置装置全体の制御を行う。
次に、図3を用いて、本実施形態における信号処理部20において用いられる、電子走査型レーダ装置とターゲットとの距離、相対速度、角度(方位)を検出する原理について簡単に説明する。
図3は、図1の三角波生成部9において生成された信号をVCO10において周波数変調した送信信号と、その送信信号がターゲットに反射されて受信信号として入力される状態を示す。図3の例はターゲットが1つの場合を示している。
図3(a)から判るように、送信する信号に対し、ターゲットからの反射波である受信信号が、ターゲットとの距離に比例して右方向(時間遅れの方向)に遅延されて受信される。さらに、ターゲットとの相対速度に比例して、送信信号に対して上下方向(周波数方向)に変動する。そして、図3(a)から求められたビート周波数の周波数変換(フーリエ変換、DCT(Discrete Cosine Transform)、アダマール変換、ウェーブレット変換など)後において、図3(b)に示されるように、ターゲットが1つの場合、上昇領域及び下降領域それぞれに1つのピーク値を有することなる。ここで、図3(a)は横軸が周波数、縦軸が強度となっている。
その結果、図3(b)に示すように、上昇部分と下降部分とにおいて、それぞれの周波数分解されたビート周波数毎の信号レベルのグラフが得られる。
そして、ピーク検知部23は、図3(b)に示すビート周波数毎の信号レベルからピーク値を検出し、ターゲットの存在を検出するとともに、ピーク値のビート周波数(上昇部分及び下降部分の双方)をターゲット周波数として出力する。
r={C・T/(2・Δf)}・{(fu+fd)/2}
また、速度検出部26は、ピーク組合せ部24から入力される上昇部分のターゲット周波数fuと、下降部分のターゲット周波数fdとから、下記式により相対速度を算出する。
v={C/(2・f0)}・{(fu−fd)/2}
上記距離r及び相対速度vを算出する式において、
C :光速度
Δf:三角波の周波数変調幅
f0 :三角波の中心周波数
T :変調時間(上昇部分/下降部分)
fu :上昇部分におけるターゲット周波数
fd :下降部分におけるターゲット周波数
上記受信アンテナ11〜1nには、アンテナの配列している面に対する垂直方向の軸との角度θ方向から入射される、ターゲットからの到来波(入射波、すなわち送信アンテナ3から送信した送信波に対するターゲットからの反射波)が入力する。
このとき、上記到来波は、上記受信アンテナ11〜1nにおいて同一角度にて受信される。
この同一角度、例えば角度θ及び各アンテナの間隔dにより求められる位相差「dn−1・sinθ」が各隣接する受信アンテナ間にて発生する。
上記位相差を利用して、アンテナ毎に時間方向に周波数分解処理された値を、アンテナ方向にさらにフーリエ変換するデジタルビームフォーミング(DBF)や超分解能アルゴリズム等の信号処理にて上記角度θを検出することができる。
次に、メモリ21は、ADC7により波形記憶領域に対して、受信信号がA/D変換された時系列データ(上昇部分及び下降部分)を、アンテナ11〜1n毎に対応させて記憶している。例えば、上昇部分及び下降部分それぞれにおいて256個をサンプリングした場合、2×256個×アンテナ数のデータが上記波形記憶領域に記憶される。
周波数分解処理部22は、例えばフーリエ変換などにより、各Ch1〜Chn(各アンテナ11〜1n)に対応するビート信号それぞれを、予め設定した分解能にて周波数に変換してビート周波数を示す周波数ポイントと、そのビート周波数の複素数データを出力する。例えば、アンテナ毎に上昇部分及び下降部分それぞれが256個のサンプリングされたデータを有している場合、アンテナ毎の複素数の周波数領域データとしてビート周波数に変換され、上昇部分及び下降部分それぞれにおいて128個の複素数データ(2×128個×アンテナ数のデータ)となる。また、上記ビート周波数は周波数ポイントにて示されている。
ここで、アンテナ毎の複素数データそれぞれの相違点は、上記角度θに依存した位相差のみであり、それぞれの複素数データの複素平面上における絶対値(受信強度あるいは振幅など)は等価である。
そして、DBF処理部33は、入力される各アンテナに対応した複素数データを、アンテナの配列方向にフーリエ変換し、すなわち空間軸フーリエ変換を行う。
そして、DBF処理部33は、角度に依存、すなわち角度分解能に対応した角度チャンネル毎の空間複素数データを計算し、ビート周波数毎にピーク検知部23に対して出力する。
また、アンテナの配列方向にフーリエ変換されているため、角度チャンネル間にて複素数データを加算しているのと同じ効果を得ることができ、角度チャンネル毎の複素数データはS/N比が改善されており、ピーク値の検出における精度を向上させることが可能となる。
上述した複素数データ及び空間複素数データともに、三角波の上昇領域及び下降領域の双方にて算出される。
上記検知結果が入力されると、ピーク組合せ部24は、上昇領域及び下降領域におけるビート周波数とそのピーク値を組合せて、距離検出部25及び速度検出部26へ出力し、ペア確定部27で組合せを確定する。
また、速度検出部26は、順次入力される上昇領域及び下降領域それぞれの組合せのビート周波数の差分によりターゲットとの上記相対速度vを演算する。
そして、相関行列算出部28は、組合せが確定したピークにおけるビート周波数の周波数ポイントにより、周波数分解処理部22が周波数分解したビート周波数を選択し、この組合せにおける上昇部分及び下降部分のいずれか一方の(本実施形態においては下降部分)のビート周波数に対応した相関行列を生成する。
これにより、方位検出部30は、範囲検出部36から入力される角度範囲情報により絞り込まれた検知方向範囲の解析を高い精度にて行う。
上記図6(a)、(b)及び図7において、横軸は角度チャンネルのCh番号を示し、縦軸はDBF処理にて算出された各Ch毎のスペクトラム強度を示している。
次に、上記相関行列算出部28、固有値算出部31、判定部32及び方位検出部30における、受信波の到来方向の推定を行う超分解能アルゴリズムを、MUSICを例に取り図8を用いて説明する。この図8は、一般的なMUSICの処理の流れを示すフローチャートである。MUSICの処理そのものは、一般的に用いられているため(例えば、非特許文献1及び2、あるいは特許文献3〜6)、本実施形態において必要な箇所のみ説明する。
そして、すでに述べたように、相関行列算出部28は、ペア確定部27により組合せが確定した下降領域のターゲットの周波数ポイントに該当する周波数分解された複素数周波数領域データ(以下、複素数データ)を、周波数分解処理部22から選択して読み込み、下降領域において、各アンテナ毎の相関を示す相関行列を生成する(ステップS103)。
図9(a)における手法において、相関行列算出部28は、複素数データのまま相関行列(複素相関行列)を生成し(ステップS103_1)、前方のみの空間平均(Forward空間平均法)または前方/後方空間平均(Forward-Backward空間平均法)にて処理する(ステップS103_2)。
空間平均は、元の受信アンテナのアレーにおけるアンテナ数を、さらにアンテナ数が少ないサブアレーに分け、サブアレー同士を平均したものである。この空間平均法の基本原理は、相関のある波の位相関係は受信位置によって異なるので, 受信点を適当に移動させて相関行列を求めれば, その平均効果により相関性干渉波の相関を抑圧する。一般的には受信アンテナのアレーを動かさずに、全体の受信アンテナのアレーから同じ配列を有するサブアレーを複数取り出し、それぞれの相関行列を平均する方法をとる。
CRfb f=(CRf f+CRb f)/2
として平均したものが前方/後方における要素の平均処理である。
このように、前方/後方平均処理により求められた相関行列CRfb fを、サブアレイに分割して平均し、受信波の到来方向の推定に用いる相関行列Rxxを求める。すなわち、前方/後方空間平均処理により求めた相関行列は下記の式により表される。
Rxx=(CRfb1 f+CRfb2 f+CRfb3 f)/3
ここで、相関行列算出部28は、9本の受信アンテナ11〜19のアレーを7本のアンテナ11〜17、12〜18、13〜19の3つのサブアレーに分割し、それぞれのサブアレーの行列の対応する要素を平均することにより、上記相関行列Rxxを求める。
レーダにおける受信波の到来方向を推定する用途においては、到来する受信波の全てが送信した送信波がターゲットにて反射した反射波であるため、アンテナ毎に受信された受信波のデータは強い相互相関を示すことになる。そのため、後段における固有値計算の結果が正しく現れないことになる。したがって、その相互相関を抑圧して、自己相関を引き出し、正しく到来波方向推定を行う効果があるのが空間平均である。
ここで、実数の相関行列に変換することにより、以降におけるステップでの最も計算負荷の重い固有値計算が実数のみの計算とすることができ、大幅に演算負荷を軽減することができる。
一方、図9(b)は、図9(a)のように、ユニタリ変換による実数相関行列への変換を行わずに、次のステップにおける固有値計算も複素数で計算されるタイプである。
また、ステップS103において、図9(a)におけるS103_3及び図9(b)におけるS103_2にて得られた相関行列Rxxにおいて、さらに相関行列(または相関行列の対角成分)の最大値を基準に各要素の値を正規化(=最大値で割る)しておいても良い。
Rxxe=λe
の固有方程式が成り立つ、固有値λ及び固有ベクトルeとして算出し、方位検出部30に出力するとともに、判定部32に対して固有値λを出力する(ステップS104)。
そして、判定部32は、上記固有値算出部31の求めた固有値λから、信号成分ベクトルを取り除くために必要な到来波数の推定を行い、求められた到来波数を方位検出部30へ出力する(ステップS105)。
次に、方位検出部30は、信号ベクトルを除き、ノイズ成分のみとしたベクトルと、予め内部に設定されている方位角度毎の方向ベクトルとの内積演算を行うことにより、角度のスペクトラムを作成する(ステップS106)。これにより、受信波の到来方向に対して指向性のヌルを対応付けることができる。
このとき、方位検出部30は、すでに説明した範囲検出部36から入力される角度範囲情報の示す角度範囲でのみ、ノイズ成分のみとしたベクトルと、内部に設定されている方位角度毎の方向ベクトルとの内積演算を行い、角度のスペクトラムPMU(θ)を作成する。
PMU(θ)=aH(θ)a(θ)/{aH(θ)ENEN Ha(θ)}
ここで、a(θ)は方向ベクトルであり、ENはノイズ部分空間固有ベクトルであり、Hは共役転置を示す。
また、方位検出部30は、角度(=受信波の到来方向)と、距離検出部25で算出された距離とにより、電子走査型レーダ装置におけるアンテナアレーの垂直軸に対して横方向の位置に換算することもできる。
以上は、標準的なMUSICであるが、ステップS106におけるMUSICスペクトラム算出において、方向ベクトルにてサーチするタイプではなく、多項式の根から解を求めるRoot−MUSICという手法を用いることもできる。
ここで、Root−MUSICは、
aH(θ)ENEN Ha(θ)=0
を満たすθを直接求める方法であり、スペクトラムの作成なしに求められる。
すなわち、判定部32は、以下の式において行列Sの対角成分に現れる電力と、予め設定しておいた閾値とを比較し、電力が閾値を超えるか否かの検出を行い、電力が閾値を超えた場合に必要な受信波と判定し、一方、電力がこの閾値以下である場合に不要な受信波と判定する処理を有する。
S=(AHA)−1AH(Rxx−σ2I)A(AHA)−1
ここで、Sは受信波の信号の相関行列、Aは方向行列、AHはAの共役転置行列、Iは単位行列、Rxxは相関行列算出部28にて演算した相関行列、σ2は雑音ベクトルの分散である。
上述したように、 本実施形態においては、先にMUSIC等の超分解能アルゴリズムより分解能が低いDBF(Digital Beam Forming)を用いて方向推定を一旦行い、ターゲットの存在する角度範囲を絞り込んで、この角度範囲において相関行列からの方位推定を超分解能アルゴリズムで行う構成である。
次に、方位検出部30におけるMUSICスペクトラム検出に用いる図8のステップS105における到来波推定処理について、図11を用いて説明する。この図11のフローチャートに示す到来波数推定の処理は、図1における主として判定部32が固有値算出部31から入力される固有値を用いて行う処理である。
すでに、図8のフローチャートにて説明したように、図8におけるステップS105に入る時点において、ピーク組合せ部24がターゲットを検知し、固有値算出部31が相関行列Rxxの固有値及び固有値ベクトルをすでに算出している。
したがって、判定部32は、到来波数が最低でも1つあることを仮定し、到来波数Lに1を代入する(ステップS401)。
次に、判定部32は、予め設定してある閾値λthと、固有値λyとを、固有値λyの大きい順に、順番に比較し(ステップS403)、固有値λyが閾値λth以上であることを検出した場合、処理をステップS404へ進める。
一方、判定部32は、固有値λyが閾値λth未満であることを検出すると、以降の固有値λyと閾値λthとの比較の処理を行う必要が無くなり(以降の固有値λyが現在比較している固有値λyより小さいため)、処理をステップS405へ進める(ステップS403)。
そして、判定部32は、現在の到来波数Lを検出した到来波数として確定し、この確定された到来波数Lを方向検出部30へ出力する(ステップS405)。
この到来波数推定処理において、判定部32は、上述したステップS401からステップS405の処理を、固有値算出部31からの固有値の入力毎に行う。
そして、判定部32は、この検出した最大固有値λaが予め設定されている閾値λmax以上か否かの検出を行い(ステップS400)、最大固有値λaが閾値λmax以上であることを検出した場合、すでに説明した図8におけるステップS401以降の到来波数処理を行い、一方、最大固有値λaが閾値λmax未満であることを検出した場合、到来波数の推定処理を行わず、方位検出部30に対して到来波数Lを出力しない。
すなわち、全周波数ポイントあるいは特定の周波数ポイント範囲の相関行列から固有値を求めるような実施例の場合にも、到来波数の推定において、到来波数推定処理をキャンセル(中止)することができ、路面におけるマルチパスの影響により、受信レベルが低い状態であっても、誤った到来波数の推定を回避することができる。
また、相関行列算出部28にて相関行列Rxxの正規化を行うのではなく、固有値算出部31が固有値を算出する前に、上述した正規化処理を行った後に、固有値及び固有値ベクトルの算出を行うようにしてもよい。
いずれにしても、正規化された相関行列により算出された固有値λx(x=1,2,3,…)が判定部32に入力され、図13のフローチャートに示す到来波数の推定処理が開始される。このとき、判定部32は、到来波Lを0にリセットする。
このとき、判定部32は、固有値λxが予め設定した閾値λth’以上の場合、処理をステップS502へ進め、一方、固有値λxが予め設定した閾値λth’未満の場合、処理をステップS503へ進める。
そして、判定部32は、固有値λxが予め設定した閾値λth’以上の場合、到来波数Lをインクリメントし(ステップS502)、処理をステップS501へ戻す。
また、判定部32は、固有値λxが予め設定した閾値λth’未満の場合、現時点の到来波数Lを推定した到来波数として確定し、方位検出部30へ出力する(ステップS503)。
この到来波数推定処理において、判定部32は、上述したステップS501からステップS503の処理を、固有値算出部31からの固有値の入力毎に行う。
そして、判定部32は、ピーク検知部23から入力される上記ピーク値が予め設定されている閾値PEAK-th以上か否かの検出を行い(ステップS500)、このピーク値が閾値PEAK-th以上であることを検出した場合、すでに説明した図10におけるステップS501以降の到来波数処理を行い、一方、上記ピーク値が閾値PEAK-th未満であることを検出した場合、到来波数の推定処理を行わず、方位検出部30に対して到来波数Lを出力しない。
すなわち、全周波数ポイントあるいは特定の周波数ポイント範囲の相関行列から固有値を求めるような実施例の場合にも、到来波数の推定において、到来波数推定処理をキャンセル(中止)することができ、路面におけるマルチパスの影響により、受信レベルが低い状態であっても、誤った到来波数の推定を回避することができる。
さらに、図15に示すように、上記図14のステップS500の変わりに、求められた相関行列における対角要素の最大値を予め設定された閾値と比較するステップS500を設けても良い。
ここで、図16(a)及び図17(a)の横軸は距離を示し、縦軸は固有値を示している。また、図16(b)及び図17(b)の横軸は距離を示し、縦軸は最大固有値λaにより他の固有値λxを正規化した値を示している。
ターゲットとの距離約65m付近と80m付近とにおいて、マルチパスを受け固有値が小さくなる領域が存在していることが図16(a)及び図17(a)から判る。
また、図16(b)及び図17(b)に示すように、正規化した値においても、マルチパスを受けている場所においては、正規化された数値自体の変動が大きくなり、到来波推定にて誤った到来波数を推定することとなる。
図16(c)には、到来波数が1の図17(a)における距離100(m)時における固有値λxの数値が記載されており、信号空間にある固有値λ1と、それ以外のノイズ空間にある固有値との数値の違いを示している。
従来、図16(a)及び図17(a)の固有値を用いて、それぞれの距離毎に閾値Thを設定して、到来波の推定を行っていたが、本実施形態においては、図16(b)及び図17(b)に示すように、固有値を正規化して閾値Thとの比較を行うため、すでに説明したように、全距離共通の1数値として閾値λth(あるいは閾値λth’)を設定し、全ての距離における固有値と比較するため、容易に到来波数を推定することができる。
また、この到来波数の推定が行えなかった場合、方位検出部30において、過去の距離と相対速度及び方位とから現在の位置を推定する手法などで対処することになる。
次に、本発明の第2の実施形態による電子走査型レーダ装置を図18を用いて説明する。図18は、第2の実施形態による電子走査型レーダ装置の構成例を示すブロック図である。
この第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、範囲設定のための方位推定を、MUSIC等の超分解能アルゴリズムより分解能が低いDBF(Digital Beam Forming)を用いて一旦行い、ターゲットの角度範囲を絞り込む構成である。
第1の実施形態と異なる点としては、DBFした数値をIDBF(逆DBF、すなわち逆空間軸フーリエ変換)を行い時間軸の複素数データに戻し、後に行う超分解能アルゴリズムの方位推定の精度を向上させる構成である。図2に示す第1の実施形態と同様の構成についは、同一の符号を付し、以下第1の実施形態との相違点のみについて説明する。
本実施形態は、第1の実施形態における角度範囲設定部50に対して、Ch(チャンネル)削除部34及びIDBF処理部35が付加されたものである。
ここで、DBF処理部33は、図6(a)及び図7(a)に示すように、受信アンテナの配列方向に本実施形態においては、例えば16ポイントの分解能により、空間軸フーリエ変換を行い、結果として15の角度チャンネルの角度単位のスペクトラムを生成し、Ch削除部34及び範囲検出部36へ出力する。
そして、範囲検出部36は、第1の実施形態と同様に、角度チャンネルの角度単位のスペクトラムから、その強度が閾値以上のスペクトラム強度を有する角度チャンネルの範囲を、角度範囲情報として、方位検出部30へ出力する。
上述した処理において、Ch削除部34は、例えば、隣接した4角度チャンネルが連続して上記DBF閾値を超えるレベルであると、ターゲットが存在するとして、これらの角度チャンネルのスペクトラムを残し、他の角度におけるスペクトラムの強度を「0」に置き換える。
そして、相関行列算出部28は、入力される複素数データから相関行列を算出するため、路側物などを除去し、かつノイズ成分を削減した直交性の良い相関行列を求めることができる。図6(c)は、図6(b)のDBF分解能でのターゲット群(実際にはターゲットが2つ以上ある可能性があるのでターゲット群とする)を、上記の方法で相関行列を作成し、超分解能アルゴリズムでさらにターゲットを分離した例である。
すなわち、本発明は、DBFでの方位検知ではピーク推定などによる角度推定を行わずに、1以上のターゲットが存在する範囲(ターゲット群)の抽出にとどめ、後の方位検出により上記1つ以上のターゲットの存在を細かく分離させて、正確な到来波数と角度とを計算する到来波方向推定アルゴリズムである。
そして、Ch削除部34は、ペア確定部27により組合せが確定した下降領域のターゲットの周波数ポイントに該当する空間複素数データを選出し、上述したCh(チャンネル)削除を行った後、IDBF処理部35へ出力する。
これにより、相関行列算出部28は、入力される複素数データから相関行列を算出し、現在の検知サイクルにおける相関行列として固有値算出部31へ出力する。
後の到来波数推定の処理は、すでに述べた図11〜図14に示した処理と同様である。
上述した処理により、方位検出部30におけるMUSICにおけるMUSICスペクトラム算出時に検知方向範囲を第2の実施形態と同様に絞り込むことができ、分解能を上げることが可能となる。
さらに、検出可能な全角度範囲から複数の角度範囲に分割するので、分割した狭い角度範囲であれば実使用上の到来波数(ターゲット数)の最大値を想定することが可能となる。従って、到来波数の推定をしなくても固定の到来波数を設定し、角度スペクトラム推定や、角度を求める解を得ることが可能である。
また、方位検出部30が、現在のターゲットの方位が検出された後、このターゲットの方位をメモリ21に記憶させ、次回の方位算出サイクル以降に各サイクル情報とし、メモリ21から読み出し、方位算出サイクルにおいて、過去サイクルのターゲット方位周辺の角度範囲を上記角度範囲(範囲設定部36から入力される角度範囲情報)に含めてスペクトラムの計算を行うことができるようにしても良い。
また、図1において、方位検出部30が、現在のターゲットの方位が検出された後、このターゲットの方位をメモリ21に記憶させておく。
そして、角度範囲設定部50は、次回の方位算出サイクル以降に各サイクル情報とし、メモリ21から前回のターゲットの方位を読み出し、この方位を中心とし、前後に予め設定された数値範囲を付加し、この前回における検出サイクルの結果にて得られた方位を中心とした角度範囲を設定し、この角度範囲を角度範囲情報として、方位検出部30へ出力する。
このとき、前回の検出サイクルにおいて、複数のターゲットそれぞれの方位がメモリ21に記憶されている場合、角度範囲設定部36は、それぞれのターゲットの方位をメモリ21から読み出し、方位毎の角度範囲情報を算出し、方位検出部30へ出力する。
また、多周波CW、パルスレーダ等のFMCW方式以外の他の方式においても、適用が可能である。また、本実施例では三角波の上昇部分及び下降部分のいずれか一方のビート周波数に対応した相関行列について、到来波数推定と方向検知を行ったが、上昇部分と下降部分のそれぞれについて行い、方向検知後にピーク組合せを行っても良い。さらに、本実施例では、方位検知部として超分解能アルゴリズムのMUSICを例に述べたが、最小ノルム法やESPRIT法など、同じように固有展開し到来波数を推定する原理の検知アルゴリズムであれば適用が可能である。
21,2n…ミキサ
3…送信アンテナ
4…分配器
51,5n…フィルタ
6…SW
7…ADC
8…制御部
9…三角波生成部
10…VOC
20…信号処理部
21…メモリ
22…周波数分解処理部
23…ピーク検知部
24…ピーク組合せ部
25…距離検出部
26…速度検出部
27,27B…ペア確定部
28…相関行列算出部
30…方位検出部
31…固有値算出部
32…判定部
33…DBF処理部
34…Ch削除部
35…IDBF処理部
36…範囲検出部
50…角度範囲設定部
Claims (7)
- 移動体に搭載される電子走査型レーダ装置であり、
送信波を送信する送信部と、
前記送信波のターゲットからの反射波である到来波を受信する複数のアンテナから構成される受信部と、
前記送信波及び前記反射波の差分の周波数を有するビート信号を生成するビート信号生成部と、
時系列に前記ビート信号を予め設定した分解数のビート周波数に周波数分解して複素数データを算出する周波数分解処理部と、
前記複素数データからターゲットの存在する角度範囲を算出する角度範囲設定部と、
前記角度範囲内における角度スペクトラムを算出する方位検出部と
を有し、
前記角度範囲設定部が、
前記複素数データをアンテナの配列方向にデジタルビームフォーミングを行い、角度チャンネル毎のスペクトラムの強度を算出し、ターゲットの存在を検知するとともに方位情報を得るDBF処理部と、
前記ターゲットの存在する周波数軸のデータ及び方位情報に基づき、角度スペクトラムを算出する角度範囲を設定する範囲検出部と、
前記DBF処理部が算出した角度チャンネル毎のスペクトラム強度により、角度チャンネル方向にターゲットの存在の有無により複数のグループに分割し、ターゲットの存在していない角度チャンネルのスペクトラム強度を「0」とするチャンネル削除部と、
前記角度範囲における前記角度チャンネル毎のスペクトラム強度をIDBFして、アンテナ毎の複素数データに戻し、再生複素数データとして出力するIDBF処理部と
を有し、
前記範囲検出部が、前記「0」でないスペクトラム強度の角度チャンネルが予め設定されているチャンネル数以上隣接している前記グループにおける角度チャンネルの範囲を、角度スペクトラムを算出する角度範囲とすることを特徴とする電子走査型レーダ装置。 - 前記範囲検出部が、前記再生複素数データと、ターゲットの存在する方位情報と、受信波数推定値とに基づいて角度スペクトラムを算出する角度範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の電子走査型レーダ装置。
- 前記方位検出部が、前記再生複素数データと、受信波数推定値とに基づいて、角度に相当する解を算出することを特徴とする請求項1に記載の電子走査型レーダ装置。
- 過去の方位検出サイクルにおける各ターゲットの方位情報を記憶する記憶手段と
をさらに有し、
前記範囲検出部が、前記再生複素数データと、該記憶手段に記憶されている過去の方位検出サイクルの方位情報と、受信波数推定値とに基づいて角度スペクトラムを算出する角度範囲を設定することを特徴とする請求項1に記載の電子走査型レーダ装置。 - 前記受信波数推定値が、固定値であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の電子走査型レーダ装置。
- 移動体に搭載される前記請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子走査型レーダ装置による受信波方向推定方法であり、
送信部が送信波を送信する送信過程と、
受信部が前記送信波のターゲットからの反射波である到来波を受信する複数のアンテナから構成される受信過程と、
ビート信号生成部が前記送信波及び前記反射波の差分の周波数を有するビート信号を生成するビート信号生成過程と、
周波数分解処理部が時系列に前記ビート信号を予め設定した分解数のビート周波数に周波数分解して複素数データを算出する周波数分解処理過程と、
角度範囲設定部が前記複素数データからターゲットの存在する角度範囲を算出する角度範囲設定過程と、
方位検出部が前記角度範囲内における角度スペクトラムを算出する方位検出過程と
を有し、
前記角度範囲設定部が、
前記複素数データをアンテナの配列方向にデジタルビームフォーミングを行い、角度チャンネル毎のスペクトラムの強度を算出し、ターゲットの存在を検知するとともに方位情報を得るDBF処理過程と、
前記ターゲットの存在する周波数軸のデータ及び方位情報に基づき、角度スペクトラムを算出する角度範囲を設定する範囲検出過程と、
前記DBF処理部が算出した角度チャンネル毎のスペクトラム強度により、角度チャンネル方向にターゲットの存在の有無により複数のグループに分割し、ターゲットの存在していない角度チャンネルのスペクトラム強度を「0」とするチャンネル削除過程と、
前記角度範囲における前記角度チャンネル毎のスペクトラム強度をIDBFして、アンテナ毎の複素数データに戻し、再生複素数データとして出力するIDBF処理過程と
を有し、
前記範囲検出部が、前記「0」でないスペクトラム強度の角度チャンネルが予め設定されているチャンネル数以上隣接している前記グループにおける角度チャンネルの範囲を、角度スペクトラムを算出する角度範囲とすることを特徴とする受信波方向推定方法。 - 移動体に搭載される前記請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子走査型レーダ装置による受信波方向推定の動作をコンピュータに制御させるプログラムであり、
送信部が送信波を送信させる送信処理と、
受信部が複数のアンテナにより前記送信波のターゲットからの反射波である到来波を受信させる受信処理と、
ビート信号生成部が前記送信波及び前記反射波の差分の周波数を有するビート信号を生成するビート信号生成処理と、
周波数分解処理部が時系列に前記ビート信号を予め設定した分解数のビート周波数に周波数分解して複素数データを算出する周波数分解処理と、
角度範囲設定部が前記複素数データからターゲットの存在する角度範囲を算出する角度範囲設定処理と、
方位検出部が前記角度範囲内における角度スペクトラムを算出する方位検出処理と
を有し、
前記角度範囲設定部が、
前記複素数データをアンテナの配列方向にデジタルビームフォーミングを行い、角度チャンネル毎のスペクトラムの強度を算出し、ターゲットの存在を検知するとともに方位情報を得るDBF処理と、
前記ターゲットの存在する周波数軸のデータ及び方位情報に基づき、角度スペクトラムを算出する角度範囲を設定する範囲検出処理と、
前記DBF処理部が算出した角度チャンネル毎のスペクトラム強度により、角度チャンネル方向にターゲットの存在の有無により複数のグループに分割し、ターゲットの存在していない角度チャンネルのスペクトラム強度を「0」とするチャンネル削除処理と、
前記角度範囲における前記角度チャンネル毎のスペクトラム強度をIDBFして、アンテナ毎の複素数データに戻し、再生複素数データとして出力するIDBF処理と
を有し、
前記範囲検出部が、前記「0」でないスペクトラム強度の角度チャンネルが予め設定されているチャンネル数以上隣接している前記グループにおける角度チャンネルの範囲を、角度スペクトラムを算出する角度範囲とすることを特徴とする受信波方向推定プログラム。
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