本明細書及び図面には、少なくとも次の事項が開示されている。
先ず、高吸収性樹脂が密集する密集層と、上下方向において前記密集層と隣接する空間層と、を備えて点在する点在部、を有する吸収体素材、を備えている吸収性物品。
かかる吸収性物品においては、高吸収性樹脂が密集している点在部内に、該高吸収性樹脂の膨潤に対する空間的余裕としての空間層、が備えられている。つまり、高吸収性樹脂が膨潤した場合であっても、当該膨潤による高吸収性樹脂の体積増加を空間層内に止めることが可能になる。これにより、吸収性物品の、高吸収性樹脂が密集した点在部に相当する部分において隆起が発生することを抑制することが可能になる。
また、前記吸収体素材は、吸収性繊維と前記高吸収性樹脂とを有し、前記点在部の周りに前記吸収性繊維が集積していることとしてもよい。かかる構成の吸収性物品であれば、該吸収性物品に吸収された液体が、前記点在部の周りに密集した吸収性繊維を介して該点在部内に浸入する。すなわち、液体は三次元的に点在部内に浸入するため、点在部内は、該点在部内に密集する高吸収性樹脂にとって、膨潤し易い環境となる。このため、点在部内に高吸収性樹脂の膨潤に対する空間的余裕を確保する本発明の構成が、より有意義なものとなる。
また、前記点在部は、前記吸収性繊維が集積した集積層であって、前記上下方向において前記密集層と隣接する側とは反対側で前記空間層と隣接する集積層、をさらに備えることとしてもよい。点在部内において、集積層と密集層とが上下方向において隣接する場合には、前記密集層中の高吸収性樹脂が膨潤すると、集積層内の吸収性繊維が押し出され、該集積層が盛り上がってしまう。この結果、吸収性物品において隆起が発生し、該吸収性物品の着用者に異物感を与えてしまう。これに対し、集積層と密集層との間に空間層が介在している場合、前記密集層中の高吸収性樹脂が膨潤しても、当該膨潤による高吸収性樹脂の体積増加を空間層内に止めるため、前記集積層の盛り上がり、すなわち、吸収性物品における隆起の発生が抑制される。
また、前記空間層の層厚が前記密集層の層厚より長いこととしてもよい。かかる構成の吸収性物品では、点在部内により多くの空間的余裕が確保されるため、高吸収性樹脂の膨潤に起因した吸収性物品における隆起の発生を抑制する効果がより有効に発揮される。
また、前記吸収体素材を被覆するための被覆部材が備えられていることとしてもよい。かかる構成の吸収性物品では、高吸収性樹脂が点在部外に流出することを防止することが可能になる。
次に、高吸収性樹脂が密集する密集層を備えて点在する点在部、を有する吸収体素材、を備えた吸収性物品の製造方法であって、前記点在部に相当する位置に穴部を有する前記吸収体素材の基材、を取得するステップと、前記穴部内に前記密集層を形成するために、該穴部に前記高吸収性樹脂を供給するステップであって、前記密集層の層厚が前記穴部の深さより短くなるように前記高吸収性樹脂を供給するステップと、を有することを特徴とする吸収性物品の製造方法。かかる製造方法によれば、高吸収性樹脂の膨潤に起因した吸収性物品における隆起の発生を抑制させることが可能な吸収体素材を提供することが可能となる。
また、前記基材は吸収性繊維を有しており、前記基材を取得するステップは、前記基材を形成するための型であって、該型の底部に前記基材に前記穴部を設けるための凸部を備えた型、に吸収性繊維を集積させて前記基材を取得するステップであることとしてもよい。かかる製造方法により、所望の形状の吸収体素材を容易に取得することが可能になる。
また、前記穴部に前記高吸収性樹脂を供給するステップは、前記高吸収性樹脂を供給するために回転するローラであって、該ローラの外周に点在した前記高吸収性樹脂を収容するための窪み、を有するローラ、の下方に前記基材を通過させ、該基材の表面が該ローラの外周と対向している間に、各窪みに収容された高吸収性樹脂を各穴部に供給するステップであることとしてもよい。かかる製造方法によれば、所定量の高吸収性樹脂が穴部内に供給されるため、該穴部内に適切な量の高吸収性樹脂を供給することが可能になる。
また、前記窪みは円穴状の窪みであり、前記ローラの外周における前記窪みの点在パターンと、前記基材における前記穴部の点在パターンとが対応しており、前記穴部に前記高吸収性樹脂を供給するステップは、各前記窪みに収容された前記高吸収性樹脂を、各前記窪みと対応した位置にある前記穴部に供給するステップであることとしてもよい。かかる製造方法によれば、窪みの各部から均一に高吸収性樹脂が供給されるため、各穴部へ高吸収性樹脂が適切に供給される。
また、前記穴部に前記高吸収性樹脂を供給するステップは、前記基材を吸引しながら該基材を載置させるための吸引台、に該基材を載置させた状態で、該基材の、前記吸引台と対向する面とは反対位置にある面側から前記高吸収性樹脂を供給するステップであることとしてもよい。かかる製造方法によれば、吸引台からの吸引圧を受けている基材において該基材中の穴部における吸引抵抗がより低くなるため、高吸収性樹脂が穴部内に吸い込まれ易くなる。すなわち、該穴部内に高吸収性樹脂を供給することがより容易になる。
===本実施の形態に係る吸収性物品について===
<<吸収性物品の全体構造>>
先ず、本実施形態の吸収性物品の一例として、生理用ナプキン(以下、吸収性物品1)を例に挙げ、該吸収性物品1の構成例について図1を用いて説明する。図1は、吸収性物品1の模式平面図である。図1には、矢印にて吸収性物品1の長手方向と幅方向とが示されている。以下の説明では、吸収性物品1が有する表面のうち、当該吸収性物品1の着用者の身体に接触する面を肌面と、下着に接触する面を反対面とする。また、着用時に着用者の前側に位置する端を前端、後側に位置する端を後端とする。なお、図1は、吸収性物品1の肌面側を示している。
吸収性物品1は、図1に示すように所定方向に長い外形形状を有している。また、吸収性物品1は、経血等の液体を吸収するための略長方形状をなす吸収体10と、吸収体10の肌面側の表面を覆う液体透過性の表面シート20と、吸収体10の肌面側にて該吸収体10の幅方向両端側に配置されたサイドシート25と、吸収体10の反対面側に設けられた裏面シート30と、を有している。また、吸収性物品1は、長手方向に沿って折り畳み可能であり、製品包装時には所定の折線位置(図1中、二点鎖線にて示す)にて折り畳まれた状態(すなわち、三折りの状態)になっている。以下、吸収性物品1の長手方向において、前端側の折線位置よりも前端側にある部分を前端部とし、後端側の折線位置よりも後端側にある部分を後端部とし、二つの折線位置の間にある部分を中央部とする。
吸収体10は、図1に示すように、吸収性物品1の幅方向中央部に取り付けられており、吸収体10の長手方向と吸収性物品1の長手方向とは互いに沿っている。また、吸収体10の長手方向中央の位置であり、かつ、幅方向中央に位置した部分には、肌面側に膨らんだ膨らみ部10aが形成されている。膨らみ部10aは、長円状に形成されており、着用者が吸収性物品1を着用した際に着用者の股間部(すなわち、着用者の経血排泄口の周辺部位)の形状に適合して当該股間部と表面シート20を介して密着する。
また、本実施形態に係る吸収体10は、例えばティッシュペーパー等の薄葉紙11及び吸収体素材12から構成される。吸収体素材12は、表面シート20側から吸収体10側に浸透してきた液体を吸収保持する機能を備えており、吸収体10と略同一の外形形状を有している。薄葉紙11は『被覆部材』の一例であり、前記吸収体素材12を包み込むように被覆するシートである。また、薄葉紙11と、該薄葉紙11に被覆された吸収体素材12とを一体化するために、吸収体10の所定の部分が圧搾され、当該部分にエンボス(以下、吸収体エンボスとも言う)が形成されている。なお、吸収体10の詳細については後述する。
表面シート20は、液透過性を有するシート部材であり、パルプやコットン等の天然繊維、レーヨン等のセルロース繊維、又は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性疎水性繊維により形成された織布や不織布や有孔プラスチックシート等によって形成されている。表面シート20は、吸収性物品1の幅方向中央部に備えられ、幅方向において吸収体10よりわずかに広い幅と、長手方向において裏面シート30と略同じ長さとを有しており、吸収体10の表面を全域に亘って覆っている。
裏面シート30は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性かつ液不透過性のシートである。裏面シート30は、吸収体10より十分に広く形成されており、その外縁部は全周において吸収体10の外縁部より外側に位置している。また、幅方向における両側には、幅方向外側に延出された保持部32が形成されている。保持部32は、吸収性物品1の着用時、反対面側に折り返された状態で下着に固定される。また、本実施形態に係る裏面シート30は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性かつ液不透過性のシートであるが、熱可塑性かつ液不透過性のシートを含み、薄葉紙や不織布等が積層されたシート部材が用いられることとしてもよい。
サイドシート25は、合成樹脂繊維で形成されたエアスルー不織布やスポンバンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド層からなる不織布等の適宜な不織布である。サイドシート25は、前記表面シート20の一部(より正確には、表面シート20の幅方向両端部)と重なった状態で、吸収性物品1の幅方向端部に備えられている。
以上のように構成された吸収性物品1では、吸収体10の肌面と表面シート20とは、ホットメルト系接着剤によって接合され、高温の押圧部材を用いて厚み方向に押圧する深溝エンボス加工によって形成された深溝部20aにより、さらに強固に接合されている。本実施形態に係る深溝部20aは、図1に示すように、前記膨らみ部10aを取り囲んだ部分、及び、該膨らみ部10aの両側にて吸収性物品1の長手方向の前端部から後端部まで伸びた部分、から構成されている。さらに、深溝部20a内には、該深溝部20aに沿って、互いに溝深さが異なる浅底部と深底部とが交互に配置されている。このような深溝部20aが形成されることにより、吸収性物品1の長手方向中央部を屈曲させた際、該吸収性物品1の長手方向両端部も中央部に追従して屈曲し易くなっている。すなわち、深溝部20aは、吸収性物品1の着用時に前述の膨らみ部10aに相当する部分を身体に沿って密着させるために、立体的な屈曲を促す屈曲誘発部となっている。さらに、深溝部20aは、該深溝部20a内に経血等が流入した場合に、高密度に圧搾された部位(すなわち、深底部)への浸透を促して経血等の拡散を抑える機能も備えている。なお、本実施形態においては、深溝部20a内に浅底部と深底部とが交互に配置されていることとしたが、これに限定されず、例えば、深溝部20a内において溝深さが均一であってもよい。
さらに、吸収体10及び表面シート20の各反対面側には、裏面シート30がホットメルト系接着剤にて接合されている。また、吸収体10の肌面側には該吸収体10の両側部にそれぞれわずかに重なる位置から裏面シート30上にかけて、サイドシート25がホットメルト系接着剤にて接合されている。そして、裏面シート30、吸収体10、表面シート20、及び、サイドシート25が重なる位置には、低温に加熱された押圧部材によるエンボス加工が施されており、吸収体10、表面シート20、サイドシート25、及び、裏面シート30がさらに強固に接合されている。さらに、吸収性物品1の外縁部が低い温度にて熱溶着するラウンドシール加工が施されている。上記のように、エンボス加工やホットメルト系接着剤等により吸収体10、表面シート20、サイドシート25、及び、裏面シート30が接合している。この結果、吸収体10は、表面シート20とサイドシート25と裏面シート30とによって形成される空間内に内封されることとなる。
<<吸収体の構造>>
次に、本実施形態の吸収体10の構造について、既述の図1と、図2及び図3とを用いて説明する。図2は、吸収体10の模式平面図であり、該吸収体10の肌面側を示している。図3は、点在部13の断面構造を示す図であり、図2のA−A’断面を示している。また、図2中、矢印にて吸収体10の長手方向と幅方向とが示されている。図3には、矢印にて上下方向、すなわち、吸収体10の厚み方向が示されている。
吸収体10は、図2に示すように所定方向に長い略シート状の部材であり、前述したように、薄葉紙11と吸収体素材12とによって構成されている。
吸収体素材12は、吸収体10と略同様の外形形状を有し、該吸収体素材12の長手方向及び幅方向が、各々、吸収性物品1の長手方向及び幅方向に沿った状態で、該吸収性物品1内に取り付けられている。また、吸収体素材12の長手方向中央に位置し、かつ、幅方向中央に位置する部分は、吸収体10の膨らみ部10aに相当する部分であり、他の部分より肉厚な肉厚部14aが形成されている。
この吸収体素材12は、『吸収性繊維』の一例としての粉砕パルプ(繊維状に粉砕されたパルプ)と、『高吸収性樹脂』の一例としての粒状の高吸収性ポリマー(以下、SAPと省略標記する)と、によって構成される。粉砕パルプはシート状に集積されており、SAPは吸収体素材12中に部分的に密集している。
本実施形態の吸収体素材12の構成について、図2及び図3を参照しながら具体的に説明する。図2に示すように、吸収体素材12は、点在した点在部13と、該点在部13の周りにて連続する連続部14とを有している。点在部13はSAPが密集している領域であり、吸収体素材12の長手方向及び幅方向によって規定される平面において長円状に形成されている。なお、吸収体素材12の厚み方向における表面(肌面側又は反対面側の表面)のうち、前記点在部13の総面積が占める割合は5%以上(より好ましくは5〜70%以上であり、特に10〜40%であることが望ましい)となっている。また、本実施形態では、吸収体素材12の長手方向両端部(すなわち、前端部及び後端部)のみに点在している。一方、各点在部13の周り(すなわち、連続部14)には、粉砕パルプが略均一な密集状態で集積している。換言すると、各点在部13は集積された粉砕パルプによって包囲されている。
本実施形態に係る点在部13は、図3に示すように、上下方向(すなわち、吸収体素材12の厚み方向)において三層構造となっており、粉砕パルプ(図3等において、記号Pにて示す)が集積した集積層13cと、空間層13bと、SAP(図3等において、記号Sにて示す)が密集する密集層13aとが備えられている。そして、吸収性物品1の肌面が反対面より上方にある状態では、上下方向において、前記肌面側から集積層13c、空間層13b、密集層13aの順で並んでいる。すなわち、空間層13bと密集層13aとが隣接し、集積層13cが前記密集層13aと隣接する側とは反対側で前記空間層13bと隣接する。また、図3に示すように、空間層13bの層厚が密集層13aの層厚より長くなっている。ここで、層厚とは、吸収性物品1が水平状に置かれ、かつ、該吸収性物品1の肌面が上方を向いている状態(すなわち、図3の状態)での層厚を意味している。
さらに、図3に示すように、集積層13cは肌面側で連続部14と繋がっており、該集積層13cにおける粉砕パルプの密集状態は、連続部14における粉砕パルプの密集状態と略同様である。このように、吸収体素材12の肌面側には、該肌面側の表面全域に亘って粉砕パルプが略均一の密集状態で集積している。このため、吸収性物品1が着用された際、着用者に対して適宜な触感を与えることが可能になる。なお、集積層13c及び連続部14には同一の粉砕パルプが集積されており、粉砕パルプの密集状態とは、単位体積あたりに含まれた粉砕パルプの重量を意味している。
また、図3に示すように、集積層13cの層厚は連続部14の厚みよりも短くなっている。換言すると、集積層13cにおける粉砕パルプの目付(単位面積あたりに含まれる粉砕パルプの重量)が、連続部14における目付より低くなっている。具体的には、集積層13cにおける目付は、連続部14における目付の80%以下(より好ましくは1〜80%であり、特に5〜30%であることが望ましい)となっている。また、前述したように、点在部13内には空間層13bが形成されている。このため、点在部13は連続部14よりも低剛性となっている。そして、本実施形態では、図1に示すように、吸収性物品1を折り畳む際の折線位置に相当する位置にある点在部13が存在する。すなわち、吸収性物品1が折り畳まれた際に形成される折り目と重なる点在部13が存在する。このように、より剛性が低い点在部13が前記折り目に重なるため、吸収性物品1の折り畳みを容易に行うことが可能である。また、折り目に重なった点在部13の長手方向(すなわち、長円状の点在部13の長径方向)が該折り目に沿っているため、吸収性物品1の折り畳みがより一層容易になる。
薄葉紙11は、液体透過性を有し、かつ、SAPの粒子より目の細かなシートであり、薄葉紙11の外側にSAPが漏れることを防止する機能を有している。さらに、前記薄葉紙11は、集積された粉砕パルプが薄葉紙11の外側に脱落することを防止する機能も有している。
以上のような構成の吸収体10では、SAPが密集した状態で点在部13内に留まる。すなわち、SAPは点在部13にて液体を保持して膨潤することになる。一方、吸収性物品1に吸収された液体は、表面シート20及び薄葉紙11を透過した後、吸収体素材12内に浸透する。そして、前記液体は、集積状態の粉砕パルプ内において拡散し、最終的に点在部13内に密集したSAPに保持される。この際、前記液体は、前述した集積層13c側から点在部13内に浸入すると共に、該点在部13の周囲からも浸入する。つまり、前記液体が三次元的に前記点在部13内に浸入することとなる。このため、点在部13内は、該点在部13内に密集したSAPにとって膨潤し易い環境となっている。換言すると、液体は点在部13内に密集したSAPに捕集され易く、当該SAPに保持され易くなっている。
<<吸収性物品の製造方法について>>
次に、本実施形態の吸収性物品1の製造方法について図4を用いて説明する。図4は、吸収性物品1の製造フローを示す図である。吸収性物品1の製造方法は、吸収体10を製造する吸収体製造ステップS100と、該吸収体製造ステップS100により製造された吸収体10と、表面シート20と、サイドシート25と、裏面シート30とを用いて吸収性物品1を製造するメイン製造ステップS200と、吸収性物品1を包装可能な状態とする包装前処理ステップS300と、吸収性物品1を包装する包装ステップS400とを有している。また、本実施形態では、吸収性物品1の各材料及び製造物がコンベア等の搬送装置によって搬送されながら、上記の各ステップが実行される。以下、吸収性物品1の製造フローのうち、吸収体製造ステップS100について説明する。
<吸収体製造ステップ>
吸収体製造ステップS100について図5乃至図8を用いて説明する。図5は、吸収体製造ステップS100のフロー図である。図6は、吸収体製造ステップS100において吸収体10が製造されていく過程を模式的に示した図である。図7は、粉砕パルプを集積して吸収体素材の基材15を形成するために用いられる『型』の一例としてのメッシュパターン48を示す図である。図8は、基材15に対してSAPを供給するために用いられる『ローラ』の一例としてのパターンローラ70を説明するための図である。また、図8には、パターンローラ70の正面図(上図)、該パターンローラ70のA−A’断面図(中図)、及び、該パターンローラ70の外周に設けられた窪み70aと基材15に設けられた穴部15aとの対応関係を示す図(下図)が示されている。
図5に示すように、吸収体製造ステップS100は、吸収体素材の基材15を取得するステップS102から始まる。そして、本実施形態において、基材15は、図7に示すメッシュパターン48内に粉砕パルプを集積させることによって取得される。
メッシュパターン48は、メッシュ状の底面(図7には、図示の便宜上、当該底面の一部分のみについてメッシュ状であることを示す)を有する金属製の型枠である。そして、メッシュパターン48の外部に設けられた吸引装置(不図示)が該メッシュパターン48の底面を介して空気を吸引すると、前記吸引装置の吸引力によって、前記メッシュパターン48の上方から落下してくる粉砕パルプが該メッシュパターン48内に吸い込まれるようになる。やがて、粉砕パルプはメッシュパターン48内に集積し、所定の厚みを有する状態まで積層する。このメッシュパターン48は、前述した吸収体素材12の形状に対応した形状を有している。つまり、メッシュパターン48は所定方向に長い外形形状を有し、図7に示すように、該メッシュパターン48の底部(より正確には、当該底部の長手方向両端部)には略台形柱状の凸部48aが点在している。さらに、前記凸部48aの長手方向中央部であって幅方向中央部には、吸収体素材12の肉厚部14aを形成するための凹部48bが設けられている。
以上のような構成のメッシュパターン48内に粉砕パルプを集積させることにより、吸収体素材12と同じ外形形状を有する基材15が取得される。つまり、型枠成形により基材15が形成されるため、型枠形状を調整することにより、所望の形状の基材15を取得することが可能になる。すなわち、吸収体素材12も所望の形状に成形することが可能である。なお、本実施形態に係るメッシュパターン48の長手方向中央であって幅方向中央に位置する部分には、吸収体素材12の肉厚部14aを形成するための凹部48bが設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、前記メッシュパターン48の長手方向中央であって幅方向中央に位置する部分が平坦面であり、前記肉厚部14aを有しない扁平状の吸収体素材の基材15が形成されてもよい。
また、基材15には長円状の穴部15aが点在している(図8の下図参照)。各穴部15aは、吸収体素材12の点在部13に相当する位置に形成される。このような穴部15aは、メッシュパターン48の底部に設けられた凸部48aによって形成される。すなわち、メッシュパターン48に粉砕パルプを集積させる際、凸部48aに相当する部分を避けるように(換言すると、凸部48a内に粉砕パルプが入らないように)前記粉砕パルプが集積する結果、当該凸部48aに相当する部分に穴部15aが形成される。なお、本実施形態では、前記凸部48aの各側面がメッシュ状になっているが、穴部15a内に粉砕パルプが入ることを防止するために、凸部48aの各側面をテープや樹脂等によって目止めされていてもよい。また、平坦な底面を有するメッシュパターン48であれば、ゴムや樹脂等によって個別に形成された凸部48aを該メッシュパターン48の底面に取り付けることとしてもよい。
このようなメッシュパターン48を用いて基材15を取得するステップS102について、図6を参照しながら更に詳しく説明する。メッシュパターン48は、前記吸引装置を内蔵し、所定の回転方向(図6中、矢印にて示す方向)に回転可能なサクションドラム40の外周上において、該メッシュパターン48の長手方向がサクションドラム40の回転軸方向に沿った状態で配置されている。また、各メッシュパターン48は、開口が外側を向いた状態で配置される。そして、前記吸引装置によって、サクションドラム40周辺の空気が前記メッシュパターン48を介してサクションドラム40内に(すなわち、図6中、記号F1にて示す方向に)吸引されつつ、メッシュパターン48がサクションドラム40と一体的に回転する。一方、サクションドラム40の上方には、シート状のパルプ(図6中、記号Psにて示す)を粉砕、開繊するためのパルプ開繊装置42が設けられている。このパルプ開繊装置42にパルプ供給ローラ46からシート状のパルプPsが供給されると、該パルプ開繊装置42内部にてシート状のパルプが粉砕、開繊されて粉砕パルプが生成される。そして、図6に示すように、生成された粉砕パルプはサクションドラム40の上方から該サクションドラム40側に落下し、前記吸引装置による吸引力によって、前記サクションドラム40の外周上に配置されたメッシュパターン48内に捕集される。メッシュパターン48内において粉砕パルプの集積が進むと、サクションドラム40の回転に伴ってメッシュパターン48がパルプ掻き取り機構44の位置まで移動する。そして、パルプ掻き取り機構44が、メッシュパターン48内に集積された粉砕パルプのうち、余分に集積した粉砕パルプ(例えば、メッシュパターン48内において所定の厚み以上に積層した分の粉砕パルプ)を掻き取る。以上の工程によって、メッシュパターン48内に吸収体素材の基材15が形成される。
その後、サクションドラム40の更なる回転により、基材15と該基材15を収容したメッシュパターン48とがサクションドラム40の最下部に到達すると、基材15が前記メッシュパターン48から外れ、次の工程に引き渡される。図6に示すように、メッシュパターン48から外れた段階において、基材15中に点在している穴部15aは、該基材15の厚み方向において一端側から他端側まで貫通しておらず、凹状の穴になっている。つまり、本実施形態では、メッシュパターン48内に粉砕パルプを集積する際、前記凸部48aの頂上面より所定の高さ分だけ上側にある位置まで前記粉砕パルプを積層させている。これにより、基材15の厚み方向における一端面側(粉砕パルプの集積時、メッシュパターン48の開口側にあった端)には、平坦な表面を備えた粉砕パルプの集積層が存在していることとなる。また、各前記穴部15aの深さは、穴部間で略等しくなっている。また、図7に示すように、メッシュパターン48の凸部48aの側面はテーパー面となっているため、基材15は型崩れすることなくメッシュパターン48から外れることが可能である。
メッシュパターン48から外れた基材15は、該基材15を吸引しながら載置するために用いられる『吸引台』の一例としてのサクションコンベア60上に載置される(S104)。サクションコンベア60は不図示の吸引装置を内部に備えており、当該吸引装置によって空気がサクションコンベア60内に(すなわち、図6中、記号F2にて示す方向に)吸引される。そして、前記基材15は、前記吸引装置の吸引力によりサクションコンベア60側に引き付けられた状態で、所定の搬送方向(図6中、矢印にて示す方向)へ搬送される。なお、サクションコンベア60の載置面上には、予め、薄葉紙供給ローラ50から連続した帯状の薄葉紙11が供給されており、前記基材15は該薄葉紙11上に載せられることとなる。すなわち、基材15は、薄葉紙11を介してサクションコンベア60側に引き付けられ、該薄葉紙11とともに前記搬送方向へ搬送される。また、前記メッシュパターン48内で形成された基材15は、順次サクションコンベア60上に載置されていくため、サクションコンベア60上には、図6に示すように、複数の基材15が間隔を隔てて載置されている。なお、本実施形態では、基材15の表面のうち、吸収性物品1として完成した際に肌面側に来る表面(すなわち、平坦になっている表面)が、サクションコンベア60の載置面と対向した状態で、前記基材15が搬送される。但し、これに限定されるものではなく、前記肌面側に来る面がサクションコンベア60側とは反対側(すなわち、上方)を向いた状態で、前記基材15が搬送されることとしてもよい。
次に、サクションコンベア60上において搬送される基材15、が有する穴部15a内にSAPを供給する(S106)。各穴部15a内へSAPの供給は、サクションコンベア60に設けられた吸引装置と、前記各穴部15a内にSAPを供給するために所定の回転方向(図6中、矢印にて示す方向)に回転するパターンローラ70によって行われる。そして、基材15がパターンローラ70の下方を通過する際に、SAPがパターンローラ70から前記基材15中の各穴部15a内に供給される。
パターンローラ70の詳細について説明すると、図8の上図に示すように、該パターンローラ70の外周上にはSAPを収容するための円穴状の窪み70aが点在している。各窪み70aは、図8の中図に示すように、パターンローラ70の半径方向において一定の深さを有している。そして、パターンローラ70の上方に設けられたSAP供給機構71から前記窪み70a内にSAPが供給された後、パターンローラ70の回転に伴って、SAPが収容された前記窪み70aがパターンローラ70の下方側に移動する。一方、サクションコンベア60に載置された基材15は、該基材15の長手方向がパターンローラ70の軸方向に沿った状態で該パターンローラ70の下方に向けて搬送される。そして、図6に示すように、前記基材15がパターンローラ70の下方を通過し、該基材15の表面が前記パターンローラ70の外周(より正確には、当該外周のうち、SAPが収容された窪み70aが配置されている部分)と対向している間に、前記窪み70a内に収容されたSAPが、前記吸引装置の吸引力によって前記基材15の各穴部15a内に吸い寄せられて当該各穴部15a内に供給される。ここで、前記パターンローラ70の外周上における前記窪み70aの点在パターンは、図8の上図及び下図に示すように、基材15中における穴部15aの点在パターンに対応している。このため、各窪み70aに収容されたSAPは、当該各窪み70aと対応した位置にある穴部15a内に供給されることになる。例えば、図8の上図中、パターンローラ70の軸方向において記号aにて示された位置にある窪み70a内に収容されたSAPは、基材15の長手方向において記号aにて示された位置にある穴部15a内に供給される。なお、図8の上図中、前記記号aにて示された位置にある3つの窪み70aのうち、中央に位置する窪み70aに収容されたSAPは、前記記号aにて示された位置にある2つの穴部15aの双方へ供給される。
このようにして、サクションコンベア60側に引き付けられた状態にある基材15に対して、SAPが、該基材15のサクションコンベア60と対向する面とは反対位置にある面(すなわち、吸収性物品1として完成した際に反対面側に来る面)側から前記穴部15a内に供給されることとなる。この際、穴部15aにおける吸引抵抗が、前記基材15中の穴部15a以外の部分(すなわち、粉砕パルプが集積した部分)における吸引抵抗より十分に小さいため、SAPが穴部15a内に集中的に吸い込まれる。これにより、SAPが穴部15a内において密集する。換言すると、前記穴部15a内にSAPの密集層13aが形成されることとなる。また、本実施形態では、SAPを前記穴部15aに供給する際には、前記密集層13aの層厚が該穴部15aの深さより短くなるようにSAPを供給する。具体的には、前記密集層13aの層厚が、各穴部15aの深さの約80%以下(より好ましくは10〜80%であり、特に、本実施形態では20%)となるようにSAPを供給する。このようなSAP供給を実現するための具体的な方法としては、例えば、前記パターンローラ70の窪み70aの外径を調整する等して該窪み70aに収容するSAPの量を調整することや、SAP供給時におけるサクションコンベア60側へ基材15を引き付ける吸引圧を調整することが考えられる。なお、SAP供給時における前記吸引圧は、パターンローラ70の窪み70aに収用されたSAPを各前記穴部15aに吸い込ませる一方で、基材15中の各前記穴部15aと隣接した部分から当該部分に集積した粉砕パルプを脱離させない程度に調整されている。
以上のようにSAPが穴部15aに供給される結果、基材15から吸収体素材12が形成されるようになる。つまり、前記密集層13aの層厚が基材15の穴部15aの深さより短くなるように、SAPが穴部15aに供給されると、穴部15a内にSAPの密集層13aと、空間層13bとが形成される。さらに、穴部15aの下方にて集積した粉砕パルプの層は集積層13cとなる。これにより、基材15の前記穴部15aが設けられた部分に、吸収体素材12の点在部13が形成される。なお、前記基材15の穴部15a以外の部分は吸収体素材12の連続部14となる。
基材15から吸収体素材12が形成された後、該吸収体素材12とサクションコンベア60との間にある薄葉紙11が、該吸収体素材12を包み込むように屈曲して、該吸収体素材12を被覆する(S108)。本実施形態では、薄葉紙11を屈曲させるために、サクションコンベア60の表面に薄葉紙屈曲部62が設けられており、薄葉紙11は、当該薄葉紙屈曲部62を通過する際に屈曲して、前記吸収体素材12を被覆する。この際、薄葉紙11の幅方向(搬送方向と交差する方向)における端部が吸収体素材12の上面側で重ね合わせられて接着されるため、薄葉紙11は筒状となる。
次に、薄葉紙11と吸収体素材12とを一体化するために、該薄葉紙11に被覆された状態の吸収体素材12(すなわち、吸収体10)の所定の部分を圧搾して、当該所定の部分に吸収体エンボスを形成する吸収体エンボス加工を施す(S110)。本実施形態において、所定の部分とは、前述したように、連続部14であって各点在部13を包囲した包囲部10bである。吸収体エンボス加工は、上下に相対向する2つのローラ(不図示)間を通過することにより実行される。例えば、下側のローラには、吸収体素材12が搬送された際に吸収体エンボスを形成させる領域に当接する部位に、所定形状の突起が形成されており、対向する上側のローラの表面は平坦に形成されている。薄葉紙11に包まれた吸収体素材12が、上記2つのローラ間を通過することにより、前記突起が薄葉紙11と吸収体素材12とを共に圧搾する。薄葉紙11と吸収体素材12とは突起により圧搾されて複数の吸収体エンボスが形成されることにより一体化される。なお、本実施形態では、吸収体エンボス加工は、吸収体10のうち、前記点在部13に相当する部分を避けて施される。これは、前述したように、点在部13が連続部14より低剛性であり、かつ、該点在部13内には空間層13bが形成されているため、該点在部13に相当する部分が前記突起により圧搾されると、薄葉紙11が破けるためである。
その後、一体化された薄葉紙11及び吸収体素材12(すなわち、吸収体10)は、吸収体素材12の外形形状に沿って吸収体カッター80により切断される(S112)。そして、上記の各ステップ(S102〜S112)が完了した時点で吸収体製造ステップS100が終了する。
===本実施形態の吸収性物品の有効性について===
本実施形態の吸収性物品1は、SAPが密集する密集層13aと、上下方向において前記密集層13aと隣接する空間層13bと、を備えて点在する点在部13、を有する吸収体素材12、を備えていることを特徴とする吸収性物品である。これにより、吸収性物品1内においてSAPの膨潤に起因して発生する隆起を抑制し、該吸収性物品1の着用者に異物感を与えることを防止することが可能になる。
すなわち、背景技術の項で説明したように、従来の吸収性物品では、SAPが吸収体素材12中において平面状に略均一に存在していた。特に、SAPが吸収性物品の肌面側で層状に存在している場合、当該SAPが吸収性物品に吸収された液体を保持して膨潤すると、膨潤したSAP同士が結合し合って、前記液体が反対面側(すなわち、吸収性物品の下方側)へ移動することを妨害するようになる。この結果、吸収された液体が吸収体素材12の肌面側で滞留し、当該肌面側では液体が吸収され難くなり、吸収性物品の吸収力が低下するといった問題が生じていた。
このような問題に対する解決策の一例としては、吸収体素材の肌面側にSAPを略均一に存在させず、例えば、SAPが存在する領域を吸収体素材中に点在させ、当該領域にSAPを密集させることが考えられる。これにより、吸収性物品が多量の液体を吸収した場合であっても、吸収された液体が吸収体素材の肌面側で滞留することなく、該吸収体素材内において拡散し易くなる結果、前記吸収性物品の吸収力が維持されることとなる。
このように、吸収性物品の吸収力を維持させる観点から、吸収体素材中におけるSAPの配置を調整することが重要となる。但し、点在している領域内にSAPが過度に密集している場合(例えば、当該領域内にSAPが充満している場合)、吸収性物品において新たな課題が生じてくる。つまり、点在している領域内にSAPが充満していると、当該SAPが液体を保持して膨潤することにより、当該領域が吸収体素材12の外側に向かって盛り上がってしまう。これにより、吸収性物品の、当該領域に相当する部分が隆起する結果、該吸収性物品を着用した者に対して異物感を与えてしまう虞がある。
本実施形態の吸収性物品1においても、吸収体素材12中にSAPが密集した点在部13が点在している。このため、吸収性物品1に吸収された液体が吸収体素材12内(特に、連続部14内)において拡散するようになり、吸収性物品1が多量の液体を吸収した場合であっても該吸収性物品1の吸収力が維持されることとなる。
その一方で、点在部13内では、SAPの密集層13aが、SAPの膨潤に対する空間的余裕としての空間層13bと隣接している。つまり、SAPが膨潤した場合であっても、当該膨潤によるSAPの体積増加を空間層13b内に止めることが可能になる。これにより、点在部13が上下方向(すなわち、吸収体素材12の厚み方向)において盛り上がることが抑制されることとなる。この結果、吸収性物品1の点在部13に相当する部分における隆起の発生も抑制されるため、吸収性物品1の着用者に対して異物感を与えることを防止することも可能になる。
また、点在部13では、該点在部13の周りに比して、SAP量がより多く、かつ、前記空間的余裕がより備わっているため、該点在部13は、発汗等により着用者の肌と吸収性物品1との間に籠る湿気を積極的に吸湿する部分となる。つまり、本実施形態の点在部13が備えられることにより、吸収性物品1における隆起の発生を抑制して着用者に異物感を与えることが防止されるだけでなく、吸収性物品1に多量の液体を吸収させた場合であっても該吸収性物品1の吸収力を維持し、さらに、該吸収性物品1の吸湿性を高めることが可能になる。
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態に基づき、主として本発明に係る吸収性物品、及び、吸収性物品の製造方法について説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。特に、本発明の実施形態は、上記の説明中に記載した数値、又は、各材料の材質に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、『吸収性繊維』の一例として粉砕パルプを説明したが、他の吸収性繊維として、コットン等のセルロース、レーヨンやフィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテートやトリアセテート等の半合成セルロース、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維などが用いられることとしてもよい。また、吸収体素材12中に、粉砕パルプやSAPの他、粒状消臭材、粒状抗菌材、粒状冷却材等が密集していてもよい。さらに、上記実施形態においては、『被覆部材』の一例としてティッシュ等の薄葉紙11を説明したが、他の被覆部材として、コットン等のセルロース、レーヨンやフィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテートやトリアセテート等の半合成セルロース、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維等から形成された織布又は不織布が用いられることとしてもよい。
また、上記実施形態においては、説明の便宜上、吸収体10が幅方向の中央に1つの吸収体素材12を備える構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、吸収体10における幅方向の両端部に、それぞれ、長手方向に沿って側部吸収体を備える構成としてもよい。また、側部吸収体に代えて、前記両端部のそれぞれに立体ギャザーを備える構成としてもよい。さらに、上記実施形態において、吸収性物品1は三つ折り状に折り畳まれていることとした。すなわち、吸収性物品1に二箇所の折線位置が存在する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、吸収性物品1が四つ折り状に折り畳み可能であってもよい。
また、上記実施形態においては、点在部13が吸収体素材12の長手方向両端部において点在し、中央部には存在していないこととしたが、これに限定されるものではなく、点在部13が長手方向中央部に存在していてもよい。
また、上記実施形態においては、点在部13が、吸収体素材12の長手方向及び幅方向によって規定される平面において長円状に形成されていることとしたが、円状、方形状、三角形状等でもよく、長円状に限定されるものではない。
また、上記実施形態においては、点在部13の周りに、粉砕パルプをはじめとする吸収性繊維が集積していることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、点在部13の周りに前記吸収性繊維が集積してなくてもよい。具体的には、前記点在部13が液体不浸透性の材料で包囲されていてもよい。但し、点在部13の周りに吸収性繊維が集積している場合には、前述したように、吸収性物品1に吸収された液体が三次元的に点在部13内に浸入するようになる。この結果、点在部13内は、該点在部13に密集したSAPにとって、前記液体を捕集し膨潤し易い環境となる。このため、点在部13内に、SAPの膨潤に対する空間的余裕としての空間層13bを備える構成がより有意義なものとなる。かかる点において、上記実施の形態の方が望ましい。
また、上記実施形態においては、点在部13は三層構造であり、前記密集層13aと前記空間層13bの他、粉砕パルプが集積した集積層13cが前記吸収体素材12の肌面側に備えられていることとした。なお、図9は参考例であり、点在部13が二層構造であり、前記密集層13a及び前記空間層13bのみ備えている構成である。図9は、密集層13a及び空間層13bを有する二層構造の点在部13を示した図である。但し、点在部13内に集積層13cが備えられている場合、該点在部13内に、SAPの膨潤に対する空間的余裕としての空間層13bを備える構成がより一層有意義なものとなる。具体的に説明すると、集積層13cと密集層13aとが隣接している場合、該密集層13a中のSAPが膨潤すると、集積層13c内の粉砕パルプが押し出されて該集積層13cが盛り上がってしまう。この結果、吸収性物品1において隆起が発生し、該吸収性物品1の着用者に異物感を与える虞がある。これに対し、上記実施形態のように、集積層13cと密集層13aとの間に空間層が介在している構成であれば、SAPが膨潤しても、当該膨潤によるSAPの体積増加を空間層内に止めることが可能になる。この結果、集積層13cの盛り上がり、すなわち、吸収性物品1における隆起の発生が抑制される。かかる点において、上記実施形態の方が望ましい。
なお、二層構造の点在部13を備えた吸収体素材12を形成するためには、例えば、メッシュパターン48内に粉砕パルプを集積して基材15を形成する際に、前述したパルプ掻き取り機構44によってメッシュパターン48の凸部48aの上に積層した粉砕パルプを掻き取ればよい。かかる場合には、肌面側から反対面側まで貫通した穴部15aが基材15内に形成されることとなる。すなわち、前記穴部15aの底部には、点在部13内における集積層13cに相当する部分が存在しない。このため、該穴部15aにSAPを供給されると、該穴部15aに二層構造の点在部13が形成されることになる。
また、上記実施形態においては、空間層13bの層厚が密集層13aの層厚より長いこととしたが、これに限定されるものではない。例えば、空間層13bの層厚が密集層13aの層厚より短くてもよい。但し、空間層13bの層厚が密集層13aの層厚より長い場合には、点在部13内にSAPの膨潤に対する空間的余裕がより多く確保される。このため、吸収性物品1における隆起の発生を抑制する効果がより有効に発揮されることになる。さらに、SAPが膨潤し易くなる結果、吸収性物品1が多量の液体を吸収した場合であっても、該吸収性物品1の吸収力は維持されることとなる。以上の点において、上記実施形態の方が望ましい。
また、上記実施形態においては、SAPが主として点在部13内に配置された構成について説明した。すなわち、上記実施形態では、吸収体素材の基材15が有する穴部15aにSAPを集中的に供給する場合について説明した。但し、これに限定されるものではなく、穴部15aの他、基材15の穴部15a以外の部分にSAPを供給する場合(以下、第一変形例)も考えられる。以下、第一変形例について、図10及び図11を参照しながら具体的に説明する。図10は、第一変形例に係る吸収体製造ステップS100の様子を模式的に示した図であり、図6に対応した図である。図11は、第一変形例に係る吸収体素材12及び吸収体10を示す図であり、SAPが供給された段階の吸収体素材12(上図)と、吸収性物品1に取り付けられた段階の吸収体10(下図)とが示されている。なお、図11には、矢印にて上下方向(すなわち、吸収体素材12又は吸収体10の厚み方向)が示されている。
第一変形例に係る吸収体製造ステップS100では、図10に示すように、パターンローラ70が用いられず、基材15にSAPを供給する他の機構としてのSAPフィーダ72が用いられている。このSAPフィーダ72はコニカル状の底部を有し、該底部からSAPを投下することによって当該SAPを前記基材15の穴部15aに供給するものである。そして、サクションコンベア60により搬送方向に搬送される基材15が、SAPフィーダ72の下方を通過する際に、該SAPフィーダ72の底部から、基材15の上表面(基材15の表面のうち、SAPフィーダ72と対向する側の面)全域に対してSAPが供給される。なお、このとき、基材15の表面のうち、吸収性物品1として完成した際に肌面側に来る面がサクションコンベア60の載置面と対向している。この結果、図11の上図に示すように、穴部15a内の他、基材15の上表面上にもSAPが配置される。なお、本件例と同様、SAPの供給時には、基材15に対してサクションコンベア60側に引き寄せる吸引力が働いている。そして、基材15の穴部15aにおける吸引抵抗が、該基材15中の穴部15a以外の部分における吸引抵抗より十分に小さいため、穴部15a内には、より多量のSAPが供給される。一方、図11の上図に示すように、前記基材15の上表面にはSAPが層状に堆積することになる。
以上のような供給方法によって前記基材15の穴部15aにSAPが供給されると、前記基材15から吸収体素材12が形成され、さらに、薄葉紙11に被覆された状態で吸収性物品1中に取り付けられる。この結果、図11の下図に示すように、吸収性物品1の反対面側において、吸収体素材12(より正確には、連続部14)と薄葉紙11との間に層状のSAPが配置されるようになる。なお、吸収体素材12の肌面側の表面が下方を向いている間(すなわち、吸収体製造ステップS100から包装前処理ステップS300までの間)には、点在部13内においてSAPの密集層13aが肌面側に存するが、吸収性物品1が表裏反転して前記肌面側の表面が上方を向くと、前記密集層13aが前記点在部13内において反対面側に来る。これにより、図11の下図に示すように、SAPが吸収体10の反対面側の表面全域に配置されるようになる。このような構成であれば、より多量の液体を吸収性物品1内に保持させることが可能になる。
以上、SAPフィーダ72により基材15の表面全体にSAPを供給する例について説明したが、所定量のSAPを所定の供給先へ適切に供給する点においては、パターンローラ70を用いて基材15の穴部15a内へ集中的にSAPを供給する方が望ましい。なお、吸収体10の反対面側の表面全域にSAPを配置する構成は、図12に示すように、吸収体素材12の点在部13が二層構造となる場合(参考例)にも適用可能である。図12は、図11に対応した図面であり、吸収体10の反対面側の表面全域にSAPを配置する構成に関する他の適用例を示した図である。
また、上記実施形態においては、パターンローラ70に設けられた窪み70aが円穴状の窪みであり、パターンローラ70における窪み70aの点在パターンと、基材15における穴部15aの点在パターンとが対応していることとした。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、各窪み70aが、図13に示すように、基材15の各穴部15aの形状に合わせて長円状になっていることとしてもよい。図13は、パターンローラ70の窪み70aの変形例を示す図である。各窪み70aの形状が長円状である場合、窪み70aの各部分から供給されるSAP量が不均一になる場合がある。例えば、長円状の各窪み70aにおいて、長径方向端部から供給されるSAP量と、長径方向中央部から供給されるSAP量とが異なる場合がある。これに対し、円穴状の窪み70aである場合には、該窪み70aの各部から供給されるSAP量が均一となるため、基材15の各穴部15aへSAPが均一に供給されるようになる。以上のように、各穴部15a内にSAPが適切に供給される点では、上記実施の形態の方が望ましい。
また、上記実施形態においては、穴部15aにSAPを供給する際、基材15が、サクションコンベア60に設けられた吸引装置の吸引によって該サクションコンベア60側に引き付けられた状態で、該基材15の上面側からSAPを供給することとした。しかし、これに限定されるものではなく、基材15は吸引装置を備えないコンベア上に載置されていることとしてもよい。但し、吸引装置が基材15に対して吸引力を付与している場合、基材15の穴部15aにおける吸引抵抗が、前記基材15の穴部15a以外の部分における吸引抵抗より十分に小さいため、穴部15a内にSAPが吸い込まれ易くなる。すなわち、上記実施形態であれば、穴部15a内にSAPをより容易に供給することが可能となる。かかる点において、上記実施形態の方が望ましい。
また、前記メッシュパターン48に設けられた各凸部48aの形状及び寸法等は、当該各凸部48aの配置位置によって異なっていてもよい。例えば、吸収体素材12のうち、深溝エンボス加工が施される部分(すなわち、深溝部20aが形成される部分)に点在部13を設ける場合、前記メッシュパターン48に設けられた凸部48aのうち、当該点在部13を形成する凸部48aの頂面の位置を、他の凸部48aの頂面の位置より低くする方が望ましい。かかる場合には、深溝エンボス加工が施される位置に点在部13が設けられた場合であっても、適切に深溝エンボス加工を施すことが可能になる。
具体的に説明すると、深溝エンボス加工が施される位置に設けられた点在部13における粉砕パルプの密集状態が、該点在部13の周囲における該密集状態に比べて十分に小さいと、深溝エンボス加工が施された際に、表面シート20が吸収体素材12の表面から浮いたり、破れたりする虞がある。これに対し、メッシュパターン48に設けられた凸部48aのうち、深溝エンボス加工が施される位置に設けられる点在部13を形成する凸部48aの頂面の位置を、他の凸部48aの頂面の位置より低くすれば、集積層13cの厚みがより厚くなる。これにより、吸収体素材12中、当該点在部13が位置した部分の剛性が調整されるため、深溝エンボス加工が施される位置に点在部13が設けられた場合であっても、適切に深溝エンボス加工を施すことが可能になる。なお、点在部13が位置した部分の剛性を調整する他の方法としては、例えば、前記集積層13cにおける粉砕パルプの目付を調整すること等が考えられる。