本明細書及び図面には、少なくとも次の事項が開示されている。
透液性の表面シート、不透液性の裏面シート、前記表面シートと前記裏面シートとの間に介在され親水性繊維及び高吸収性樹脂が含まれている吸液性コア、を有する吸収性物品において、前記吸液性コアには、複数の貫通孔が形成されており、前記貫通孔と隣接する位置に前記高吸収性樹脂の密度が他の領域より高い高密度領域が設けられていることを特徴とする前記吸収性物品である。
このような吸収性物品によれば、高吸収性樹脂の密度が他の部位より高い高密度領域が貫通孔と隣接する位置に設けられているので、高吸収性樹脂が液体を吸収し膨潤して体積が増加しても、増加した体積を貫通孔に収容することが可能である。このため、高吸収性樹脂が液体を吸収した際の膨潤による吸収性物品の外面側への隆起の発生を抑制することが可能である。
かかる吸収性物品において、前記吸液性コアは略矩形であって、前記貫通孔が、前記吸液性コアの長手方向及び幅方向に、それぞれ複数設けられていることが望ましい。
吸収性物品が液体を吸収した場合には、貫通孔に膨潤した高吸収性樹脂が存在することになる。膨潤した高吸収性樹脂は、液体を吸収しにくくなり、膨潤した高吸収性樹脂同士が結合した領域では液体が透過されなくなる。このため、貫通孔を吸液性コアの長手方向及び幅方向に、それぞれ複数設けることにより、貫通孔に隣接させて設けられた高密度領域の高吸収性樹脂が膨潤したとしても、膨潤した高吸収性樹脂間に親水性繊維を存在させて膨潤した高吸収性樹脂同士が結合しない構成とすることが可能である。そして、膨潤した高吸収性樹脂間の親水性繊維にて液体を広範囲に浸入させるとともに吸液性コアの長手方向及び幅方向に、それぞれ複数設けられて離れた位置に配置されている高吸収性樹脂に液体を吸収させることにより吸収性の高い吸収性物品を提供することが可能である。
かかる吸収性物品において、前記高密度領域は前記貫通孔に対し前記吸液性コアの長手方向のうち少なくとも一方に隣接していることが望ましい。
このような吸収性物品によれば、高密度領域は貫通孔に対し吸液性コアの長手方向のうち少なくとも一方に隣接しているので、複数形成される高密度領域同士が互いに近接しないように配置することが可能である。このため、高吸収性樹脂が膨潤した場合であっても膨潤した高吸収性樹脂が結合しないので、液体の浸透が阻害されることによる吸収性の低下を抑えることが可能である。
また、底部から突出して表裏面方向に貫通する貫通孔を形成するための凸部を備えた成形型に、当該成形型に対して所定方向から親水性繊維を供給して、前記凸部の前記親水性繊維が供給される側とは反対側にへこんだ凹部を形成する凹部形成ステップと、前記凹部に高吸収性樹脂を供給する供給ステップと、を有することを特徴とする吸収性物品の製造方法である。
このような吸収性物品の製造方法によれば、所定方向から供給された親水性繊維は、底部から突出した凸部により、凸部に対し親水性繊維が供給される側とは反対側への供給が妨げられる。このため、成形型に対して所定方向から親水性繊維を供給するだけで、凸部の親水性繊維が供給される側とは反対側に容易に凹部を形成することが可能である。そして、成形型から外した際には凸部の位置に貫通孔が形成されるので、親水性繊維を成形型に対して所定方向から供給するだけで貫通孔に隣接する位置に凹部を形成することが可能である。
かかる吸収性物品の製造方法において、前記成形型は、回動するドラムの外周面に凹設されており、前記ドラムの回動により姿勢が変化する成形型に、前記親水性繊維が前記ドラムの上方から供給されることが望ましい。
このような吸収性物品の製造方法によれば、外周面に成形型が設けられたドラムの上方から親水性繊維が供給されるので、ドラムの回動により成形型の姿勢を変化させつつ親水性繊維を成形型に供給することが可能である。すなわち、成形型に対する親水性繊維の供給方向を、ドラムの回動により変更しつつ親水性繊維を供給ことが可能である。
かかる吸収性物品の製造方法において、前記成形型は、前記ドラムの回動により、前記凹部形成ステップ後に、前記凹部に対し前記高吸収性樹脂を上方から供給可能な位置に移動されることが望ましい。
このような吸収性物品の製造方法によれば、ドラムを回動させることにより、凹部形成ステップにより形成された貫通孔と隣接する凹部に高吸収性樹脂を確実に供給することが可能である。
===本実施の形態に係る吸収性物品について===
<<吸収性物品の全体構造>>
先ず、本実施形態の吸収性物品の一例として、生理用ナプキン(以下、吸収性物品1)を例に挙げ、該吸収性物品1の構成例について図1を用いて説明する。図1は、吸収性物品1の模式平面図である。図1には、矢印にて吸収性物品1の長手方向と幅方向とが示されている。以下の説明では、吸収性物品1が有する表面のうち、当該吸収性物品1の着用者の身体に接触する面を肌当接面と、下着に接触する面を非肌当接面とする。また、着用時に着用者の前側に位置する端を前端、後側に位置する端を後端とする。なお、図1は、吸収性物品1の肌当接面側を示している。
吸収性物品1は、図1に示すように所定方向に長い外形形状を有している。
また、吸収性物品1は、経血等の液体を吸収するための略矩形をなす吸収体コアとしての吸収体10と、吸収体10の肌当接面側の表面を覆う透液性の表面シート20と、吸収体10の肌当接面側にて該吸収体10の長手方向両側縁に配置されたサイドシート25と、吸収体10の非肌当接面側に設けられた非透液性の裏面シート30と、を有している。また、吸収性物品1は、幅方向に沿う折線にて折り畳み可能であり、包装された製品の状態では所定の折線位置(図1中、二点鎖線にて示す)にて三折りの状態にて折り畳まれている。以下、吸収性物品1の長手方向において、前端側の折線位置よりも前端側にある部分を前端部とし、後端側の折線位置よりも後端側にある部分を後端部とし、二つの折線位置の間にある部分を中央部とする。
吸収体10の長手方向が吸収性物品1の長手方向に沿うよう配置されている。また、吸収体10の中央の領域には、肌当接面側に膨らんだ膨らみ部10aが形成されている。膨らみ部10aは、ほぼ長円状に形成されており、着用者が吸収性物品1を着用する際には着用者の股間部(すなわち、着用者の経血排泄口の周辺部位)の形状に沿って変形されつつ当該股間部との間に表面シート20を介して当接される。
また、本実施形態に係る吸収体10は、例えばティッシュペーパー等の薄葉紙11及び吸収体素材12から構成される。吸収体素材12は、表面シート20側から吸収体10側に浸透してきた液体を吸収保持する機能を備えており、吸収体10と略同一の外形形状を有している。薄葉紙11は『被覆部材』の一例であり、吸収体素材12を包み込むように被覆するシートである。また、薄葉紙11と、薄葉紙11に被覆された吸収体素材12とを一体化するために、所定の部分にエンボス加工(圧搾)が施されて、エンボス加工が施された部位にはエンボス(以下、吸収体エンボスとも言う)が形成されている。なお、吸収体10の詳細については後述する。
表面シート20は、液透過性を有するシート部材であり、パルプやコットン等の天然繊維、レーヨン等のセルロース繊維、又は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性疎水性繊維により形成された織布や不織布や有孔プラスチックシート等によって形成されている。表面シート20は、吸収性物品1の幅方向中央の領域に備えられ、幅方向において吸収体10よりわずかに広い幅と、長手方向において裏面シート30と略同じ長さとを有しており、吸収体10の表面を全域に亘って覆っている。
裏面シート30は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性かつ液不透過性のシートである。裏面シート30は、吸収体10より十分に広く形成されており、その外縁部は全周において吸収体10の外縁部より外側に位置している。また、幅方向における両側には、中央部の前端側に幅方向外側に延出された保持部32が形成されている。保持部32は、非肌当接面側に粘着剤が付与されており、吸収性物品1の着用時に、非肌当接面側に折り返された状態で下着の外側に粘着剤にて固定される。また、本実施形態に係る裏面シート30は、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性かつ液不透過性のシートであるが、熱可塑性かつ液不透過性のシートを含み、薄葉紙や不織布等が積層されたシート部材が用いられることとしてもよい。
サイドシート25は、合成樹脂繊維で形成されたエアスルー不織布やスポンバンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド層からなる不織布等の適宜な不織布である。サイドシート25は、前記表面シート20の幅方向両端部と重なった状態で、吸収性物品1の幅方向における両側に備えられている。
以上のように構成された吸収性物品1では、吸収体10の肌当接面と表面シート20とは、ホットメルト系接着剤によって接合され、高温の押圧部材を用いて厚み方向に押圧する深溝エンボス加工によって形成された深溝部20aにより、さらに強固に接合されている。
本実施形態に係る深溝部20aは、図1に示すように、膨らみ部10aを取り囲んだ部分、及び、膨らみ部10aを取り囲んだ部分の幅方向における両側から前端側及び後端側に延出された部分、から構成されている。さらに、深溝部20a内には、深溝部20aに沿って、互いに溝深さが異なる浅底部と深底部とが交互に配置されている。このような深溝部20aを有することにより、吸収性物品1の長手方向中央部を幅が縮まるように屈曲させた際に、該吸収性物品1の長手方向両端部も中央部に追従して屈曲し易くなっている。すなわち、深溝部20aは、吸収性物品1の着用時に前述の膨らみ部10aに相当する部分を身体に沿って密着させるために、立体的な屈曲を促す屈曲誘発部となっている。さらに、深溝部20aは、深溝部20a内に経血等が流入した場合に、高密度に圧搾された部位(すなわち、深底部)への浸透を促して経血等の拡散を抑える機能も備えている。なお、本実施形態においては、深溝部20a内に浅底部と深底部とが交互に配置されていることとしたが、これに限定されず、例えば、深溝部20a内において溝深さが均一であってもよい。
さらに、重ねられた吸収体10と表面シート20との非肌当接面側には、裏面シート30がホットメルト系接着剤にて接合されている。また、吸収体10の肌当接面側には吸収体10の幅方向における両側にそれぞれわずかに重なる位置から裏面シート30の端にかけて、サイドシート25がホットメルト系接着剤にて接合されている。そして、裏面シート30、吸収体10、表面シート20、及び、サイドシート25が重なる位置には、低温に加熱された押圧部材によるエンボス加工が施されており、吸収体10、表面シート20、サイドシート25、及び、裏面シート30がさらに強固に接合されている。さらに、吸収性物品1の外縁部を低い温度にて熱溶着するラウンドシール加工が施されている。上記のように、エンボス加工やホットメルト系接着剤等により吸収体10、表面シート20、サイドシート25、及び、裏面シート30が接合されている。この結果、吸収体10は、表面シート20とサイドシート25と裏面シート30とによって形成される空間内に収容されていることとなる。
<<吸収体の構造>>
次に、本実施形態の吸収体10の構造について、図1〜図3を用いて説明する。図2は、吸収体の模式平面図であり、吸収体10の肌当接面側を示している。図3は、貫通孔及び高密度領域の断面構造を示す図であり、図2のA−A断面を示している。また、図2中、矢印にて吸収体10の長手方向と幅方向とが示されている。図3には、矢印にて上下方向、すなわち、吸収体10の厚み方向が示されている。ここで、吸収体10の長手方向及び幅方向によって規定される平面に沿う方向が、厚み方向と交差する方向である。
吸収体10は、図2に示すように所定方向に長い略シート状の部材であり、前述したように、薄葉紙11と吸収体素材12とによって構成されている。
吸収体素材12は、吸収体10と略同様の外形形状を有し、吸収体素材12の長手方向及び幅方向が、各々、吸収性物品1の長手方向及び幅方向に沿った状態で、吸収性物品1内に取り付けられている。また、吸収体素材12の長手方向中央に位置し、かつ、幅方向中央に位置する部分は、吸収体10の膨らみ部10aに相当する部分であり、他の部分より肉厚な肉厚部12aが形成されている。
この吸収体素材12は、『親水性繊維』の一例としての粉砕パルプP(繊維状に粉砕されたパルプ)と、『高吸収性樹脂』の一例としての粒状の高吸収性ポリマーSと、によって構成される。粉砕パルプPはシート状に集積されており、高吸収性ポリマーSは吸収体素材12中に部分的に密度が高くなるように配置されている。
本実施形態の吸収体素材12の構成について、図2及び図3を参照しながら具体的に説明する。図2に示すように、吸収体素材12は、液体を吸収するための粉砕パルプPと高吸収性ポリマーSとを有し、複数の貫通孔としての穴部15aが設けられている。薄葉紙11に包まれた吸収体10においては、粉砕パルプPと高吸収性ポリマーSが含まれる吸収材が存在する吸収材領域が吸収体素材12に相当する。穴部15aは、吸収体素材12の長手方向及び幅方向によって規定される平面において長円状に形成されている。複数の穴部15aは、吸収体10の前端部側と後端部側とにそれぞれ厚み方向と交差する方向に点在、すなわち、吸収体10の長手方向及び幅方向に、それぞれ複数設けられている。
吸収体素材12には、厚み方向と交差する方向において各穴部15aと隣接する位置に高吸収性ポリマーSの密度が他の部位より高い高密度領域13が設けられている。ここで、吸収体素材12のうち高密度領域13以外の部位を、以下の説明では基材15という。また、各高密度領域13は、各々が隣接する穴部15aに対し、特定の方向(ここでは、後端方向)に隣接されており、穴部15aと同様に点在している。そして、穴部15a及び高密度領域13が隣接している部位の周りには、粉砕パルプPが略均一な状態で集積されている。なお、吸収体素材12の表面(肌当接面側又は非肌当接面側の表面)における穴部15a及び高密度領域13が隣接している部位の面積の、吸収体素材12の総面積に占める割合は5%以上(より好ましくは5〜70%以上であり、特に10〜40%であることが望ましい)に設定されている。
本実施形態に係る穴部15a及び高密度領域13が隣接している部位は、図3に示すように、粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーS等の吸収材が集積された吸収材領域(吸収体素材12)と吸収材が存在しない穴部15aとが長手方向に隣接させて設けられている。吸収体素材12のうち、穴部15aの、吸収体素材12の長手方向における後端側には、吸収体素材12の厚み方向において三層構造をなす高密度領域13が設けられている。高密度領域13は、粉砕パルプPが集積したパルプ集積層13bと、高吸収性ポリマーS(図3等において、記号Sにて示す)が集積された高吸収性ポリマー集積層13aとを有し、肌当接面側及び非肌当接面側に設けられた2つのパルプ集積層13bの間に高吸収性ポリマー集積層13aが設けられている。
吸収体素材12に複数点在された穴部15a及び高密度領域13が隣接している部位は、いずれも穴部15aの、長手方向における後端側に高密度領域13が配置され、また、高吸収性ポリマー集積層13aに集積された高吸収性ポリマーSの一部が穴部15aに露出されている。ここで、本実施形態の吸収体素材12には粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSが存在するが、基材15における高吸収性ポリマーSは製造上混入してしまう程度に含まれるだけであるため、基材15に高吸収性ポリマーSが含まれる割合は高密度領域13よりきわめて小さい。一方、高密度領域13には高吸収性ポリマーSを積極的に供給するので、基材15と比較して高吸収性ポリマーSが含まれる密度が高い領域となる。このような高密度領域13の構成は、製造方法に起因するので、製造方法にて詳述する。
上述したように吸収体素材12は、穴部15aを有しているため、穴部15aの近傍は、穴部15aから離れた部位より低剛性となっている。そして、本実施形態では、図1に示すように、吸収性物品1を折り畳む際の折線位置に相当する位置に穴部15aが存在している。すなわち、吸収性物品1が折り畳まれた際に形成される折り目と重なる位置に穴部15aが存在する。このように、より剛性が低い穴部15aが折り目と重なるため、吸収性物品1を容易折り畳むことが可能である。また、折り目に重なった穴部15aの長手方向が折り目に沿って配置されているため、吸収性物品1をより一層容易に折り畳むことが可能である。
薄葉紙11は、透液性を有し、かつ、高吸収性ポリマーSの粒子より目の細かなシートであり、薄葉紙11の外側に高吸収性ポリマーSが漏れることを防止する機能を有している。さらに、薄葉紙11は、集積された粉砕パルプPが薄葉紙11の外側への脱落を防止する機能も有している。
本実施形態の吸収体10は、高吸収性ポリマーSの密度が高い高密度領域13が点在する穴部15aに隣接させて複数形成されており、高密度領域13と穴部15aとが隣接した複数の部位間には主に粉砕パルプPが集積されている。すなわち、表面シート20及び薄葉紙11を透過した液体は、集積されている粉砕パルプP内に浸透して拡散及び吸収され、また高吸収性ポリマーSに吸収される。このとき、高密度領域13では高吸収性ポリマーSが液体を保持して膨潤し、膨潤して増加した体積は、障害物のない隣接する穴部15aに膨出する。また、高密度領域13では、高吸収性ポリマー集積層13aが吸収体素材12の厚み方向におけるほぼ中央に位置する三層構造としているので、穴部15aに膨出した高吸収性ポリマーSが肌当接面及び非肌当接面のいずれにも突出しにくく構成されている。
<<吸収性物品の製造方法について>>
次に、本実施形態の吸収性物品1の製造方法について図4を用いて説明する。図4は、吸収性物品1の製造フローを示す図である。吸収性物品1の製造方法は、吸収体10を製造する吸収体製造ステップS100と、吸収体製造ステップS100により製造された吸収体10と、表面シート20と、サイドシート25と、裏面シート30とを接合して吸収性物品1を製造するメイン製造ステップS200と、吸収性物品1を包装可能な状態とする包装前処理ステップS300と、吸収性物品1を包装する包装ステップS400とを有している。本実施形態では、吸収性物品1の各材料及び製造物がコンベア等の搬送装置によって搬送されながら、上記の各ステップが実行される。以下、吸収性物品1の製造フローのうち、吸収体製造ステップS100について説明する。
<吸収体製造ステップ>
吸収体製造ステップS100について図5乃至図7を用いて説明する。図5は、吸収体製造ステップS100のフロー図である。図6は、吸収体製造ステップS100において吸収体10が製造されていく過程を模式的に示した図である。図7は、粉砕パルプを集積して吸収体素材12を形成するために用いられる『成形型』の一例としてのメッシュパターン48を示す図である。なお、図6では説明の便宜上、穴部及び凹部が見えるように破断した吸収体素材を模式的に示している。
図5に示すように、吸収体製造ステップS100は、吸収体素材12を形成するステップS102から始まる。そして、本実施形態において、吸収体素材12は、図7に示すメッシュパターン48内に粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSを集積させることにより形成される。
メッシュパターン48は、メッシュ状の底部48cを有し、前述した吸収体素材12の形状に対応した形状をなす金属製の成形型である。つまり、メッシュパターン48は所定方向に長い外形形状を有し、図7に示すように、メッシュパターン48の底部48cに、水平面形状が長円形状をなし、縦断面形状が略台形状の凸部48aが点在している。さらに、吸収体素材12の長手方向中央部であって幅方向中央の領域に相当する部位には、吸収体素材12の肉厚部12aを形成するための深底部48bが設けられている。このようなメッシュパターン48は、回動するサクションドラム40の外周面に複数凹設けられている。図7においては、図示の便宜上、当該底面の一部分のみについてメッシュ状であることを示し、平坦な状態として示している。
また、メッシュパターン48の外部には、サクションドラム40の内方側に空気を吸引する吸引装置(不図示)が設けられている。吸引装置によりメッシュパターン48の底部48cを透過するように空気が吸引されると、吸引力によりサクションドラム40の上方から落下してくる粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSがメッシュパターン48内に吸い込まれるようになる。やがて、粉砕パルプPはメッシュパターン48内に集積し、所定の厚みを有する状態まで積層される。
以上のような構成のメッシュパターン48がサクションドラム40の回動に伴って姿勢を変化させながら移動する間に粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSを集積させることにより、吸収体素材12が形成される。つまり、型成形により吸収体素材12が形成されるため、メッシュパターン48の形状を変更することにより、所望の形状の吸収体素材12を形成することが可能になる。すなわち、吸収体素材12は所望の形状に成形することが可能である。なお、本実施形態に係るメッシュパターン48には、肉厚部12aを形成するための深底部48bが設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、メッシュパターン48の長手方向中央であって幅方向中央に位置する部分が平坦面であり、肉厚部12aを有しない扁平状の吸収体素材が形成されてもよい。
また、吸収体素材12には貫通孔としての長円状の穴部15aが点在している。このような穴部15aは、メッシュパターン48の底部48cに突出された凸部48aによって形成される。すなわち、メッシュパターン48に粉砕パルプPを集積させる際、凸部48aに相当する部分を避けるように(換言すると、凸部48a内に粉砕パルプPが入らないように)粉砕パルプPが集積された結果、凸部48aに相当する部位に穴部15aが形成される。なお、本実施形態では、凸部48aの各側面がメッシュ状になっているが、穴部15a内に粉砕パルプが入ることを防止するために、凸部48aの各側面をテープや樹脂等によって目止めされていてもよい。また、平坦な底面を有するメッシュパターン48であれば、ゴムや樹脂等によって個別に形成された凸部48aをメッシュパターン48の底部48cに取り付けることとしてもよい。
このようなメッシュパターン48を用いて吸収体素材12を形成するステップS102について、図6を参照しながら更に詳しく説明する。メッシュパターン48は、吸引装置を内蔵し、所定の回転方向(図6中、矢印にて示す方向)に回動可能なサクションドラム40の外周上において、メッシュパターン48の長手方向がサクションドラム40の回動方向に沿うように配置されている。このとき、回動方向の先方側にメッシュパターン48において吸収体素材12の前端側を形成する部位が配置されている。
また、各メッシュパターン48は、開口側が外側を向いた状態でサクションドラム40の周面に配置されている。そして、吸引装置によって、サクションドラム40周辺の空気がメッシュパターン48を介してサクションドラム40内方に(すなわち、図6中、記号F1にて示す方向に)吸引されつつ、メッシュパターン48がサクションドラム40と一体的に回動する。一方、サクションドラム40の上方には、シート状のパルプ(図6中、記号Psにて示す)を粉砕、開繊し供給するためのパルプ開繊供給装置42が設けられている。このパルプ開繊供給装置42にパルプ供給部46からシート状のパルプPsが供給されると、パルプ開繊供給装置42内部にてシート状のパルプPsが粉砕、開繊されて粉砕パルプPが生成される。そして、図6に示すように、生成された粉砕パルプPはサクションドラム40の上方からサクションドラム40側に落下するように供給され、吸引装置による吸引力によりサクションドラム40の外周上に配置されたメッシュパターン48内に捕集される。このとき、本実施形態ではパルプ開繊供給装置42から供給される粉砕パルプPは、サクションドラム40が回動した際に、サクションドラム40の中央よりメッシュパターン48が上方に向かって移動される側が、下方に向かって移動される側より広い領域にて供給されるように設定されている。そして、粉砕パルプPは、図6においてサクションドラム40の右上方から左方向に噴出され、自重と吸引される空気とによりサクションドラム40側に引きつけられるように供給される。
サクションドラム40の上方から粉砕パルプPが供給される粉砕パルプ供給領域のうち、サクションドラム40の回動によりメッシュパターン48の開放側がほぼ上方に向く姿勢となる位置には、高吸収性ポリマー供給機52により高吸収性ポリマーSを供給可能な高吸収性ポリマー供給領域が設けられている。高吸収性ポリマー供給機52は、サクションドラム40の所定の領域に対し高吸収性ポリマーSを上方から分散する装置である。高吸収性ポリマー供給領域では、高吸収性ポリマーSの供給及び非供給をサクションドラム40の位置情報または回動タイミング等に基づいて制御可能に構成されている。
サクションドラム40が回動することにより上方に向かって移動するメッシュパターン48が、粉砕パルプPの供給領域に至ると、メッシュパターン48内において粉砕パルプPが集積し始める(図6A領域)。このとき、粉砕パルプPはサクションドラム40が回動しつつ随時集積されていくが、サクションドラム40の回動に伴って上方に向かって移動するメッシュパターン48の姿勢は傾斜しており、傾斜しているメッシュパターン48に対し右上方から落ちる粉砕パルプPは、メッシュパターン48の凸部48aの下側となる部位には集積されない。すなわち、メッシュパターン48の移動方向とはほぼ反対方向から供給される粉砕パルプPは凸部48aに妨害されて、凸部48aに対し粉砕パルプPが供給される側とは反対側に集積されない領域を有しながら、サクションドラム40が回動しメッシュパターン48の姿勢が変化していく。そして、サクションドラム40の回動に伴ってメッシュパターン48の傾斜が小さくなると、凸部48aに対し粉砕パルプが供給される側とは反対側の領域にも粉砕パルプPが集積し始める。このとき、メッシュパターン48の凸部48aの下側に位置していた部位、すなわち凸部48aに対し吸収体素材12の後端側にて隣接する部位には、他の部位より粉砕パルプPの集積量が少ない凹部15bが形成される。さらに、サクションドラム40が回動して、メッシュパターン48の開放側がほぼ上方に向き、凹部15bが高吸収性ポリマーSの供給領域に到達すると、凹部15bに高吸収性ポリマーSが供給される(図6B領域)。このとき、凹部15bに高吸収性ポリマー集積層13aが積層される。また、高吸収性ポリマー供給機52は、所定の領域に高吸収性ポリマーSを分散する装置ではあるが、凹部15bにのみ供給する装置ではないため、凹部15b以外の領域にも僅かながら高吸収性ポリマーSが供給される。
さらに、サクションドラム40が回動することにより、凹部15bが高吸収性ポリマー供給領域を超えると再び粉砕パルプPのみが上方から供給され、メッシュパターン48内に集積される(図6C領域)。このとき凹部15b内の高吸収性ポリマー集積層13a上にも粉砕パルプPが供給され、上下に位置する2つのパルプ集積層13bと高吸収性ポリマー集積層13aとを有する三層構造の部位が形成される。三層構造の部位は、他の部位より高吸収性ポリマーSの密度が高い高密度領域13となる。
その後、サクションドラム40の回転に伴ってメッシュパターン48がパルプ掻き取り機構44の位置まで移動する。パルプ掻き取り機構44では、メッシュパターン48内に集積された粉砕パルプPのうち、余分に集積された粉砕パルプP(例えば、メッシュパターン48内において所定の厚み以上に積層した分の粉砕パルプ)が掻き取られる。以上の工程によって、メッシュパターン48内に吸収体素材12が形作られる。
サクションドラム40の更なる回転により、吸収体素材12を収容したメッシュパターン48がサクションドラム40の最下部に到達すると、吸収体素材12がメッシュパターン48から外れ、次の工程に引き渡される。このとき、図7に示すように、メッシュパターン48の凸部48aの側面はテーパー面となっているため、吸収体素材12は型崩れすることなくメッシュパターン48から外れることが可能である。メッシュパターン48から外れた吸収体素材12には、図6に示すように、穴部15aが点在し、穴部15aに隣接して高密度領域13が形成されている。
メッシュパターン48から外れた吸収体素材12は、空気を下方に吸引しながら搬送するために用いられるサクションコンベア60上に載置される(S104)。サクションコンベア60は不図示の吸引装置を備えており、吸引装置によって空気がサクションコンベア60内に(すなわち、図6中、記号F2にて示す方向に)吸引される。そして、吸収体素材12は、吸引装置の吸引力によりサクションコンベア60側に引き付けられた状態で、所定の搬送方向(図6中、矢印にて示す方向)へ搬送される。なお、サクションコンベア60の載置面上には、予め、薄葉紙供給部50から連続した帯状の薄葉紙11が供給されており、吸収体素材12は薄葉紙11上に載せられることとなる。すなわち、吸収体素材12は、薄葉紙11を介してサクションコンベア60側に引き付けられ、薄葉紙11とともに搬送方向へ搬送される。また、メッシュパターン48内で形成された吸収体素材12は、順次サクションコンベア60上に載置されていくため、サクションコンベア60上には、図6に示すように、複数の吸収体素材12が間隔を隔てて載置されている。なお、本実施形態では、吸収体素材12がメッシュパターン48から外れる際に、表裏面が反転され、吸収体素材12の表面のうち、吸収性物品1として完成した際に肌当接面側となる表面が、サクションコンベア60の載置面と対向した状態で、吸収体素材12が搬送される。但し、これに限定されるものではなく、前記肌当接面側となる面がサクションコンベア60側とは反対側(すなわち、上方)を向いた状態で、前記吸収体素材12が搬送されることとしてもよい。
吸収体素材12が形成された後、吸収体素材12とサクションコンベア60との間にある薄葉紙11が、吸収体素材12を包み込むように屈曲されて、吸収体素材12を被覆する(S106)。本実施形態では、薄葉紙11を屈曲させるために、サクションコンベア60の表面に薄葉紙屈曲部(不図示)が設けられており、薄葉紙11は、薄葉紙屈曲部を通過する際に屈曲されて吸収体素材12を被覆する。この際、薄葉紙11の幅方向(搬送方向と交差する方向)における端部が吸収体素材12の上面(非肌当接面)側で重ね合わせられて接着されるため、薄葉紙11は筒状となる。
次に、薄葉紙11と吸収体素材12とを一体化するために、薄葉紙11に被覆された状態の吸収体素材12の所定の部分を圧搾して、吸収体エンボスを形成する吸収体エンボス加工を施す(S108)。吸収体エンボス加工は、上下に相対向する2つのローラ(不図示)間を通過することにより実行される。例えば、下側のローラには、吸収体素材12及び薄葉紙11が搬送された際に吸収体エンボスを形成させる領域に当接する部位に、所定形状の突起が形成されており、対向する上側のローラの表面は平坦に形成されている。薄葉紙11に包まれた吸収体素材12が、上記2つのローラ間を通過することにより、突起が薄葉紙11と吸収体素材12とを共に圧搾する。薄葉紙11と吸収体素材12とは突起により圧搾されて複数の吸収体エンボスが形成されることにより一体化され吸収体10が形成される。なお、本実施形態では、吸収体エンボス加工は、吸収体10のうち、穴部15aに相当する部分を避けて施されることが望ましい。これは、前述したように、穴部15aの近傍は穴部15aから離れた部位より低剛性であるため、穴部15aの近傍が突起により圧搾されると、薄葉紙11が破けるためである。
その後、一体化された薄葉紙11及び吸収体素材12(すなわち、吸収体10)は、吸収体素材12の外形形状に沿って吸収体カッター(不図示)により切断される(S110)。そして、上記の各ステップ(S102〜S110)が完了した時点で吸収体製造ステップS100が終了する。
===本実施形態の吸収性物品の有効性について===
本実施形態の吸収性物品1によれば、高吸収性ポリマーSの密度が基材15の部位より高い高密度領域13が穴部15aと隣接する位置に設けられているので、高吸収性ポリマーSが液体を吸収し膨潤して体積が増加しても、増加した体積を穴部15a内に収容することが可能である。このため、高吸収性ポリマーSが液体を吸収した際の膨潤による吸収性物品1の外面側への隆起の発生を抑制することが可能である。
また、吸収性物品1が液体を吸収した場合には、穴部15a内に膨潤した高吸収性ポリマーSが存在することになる。膨潤した高吸収性ポリマーSは、液体を吸収しにくくなり、膨潤した高吸収性ポリマーS同士が結合した領域では液体が透過されなくなる。例えば、高吸収性ポリマーSが吸収体素材12の全域に存在し、特に、高吸収性ポリマーSが吸収性物品1の肌当接面側で層状に存在している場合には、高吸収性ポリマーSが液体を保持して膨潤し高吸収性ポリマーS同士が結合し合って、液体が非肌当接面側へ移動することを妨害するようになる。この結果、吸収された液体が吸収体素材12の肌当接面側で滞留し、当該肌当接面側では液体が吸収され難くなり、吸収性物品1の吸収力が低下する畏れがある。このため、穴部15aを複数点在させるとともに穴部15aに隣接させて高密度領域13を設けることにより、高密度領域13の高吸収性ポリマーSが膨潤したとしても、膨潤した高吸収性ポリマーS間には粉砕パルプPが存在するので、粉砕パルプPにて液体を広範囲に浸透させるとともに点在されて離れた位置に配置されている高吸収性ポリマーSに液体を吸収させることにより吸収性の高い吸収性物品1を提供することが可能である。また、繰り返し液吸収性が高い穴部15aが点在されており、穴部15aの内壁面には高吸収性ポリマーSが現れているので、着用時に肌と吸収体10の間にある湿気を高吸収性ポリマーSが吸収して蒸れにくくなるという効果をも奏する。
さらに、高密度領域13は穴部15aに対し特定の方向に隣接しているので、複数形成された高密度領域13にて膨潤した高吸収性ポリマーS同士が結合することはないので、吸収性の低下を抑えることが可能である。
また、吸収材にて形作られた吸収体素材12と、吸収体素材12を被覆するための薄葉紙11が備えられているので、高密度領域13の高吸収性ポリマーSが外部に流出することを防止し、穴部15aに隣接させて高吸収性ポリマーSを他の部位より高密度に備えた高密度領域13を形成することが可能である。
また、本実施形態の吸収性物品1の製造方法によれば、吸収体素材(親水性繊維領域)12と穴部15aとが形成されるとともに、吸収体素材12に穴部15aと隣接させて形成された凹部15bに高吸収性ポリマーSが供給されるので、穴部15aと隣接させて高吸収性ポリマーSを確実に配置することが可能である。
このとき、形成される吸収体素材12の前端側から供給された粉砕パルプPは、メッシュパターン48の底部48cから突出した凸部48aにより、凸部48aに対し後端側への供給が妨げられる。このため、メッシュパターン48に対して吸収体素材12の前端側から粉砕パルプPを供給するだけで、凸部48aに対し吸収体素材12における後端側に容易に凹部15bを形成することが可能である。そして、メッシュパターン48から外した際には凸部48aの位置に穴部15aが形成されるので、粉砕パルプPをメッシュパターン48に対して形成される吸収体素材12の前端側から供給するだけで穴部15aに隣接する凹部15bを形成することが可能である。
また、外周面にメッシュパターン48が設けられたサクションドラム40の上方から粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSが供給されるので、サクションドラム40の回動によりメッシュパターン48の姿勢を変化させつつ粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSをメッシュパターン48に供給することが可能である。すなわち、サクションドラム40の回動によりメッシュパターン48に対し供給する方向を変更しつつ粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSを供給ことが可能である。
また、吸収体素材12を形成するための成形型は、網材にて形成されたメッシュパターン48であり、メッシュパターン48が設けられているドラムは、内方に向かって空気が吸引されているサクションドラム40なので、所定方向から供給される粉砕パルプP及び高吸収性ポリマーSをサクションドラム40の内方に向かって吸引される空気によりメッシュパターン48内に効率よく捕集させることが可能である。
そして、メッシュパターン48は、サクションドラム40の回動により、凹部形成ステップ後に、凹部15bに対し高吸収性ポリマーSを上方から供給可能な位置に移動されるので、サクションドラム40を回動させることにより、凹部形成ステップにより形成された凹部15bに高吸収性ポリマーSを確実に供給することが可能である。特に、凸部48aに隣接して形成された凹部15bは、他の部位より集積されている粉砕パルプPの量が少ない(目付が低い)ため、他の部位より吸引力が強くなっている。このため、サクションドラム40が回動して高吸収性ポリマーSの供給が可能な高吸収性ポリマー供給領域では他の部位より高吸収性ポリマーSが吸引されやすくなるので、高吸収性ポリマーSを効率よく凹部15bに供給することが可能である。
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態に基づき、主として本発明に係る吸収性物品、及び、吸収性物品の製造方法について説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。特に、本発明の実施形態は、上記の説明中に記載した数値、又は、各材料の材質に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、『親水性繊維』の一例として粉砕パルプを説明したが、他の親水性繊維として、コットン等のセルロース、レーヨンやフィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテートやトリアセテート等の半合成セルロース、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維などが用いられることとしてもよい。また、吸収体素材12中に、粉砕パルプや高吸収性ポリマーSの他、粒状消臭材、粒状抗菌材、粒状冷却材等が密集していてもよい。さらに、上記実施形態においては、『被覆部材』の一例としてティッシュ等の薄葉紙11を説明したが、他の被覆部材として、コットン等のセルロース、レーヨンやフィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテートやトリアセテート等の半合成セルロース、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維等から形成された織布又は不織布が用いられることとしてもよい。また、吸収体素材12は必ずしも被覆されていなくてもよい。
上記実施形態においては、吸収体10の肌当接面側の表面を覆う透液性の表面シート20を単にシート部材として説明しているが、例えば、表面シートの表面に凹凸を有するシート部材を用いても良い。表面に凹凸を有するシート部材を表面シートとして用いた場合には、高吸収性ポリマーSの膨潤による隆起の抑制が不十分であった場合でも、隆起の抑制できなかった部位を表面シートの凹部にて吸収することにより着用者に異物感を与えることをより抑制することが可能である。このような表面に凹凸を有するシート部材の一例としては、例えば、紡糸された繊維が堆積された繊維ウエブを搬送しつつ、搬送方向と交差する方向に互いに間隔を隔てて配置された複数のノズルから前記繊維ウエブの表面に空気流を吐出することにより、空気流が当たる位置の繊維を吹き分けて繊維を移動させ、これにより、空気流が当たる位置には谷部、当たらない位置には山部を形成して表面に凹凸を設けた空気流処理を施した不織布が挙げられる。すなわち、この不織布の表面には、長手方向に沿って山部と谷部とが延在し、幅方向において複数条並列するように設けられている。そして、山部の頂き部と谷部の底部とをつなぐ傾斜部の繊維の坪量が、頂き部の繊維の坪量よりも大きく、また、頂き部の繊維の坪量は、底部の繊維の坪量よりも大きくなっている。このように山部と谷部とが形成されていると、液体を表面シートの表面で受け止めた場合に、当該液体は、速やかに坪量の大きい傾斜部を経て、坪量の小さい谷部の底部aから速やかに吸収体へ移行される。よって、表面シートから吸収体への液体の移行性がより良好になる。また、傾斜部の坪量が大きいことから、当該吸収性物品に着用者の体圧がかかっても、妄りに表面シートが潰れることはなくその繊維間隙間は維持され、もって、表面シートは液体の移行性の優れた状態を維持できる。
また、上記実施形態においては、説明の便宜上、吸収体10が幅方向の中央の領域に1つの吸収体素材12を備える構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、吸収体10における幅方向の両端部に、それぞれ、長手方向に沿って側部吸収体を備える構成としてもよい。また、側部吸収体に代えて、前記両端部のそれぞれに立体ギャザーを備える構成としてもよい。さらに、上記実施形態において、吸収性物品1は三つ折り状に折り畳まれていることとした。すなわち、吸収性物品1に二箇所の折線位置が存在する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、吸収性物品1が四つ折り状に折り畳み可能であってもよい。
上記実施形態においては、高密度領域13を2つのパルプ集積層13bの間に高吸収性ポリマー層が設けられた三層構造としたが、これに限るものではない。図8は、二層構造の高密度領域を説明するための断面図である。図9は、一層構造の高密度領域を説明するための断面図である。
例えば、図8に示すようにパルプ集積層13bと高吸収性ポリマー集積層13aとが吸収体素材12の厚み方向に重なった二層構造であってもよい。この場合には、高吸収性ポリマー供給機52から高吸収性ポリマーSが供給される高吸収性ポリマー供給領域を、上記実施形態の位置よりサクションドラム40の回動方向において上流側に配置し、かつ、供給する高吸収性ポリマーSの供給速度を高めることにより実現される。さらに、図9に示すように高密度領域13には、パルプ集積層13bを設けず高吸収性ポリマー集積層13aのみにて構成してもよい。この場合には、高吸収性ポリマー供給機52から高吸収性ポリマーSが供給される高吸収性ポリマー供給領域を、二層構造の場合よりさらにサクションドラム40の回動方向において上流側に配置し、かつ、供給する高吸収性ポリマーSの供給速度をさらに高めることにより実現可能である。
また、上記実施形態においては、高吸収性ポリマーSを粉砕パルプPと同様にサクションドラム40の上方から供給する形態について説明したが、これに限るものではない。例えば、サクションドラム上では、穴部と、穴部と隣接する凹部とを有する基材を形成し、サクションコンベア上にて、凹部に高吸収性ポリマーSを供給してもよい。この場合には、外周上に高吸収性ポリマーSを収容するための窪みを点在させたパターンロールの回動とサクションコンベアにて搬送される基材とを同期させ、パターンロールの窪みと基材の凹部とが対向する位置にて高吸収性ポリマーSが基材側に吸引されて凹部内に供給される。ここで、基材とは、吸収体素材のうち凹部に高吸収性ポリマーSが備えられていないものを示している。
また、上記実施形態においては、外周面にメッシュパターン48が凹設されたサクションドラム40を用いて吸収体素材12を形成する例について説明したが、必ずしもサクションドラム40を用いなくてもよい。例えば、平坦に配置されたメッシュパターンの下方に向かって空気を吸引しておき、メッシュパターンの上方かつ側方から粉砕パルプを供給して、穴部と隣接する凹部とを有する基材を形成した後に、上記パターンロール等により凹部に高吸収性ポリマーSを供給して吸収体素材を形成してもよい。
また、上記実施形態においては、穴部15a及び高密度領域13が吸収体素材12の長手方向両端部において点在し、中央部には存在していないこととしたが、これに限定されるものではなく、穴部及び高密度領域は長手方向中央部に存在していてもよい。
また、上記実施形態においては、穴部15aが、吸収体素材12の長手方向及び幅方向によって規定される平面において長円状に形成されていることとしたが、円状、方形状、三角形状等でもよく、長円状に限定されるものではない。
また、上記実施形態においては、吸収体素材12を形成するステップS102として、メッシュパターン48に粉砕パルプを集積させる例について説明したが、吸収体素材12を形成する方法は、これに限定されるものではない。例えば、他の方法としては、パルプ繊維と熱可塑性繊維(両者はともに親水性繊維であり、以下、両者をまとめて単に繊維とも言う)とが積層されたシートを用い、シートに穴部15aと穴部15aに隣接させて凹部15bを設けるための加工を施す方法も考えられる。
以下、図10A乃至図10Dを参照しながら、親水性繊維のシートを用いた製造方法について説明する。図10A乃至図10Dは、シート(以下、エアレイドシートという)から吸収体素材12の基材15を形成し、形成された基材15を用いて吸収体10を形成する過程を説明するための図である。なお、図10Aは、加工前のエアレイドシートの断面図である。図10Bは、穴部及び凹部が形成された基材を示す断面図である。図10Cは、凹部に高吸収性ポリマーSが供給された吸収体素材を示す断面図である。図10Dは、薄葉紙と吸収体素材とが一体となった吸収体を示す断面図である。図10A乃至図10Dは、それぞれ、穴部15a及び高密度領域13に相当する部分の縦断面を拡大した模式図を示している。
エアレイドシート54を用いる場合には、まず図10Aに示すようなほぼ平坦なエアレイドシート54を、基材15の外形形状に合わせて裁断するとともに、貫通孔となる穴部15aを形成する。その後に、穴部15aが形成されたエアレイドシート54の、穴部15aに隣接させて凹部15bを形成すべく圧着エンボス加工を施す。圧着エンボス加工とは、前述した溝付きエンボス加工や吸収体エンボス加工と同様、上下に相対向する2つのローラ間を通過させて一方のローラに設けられた突起により、エアレイドシート54を圧搾してエンボスを形成する加工である。図10Bに示すように、圧着エンボス加工により凹部15bが形成され、エアレイドシート54から基材15が形成される。なお、本製造方法の例では、圧着エンボス加工の実施前にエアレイドシート54の裁断及び穴部15aを形成することとしたが、圧着エンボス加工の実施後に裁断及び穴部15aを形成してもよい。また、エアレイドシート54を吸収体素材12の外形形状に沿って裁断するためのカッターと、穴部15aを形成するためのカッターと、凹部15bを形成するための凸部とを備えた工作部材をエアレイドシート54に押圧して、1工程にて基材15を形成することとしてもよい。
そして、図10Cに示すように、エアレイドシート54から形成された基材15が搬送装置上に載置された状態で搬送方向へ搬送される間に、前記基材15の凹部15bに高吸収性ポリマーSを供給する。
その後、吸収体素材12の上面を薄葉紙11にて覆い、薄葉紙11と吸収体素材12とを一体化するための吸収体エンボス加工が施されて、図10Dに示すような吸収体10が完成する。なお、シートを用いる例においては、パルプ繊維と熱可塑性繊維が積層したエアレイドシート54を用いることとしたが、繊維中に高吸収性ポリマーSが混在したエアレイドシートを用いることとしてもよい。かかる場合、エアレイドシート内における高吸収性ポリマーSの混合率が40%以下(より好ましくは20%以下)に調整される必要がある。