〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図14に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のすれ違い用前照灯であるヘッドランプ(車両用前照灯)1を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、配光特性基準が示されている照明装置であれば、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。
(ヘッドランプ1の構成)
図2は、プロジェクタ型のヘッドランプであるヘッドランプ1の構成を示す断面図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザアレイ(励起光源)2、非球面レンズ4、光ファイバー5、フェルール6、発光部(発光体)7、反射鏡8、透明板9、ハウジング10、エクステンション11、レンズ12、遮光板13、凸レンズ14およびレンズホルダ16を備えている。半導体レーザアレイ2、光ファイバー5、フェルール6および発光部7によって発光装置の基本構造が形成されている。なお、ヘッドランプ1は、プロジェクタ型のヘッドランプであるため、凸レンズ14を備えている。その他のタイプのヘッドランプ(例えば、セミシールドビームヘッドランプ)に本発明を適用してもよく、その場合には凸レンズ14を省略できる。
半導体レーザアレイ2は、励起光を出射する励起光源として機能し、複数の半導体レーザ(半導体レーザ素子)3を基板上に備えるものである。半導体レーザ(励起光源)3のそれぞれからレーザ光が発振される。励起光源として複数の半導体レーザ3を用いる必要は必ずしもなく、半導体レーザ3を1つのみ用いてもよい。しかし、高出力のレーザ光を得るためには、複数の半導体レーザ3を用いることが好ましい。
半導体レーザ3は、1チップに1つの発光点を有するものであり、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力1.0W、動作電圧5V、電流0.6Aのものであり、直径5.6mmのパッケージに封入されているものである。半導体レーザ3が発振するレーザ光は、405nmに限定されず、380nm以上470nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。なお、380nmより小さい波長のレーザ光を発振する良質な短波長用の半導体レーザを作製することが可能であれば、本実施の形態の半導体レーザ3として、380nmより小さい波長のレーザ光を発振するように設計された半導体レーザを用いることも可能である。
非球面レンズ4は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ4として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ4の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
光ファイバー5は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を発光部7へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー5は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部5bと、入射端部5bから入射したレーザ光を出射する複数の出射端部5aとを有している。複数の出射端部5aは、発光部7のレーザ光照射面(受光面)7a(図3参照)における互いに異なる領域に対してレーザ光を出射する。換言すれば、複数の出射端部5aは、発光部7の互いに異なる部分に対してレーザ光を出射する。出射端部5aは、レーザ光照射面7aに接触していてもよいし、僅かに間隔を置いて配置されてもよい。
光ファイバー5は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。例えば、光ファイバー5は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー5の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー5の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
なお、導光部材として光ファイバー以外の部材、または光ファイバーと他の部材とを組み合わせたものを用いてもよい。この導光部材は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を受け取る少なくとも1つの入射端部と当該入射端部から入射したレーザ光を出射する複数の出射端部とを有するものであればよい。例えば、少なくとも1つの入射端部を有する入射部、および複数の出射端部を有する出射部を光ファイバーとは別の部材として形成し、これら入射部および出射部を光ファイバーの両端部に接続してもよい。
図3は、出射端部5aと発光部7との位置関係を示す図である。同図に示すように、フェルール6は、光ファイバー5の複数の出射端部5aを発光部7のレーザ光照射面7aに対して所定のパターンで保持する。このフェルール6は、出射端部5aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部5aを挟み込むものでもよい。
このフェルール6は、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材などによって反射鏡8に対して固定されていればよい。フェルール6の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。なお、図3では、便宜上、出射端部5aを3つ示しているが、出射端部5aの数は3つに限定されない。
発光部7は、出射端部5aから出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含む蛍光体膜76aおよび76bを含んでいる(図1参照)。具体的には、発光部7は、所定の形状を有する導電性部材(例えば金属板75)に、蛍光体が堆積する(付着する)ことにより蛍光体膜76aおよび76bが形成されている。また、発光部7のレーザ光照射面7aの面積は、3mm2よりも小さくなるように設計されている。また、発光部7の厚さは、例えば1mm以下となるように設計されている。なお、発光部7の具体的な形状および製造方法、並びに、蛍光体膜76aおよび76bに用いられる蛍光体の材質については後述する。
つまり、蛍光体膜は、励起光を受けて発光する蛍光体が導電性部材の表面に堆積することにより形成された膜を指すものであり、例えば膜状、層状、薄膜、薄層、板状、板などの様々な形状を含む。
発光部7は、後述する反射鏡8の第1焦点の近傍に配置され、図2に示すように、透明板9の内側(出射端部5aが位置する側)の面において、出射端部5aと対向する位置に固定されている。発光部7の位置の固定方法は、この方法に限定されず、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材によって発光部7の位置を固定してもよい。
図4は、発光部7の位置決め方法の変更例を示す断面図である。同図に示すように、反射鏡8の中心部を貫いて延びる筒状部15の先端に発光部7を固定してもよい。この場合には、筒状部15の内部に光ファイバー5の出射端部5aを通すことができる。また、この構成において透明板9を省略することも可能である。
反射鏡8は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された部材であり、発光部7から出射した光を反射することにより、当該光をその焦点に収束させる。ヘッドランプ1は、プロジェクタ型のヘッドランプであるため、反射鏡8は、楕円を基本形状とするものである。反射鏡8には、第1焦点と第2焦点とが存在し、第2焦点は、第1焦点よりも反射鏡8の開口部に近い位置に存在している。後述する凸レンズ14は、その焦点が第2焦点の近傍に位置するように配置されており、反射鏡8によって第2焦点に収束された光を前方に投射する。
透明板9は、反射鏡8の開口部を覆う透明な樹脂板であり、発光部7を保持している。この透明板9を、半導体レーザ3からのレーザ光を遮断するとともに、発光部7においてレーザ光を変換することにより生成された白色光(インコヒーレントな光)を透過する材質で形成することが好ましい。発光部7によってコヒーレントなレーザ光は、そのほとんどがインコヒーレントな白色光に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部が変換されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板9によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止できる。なお、このような効果を期待せず、かつ透明板9以外の部材によって発光部7を保持する場合には、透明板9を省略することが可能である。
ハウジング10は、ヘッドランプ1の本体を形成しており、反射鏡8等を収納している。光ファイバー5は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザアレイ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザアレイ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザアレイ2を効率良く冷却することが可能となる。また、半導体レーザ3は、故障する可能性があるため、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザアレイ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
エクステンション11は、反射鏡8の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ1の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡8と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡8と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している。発光部7が発した光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
図5は、凸レンズ14、遮光板13および発光部7の位置関係を示す斜視図である。凸レンズ14は、発光部7から出射された光を集光し、集光した光をヘッドランプ1の前方へ投影する。凸レンズ14の焦点は、反射鏡8の第2焦点の近傍であり、その光軸は、発光部7が有する発光面7bのほぼ中央に位置している。この凸レンズ14は、レンズホルダ16によって保持され、反射鏡8に対する相対位置が規定されている。
遮光板13は、発光部7から出射される光の一部および反射鏡8に反射した光の一部を遮ることにより、当該光が到達する領域を制限する。換言すれば、遮光板13は、発光部7から出射される光の投影像の一部の形状を規定する。この遮光板13は、反射鏡8の第2焦点の近傍に配置される。
ここで、遮光板13を設ける意義について説明する。後述するように発光部7は、配光特性基準が規定する明領域を効率良く照らすことができる形状を有している。発光部7の大きさが無限に小さく、その発光部7が凸レンズ14の光軸に位置していれば、発光部7の発光面7bから出射された光の投影像は、発光面7bの形状と一致する。しかし、発光部7は大きさを有しているため、凸レンズ14の光軸から離れた部分に関しては、その投影像がぼやけてしまう。その結果、発光部7から出射した光の一部が、上記明領域外の領域に照射されてしまう可能性がある。また、発光部7からの光が反射鏡8に反射することによって生じる反射光の一部は、発光部7の形状にかかわらず、明領域以外の領域に照射されてしまう可能性がある。これらの理由により、遮光板13を設けることが好ましい。遮光板13と発光部7との位置関係の詳細については、後述する。
以上のように、半導体レーザ3から高出力のレーザ光が発光部7に照射され、発光部7がこのレーザ光を受けることができるので、例えば発光部7から放射される光束が少なくとも1200lm(ルーメン)以上、発光部7の輝度が少なくとも80cd(カンデラ)/mm2以上という高輝度・高光束のヘッドランプ1を実現することができる。また、高輝度のヘッドランプ1が実現されることにより、小型のヘッドランプ1を実現することができる。
(ヘッドランプ1に要求される配光特性)
次に、図6を参照しながら、自動車用のすれ違い用前照灯に要求される配光特性について説明する。
図6(a)は、自動車用のすれ違い用前照灯に要求される配光特性を示す図である(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示〔2008.10.15〕別添51(前照灯の装置形式指定基準)より抜粋)。この図は、自動車の前方25mの位置に垂直に設置したスクリーンにすれ違い用前照灯からの光を照射した場合の、上記スクリーンに投影される光の像を示している。
図6(a)において、ゾーンIとは、水平方向の基準直線である直線hhの下方750mmに位置する水平直線より下方の領域である。このゾーンIの任意の点では、0.86D−1.72Lの点における実測値の2倍以下の照度であることが求められる。
ゾーンIIIとは、白抜きの領域(明領域と称する)よりも上方の領域である。このゾーンIIIの任意の点では0.85lx(ルクス)以下あることが求められている。つまり、このゾーンIIIは、光線が他の交通の妨げとならないように、所定の照度以下に照度を抑えることが求められている領域(暗領域)である。このゾーンIIIと明領域との境界線は、直線hhに対して15度の角度をなす直線21、および直線hhに対して45度の角度をなす直線22を含んでいる。
ゾーンIVとは、直線hhの下方375mmに位置する水平直線、直線hhの下方750mmに位置する水平直線および垂直方向の基準直線である直線VVの左右2250mmに位置する2本の鉛直直線の計4直線で囲まれる領域である。このゾーンIVの任意の点では3lx以上の照度であることが求められる。つまりゾーンIVは、ゾーンIとゾーンIIIとの間の領域である明領域のうちの、より明るい領域である。
図6(b)は、すれ違い用前照灯の配光特性基準に規定された照度を示す図である。同図に示すように、点0.6D−1.3Lおよび点0.86D−1.72Lの2点においては、周囲よりも高い照度が要求される。これら2点は自車の真正面付近に相当し、これら2点では夜間でも進行方向にある障害物等を確認できることが求められている。
(発光部7の形状)
次に、発光部7の具体的な形状について図1に基づいて説明する。図1は、発光部7の形状を示す斜視図である。
発光部7は、所定の形状(ここでは、配光特性基準(所定の配光特性)に対応する形状を指す)を有する金属板75に、レーザ光を受けて発光する蛍光体を堆積させた蛍光体膜76aおよび76bが形成されているものである。ここでは、金属板75は、図1に示すように、長方形状の金属板の一部が欠けた切り欠き形状となっており、その両面(第1面および第2面)には、例えば後述の電気泳動(電気泳動堆積法)により、蛍光体膜76aおよび76bが堆積している。つまり、金属板75の表面には、金属板75とほぼ同じ切り欠き形状を有する蛍光体膜76aおよび76bが形成されることにより、直方体の一部が欠けた切り欠き形状を有する発光部7となる。
なお、レーザ光照射面7aは、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、レーザ光の反射を制御するためには、レーザ光照射面7aは、レーザ光の光軸に対して垂直な平面であることが好ましい。
発光部7は、レーザ光照射面7aとは反対側に位置する発光面7b(図5参照)を備えている。この発光面7bの外縁の一部は、図6(a)に示した暗領域(ゾーンIII)の形状に対応した切り欠き形状を有している。
より詳細には、図1および図5に示すように、発光面7bの外縁は、その長軸と15度の角度をなす斜辺71および上記長軸と45度の角度をなす斜辺72を有している。斜辺71は、図6(a)に示す直線21に対応しており、斜辺72は、直線22に対応している。このように、発光面7bの外縁の形状は、暗領域の形状に対応した2つの斜辺71および72を有しており、これら2つの斜辺71・72は、発光面7bの長軸方向に対して互いに異なる角度をなしている。
別の観点から表現すれば、図5に示すように、発光面7bは、その長軸方向における第1端部73と、長軸方向において第1端部73とは反対側に位置する第2端部74とを有している。そして、第1端部73の、上記長軸方向に対して垂直な短軸方向における幅は、第2端部74の上記短軸方向における幅よりも広い。
発光面7bをこのような形状にすることにより、配光特性基準が規定する明領域の形状に対応した光線束を出射することができる。換言すれば、暗領域を照らす光線束を発光部7から出射しないようにすることができる。それゆえ、従来の構成よりも光の利用効率を高めることができる。
(発光部7の製造方法)
次に、図7〜図9に基づいて、発光部7の製造方法について説明する。図7は、発光部7の構成を説明するための図であり、図7(a)は、金属板75の断面図を示す図であり、図7(b)は、発光部7が製造される様子を説明するための図である。
まず、図7(a)に示すように、金属板75の大きさは、例えば、その長軸方向の長さが2.5mm、第1端部73の短軸方向における幅(長さ)が0.37mm、第2端部74の短軸方向における幅(長さ)が0.15mmである。また、その厚さは0.05mmである。本実施形態では、金属板75の厚さが薄いので、強い出力のレーザ光が照射されると、このレーザ光は金属板75を透過する。このため、発光面7bとなる側に蛍光体膜(例えば蛍光体膜76b)を備えた場合であっても、当該蛍光体膜によってレーザ光をインコヒーレントな光に変換される。
また、金属板75は、電気泳動により、蛍光体をその表面に堆積させて蛍光体膜76aおよび76bを形成するための電源装置40(図8参照)に接続される通電用端子77を有しており、通電用端子77には、絶縁膜が被覆されている。絶縁膜としては、例えばシリコン酸化膜が挙げられる。つまり、通電用端子77には絶縁膜が被覆されているので、その表面に、電気泳動によって蛍光体が堆積するのを防ぐことができる。これにより、蛍光体が堆積することのない通電用端子77と、電源装置40とを接続することで、発光部7を、電気泳動を行うときの電極として容易に扱うことが可能となる。
なお、絶縁膜としては無機物を用いることが好ましい。電気泳動に用いる溶液として有機溶媒をベースにしたものを用いる場合、有機系のフォトレジストなどを絶縁膜として用いると電気泳動中に溶け出してしまう可能性があるからである。もちろん、水を溶媒として用いる場合には、有機系フォトレジスト材料を絶縁膜として使用することが可能である。絶縁膜に無機物を用いることについては、通電用端子77に被覆される絶縁膜に限らず、金属板75に形成される絶縁膜(例えば後述の図10(b)の絶縁層78(絶縁膜)、図10(c)及び(d)の絶縁膜など)についても同様のことがいえる。
ここで、蛍光体は、酸窒化物系のものであり、例えば青色、緑色および赤色の蛍光体からなる。半導体レーザ3は、405nm(青紫色)のレーザ光を発振するため、発光部7に当該レーザ光が照射されると白色光が発生する。それゆえ、発光部7は、波長変換材料であるといえる。
なお、半導体レーザ3は、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる「青色」近傍のレーザ光)を発振するものでもよく、この場合には、上記蛍光体は、黄色の蛍光体、または緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。
上記蛍光体は、サイアロン蛍光体と通称されるものが好ましい。サイアロンとは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。サイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si3N4)にアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)および希土類元素などを固溶させて作ることができるものである。
なお、蛍光体の別の好適な例としては、III−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体を挙げることができる。
半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つは、同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径をナノメータサイズに変更することにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができる点である。例えば、InPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する(ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した)。
また、この半導体ナノ粒子蛍光体は、半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、この半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。
さらに、上述したように、発光寿命が短いため、レーザ光の吸収と蛍光体の発光を素早く繰り返すことができる。その結果、強いレーザ光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱を低減させることができる。
よって、発光部7が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
図7(b)に示すように、発光部7は、配光特性基準に対応する形状(自動車のすれ違い用前照灯に要求される配光パターンのミニチュア形状)に加工された金属板75の表面に、電気泳動により蛍光体を堆積(付着)させることにより、蛍光体膜76aおよび76bが形成される。このとき、通電用端子77は絶縁膜にて被覆されているため、通電用端子77の表面には蛍光体が堆積しない。蛍光体膜76aおよび76bが形成された後、通電用端子77を切断することにより、図1に示す形状の発光部7を製造することができる。
次に、図8を用いて、電気泳動により、金属板75の表面に蛍光体を堆積させて蛍光体膜76aおよび76bを形成するための実験系の一例について説明する。図8は、電気泳動により、金属板75の表面に蛍光体を堆積させて蛍光体膜76aおよび76bを形成するための実験系の一例について説明するための図である。
図8に示す容器(ビーカー)内の溶液は、青色、緑色および赤色にそれぞれ発光する蛍光体として、BaMgAl10O17:Eu2+(青色)、β−SiAlON:Eu2+(緑色)およびCASN:Eu2+(赤色)が、分散比(重量比)4:2:1となるように分散媒中に分散されたものである。すなわち、蛍光体は、荷電粒子Kとして分散媒中に分散している。分散媒としては、例えば電解質もしくは非電解質のケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、アルコールエーテル類(2−メトキシエタノールなど)、または、それらの混合物等のような有機溶媒、水などが挙げられる。
そして、電気泳動を行うための電極として、この溶液内(プラスにイオン化された蛍光体(荷電粒子K)が分散された分散媒中)に、2つの金属板(ひとつは金属板75)を浸漬させ、金属板75を陰極とし、もう一方の金属板を陽極とする。すなわち、金属板75の通電用端子77を、電源装置40の負極と接続し、もう一方の金属板を電源装置40の正極と接続する。電源装置40は、直流用の電圧電源であり、所定の電圧を2つの電極に印加して通電することにより、プラスにイオン化した蛍光体を陰極としての金属板75へと移動させる(電気泳動)。
すなわち、マイナスに帯電した金属板75の表面に、プラスにイオン化された蛍光体が移動してくることにより、当該表面に蛍光体が堆積し、蛍光体膜76aおよび76bが形成される。蛍光体膜76aおよび76bは、電気泳動による堆積の場合、金属板75の表面全体に、あるいは、当該表面よりも若干小さい範囲に、一様に、かつ、ほぼ一定の厚さに薄く堆積することにより形成される。このため、金属板75には、金属板75とほぼ同形で一定の厚さを有する蛍光体膜76aおよび76bが形成されるので、金属板75を所望の形状に成型し、蛍光体を分散した溶液を用いて電気泳動を行うだけで、金属板75とほぼ同形の表面を有する発光部7を簡単に製造することができる。
本実施形態では、蛍光体膜76aおよび76bの厚さが0.5mmとなるように設計している。また、上記のように金属板75の表面積は3mm2よりも小さいため、発光部7のレーザ光照射面7aの面積も、3mm2よりも小さくなるように設計されているといえる。
なお、電気泳動を行うことで金属板75の表面に蛍光体膜76aおよび76bが形成されるが、この蛍光体膜76aおよび76bを金属板75に定着(付着)させるには次の方法を用いた。
すなわち、まず、TEOS(テトラエトキシシラン)又はTEMOS(テトラメトキシシラン)にエタノール、水、濃塩酸を加えてシリカの前駆体(シリカ前駆体)を作る。次に、このシリカ前駆体を上記蛍光体膜76aおよび76bに散布・浸透させ、500℃程度で焼成する。これにより、金属板75上に蛍光体膜76aおよび76bが定着した状態で形成されることとなる。
ここで、発光部が車両用前照灯に用いられる場合、発光部が発光した照明光の色温度が3000〜7000Kであり、かつ、道路運送車両法で定められた前照灯に求められる白色の範囲に適合する白色光であればよい。なお、色温度については、市場において多くのユーザに好まれる色温度になるように調整することが可能である。
図9は、前照灯に要求される白色の色度範囲を示すグラフである。同図に示すように車両用前照灯に要求される白色の色度範囲が法律により規定されている。当該色度範囲は、6つの点35a〜35fを頂点とする多角形の内部である。図8に示す実験系にて製造された発光部7に対して405nmの励起光を照射した場合、発光部7は、上記色度範囲を満たす光、すなわち色度x=0.31、y=0.30の白色光を発光した。
なお、発光部7を上述の形状とするために、例えば、蛍光体保持物質としてのシリコーン樹脂の内部に蛍光体が分散された直方体形状のものを、物理的または化学的に削り、配光特性基準に対応する形状となるような切り欠き部を形成することが考えられる。しかし、蛍光体が粒状であるため、シリコーン樹脂を削ると、その内部の蛍光体も一緒に削られてしまいダメージを受ける。その結果、表面近傍の蛍光体の発光効率が低下してしまうという問題点がある。一方、金属板75は簡単に成型することができ(蛍光体がこぼれ落ちるのを気にする必要がなく)、さらに電気泳動の場合、金属板75の形状にあわせて、その表面に蛍光体膜76aおよび76bを形成することができる。このため、発光部7を細かく正確に製造したい場合には、所望の形状に成型した金属板75に対して、電気泳動により蛍光体を堆積させて蛍光体膜76aおよび76bを形成することが好ましいといえる。
以上のように、発光部7は、所定の形状を有する金属板75に、レーザ光を受けて発光する蛍光体を堆積させた蛍光体膜76aおよび76bが形成されている構成である。
金属板75を、所定の配光特性を満たす形状に対応した形状に成型することは、たとえその形状が複雑であり、かつ、小さな金属板75であったとしても、従来の方法を用いて容易に行うことが可能である。従って、容易に成型可能な金属板75に、蛍光体を堆積させて蛍光体膜76aおよび76bを形成するだけで発光部7を製造することが可能であるので、たとえ発光部7が小さくても、所望する形状(例えば複雑な形状)の発光部7を容易に実現できる。これにより、光の利用効率が高い発光部7を実現することができる。また、この発光部7をヘッドランプ1に備えることにより、ヘッドランプ1についても光の利用効率を向上させることができる。
また、従来の金型を用いての発光部の製造では、蛍光体を分散させた樹脂を当該金型に注入する必要があったので、所定の厚さの金型を用意する必要があった。このため、非常に薄い(例えば厚さ1mm程度の)発光部を製造するためには、金型にその樹脂を注入した後に、研磨等の薄膜化工程が必要であった。これに対し、本実施形態の発光部7は、上記のように、薄い金属板75(本実施形態では厚さ0.05mm)に、蛍光体膜76a及び76bを薄く堆積させることにより製造することができるので、上記の薄膜化工程を経ることなく、薄い発光部7(本実施形態では厚さ0.5mm)を容易に製造することができる。すなわち、本実施形態では、所望の形状を有する、小さくかつ薄い発光部7を容易に製造することができる。
また、金属板75が板状であるため、金属板75を所望する形状(所定の形状)に加工しやすい。また、この金属板75を電極として、蛍光体を含む分散媒に浸漬することにより、金属板75の表面に蛍光体を堆積させて蛍光体膜76aおよび76bを形成することができる。これにより、容易に成型可能な金属板75を、蛍光体を含む分散媒に浸漬するだけで、所望する形状の発光部7を容易に実現することができる。
次に、電気泳動により製造される発光部7の構成または材質の一例について、図10を用いて説明する。図10は、発光部7の構成または材質の一例について説明するための図であり、発光部7の断面図である。図10(a)は、上述した方法で製造された図1に示す発光部7の断面図であり、図10(b)〜(f)は、図1に示す発光部7の変形例を示す断面図である。なお、ここでは、発光部7の形状が配光特性基準に対応する形状であるものとして説明するが、発光部7の形状は、例えばヘッドランプ1などの照明装置が要求する所定の配光特性を満たすものであれば、どのような形状(例えば後述の図13(a)〜(c)に示す形状)であってもよい。
図10(a)は、図1に示す発光部7の断面図である。この発光部7は、上述のように、金属板75の両面全体(表面と同形)に、蛍光体を均一に堆積させることにより、蛍光体膜76aおよび76bが形成されたものである。
このように蛍光体を堆積させることにより、発光部7自身を成型する必要がないので、所望する形状が複雑な形状であっても、簡単に発光部7を製造することができる。また、金属板75の両面に蛍光体膜76aおよび76bが形成されているので、例えば蛍光体膜76aおよび76bの両方にレーザ光を照射するような発光装置に対しても、発光部7を利用することが可能である。
次に、図10(b)は、金属板75を成型した後に、金属板75の片面に絶縁層78(絶縁膜)が形成されたものを、陰極用の電極として上記溶液中に浸漬させて電気泳動を行う。絶縁層78は、例えば上記絶縁膜と同じ材質であり、金属板75に蒸着させることによって形成される。この場合、絶縁層78が形成された金属板75の表面には蛍光体が堆積しないので、金属板75の片面だけに蛍光体が堆積し、蛍光体膜76aを形成する。換言すれば、図10(b)では、蛍光体膜76aは、金属板75におけるレーザ光を受ける表面であるレーザ光照射面7aに形成されており、レーザ光照射面7aとは反対側の表面(発光面7b)に、絶縁層78が形成されているといえる。
このように蛍光体を堆積させることによって、レーザ光照射面7aとして利用する金属板75の表面のみに蛍光体膜を形成することができる。すなわち、蛍光体膜76aが金属板75の片面にだけ形成された発光部7を実現することができる。
次に、図10(c)は、金属板75を成型した後、所定のパターンを有する絶縁膜を金属板75の片面に形成する。例えば、金属板75の片面に絶縁膜を蒸着した後、その表面にレジスタを塗布する。レジスタが塗布された金属板75の表面に対して所定のパターンを有するパターンマスクを取り付け、紫外線を照射して、パターンマスクに覆われていない領域を変形させた後、金属板75を現像液に浸漬する。これにより、絶縁膜に所定のパターンが形成される。
所定のパターンが形成された絶縁膜に対してエッチング(例えば異方性エッチング)を行い、エッチングが行われた絶縁膜を有する金属板75を、陰極用の電極として上記溶液中に浸漬させて電気泳動を行うことにより、エッチングされた領域に蛍光体が堆積し、蛍光体膜76cが形成される。換言すれば、図10(c)では、蛍光体膜76cは、金属板75の表面に被覆された所定のパターンを有する絶縁膜とは異なる領域に、蛍光体が堆積することにより形成されているといえる。なお、図10(c)では、蛍光体膜76cの暗色部が絶縁膜を示し、明色部が、堆積した蛍光体を示す。
このように蛍光体を堆積させることにより、例えば、蛍光体膜76cの表面をレーザ光照射面7aとして用いる場合に、レーザ光が強く照射される領域に対して蛍光体を堆積させることができる。また、金属板75を成型することで所望の微細な形状を実現できないような場合であっても、金属板75の表面に所定のパターンを有する絶縁膜を形成することにより、蛍光体膜によりその微細な形状を実現することができる。すなわち、発光部7の設計自由度を高めることができる。
なお、図10(c)において、例えば、蛍光体膜76cに蒸着される絶縁膜として、蛍光体を堆積させることが可能な絶縁膜が形成される場合(例えば、この絶縁膜に蛍光体を付着させることが可能な結着剤が分散媒に含まれている場合)、絶縁膜上に蛍光体を堆積させることができる。この場合、上記絶縁膜とは異なる領域に堆積した蛍光体の厚さは、絶縁膜上に堆積した蛍光体の厚さよりも厚くなる。従って、例えば、レーザ光が強く照射されるレーザ光照射面7aの領域に堆積する蛍光体の厚さを厚くすることができるので、この場合も発光部7の設計自由度を高めることができる。
また、例えば長方形状の金属板75を用いる場合(配光特性基準を満たす形状でない場合)であっても、図10(c)の蛍光体膜76cのように、配光特性基準に対応する形状の蛍光体膜を形成することができるので、図1と同様の機能を有する発光部7を製造することができる。従って、蛍光体膜76cにより配光特性基準を満たす形状を実現することで、光の利用効率を向上させることができる。
次に、図10(d)は、図10(c)と同様の処理により、金属板75の両面に、それぞれ異なる所定のパターンを有する絶縁膜を有する蛍光体膜が形成された発光部7を示すものである。換言すれば、図10(d)では、蛍光体膜76cおよび76dは、金属板75の両面に形成されており、当該両面の一方を第1面、他方を第2面とするとき、絶縁膜の有する所定のパターンが、当該絶縁膜が被覆される金属板75の第1面と第2面とで異なるものといえる。図10(d)では、例えば、蛍光体膜76cが形成されている側の金属板75の表面を第1面、蛍光体膜76dが形成されている側の金属板75の表面を第2面とする。
このように蛍光体を堆積させることにより、金属板75の片面に所定のパターンを有する絶縁膜を有する蛍光体膜が形成される場合(図10(c)の場合)に比べて、さらに発光部7の光の利用効率および設計自由度を高めることが可能となり、発光部7の用途の拡大を図ることが可能となる。
次に、金属板75の代わりに透明導電膜(導電性部材)を用いた発光部7の構成例について、図10(e)および図10(f)を用いて説明する。透明導電膜としては、例えばITO(インジウムスズ酸化物)が用いられる。
図10(e)の場合、例えば石英などの透明性を有する基板80上に、ITO79を蒸着させる。ITO79が蒸着した基板80を、陰極用の電極として上記溶液中に浸漬させて電気泳動を行う。この場合、基板80は、絶縁膜と同様の材質にて形成されたものであるので、基板80側には蛍光体が堆積しない。
このように蛍光体を堆積させることにより、金属板75の代わりにITO79を用いても、ITO79の表面に、蛍光体を堆積させて蛍光体膜を形成することができる。すなわち、蛍光体膜76aがITO79の片面にだけ形成された発光部7を実現することができる。
また、ITO79は透明性を有する部材である。このとき、基板80も透明性を有していれば、レーザ光を変換したインコヒーレントな光を、発光面7bから確実に出射することができる。なお、ITO79に限らず、透明性を有する部材を導電性部材として用いれば同様の効果が得られる。
また、図10(f)の場合、基板80の代わりに、例えば金属膜からなる反射層(光反射部材)81を用いた構成である。反射層81上にITO79を蒸着させたものを、陰極用の電極として上記溶液中に浸漬させて電気泳動を行う。この場合、反射層81は、蛍光体が堆積しないような材質(例えば表面を傷つけ、さらに酸化防止用の樹脂コートを施したアルミ蒸着膜)にて形成されることが好ましい。
すなわち、図10(f)では、蛍光体膜76aは、ITO79におけるレーザ光を受ける表面であるレーザ光照射面7aに形成されており、レーザ光照射面7aとは反対側の表面に、蛍光体膜76aから出射される光を反射する反射層81が形成されているものといえる。このように、ITO79を反射層81に形成した場合、ITO79を透過したインコヒーレントな光をレーザ光照射面7a側に出射させる(所定の方向に集光する)ことができるので、当該光を上記反射鏡8に確実に照射することができる。また、蛍光体膜76aにて変換することができなかったレーザ光がITO79に出射されたとしても、当該レーザ光を反射層81が反射し、再び蛍光体膜76aに入射されるので、確実にインコヒーレントな光に変換することができる。このため、半導体レーザ3から照射されたレーザ光が発光部7から出射されることがないので、安全性の高い発光部7を実現することができる。なお、図10(f)の構成は、ITO79に限らず、金属板75でも同様の効果が得られる。
(放熱について)
次に、発光部7に対する放熱作用について、図11を用いて説明する。図11は、発光部7に対する放熱作用について説明するための図であり、図11(a)は、比較例としての発光部における熱の流れ方を示す図であり、図11(b)は、発光部7における熱の流れ方を示す図である。
本実施形態のように、蛍光体を含む微小な発光部をハイパワーのレーザ光で励起すると(すなわち高いパワー密度で発光部を励起すると)、発光部が激しく劣化するという問題が生ずる。このような問題は、本発明の発明者らが見出したものであり、当該発明者らが知る限りにおいて当該問題に明確に触れられた公知文献は無い。
発光部を劣化させないためには、発光部に照射するレーザ光の強さ(単位:ワット)を小さくすればよい。しかし、この方法では、発光部から出射される光の量(光束)が低下してしまい、発光装置として要求される光度を実現することができない可能性がある。
このため、レーザ光の強さを小さくせずに発光部の劣化を防ぐための一例として、レーザ光が照射されることによって発光部に生じる熱を発光部から逃がす(放熱する)ことが挙げられる。
この場合、例えば図11(a)の比較例に示すように、レーザ光が照射されることで生じる熱を発光部から逃がすために、発光部の外周を金属部材175(放熱用の金属部材)で覆っている。これは、金属の熱を通す(逃がす)性質を利用したものである。
しかし、この場合、金属部材175で覆われた方向への光の放射が阻害(光が遮光)されるので、光の利用効率が低下してしまう。また、金属部材175が発光部の外周に設けられているので、レーザ光の照射領域から金属部材175までの距離があるので、放熱効果が十分ではない。つまり、比較例では、レーザ光の照射領域近傍で発生した熱が、金属部材175に比べ相対的に熱伝導率が悪い蛍光体膜の中を伝播せざるを得ないため、蛍光体膜内部に熱がこもりやすく、発光部を劣化させやすい。
一方、本実施形態では、図11(b)に示すように、電気泳動により、金属板75の表面に蛍光体膜76aを形成している。すなわち、レーザ光の照射領域付近に金属板75(放熱用の金属部材)が形成されている。従って、レーザ光の照射により、その照射領域近傍で大きな発熱があったとしても、金属板75が蛍光体膜76aの極近傍にあるため、熱をすぐに拡散させる(効率よく逃がす)ことができ、発光部の劣化を防ぐことができる。
また、この発光部7をヘッドランプ1に備えることにより、発光部の劣化が少ない発光装置および照明装置を実現することができる。すなわち、本実施形態では、長寿命の発光部を実現することができ、ひいては長寿命の発光装置、照明装置および車両用前照灯を実現することができる。
なお、本実施形態では、導電性部材として金属板75を用いた場合について説明しているが、金属板75の代わりに、透明でかつ熱伝導率が高い材質、例えば窒化ガリウムやマグネシア(MgO)、サファイアなどを用いてもよい。これらの材質を用いる場合には、上述したように、その表面に透明導電層を形成すればよい。
(発光部7と遮光板13との位置関係)
次に、発光部7および遮光板13の位置関係について図5を参照しつつ説明する。同図に示すように、発光部7、遮光板13および凸レンズ14は、この順番で並んでおり、発光部7の発光面7bは、凸レンズ14と対向している。発光面7bから出射した光は、遮光板13によりその一部が遮られた後、凸レンズ14に到達する。光が凸レンズ14を通過すると当該光の像の上下左右が逆転するため、発光面7bから出射され、凸レンズ14を通過した光は、図6(a)に示した像に対応する形状の投影像を形成する。
遮光板13の、発光部7と対向する面の外縁は、発光面7bの斜辺71に対応する斜辺41、および発光面7bの斜辺72に対応する斜辺42を有している。発光面7bは、凸レンズ14の光軸に対してほぼ垂直に配置されており、遮光板13の最も広い面は、発光面7bに対して平行に配置されている。そして、凸レンズ14の光軸方向から見た場合に、斜辺71と斜辺41と、および斜辺72と斜辺42とが僅かに重なるか、または隣接するように発光部7と遮光板13とが配置されている。
この構成により、発光面7bから出射される光線束の一部を遮光板13で遮ることにより、当該光線束によって形成される投影像を、配光特性基準が規定する明領域の形状により確実に近づけることができる。
(ヘッドランプ1の変形例)
次に、ヘッドランプ1の変形例について図12に基づいて説明する。図12は、本実施形態の変形例としてのヘッドランプ1の概略構成を示す図である。なお、上述したヘッドランプ1と同様の構成については説明を省略する。図12に示すヘッドランプ1は、反射鏡8の形状が楕円形状ではなく、円形状となっているものである。
半導体レーザ3は、基板上に備えられることにより半導体レーザアレイを形成していてもよく、1チップに10個の発光点(10ストライプ)を有するものであり、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力11.2W、動作電圧5V、電流6.4Aのものであり、直径9mmのパッケージに封入されているものである。パッケージに封入された半導体レーザ3は、1つであり、上記出力のときの消費電力は32Wである。
非球面レンズ4としては、例えばロッドレンズを用いている。また、非球面レンズ4は、光ファイバー5の入射端部5bに出射されるレーザ光のFFP(Far Field Pattern)のアスペクト比がなるべく真円に近くなるように補正している。ここで、FFPとは、レーザ光源の発光点から離れた面における光の強度分布を指す。通常、半導体レーザ3や端面発光型ダイオードのような半導体発光素子が出射するレーザ光は、回折現象によって活性層の発光強度分布の角度が広がり、そのFFPが楕円形状となる。このため、FFPを真円に近くするには補正が必要となる。
光ファイバー5の入射端部5bおよび出射端部5aには、光ファイバー5の保持部材であるフェルール6bおよび6aがそれぞれ備えられている。フェルール6aおよび6bの機能は、フェルール6と同様である。半導体レーザ3から出射されたレーザ光は、非球面レンズ4を介して光ファイバー5の入射端部5bに入射される。なお、光ファイバー5のコア径は1mmである。
発光部7は、透明板9の内側(出射端部5aが位置する側)の面において、出射端部5aと対向する位置で、かつ、反射鏡8の焦点位置(もしくはその近傍)となるように固定されている。発光部7の位置の固定方法は、この方法に限定されず、図4に示すように、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材によって発光部7の位置を固定してもよい。
反射鏡8は、発光部7から出射したインコヒーレントな光(以下、単に「光」と称する)を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡8は、発光部7からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。反射鏡8は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材であり、反射した光の進行方向に開口している。また、反射鏡8は半球状であり、その中心が焦点位置となっている。
以上のように、上述のプロジェクタ型のヘッドランプ1と同様、半導体レーザ3から高出力のレーザ光が発光部7に照射され、発光部7がこのレーザ光を受けることができるので、高輝度・高光束のヘッドランプ1を実現することができる。また、高輝度のヘッドランプ1が実現されることにより、小型のヘッドランプ1を実現することができる。
(発光部7の別の形状)
次に、発光部7の別の形状について図13に基づいて説明する。上記では、本発明を自動車用のすれ違い用前照灯に適用した場合の例を示したが、本発明を自動車用の走行用前照灯(ハイビーム)に適用してもよい。図13(a)〜(c)は、本実施形態のヘッドランプ1が備える発光部7の別の形状の一例を示す斜視図である。
図13(a)〜(c)では、導電性部材として金属板75を用い、その両面に蛍光体膜76aおよび76bを堆積させることにより、発光部7が形成されている。すなわち、発光部7は、図13(a)〜(c)に示す形状を有するように金属板75をそれぞれ成型した後、金属板75を陰極用の電極として、図8に示す溶液中に浸漬させて電気泳動を行うことにより、金属板75の両面に蛍光体膜76aおよび76bを堆積させている。なお、金属板75に限らず、図10(e)および(f)のように、ITO79を用いて蛍光体膜を形成してもよい。
走行用前照灯を実現する場合、発光部7を、図13(a)に示すように水平方向に長い直方体形状としてもよい。走行用前照灯から出射される光の配光パターン(配光分布)は、鉛直方向に狭く、水平方向に広いことが好ましい。この配光パターンは、道路の遠方を照らし、かつ、両脇の歩道を照らすことができる配光パターンである。発光部7を水平方向に長い直方体にすることにより、上記配光パターンを実現できる。
レーザ光を出射する出射端部5aが複数備えられている場合には、レーザ光照射面7aに対して均一に配置されてもよいし、レーザ光照射面7aの長軸方向における中央部分に密に配置されてもよい。この構成により、発光部7の中央部(出射端部5aの密度が高い部分)が他の部分よりも強く光るため、ヘッドランプ1によって照射される領域の中央部(自動車の前方かつ中央)の照度を高めることができる。
道路運送車両の保安基準が示す配光特性基準では、所定の照射領域における光度を他の照射領域よりも高く設定している。出射端部5aが複数備えられている場合には、この配光特性基準を満たすように出射端部5aの配置を決定すればよい。
また、図13(b)に示す発光部7のように、レーザ光照射面7aおよび発光面7bの長軸方向における中央部分の幅を、その両端部よりも広くし、その広くした部分(幅広部と称する)にも出射端部5aを配置してもよい。換言すれば、発光部7が有する発光面7bの短軸方向における幅は、発光面7bの長軸方向における中央部分において、その両端部よりも広い。
また、幅広部の形状は、図13(b)に示すように、レーザ光照射面7a(発光面7b)の中央部が突出した形状の他に、図13(c)に示す発光部7のように、中央部分に近づくほどレーザ光照射面7aの幅が徐々に広くなるものでもよい。
これらの構成により、ヘッドランプによって照射される領域の中央部の照度を高めることができ、走行用前照灯に求められる配光特性基準により適合したヘッドランプを実現できる。
(半導体レーザ3の構造)
次に半導体レーザ3の基本構造について説明する。図14(a)は、半導体レーザ3の回路図を模式的に示したものであり、図14(b)は、半導体レーザ3の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ3は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2およびCeO2等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17及びカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
(発光部7の発光原理)
次に、半導体レーザ3から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
まず、半導体レーザ3から発振されたレーザ光が発光部7に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図15〜図20に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト200について説明する。レーザダウンライト200は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ3から出射したレーザ光を発光部7に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
なお、レーザダウンライト200と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
図15は、発光ユニット210および従来のLEDダウンライト300の外観を示す概略図である。図16は、レーザダウンライト200が設置された天井の断面図である。図17は、レーザダウンライト200の断面図である。図15〜図17に示すように、レーザダウンライト200は、天板400に埋設され、照明光を出射する発光ユニット210と、光ファイバー5を介して発光ユニット210へレーザ光を供給するLD光源ユニット220とを含んでいる。LD光源ユニット220は、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このようにLD光源ユニット220の位置を自由に決定できるのは、LD光源ユニット220と発光ユニット210とが光ファイバー5によって接続されているからである。この光ファイバー5は、天板400と断熱材401との間の隙間に配置されている。
(発光ユニット210の構成)
発光ユニット210は、図17に示すように、筐体211、光ファイバー5、発光部7および透光板213を備えている。
筐体211には、凹部212が形成されており、この凹部212の底面に発光部7が配置されている。凹部212の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部212は反射鏡として機能する。
また、筐体211には、光ファイバー5を通すための通路214が形成されており、この通路214を通って光ファイバー5が発光部7まで延びている。光ファイバー5の出射端部5aと発光部7との位置関係は上述したものと同様である。
透光板213は、凹部212の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板213は、透明板9と同様の機能を有するものであり、発光部7の蛍光は、透光板213を透して照明光として出射される。透光板213は、筐体211に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
図15では、発光ユニット210は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット210の形状(より厳密には、筐体211の形状)は特に限定されない。
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光部7の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
(LD光源ユニット220の構成)
LD光源ユニット220は、半導体レーザ3、非球面レンズ4および光ファイバー5を備えている。
光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bは、LD光源ユニット220に接続されており、半導体レーザ3から発振されたレーザ光は、非球面レンズ4を介して光ファイバー5の入射端部5bに入射される。
図17に示すLD光源ユニット220の内部には、半導体レーザ3および非球面レンズ4が一対のみ示されているが、発光ユニット210が複数存在する場合には、発光ユニット210からそれぞれ延びる光ファイバー5の束を1つのLD光源ユニット220に導いてもよい。この場合、1つのLD光源ユニット220に複数の半導体レーザ3と非球面レンズ4との対(または、複数の半導体レーザ3と、1つのロッドレンズ(図12に示す非球面レンズ4)との対)が収納されることになり、LD光源ユニット220は集中電源ボックスとして機能する。
(レーザダウンライト200の設置方法の変更例)
図18は、レーザダウンライト200の設置方法の変更例を示す断面図である。同図に示すように、レーザダウンライト200の設置方法の変形例として、天板400には光ファイバー5を通す小さな穴402だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体(発光ユニット210)を天板400に貼り付けるということもできる。この場合、レーザダウンライト200の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
(レーザダウンライト200と従来のLEDダウンライト300との比較)
従来のLEDダウンライト300は、図15に示すように、複数の透光板301を備えており、各透光板301からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト300において発光点は複数存在している。LEDダウンライト300において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
これに対して、レーザダウンライト200は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、発光部7の蛍光体を高演色蛍光体(例えば、数種類の酸窒化物蛍光体の組み合わせ)にすることにより、照明光の演色性を高めることができる。
図19は、LEDダウンライト300が設置された天井の断面図である。同図に示すように、LEDダウンライト300では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体302が天板400に埋設されている。筐体302は比較的大きなものであり、筐体302が配置されている部分の断熱材401には、筐体302の形状に沿った凹部が形成される。筐体302から電源ライン303が延びており、この電源ライン303はコンセント(不図示)につながっている。
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板400と断熱材401との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト300を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
また、LEDダウンライト300では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
また、筐体302は比較的大きなものであるため、天板400と断熱材401との間の隙間にLEDダウンライト300を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
これに対して、レーザダウンライト200では、発光ユニット210には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
また、発光ユニット210ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト200を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト200を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
また、レーザダウンライト200は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット210を天板400の表面に設置することができ、LEDダウンライト300よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
図20は、レーザダウンライト200およびLEDダウンライト300のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト200は、その一例では、LEDダウンライト300に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
また、LD光源ユニット220をユーザの手が容易に届く所に設置できるため、半導体レーザ3が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ3を交換できる。また、複数の発光ユニット210から延びる光ファイバー5を1つのLD光源ユニット220に導くことにより、複数の半導体レーザ3を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ3を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
なお、LEDダウンライト300において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト200で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト300の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト200では、LEDダウンライト300と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
以上のように、レーザダウンライト200は、レーザ光を出射する半導体レーザ3を少なくとも1つ備えるLD光源ユニット220と、発光部7および反射鏡としての凹部212を備える少なくとも1つの発光ユニット210と、発光ユニット210のそれぞれへ上記レーザ光を導く光ファイバー5とを含んでいる。また、発光部7の一例としては、所定の形状を有する金属板75に、レーザ光を受けて発光する蛍光体を堆積させた蛍光体膜76aおよび76bが形成されているものが挙げられる。
それゆえ、容易に成型可能な金属板75に、蛍光体を堆積させて蛍光体膜76aおよび76bを形成するだけで発光部7を製造することが可能であるので、たとえ発光部7が小さくても、所望する形状(例えば複雑な形状)の発光部7を容易に実現できる。これにより、光の利用効率が高い発光部7を実現することができる。また、薄い金属板75に、蛍光体膜76a及び76bを薄く堆積させることにより発光部7を製造することができるので、小さいだけでなく薄い発光部7を容易に製造することができる。さらに、この発光部7をレーザダウンライト200に適用することにより、レーザダウンライト200についても光の利用効率を向上させることができる。
〔本発明の別表現〕
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
すなわち、本発明に係る発光装置は、所望の発光部の形状を規定した導電体表面に蛍光体を電気泳動により堆積させてなる発光部を備えることを特徴とする。構造的な側面としては、導電体表面にほぼ一定の厚みで蛍光体が積層された発光部であることが特徴である。
また、本発明に係る発光体では、導電板の形状は単純な矩形等のままでも、絶縁性の材料を用いてパターニングしてやることで、所望の形状部分に蛍光体膜を形成することもできる。
また、本発明に係る発光体では、導電板は片面が絶縁層で覆われていてもよい。
また、本発明に係る発光体は、導電板の一面と裏面とで絶縁層のパターンが異なっていてもよい。
また、本発明に係る発光体では、導電板は透明基材上に形成された透明導電膜であってもよい。
また、本発明に係る発光体では、逆に導電板は、光を反射する鏡様の基材の上に透明導電膜が形成されていてもよい。
また、本発明に係る発光体では、蛍光体膜を導電板上に電気泳動法を用いて形成する際に用いる通電用の端子を備え、細い部分(当該端子)の表面には絶縁体が塗布されている。
〔補足〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、励起光源として高出力のLEDを用いてもよい。この場合には、450nmの波長の光(青色)を出射するLEDと、黄色の蛍光体、または緑色および赤色の蛍光体とを組み合わせることにより白色光を出射する発光装置を実現できる。
また、励起光源として、半導体レーザ以外の固体レーザ、例えば高出力の発振が可能な発光ダイオードを用いてもよい。ただし、半導体レーザを用いる方が、励起光源を小型化できるため好ましい。
また、半導体レーザ3からのレーザ光が発光部7のレーザ光照射面7aに適切に照射されるように半導体レーザ3と発光部7とを一体に封止した構成(導光部材を必要としない構成)であってもよい。
また、反射鏡8の開口部は、その真正面からみたとき円形であるが、これに限らず、反射鏡8により反射した光が効率よく外部に出射されるのであれば、楕円や矩形などであってもよい。
また、蛍光体膜76a〜76dは、青色、緑色および赤色の蛍光体からなる場合について説明したが、これに限らず、単色(例えば青色)に発光することが可能な発光部の使用状況においては、1種類の蛍光体からなっていてもよい。
また、ヘッドランプ1において、発光部7が半導体レーザ3から出射されたレーザ光を透過する場合(レーザ光照射面7aから入射したレーザ光を変換した光(蛍光)が発光面7bから出射される場合)には、その前方に凸レンズ14などの集光レンズを備えていれば、反射鏡8を設けない構成であってもよい。この場合、反射鏡8は、反射機能を有する必要がなく、透明板9、凸レンズ14、光ファイバー5などを支持するための部材として機能すればよいため、例えばハウジング10の一部として設けられていればよい。また、レーザダウンライト200においても、図18に示すように、発光部7が半導体レーザ3から出射されたレーザ光を透過する場合には、凹部212が反射鏡として機能しない(凹部212の表面に金属薄膜が形成されていない)構成であってもよい。