JP2012204072A - 発光装置、照明装置および車両用前照灯 - Google Patents

発光装置、照明装置および車両用前照灯 Download PDF

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Abstract

【課題】高輝度光源として機能し、かつアイセーフティの高い発光装置、照明装置および車両用前照灯を提供する。
【解決手段】ヘッドランプ1は、レーザ光を出射する半導体レーザ3と、半導体レーザから出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する蛍光物質およびレーザ光を拡散させる拡散粒子を含む発光部7とを備えている。半導体レーザから出射されたレーザ光を受けて、発光部に含まれる蛍光物質が発光し、照明光として利用する。レーザ光はコヒーレント性(空間的コヒーレンシ)が高いので、発光部を小さくしても、その発光部に対する励起光の照射効率を高くすることができ、高輝度な照明装置を実現できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、高輝度光源として機能する発光装置並びに、当該発光装置を備えた照明装置および車両用前照灯に関するものである。
近年、励起光源として発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の固体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる発光装置の研究が盛んになってきている。
このように固体発光素子を用いて蛍光体を励起する光源は、国際安全規格IEC60825−1や、国内においてはJIS C6082等で定められるアイセーフティが満足されなければならない。特に照明器具のような民生機器への応用においては、光源から放射される照明光が何らかの光学系を介して直接目に入射する場合にも失明する恐れのないクラス1レベルのアイセーフティが望まれる。
特に、アイセーフティを向上させるためには、ある大きさ以上のアパレント光源サイズにする必要がある。
特許文献1には、半導体レーザからの誘導放出光が多重散乱光学系を介して自由空間に放出される光源装置を用いた光通信モジュールが開示されている。この光通信モジュールでは、半導体レーザに近接する領域に高濃度の散乱体が含まれており、当該半導体レーザから発振されるレーザ光の空間コヒーレンシを低減している。
国際公開第2003/077389号パンフレット(2003年9月18日公開)
ところが、特許文献1に記載の発明は、光通信モジュールに含まれる光源装置に関するものであり、高輝度光源として機能する発光装置に関するものではない。そのため、特許文献1に記載の構成を上記発光装置にそのまま適用できない。
本発明の目的は、高輝度光源として機能し、かつアイセーフティの高い発光装置、照明装置および車両用前照灯を提供することにある。
本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、レーザ光を出射する半導体レーザと、上記半導体レーザから出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する蛍光物質と、上記レーザ光を拡散させる拡散粒子とを含む発光部とを備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、半導体レーザから出射されたレーザ光を受けて、発光部に含まれる蛍光物質が発光する。この発光を照明光として利用できる。レーザ光はコヒーレント性(空間的コヒーレンシ)が高いので、発光部を小さくしても、その発光部に対する励起光の照射効率を高くすることができる。そのため、高輝度な照明装置を実現できる。
このような利点の一方で、レーザ光は、コヒーレント性が高いゆえに人体に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、発光部にレーザ光を拡散させる拡散粒子を含ませることで、レーザ光を拡散(空間的コヒーレンシを低減)させ、レーザ光を人体への影響がほとんどない発光点サイズの大きな光に変換し、照明光として出射できる。
それゆえ、高輝度光源として機能し、かつアイセーフティの高い発光装置を実現できる。
また、上記蛍光物質および上記拡散粒子は、耐熱性封止材の中に含まれていることが好ましい。
レーザ光を励起光として用いた場合、微小な体積の発光部に照射されて吸収される励起光のうちの、蛍光物質により蛍光に変換されること無く熱に変換されてしまう成分が、発光部の温度を容易に上昇させる。その結果、発光部の特性低下や熱による損傷を引き起こしてしまう可能性がある。
上記の構成によれば、蛍光物質および拡散粒子が耐熱性封止材によって封止されることで発光部が形成されている。それゆえ、レーザ光の照射により発光部が発熱しても封止材が劣化する可能性を低減できる。また、耐熱性封止材の材質によっては(例えば、無機ガラスである場合には)、蛍光物質の放熱効率が高められる場合もある。
また、上記拡散粒子の屈折率と上記耐熱性封止材の屈折率との差は、0.2以上であることが好ましい。
隣接する物質間の屈折率の差が大きくなるほど、当該物質間を透過する光の拡散効果は高まる。
上記の構成によれば、拡散粒子の屈折率と耐熱性封止材の屈折率との差は、0.2以上であり、発光部に入射したレーザ光を効果的に拡散させることができる。
また、上記耐熱性封止材は、無機ガラスであることが好ましい。
無機ガラスの熱伝導率は、1W/mK程度であり、封止材として無機ガラスを用いることにより、発光部の熱伝導率を高める(または、熱抵抗を低下させる)ことができる。それゆえ、蛍光物質の放熱効率を高めることができ、発光部が熱によって劣化することを防止できる。
また、上記耐熱性封止材は、低融点ガラスであることが好ましい。
上記の構成により、蛍光物質をガラス材の中に分散させる処理を低温で行うことができ、蛍光物質の熱による劣化を防止できるとともに発光部の製造が容易になる。
また、上記拡散粒子は、酸化ジルコニウムまたはダイヤモンドであることが好ましい。
酸化ジルコニウムの屈折率は、2.4であり、ダイヤモンドの屈折率は2.42である。このように屈折率の高い物質を拡散粒子として用いることにより、当該拡散粒子のレーザ光拡散効果を高めることができる。また、酸化ジルコニウムの融点は2715℃であり、ダイヤモンドの融点は3550℃であるので、一般的な封止材の溶融温度程度では融けたり変質したりすることはなく、拡散粒子として封止材中に分散させる材料として好適である。
また、上記発光装置を備える照明装置および車両用前照灯も本発明の技術的範囲に含まれる。
以上のように、本発明に係る発光装置は、レーザ光を出射する半導体レーザと、上記半導体レーザから出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する蛍光物質と、上記レーザ光を拡散させる拡散粒子とを含む発光部とを備える構成である。
それゆえ、高輝度光源として機能し、かつアイセーフティの高い発光装置を実現できるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係るヘッドランプが有する発光部および熱伝導部材の詳細を示す図である。 上記ヘッドランプの構成を示す断面図である。 発光部においてガラス材の中に高熱伝導フィラーおよび蛍光体粒子が分散している状態を示す概念図である。 (a)は、半導体レーザの回路図を模式的に示したものであり、(b)は、半導体レーザの基本構造を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係るレーザダウンライトが備える発光ユニットおよび従来のLEDダウンライトの外観を示す概略図である。 上記レーザダウンライトが設置された天井の断面図である。 上記レーザダウンライトの断面図である。 上記レーザダウンライトの設置方法の変更例を示す断面図である。 上記LEDダウンライトが設置された天井の断面図である。 上記レーザダウンライトおよび上記LEDダウンライトのスペックを比較するための図である。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ(発光装置、照明装置、車両用前照灯)1を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置として、例えば、サーチライト、プロジェクター、家庭用照明器具を挙げることができる。
また、ヘッドランプ1は、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
ヘッドランプ1は、高輝度光源として機能し、かつアイセーフティの高いヘッドランプである。
(ヘッドランプ1の構成)
まず、図2を参照しながら、ヘッドランプ1の構成について説明する。図2は、ヘッドランプ1の構成を示す断面図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザアレイ2と、非球面レンズ4と、光ファイバー5と、フェルール6と、発光部7と、反射鏡8と、透明板9と、ハウジング10と、エクステンション11と、レンズ12と、熱伝導部材13と、冷却部14とを備えている。
(半導体レーザアレイ2/半導体レーザ3)
半導体レーザアレイ2は、励起光を出射する励起光源として機能し、複数の半導体レーザ(励起光源、固体素子光源)3を基板上に備えるものである。半導体レーザ3のそれぞれから励起光としてのレーザ光が発振される。なお、励起光源として複数の半導体レーザ3を用いる必要は必ずしもなく、半導体レーザ3を1つのみ用いてもよいが、高出力のレーザ光を得るためには、複数の半導体レーザ3を用いる方が容易である。
半導体レーザ3は、1チップに1つの発光点を有するものであっても、1チップに複数の発光点を有するものであってもよい。より詳細には、半導体レーザ3は、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力1.0W、動作電圧5V、電流0.6Aのものであり、直径5.6mmのパッケージに封入されているものである。
半導体レーザ3が発振するレーザ光は、405nmに限定されず、380nm以上470nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。例えば、半導体レーザ3は、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる「青色」近傍のレーザ光)を発振するものでもよい。
なお、380nmより小さい波長のレーザ光を発振する良質な短波長用の半導体レーザを作製することが可能であれば、本実施の形態の半導体レーザ3として、380nmより小さい波長のレーザ光を発振するように設計された半導体レーザを用いることも可能である。
また、パッケージは直径5.6mmのものに限定されず、例えば、直径3.8mmや直径9mm、あるいはそれ以外であってもよく、熱抵抗がより小さいパッケージを選択することが好ましい。
また、本実施形態では、励起光源として半導体レーザを用いたが、半導体レーザの代わりに、発光ダイオードを用いることも可能である。
(非球面レンズ4)
非球面レンズ4は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ4として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ4の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
(光ファイバー5)
(光ファイバー5の配置)
光ファイバー5は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を発光部7へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー5は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部5bと、入射端部5bから入射したレーザ光を出射する複数の出射端部5aとを有している。複数の出射端部5aは、発光部7のレーザ光照射面(励起光照射面)7aにおける互いに異なる領域に対してレーザ光を出射する。
例えば、複数の光ファイバー5の出射端部5aは、レーザ光照射面7aに対して平行な平面において並んで配置されている。このような配置により、出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布における最も光強度が大きいところ(各レーザ光がレーザ光照射面7aに形成する照射領域の中央部分(最大光強度部分))が、発光部7のレーザ光照射面7aの互いに異なる部分に対して出射されるため、発光部7のレーザ光照射面7aに対してレーザ光を2次元平面的に分散して照射することができる。
高出力のレーザ光を励起光として用いた場合、微小な体積の発光部7において、当該発光部7に照射されて吸収される励起光のうちの、蛍光体により蛍光に変換されること無く熱に変換されてしまう成分が、発光部7の温度を容易に上昇させる。その結果、発光部7の特性低下や熱による損傷を引き起こしてしまう可能性がある。
上述のように、発光部7に対してレーザ光を2次元平面的に分散して照射することにより、発光部7の一部が熱によって著しく劣化することを防止できる。
なお、光ファイバー5は複数の光ファイバーの束(すなわち複数の出射端部5aを備えた構成)である必要は必ずしもなく、1本の光ファイバーであってもよい。
(光ファイバー5の材質および構造)
光ファイバー5は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。例えば、光ファイバー5は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー5の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー5の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
また、光ファイバー5は、可撓性を有しているため、半導体レーザ3と発光部7との相対位置関係を容易に変更できる。また、光ファイバー5の長さを調整することにより、半導体レーザ3を発光部7から離れた位置に設置することができる。
それゆえ、半導体レーザ3を、冷却しやすい位置または交換しやすい位置に設置できるなど、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。
なお、導光部材は、光ファイバーに限定されず、半導体レーザ3からのレーザ光を発光部7へ導くものであればどのような部材を用いてもよい。例えば、レーザ光の入射端部と出射端部とを有する円錐台形状(または角錐台形状)の導光部材を1つまたは複数用いてもよい。また、半導体レーザ3からのレーザ光を直接または反射ミラー等の光学系を用いて発光部7に照射してもよい。
(フェルール6)
フェルール6は、光ファイバー5の複数の出射端部5aを発光部7のレーザ光照射面に対して所定のパターンで保持する。このフェルール6は、出射端部5aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部5aを挟み込むものでもよい。
このフェルール6は、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材などによって反射鏡8に対して固定されていてもよいし、熱伝導部材13に対して固定されていてもよい。フェルール6の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。また、1つの発光部7に対して、複数のフェルール6を配置してもよい。
なお、光ファイバー5の出射端部5aが1つの場合には、フェルール6を省略することも可能である。
(発光部7)
(発光部7の組成)
図1は、ヘッドランプ1が有する発光部7および熱伝導部材13の詳細を示す図である。発光部(波長変換部材)7は、出射端部5aから出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体(蛍光物質)および拡散粒子(拡散材)15を含んでいる。これら蛍光体および拡散粒子15は、封止材としてのガラス材の内部に分散されている。発光部7は、反射鏡8のほぼ焦点位置に配置される。
この発光部7は、青色、緑色および赤色に発光する蛍光体のいずれか1種類以上を含んでいる。発光部7に半導体レーザ3からのレーザ光が照射されると複数の色が混合され白色光が発生する。それゆえ、発光部7は、波長変換材料であるといえる。
例えば、半導体レーザ3が、405nm(青紫色)のレーザ光を発振する場合には、発光部7に含まれる蛍光体は、緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。また、半導体レーザ3が、450nm(青色)のレーザ光を発振する場合には、発光部7に含まれる蛍光体は、黄色の蛍光体、または緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。
なお、黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。また、赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。
(蛍光体の種類)
発光部7の蛍光体は、酸窒化物系蛍光体またはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体であることが好ましい。これらの材料は、半導体レーザ3から発せられた極めて強いレーザ光(出力および光密度)に対しての耐性が高く、レーザ照明光源に最適である。
代表的な酸窒化物系蛍光体として、サイアロン蛍光体と通称されるものがある。サイアロン蛍光体とは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。窒化ケイ素(Si)にアルミナ(Al)、シリカ(SiO)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。
一方、半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つは、同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径をナノメータオーダーのある範囲内で変更することにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができる点である。例えば、InPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する(ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した)。
また、この半導体ナノ粒子蛍光体は、半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、この半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。
さらに、上述したように、発光寿命が短いため、レーザ光の吸収と蛍光体の発光とを素早く繰り返すことができる。その結果、強いレーザ光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱を低減させることができる。
(封止材)
封止材として、例えば、熱伝導率が1W/mK程度の無機ガラス(耐熱性封止材)を用いることができる。無機ガラスの中でも、特に低融点ガラスが好ましい。
封止材としてガラス材を用いると、レーザ光が蛍光体に照射され、蛍光体が発熱しても、ガラスは耐熱性が高いので、発光部7の劣化を防ぐことができる。また、封止材としてシリコーン樹脂を用いたときのような、光に長時間照射されることによる樹脂の劣化に起因する封止材の変色が起こりにくい。
また、封止材として低融点ガラスを用いると、蛍光体をガラス材の中に分散させる処理を低温で行うことができ、蛍光物質の熱による劣化を防止できるとともに発光部の製造が容易になる。
低融点ガラスとしては、ガラス転移点が600℃以下のものが好ましく、SiO、B、ZnOのいずれか1つを少なくとも含むことが好ましい。SiO、B、またはZnOを加えることにより、低融点ガラスを安定化させながら、ガラス転移点と焼成温度とを低下させることができ、かつ透明性を保つことができる。
ガラス材の組成として、例えば、SiO−B−CaO−BaO−LiO−NaOを挙げることができる。この低融点ガラスの融点は550℃である。
また、発光部7における封止材と蛍光体との割合は、10:1程度である。
なお、封止材は、無機ガラスに限定されず、いわゆる有機無機ハイブリッドガラスやシリコーン樹脂等の樹脂材料であってもよい。ただし、上述のように封止材として無機ガラスを用いた場合には、発光部7の熱耐性が高まるとともに発光部7の熱抵抗を下げる(熱伝導率を高める)という効果が得られるため、無機ガラスが好ましい。
(拡散粒子15)
拡散粒子15は、半導体レーザ3から出射され、発光部7に照射されたレーザ光を拡散(散乱)させることにより、コヒーレント性(空間的コヒーレンシ)が高く発光点サイズの極めて小さなレーザ光を、人体への影響がほとんどない発光点サイズの大きな光に変換するフィラー(散乱材)である。すなわち、拡散粒子15は、ヘッドランプ1の発光点のサイズ(アパレント光源サイズ)を拡大させる粒子である。
<拡散粒子15の意義>
ここで、発光部7に拡散粒子15を含ませる意義について説明する。
小さなスポットの光源から放射された高いエネルギーの光が人間の眼に入射した場合、網膜上では、その小さなスポットのサイズにまで光源像が絞られるため、結像個所におけるエネルギー密度が極めて高くなってしまうことがある。例えば、半導体レーザ素子から放射されるレーザ光は、スポットサイズが10μm角よりも小さい場合があり、そのような光源から放射される光が、直接に、あるいはレンズやミラーといった光学部材を介したとしても小さな発光点が直接に見える形で目に入射すると、網膜上の結像個所が損傷してしまうことがある。
これを回避するためには、発光点のサイズをある有限のサイズ以上(具体的には例えば1mm×1mm以上)に拡大する必要がある。
典型的な高出力の半導体レーザにおける発光点のサイズは、例えば1μm×10μmである。面積としては10μm=1.0×10−5mmとなる。すなわち、発光点が1mmの光源と比較すると、同じエネルギーの光であったとしても、網膜上に結像される領域のエネルギー密度は、10倍も高くなってしまう。
発光点のサイズを拡大させることにより、網膜上の結像サイズを拡大させることができるようになるため、同じエネルギーの光が眼に入射した場合であっても、網膜上のエネルギー密度を低減させることが可能となる。
発光点のサイズを拡大させる際には、光源そのものの発光点を視認できないようにする必要がある。これを行うために、本発明では、発光部7に拡散粒子15を含め、この拡散粒子15によってレーザ光を拡散させている。
拡散粒子15を含まない場合でも、発光部7は、レーザ光を拡散する機能をある程度有している。この拡散機能は、発光部7に含まれる封止材と蛍光体との屈折率との差を利用することで実現できる。そのために、レーザ光を十分に拡散できる体積(特に厚み)を有するように発光部7を設計すれば、ある程度はアイセーフティを実現できる。これに加えて、拡散粒子15を発光部7に含めることによって、発光部7の拡散機能をさらに高め、より確実にアイセーフティを実現することができる。
なお、発光点サイズの拡大については、レーザ光源に限らず、LED光源においても考慮することができる。ただし、レーザ光は、LED光源から出射される光よりも単色性、すなわち波長が揃っているため、波長の違いによる網膜上での結像のボケ(いわゆる色収差)がなく、LED光源から出射される光よりも危険である。このため、レーザ光源から出射された光を照明光として利用する照明装置においては、発光点サイズの拡大について特に考慮することが好ましい。逆に、網膜での結像の観点から言えば、LED光源から出射される光を照明光として利用する照明装置においては、必ずしも発光点サイズの拡大について考慮する必要はない。
<拡散粒子15の具体例>
拡散粒子15として、光を拡散させる効果を有する粒子であり、発光部7を製造する時の熱に耐えられるものであれば、どのようなものを用いてもよく、例えば、フュームドシリカ、Al、酸化ジルコニウムまたはダイヤモンドを用いることができる。この中でも特に、酸化ジルコニウムまたはダイヤモンドを用いることが好ましい。
隣接する2つの物質間の屈折率の差が大きいほどこれらの物質間を透過する光は拡散しやすい。そのため、拡散粒子15の屈折率と封止材の屈折率との差が大きい方がレーザ光を効果的に拡散させることができる。具体的には、拡散粒子15の屈折率と封止材の屈折率との差は、0.2以上であることが好ましい。上記屈折率の差が、0.2以上であれば、実用に耐えることができる。
封止材とて無機ガラスを用いた場合、無機ガラスの屈折率は、1.5〜1.8程度であるため、拡散粒子15の屈折率は、1.7〜2.0程度以上であることが好ましく、より確実に拡散効果を得るためには、2.0以上であることが好ましい。
酸化ジルコニウムの屈折率は、2.4であり、ダイヤモンドの屈折率は2.42である。このように屈折率の高い物質を拡散粒子15として用いることによりレーザ光の拡散効果を高めることができる。
また、酸化ジルコニウムの融点は2715℃であり、ダイヤモンドの融点は3550℃であるので、一般的な封止材の溶融温度程度では融けたり変質したりすることはない。この点からも、酸化ジルコニウムおよびダイヤモンドは、拡散粒子15として封止材中に分散させる材料として好適である。
また、拡散粒子15は、透光性の高いものが好ましい。透光性が低い場合には、拡散粒子15が、半導体レーザ3からのレーザ光および蛍光体が発する蛍光を遮るか、または吸収する可能性がある。そのため、レーザ光の利用効率の観点から拡散粒子15の透光性は高いことが好ましい。
酸化ジルコニウムおよびダイヤモンドは、透光性が高いため、透光性の観点からも拡散粒子15として好適である。
ちなみに、従来、拡散微粒子として多用されているシリカは、屈折率:1.46であり、無機ガラス中(屈折率:1.5〜1.8)での散乱効果は低い。また、同じ目的で使用されるY(イットリア)(屈折率:1.91)は、屈折率が2未満であり、低融点ガラスの屈折率とあまり変わらず、拡散効果が低い。
(発光部7の形状・サイズ)
発光部7の形状および大きさは、例えば、直径3.2mmおよび厚さ1mmの円柱形状であり、出射端部5aから出射されたレーザ光を、当該円柱の底面であるレーザ光照射面7aにおいて受光する。
また、発光部7は、円柱形状でなく、直方体であってもよい。例えば、3mm×1mm×1mmの直方体である。日本国内で法的に規定されている車両用ヘッドランプの配光パターン(配光分布)は、鉛直方向に狭く、水平方向に広いため、発光部7の形状を、水平方向に対して横長(断面略長方形形状)にすることにより、上記配光パターンを実現しやすくなる。
ここで必要とされる発光部7の厚みは、発光部7における封止材と蛍光体との割合に従って変化する。発光部7における蛍光体の含有量が多くなれば、レーザ光が白色光に変換される効率が高まるため発光部7の厚みを薄くできる。発光部7を薄くすれば熱抵抗が低下するという効果があるが、あまり薄くするとレーザ光が蛍光に変換されず外部に放射される恐れがある。
この可能性を低減するために、発光部7に含まれる拡散粒子15の量(混合比)を多くするか、または、拡散効果の高い拡散粒子15を用いることが有効である。これにより、発光部7が薄い場合でも、コヒーレントなレーザ光が外部に漏れる可能性を低減できる。発光部7を薄くできる結果として、発光部7の熱抵抗を低下させることができ、発光部7の放熱性を向上させることができる。
また、蛍光体での励起光の吸収効率の観点からすると発光部の厚みは蛍光体の粒径の少なくとも10倍以上あることが好ましい。
このため酸窒化物蛍光体を用いた発光部7の厚みとしては、0.2mm以上、2mm以下が好ましい。ただし、蛍光体の含有量を極端に多くした場合(典型的には蛍光体が100%)、厚みの下限はこの限りではない。
この観点からするとナノ粒子蛍光体を用いた場合の発光部の厚みは0.01μm以上であればよいことになるが、封止材中への分散等、製造プロセスの容易性を考慮すると10μm以上、すなわち0.01mm以上が好ましい。逆に厚くしすぎると反射鏡8の焦点からのずれが大きくなり配光パターンがぼけてしまう。
また、発光部7のレーザ光照射面7aは、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、反射したレーザ光を制御するためには、レーザ光照射面7aは平面を有していることが好ましい。レーザ光照射面7aが曲面の場合、少なくとも曲面への入射角度が大きく変わるため、レーザ光が照射される場所によって、反射光の進む方向が大きく変わってしまう。そのため、レーザ光の反射方向を制御することが困難な場合がある。これに対してレーザ光照射面7aが平面であれば、レーザ光の照射位置が若干ずれたとしても反射光の進む方向はほとんど変わらないため、レーザ光が反射する方向を制御しやすい。場合によっては反射光が当たる場所にレーザ光の吸収材を置くなどの対応がとり易くなる。
なお、レーザ光照射面7aがレーザ光の光軸に対して垂直である必要は必ずしもない。レーザ光照射面7aがレーザ光の光軸に対して垂直な場合、反射したレーザ光はレーザ光源の方向に戻るため、場合によってはレーザ光源にダメージを与える可能性もある。
(反射鏡8)
反射鏡8は、発光部7から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡8は、発光部7からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡8は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材である。
また、反射鏡8は、半球面ミラーに限定されず、楕円面ミラーやパラボラミラーまたはそれらの部分曲面を有するミラーあってもよい。すなわち、反射鏡8は、回転軸を中心として図形(楕円、円または放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
(透明板9)
透明板9は、反射鏡8の開口部を覆う透明な樹脂板である。
また、透明板9は、熱伝導部材13と共に、発光部7を固定するために用いられてもよい。すなわち、発光部7を熱伝導部材13と透明板9とで挟持してもよい。
このとき、透明板9が、熱伝導率の高いものであれば、透明板9も熱伝導部材として機能し、発光部7の放熱効果を得ることができる。
なお、発光部7を熱伝導部材13のみで固定する場合には、透明板9を省略することも可能である。
(ハウジング10)
ハウジング10は、ヘッドランプ1の本体を形成しており、反射鏡8等を収納している。光ファイバー5は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザアレイ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザアレイ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザアレイ2を効率良く冷却することが可能となる。したがって、半導体レーザアレイ2から発生する熱による、発光部7の特性劣化や熱的損傷等が防止される。
また、半導体レーザ3は、万一故障した時のことを考慮して、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザアレイ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
(エクステンション11)
エクステンション11は、反射鏡8の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ1の内部構造を隠して、ヘッドランプ1の見栄えを良くするとともに、反射鏡8と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡8と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
(レンズ12)
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している。発光部7が発生し、反射鏡8によって反射された光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
(熱伝導部材13)
熱伝導部材13は、発光部7における励起光が照射される面であるレーザ光照射面(励起光照射面)7aの側に配置され、発光部7の熱を受け取る透光性の部材であり、発光部7と熱的に(すなわち、熱エネルギーの授受が可能なように)接続されている。発光部7と熱伝導部材13とは、例えば、接着剤によって接続されていてもよい。
熱伝導部材13は、板状の部材であり、その一方の端部が発光部7のレーザ光照射面7aに熱的に接触しており、他方の端部が冷却部14に熱的に接続されている。
熱伝導部材13は、このような形状および接続形態を有することで、微小な発光部7を特定の位置で保持しつつ、発光部7から発生する熱をヘッドランプ1の外部に放熱する。なお、図1において熱伝導部材13に付記された矢印は、熱の流れを示している。
発光部7の熱を効率良く逃がすために、熱伝導部材13の熱伝導率は、20W/mK以上であることが好ましい。また、半導体レーザ3から出射されたレーザ光は、熱伝導部材13を透過して発光部7に到達する。そのため、熱伝導部材13は、透光性の優れた材質からなるものであることが好ましい。
これらの点を考慮して、熱伝導部材13の材質としては、サファイア(Al)やマグネシア(MgO)、窒化ガリウム(GaN)、スピネル(MgAl)が好ましい。これらの材料を用いることにより、熱伝導率20W/mK以上を実現できる。
また、図1において符号13cで示す熱伝導部材13の厚みは、0.3mm以上、3.0mm以下が好ましい。0.3mmよりも薄いと発光部7の放熱を十分にできず、発光部7が劣化してしまう可能性がある。また、3.0mmを超えるような厚みにすると、照射されたレーザ光の熱伝導部材13における吸収が大きくなり、励起光の利用効率が顕著に下がる。
熱伝導部材13を適切な厚みで発光部7に当接させることにより、特に発光部7での発熱が1Wを超えるような極めて強いレーザ光を照射しても、その発熱が迅速且つ効率的に放熱され、発光部7が損傷(劣化)してしまうことを防止できる。
なお、熱伝導部材13は、折れ曲がりのない板状のものであってもよいし、折れ曲がった部分や湾曲した部分を有していてもよい。ただし、発光部7が接着される部分は、接着の安定性の観点から平面(板状)である方が好ましい。
(冷却部14)
冷却部14は、熱伝導部材13を冷却する部材であり、例えば、アルミや銅などの金属からなる熱伝導性の高い放熱ブロックである。なお、反射鏡8が金属で形成されるのであれば、反射鏡8が冷却部14を兼ねていてもよい。または、冷却部14は、冷却液をその内部に循環させることによって熱伝導部材13を冷却する冷却装置であってもよいし、風冷によって熱伝導部材13を冷却する冷却装置(ファン)であってもよい。
冷却部14を金属塊として実現する場合には、当該金属塊の上面に複数の放熱用のフィンを設けてもよい。この構成により、金属塊の表面積を増加させ、金属塊からの放熱をより効率良く行うことができる。
なお、この冷却部14はヘッドランプ1にとって必須なものではなく、熱伝導部材13が発光部7から受け取った熱を熱伝導部材13から自然に放熱させてもよい。冷却部14を設けることで、熱伝導部材13からの放熱を効率良く行うことができ、特に、発光部7からの発熱量が3W以上の場合に、冷却部14の設置が有効となる。
また、熱伝導部材13の長さを調整することにより、冷却部14を発光部7から離れた位置に設置することができる。この場合、図2に示すような、冷却部14がハウジング10に収納される構成に限らず、熱伝導部材13がハウジング10を貫くことにより、冷却部14をハウジング10の外部に設置することも可能となる。
それゆえ、冷却部14が万が一故障した場合に修理または交換しやすい位置に設置することができ、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。
(発光部7の具体例および製造方法)
次に発光部7の具体例および製造方法について説明する。図3は、発光部7において無機ガラス17の中に拡散粒子15および蛍光体粒子16が分散している状態を示す概念図である。なお、図3は各粒子の配置を概念的に示したものであり、拡散粒子15と蛍光体粒子16との相対的な大きさを正確に表現したものではない。
<第1の例>
第1の例として、拡散粒子15として合成ダイヤモンド粒子を用い、蛍光体として緑色蛍光体(Caα−SiAlON:Ce3+)と赤色蛍光体(CASN:Eu2+)とを用いた例について説明する。これらの蛍光体を含む発光部7に組み合わせる励起光源は、405nmで発振する半導体レーザである。
まず、ガラス粉末と蛍光体粉末とが所定の割合となるようにそれぞれの粉末を秤量し、これらの粉末が均一に混ざり合うように混合する(混合工程)。例えば、ガラス粉末と緑色蛍光体(Caα−SiAlON:Ce3+)と赤色蛍光体(CASN:Eu2+)とをガラス粉末:緑色蛍光体:赤色蛍光体=100:6:2の重量比で混合する。さらに、合成ダイヤモンド粒子(粒径1μm)を発光部重量(封止材と蛍光体との合算重量)比で5%程度加え、各粒子を均一に混合する。
この混合処理は、秤量した各粉末を容器に入れ、手動で揺動させることによって行ってもよいし、混合装置によって行ってもよい。
発光部7における蛍光体の濃度が高い場合には、図3に示すように蛍光体粒子16が封止材の中に均一に分散していることが好ましい。蛍光体粒子16が一箇所にかたまって存在すると、その箇所での発熱量が多くなり、発光効率の低下および発光部7の劣化が生じる可能性があるからである。それゆえ混合処理によって各粒子が均一に分散するよう配慮することが重要である。
また、拡散粒子15についても、レーザ光を拡散させるという効果が発光部7の全体に及ぶために封止材の中にほぼ均一に分散していることが好ましい。
混合工程の後、混合粉末を金属金型(モールド)中に充填し、例えば、550℃で1時間加熱して発光部の成型を行う(焼成工程)。
<第2の例>
また、無機ガラスを封止材として用いた発光部7に分散させる蛍光体は、YAG蛍光体に代表される黄色蛍光体であってもよい。無機ガラスと蛍光体との配合は重量比で10:1となるようにする。この無機ガラス粉末と蛍光体粉末との混合物に、重量比で3%の酸化ジルコニウムをさらに混合し、焼結させて発光部を形成する。
YAG蛍光体を用いる場合は、低融点ガラスの中でも特に融点が低い(500℃)以下の封止材を用いることが好ましい。例えば、酸化鉛を含む低融点ガラスやリン酸塩系ガラスは、低融点ガラスの中でも特に低融点であり、YAG蛍光体の封止材に好適である。
YAG蛍光体を用いる際の励起光源は、440nm〜470nmで発振する青色半導体レーザが好適である。特に青色領域で発光する半導体レーザを励起光源として使用する場合、励起光が照明光の主要な一部となるため、アイセーフティの観点が特に重要になる。すなわち、上記の構成では、レーザ光の青色と蛍光体の黄色とを組み合わせて擬似白色とするため、レーザ光の一部が照明光としてヘッドランプ1の外部に出射される。この場合には、レーザ光を遮断する遮断フィルター(透明板9)を設けることはできない。それゆえ、発光部7においてレーザ光を十分に拡散させることが重要である。
発光部7に拡散粒子15を含ませることにより、発光部7を通って外部に放射される青色レーザ光が十分に拡散され、発光点サイズが拡大される。それゆえ、青色レーザ光を利用して擬似白色の照明光を生成する場合にも、安全な固体照明光源を実現できる。
(半導体レーザ3の構造)
次に、半導体レーザ3の基本構造について説明する。図4(a)は、半導体レーザ3の回路図を模式的に示したものであり、図4(b)は、半導体レーザ3の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ3は、カソード電極23、基板22、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極21がこの順に積層された構成である。
基板22は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al、SiO、TiO、CrOおよびCeO等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
アノード電極21は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
カソード電極23は、基板22の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極21・カソード電極23に順方向バイアスをかけて行う。
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極21及びカソード電極23に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
(発光部7の発光原理)
次に、半導体レーザ3から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
まず、半導体レーザ3から発振されたレーザ光が発光部7に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
(ヘッドランプ1の効果)
以上のように、ヘッドランプ1は、拡散粒子15を含む発光部7を備えている。拡散粒子15によって、発光部7に入射したレーザ光が拡散されることにより、発光点のサイズが拡大され、アイセーフティが高められる。その結果、クラス1レベルのアイセーフティを有する安全なヘッドランプを実現することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図5〜図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト200について説明する。レーザダウンライト200は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ3から出射したレーザ光を発光部7に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
なお、レーザダウンライト200と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
図5は、レーザダウンライト200が備える発光ユニット210および従来のLEDダウンライト300の外観を示す概略図である。図6は、レーザダウンライト200が設置された天井の断面図である。図7は、レーザダウンライト200の断面図である。図5〜図7に示すように、レーザダウンライト200は、天板400に埋設され、照明光を出射する発光ユニット210と、光ファイバー5を介して発光ユニット210へレーザ光を供給するLD光源ユニット220とを含んでいる。LD光源ユニット220は、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このようにLD光源ユニット220の位置を自由に決定できるのは、LD光源ユニット220と発光ユニット210とが光ファイバー5によって接続されているからである。この光ファイバー5は、天板400と断熱材401との間の隙間に配置されている。
(発光ユニット210の構成)
発光ユニット210は、図7に示すように、筐体211、光ファイバー5、発光部7、熱伝導部材13および透光板213を備えている。図7では示されていないが、発光部7には拡散粒子15が分散されている。上述の実施形態と同様に、発光部7に照射されたレーザ光が拡散粒子15によって拡散されることによって、コヒーレント性が高く発光点サイズの極めて小さなレーザ光を、人体への影響がほとんどない発光点サイズの大きな光に変換することができる。それゆえ、レーザダウンライト200のアイセーフティを向上させることができる。
筐体211には、凹部212が形成されており、この凹部212の底面に発光部7が配置されている。凹部212の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部212は反射鏡として機能する。
また、筐体211には、光ファイバー5を通すための通路214が形成されており、この通路214を通って光ファイバー5が熱伝導部材13まで延びている。光ファイバー5の出射端部5aから出射されたレーザ光は、熱伝導部材13を透過して発光部7に到達する。
透光板213は、凹部212の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板213は、透明板9と同様の機能を有するものであり、発光部7の蛍光は、透光板213を透して照明光として出射される。透光板213は、筐体211に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
図5では、発光ユニット210は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット210の形状(より厳密には、筐体211の形状)は特に限定されない。
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光部7の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
(LD光源ユニット220の構成)
LD光源ユニット220は、半導体レーザ3、非球面レンズ4および光ファイバー5を備えている。
光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bは、LD光源ユニット220に接続されており、半導体レーザ3から発振されたレーザ光は、非球面レンズ4を介して光ファイバー5の入射端部5bに入射される。
図7に示すLD光源ユニット220の内部には、半導体レーザ3および非球面レンズ4が一対のみ示されているが、発光ユニット210が複数存在する場合には、発光ユニット210からそれぞれ延びる光ファイバー5の束を1つのLD光源ユニット220に導いてもよい。この場合、1つのLD光源ユニット220に複数の半導体レーザ3と非球面レンズ4との対が収納されることになり、LD光源ユニット220は集中電源ボックスとして機能する。
(レーザダウンライト200の設置方法の変更例)
図8は、レーザダウンライト200の設置方法の変更例を示す断面図である。同図に示すように、レーザダウンライト200の設置方法の変形例として、天板400には光ファイバー5を通す小さな穴402だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体(発光ユニット210)を天板400に貼り付けるということもできる。この場合、レーザダウンライト200の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
この構成では、熱伝導部材13は、筐体211の底部に、レーザ光入射側の面を全面的に当接させて配置されている。それゆえ、筐体211を熱伝導率の高い物質からなるものにすることによって熱伝導部材13の冷却部として機能させることができる。
(レーザダウンライト200と従来のLEDダウンライト300との比較)
従来のLEDダウンライト300は、図5に示すように、複数の透光板301を備えており、各透光板301からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト300において発光点は複数存在している。LEDダウンライト300において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
これに対して、レーザダウンライト200は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、発光部7の蛍光体を高演色蛍光体(例えば、数種類の酸窒化物蛍光体の組み合わせ)にすることにより、照明光の演色性を高めることができる。
これにより、白熱電球ダウンライトに迫る高演色を実現することができる。例えば、平均演色評価数Raが90以上のみならず、特殊演色評価数R9も95以上というLEDダウンライトや蛍光灯ダウンライトでは実現が難しい高演色光も高演色蛍光体と半導体レーザ3の組合せにより実現可能である。
図9は、LEDダウンライト300が設置された天井の断面図である。同図に示すように、LEDダウンライト300では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体302が天板400に埋設されている。筐体302は比較的大きなものであり、筐体302が配置されている部分の断熱材401には、筐体302の形状に沿った凹部が形成される。筐体302から電源ライン303が延びており、この電源ライン303はコンセント(不図示)につながっている。
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板400と断熱材401との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト300を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
また、LEDダウンライト300では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
また、筐体302は比較的大きなものであるため、天板400と断熱材401との間の隙間にLEDダウンライト300を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
これに対して、レーザダウンライト200では、発光ユニット210には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
また、発光ユニット210ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト200を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト200を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
また、レーザダウンライト200は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット210を天板400の表面に設置することができ、LEDダウンライト300よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
図10は、レーザダウンライト200およびLEDダウンライト300のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト200は、その一例では、LEDダウンライト300に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
また、LD光源ユニット220をユーザの手が容易に届く所に設置できるため、半導体レーザ3が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ3を交換できる。また、複数の発光ユニット210から延びる光ファイバー5を1つのLD光源ユニット220に導くことにより、複数の半導体レーザ3を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ3を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
なお、LEDダウンライト300において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト200で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト300の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト200では、LEDダウンライト300と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
以上のように、レーザダウンライト200は、レーザ光を出射する半導体レーザ3を少なくとも1つ備えるLD光源ユニット220と、発光部7および反射鏡としての凹部212を備える少なくとも1つの発光ユニット210と、発光ユニット210のそれぞれへ上記レーザ光を導く光ファイバー5とを含んでいる。発光部7には、拡散粒子15が含まれており、この拡散粒子15によってレーザ光が拡散されることによりアイセーフティが高められる。
(その他の変更例)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態においては、半導体レーザを励起用の固体発光素子として用いたが、上述したように発光ダイオードを励起光源として用いる場合も同様に発光点サイズに留意する必要がある。本発明の構成を用いれば、発光ダイオードを励起光源として使用した際にも、安全な固体照明光源とすることができる。
また、励起光源として、半導体レーザ以外の固体レーザを用いてもよい。ただし、半導体レーザを用いる方が、励起光源を小型化できるため好ましい。
本発明は、高輝度で安全性の高い発光装置や照明装置、特に車両用等のヘッドランプに適用することができる。
1 ヘッドランプ(発光装置、車両用前照灯)
2 半導体レーザアレイ(励起光源)
3 半導体レーザ(励起光源)
7 発光部
15 拡散粒子
16 蛍光体粒子(蛍光物質)
17 無機ガラス(耐熱性封止材)
200 レーザダウンライト(発光装置、照明装置)

Claims (8)

  1. レーザ光を出射する半導体レーザと、
    上記半導体レーザから出射されたレーザ光を受けて蛍光を発する蛍光物質と、上記レーザ光を拡散させる拡散粒子とを含む発光部とを備えることを特徴とする発光装置。
  2. 上記蛍光物質および上記拡散粒子は、耐熱性封止材の中に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
  3. 上記拡散粒子の屈折率と上記耐熱性封止材の屈折率との差は、0.2以上であることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
  4. 上記耐熱性封止材は、無機ガラスであることを特徴とする請求項2または3に記載の発光装置。
  5. 上記耐熱性封止材は、低融点ガラスであることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
  6. 上記拡散粒子は、酸化ジルコニウムまたはダイヤモンドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする照明装置。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする車両用前照灯。
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