〔実施形態1〕
本発明の実施の一形態について、図1〜図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明に係る発光装置を備える照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ(車両用前照灯)1を例に挙げて説明する。
ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間、船舶、航空機、潜水艇、ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置として、例えば、サーチライト、プロジェクタ、家庭用照明器具などを挙げることができる。
また、ヘッドランプ1は、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
(ヘッドランプ1の構成)
まず、図1を参照しながら、ヘッドランプ1の構成について説明する。図1は、ヘッドランプ1の構成を示す断面図である。図1に示されるように、ヘッドランプ1は、半導体レーザアレイ2と、非球面レンズ4と、光ファイバ5と、フェルール6と、発光部7と、反射鏡8と、透明板9と、ハウジング10と、エクステンション11と、レンズ12と、熱伝導部材13と、冷却部14と、間隙層15とを備えている。
図2は、図1に示される発光部7と熱伝導部材13とが間隙層15によって接着されている構造を示す拡大図である。図2に示されるように、間隙層15は、熱伝導部材13と発光部7との隙間に充填され、発光部7において発生した熱を熱伝導部材13へ効率よく伝導する機能を有する。
(半導体レーザアレイ2/半導体レーザ3)
半導体レーザアレイ2は、励起光を出射する励起光源として機能し、複数の半導体レーザ(励起光源)3を基板上に備えるものである。半導体レーザ3のそれぞれから励起光としてのレーザ光が発振される。
なお、励起光源として複数の半導体レーザ3を用いる必要は必ずしもなく、半導体レーザ3を1つのみ用いてもよいが、高出力のレーザ光を得るためには、複数の半導体レーザ3を用いる方が容易である。
半導体レーザ3は、1チップに1つの発光点を有し、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力1.0W、動作電圧5V、電流0.6Aであり、直径5.6mmのパッケージに封入されている。半導体レーザ3が発振するレーザ光は、405nmに限定されず、380nm以上、470nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。
なお、380nmより小さい波長のレーザ光を発振する良質な短波長用の半導体レーザ3を作製することが可能であれば、本実施形態の半導体レーザ3として、380nmより小さい波長のレーザ光を発振するように設計された半導体レーザを用いることも可能である。
また、本実施形態では、励起光源として半導体レーザ3を用いたが、半導体レーザ3の代わりに、LED(発光ダイオード)を用いることも可能である。
(非球面レンズ4)
非球面レンズ4は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光を、光ファイバ5の一方の端部である入射端部5bに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ4として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ4の形状および材質は特に限定されないが、励起光である405nm近傍の波長領域の透過率が高く、且つ、耐熱性のよい材料であることが好ましい。
(光ファイバ5)
(光ファイバ5の配置)
光ファイバ5は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を発光部7へと導く導光部材であり、複数の光ファイバの束である。この光ファイバ5は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部5bと、入射端部5bから入射したレーザ光を出射する複数の出射端部5aとを有している。複数の出射端部5aは、発光部7のレーザ光照射面7aにおける互いに異なる領域に対してレーザ光を出射する。
例えば、複数の光ファイバ5の出射端部5aは、レーザ光照射面7aに対して平行な平面において並んで配置されている。このような配置により、出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布における最も光強度が大きいところ(各レーザ光がレーザ光照射面7aに形成する照射領域の中央部分(最大光強度部分))が、発光部7のレーザ光照射面7aの互いに異なる部分に対して出射される。このため、発光部7のレーザ光照射面7aに対してレーザ光を2次元平面的に分散して照射することができる。
このように、発光部7にレーザ光が局所的に照射されることにより、発光部7の一部が著しく劣化することを防止できる。
なお、光ファイバ5は、複数の光ファイバの束(すなわち複数の出射端部5aを備えた構成)である必要は必ずしもなく、出射端部5aは1つであってもよい。
(光ファイバ5の材質および構造)
光ファイバ5は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。
例えば、光ファイバ5は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバ5の構造、太さ、および材質は上述のものに限定されない。例えば、光ファイバ5の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
また、光ファイバ5は、可撓性を有しているため、出射端部5aの、発光部7のレーザ光照射面7aに対する配置を容易に変えることができる。それゆえ、発光部7のレーザ光照射面7aの形状に沿って出射端部5aを配置することができ、レーザ光を発光部7のレーザ光照射面7aの全面にわたってマイルドに照射することができる。
また、光ファイバ5は、可撓性を有しているため、半導体レーザ3と発光部7との相対位置関係を容易に変更できる。したがって、光ファイバ5の長さを調整することにより、半導体レーザ3を発光部7から離れた位置に設置することができる。
それゆえ、半導体レーザ3を、冷却し易い位置または交換し易い位置に設置できるなど、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。すなわち、入射端部5bと出射端部5aとの位置関係を容易に変更することができ、半導体レーザ3と発光部7との位置関係を容易に変更することができるので、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。さらには、本実施形態によるヘッドランプ1を搭載する自動車の設計の自由度も高めることが可能となる。
なお、導光部材として光ファイバ以外の部材、または光ファイバと他の部材とを組み合わせたものを用いてもよい。例えば、レーザ光の入射端部と出射端部とを有する円錐台形状(または角錐台形状)の導光部材を1つまたは複数用いてもよい。
(フェルール6)
フェルール6は、光ファイバ5の複数の出射端部5aを発光部7のレーザ光照射面7aに対して所定のパターンで保持する。フェルール6は、出射端部5aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものであってもよい。或いは、フェルール6は、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部5aを挟み込むものであってもよい。
フェルール6は、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材などによって反射鏡8に対して固定されていてもよく、或いは、熱伝導部材13に対して固定されていてもよい。フェルール6の材質は特に限定されず、例えば、ステンレススチールである。また、1つの発光部7に対して、複数のフェルール6を配置してもよい。
なお、光ファイバ5の出射端部5aが1つの場合には、フェルール6を省略することも可能である。ただし、出射端部5aのレーザ光照射面7aに対する相対位置を正確に固定するために、フェルール6を設けることが好ましい。
(発光部7)
(発光部7の組成)
発光部7は、出射端部5aから出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。図2に示されるように、発光部7は、熱伝導部材13のレーザ光が照射される側とは反対側の面のうち、発光部7と対向する発光部対向面13aに間隙層15によって固定されている。
発光部7は、蛍光体保持物質(封止材)としての無機ガラスの内部に蛍光体が分散されているものである。無機ガラスと蛍光体との割合は、10:1程度である。
蛍光体保持物質は、無機ガラスなどの材料に限定されない。レーザ光により蛍光体が励起されることにより発生する熱に耐えることのできる耐熱性および熱伝導率を有するのであれば、樹脂、有機無機ハイブリッドガラスであってもよい。また、発光部7は、蛍光体を押し固めたものであってもよく、或いは、蛍光体の粒子を焼結させたものであってもよい。
上記蛍光体は、例えば、酸窒化物系、或いは、窒化物系のものが好ましい。酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体は耐熱性が高いため、ヘッドランプ1の高温環境下における信頼性を向上させることができる。
また、酸窒化物蛍光体および窒化物蛍光体は、温度上昇に伴う発光効率の低下割合が低いため、ヘッドランプ1は、高温環境下においても高効率の照明光の出射が可能となる。
発光部7は、例えば、青色、緑色、および赤色に発光する蛍光体のいずれか1つ以上が無機ガラスに分散されている。半導体レーザ3は、405nm(青紫色)のレーザ光を発振するため、発光部7に当該レーザ光が照射されると複数の色が混合され白色光が発生する。それゆえ、発光部7は、波長変換材料であるといえる。
なお、半導体レーザ3は、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上、490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる「青色」近傍のレーザ光)を発振するものでもよく、この場合には、上記蛍光体は、黄色の蛍光体、または緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。
黄色の蛍光体とは、560nm以上、590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上、560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上、680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。
(蛍光体の種類)
発光部7は、酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体またはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体を含んでいることが好ましい。これらの材料は、半導体レーザ3から発せられた極めて強いレーザ光(出力および光密度)に対しての耐性が高く、レーザ照明光源に最適である。
代表的な酸窒化物蛍光体として、サイアロン蛍光体と通称されるものがある。サイアロン蛍光体とは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。窒化ケイ素(Si3N4)にアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。
一方、半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つは、同一の化合物半導体(例えば、インジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径をナノメータサイズに変更することにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができる点である。例えば、InPでは、粒子サイズが3nm以上、4nm以下程度のときに赤色に発光する(ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した)。
また、この半導体ナノ粒子蛍光体は、半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、この半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。
さらに、上述したように、半導体ナノ粒子蛍光体は、発光寿命が短いため、レーザ光の吸収と蛍光体の発光とを素早く繰り返すことができる。その結果、強いレーザ光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱を低減させることができる。
よって、発光部7が熱により劣化(変色や変形)するのを、より抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
(発光部7の形状・サイズ)
発光部7の形状および大きさは、例えば、直径3.2mmおよび厚み1mmの円柱形状であり、出射端部5aから出射されたレーザ光を、当該円柱の底面であるレーザ光照射面7aにおいて受光する。
また、発光部7は、円柱形状でなく、直方体であってもよい。例えば、2mm×2mmおよび厚み1mmの直方体であってもよい。この場合、半導体レーザ3からのレーザ光を受けるレーザ光照射面7aの面積は、4mm2である。
或いは、発光部7は、例えば、3mm×1mmおよび厚み1mmの直方体であってもよい。日本国内で法的に規定されている車両用ヘッドランプの配光パターン(配光分布)は、鉛直方向に狭く、水平方向に広いため、発光部7の形状を、水平方向に対して横長(断面略長方形形状)にすることにより、上記配光パターンを実現し易くなる。
ここで必要とされる発光部7の厚みは、発光部7における蛍光体保持物質と蛍光体との割合にしたがって変化する。発光部7における蛍光体の含有量が多くなれば、レーザ光が白色光に変換される効率が高まるため発光部7の厚みを薄くすることができる。発光部7を薄くすれば熱伝導部材13への放熱効果も高まるが、あまり薄くするとレーザ光が蛍光に変換される割合が低下する。
このため、蛍光体での励起光の吸収の観点からすると、発光部の厚みは、蛍光体の粒径の少なくとも10倍以上あることが好ましい。この観点からすると半導体ナノ粒子蛍光体を用いた場合の発光部の厚みは0.01μm以上であればよいことになるが、封止材中への分散など、製造プロセスの容易性を考慮すると10μm以上、すなわち0.01mm以上が好ましい。逆に厚くしすぎると反射鏡8の焦点からのずれが大きくなり配光パターンがぼけてしまう。
このため酸窒化物蛍光体や窒化物蛍光体を用いた発光部7の厚みとしては、0.2mm以上、2mm以下が好ましい。ただし、蛍光体の含有量を極端に多くした場合(典型的には蛍光体が100%)、厚みの下限はこの限りではない。
さらに、発光部7のレーザ光照射面7aは、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、レーザ光の反射を抑えるためには、レーザ光照射面7aは平面であることが好ましい。レーザ光照射面7aが曲面の場合、レーザが照射される場所によって、曲面への入射角度が大きく変わるため、結果として、反射光の進む方向が大きく変わってしまう。このため、レーザ光の反射方向を制御することが困難な場合がある。これに対してレーザ光照射面7aが平面であれば、レーザ光の照射位置が若干ずれたとしても反射光の進む方向はほとんど変わらないため、レーザ光が反射する方向を制御し易い。場合によっては反射光が当たる場所にレーザ光の吸収材を置くなどの対応が取り易くなる。
なお、レーザ光照射面7aがレーザ光の光軸に対して垂直である必要は必ずしもない。レーザ光照射面7aがレーザ光の光軸に対して垂直な場合、反射したレーザ光は半導体レーザ3の方向に戻るため、場合によっては半導体レーザ3にダメージを与える可能性もある。
また、ヘッドランプ1は、蛍光体が発した蛍光のみを含む照明光を出射する構成であってもよい。これにより、安全性の高い照明光を得ることができる。
或いは、ヘッドランプ1は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光と、蛍光体が発した蛍光とを混合した照明光を出射する構成であってもよい。すなわち、半導体レーザ3から発振されたレーザ光の一部を発光部7において波長変換せずに照明光として用いてもよい。これにより、レーザ光と蛍光との組み合わせを適宜選択することにより、所望の色彩の照明光を出射することができる。
(反射鏡8)
反射鏡8は、発光部7から放射された光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡8は、発光部7から放射された光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡8は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材である。
(透明板9)
透明板9は、反射鏡8の開口部8aを覆う透明または半透明の板である。本実施形態では、透明板9は、熱伝導部材13と共に、発光部7を固定するために用いられている。すなわち、発光部7を熱伝導部材13と透明板9とで挟持することで、発光部7を固定している。この場合、透明板9は、発光部7と熱伝導部材13との相対位置関係を固定する固定部として機能する。発光部7を熱伝導部材13と透明板9とで挟持することにより、間隙層15の接着力が弱い場合でも発光部7の位置をより確実に固定することができる。
透明板9としては、樹脂、ガラスなどの材料を用いることができる。なお、透明板9として熱伝導率の高い無機ガラス材料を用いれば高い放熱効果を得ることができるため、より好ましい。
また、ヘッドランプ1を蛍光体が発した蛍光のみを含む照明光を出射する構成とする場合、この透明板9は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光を遮断し、且つ、発光部7においてレーザ光を波長変換することにより生成された蛍光を透過する材質からなることが好ましい。このような構成では、発光部7によって、コヒーレントなレーザ光はそのほとんどが蛍光に変換されるか、発光部7に含まれる蛍光体によって散乱、拡散される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部が変換、散乱、拡散されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板9によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止することができる。
なお、発光部7を熱伝導部材13のみで固定する場合には、透明板9を省略することも可能である。
(ハウジング10)
ハウジング10は、ヘッドランプ1の本体を形成しており、反射鏡8などを収納している。光ファイバ5は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザアレイ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザアレイ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザアレイ2を効率よく冷却することが可能となる。したがって、半導体レーザアレイ2から発生する熱による、発光部7の特性劣化や熱的損傷などが防止される。
また、半導体レーザ3は、万一故障したときのことを考慮して、交換し易い位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザアレイ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
(エクステンション11)
エクステンション11は、反射鏡8の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ1の内部構造を隠して、ヘッドランプ1の見栄えをよくすると共に、反射鏡8と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡8と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
(レンズ12)
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している。発光部7が放射し、反射鏡8によって反射された照明光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
(熱伝導部材13)
熱伝導部材13は、発光部7において発生した熱を受け取る高い熱伝導率を有する部材であり、発光部7と熱的に(すなわち、熱エネルギーの授受が可能なように)接続されている。
熱伝導部材13は、板状の部材であり、その一方の端部が発光部7のレーザ光照射面7aと熱的に接触しており、他方の端部が冷却部14に熱的に接続されている。
図2に示されるように、本実施形態では、熱伝導部材13は、発光部7と対向する発光部対向面13aを有しており、発光部対向面13aに発光部7のレーザ光照射面7aが間隙層15によって接着されている。
熱伝導部材13は、このような形状および接続形態を有することで、微小な発光部7を発光部対向面13aの発光部固定位置で保持しつつ、発光部7から発生する熱をヘッドランプ1の外部に放熱する。
発光部7において発生した熱を効率よく伝導させるために、熱伝導部材13の熱伝導率は、20W/mK以上であることが好ましい。また、半導体レーザ3から発振されたレーザ光は、熱伝導部材13を透過して発光部7のレーザ光照射面7aに到達する。そのため、熱伝導部材13は、透光性の優れた材質からなるものであることが好ましい。
これらの点を考慮して、熱伝導部材13の材質としては、サファイア(Al2O3)やマグネシア(MgO)、窒化ガリウム(GaN)、スピネル(MgAl2O4)が好ましい。これらの材料を用いることにより、熱伝導率20W/mK以上の熱伝導部材13を実現することができる。
また、熱伝導部材13の厚みは、0.3mm以上、3.0mm以下が好ましい。0.3mmよりも薄いと発光部7の放熱を十分にできず、発光部7が劣化してしまう可能性がある。また、3.0mmを超えるような厚みにすると、照射されたレーザ光の熱伝導部材13における吸収が大きくなり、励起光の利用効率が顕著に下がる。
熱伝導部材13を適切な厚みで、間隙層15を介して発光部7に当接させることにより、特に発光部7での発熱が1Wを超えるような極めて強いレーザ光を照射しても、その発熱が迅速、且つ、効率的に放熱され、発光部7が損傷(劣化)してしまうことを防止することができる。
なお、熱伝導部材13は、折れ曲がりのない板状のものであってもよいし、折れ曲がった部分や湾曲した部分を有していてもよい。ただし、発光部7が接着される発光部対向面13aは、接着の安定性の観点から平面(板状)である方が好ましい。
(熱伝導部材13の変形例)
熱伝導部材13は、透光性を有する部分(透光部)と透光性を有さない部分(遮光部)とを有していてもよい。この構成の場合、透光部は熱伝導部材13と間隙層15との界面となる部分に配置され、遮光部はその外側に配置される。
遮光部は、金属(例えば、銅やアルミなど)の放熱パーツであってもよく、或いは、アルミや銀その他、照明光を反射させる効果のある膜が透光性部材の表面に形成された構成であってもよい。
(冷却部14)
冷却部14は、熱伝導部材13を冷却する部材であり、例えば、アルミや銅などの金属からなる熱伝導率の高い放熱ブロックである。なお、反射鏡8が金属で形成されるのであれば、反射鏡8が冷却部14を兼ねていてもよい。
または、冷却部14は、冷却液をその内部に循環させることによって熱伝導部材13を冷却する冷却装置であってもよく、或いは、風冷によって熱伝導部材13を冷却する冷却装置(ファン)であってもよい。
冷却部14を金属塊として実現する場合には、当該金属塊の上面に複数の放熱用のフィンを設けてもよい。この構成により、金属塊の表面積を増加させ、金属塊からの放熱をより効率よく行うことができる。
なお、この冷却部14はヘッドランプ1にとって必須なものではなく、熱伝導部材13は、発光部7から受け取った熱を熱伝導部材13の表面から自然に放熱させてもよい。しかしながら、冷却部14を設けることで、熱伝導部材13からの放熱を効率よく行うことができ、特に、発光部7からの発熱量が3W以上の場合に、冷却部14の設置が有効となる。
また、熱伝導部材13の長さを調整することにより、冷却部14を発光部7から離れた位置に設置することができる。この場合、図1に示されるような冷却部14がハウジング10に収納される構成に限らず、熱伝導部材13がハウジング10を貫くことにより、冷却部14をハウジング10の外部に設置することも可能となる。
これにより、冷却部14が故障した場合に修理または交換し易い位置に設置することができると共に、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。
(間隙層15)
間隙層15は、熱伝導部材13と発光部7との間の隙間を埋める接着剤の層である。発光部7の表面には微視的凹凸がある。この凹凸の原因の一つは発光部7に含まれる蛍光体粒子である。発光部7には、通常、平均粒径が1μm以上30μm以下の蛍光体が含まれる。例えば、サファイアからなる研磨された熱伝導部材13の表面に発光部7を当接させれば、この発光部7の表面の凹凸に起因した比較的大きな隙間が生じる。そこで、熱伝導部材13と発光部7との間に間隙層15を設けることにより、この隙間を埋めることができる。
これにより、熱伝導部材13と発光部7との接触面積が実質的に増加するため、熱伝導部材13の熱吸収効率を高めることができる。このとき、間隙層15が、発光部7と同等か、それよりも高い熱伝導率を有していれば、熱伝導部材13の熱吸収効率をさらに高めることができる。
ここで、本実施形態に係るヘッドランプ1では、発光部7において発生した熱を律速させることなく、熱伝導部材13へ伝導させるために、間隙層15は無機非晶質材料を主成分として含んでいる。
無機非晶質材料は、非晶質(アモルファス)構造の無機材料であり、例えば、無機ガラスなどが挙げられる。無機ガラスとしては、例えば、SiO2、P2O5、GeO2、AS2O3、B2O3と、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物などの酸化物とからなるものを用いることができる。
このように、間隙層15を無機非晶質材料で形成することにより、例えば、樹脂などの有機材料で間隙層15を構成した場合に比べて、間隙層15の熱抵抗を10分の1程度にすることができる。このため、発光部7において発生した熱を律速させることなく、熱伝導部材13へ伝導することが可能となる。
したがって、発光部7において発生した熱を効率よく放熱することができると共に、発光部7に含まれる蛍光体の発光効率の低下を防止して、発光部7の劣化を抑制することができる。
また、無機非晶質材料は、有機材料に比べて耐熱温度が高いため、発光部7がより高温になった場合でも、発光部7において発生した熱を、熱伝導部材13へ伝導させる機能を維持することが可能である。このため、ヘッドランプ1の高温環境下における信頼性を向上させることができる。
さらに、無機非晶質材料を用いることにより、例えば、無機結晶材料で間隙層15を形成した場合に比べて、可視光の波長領域における透光性を確保した間隙層15の材料の選択肢の幅が広がると共に、結晶間の粒界による励起光、或いは蛍光の拡散が生じ難くなる。このため、最適な材料を適宜選択して、用途に応じた特性および高い光の利用効率を有する間隙層15を形成することができる。
ここで、間隙層15は、有機バインダを含んでいることが好ましい。間隙層15が有機バインダを含むことにより、発光部7の表面や発光部対向面13aの微細な凹凸にまで、無機非晶質材料、或いは、有機バインダを埋め込むことが可能となる。
これにより、間隙層15と発光部7との界面、および間隙層15と熱伝導部材13との界面における熱伝導率を向上させることができるので、間隙層15によって、発光部7において発生した熱を、より効率的に熱伝導部材13へ伝導させることができる。
この場合、間隙層15における、無機非晶質材料と有機バインダとの体積比率は、60:40から99.99:0.01の範囲にあることが好ましい。
無機非晶質材料と有機バインダとの体積比率を、60:40から99.99:0.01の範囲にすることで、間隙層15の熱伝導率を向上させることができるため、発光部7において発生した熱を、より効率的に熱伝導部材13へ伝導させることができる。
なお、有機バインダの種類は特に限定されないが、本実施形態のように、熱伝導部材13から発光部7へ向かう向きで、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を発光部7に照射する構成である場合には、透過率の高い有機バインダを使用することが好ましい。
具体的には、有機バインダとして、低分子量のアクリル樹脂をα−タービネオールに5%溶解させたもの、またはブチルメタクリレート、トルエン、ジブチルフタレートを混合したものなどを用いることができる。
また、間隙層15の熱膨張率は、発光部7の熱膨張率と熱伝導部材13の熱膨張率との間の範囲に含まれることが好ましい。間隙層15の熱膨張率を、発光部7の熱膨張率と熱伝導部材13の熱膨張率との間の範囲に含まれる値とすることにより、間隙層15と発光部7との熱膨張率差、および、間隙層15と熱伝導部材13との熱膨張率差を、いずれをも発光部7と熱伝導部材13との熱膨張率差よりも小さくすることができる。
このため、発光部7において発生した熱により、間隙層15、発光部7および熱伝導部材13が各々の熱膨張率に応じて熱膨張をした場合でも、間隙層15と発光部7との界面、および、間隙層15と熱伝導部材13との界面における熱膨張量の差を小さくすることができる。したがって、各界面における熱膨張量の差に起因する機械的ストレスが低減されるので、ヘッドランプ1の実装信頼性を高めることができる。
また、間隙層15の屈折率は、発光部7の屈折率と熱伝導部材13の屈折率との間の範囲に含まれることが好ましい。間隙層15の屈折率を、発光部7の屈折率と熱伝導部材13の屈折率との間の範囲に含まれる値とすることにより、間隙層15と発光部7との屈折率差、および、間隙層15と熱伝導部材13との屈折率差のいずれも発光部7と熱伝導部材13との屈折率差よりも小さくすることができる。
これにより、発光部7に含まれる蛍光体の励起に利用されないレーザ光の割合を減らして、レーザ光の利用効率を高めることができる。
また、間隙層15は、発光部7と対向する面の少なくとも一部の領域で、発光部7と接触していることが好ましい。
これにより、発光部7と間隙層15との界面における接触面積を最大限の大きさとすることができるので、発光部7において発生した熱を、効率よく熱伝導部材13へ伝導させることができる。
また、間隙層15の厚みは、1μm以上、1mm以下であることが好ましい。間隙層15を薄くすれば、厚い場合に比べて、発光部7において発生した熱を、効率よく熱伝導部材13へ伝導することができるが、間隙層15を薄くし過ぎると、間隙層15の膜厚にムラが生じるので、結果として、間隙層15の特性(例えば、熱伝導性など)が低下してしまう。
例えば、無機ガラスを用いて厚みが1μm未満の間隙層15を形成する場合、粒径が1μmよりも小さい無機ガラスの微粒子を用いる必要があるが、粒径が1μmよりも小さいサイズのものを高精度に制御して製造することは困難である。このため、間隙層15の厚みを1μmよりも小さくした場合、間隙層15の膜厚にムラができ、間隙層15の特性が低下してしまう。
また、粒径が1μmより小さい無機ガラスの微粒子は、製造プロセスにおいて不純物が混入し易く、このような不純物を含む無機ガラスの微粒子を用いて間隙層15を形成した場合、間隙層15の透光性が低下してしまう。
一方、間隙層15の厚みが1mmを超える場合、間隙層15の熱抵抗が大きくなるため、発光部7において発生した熱を、間隙層15を介して効率的に熱伝導部材13へ伝導することができなくなる。その結果、発光部7の発光効率の低下や、発光部7の過度の温度上昇に伴う発光部7および間隙層15の劣化を招く。
具体的には、一般的な蛍光体の発光効率は最大でも90%程度であるため、発光部7に10Wのレーザ光が照射されたと仮定すると、少なくとも10W×10%=1Wのレーザ光は蛍光体によって蛍光に変換されずに熱に変換される。したがって、発光部7から1Wの熱が発生する。
このとき、発光部7から発生した熱は、間隙層15から熱伝導部材13へほぼすべてが伝わるため、間隙層15に約1Wの熱量が伝導する。
一般的に、無機(低融点)ガラスの許容温度は300℃程度であるため、室温を30℃とした場合、間隙層15に許容される温度上昇は300℃−30℃=270℃となる。したがって、間隙層15の熱抵抗は、270℃÷1W=270K/W以下である必要がある。
ここで、物体における熱抵抗は、熱抵抗=(1/熱伝導率)×(熱伝導距離/熱源と接している面積)の計算式で表される。一般的なヘッドランプとして適切な発光部7のレーザ光照射面7aの面積は例えば4mm2程度であり、また、ガラスの熱伝導率は1W/mK程度であるため、これらの数値を計算式に代入して「熱伝導距離」を算出すると、
(熱伝導距離)=(熱抵抗)×(熱伝導率)×(熱源と接している面積)
=270K/W×1W/mK×4mm2
≒1mm
となる。
したがって、間隙層15の厚みが1mmを超えると、間隙層15の熱抵抗が大きくなると共に、間隙層15が劣化(溶融、結晶化)し、接着機能が低下する。このため、熱伝導部材13から発光部7が剥がれ落ち、或いは、間隙層15の結晶化による失透が生じて励起光を透過させることができなくなり、所望の照明光が得られなくなる。
以上の理由から、間隙層15の厚みは、1μm以上、1mm以下とすることが好ましい。
なお、間隙層15を有機材料であるアクリル樹脂で形成した場合、熱抵抗の低い間隙層15を実現するためには、間隙層15の厚みを0.1mm未満にする必要がある。これに対して、間隙層15を無機ガラスで形成すれば、同じ熱抵抗を有する間隙層15の厚みを1mmとすることが可能である。したがって、間隙層15を容易に形成することができ、また、構造設計が容易になるので開発コストを低減することができる、
(半導体レーザ3の構成)
次に、半導体レーザ3の基本構造について説明する。図3(a)は、半導体レーザ3の回路を示す模式図であり、図3(b)は、半導体レーザ3の基本構造を示す斜視図である。図3(a)および図3(b)に示されるように、半導体レーザ3は、カソード電極23、基板22、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極21がこの順に積層された構成である。
基板22は、半導体基板であり、蛍光体を励起するための青色〜紫外の励起光を得る場合、GaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiCなどのIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnOなどのII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2およびCeO2などの酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
アノード電極21は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
カソード電極23は、基板22の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極21・カソード電極23に順方向バイアスをかけて行う。
活性層111は、クラッド層113およびクラッド層112で挟まれた構造になっている。
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る場合、AlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としてもよい。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnOなどのII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112およびクラッド層113との屈折率差により、発した光が活性層111内に閉じ込められる。
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示省略)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、およびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnOなどのII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極21およびカソード電極23に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
(発光部7の発光原理)
次に、半導体レーザ3から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
まず、半導体レーザ3から発振されたレーザ光が発光部7に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色などで構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
(ヘッドランプ1の製造方法)
次に、ヘッドランプ1の製造方法について、図4を参照して説明する。なお、ヘッドランプ1の製造方法に含まれる工程のうち、間隙層15を形成する工程以外の工程については、公知の技術を適用することが可能である。このため、以下では、間隙層15を形成する間隙層形成工程(間隙層形成ステップ)について説明し、その他の工程についての説明は省略する。
図4は、間隙層15を形成する間隙層形成工程の流れを示すフローチャートである。図4に示されるように、間隙層形成工程は、調製ステップS1と、塗布ステップS2と、加熱ステップS3とを含んでいる。
(調製ステップS1)
調製ステップS1は、無機非晶質材料からなる微粒子(粉末)を含むペースト状の接着剤を調製するステップである。本実施形態では、無機非晶質材料として無機ガラスの微粒子を含むガラスペースト接着剤の調製方法について説明する。
ガラスペースト接着剤は、例えば、無機ガラスの微粒子(例えば、粒径が約1μm、屈折率が1.76)を有機バインダに分散させることで調製することができる。
このように、ガラスペースト接着剤を有機バインダに分散させることにより、ガラスペースト接着剤を塗布する際、発光部7の表面や発光部対向面13aの微細な凹凸にまで無機ガラスの微粒子、或いは、有機バインダを埋め込むことが可能となる。これにより、発光部7と間隙層15との界面における熱伝導性を高めることができるので、より効率的に発光部7において発生した熱を熱伝導部材へ伝導させる間隙層15を形成することができる。
(塗布ステップS2)
塗布ステップS2は、調製ステップS1において調製したガラスペースト接着剤を、熱伝導部材13の発光部対向面13aに塗布するステップである。
ガラスペースト接着剤を塗布する方法には各種の方法を用いることができるが、特に、スクリーン印刷でガラスペースト接着剤を塗布することが好ましい。
スクリーン印刷でガラスペースト接着剤を塗布することにより、ガラスペースト接着剤の厚みを精度よく制御することが可能となる。これにより、厚みの均一な薄い間隙層15を高精度に形成することが可能となる。
このように、ガラスペースト接着剤を薄く塗布することで、形成される間隙層15の熱抵抗を低下させることが可能となる。これにより、発光部7において発生した熱を、効率よく熱伝導部材13へ伝導することができる間隙層15を形成することが可能となる。
なお、ガラスペースト接着剤は、発光部7および発光部対向面13aの少なくとも一方に塗布すればよい。
(加熱ステップS3)
加熱ステップS3は、塗布ステップS2において塗布したガラスペースト接着剤に発光部7を張り合わせ、加熱することによって間隙層15を形成するステップである。これにより、熱伝導部材13と発光部7とを間隙層15によって接着させることができる。
なお、この加熱ステップS3では、加熱(200℃以上、700℃以下程度)時に有機バインダが蒸発、若しくは分解する。このため、加熱時間または加熱温度を制御することにより、形成される間隙層15に残存する有機系のバインダの割合を制御することができる。
このように、間隙層形成工程によれば、厚みの均一な薄い間隙層15を、高精度に形成することができる。
(ヘッドランプ1の効果)
以上のように、本実施形態に係るヘッドランプ1は、レーザ光を発振する半導体レーザ3と、半導体レーザ3から発振されたレーザ光により発光する発光部7と、発光部7と対向する発光部対向面13aを有し、発光部対向面13aを通して発光部7において発生した熱を受け取る熱伝導部材13と、発光部7と発光部対向面13aとの間に設けられ、且つ、発光部7において発生した熱を発光部対向面13aに伝導させる間隙層15とを備え、間隙層15は、無機非晶質材料を含んでいる。
間隙層15を無機非晶質材料で形成することにより、例えば、樹脂などの有機材料で間隙層15を形成した場合に比べて、間隙層15の熱抵抗を10分の1程度にすることができる。このため、発光部7において発生した熱を律速させることなく、熱伝導部材13へ伝導することが可能となる。
したがって、発光部7において発生した熱を効率よく放熱することができると共に、発光部7に含まれる蛍光体の発光効率の低下を防止して、発光部7の劣化を抑制することができる。
それゆえ、本実施形態によれば、発光部7において発生した熱を効率よく放熱することができるヘッドランプ1を提供することができる。
〔実施形態2〕
本発明の別の実施形態について図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、熱伝導部材13と共に発光部7を挟持する部材の別の例について説明する。
(ヘッドランプ30の構成)
図5は、本実施形態のヘッドランプ30の構成を示す断面図である。図5に示されるように、ヘッドランプ30は、透明板18と、金属リング19と、反射鏡81と、基板82と、ネジ83とを備えている。このヘッドランプ30では、発光部7は、熱伝導部材13と透明板18とによって挟持されている。
反射鏡81は、反射鏡8と同様の機能を有するものであるが、その焦点位置近傍で、光軸に対して垂直な平面によって切断された形状を有している。反射鏡81の材質については特に限定されないが、反射率を考慮すると、銅やSUS(ステンレス鋼)を用いて反射鏡を作製した後、銀メッキおよびクロメートコートなどを施すことが好ましい。その他、反射鏡81を、アルミニウムを用いて作製し、酸化防止膜を表面に付与してもよく、或いは、樹脂性の反射鏡本体の表面に金属薄膜を形成してもよい。
金属リング19は、反射鏡81が完全な反射鏡であった場合の、焦点位置近傍の形状を有するすり鉢形状のリングであり、すり鉢の底部が開口した形状を有している。この底部の開口部に発光部7が配置されている。
金属リング19における、すり鉢形状の部分の表面は、反射鏡として機能し、金属リング19と反射鏡81とを組み合わせることで完全な形状の反射鏡が形成される。それゆえ、金属リング19は、反射鏡の一部として機能する部分反射鏡であり、反射鏡81を第1部分反射鏡と称する場合、焦点位置近傍の部分を有する第2部分反射鏡と称することができる。発光部7から出射された蛍光の一部は、金属リング19の表面で反射し、照明光としてヘッドランプ30の前方へ出射される。
金属リング19の材質は特に限定されないが、放熱性を考慮すると銀、銅、アルミニウムなどが好ましい。金属リング19が銀やアルミニウムの場合は、すり鉢部を鏡面に仕上げた後、黒ずみや酸化防止のための保護層(クロメートコートや樹脂層など)を設けることが好ましい。また、金属リング19が銅の場合は、銀メッキ、或いはアルミニウム蒸着後、前述の保護層を設けることが好ましい。
発光部7は、間隙層15(図5では図示省略)によって熱伝導部材13に接着されており、金属リング19も熱伝導部材13に当接している。金属リング19が熱伝導部材13に当接することにより、熱伝導部材13を冷却する効果が得られる。すなわち、金属リング19は、熱伝導部材13の冷却部としても機能する。
金属リング19と反射鏡81との間には透明板18が挟持されている。この透明板18は、発光部7のレーザ光照射面7aとは反対側の面と接しており、発光部7が熱伝導部材13から剥がれないように抑えつける役割を有している。金属リング19におけるすり鉢形状の部分の深さは、発光部7の高さとほぼ一致しているため、透明板18と熱伝導部材13との間の距離が一定に保たれた状態で、透明板18が発光部7に接している。そのため、熱伝導部材13と透明板18とによって挟持されることにより発光部7が押しつぶされることはない。
透明板18は、少なくとも透光性を有するものであればどのような材質のものでもよいが、発光部7が透明板18に接している、若しくは熱伝導部材13が透明板18に接している場合は、熱伝導部材13と同様に熱伝導率が高いもの(20W/mK以上)が好ましい。例えば、透明板18はサファイア、窒化ガリウム、マグネシアまたはダイヤモンドを含んでいることが好ましい。この場合、透明板18は、発光部7よりも高い熱伝導率を有しており、発光部7において発生した熱を効率よく吸収することによって、発光部7の熱を放熱することができる。
熱伝導部材13および透明板18の厚みは、0.3mm以上、3.0mm以下程度であることが好ましい。上記厚みが0.3mm以下になると発光部7と金属リング19とを挟みこんで固定する強度が得られず、3.0mm以上になるとレーザ光の吸収を無視できなくなると共に、部材コストが上昇してしまう。
基板82は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光を通す開口部82aを有する板状の部材であり、この基板82に対して反射鏡81がネジ83によって固定されている。反射鏡81と基板82との間には熱伝導部材13、金属リング19および透明板18が配置されており、開口部82aの中心と金属リング19における底部の開口部の中心とはほぼ一致している。そのため、半導体レーザ3から発振されたレーザ光は、基板82の開口部82aを通って、熱伝導部材13を透過し、金属リング19の開口部を通って発光部7に到達する。
基板82の材質は特に限定されないが、熱伝導率の高い金属を用いることで、基板82を、熱伝導部材13に伝わった熱を放熱する放熱部として機能させることができる。熱伝導部材13は、基板82に全面的に接しているため、基板82を鉄、銅などの金属にすることで熱伝導部材13の放熱効果、しいては発光部7の放熱効果を高めることができる。
また、基板82はこのような形態に限定されない。例えば、基板82による放熱効果をより高めるために、基板82は冷却システムを有していてもよい。この冷却システムの一例としては、水を循環させることによる水冷システムを挙げることができる。この場合、基板82に冷却用の水を流すための流路を設けて水を循環させてもよく、基板82が水冷システムユニットに熱的に接続されていてもよい。さらに、冷却システムは水を用いた水冷システムに限られず、水に代替する溶媒として水以外の液体を用いてもよく、ガスなどを用いてもよい。
なお、金属リング19を、熱伝導部材13に対して確実に固定することが好ましい。基板82と反射鏡81とをネジ83によって固定することによって生じる圧力によって金属リング19を熱伝導部材13に対してある程度固定できる。しかし、金属リング19を接着剤で熱伝導部材13に接着する、熱伝導部材13を挟んで金属リング19を基板82にネジ止めするなどの方法により、確実に金属リング19を固定することで、金属リング19が動くことによって発光部7が剥離するという危険性を回避できる。
また、金属リング19は、上述の部分反射鏡としての機能を有し、且つ、反射鏡81と基板82とをネジ83で固定するときの圧力に耐えられるものであればよく、必ずしも金属である必要はない。例えば、金属リング19の代用となる部材は、上記圧力に耐えられる樹脂性リングの表面に金属薄膜が形成されているものであってもよい。
(ヘッドランプ30の効果)
ヘッドランプ30では、発光部7は、熱伝導部材13と透明板18とによって挟持されることにより、発光部7と熱伝導部材13との相対位置関係が固定される。それゆえ、間隙層15の粘着性が低い場合や、発光部7と熱伝導部材13との間に熱膨張率の差が生じた場合でも、発光部7が熱伝導部材13から剥離することを防止できる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について図6〜図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
ここでは、本発明に係る照明装置の一例としてのレーザダウンライト200について説明する。レーザダウンライト200は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ3から発振されたレーザ光を発光部7に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
なお、レーザダウンライト200と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
図6は、発光ユニット210および従来のLEDダウンライト300の外観を示す斜視図である。また、図7は、レーザダウンライト200が設置された天井の断面図であり、図8は、レーザダウンライト200の断面図である。
図6〜図8に示されるように、レーザダウンライト200は、天板400に埋設され、照明光を出射する発光ユニット210と、光ファイバ5を介して発光ユニット210へレーザ光を供給するLD光源ユニット220とを含んでいる。LD光源ユニット220は、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このようにLD光源ユニット220の位置を自由に決定できるのは、LD光源ユニット220と発光ユニット210とが光ファイバ5によって接続されているからである。この光ファイバ5は、天板400と断熱材401との間の隙間に配置されている。
(発光ユニット210の構成)
発光ユニット210は、図8に示されるように、筐体211、光ファイバ5、発光部7、熱伝導部材13および透光板213を備えている。発光部7は、間隙層15によって熱伝導部材13に接着されている。上述の実施形態と同様に、発光部7の熱が熱伝導部材13に伝わることで発光部7において発生した熱が効率よく放熱される。
筐体211には、凹部212が形成されており、この凹部212の底面に発光部7が配置されている。凹部212の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部212は反射鏡として機能する。
また、筐体211には、光ファイバ5を通すための通路214が形成されており、この通路214を通って光ファイバ5が熱伝導部材13まで延びている。光ファイバ5の出射端部5aから出射されたレーザ光は、熱伝導部材13および間隙層15を透過して発光部7に到達する。
透光板213は、凹部212の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板213は、透明板9と同様の機能を有するものであり、発光部7の蛍光は、透光板213を透して照明光として出射される。透光板213は、筐体211に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
図6では、発光ユニット210は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット210の形状(より厳密には、筐体211の形状)は特に限定されない。
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光部7の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
(LD光源ユニット220の構成)
LD光源ユニット220は、半導体レーザ3、非球面レンズ4および光ファイバ5を備えている。
光ファイバ5の一方の端部である入射端部5bは、LD光源ユニット220に接続されており、半導体レーザ3から発振されたレーザ光は、非球面レンズ4を介して光ファイバ5の入射端部5bに入射される。
図8に示されるLD光源ユニット220の内部には、半導体レーザ3および非球面レンズ4が一対のみ示されているが、発光ユニット210が複数存在する場合には、発光ユニット210からそれぞれ延びる光ファイバ5の束を1つのLD光源ユニット220に導いてもよい。この場合、1つのLD光源ユニット220に複数の半導体レーザ3と非球面レンズ4との対が収納されることになり、LD光源ユニット220は集中電源ボックスとして機能する。
(レーザダウンライト200の設置方法の変形例)
図9は、レーザダウンライト200の設置方法の変形例を示す断面図である。図9に示されるように、レーザダウンライト200の設置方法の変形例として、天板400には光ファイバ5を通す小さな穴402だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体(発光ユニット210)を天板400に貼り付けるということもできる。この場合、レーザダウンライト200の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
この構成では、熱伝導部材13は、筐体211の底部に、レーザ光入射側の面を全面的に当接させて配置されている。それゆえ、筐体211を熱伝導率の高い物質からなるものにすることによって、熱伝導部材13に伝わった熱を放熱する放熱部として筐体211を機能させることができる。
(レーザダウンライト200と従来のLEDダウンライト300との比較)
従来のLEDダウンライト300は、図6に示されるように、複数の透光板301を備えており、各透光板301からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト300において発光点は複数存在している。LEDダウンライト300において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
これに対して、レーザダウンライト200は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、発光部7の蛍光体を高演色蛍光体(例えば、数種類の酸窒化物蛍光体の組み合わせ)にすることにより、照明光の演色性を高めることができる。
これにより、白熱電球ダウンライトに迫る高演色を実現することができる。例えば、平均演色評価数Raが90以上のみならず、特殊演色評価数R9も95以上というLEDダウンライトや蛍光灯ダウンライトでは実現が難しい高演色光も高演色蛍光体と半導体レーザ3の組み合わせにより実現可能である。
図10は、LEDダウンライト300が設置された天井の断面図である。図10に示されるように、LEDダウンライト300では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体302が天板400に埋設されている。筐体302は比較的大きなものであり、筐体302が配置されている部分の断熱材401には、筐体302の形状に沿った凹部が形成される。筐体302から電源ライン303が延びており、この電源ライン303はコンセント(図示省略)につながっている。
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板400と断熱材401との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト300を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
また、LEDダウンライト300では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
また、筐体302は比較的大きなものであるため、天板400と断熱材401との間の隙間にLEDダウンライト300を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
これに対して、レーザダウンライト200では、発光ユニット210には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
また、発光ユニット210ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト200を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト200を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
また、レーザダウンライト200は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット210を天板400の表面に設置することができ、LEDダウンライト300よりも設置に係る制約を小さくすることができると共に、工事費用を大幅に削減できる。
図11は、レーザダウンライト200およびLEDダウンライト300のスペックを比較するための表である。図11に示されるように、レーザダウンライト200は、その一例では、LEDダウンライト300に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
また、LD光源ユニット220をユーザの手が容易に届く所に設置できるため、半導体レーザ3が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ3を交換できる。また、複数の発光ユニット210から延びる光ファイバ5を1つのLD光源ユニット220に導くことにより、複数の半導体レーザ3を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ3を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
なお、LEDダウンライト300において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト200で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト300の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト200では、LEDダウンライト300と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
以上のように、レーザダウンライト200は、レーザ光を出射する半導体レーザ3を少なくとも1つ備えるLD光源ユニット220と、発光部7および反射鏡としての凹部212を備える少なくとも1つの発光ユニット210と、発光ユニット210のそれぞれへ上記レーザ光を導く光ファイバ5とを含んでいる。
(変形例)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、励起光源として高出力のLEDを用いてもよい。この場合には、450nmの波長の光(青色)を出射するLEDと、黄色の蛍光体、または緑色および赤色の蛍光体とを組み合わせることにより白色光を出射する発光装置を実現できる。
また、励起光源として高出力のLEDを用いた場合、間隙層15と発光部7との屈折率の差は、0.3以上であることが好ましい。
これにより、発光部7から熱伝導部材13へ向かう向きで、LEDから出射された励起光を発光部7に照射する場合、発光部7を透過し発光部7と間隙層15の界面まで到達した励起光の、当該界面における反射率を高くすることができる。よって、発光部7に含まれる蛍光体の励起に使用されず、当該界面にまで到達した励起光が、発光部7と間隙層15との界面で反射して再度発光部7の内部に戻るため、発光部7に含まれる蛍光体を励起する光の割合が高くなる。
したがって、同じ励起光の出力でも励起光の利用効率を高くすることが可能となるので、発光部7からより多くの発光を得ることができる。
また、励起光源として、半導体レーザ以外の固体レーザを用いてもよい。ただし、半導体レーザを用いる方が、励起光源を小型化できるため好ましい。
(補足)
なお、本発明は、以下のように表現することができる。すなわち、本発明に係る発光装置は、励起光を出射する励起光源と、上記励起光源から出射された励起光により発光する発光部と、上記発光部と対向する発光部対向面を有し、当該発光部対向面を通して上記発光部の熱を受け取る熱伝導部材と、上記発光部と上記発光部対向面との間の隙間を埋め、且つ、上記発光部の熱を上記発光部対向面に伝導させる間隙層と、を備え、上記間隙層は、無機非晶質を主たる構成要素とする無機非晶質層であることを特徴としている。
無機非晶質材料は、樹脂などの有機材料に比べて、熱伝導率および耐熱温度が高いため、間隙層に無機非晶質材料を含めることにより、発光部において発生した熱を効率よく放熱することができると共に、発光部に含まれる蛍光体の発光効率の低下を防止して、発光部の劣化を抑制することができる。また、高温環境下における発光装置の信頼性を向上させることができる。
さらに、無機非晶質材料を用いることにより、無機結晶材料で間隙層を形成した場合に比べて、可視光の波長領域における透光性を確保した間隙層の材料の選択肢の幅が広がると共に、結晶粒子同士の粒界による励起光、或いは蛍光の拡散が生じ難くなるため、最適な材料を適宜選択して、用途に応じた特性および高い光の利用効率を有する間隙層を形成することができる。
また、本発明に係る発光装置では、上記間隙層は有機バインダを含むことが好ましい。
また、本発明に係る発光装置では、上記励起光源はレーザであり、上記励起光源から放射された励起光の一部が発光部を透過した光と、上記発光部の発光とから上記発光装置の照明光が得られる構成の場合、上記間隙層の屈折率は、上記発光部の屈折率と上記熱伝導部材の屈折率との間の範囲に含まれることが好ましい。
また、本発明に係る発光装置では、上記励起光源はLEDであり、上記励起光源から放射された励起光の一部が上記発光部で反射または散乱した光と、上記発光部の発光とから上記発光装置の照明光が得られる構成であって、上記間隙層と上記発光部との屈折率差が0.3以上であることが好ましい。
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部と上記間隙層との界面の上記間隙層側の面積は、上記発光部と上記間隙層との界面の上記発光部側の面積以上であることが好ましい。
また、本発明に係る発光装置では、上記発光部は酸窒化物蛍光体、若しくは窒化物蛍光体の少なくとも1つを構成要素として有していることが好ましい。
また、本発明に係る発光装置の製造方法は、上記励起光を出射する励起光源と、上記励起光により発光する上記発光部と、上記発光部の熱を受け取る上記熱伝導部材と、上記発光部と上記発光部対向面との間の隙間を埋め、且つ、上記発光部の熱を上記発光部対応面に律速させることなく伝導させる間隙層とを備える発光装置の製造方法であって、無機非晶質の材料をスクリーン印刷によって塗布する工程を有することを特徴としている。