以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
A.第一の実施形態
A−1.プローブの全体構成
図1は、本発明の第一の実施形態によるプローブ10の構成を説明するための図であり、(a)は、本発明の一実施形態によるプローブ10の断面図、(b)は、プローブ10の端部に設けられたプローブ10の接触端面(以下、測定端面という)36の平面図、(c)は、プローブ10の全体外観図である。プローブ10は、オペレータの手で把持可能に形成された本体ケーシング12に収容されたプローブ本体部20と、本体ケーシング12の先頭部分に設けられたセンサケーシング14に収容されたセンサ部30とから構成される。尚、図1(a)は、同図(c)のX−X’ラインに沿って垂直に切り取ったときの部分断面図であり、同図(c)においてセンサ部30は点線で示されている。
センサ部の構成
センサ部30は、皮膚の水分量測定のための水分量センサと皮膚の弾力測定のための弾性センサ50と、これらのセンサを囲むように配置された円柱状のスリーブ34と、スリーブ34の端部に配設されてスリーブ34の底面を形成する測定端面36と、押圧検出器58を備える。スリーブ34と弾力センサ50は、それぞれ、弾性部材(本実施形態ではスプリングすなわちバネ)62と60によって本体ケーシング12に結合されている。
測定端面36には、図1(b)に示すように、その中央部に、弾力センサ50の先端部が測定端面36を介してスリーブ34内外に移動できるようにするための開口部54が設けられている。
水分量センサは、皮膚の直流及び交流導電度を測定するための一対の電極37及び38から構成され、電極37は、環状電極として測定端面36の円周部に配設されており、電極38は弾力センサ50と兼用されている。ここで、図7は、従来技術によるプローブの測定端面の平面図の一例を示すものであるが、図1(b)に示す本実施形態の構成によれば、図7に示す水分量測定用の電極一個分のスペースを節約できることから、その分、測定端面36を小さくできることがわかる。
弾力センサ50は、振動子51、振動子51の先端部に設けられて上記のように電極38としても機能する接触子52、及び振動検出素子53から構成され、振動検出素子53によって検出された振動子51の周波数に基づいて皮膚の弾力が測定される。本実施形態では、接触子52が設けられた弾力センサ50の先端部分は、弾力センサ50が皮膚に対して押圧されていない状態では、図1(a)に示すように開口部54から突出している。
弾力センサ50の後端部は、スプリング60を介して、スリーブ面(スリーブの上面)に設けられた開口部からスリーブ34内外に可動自在に本体ケーシング12に連結されている。これによって、弾力センサ50を皮膚に対して弾性的に押圧すると共に、接触子52もまた、測定端面36の開口部54を介してスリーブ34内外に可動自在とされている。
本体ケーシング12とスリーブ34とは、スリーブ34の上面に対向する本体ケーシング12の所定の位置に設けられたリング状のスプリング62で連結されており、このスプリングによって、スリーブ34、それゆえ測定端面36を皮膚に対して弾性的に押圧できるようになっている。したがって、接触子52と測定端面36を皮膚に当接させつつスリーブ34への押圧力を増すと、スプリング60及び62が縮むとともに、スリーブ34がセンサケーシング14内を本体ケーシング12に向かって(すなわち、図1(a)の矢印で示すZ方向に)移動する。
押圧検出器58は、測定端面36が所定の押圧力で皮膚に押し当てられていることを示す信号を後述の測定制御部230に送るものである。本実施形態では、押圧検出器58は本体ケーシング12の所定の位置に配置された機械式スイッチであり、測定端面36が皮膚に接触していないときは、図3(a)に示すように、押圧検出器58のスイッチは開いたままであるが、測定端面36が所定の押圧力で皮膚に押し当てられているときには、スリーブ34の上面が本体ケーシング12に接近することにより、同図(b)に示すように押圧検出器58のスイッチが閉じるように構成されている。
尚、参照番号300で示されているプローブ本体部20内のブロックは、後述の水分量データ測定回路及び弾力データ測定回路(それぞれ、図2の210及び220)である。
プローブ本体部の構成
図2は、プローブ10の機能ブロック図であり、プローブ10は、水分量データ測定回路210とセンサ部30内の水分量センサからなる後述の水分量データ測定手段(図4の400及び図5の500)、弾力データ測定回路220とセンサ部30内の弾力センサからなる後述の弾力データ測定手段(図6の600)、及び測定制御部230から構成される。プローブ本体部20は、水分量データ測定回路210、弾力データ測定回路220及び測定制御部230を備える。
水分量データ測定回路210及び弾力データ測定回路220の具体的構成については後述するので、ここでは、測定制御部230の構成及び機能について説明する。
測定制御部230は、CPU(中央演算処理装置)231及び内部メモリ232を備え、水分量データ測定回路210及び弾力データ測定回路220の動作の制御やそれらの測定回路からのデータの処理を行う。また、測定制御部230は、オペレータからの入力を受け付けるための入力部233、オペレータに動作状況を通知するための出力部234、及び、外部装置(PC等)との通信を行うためのI/F部235を備える。本実施形態では、入力部233としては、測定スイッチ、出力部234としては、測定中ランプ、発汗検知ランプ、及び測定エラーランプ(いずれもLED(発光ダイオード))がある。
測定制御部230は、水分量データ測定手段によって測定された直流導電度、交流導電度をそれぞれ、発汗値、水分値として内部メモリ232に格納する。また、弾力センサ50が皮膚に接触する前と皮膚に接触しているときに、弾力データ測定手段によってそれぞれ測定された振動周波数の差を計算して、この差を弾力値として内部メモリ232に格納する。
プローブ10は、不図示の係合機構によって外部の装置と電気的・物理的に接続可能なI/F部235を介して外部のデータ処理装置240と通信可能であり、データ処理装置240は、所定の肌診断ソフトにより、プローブから送信されたデータに対して肌診断のための所定の処理を行い、その結果を表示装置250に表示したり、プローブ10に戻したりできるものである。データ処理装置240は、パーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータシステムで構築することができる。
I/F部235の通信規格として、たとえば、USB(Universal Serial Bus)を採用することができ、この場合は、プローブ10は、USBケーブルを接続する為のコネクタを係合機構として備える。I/F部235は、かかる接続ケーブルを要するUSB I/Fのようなものに限定されるものではなく、赤外線通信を用いるものであってもよい。
A−2.プローブを皮膚に押し当てて測定を開始するまでのプローブの動作
次に、測定端面36を適切な押圧力で皮膚に押し当てて、各測定手段によるデータ測定が可能になるまでのプローブ10の動作を図1及び図3を参照して説明する。
オペレータは、先ず、プローブ10を測定可能状態にするために不図示の測定スイッチをオンにする。次にオペレータが、測定端面36を皮膚に近付けていくと、先ず、接触子52が皮膚に当接する。その状態でプローブ10の測定端面36を皮膚に押圧すると、それに応じてスプリング60が圧縮され、接触子52はスリーブ34内に埋没する方向に移動する。さらに押圧力を加えていくと、接触子52の先端が測定端面36と同一平面をなした時点で測定端面36が皮膚に当接し、今度は、スプリング60と共にスプリング62が圧縮されることによって、接触子52と測定端面36が共に皮膚に接触した状態で、スリーブ34の上面が本体ケーシング12に向かって移動する。
測定端面36への押圧力が所定の大きさに達すると、スリーブ34の上面が押圧検出器58のスイッチ端子を押し上げてスイッチが閉じる。スイッチが閉じると測定制御部230に設けられた不図示のスイッチ回路に電流が流れて所定押圧力検出信号が測定制御部230に伝送される。このときの環状電極37及び接触子52と皮膚との接触状態を図3(b)に概念的に示す。
測定制御部230は、所定押圧力検出信号を受信すると、不図示の測定中ランプを点灯させる。測定端面36への押圧力が所定の押圧力に維持されている間は、所定押圧力検出信号が生成されていることから、オペレータは、測定中ランプの点灯によって、測定端面36、すなわち、環状電極37及び接触子52が共に皮膚に接触して測定端面36に対する押圧力が所定の大きさになったこと、及び、測定中ランプが表示されている間は測定中であることを知ることができる。
また、押圧検出器58は、押圧力が所定の値から外れる(実際には所定の値より小さい)と所定押圧力検出信号をオフにし、測定制御部230は、所定押圧力検出信号がオフであること、すなわち、該信号を受信しないことに応答して、測定中ランプを消灯させる。こうして、オペレータは、測定中ランプを点灯させるべく、プローブ10に加える押圧力を適宜に加減して、測定端面36に対する押圧力を所定の大きさに維持することができる。
測定制御部230は、所定押圧力検出信号を受信すると、水分量データ測定回路210と弾力データ測定回路220のそれぞれに、測定を開始させるための水分量測定開始信号、弾力測定開始信号をそれぞれ送信する。一方、所定押圧力検出信号が生成されていないときには、測定制御部230は、各測定開始信号をオフにして、いずれの測定開始信号も送信しない。
A−3.水分量データ測定手段の構成及び動作
図4は、水分量データ測定手段400の構成及び動作を説明するための概念図であり、図1及び図2と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の水分量データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
水分量データ測定手段400は、上述のように水分量データ測定回路210とセンサ部30に設けられた電極37及び38とから構成され、電極37、38間に直流電圧及び交流電圧を印加し、それらの電極間の直流導電度及び交流導電度を測定し、それらの導電度を測定制御部230に送るように動作する。ここで得られる交流導電度の測定データから換算して、皮膚の表層における水分量を求めることができる。
水分量データ測定回路210は、接触子52と兼用された電極38と環状電極37との間に直流電圧及び交流電圧を印加するためのDC/AC電圧印加手段420、及び、それらの電極間の直流導電度、交流導電度をそれぞれ測定するための直流導電度測定回路430、交流導電度測定回路440から構成される。
DC/AC電圧印加手段420は、直流電圧源を有する直流電圧印加手段422と交流電圧源を有する交流電圧印加手段424を備え、それらの間には、交流電源側に直流電圧が直接印加されないようにカップリングフィルタ426が設けられている。
ここで、直流電圧印加手段422及び直流導電度測定回路430を設けたのは、上述のように、測定部位の皮膚の発汗状態を検出するためであり、本実施形態は、電極37、38を皮膚に接触させた状態で、直流電圧印加手段422によって電極37、38間に直流電圧を印加し、直流導電度測定回路430によってそれらの電極間の直流導電度を測定し、その測定結果に基づいて、測定部位の皮膚の発汗の有無を検知するように構成されている。
電極に印加する直流電圧は、一般に、1V〜3V、交流電圧は、周波数が2kHz〜200kHz、電圧が1V〜3Vの範囲で選択されるが、本実施形態のDC/AC電圧印加手段420は、3Vの直流電圧、及び、周波数が12.5kHz、電圧が3V(実効値)の交流電圧を電極37、38間に印加するように構成されている。
尚、本実施形態では、交流電圧と直流電圧を同じ電極間に印加する構成としたが、交流電圧印加用の電極と直流電圧印加用の電極を別個のものとしてもよい。図5は、そのように別電極構成とした場合の水分量データ測定手段の構成及び動作を説明するための概念図である。図5の左側に、測定端面36’の電極の配置関係を示す接触端面36’の平面図を示し、右側に、水分量データ測定手段500の構成をそれぞれ示す。電極39は、測定端面36’の所定の位置に所定の形状及び大きさで配置され、電極37’は、図1(b)と同様に環状電極として配設されている。
図5では、直流電圧印加用の電極39が別個に設けられ、DC/AC電圧印加手段520における直流電圧印加手段522と交流電圧印加手段524とがカップリングフィルタを介さずに独立して設けられている点で図4の構成と異なっている。直流電圧は直流電圧印加手段522によって電極39、37’間に、交流電圧は交流電圧印加手段524によって電極38’、37’間にそれぞれ別個に印加され、直流導電度測定回路530と交流導電度測定回路540のそれぞれによって、それぞれの電極間の直流導電度及び交流導電度が測定される。
また、本実施形態では電極37、37’を環状電極としたが、環状電極の代わりに、測定端面36、36’の適宜な箇所に適宜な形状及び大きさの電極を設けるようにしてもよい。
また、オプションとして、皮膚の表面温度を測定するための皮膚温度測定手段を測定端面36、36’に設けることもできる。具体的には、サーミスタや熱電対などの接触型の温度センサを測定端面の適宜な箇所(たとえば、図1(b)の56で示す)に設けて、測定端面36が皮膚に接触しているときに、皮膚の表面温度を測定するようにすることが可能である。測定制御部230において、この温度情報と同時に測定された直流導電度(発汗情報)とを関連付けて内部メモリ232に格納し、肌のほてりや血行状態等に関する診断を行う上で有益な情報として使用することができる。
ここで、電極37、38(または、電極39、37’及び電極38’、37’)を皮膚に接触させた状態で水分量データ測定手段400(または、500)によって測定された直流導電度、交流導電度をそれぞれ、接触時直流導電度、接触時交流導電度と呼ぶこととする。接触時直流導電度、接触時交流導電度は、測定制御部230に送られて、それぞれ、皮膚の発汗値、皮膚の水分値として内部メモリ232に格納されることになる。
A−4.弾力データ測定手段の構成及び動作
図6は、弾力データ測定手段600の構成及び動作を説明するための概念図であり、図1及び図2と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の弾力データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
弾力データ測定手段600は、上述のように、弾力データ測定回路220と、センサ部30に設けられた弾力センサ50から構成され、弾力センサ50の振動子51を振動させて、その周波数を測定し、測定した振動周波数を測定制御部230に送るように動作する。
弾力データ測定回路220は、振動子51を自励発振させるための自励発振回路612と、振動子51が測定部位の皮膚に接触する前後の自励発振回路612の周波数(振動子51の振動周波数)を計測するための周波数測定回路614から構成される。
弾力データ測定手段600の基本構成及び動作原理は、特開平5−322731号公報、特開平8−29312号公報等に記載されたものと同様である。すなわち、図6に示す構成において、振動検出素子53からの出力信号が自励発振回路612中の不図示の増幅回路に入力され、該増幅回路で増幅された信号が振動子51に供給されて強制帰還を行わせることにより自励発振させ、周波数測定回路614で、接触子52が皮膚に接触していない状態での振動子51の振動周波数(以下、非接触時周波数ともいう)と接触している状態での振動子51の振動周波数(以下、接触時周波数ともいう)を測定する構成としている。
ここで、振動子51としては、圧電セラミック振動子、水晶振動子等を使用することができる。振動検出素子53は、振動子51上に設けられ、振動子51の振動数を検出できるものであればよく、例えば、圧電セラミック素子、高分子圧電フィルム、圧電型加速度ピックアップ等を使用することができる。
本実施形態では、上述のように、接触子52を水分量測定用の電極の一方として機能させるために接触子52に導電性を持たせている。このためには、接触子52を、樹脂やセラミックス等で形成し、その表面に金やニッケルクロム等をメッキした構成としたり、接触子全体を導電性材料から形成することができる。導電性材料としては、銅やアルミ等の金属を使用することができる。接触子52と、図4及び図5における直流電圧印加手段422、522及び交流電圧印加手段424、524とは銅線やスズメッキ線で電気的に接続することができる。尚、接触子52の形状については特に制限はなく、球状、円筒状、角柱状などとすることができる。また、接触子52の大きさは、一般に、直径5〜10mmの範囲から選択される。
また、本実施形態では、振動子51、振動検出素子53として、それぞれ、圧電セラミック振動子を採用し、接触子52としては、樹脂にニッケルクロムをメッキした半球体(直径5mm)を採用した。
A−5.プローブによる測定処理の流れ
次に、以上のように構成されたプローブ10による測定処理を図8に示すフローチャートを参照して説明する。各データ測定手段の動作の制御、各データ測定手段からのデータの処理、及び、プローブ内外への入出力処理を含むプローブ全体の測定処理の制御は、測定制御部230のCPU231によって実行される内部メモリ232に格納されたプログラムに基づいて実施される。
尚、測定スイッチは、本体ケーシング12に設けられて、測定制御部230の入力部233の一部を構成する不図示のスイッチであり、測定中ランプ、発汗検知ランプ及び測定エラーランプは、いずれも、本体ケーシング12に設けられて、測定制御部230の出力部234の一部を構成する不図示のLEDランプである。
先ず、ステップ80で、測定制御部230は、オペレータからの測定開始指示、すなわち、測定スイッチがオンにされるのを待つ。この間、実際には、測定を開始するために、オペレータは、プローブ10を皮膚から離した状態で、測定スイッチをオンにすることになる。
測定スイッチがオンになったのを検出すると、ステップ82で測定制御部230は、弾力データ測定回路220に振動周波数を測定させるための制御信号を送出する。
この制御信号に応答して、弾力データ測定回路220の自励発振回路612が起動して振動子51を振動させ、周波数測定回路614において、振動子51の振動周波数(自励発振回路における発振周波数)を測定する。この周波数の値は測定制御部230のCPU231の内部レジスタに保持される。保持されたこの周波数は、オペレータが、プローブ10を皮膚に接触させる前に測定されたものとされることから、非接触時周波数である。
ステップ84乃至86の処理中に、オペレータは、測定端面36を皮膚に接触させた状態で皮膚に押し当てることができ、これによってスプリング60、62が圧縮される。
ステップ84で、測定制御部230は、水分量データ測定回路210及び弾力データ測定回路220に制御信号を送出して、交流導電度と振動周波数をそれぞれ測定させる。
ステップ86で測定制御部230は、ステップ84において測定された交流導電度及び振動周波数が、それぞれに対応して予め決められている所定の値の範囲にあるか否かを判定する。いずれか一方の測定データが対応する所定の値の範囲内にない場合には、その範囲内に入るまで(オペレータによるスプリングの圧縮と並行して)、各データの測定(ステップ84)と、測定された各データが対応する所定の値の範囲にあるか否かの判定(ステップ86)が繰り返される。
これらの所定の値の範囲は、電極37及び接触子52(したがって電極38)が皮膚に接触しているときに測定されるべき妥当な値の範囲として予め実験的に決定されて、測定制御部230の内部メモリ232に格納されている。したがって、それぞれの測定値が対応する所定の値の範囲内にあれば、各測定手段が動作しており、かつ、電極37及び接触子52(したがって電極38)が皮膚に接触していると判断することができる。
ステップ86でいずれの測定値も所定の値の範囲に入っている判定した場合には、ステップ88で、測定制御部230は、測定端面36への押圧力が所定の大きさになるまで、すなわち、所定押圧力検出信号が生成されるまで待つ。
所定押圧力検出信号を受信すると、測定制御部230は、ステップ90で測定中ランプを点灯させて、水分量データ測定回路210、弾力データ測定回路220に、それぞれ、水分量測定開始信号、弾力測定開始信号を送出する。
水分量データ測定回路210、弾力データ測定回路220がそれぞれ、水分量測定開始信号、弾力測定開始信号を受信すると、接触時直流導電度及び接触時交流導電度の測定(ステップ100)と弾力センサの接触時周波数の測定(ステップ110)が同時に開始されて、それらの測定が同時並列的に実施される。
先ず、ステップ100における、水分量データ測定手段400による直流/交流導電度の測定動作から説明する。水分量データ測定回路210は、水分量測定開始信号を受信すると、ステップ102で、DC/AC電圧印加手段420によって電極38、37間に直流電圧と交流電圧を同時に印加した後、直流導電度測定回路430、交流導電度測定回路440によってそれらの電極間の直流導電度及び交流導電度をそれぞれ測定する。
測定制御部230は、ステップ102で測定された直流導電度及び交流導電度をCPU231の内部レジスタに保持する。
ステップ104で、測定制御部230は、直流導電度測定回路430によって測定された直流導電度に基づいて測定部位の皮膚が発汗しているか否かを判断する。具体的には、測定された直流導電度が所定値以下(一実施形態では、この所定値は、測定限界下限値以下、たとえばゼロである)の場合には、測定制御部230は、測定部位の皮膚は発汗していないと判断する。
一方、測定された直流導電度が所定値より大きな値の場合には、測定制御部230は、測定部位の皮膚が発汗していると判断して、ステップ106において発汗検知ランプを点灯させる。オペレータは、発汗検知ランプの点灯によって、測定部位の皮膚が発汗しているために、水分量データの正確な測定を実施できる状態にはないことを知ることができる。この場合は、図8には示していないが、オペレータは、測定を一旦中止し、汗を拭き取るなどの適宜な処理をした後、再度プローブの測定スイッチをオンにして、発汗が検知されないことを確認した後で測定を実施するようにするか、あるいは、そのまま測定を続行するかを選択できるようにプローブ10を構成してもよい。尚、ステップ102において、直流電圧と交流電圧を同時に印加するものとしたが、先に直流電圧を印加して発汗の有無を判断するようにしてもよい。
次に、ステップ110における、弾力データ測定手段600による接触時周波数の測定動作について説明する。弾力データ測定回路220は、測定制御部230から弾力測定開始信号を受信すると、ステップ112において、ステップ82の場合と同様に、自励発振回路612を起動して振動子51を振動させ、ステップ114において、周波数測定回路614において振動子51の振動周波数を測定する。これによって、接触子52が皮膚に接触した状態における振動周波数(接触時周波数)が測定される。この接触時周波数は、測定制御部230のCPU231の内部レジスタに保持される。
ステップ120において測定制御部230は、ステップ102及び114で測定された接触時交流導電度及び接触時周波数を内部レジスタから読み出して、これら二つのデータ値が、それぞれに対応する正常値の範囲内にあるか否かを判定し、いずれか一方でも正常値の範囲内にない場合には、ステップ122において、測定中ランプを消灯するとともに測定エラーランプを点灯させてステップ80に処理を戻す。オペレータは、この測定エラーランプの点灯によって、有効な測定ができなかったことを知ることができる。
尚、接触時交流導電度及び接触時周波数の正常値の範囲は、電極37、38及び弾力センサ50の接触子52が皮膚に適切に接触しているときに測定される可能性のある交流導電度及び振動周波数の範囲として予め実験的に画定しておくことができ、これらの正常値の範囲は、測定制御部230の内部メモリ232に格納されている。
ステップ120で両方の測定データが正常値の範囲内にあると判定すると、測定制御部230は、ステップ124で、皮膚の水分値、発汗値及び弾力値を決定する。具体的には、ステップ102で測定された接触時交流導電度、接触時直流導電度を、それぞれ皮膚の水分値、発汗値として内部メモリ232に格納する。また、ステップ82で測定された非接触時周波数とステップ114で測定された接触時周波数の差を皮膚の弾力値として、内部メモリ232に格納する。
ステップ126で、測定制御部230は、水分量測定開始信号及び弾力測定開始信号をオフにすると共に、測定中ランプを消灯して、水分量データ及び弾力データの測定が正常に終了したことをオペレータに通知する。オペレータは測定中ランプの消灯を確認することによって、プローブを皮膚から離すことができるが、これに応じてスプリングが伸長し、押圧検出器58は所定押圧力検出信号をオフにする。
B.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、水分量データ測定手段及び弾力データ測定手段を組み込んだ第一の実施形態におけるプローブに、さらに、皮脂量を測定するための手段(皮脂量データ測定手段)と皮膚の色(肌色)を測定するための手段(肌色データ測定手段)を組み込み、これらの四つの測定手段による測定を一回のプローブ操作で測定可能としたものである。
B−1.プローブの全体構成
図9は、図1(c)に示す第一の実施形態のプローブ10の全体外観と同様の全体外観を有する第二の実施形態のプローブ900の構成を説明する図であり、図9(a)は、プローブ900の不図示の全体外観図において、図1(c)のX−X’ラインに対応するラインで切り取ったときのセンサ部の断面図、図9(b)は、プローブ900の端部に設けられた接触端面(測定端面)936の平面図である。プローブ900は、第一の実施形態と同じくオペレータの手で把持可能に形成された本体ケーシング912に収容されたプローブ本体部920と、本体ケーシング912の先頭部分に設けられたセンサケーシング914に収容されたセンサ部930から構成される。
センサ部930は、第一の実施形態と同様の、皮膚の直流導電度及び交流導電度を測定するための2つの電極937、938、皮膚の弾力を測定するための弾力センサ950に加え、さらに、肌色センサと皮脂量センサを備える。そして、これらを円柱状のスリーブ934が囲んでいる。
測定端面936は、第一の実施形態と同様に、スリーブ934の底面を形成し、図9(b)に示すように、その中央部には、弾力センサ950の先端部が測定端面936を介してスリーブ934内外に移動できるようにするための開口部954が設けられている。電極937は、環状電極として測定端面936の円周部に配設されている。本実施形態ではさらに、開口部954と環状電極937の間の適宜な箇所に円柱状の光透過体970が設けられている。
肌色センサは、R、G、Bの各波長光を放射するフルカラー放射源976と、フルカラー放射源976から放射されたR、G、Bの各波長光をプローブ900の外部、すなわち、スリーブ934外へと透過させると共に、各波長光の反射光をプローブ900の内部、すなわちスリーブ934内へと戻すための光路を提供する光透過体970、及び、各波長光の反射光を受光するための受光器978から構成される。
皮脂量センサは、近赤外光を放射する近赤外放射源972と、近赤外放射源972から放射された近赤外光をプローブ900の外部、すなわち、スリーブ934外へと透過させると共に、近赤外光の反射光をプローブ900の内部、すなわちスリーブ934内へと戻すための光路を提供する光透過体970と、近赤外光の反射光を受光するための受光器974、及び、受光器974への可視光波長領域の外乱光の入射を阻止するために受光器974の前方に配置された可視光遮断フィルタ(図12の1212)から構成される。
このように、光透過体970は、肌色センサと皮脂量センサにおいて共用されている。さらに、光透過体970は、近赤外光及びRGBの各波長光のための光路を提供するだけでなく、光透過体970が皮膚に接触したときに皮膚との接触面に皮脂を付着させることによって皮脂を採取する機能を有し、これによって、同一部位の皮膚に対する肌色データと皮脂量データを一回の操作でほぼ同時に測定できるようになっている。
光透過体970は、ガラスやアクリル樹脂等の光に対して透明性の高い材料から形成されたものを使用することができ、本実施形態では、光透過体970として光学的に透明なガラスを採用した。光透過体970は、また、測定端面936に隙間なく一体的に嵌め込まれており、これによって、弾力センサ950の先端部が開口部954を塞ぐ効果と相俟って、皮膚表面上の化粧料や皮脂成分等の埃が測定端面936を介してスリーブ934内部に侵入しにくい構成とされている。さらに、光透過体970の下面(測定時に皮膚と接触する側の面)は、光透過体の下面全体が皮膚に均一に当接するように平坦とされており、これによって、RGBの各波長光を常に一定の角度で皮膚に照射することが可能とされている。また、光透過体970の下面は、測定端面936と同一平面をなして配設されており、これによって、後述の接触時RGB反射量の測定を、接触時直流/交流導電度及び接触時周波数の測定と同時に実施することが可能とされている。本実施形態の光透過体970は、さらに上面も平坦とされ、上面と下面は平行をなしている。
図9(a)に示す、弾力センサ950、スプリング960、962及び押圧検出器958の配置関係、構成及び動作は、第一の実施形態の弾力センサ50、スプリング60、62及び押圧検出器58と同様であるので、それらについての詳細な説明は省く。
尚、参照番号1050、1000で示されている本体ケーシング912内の二つのブロックは、それぞれ、後述の測定制御部からなるブロック、水分量/弾力/肌色/皮脂量の各データ測定回路からなるブロックである。
図10は、第一の実施形態の機能ブロック図である図2に対応する本実施形態のブローブ900の機能ブロック図であり、1010、1020、1030、1040は、それぞれ、水分量データ測定回路、弾力データ測定回路、肌色データ測定回路、皮脂量データ測定回路である。図2の構成に対して、肌色データ測定回路1030とセンサ部930に設けられた肌色センサからなる肌色データ測定手段、及び、皮脂量データ測定回路1040とセンサ部930に設けられた皮脂量センサからなる皮脂量データ測定手段が追加されている。
測定制御部1050は、第一の実施形態の測定制御部230における水分/弾力の各データ測定手段に加えて、肌色/皮脂量の各データ測定手段に関する制御、データ処理及び入出力処理等を行う。肌色の測定に関しては、測定制御部1050は、後述のRGB基準反射量と接触時RGB反射量との比(反射率)を、R、G、B各三波長光毎に計算し、これらの反射率を肌色値として内部メモリ1052に格納する。また、皮脂量の測定に関しては、測定制御部1050は、後述の近赤外基準反射量と皮脂付着時近赤外反射量との比(反射率)を計算し、この反射率を皮脂値として内部メモリ1052に格納する。近赤外基準反射量は、皮脂値を測定する毎に測定されて内部メモリ1052に格納される。
また、参照番号1053、1054で示されているブロックは、それぞれ、第一の実施形態に関する図2の233、234で示されているブロックと同様の入力部、出力部である。また、水分/弾力の各データ測定手段に関する測定制御部1050の動作は第一の実施形態における測定制御部230の動作と同様である。測定制御部1050には、第一の実施形態と同様の、外部のデータ処理装置1060との通信を行うためのI/F部1055が設けられており、このI/F部を介して測定された各データをデータ処理装置1060に送ることができる。データ処理装置1060は、所定の肌診断ソフトによって、プローブ900から送信されたデータに対して肌診断のための所定の処理を行い、その結果を、表示装置1070に表示したり、プローブ900に戻したりできるものであり、パーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータシステムで構築することができる。
水分量データ測定手段及び弾力データ測定手段の構成及び動作は、第一の実施形態と同様である。すなわち、水分量データ測定手段は、第一の実施形態における図4または図5に関して説明した構成のいずれを採用してもよく、弾力データ測定手段は、図6に関して説明した構成を採用することができる。そこで、以下では、肌色データ測定手段と皮脂量データ測定手段の構成及び動作について説明する。
B−2.肌色データ測定手段の構成及び動作
図11は、本発明の一実施例による肌色データ測定手段1100の構成及び動作を説明するための概念図であり、図9及び図10と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の肌色データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
肌色データ測定手段1100は、肌色データ測定回路1030とセンサ部930に設けられた上述の肌色センサから構成される。肌色データ測定回路1030は、フルカラー放射源976のオン/オフを制御するためのRGB発光回路1032と、RGB光の反射量を測定するためのRGB反射量測定回路1034から構成される。
肌色データ測定手段1100は、フルカラー放射源976から光透過体970に向けてRGBの各三波長光を放射し、光透過体970を介する各三波長光の反射量を光検出器978で検出して測定制御部1050に送るように構成される。
本実施形態では、フルカラー放射源976としてR、G、Bの各三波長光を放射するRGB LEDを採用し、受光器978として一個のフォトトランジスタを採用した。尚、受光器978としては、フォトトランジスタの他に、フォトダイオードやCCDセンサ等の光電センサを適宜使用することができる。
本実施形態では、受光器978として一個のフォトトランジスタを用いたので、RGB発光回路1032により、RGB LED976が、R、G、Bの各波長光毎に順次(たとえば、R、G、Bの順番で)適宜のタイミングで発光するように制御し、RGB反射量測定回路1034は、フォトトランジスタ978からの出力電流を各波長光の発光タイミングに同期したタイミングでそれぞれサンプリングする構成とした。このタイミングの同期化は、RGB発光回路1032とRGB反射量測定回路1034との動作タイミングを測定制御部1050によって制御することによって行われる。
また、本実施形態では、図9(c)に示すように、光透過体970に対してRGB LED976の中心光軸の入射角と反射角が等しい光軸上に受光器978を配置し、また、図9(a)に示すように、それらのLEDと受光器を、測定端面を基準としてスリーブの上面方向にほぼ同じ高さに配置した。
ここで、接触時RGB反射量とは、光透過体を皮膚などの測定部位に接触させた状態で測定された各三波長光毎の反射量をいうものとする。また、RGB基準反射量とは、プローブ900の製造工程または較正時において、測定端面936(及び光透過体970)の下に鏡面を配置した状態で、フルカラー放射源976から鏡面に対してRGBの各三波長光を照射したときに測定されたその鏡面からの各三波長光毎の反射量をいうものとする。RGB基準反射量は、製造時または較正時において測定制御部1050の内部メモリ1052に格納されている。
B−3.皮脂量データ測定手段の構成及び動作
図12は、本発明の一実施例による皮脂量データ測定手段1200の構成及び動作を説明するための概念図であり、図9及び図10と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の皮脂量データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
皮脂量データ測定手段1200は、皮脂量データ測定回路1040とセンサ部930に設けられた上述の皮脂量センサとから構成され、皮脂量データ測定回路1040は、近赤外放射源972のオン/オフを制御するための近赤外発光回路1042と、近赤外光の反射量を測定するための近赤外反射量測定回路1044から構成される。
皮脂量データ測定手段1200は、近赤外放射源972から光透過体970に向けて近赤外光を放射し、光透過体970を介する近赤外光の反射光を光検出器974で検出して測定制御部1050に送るように構成されている。
近赤外放射源972は、放射光の波長が890nm〜990nmの近赤外波長領域中の特定の波長において最大強度を有するものが好ましく、本実施形態では、950nmに最大強度を有する近赤外LEDを採用した。また、受光器974として一個のフォトトランジスタを採用したが、受光器974としては、フォトトランジスタの他に、フォトダイオードやCCDセンサ等の光電センサを適宜使用することができる。
また、本実施形態では、図9(c)に示すように、光透過体970に対して近赤外LED972の中心光軸の入射角と反射角が等しい光軸上に受光器974を配置し、また、図9(a)に示すように、近赤外LED972と受光器974を、測定端面936を基準として、スリーブ934の上面方向にほぼ同じ高さに配置した。
以下、近赤外基準反射量とは、光透過体970が皮膚に接触していない状態において、光透過体970に皮脂やその他の埃が付着していないとみなしうる状態で測定された近赤外光の反射量をいい、皮脂付着時近赤外反射量とは、光透過体970を皮膚に接触させるなどすることにより、光透過体970に皮脂が付着したとみなしうる状態で測定された近赤外光の反射量をいうものとする。本実施形態では、光透過体970を皮膚に接触させて光透過体970の下面に皮脂を付着させた後、図12に示すように、光透過体970を皮膚から離した状態で、近赤外光を光透過体970に照射して、皮脂付着時近赤外反射量を測定するようにした。これによって、皮膚による近赤外光の散乱などの影響を排除して、より正確に皮脂量を測定することが可能となった。
B−4.プローブによる測定処理の流れ
次に、以上のように構成されたプローブの動作を図13に示すフローチャートを参照して説明する。第一の実施形態と同様に、各データ測定手段の動作の制御、各データ測定手段からのデータの処理、及び、プローブ内外への入出力処理を含むプローブ全体の測定処理の制御は、測定制御部1050のCPU1051によって実行される内部メモリ1052に格納されたプログラムに基づいて実施される。
尚、測定スイッチは、本体ケーシング912に設けられて、測定制御部1050の入力部1053の一部を構成する不図示のスイッチであり、測定中ランプ、発汗検知ランプ及び測定エラーランプは、いずれも、本体ケーシング912に設けられて、測定制御部1050の出力部1054の一部を構成する不図示のLEDランプである。
ステップ130で、測定制御部1050は、オペレータからの測定開始指示、すなわち、測定スイッチがオンとなるのを待つ。この間、実際には、測定を開始するために、オペレータは、プローブ900を皮膚から離した状態で、測定スイッチをオンにすることになる。
ステップ132で測定スイッチがオンになったのを検出すると、測定制御部1050は皮脂量データ測定回路1040に近赤外光の反射量(近赤外基準反射量)を測定させるための制御信号を送出する。
この制御信号に応答して、皮脂量データ測定回路1040は、近赤外LED972から近赤外光を光透過体970に向けて放射させる。光透過体970を介してスリーブ934内に戻った反射光は、可視光領域の外乱成分を除去するための可視光遮断フィルタ1212を通過した後、受光器974で検出される。検出された反射量(近赤外基準反射量(電流値))は測定制御部1050に送られてCPU1051の内部レジスタに保持される。
ステップ134で、測定制御部1050は、ステップ132で測定された近赤外基準反射量が妥当な値の範囲内にあるか否かを判定する。妥当な値の範囲内でないと判断した場合には、処理はステップ132に戻り、測定値が妥当な値の範囲に入るまで、近赤外基準反射量の測定(ステップ132)とその測定値が妥当な値の範囲にあるか否かの判断(ステップ134)が繰り返される(実際には、妥当な値の範囲にないと判定された場合には、その旨の表示がなされ、オペレータは、光透過体970を拭くなどの光透過体970の汚れを落とす作業を行うことになる)。この妥当な値の範囲は、光透過体970が皮膚から離れており、かつ、皮脂やその他の埃が光透過体970に付着していないときに測定されるべき値の範囲として、個々のプローブについて予め実験的に決定されて、測定制御部1050の内部メモリ1052に格納されている。
測定された近赤外基準反射量が妥当な値であると判定した場合には、測定制御部1050は、ステップ136で、弾力データ測定回路1020に、振動子951の振動周波数を測定させるための制御信号を送出する。この制御信号に応答して、弾力データ測定回路1020は、第一の実施形態と同様にして非接触時周波数を測定する。
オペレータは、ステップ138乃至142の処理中に、プローブ900(の測定端面936)を皮膚に対して押圧することができ、これによってスプリング960及び962が圧縮される。
ステップ138で、測定制御部1050は、水分量データ測定回路1010、弾力データ測定回路1020、肌色データ測定回路1030、皮脂量データ測定回路1040に各データを測定させるための制御信号を送出する。この制御信号に応答して、各測定回路は、交流導電度、振動周波数、R、G、Bの各三波長光の反射量、近赤外光の反射量をそれぞれ測定する。
ステップ140で、測定制御部1050は、ステップ138で測定された全てのデータ値が、それぞれに対応する所定の値の範囲にあるか否かを判定する。いずれか一つの測定データが対応する所定の値の範囲内にない場合には、その範囲内に入るまで、(プローブの押し当てによるスプリング960、962の圧縮と並行して)それぞれのデータの測定(ステップ138)と、測定されたデータが対応する所定の値の範囲にあるか否かの判定(ステップ140)を繰り返す。
これらの所定の値の範囲は、電極937、938、接触子952及び光透過体970が皮膚に接触しているときに測定される妥当な値の範囲として予め実験的に決定されて、測定制御部1050の内部メモリ1052に格納されている。したがって、それぞれの測定値が対応する所定の値の範囲内にあれば、各測定手段が動作しており、及び、電極937、938、接触子952及び光透過体970が共に皮膚に接触していると判断することができる。
ステップ140で、上記全てのデータ値がそれぞれに対応する所定の値の範囲に入っていると判定した場合には、ステップ142で、測定制御部1050は、測定端面936への押圧力が所定の大きさになるまで、すなわち、所定押圧力検出信号が生成されるまで待つ。ここで、測定端面936に所定の大きさの押圧力が印加されているときの測定端面936と皮膚との接触状態は、接触時交流導電度、接触時周波数、及び接触時RGB反射量の測定に適し、かつ、光透過体970に皮脂が付着するのに適した状態とされる。
測定制御部1050は所定押圧力検出信号を受信すると、ステップ144で、水分量データ測定回路、弾力データ測定回路、肌色データ測定回路に、それぞれ、水分量測定開始信号、弾力測定開始信号、肌色測定開始信号を送出すると共に、測定中ランプを点灯させて、プローブ900がデータ測定中であることをオペレータに知らせる。
水分量データ測定回路、弾力データ測定回路、肌色データ測定回路が、それぞれ、水分量/弾力/肌色測定開始信号を受信すると、接触時直流導電度及び接触時交流導電度の測定(ステップ150)、接触時周波数の測定(ステップ160)、及び接触時RGB反射量の測定(ステップ170)が同時に開始されて、それらの測定が同時並列的に実施される。尚、ステップ150では、測定制御部1050による発汗検知処理も行われる。
水分量データ測定手段による接触時交流/直流導電度の測定動作、測定制御部1050による発汗検知処理、及び、弾力データ測定手段による接触時周波数の測定動作は、第一の実施形態について説明した図8のフローチャートのステップ100、110における処理とそれぞれ同様であるので、それらについての説明は省き、ステップ170における肌色データ測定手段の測定動作について説明する。
肌色データ測定回路1030において、測定制御部1050からの肌色測定開始信号が受信されると、ステップ172で、RGB発光回路1032が、RGB LED976にR、G、Bの各波長光をこの順で所定のタイミングで放射させる。放射された各波長光は光透過体970を通過して光透過体970に接触している皮膚を照射し、皮膚から反射して、再度、光透過体970を通過してスリーブ934内に戻る。この反射光はフォトトランジスタ978で受光されて反射量に応じた電流が生成される。
ステップ174で、RGB反射量測定回路1034は、生成された電流を不図示の増幅器で増幅して、上述のように、R、G、Bの各波長光の照射タイミングに同期したタイミングで各波長光の反射量に対応する電流値をそれぞれサンプリングした後、測定制御部1050に伝送する。サンプリングされた電流値は測定制御部1050のCPU1051の内部レジスタに保持される。
測定制御部1050は、ステップ150、160、及び174において各データが測定されると、ステップ180で測定中ランプを消灯させ、それらのデータが測定されたことをオペレータに通知する。オペレータはこの測定中ランプの消灯を確認することによって、皮脂量の測定のためにプローブ900を皮膚から離すことができる。
後続のステップ182乃至186と並行してオペレータがプローブ900を皮膚から離す過程で、スプリング960、962が伸長して押圧検出器958のスイッチが開き、所定押圧力検出信号がオフになる。
測定制御部1050は、ステップ182において、水分/弾力/肌色/皮脂量の各四つのデータ測定手段に交流導電度/振動周波数/R、G、Bの各三波長光の反射量/近赤外光の反射量をそれぞれ測定させ、ステップ184において、ステップ182で測定されたデータ値がそれぞれに対応する所定の値の範囲内にあるか否かを判定する。
これらの所定の値の範囲は、光透過体970が皮膚から十分離れているときに各測定手段によって測定されるべきデータの妥当な値の範囲として予め実験的に決定され、測定制御部1050の内部メモリ1052に格納されている。したがって、測定制御部1050は、これらの全てのデータ値がそれぞれに対応する所定の値の範囲内にあれば、測定端面936は皮膚から離れたと判断することができる。それらのデータ値の全てがそれぞれに対応する所定の値の範囲内に入るまでステップ182と184は繰り返される。
ステップ184において、ステップ182で測定された全てのデータ値がそれぞれに対応する所定の値の範囲内にあると判定した場合には、測定制御部1050は、ステップ186で、たとえば、内蔵のタイマー回路を用いて、所定時間(たとえば、0.5秒程度)経過するまで待つ。このように、所定時間待つのは、オペレータが、測定端面936を皮膚から十分な距離離した状態にすることができるようにするための時間を確保するためである。
測定制御部1050は、ステップ186で所定時間が経過したことを判定すると、ステップ188で、測定中ランプを点灯させると共に、皮脂量データ測定回路1040に皮脂測定開始信号を送出する。
皮脂量データ測定回路1040は、皮脂測定開始信号を受信すると、ステップ190で、接触時周波数の測定を開始する。すなわち、ステップ192で、皮脂量データ測定回路1040中の近赤外発光回路1042が近赤外LED972をオンにして近赤外光を放射させる。放射された近赤外光は、光透過体970を通過して、光透過体970の下面に付着した皮脂で反射して、再び光透過体970を通過してスリーブ934内に戻される。この反射光は、可視光遮断フィルタ1212を通過してフォトトランジスタ974で受光され、受光した反射量に応じた電流が生成される。
ステップ194で、近赤外反射量測定回路1044は、フォトトランジスタ974で生成された電流を不図示の増幅回路で増幅した後サンプリングする。サンプリングされた電流測定値は、測定制御部1050に伝送されてCPU1051の内部レジスタに保持される。
ステップ200において測定制御部1050は、ステップ150、160、174、及び194においてそれぞれ測定された接触時交流導電度、接触時周波数、接触時RGB反射量、皮脂付着時近赤外反射量を内部レジスタから読み出して、これら全てのデータ値が、それぞれに対応する正常値の範囲内にあるか否かを判定する。いずれか一つのデータ値が正常値の範囲内にない場合には、測定制御部1050は、ステップ202において、測定中ランプを消灯するとともに測定エラーランプを点灯させてステップ130に処理を戻す。オペレータは、このエラー表示によって、有効な測定ができなかったことを知ることができる。
尚、接触時交流導電度及び接触時周波数の正常値の範囲は、第一の実施形態に関して図8のステップ120で述べたのと同様であり、接触時RGB反射量の正常値の範囲は、接触端面936が皮膚に適切に接触しているときに測定される可能性のあるR、G、Bの各三波長光の反射量の範囲として、皮脂付着時近赤外反射量の正常値の範囲は、人間の皮膚の皮脂量からの近赤外光の反射量として測定される可能性のある反射量の範囲として、それぞれ予め実験的に画定しておくことができる。これらの正常値の範囲は測定制御部1050の内部メモリ1052に格納されている。
ステップ200で、上記の全てのデータ値が正常値の範囲内にあると判定すると、測定制御部1050は、ステップ204で、測定された各データから皮膚の各性状値(発汗値、水分値、弾力値、肌色値、皮脂値)を決定して内部メモリ1052に格納する。具体的には、ステップ150で測定された接触時直流導電度、接触時交流導電度をそれぞれ、発汗値、水分値とし、ステップ136で測定された非接触時周波数とステップ160で測定された接触時周波数との差を弾力値とし、予め測定されて内部メモリ1052に格納されているRGB基準反射量とステップ174で測定された接触時RGB反射量との各波長光毎の比(R、G、Bの各三波長の反射率)を肌色値とし、ステップ132で測定された近赤外基準反射量とステップ194で測定された皮脂付着時近赤外反射量の比(近赤外反射率)を皮脂値としてそれぞれ内部メモリ1052に格納する。
その後、測定制御部1050は、ステップ206で測定中ランプを消灯して、全ての測定が正常に終了したことをオペレータに知らせる。
以上のように、本発明の第二の実施形態は、所定の押圧力がスリーブ、すなわち測定端面に加えられた時点で、測定制御部1050からの指示によって、皮脂量データ測定手段を除く三つのデータ測定手段がその測定動作を同時に開始し、それらの測定が終了してプローブが皮膚から離されると皮脂量データの測定に移行するように構成されている。したがって、第二の実施形態によれば、プローブを皮膚に接触させて離すという一回の操作でほぼ同時に五つの皮膚性状値を取得することができる。
尚、ステップ182乃至186の代わりに、プローブが皮膚から離れたことをオペレータ自身が確認することによって皮脂量データの測定に移行するようにしてもよい。
また、第二の実施形態における水分量データ測定手段として、第一の実施形態における水分量データ測定手段を採用するものとして説明したが、水分量データ測定手段において、発汗検知のための直流電圧印加手段及び直流導電度測定手段は省いてもよい。その場合、当然ながら、図13に関して説明したプローブの測定処理において、発汗検知に関する処理は存在しない。
また、第一の実施形態と同様に、皮膚の表面温度を測定するための皮膚温度測定手段を測定端面936に設けてもよい。すなわち、サーミスタや熱電対などの接触型の温度センサを、図1(b)の56で示すのと同様の測定端面の適宜な箇所に設けて、測定端面936が皮膚に接触したときに、皮膚の表面温度を測定するようにしてもよい。
また、第二の実施形態における肌色データ測定手段及び皮脂量データ測定手段の一方または両方を従来構成のもので代用することもできる。すなわち、肌色データ測定手段の肌色センサにおいて、皮脂量センサと光透過体を共用せず、たとえば、特開平11−218447号公報に開示されているように、スリーブの底面の開口部、すなわち、測定端面936の適宜な箇所に設けられた所定の開口部を通して、RGB光の皮膚への放射及び皮膚からの反射を行うようにしてもよい。
また、第二の実施形態の皮脂量データ測定手段は、光透過体970を皮膚に接触させて皮脂を付着させた後で、プローブ900が皮膚から離れたときに皮脂付着時の近赤外光の反射量を測定するように構成されているが、この代わりに、特開2004−77332号公報に開示されているように、皮脂採取面すなわち光透過体を皮膚に接触させた状態で皮脂付着時の近赤外光の反射量を測定するようにしてもよい。上述の第二の実施形態においてかかる従来構成の皮脂量データ測定手段を採用した場合には、図13のステップ182乃至194に代えて、図13のステップ150、160及び170と同時並列的に、図13のステップ190における皮脂付着時の近赤外光の反射量の測定を実施することができるので、皮膚の水分量、発汗値、弾力、肌色の同時測定に加えて、さらに、皮脂量も同時に測定することが可能となる。
また、第二の実施形態の皮脂量データ測定手段における皮脂量センサの放射源として近赤外領域以外の波長領域の光を放射する放射源を採用することもできるが、可視光〜近赤外光の波長領域内の光を放射する放射源が好ましい。
また、第二の実施形態の肌色データ測定手段におけるRGB LEDとしては、Rの波長光として620nm〜640nm、Gの波長光として510nm〜530nm、Bの波長光として460nm〜480nmの範囲内の波長をそれぞれ放射するものを採用することができる。今回は、RGB LEDとして、R:630nm、G:520nm、B:470nmの各波長光を放射するものを使用した。
また、第一及び第二の実施形態の何れにおいても、二つのスプリング(60と62、または960と962)の両方を備えることは必須ではない。すなわち、スリーブと本体ケーシング間にはスプリング(62または962)を設けるが、弾力センサの後端部にはスプリング(60または960)を設けずに弾力センサを本体ケーシングまたはセンサケーシングに対して固定し、測定端面が皮膚に押し当てられる前の状態では、弾力センサの接触子がスリーブ内に後退した状態とされた構成を採用してもよい。この場合は、スリーブが押圧されてスプリング(62または962)が圧縮されるに伴って、弾力センサの接触子が測定端面の開口部に接近し、所定の押圧力がスプリング(62または962)を介してスリーブに印加された時点で、接触子の先端部と測定端面が共に皮膚に接触するようにすることができる。
また、逆に、弾力センサの後端部にはスプリング(60または960)を設けるが、スリーブと本体ケーシング間にはスプリング(62または962)を設けずにスリーブを本体またはセンサケーシングに対して固定して、測定端面が皮膚に押し当てられる前の状態では、弾力センサの接触子がスリーブ外に突出した状態とされた構成を採用してもよい。この場合は、弾力センサが押圧されてスプリング(60または960)が圧縮されるに伴って、弾力センサの接触子が測定端面の開口部に接近し、所定の押圧力がスプリング(60または960)を介して弾力センサに印加された時点で、接触子の先端部と測定端面が共に皮膚に接触するようにすることができる。
また、第一及び第二の実施形態の図8及び図13のそれぞれにおける測定処理のフローの説明では、水分量データ測定手段として、図4に示す構成を採用したものとして説明したが、図5に示す構成を採用してもてよい。
また、図8のステップ84、86、120、122、図13のステップ134、138、140、182〜186、200、及び202をオプションとしてもよい。
また、図8のステップ88、図13のステップ142に代えて、オペレータが、測定端面が皮膚に適度の押圧力で接触したことを確認した後、適宜に設けたスイッチをオンにすることにより、以降のステップが開始されるようにしてもよい。
また、第一及び第二の実施形態において、オペレータに動作状況を通知するために複数のLEDを用いたが、一つのLEDだけを用いて、その点灯の色や点滅周期を適宜変更するようにしてもよく、また、LEDの代わりにブザー音やLCD表示を採用してもよい。