JP5107358B2 - レンズ評価方法、レンズ評価装置及びレンズ製造方法、並びにレンズ特性表示方法 - Google Patents

レンズ評価方法、レンズ評価装置及びレンズ製造方法、並びにレンズ特性表示方法 Download PDF

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Description

本発明は、眼鏡レンズまたは眼鏡レンズ成形に用いるモールドの光学性能や面形状を評価する方法および装置、並びに、この評価方法または評価装置を用いた眼鏡レンズ製造方法、更に眼鏡レンズの光学特性を表示する方法に関する。
眼鏡レンズの製造・加工にあたっては、得られた眼鏡レンズの両光学面が仕様通りあるいは設計通りの光学性能や面形状を有しているかどうかを評価する必要がある。このような眼鏡レンズの評価は、主にレンズメータを用いて点単位に光学特性(屈折力)を測定することにより実施され、単焦点レンズならば光学中心、多焦点レンズならば遠用部光学中心や加入屈折力を測定する位置(遠用部頂点屈折力測定点と近用部測定基準点)、累進屈折力レンズならば遠用部測定基準点や加入屈折力を測定する位置(遠用部測定基準点と近用部設計基準点)を測定点として測定するのが一般的である。
なお、各種眼鏡用レンズ(単焦点眼鏡レンズ、多焦点眼鏡レンズ、累進屈折力眼鏡レンズ)の光学特性の測定方法や表示値に対する許容差については、ISOやJIS規格等で定められている。
しかし、眼鏡レンズの装用者は、レンズ上における前述の測定点以外の領域を通しても物を見ている。そのため、前述の測定点だけでなく、広範囲にレンズを評価する方法が求められている。例えば、累進屈折力レンズのように、片面あるいは両面が複雑な面形状を有している場合には、特に広範囲のレンズ評価が重要である。
従来技術としては、実際にレンズ面の3次元形状を測定して、その3次元形状から光学特性を算出して評価する試みが知られている(例えば、特許文献1及び3参照)。また、レンズ上の広範囲の光学特性、例えば屈折度数分布(以下、度数分布とも言う)を測定する方法、装置も知られており(引用文献2参照)、得られた広範囲の度数分布と設計データに基づく度数分布との誤差分布に基づいてレンズの光学特性を評価する試みも知られている(例えば特許文献4参照)。
上記測定される度数分布としては、非点収差分布{乱視屈折力(乱視度数ともいう)Cの絶対値の分布}や平均度数分布〔S+C/2の度数分布{ここで、Sは球面屈折力(球面度数ともいう)、Cは乱視度数を指す}〕などが用いられている。
また、眼鏡用プラスチックレンズ成形に使用されるモールドはガラスからなり、その成形面は、プラスチックレンズに転写される。そのため、モールドの成型面は、眼鏡レンズと同様の高い面精度を有している必要がある。従って、モールドがレンズ形状に成形されている場合には、眼鏡レンズと同様の評価が可能である。
特許文献1:特開平8−304228
特許文献2:特表平10−507825
特許文献3:特開2000−186978
特許文献4:再公表特許WO2003/098181
上記特許文献4記載の評価方法においては、レンズ光学面の広い範囲の評価が可能であり、各測定点における屈折度数の測定値と設計値との誤差の程度を把握できる。また、予めその許容差を設定することにより各測定点の誤差が許容差内なのかどうかを把握することができる。しかしながら、この従来の方法では、誤差の種類の違いについては特定されていなかった。
すなわち、誤差の種類としては、その一つの種類として、レンズのある領域にわたって、ほぼ均一に同じ値の誤差が生じている場合や緩やかに変化する誤差が生じている場合がある。これらの誤差は、総称して「規則性のある誤差」(あるいは「全体的誤差」)と呼ぶこととする。また、他の種類として、局所的に大きく変化する誤差が生じている場合もある。この誤差は、上記「規則性のある誤差」に対して、「規則性のない誤差」(あるいは「局所的誤差」)と呼ぶこととする。そして、特に規則性のない誤差(局所的誤差)は、装用者にとって歪みや揺れとして感じられやすく、例え許容差内であっても問題になる場合がある。しかしながら、従来の評価方法では、このような規則性のある誤差(全体的誤差)と規則性のない誤差(局所的誤差)とを区別することは行なわれていなかった。
そこで、本発明の第1の目的は、これら誤差の種類に着目し、規則性のない誤差の有無やその誤差の程度等を評価できる方法を提供することである。
また、従来の測定方法や評価方法において用いる光学特性の指標として、平均度数分布や非点収差分布などが用いられ、これらの分布を基に評価している。しかしながら、これらの分布では乱視軸に関する情報が含まれていないため、乱視軸も考慮した評価が難しかった。更に、評価する対象がモールドの場合においても、上記した眼鏡レンズと同様の問題点があった。
本発明の第2の目的は、評価対象物であるレンズあるいはモールドの測定された度数分布と設計データに基づく度数分布との誤差を基に、レンズあるいはモールドを局所的誤差に着目して評価する方法および装置、並びにこれら方法または装置を用いた眼鏡レンズの製造方法、更にレンズの光学特性を表示する方法を提供することにある。
本発明のレンズ評価方法は、以下の(1)から(5)に示す工程を含んでいる。
(1)球面度数、乱視度数、乱視軸を表す点群からなる眼鏡レンズの実測度数分布に基づいて、複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換工程、
(2)眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成工程、
(3)眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した実測度数分布と計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出工程、
(4)複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、誤差分布算出工程で得られた誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出工程、
(5)誤差指数算出工程で算出された誤差指数をもとに前記眼鏡レンズの評価を行う評価工程。
本発明のレンズ評価装置は、眼鏡レンズの複数の測定点の球面度数、乱視度数、乱視軸からなる度数を測定し、実測度数分布を得る度数分布測定装置と、実測度数分布を用いて眼鏡レンズの評価を行う処理部を有する評価用コンピュータと、を備える。
そして、評価用コンピュータの処理部は、以下(1)から(5)に示す処理を行う。
(1)実測度数分布に基づいて、複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換処理、
(2)眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成処理、
(3)眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した実測度数分布と計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出処理、
(4)複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、誤差分布算出処理で得られた誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出処理、
(5)誤差指数算出処理で算出された誤差指数をもとに眼鏡レンズの評価する処理。
本発明のレンズの製造方法は、レンズブランクの光学的に仕上げられていない面を光学的に仕上げる工程と、両面が工学的に仕上げられたレンズにおける設計データとの誤差が許容範囲であるか否かを評価するレンズ評価工程と、を含んでいる。そして、特に、レンズ評価工程では、以下(1)から(5)に示す工程が繰り返される。
(1)球面度数、乱視度数、乱視軸を表す点群からなる眼鏡レンズの実測度数分布に基づいて、複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換工程、
(2)眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成工程、
(3)眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した実測度数分布と計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出工程、
(4)複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、誤差分布算出工程で得られた誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出工程、
(5)誤差指数算出工程で算出された誤差指数をもとに前記眼鏡レンズの評価を行う評価工程。
本発明のレンズ特性の表示方法は、以下の(a)から(f)に示す工程を含んでいる。(a)球面度数、乱視度数、乱視軸を表す点群からなる眼鏡レンズの実測度数分布に基づいて、複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換工程、
(b)眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成工程、
(c)眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した実測度数分布と計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出工程、
(d)複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、誤差分布算出工程で得られた誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出工程、
(e)誤差指数算出工程で算出された誤差指数から眼鏡レンズ内における誤差指数の分布を作成する誤差指数分布作成工程と、
(f)誤差指数分布作成工程で作成された誤差指数分布を表示する表示工程。
本発明によれば、局所的誤差の有無および程度を容易に把握することができ、より精度の高い評価が可能になる。また、各測定点の乱視軸を考慮した評価が可能になるため、より精度の高い評価が可能となる。
更に、本発明によれば、局所的誤差と全体的誤差の区別が簡単に行えるので、誤差が生じる原因の特定が容易になる。この結果、製造されたレンズの実際の度数分布と、設計データの度数分布との誤差の度合いを定量的に表現し、レンズ表面形状の特性を客観的に精度良く評価することができる。
また、本発明の製造方法を用いることにより、局所的誤差を許容範囲内に抑えたレンズを容易に製造することができる。
本実施形態における眼鏡レンズ評価装置の概略構成を示すブロック図である。 本実施形態における度数分布測定装置の概略構成を示す説明図である。 本実施形態における眼鏡レンズ評価装置の動作を示すシーケンス図である。 本実施形態に係る度数分布測定装置から出力される測定データを示す説明図である。 実施例に係る(S,C,Ax)度数分布を、(D1,D2,D3,D4,NT,ST)度数分布に変換する処理についての説明図である。 実施例に係る(S’,C’,Ax’)度数分布を、平均度数分布、非点収差分布、(D1,D2,D3,D4,NT,ST)度数分布に変換した結果を示す説明図である。 実施例に係る誤差指数分布を求める工程についての説明図である。 実施例に係る(D1,D2,D3)度数分布から誤差指数分布を求める工程についての説明図である。 実施例に係る(D4,NT,ST)度数分布から誤差指数分布を求める工程についての説明図である。 実施例に係る(D1,D2,D3)度数分布から誤差指数分布を求める工程についての説明図である。 実施例に係る(D4,NT,ST)度数分布から誤差指数分布を求める工程についての説明図である。 本実施形態における眼鏡レンズ製造方法を示すフローチャートである。
発明者らは、規則性のある誤差(全体的誤差)と規則性のない誤差(局所的誤差)と言う二つの種類の誤差に着目し、局所的誤差の有無や程度を評価することにより、従来できなかった眼鏡レンズのより緻密な評価が可能になることを見出した。
ここで「規則性のある誤差」と呼ぶものは、眼鏡レンズ全体の規則的な誤差を示しているので、従来のレンズメータによる点単位の検査方法でも十分検知でき、容易にその誤差を抽出することができる。そして、測定された度数と設計上の度数との差が、ISO又はJIS規格、あるいはそれらより厳しいレンズ製造者独自の基準の許容範囲内に収まっているか否かで合否判定を行える。
しかしながら、「規則性のない誤差」と呼ぶものは、眼鏡レンズのごく一部分にしか誤差を有しないことから、従来のレンズメータによる検査方法では検知しにくく、容易には誤差を抽出しづらい。もちろん、広い範囲にわたって多数の点を測定することにより、多数の点の誤差の分布を得ることも考えられるが、そのようにして得られる誤差分布は、全体的誤差に属するのかあるいは局所的誤差に属するのかの判断が困難であった。また、局所的誤差に属するとしても、全体的誤差の中でどの程度の局所的誤差が生じているのかを判断することは容易ではなかった。
そこで、発明者らは、規則性のない誤差を抽出し、この規則性のない誤差を数値的に特徴付ける手法を発明した。すなわち、規則性のない誤差についての度数分布を特徴付けるための効果的な方法として、誤差分布を微分すると、規則性のない誤差の場合には微分値はゼロとはならず、ある大きな量として存在することを見出した。そして、この事実を利用して、誤差の一階微分を取ると、規則性のない誤差を簡単に見つけることができるという知見を得た。
しかしながら、微分を取るにはその度数分布が連続的に変化する指標を用いる必要がある。一方、前記した従来の指標のうち、非点収差分布は、連続性がないため微分することができない。また、非点収差分布および平均度数分布は、その方向性(乱視軸)を考慮していないことから、一つの値が多くの情報から成り立っており、誤差分布の指標としては適切ではない。そこで、連続性のある度数分布を基に誤差分布を作成し、その微分を取ることが重要である。
この知見を基に、以下、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、この実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である。
[眼鏡レンズ評価装置]
まず、本実施形態に係る眼鏡レンズ評価装置について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る眼鏡レンズ評価装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施例の眼鏡レンズ評価装置10は、度数分布測定装置1と、データサーバ2と、評価用コンピュータ3と、入力手段4と、出力手段5と、レンズメータ6とを有している。レンズメータ6は、眼鏡レンズ(被検レンズ)の屈折力をスポット的に測定する。
度数分布測定装置1は、被検レンズの度数分布を測定する装置である。ここで、度数分布測定装置1の概略構成について、図2を参照して説明する。図2は、度数分布測定装置1の概略構成を示す説明図である。
度数分布測定装置1は、被検レンズ100の多数の点について、球面度数S、乱視度数C、乱視軸Axが測定できるものであればよく、従来の測定装置を利用することができる。
度数分布測定装置の一例を図2に示す。この度数分布測定装置1は、光源装置11と、ビームスプリッタ12と、スクリーン13と、CCDカメラ14と、計算装置15とからなる。光源装置11は、被検レンズ100に平行光を照射する。ビームスプリッタ12は、被検レンズ100を挟んで光源装置11の反対側に配置されており、複数の光透過孔(図示せず)を有している。
スクリーン13は、ビームスプリッタ12の被検レンズ100に対向する面の反対側の面に対向されている。このスクリーン13には、ビームスプリッタ12を透過した光が到達する。CCDカメラ14は、スクリーン13に表示された映像を取り込む。計算装置15は、CCDカメラ14によって取り込まれた映像から被検レンズ100を透過した光の経路を測定し、被検レンズ100の光学特性を計算する。この計算装置15は、図1に示される評価用コンピュータ3と兼用してもよい。
光源装置11から被検レンズ100に平行光を照射すると、被検レンズ100から光が出射される。被検レンズ100から出射された光は、ビームスプリッタ12を透過し、スクリーン13に投影される。計算装置15は、スクリーン13に投影される光(映像)から被検レンズ100を透過後の光の経路を測定し、被検レンズ100の光学特性を算出する。
再び、図1に示す度数分布測定装置1についての説明に戻る。データサーバ2は、データ記憶手段を有するコンピュータであり、評価用コンピュータ3とネットワークを介して接続されている。なお、度数分布測定装置1とデータサーバ2は、通信ケーブルなどの通信媒体で直接送受信可能に接続してもよい。データサーバ2は、被検レンズ100の評価に必要なデータと評価結果とを記憶する記憶部20を有する。
記憶部20は、設計データ記憶部21と、受注データ記憶部22と、測定結果記憶部23と、合否判定結果記憶部24を有する。設計データ記憶部21は、被検レンズ100の設計データをあらかじめ記憶し、受注データ記憶部22は、受注データをあらかじめ記憶する。測定結果記憶部23は、度数分布測定装置1やレンズメータ6で得られた各種測定結果や演算結果などの測定結果データを記憶する。合否判定結果記憶部24は、評価用コンピュータ3によって判定されたレンズの合否結果を表す合否結果データを記憶する。
データサーバ2は、工場のメインサーバ7とネットワークで接続されている。なお、メインサーバ7とデータサーバ2は、通信ケーブルなどの通信媒体で直接接続してもよい。メインサーバ7は、通信媒体8を介して眼鏡店9の注文用端末91に接続されている。本実施形態では、レンズの製造元であるレンズメーカの工場が、レンズの発注元である眼鏡店等の顧客からオンラインで受注する場合の例で説明する。通信媒体8としては特に限定されるものではなく、例えば、公衆通信回線、専用回線、インターネット等を利用することができる。
眼鏡店9には、上述した注文用端末91と、フレーム形状測定装置92が設置されている。フレーム形状測定装置92は、眼鏡フレームの枠形状を測定する装置である。注文用端末91は、眼鏡レンズを注文するために必要な各種情報をレンズメーカの工場へ送信するための端末コンピュータである。注文用端末91から工場のメインサーバ7に注文データが送られると、メインサーバ7上に登録されている受注処理プログラムにより受注処理が実行され、受注データが作成される。作成された受注データは、データサーバ2の受注データ記憶部22に記憶される。
受注データは、レンズに関する情報、眼鏡フレームに関する情報、処方値、レイアウト情報などである。レンズに関する情報としては、レンズの種類に関する情報やレンズ加工指示に関する情報がある。ここで、レンズの種類に関する情報としては、レンズ材質、屈折率、レンズ表裏面の光学設計などであり、レンズ加工指示に関する情報としては、レンズ厚さ、コバ厚、偏心、縁面の仕上げ方法、フレーム取付部の加工種類や方法、染色、コーティングなどが考えられる。
また、前記眼鏡フレームの情報としては、フレームサイズ、フレームの素材、色、玉形形状等がある。ここで、玉形形状とは、フレーム形状測定装置92により測定されたレンズ枠の形状を表すデータ、リムレスフレームや溝掘りフレームのように予め設定されている玉形形状を表すデータなどを指している。また、処方値としては、球面屈折力、乱視屈折力、乱視軸、プリズム、加入屈折力などがある。レイアウト情報としては、瞳孔間距離、左右片眼瞳孔間距離、近用瞳孔間距離、セグメント小玉位置、アイポイント位置などが有る。
工場のメインサーバ7には、レンズの形状を設計するためのレンズ設計プログラムが備えられている。メインサーバ7は、レンズ設計プログラムを実行し、上述した受注データと、記憶部20に予め記憶されている設計に必要なデータ(光学面形状、玉形形状など)に基づいた所望のレンズ形状(レンズ前面形状データ、レンズ後面形状データ、レンズ前面と後面の配置に関するデータ、周縁形状データ等)を計算する。計算されたレンズ形状は、設計データとしてデータサーバ2の設計データ記憶部21に記憶される。
つまり、被検レンズ100の設計値は、設計データと受注データを基に決定されている。そして、設計データには、被検レンズ100の前面(装用眼から遠い方のレンズ表面)と後面(装用眼から近い方のレンズ表面)の3次元形状データと、レンズ中心厚やプリズム値などのレンズ前面と後面の間隔や配置に関するデータと、被検レンズ100の屈折率やアッベ数(ある光学材料の色収差に対する補正を見積もるための数)などの材質パラメータとが含まれる。なお、3次元形状データは、スプライン関数により関数化されていることが好ましい。
また、工場のメインサーバ7には、レンズの加工データを作成するための加工データ作成プログラムも備えられている。メインサーバ7は、加工データ作成プログラムを実行し、前述した受注データや設計データに基づいて、レンズ製造過程(例えばブロック工程、切削工程、研磨工程、染色工程、表面処理工程、玉形加工工程など)における各種加工条件が設定された加工データを作成する。作成された加工データは、データサーバ2の記憶部20に記憶される。そして、受注データ、設計データ、加工データに基づいて、アンカットレンズ(玉形加工前のフィニッシュトレンズ)が製造され、必要により染色、表面処理、玉形加工等が行なわれて、発注元に納品される。
評価用コンピュータ3は、データサーバ2の記憶部20に記憶されているデータと度数分布測定装置1により測定されたデータとから設計値に対する被検レンズの評価を行う。この評価用コンピュータ3は、度数分布測定装置1、レンズメータ6、入力手段4及び出力手段5に接続されると共に、ネットワークを介してデータサーバ2に接続されている。
評価用コンピュータ3は、度数分布測定装置1、レンズメータ6、データサーバ2、入力手段4及び出力手段5とのインタフェース(図示せず)と、処理部31と、記憶部32を有している。
処理部31は、度数分布変換処理311、計算度数分布算出処理312、誤差分布算出処理313、重み付け補正処理314、微分分布算出処理315、評価指数作成処理316、合否判定処理317などを行う。度数分布変換処理311は、度数分布測定装置1によって測定された度数分布{(球面度数S,乱視度数C,乱視軸Ax)を表す点群からなる分布}を連続性のある8つの分布へ変換する処理である。度数分布算出処理312は、設計上の度数分布(計算度数分布)を算出する処理である。この設計上の度数分布(計算度数分布)とは、眼鏡レンズが設計どおりに製造された場合の度数分布のことである。
誤差分布算出処理313は、度数分布測定装置1によって測定された度数分布(実測度数分布)と設計上の度数分布(計算度数分布)との誤差分布を算出する処理である。重み付け補正処理314は、誤差分布算出処理313において算出された誤差分布に重要度である重み付けを行う処理である。微分分布算出処理315は、重み付け補正処理314で重み付けが行われた誤差分布をレンズ内の距離によって微分した微分分布を算出する処理である。評価指数作成処理316は、誤差分布を微分した誤差指数から評価指数を作成する処理である。そして、合否判定処理317は、評価指数作成処理316において作成された評価指数に基づいてレンズの合否を判定する処理である。
記憶部32は、合否判定基準記憶部321と、重み付け計算用係数記憶部322を有している。合否判定基準記憶部321には、合否判定処理317において用いられる合否判定基準データが記憶されている。また、重み付け計算用係数記憶部322には、重み付け補正処理において用いられる重み付け計算用係数が記憶されている。
入力手段4は、測定する被検レンズを識別するためのデータを評価用コンピュータ3に入力するために用いられる。この入力手段4としては、例えば、バーコードリーダ、2次元コードリーダ、ICチップリーダ、キーボード、他の装置から送られてきた識別データを受信する手段などを挙げることができる。また、入力手段4によって入力されるデータとしては、後述する識別データなどを挙げることができる。
出力手段5は、設計レンズの度数分布(計算度数分布)、度数分布測定装置1で測定された被検レンズ100の度数分布(実測度数分布)、設計レンズに対する被検レンズ100の誤差分布、この誤差分布を基にした合否判定結果等を表示またはデータ出力する。この出力手段5としては、例えば、ディスプレイ装置やプリンタ、他の装置へ結果をデータとして出力する手段などが挙げられる。
[眼鏡レンズ評価装置の動作]
次に、眼鏡レンズ評価装置について、図1〜図3を参照して説明する。
図3は、本発明に係る眼鏡レンズ評価装置の動作を示すシーケンス図である。
1.前工程(ステップS1)
はじめに、両面が光学的に仕上げられた被検レンズとして、プラスチックレンズを得る前工程を行う(ステップS1)。つまり、前工程では、上述した受注データ、設計データ、加工データに基づいて、アンカットレンズ(玉形加工前のフィニッシュトレンズ)が製造される。
このアンカットレンズの作成方法は、従来の技術を用いることができるため、詳細な説明は省略するが、例えば、注型重合成形や射出成形により両光学面が仕上げられた状態のアンカットレンズを成形してもよい。また、一方の面または両面が光学的に仕上げられていないレンズブランクやセミフィニッシュトレンズブランクを用いて、その仕上げられていない面を光学的に仕上げてアンカットレンズを得てもよい。その場合、レンズブランクやセミフィニッシュトレンズブランクの光学的に仕上げられていない面を、カーブジェネレータ(CG)等の切削装置で切削する。その後、切削された面を研磨装置によって研磨することにより、両光学面が仕上げられたアンカットレンズが形成される。
2.第1レンズ評価工程(ステップS2〜S4)
次に、前工程において得られたアンカットレンズ(被検レンズ100)に対して第1のレンズ評価を行う。
第1レンズ評価工程は、被検レンズ100の光学特性をスポット的に測定して評価する工程であり、特定の測定位置(以下、第1評価測定点と呼ぶ)における屈折度数の実測値と設計値とを比較して合否を判定する。以下、単に屈折度数(あるいは度数)と言った場合には、球面度数S、乱視度数C、および、乱視軸Axによって特徴付けられた光学特性を表すものとする。
第1評価測定点としては、1点あるいは複数の点を設定することができる。この第1評価測定点は、任意に設定することもできるが、レンズの屈折度数の表示値を検査する位置が含まれているとより好ましい。屈折度数の表示値を検査する位置としては、例えば、単焦点眼鏡レンズであれば、レンズの屈折力(後面頂点屈折力)を測定する位置(光学中心)である。多焦点眼鏡レンズであれば、遠用部屈折力(後面頂点屈折力)を測定する位置(遠用部測定基準点)や加入屈折力を測定する位置(遠用部頂点屈折力測定点、近用部測定基準点)である。累進屈折力レンズであれば、遠用部屈折力(後面頂点屈折力)を測定する位置(遠用部測定基準点)や加入屈折力を測定する位置(遠用部測定基準点、近用部設計基準点)である。
第1レンズ評価工程では、まず、レンズメータ6(図1を参照)を用いて第1評価測定点における屈折度数を測定する(ステップS2)。この測定結果は、評価用コンピュータ3に送信される。なお、第1評価測定点を広範囲に多数設定する場合には、例えば、特許文献4に記載のような一度に多数の点の屈折度数を測定できる装置を用いて各点の屈折度数を測定してもよい。
次に、評価用コンピュータ3は、レンズメータ6から供給された測定結果が許容範囲条件内であるかどうかを判断し合否を判定する(ステップS3)。
ここで、評価用コンピュータ3が許容範囲条件を取得する手順を説明する。
まず、被検レンズ100に添付されたそのレンズを特定する識別データを入力手段(例えばバーコードリーダやICチップリーダ)4により読み取る。この識別データは、例えば、指示書に印刷されたバーコード等の情報やICチップに記憶された情報である。入力手段4は、読み取った識別データを評価用コンピュータ3に送る。
評価用コンピュータ3は、入力手段4で読み取られた識別データを、ネットワークを介してデータサーバ2に送り、識別データに対応する被検レンズ100の設計データと受注データを問い合わせる。データサーバ2は、評価用コンピュータ3から識別データを受信すると、この識別データに対応する被検レンズ100の設計データと受注データを設計データ記憶部21および受注データ記憶部22から取り出して評価用コンピュータ3に送信する。設計データには、被検レンズの第1評価測定点における設計上の表示値(屈折度数等)およびその許容範囲条件の情報が含まれている。その結果、評価用コンピュータ3は、許容範囲条件を取得することができる。
ステップS3の処理において、レンズメータ6による測定結果が許容範囲条件外であると判断したとき、評価用コンピュータ3は、被検レンズ100に対する第1のレンズ評価の結果が不合格であると判定し、レンズの評価を終了する(ステップS4)。不合格となった被検レンズ100は、作り直されたり、資源として再利用されたりする。
一方、ステップS3の処理において、レンズメータ6による測定結果が許容範囲条件内であると判断したとき、評価用コンピュータ3は、被検レンズ100に対する第1のレンズ評価の結果が合格であると判定し、次の工程(ステップS5)に処理を移行する。
3.第2レンズ評価工程(ステップS5〜S15)
第1レンズ評価工程で合格と判定された被検レンズ100に対しては、次に第2のレンズ評価が行われる。
第2レンズ評価工程は、レンズ光学面の広範囲の光学特性を測定し、被検レンズ100が設計データから許容される光学特性を有しているかどうかを評価する工程である。この第2レンズ評価工程は、被検レンズ100の実測度数分布を測定する度数分布測定工程と、この実測度数分布に基づいて任意の方向の度数分布を得る度数分布変換工程を有している。更に、第2レンズ評価工程は、計算上の度数分布との差を求めて誤差分布を算出する誤差分布算出工程と、誤差分布算出工程で得られた誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出工程と、この誤差指数をもとに被検レンズの評価を行う評価工程を有している。
第2レンズ評価工程では、まず、被検レンズ100の実測度数分布を測定し(ステップS5)、その度数分布から処方度数を除去する。ここで、処方度数とは、製造された眼鏡(本例では、累進屈折力レンズを用いた眼鏡)を装用する装用者の視力に応じて処方される度数である。なお、多焦点眼鏡レンズや累進屈折力レンズを評価する場合の前記除去に用いる処方度数は、遠用部の処方度数を用いている。
次に、処方度数が除去された実測度数分布を連続性のある度数分布に変換する(ステップS6)。そして、評価用コンピュータ3が、実測度数分布から変換された連続性のある度数分布と、設計上の度数分布であって処方度数が除去された計算度数分布から変換された連続性のある度数分布との誤差分布を算出する(ステップS7)。
次に、誤差分布に重み付けを行い誤差分布の補正を行う(ステップS11)。続いて、誤差分布を微分して誤差指数を算出する(ステップS12)。そして、誤差指数から評価指数を作成する(ステップS13)。このステップ13の処理で作成された評価指数を用いてレンズの合否を判定する(ステップS14,ステップ15)。そして、ステップS15の処理で不合格と判定した場合には、レンズの評価を終了し(ステップS16)、合格と判定した場合には、次工程に処理を移行する(ステップS17)。
以下、第2レンズ評価工程の各処理について詳細に説明する。
(1)度数分布測定工程(ステップS5)
度数分布測定工程では、度数分布測定装置1によって広範囲における多数の測定点(以下、「第2評価測定点」と呼ぶ)について屈折度数を測定し、その測定結果から被検レンズ100の屈折度数分布を得る。なお、本実施形態において、屈折度数分布(あるいは度数分布)とは、球面度数S、乱視度数C、乱視軸Axで特徴付けられる点の分布とする。また、第2評価測定点の屈折度数を測定する測定装置としては、度数分布測定装置1に限定されるものではなく、広範囲にわたって多数の測定点の屈折度数を測定できる装置であればよい。
ここで、度数分布測定装置1を用いて度数分布を作成する場合について、図4を参照して説明する。
図4は、度数分布測定装置1から出力される測定データを説明するための説明図である。
まず、測定対象の被検レンズ100を度数分布測定装置1にセットし、測定開始の操作をする。測定開始の操作が行われると、光源装置11から平行光が出射され、その光が被検レンズ100を通過してビームスプリッタ12により複数の光線に分離される。これにより、スクリーン13上には、ビームスプリッタ12の複数の光透過孔に対応した複数の光スポットが投影される。
度数分布測定装置1は、基準座標RefX,RefYと、座標X,Yと、偏差DX,DYと、屈折度数とを測定データとして得る。
基準座標RefX,RefYは、被検レンズ100がセットされていない状態におけるスクリーン13上の光スポット(以下、校正スポットと呼ぶ)の位置を示す。座標X,Yは、光源装置11の光が被検レンズ100のビームスプリッタ12側の面から出射するときの位置(以下、測定点と呼ぶ)を示す。
偏差DX,DYは、被検レンズ100がセットされた状態におけるスクリーン13上の光スポット(以下、測定スポットと呼ぶ)の位置と、これに対応する校正スポット(測定スポットと同一の光透過孔を通過した校正スポット)の位置との偏差である。屈折度数は、被検レンズ100を通過した光の光路を基に算出される。
基準座標RefX,RefYと、測定点座標X,Yと、偏差DX,DYと、屈折度数は、個々のスポットごとに対応付けて出力される。そのため、被検レンズ100の各測定点座標X,Yにおける屈折度数、すなわち被検レンズ100の屈折度数分布(球面度数S,乱視度数C,乱視軸Ax)が得られる。得られた被検レンズ100の屈折度数分布は、度数分布として評価用コンピュータ3に送信される。
次に、度数分布から処方度数を除いた度数分布を作成される。
評価用コンピュータ3は、度数分布測定装置1より受信した被検レンズ100の実測度数分布(S,C,Ax)から処方度数を全体に亘って除去し、基準実測度数分布(S’,C’,Ax’)を作成する。
このように、屈折度数分布から処方度数(遠用部の処方度数)を除去して基準実測度数分布を作成する理由は、処方度数分の屈折度数はレンズにとって広範囲にわたって必要な屈折度数なので、この処方度数を除去した後に残存した屈折度数だけを評価の対象にした方がより適切に評価できるためである。なお、「屈折度数分布から処方度数を除去する」とは、そのレンズの全領域において処方された遠用度数(S,C,Ax)がなくなるように度数分布を補正することを意味するこことする。
(2)基準実測度数分布を連続性のある度数分布に変換する工程(ステップS6)
次に、ステップS5の処理で得られた基準実測度数分布を基に、平均度数分布、非点収差分布および連続性のある度数分布を作成する工程について、図5および図6を参照して説明する。
図5は、基準実測度数分布(S’,C’,Ax’) を、(D1,D2,D3,D4,NT,ST)度数分布に変換する処理を説明する説明図である。図6は、基準実測度数分布(S’,C’,Ax’)に基づいて得た平均度数分布、非点収差分布、(D1,D2,D3,D4,NT,ST)度数分布を示す説明図である。
図5に示すように、基準実測度数分布(S’,C’,Ax’)は、各第2評価測定点70に対して、球面度数S、乱視度数C、乱視軸Axで特徴付けられる点群からなる。このような基準実測度数分布を基に平均度数分布と非点収差分布を作成する。
平均度数分布は、各第2評価測定点70の球面度数Sと、乱視度数Cの2分の1の値との和によって算出される値(S’+C’/2)の分布である。また。非点収差分布は、各第2評価測定点70の乱視度数Cの絶対値(|C’|)の分布である。
非点収差分布には、不連続な領域が存在するため微分を取ることができない(なお、不連続な領域は図6に示す縦軸と略一致する線上に存在しやすい)。
平均度数分布は、各第2評価測定点70について全方向における度数を平均した値(度数)の分布であり、多くの情報が混ざった度数の分布となるため、高精度な度数分布の評価を行えない。また、非点収差分布および平均度数分布には、各第2評価測定点70の乱視軸Axの情報が含まれていないため高精度な度数分布の評価を行えない。そこで、ステップS6の処理では、非点収差分布および平均度数分布の他に、連続性があり、且つ、乱視軸Axの情報が反映された屈折度数分布を作成する。
このような屈折度数分布は、基準実測度数分布を、各第2評価測定点70における任意方向の度数を表す度数分布に変換することで作成できる。このようにして作成された屈折度数分布は、各第2評価測定点70の屈折力の方向が統一されるため、連続性を有しかつ乱視軸Axの情報が反映されたものになる。なお、上記任意方向は、適宜設定可能であるが、等角度の複数方向を設定することが好ましい。なぜなら、基準実測度数分布を等角度の複数方向に基づいて変換することにより、各第2評価測定点70における度数を詳細に把握することができるためである。
また、図5に示すように、任意方向は、水平方向を0度として、反時計回りを正とするとき、0度(D1方向)、45度(D2方向)、90度(D3方向)、135度(D4方向)の4方向に設定することが好ましい。このように、任意方向をD1〜D4の4方向に設定すると、少ない方向の度数分布(4種類)で被検レンズを適切に評価できる。すなわち、眼鏡レンズを評価する上で重要な水平方向と垂直方向の度数分布を有し、かつ、その中間の方向の度数分布も有するからである。また、このD1〜D4の度数分布があればレンズ上の任意の場所と方向の度数を計算で求めることができる。なお、任意方向は、上述した4方向に限定されるものではなく、互いに垂直に交差する複数の方向でもよい。
以下、各第2評価測定点70におけるD1方向の屈折力(度数)をD1、その分布をD1分布と記す。また、各第2評価測定点70におけるD2方向の屈折力をD2、その分布をD2分布と記す。また、各第2評価測定点70におけるD3方向の屈折力をD3、その分布をD3分布と記す。また、各第2評価測定点70におけるD4方向の屈折力をD4、その分布をD4分布と記す。
非点収差分布は、乱視度数Cに焦点を置いた分布であるが、上述したように、連続性を有さず、乱視軸Axに関する情報が含まれない。そこで、本実施形態では、非点収差分布に近い分布として、垂直に交わる2方向の屈折力(度数)の差を表す分布を用いる。このような分布は、非点収差分布に近い分布でありながら、連続性があり、且つ、乱視軸Axが反映されたものとなる。これにより、従来の評価方法よりもより精度の高い評価を行うことが可能である。
任意方向をD1〜D4方向に設定した場合は、垂直に交わる2方向の屈折力(度数)の差を表す分布が2つになる。一方の分布は、D1(0度)方向の度数分布とD3(90度)方向の度数分布との差(NT=D1−D3)を表す分布(以下「NT分布」と記す)である。他方の分布は、D2(45度)方向の度数分布とD4(135度)方向の度数分布との差(ST=D2−D4)を表す分布(以下「ST分布」と記す)である。
各第2評価測定点70において、(S’,C’,Ax’)の組と(D1,D2,D3,D4)の組は、一対一に対応しており、所定の計算式を用いることで(D1,D2,D3,D4)からNTとSTが算出される。すなわち、(S’,C’,Ax’)の組と(D1,D2,D3,D4,NT,ST)の組は一対一に対応している。
また、乱視軸Axの情報を反映するD1、D2、D3、D4、NT、STの6つの分布を用いることにより、被検レンズ100の光学特性(度数分布)を効果的に評価することができる。
(3)設計上の度数分布を作成する工程(ステップS8,S9)
第1レンズ評価工程のステップS3の処理において、合格と判定された被検レンズ100については、ステップS5〜S7の処理とは別に、その被検レンズ100の設計上の屈折度数分布(計算度数分布)を作成する。
ステップS3の処理において、被検レンズ100に対する第1のレンズ評価の結果が合格であると判定されると、評価用コンピュータ3の処理部31は、データサーバ2から被検レンズ100の設計データと受注データを取得する(ステップS8)。
次に、評価用コンピュータ3の処理部31は、被検レンズ100の設計データと受注データに基づいて、そのレンズの3次元形状モデルを作成する。そして、作成した3次元形状モデルとレンズの屈折率に基づいて、広範囲の点(以下、「計算度数算出点」と呼ぶ)における屈折度数を計算し、その度数分布(S,C,Ax)を算出する(ステップS9)。なお、計算度数算出点は、第2評価測定点70と対応する位置に設定することがより好ましい。
次に、評価用コンピュータ3の処理部31は、ステップS9の処理で得られた計算度数分布(S,C,Ax)から処方度数を全体に亘って除去し、基準計算度数分布(S’,C’,Ax’)を作成する。
(4)計算度数分布の連続性のある度数分布に変換する工程(ステップS10)
評価用コンピュータ3の処理部31は、ステップS9の処理で得られた基準計算度数分布(S’,C’,Ax’)を基に、設計上の平均度数分布、設計上の非点収差分布および連続性のある計算度数分布を作成する(ステップS10)。
連続性のある計算度数分布の作成は、前述した連続性のある実測度数分布の作成と同様に行われる。つまり、各計算度数算出点についてD1方向、D2方向、D3方向、D4方向の屈折力(D1、D2、D3、D4)を算出し、設計上のD1分布、D2分布、D3分布、D4分布を作成する。そして、D1、D2、D3、D4を基にNT、STを算出し、NT分布、ST分布を作成する。これら設計上のD1分布、D2分布、D3分布、D4分布、NT分布、ST分布は、連続性があり、且つ、乱視軸Axが反映された分布である。
(5)誤差分布作成工程(ステップS7)
評価用コンピュータ3の処理部31は、ステップS6の処理で得た実測上の平均度数分布、非点収差分布、D1〜D4分布、NT分布、ST分布と、ステップS11の処理で得た計算上の平均度数分布、非点収差分布、D1〜D4分布、NT分布、ST分布に基づいてそれぞれの誤差分布(比較用度数分布)を作成する。具体的には、第2評価測定点70における各度数と、第2評価測定点70に対応する計算度数算出点における各度数との差(誤差)を算出し、それぞれの誤差分布を作成する。
平均度数分布の誤差Δ|C|は、
Δ|C|=|C’|−|C’|により算出される。
平均度数分布の誤差Δ(S+C/2)は、
Δ(S+C/2)=(S’+C’/2)−(S’+C’/2)により算出される。
D1分布の誤差ΔD1は、
ΔD1=D1−D1により算出される。
D2分布の誤差ΔD2は、
ΔD2=D2−D2により算出される。
D3分布の誤差ΔD3は、
ΔD3=D3−D3により算出される。
D4分布の誤差ΔD4は、
ΔD4=D4−D4により算出される。
NT分布の誤差ΔNTは、
ΔNT=NT−NTにより算出される。
ST分布の誤差ΔSTは、
ΔST=ST−STにより算出される。
(6)誤差分布補正工程(ステップS11)
次に、ステップS7で得られた各第2評価点の誤差分布(ΔD1,ΔD2,ΔD3,ΔD4,ΔNT,ΔST)に重み付けの処理を行う誤差分布補正工程について説明する。
ここで、眼鏡レンズの重み付けについて説明する。一般的に、眼鏡レンズは、装用者がよく使用する領域に重みをおいて評価することが好ましい。例えば、単焦点レンズは、光学中心付近に重みをおいて評価される。また、累進屈折力レンズは、遠用部から近用部にかけて重みをおいて評価される。特に、累進屈折力レンズは、重み付けを行うことが効果的である。
すなわち、累進屈折力レンズは、遠くを見るための遠用領域と、近くを見るための近用領域を有している。そして、累進屈折力レンズは、主に遠用領域を基準として、近くを見るための度数を付加することで実現されている。この付加度数が存在しているために、累進屈折力レンズは、近用領域の側方に非点収差が発生している。そのため、累進屈折力レンズは、レンズ上のこの非点収差が発生した部分を通して物を見ても良好な視野は得られなくなっている。これにより、累進屈折力レンズでは、遠方から近方にかけてレンズ上のよく使う領域と近方側方部の明視できない領域とを区別して、評価の重み付けを行うことが好ましい。
具体的には、下記のようにして行われる。非点収差の小さい領域は、良好な視野が得られる領域であると考えられる。これにより、非点収差の小さい領域は、重み付けを大きくし、近用領域側方の非点収差の大きい領域は、重み付けを小さくする。ここで、誤差の大きさは、加入屈折力の大きさに依存している。なお、加入屈折力とは、所定の条件で測定された,近用部頂点屈折力と遠用部頂点屈折力との差である。そのため、重み付けは、加入屈折力の大きさにより変化する。これにより、重み付けの量は一定ではなく、加入屈折力を変数に持つのが好ましい。
これらにより、重み付けは、良好な視野が得られる領域では許容誤差を小さくし、重要でない領域意では許容誤差を大きくするというように許容誤差を変化させて行われる。この重み付けに用いられる重み付け関数の一具体例を次式[数2]に示す。なお、次式より計算された重み付けWjは、重み付け計算用係数として、重み付け計算用係数記憶部322に記憶される。
Figure 0005107358
j:測定点
A:定数
AS:計算度数分布の測定点jにおける非点収差の大きさ
Wj:重み付け
なお、測定点jの数がN個であれば1〜Nまでの値を取る。
次に、上記式より得られた重み付けWjを用いて、6つの誤差分布D1,D2,D3,D4,NT,STに重み付けを行う。すなわち、評価用コンピュータ3の処理部31は、重み付け計算用係数記憶部322から重み付け計算用係数である重み付けWjを取得し、6つの誤差分布D1,D2,D3,D4,NT,STに重み付けを行う。この6つの誤差分布D1,D2,D3,D4,NT,STの各測定点jにおける重み付けは、次式[数3]によって算出される。これにより、重み付けされた誤差分布(δD1,δD2,δD3,δD4,δNT,δST)を得ることができる。
Figure 0005107358
(7)誤差微分分布作成工程(ステップS12)
次に、ステップS11で補正された誤差分布から、誤差微分分布を作成する。まず、評価用コンピュータ3の処理部31は、補正された誤差分布から誤差微分値(ED1,ED2,ED3,ED4,ENT,EST)を算出する。この誤差微分値(誤差指数)は、誤差分布を各測定点のレンズ内の距離により、一階微分して得た値の絶対値が最大となる方向における値である。この誤差微分値を誤差指数とも呼ぶ。誤差指数は、例えば次式[数4]によって算出される。
Figure 0005107358
E:誤差指数
s:レンズ内距離
j:測定点
ここでjは測定点を表し、測定点数がN個あれば、1〜Nまでの値を取る。
次に、評価用コンピュータ3の処理部31は、この誤差指数から、レンズ内における誤差指数分布を作成する。
図7は、D1分布における実測度数分布、計算度数分布、誤差分布及び誤差指数分布を表示装置に表示した例を示すものである。
この図7に示すように、評価用コンピュータ3は、誤差指数分布を例えば出力手段5である表示装置に表示させたり、プリンタ装置を用いて紙に印刷する。ここで、誤差指数分布は、誤差指数の大きさを例えば、等高線や色の濃淡等で表される。等高線で表示する場合を図7(d)に示す。
図7(c)及び図7(d)に示すように、誤差分布で等高線の間隔が詰っている箇所で誤差指数は大きくなっていることがわかる。また、誤差指数の大きさを色の濃淡で表示する場合は、例えば誤差指数の大きい場所を濃い色で表示し、誤差指数の小さい場所を薄い色で表示する。誤差指数の大きい場所は誤差の変化が大きい場所であり、誤差指数の小さい場所は誤差の変化が小さい場所である。すなわち、誤差指数分布により局所的に大きく変化する誤差(規則性のない誤差)を容易に識別することができ、被検レンズにおける局所的誤差の有無、程度、場所等を客観的かつ視覚的に認識することができる。
次に、累進屈折力眼鏡レンズ(遠用部屈折力(S:−1.00,C0.00),加入屈折力2.00)における6つの分布D1、D2、D3、D4、NT、STの実測度数分布、計算度数分布、誤差分布及び誤差指数分布を実際に測定・計算し表示した例を示す。図8と図9は局所的誤差があまり生じていないレンズの例であり、図8に分布D1、D2、D3を示し、図9に分布D4、NT、STを示している。図10と図11は局所的誤差が生じているレンズの例であり、図10に分布D1、D2、D3を示し、図11に分布D4、NT、STを示している。
この図8〜図11に示すように、評価用コンピュータ3は、ステップS6、ステップ7,ステップS10、ステップS12で作成した6つの分布を全て出力手段5である表示装置に表示させてもよい。これにより、眼鏡レンズにおける誤差の程度、誤差が発生している場所、誤差の種類(局所的誤差か全体的誤差か)を客観的かつ視覚的に認識することができる。更に、4つの分布D1〜D4は、レンズ内における4つの方向の度数を示したものである。その結果、眼鏡レンズ内で、誤差が発生している方向を識別することができる。その結果、精度の高い眼鏡レンズの評価を行うことができる。
なお、誤差分布及び誤差指数分布の表示方法は、図7〜図11に示すものに限定されるものではなく、例えば、誤差分布及び誤差指数分布を3次元形状データとして表示装置に表示させてもよい。即ち、誤差の大きいところを高く表示し、誤差の小さいところを低く表示する。これにより、眼鏡レンズ内における誤差や局所的誤差の有無、程度、誤差が発生している場所を極めて容易に視覚的に識別することができる。また、誤差の大小を、点の大小に変換してレンズ内に表示させてもよい。
なお、ステップS8に処理を移行する前に、ステップS7で作成された誤差分布から、誤差微分値(誤差指数)を求めてもよい。すなわち、重み付けを行い補正する前の誤差分布から誤差指数を算出する。この誤差微分値(誤差指数)は、次式[数5]により求めることができる。また、この誤差指数に重み付け処理を行ってよい。
Figure 0005107358
E:誤差指数
s:レンズ内距離
j:測定点
(8)評価指数作成工程(ステップS13)
次に、ステップS12で得られた誤差指数をもとに評価指数βを作成する工程について説明する。
まず、評価用コンピュータ3の処理部31は、多重評価を避けるために、各第2評価測定点における6つの誤差指数のうち最大の分布を代表値とする。そして、評価用コンピュータ3の処理部31は、最大の分布における評価領域内の全点について足し合わせ、平均化する。この平均化した値が、実測度数分布全体を特徴付ける誤差指数となる。
ここで、設計上意図しない局所的に変化する誤差(規則性の無い誤差)がある場合、誤差の微分値は、大きくなる。そのため、局所的に変化する誤差がある場合、誤差指数は、大きくなる傾向にある。そこで、本例に係る評価用コンピュータ3の処理部31は、予め設定した最大値から誤差指数の合計を減算して評価指数βを算出する。この最大値は、例えば、100点とする。その結果、100点に近いものほど、誤差が少なく設計を良く反映していることになる。これに対し、点数が低くなるほど、誤差の程度が大きく、設計を反映していないと考えることができる。
この指数(評価指数)βは、数式で表現すると以下の式[数6]ようになる。なお、Cは定数である。この数式により、局所的に大きく変化する度数変化がある場合、指数βは小さくなり、そのような変化が少ない場合は、指数βは大きくなることが容易にわかる。
Figure 0005107358
なお、図8と図9に示したレンズの評価指数βは93であり、図10と図11に示したレンズの評価指数βは11であった。この評価指数も、出力手段5である表示装置に表示させると、客観的評価が容易になり好ましい。
なお、評価指数は、上述した方法に限定されるものではない。例えば、評価指数を算出するための誤差指数は、各第2評価測定点における6つの誤差指数の評価領域内の全ての点を足し合わせて、平均化してもよい。また、各第2評価測定点における6つの誤差指数のうち、最大のものと、その次に大きいものを代表値に設定してもよい。更に、上述では、100点から誤差指数の合計を減算したものを評価指数としたが、誤差指数そのものを評価指数としてもよい。また、最大値を100点に設定した例を説明したが、最大値は、100点に限定されるものではないことは、言うまでもなく、10点や1000点等ユーザの要望に応じて適宜設定できるものである。
(9)合否判定(ステップS14〜S16)
次に、ステップS13で得られた評価指数βを用いてレンズの合否を判定する。
本例では、まず、複数のレンズについて度数分布を測定して、各レンズの指数βを計算する。各レンズの指数βから頻度分布を求め、この頻度分布を合否判定基準データとして合否判定基準記憶部321に記憶する。そして、この頻度分布よりも大きくはずれるような指数βを持つレンズについては、他の大多数のレンズに比べてバラつきが大きいので不合格という判断をする。これにより、評価用コンピュータ3の処理部31は、被検レンズ100に対する第2のレンズ評価の結果が不合格であると判定し、レンズの評価を終了する(ステップS4)。不合格となった被検レンズ100は、第1のレンズ評価と同様に、作り直されたり、資源として再利用されたりする。
これに対し、指数βが頻度分布から大きく外れていないレンズについては、他のレンズとのばらつきが小さいので合格という判断をする。そして、評価用コンピュータ3の処理部31は、被検レンズ100に対する第2のレンズ評価の結果が合格であると判定し、次の工程(ステップS17)に処理を移行する。
なお、第2のレンズ評価の判定は、上述した判定方法に限定されるものではない。例えば、評価指数βに閾値を設定し、この閾値を合否判定基準データとして合否判定基準記憶部321に記憶する。そして、ステップS13で得られた評価指数βが閾値よりも大きい場合は、合格と判定し、小さい場合は、不合格と判定するようにしてもよい。また、この閾値は、ユーザが所望するレンズの精度に応じて適宜設定できるものである。
4.次工程(ステップS17)
ステップS15の処理において、合格と判定された被検レンズ100は、次工程に移される。次工程では、受注内容に応じた染色や各種コーティングが行われる。その後、フレーム形状や玉型形状に合わせた縁摺り加工が行われ、眼鏡レンズの製造が完了する。製造された眼鏡レンズは、発注元に出荷される。
上述したように、本実施形態のレンズの評価方法は、製造されたレンズの度数分布を何らかの方法で測定し(以下、実測度数分布)、その分布と設計上計算された度数分布(以下、計算度数分布)とを引き算することで、差の分布(以下、誤差分布)を求めている。そして、その誤差分布全体を微分することで、実測度数分布を数値的に特徴付けることができる。これにより、製造されたレンズの光学性能に、設計上意図しない度数変化(局所的に変化する誤差)が存在するか否かを評価できる。
また、誤差分布及び/又はこの誤差分布を微分した誤差指数分布を表示装置に表示させている。これにより、眼鏡レンズ内おける誤差の程度、又は誤差が発生している場所を極めて容易に視覚的に識別することができる。
更に、測定した度数分布を、任意方向(本例では、水平方向を0度として、反時計回りを正とするとき、0度(D1方向)、45度(D2方向)、90度(D3方向)、135度(D4方向))の度数分布に変換している。これにより、乱視軸Axを考慮した評価を行うことができ、より精度の高い評価を行うことができる。また、この任意方向の度数分布を表示装置に表示させることで、レンズ内で誤差が発生している方向も識別することができる。
[レンズ設計の異なるレンズの判断方法]
次に、同じ度数かつ、同じ設計タイプ又は異なる設計タイプの2つの累進屈折力レンズを評価した結果を説明する。
この場合、評価用コンピュータ3の処理部31は、2つのレンズのうち一方のレンズを基準とする。即ち、一方のレンズを計算度数分布として評価する。そして、同じ設計タイプの2つの累進屈折力レンズでは、指数βは、高い値になる。これに対し、異なる設計タイプの2つの累進屈折力レンズでは、指数βは、低い値になる。このことから、この本発明の評価指標は、設計の違いを評価することにも有効であり、2つの異なるレンズ設計の違いを判断することが可能である。
[レンズの製造方法]
次に、上述したレンズの評価方法を用いたレンズの製造方法について、図12を参照して説明する。
図12は、受注から出荷までのレンズの製造工程の流れを示すフローチャートである。
初めに、レンズが受注される(ステップS21)。眼鏡店9(図1を参照)に設置されている注文用端末91の注文用プログラムが起動されると、注文用端末91が通信媒体8を介して工場のメインサーバ7と接続される。これにより、オーダエントリ画面が、注文用端末91の画面表示装置に表示される。眼鏡店9のオペレータは、注文する眼鏡レンズの情報、眼鏡フレームの情報、処方値およびレイアウト情報など注文情報を注文用端末91の入力装置によって入力する。
注文用端末91に入力された注文情報は、通信媒体8を介して工場のメインサーバ7へ送られる。注文用端末91から注文情報が送られてくると、メインサーバ7は、眼鏡レンズ加工設計プログラムを実行し、ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算する。演算の結果に基づいてレンズの加工が不可能な場合、メインサーバ7は、注文用端末91に注文入力値の修正をうながす。一方、演算の結果に基づいてレンズの加工が可能な場合は受注が確定する。
受注が確定すると、注文用端末91から送られてきた注文情報は、データサーバ2の受注データ記憶部22に受注データとして記憶される。また、受注が確定すると、眼鏡レンズ加工設計プログラムにより演算されたレンズ形状に関する情報は、データサーバ2の設計データ記憶部21に設計データとして記憶される。
眼鏡レンズ加工設計プログラムは、各工程におけるレンズ加工設計値も演算し、その加工設計値に基づき加工するための加工条件(各種機器設定値、使用治具など)も決定する。そして、これらレンズ加工に関する情報(加工設計値、加工条件)は、データサーバ2の記憶部20に加工データとして記憶されるとともに、各種機器の制御に用いられる。
工場には、片面だけが光学的に仕上げられたセミフィニッシュレンズブランク(以下、セミフィニッシュレンズとする)や両面とも光学的に仕上げられていないレンズブランクがあらかじめ多くの種類について製造されストックされている。そして設計データや加工データに基づいて、ストックされているレンズブランクの中から加工するレンズが選び出される。
次に、ブロック工程が行われる(ステップS22)。ブロック工程とは、後の工程の切削工程、研磨工程で使用する切削装置、研磨装置にレンズを取り付けるためのレンズ保持具をレンズの前面又は後面に取り付ける工程である。
次に、レンズブランクの光学的に仕上げられていない面に対して切削加工工程が行われる(ステップS23)。切削加工工程とは、切削装置を使用して研磨代分を残して所定の面形状に切削する工程である。切削する面形状は、設計データや加工データによってあらかじめ決定されている。
次に、切削加工されたレンズの切削面に対して研磨工程(ステップS24)が行われる。研磨工程とは切削加工されたレンズの切削面を研磨装置で研磨して光学的に仕上げる工程である。この研磨条件は、加工データによってあらかじめ決定されている。ステップ21〜ステップ24までの工程は、図3に示す前工程に相当する。
次に、両面が光学的に仕上げられたレンズに対して、レンズ評価工程(ステップS25)が行われる。このレンズ評価工程については図3を参照して詳しく説明したため、ここでは、説明を省略する。
次に、ステップS25のレンズ評価工程で合格と判定されたレンズに対して、必要により染色工程が行われる(ステップS26)。染色工程とは、レンズを染色する工程である。レンズは、受注データで指定されている色に染色される。また、色見本がある場合には、その色に近くなるように染色される。染色方法としては、種々の方法が実施されているが、例えば、加熱した染料液の中にレンズを所定時間浸漬させた後、レンズを加熱して、レンズ内部に浸透した染料をさらに内部に拡散させて安定化させる方法がある。
なお、染色の必要がないレンズは、レンズ評価工程の後に表面処理工程に移される。
次に、レンズに対して表面処理工程が行われる(ステップS27)。表面処理工程は、レンズの表面にハードコート、反射防止膜、水やけ防止コート、防汚膜などの表面処理を施す工程である。これらの表面処理は、受注データに従って指定されたものが施される。
次に、レンズに対して検査工程が行われる(ステップS28)。検査工程では、レンズの外観検査、所定の測定位置(例えば光学中心)における光学特性、レンズの厚さなどが検査される。上述したレンズメータ6と肉厚計(図示せず)は、検査工程管理用コンピュータに接続されている。検査工程管理用コンピュータは、レンズメータ6と肉厚計によって得られた所定の測定位置の測定値と、受注データおよび設計データに基づくレンズ仕様とを比較して、レンズが合格かどうかどうか判定する。
次に、レンズに対して縁摺りヤゲン加工工程(玉形加工)が行われる(ステップS29)。なお、受注データに縁摺りヤゲン加工(玉形加工)の指示がない場合、レンズは、検査工程が終了した状態で発注元に出荷される。
縁摺りヤゲン加工工程(玉形加工)では、レンズにレンズ保持具を取り付け、研削装置により所定の玉形形状やフレームの形状に合わせてカットされ必要な周縁加工が施される。玉形加工済みのレンズの周長および形状は、形状測定器(図示せず)によって測定され、加工データと比較して加工の合否が判定される。この結果、合格になったレンズは、外観、光学特性、厚さ等が再び検査され、合格していれば発注元に送られる(ステップS30)。
上記例では、レンズ評価工程(ステップS25)はレンズ両光学面を光学的に仕上げる工程後に行なっているが、それより後の工程後に行なうこともできる。また、製造工程において複数回行なうこともできる。なお、この例のようにレンズの切削・研磨加工が終わった後に、レンズ評価を行って設計データとの誤差を早い段階で発見でき、設計データに対して大きな誤差が発生しているレンズが後の工程に流れることを阻止できるので好ましい。
また本発明によれば誤差の種類(全体的誤差、局所的誤差)も把握できるので、誤差発生原因の特定等も容易になる。
また、上記例では実測屈折度数分布と計算度数分布から処方度数を除去しているが、これら除去を行なわないこともできる。
引用符号の説明
1 度数分布測定装置
2 データサーバ
3 評価用コンピュータ
4 入力手段
5 出力手段
6 レンズメータ
7 メインサーバ
8 通信媒体
9 眼鏡店
10 眼鏡レンズ評価装置
20 記憶部
21 設計データ記憶部
22 受注データ記憶部
23 測定結果記憶部
24 合否判定結果記憶部
31 処理部
32 記憶部
70 第2評価測定点
91 注文用端末
100 被検レンズ
321 合否判定条基準記憶部
322 重み付け計算用係数記憶部

Claims (10)

  1. 球面度数、乱視度数、乱視軸を表す点群からなる眼鏡レンズの実測度数分布に基づいて、複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換工程と、
    前記眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成工程と、
    前記眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した前記実測度数分布と前記計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出工程と、
    前記複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、前記誤差分布算出工程で得られた前記誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出工程と、
    前記誤差指数算出工程で算出された前記誤差指数をもとに前記眼鏡レンズの評価を行う評価工程と、
    を有することを特徴とするレンズ評価方法。
  2. 前記任意の方向は、等角度の複数方向である
    を特徴とする請求項1に記載のレンズ評価方法。
  3. 前記誤差指数算出工程で算出される前記誤差指数は、前記複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、前記誤差分布を微分して得られた値の絶対値が最大となる方向における値であること
    を特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のレンズ評価方法。
  4. 眼鏡レンズにおいて、近用部及び遠用部に対して、前記誤差分布に重み付けを行う誤差分布補正工程を有すること
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズ評価方法。
  5. 非点収差を基準にして前記誤差分布に重み付けを行う誤差分布補正工程を有すること
    を特徴とする請求項1乃至4に記載のレンズ評価方法。
  6. 前記誤差分布には、下記数式1により算出された重み付けを行う誤差分布補正工程を有すること
    を特徴とする請求項1乃至5に記載のレンズ評価方法。
    Figure 0005107358
    j:測定点
    A:定数
    AS:計算度数分布の点jにおける非点収差の大きさ
    Wj:重み付け
    Ej:重み付けを考慮した誤差分布
    Dj:誤差分布
  7. 異なる設計タイプのレンズ同士を比較すること
    を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレンズ評価方法。
  8. 眼鏡レンズの複数の測定点の球面度数、乱視度数、乱視軸からなる度数を測定し、実測度数分布を得る度数分布測定装置と、
    前記実測度数分布を用いて前記眼鏡レンズの評価を行う処理部を有する評価用コンピュータと、を備え、
    前記評価用コンピュータの前記処理部は、前記実測度数分布に基づいて、前記複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換処理と、前記眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成処理と、前記眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した前記実測度数分布と前記計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出処理と、前記複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、前記誤差分布算出処理で得られた前記誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出処理と、前記誤差指数算出処理で算出された前記誤差指数をもとに前記眼鏡レンズの評価する処理を行う
    ことを特徴とするレンズ評価装置。
  9. レンズブランクの光学的に仕上げられていない面を光学的に仕上げる工程と
    両面が光学的に仕上げられたレンズにおける設計データとの誤差が許容範囲であるか否かを評価するレンズ評価工程と、を有し、
    前記レンズ評価工程では、
    球面度数、乱視度数、乱視軸を表す点群からなる前記眼鏡レンズの実測度数分布に基づいて、複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換工程と、
    前記眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成工程と、
    前記眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した前記実測度数分布と前記計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出工程と、
    前記複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、前記誤差分布算出工程で得られた前記誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出工程と、
    前記誤差指数算出工程で算出された前記誤差指数をもとに前記眼鏡レンズの評価を行う評価工程と、
    を行うことを特徴とする眼鏡レンズ製造方法。
  10. 球面度数、乱視度数、乱視軸を表す点群からなる眼鏡レンズの実測度数分布に基づいて、複数の測定点の任意方向の度数分布を得る度数分布変換工程と、
    前記眼鏡レンズにおける設計上の度数分布である計算度数分布を作成する計算度数分布作成工程と、
    前記眼鏡レンズにおける実際の度数の分布を示した前記度数分布と前記計算度数分布との誤差分布を得る誤差分布算出工程と、
    前記複数の測定点におけるレンズ内の距離によって、前記誤差分布算出工程で得られた前記誤差分布を微分して誤差指数を求める誤差指数算出工程と、
    前記誤差指数算出工程で算出された前記誤差指数から前記眼鏡レンズ内における誤差指数の分布を作成する誤差指数分布作成工程と、
    前記誤差指数分布作成工程で作成された前記誤差指数分布を表示する表示工程と、
    を有するレンズ特性の表示方法。
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