JP5106809B2 - ラクトフェリンを含有する医薬組成物ならびに加工食品 - Google Patents

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Description

本発明は月経痛(生理痛とも言う)を治療・予防し、月経時の生活の質(QOL)を改善する医薬組成物ならびに加工食品に関する。
ほとんどの先進国は少子化による人口減少に悩んでいるが、その原因の一つに女性の社会進出がある。男性の収入に生活費を依存する古来からの社会構造から、職業を持つ自立した女性が増えるにつれ、多忙な女性は育児のための時間をさく余裕がなくなってきた。それが女性の出産機会を奪い少子化の一因になっている。また、社会進出に伴って女性のストレスが増加し、ストレスの影響を受けやすい月経痛を増加させていることも、女性における生活の質(QOL)を低下させ、少子化をもたらす陰の要因と言われている。
医学の進歩は日進月歩にもかかわらず、女性を悩ませる月経時及び月経前後の諸症状はほとんど改善されていない。月経時及び月経前後の諸症状はQOLを低下させるが、それらは生命の維持にかかわる重篤さがないため、研究が等閑視されてきためである。女性を悩ます諸症状の中で、もっとも深刻で悩ましいのは月経痛である。月経痛は生活や社会活動に影響を与えるだけではなく、放置すると不妊症等の原因となる場合がある。平成2年厚生省主催の研究会の調査によると、月経期間における不快症状は、月経前では腹痛(45.5%)、腰痛(31.6%)がみられ、月経中では腹痛(67.3%)、腰痛(46.3%)等の症状が多い。 月経痛について、非常に苦痛と訴える例が22.6%と多く、一方、月経痛のない女性はわずか11.8%である。
月経痛の原因はさまざまで以下のように分類することができる。
○器質的要因
1. 子宮頚管が狭く、経血の排出がうまくいかないことによる月経痛。
2. 子宮の発育が未熟なため、血液の供給不足や酸素不足が起こることによる月経痛。
3. 子宮の位置が異常で、子宮が極度に前或いは後に曲がることにより、経血がうまく排出できないことによる月経痛。
○精神的要因
1. 神経的要素で痛みに過剰敏感による月経痛。
2. 精神的ストレスや緊張などで交感神経が異常に優位に働き、血管や子宮の平滑筋の過度な収縮が起こり、子宮への血液の供給不足や酸素不足をもたらすことによる月経痛。
○生活習慣や食習慣
1. 冷たいものを飲食することによって内臓の冷えが起こり、筋肉(特に血管や内臓の平滑筋)の収縮力が強く、経血の流れが不良となることによる月経痛。
2. 月経期間に激しく運動したあと、風、寒さ、湿気などの影響を受け、体を冷やしてしまい、筋肉(特に血管や内臓の平滑筋)の異常収縮を起こし、子宮への血液の供給不足や酸素不足をもたらすことによる月経痛。
3. 不規則な生活、過激なダイエット
○ホルモン分泌のアンバランス
プロスタグランジンの異常分泌を起こさせ、子宮平滑筋が過敏に反応し、収縮することによる月経痛。
○臓器の病変
子宮をはじめとする生殖器およびその周辺臓器に病変が存在することによる月経痛。これらの病変は子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣嚢腫などがあげられる。これらの病変により、子宮の平滑筋の血管が圧迫され、血液の供給やホルモンの運搬がうまくいかず、月経痛が起こるケースが多い。
[従来の治療法]
月経痛には様々な原因があるため、その原因を見極めて適切な対処法や治療法を講ずる必要がある。もっとも一般的な治療法は非ステロイド系鎮痛消炎剤の内服である。非ステロイド系鎮痛消炎剤はあくまで痛みを一時的に抑える対症療法で、月経痛の原因そのものを治すものではない。消化管からの出血を含め、強い副作用を呈するので注意が必要とされる。対症療法として子宮平滑筋の収縮を一時的に和らげる筋弛緩薬も治療に使われる。月経痛は精神的ストレスの影響が大きいので、治療に精神安定剤あるいは偽薬(乳糖が多い)が使われることもある。それらもストレスを一時的に和らげるだけの対症療法である。経口避妊薬は避妊以外にも、月経困難症(月経に伴う重い症状)の緩和、子宮内膜症の治療などに使われる。
疼痛を鎮め精神的ストレスを解消させることは、月経痛の治療・予防の中で最重要課題である。つまり、月経痛でもっとも重要なのは疼痛と精神的ストレスのコントロールである。従って、副作用をともなう非ステロイド系鎮痛消炎剤、筋弛緩剤、精神安定剤あるいは経口避妊薬を避け、副作用なしに低いコストで疼痛を鎮め精神的ストレスを解消する手段は、社会的ニーズが非常に高いと考えられる。本発明が解決しようとする課題は、月経時の疼痛を鎮め、精神的ストレスをコントロールする手段の発見である。かつ、その手段はどのような観点からも女性の生活の質(QOL)を損なってはならず、しかも、経済的に負担が少ないものでなくてはならない。これらは非常に厳しい制約である。
本発明者等は長年にわたりラクトフェリンの作用について研究を重ねてきた。ラクトフェリンは、いろいろな哺乳動物の乳汁中に含まれる鉄結合性蛋白質である。1939年、牛乳中に発見され、その後、ウシ以外の多くの哺乳動物の乳汁中に含まれていることが判明した。1960年、牛乳及び人乳からはじめて純粋なタンパク質として分離され、既にベーカー等はX線回折法によりその構造決定を行っている(非特許引用文献1;ベーカー等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 1769-1773, 1987年)。ヒトでは、乳汁はもとより涙、鼻汁、唾液、気管支及び子宮粘液、精液、胆汁、膵液などの外分泌液、血漿、尿、羊水などの体液、好中球の二次顆粒などからも分離されている。
ラクトフェリンは体内に広く分布することから、いろいろな分野でその応用が検討されている。本特許の課題と深い関係にある“ラクトフェリンと疼痛”および“ラクトフェリンと精神的ストレス”の関係を研究した論文を次ぎにあげる。原田、林田、竹内らはラットのフットパッドにフォルマリンを注射する痛覚刺激モデルを使い、髄腔内にウシおよび遺伝子組替ヒトラクトフェリンを注入すると、痛覚刺激によって惹起される反応が用量依存性に減弱(鎮痛効果)すること、鎮痛効果はμオピオイドの拮抗物質であるナロキソンの同時投与により打ち消されることを報告した(非特許引用文献2;Brain Res. 2003; 965: 239-245)。さらに、彼らはラットの痛覚刺激モデルにおいて鎮痛効果をまったく示さない微量のラクトフェリンをモルヒネと一緒に投与すると、その鎮痛効果を50〜100倍増幅すること、ラクトフェリン及びモルヒネを持続点滴する条件下でラクトフェリンの鎮痛効果は1週間後でも変化しないが、モルヒネのそれは時間とともに減弱し4日後には完全に消失することを報告した(非特許引用文献3:Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2003; 285: R306-12)。つまり、ラクトフェリンはそれ自身が中枢性の鎮痛効果を示すのではなく、エンドルフィンのような内因性オピオイドおよび外因性オピオイド(モルヒネ)の効果を増幅することにより鎮痛効果を示すのである。しかも、ラクトフェリンは中枢性だけでなく末梢性にも鎮痛効果を示すことが確かめられ、痛みが発生している局所に適用しても疼痛を鎮めることがわかった(非特許引用文献4:Eur J Pharmacol. 2004; 484: 175-81)。究極の鎮痛剤として使われるモルヒネは、(1)投与を重ねるにつれ容易に耐性化し鎮痛効果が失われるので次第に増量させねばならないこと、(2)鎮痛効果が得られる最少投与量は、副作用が起こる投与量の10倍なので必然的に副作用が起こることが欠点であった。驚くべきことにラクトフェリンは、モルヒネのように耐性化しないことに加え、モルヒネと併用すると耐性発現を遅延させる作用があることもわかってきた(非特許引用文献5:Brain Res. 2006; 1068: 102-8)。
モルヒネは多幸感、恍惚感を醸成するので耽溺して悲惨なモルヒネ依存症があとを絶たない。一方、内因性オピオイドも耽溺性があるが、ごく少量しかつくられないらしく、耽溺性に陥ることは絶無である。ラクトフェリンはモルヒネと同様に脳神経のμオピオイド受容体に作用するので、鎮痛とは異なる精神作用を示すことも確かである。一例をあげると、生後10日のラット新生仔を母親から引き離すと、仔ラットは母親を捜して動き回り、超音波の鳴き声で母親を呼ぶ。つまり、母親から引き離されたことが、精神的なストレスになって捜索行動と悲鳴をあげさせるのである。しかし、引き離す前にラクトフェリンを投与すると、捜索行動が減少し、悲鳴あげる頻度も低下した(非特許引用文献6:Takeuchi et al. Brain Res. 2003; 979: 216-24)。さらに興味深いのは、ラクトフェリンが母親のストレスを緩和することである。毎日5時間、我が子から引き離されると、母ラットは次第に常軌を逸した行動をとるようになる。しかし、引き離しに先立ってラクトフェリンを与え続けると、異常な行動が有意に抑制される(非特許引用文献7:Takeuchi et al. Brain Res. 2004; 1029: 34-40)。これら二つの論文が示唆することは、ラクトフェリンが親子引き離しに起因するストレスを明らかに緩和することである。月経痛は、(1)臓器あるいは組織の器質的障害による疼痛と(2)月経という精神的ストレスに起因するので、抗ストレス効果は月経痛を改善するうえで必須と思われる。
ラクトフェリンは経口的に摂取した場合、胃内で容易にペプシンにより消化分解されることが知られている。ラクトフェリンの吸収作用部位は小腸を中心とする腸管に存在すると考えられているので、ラクトフェリンの効果を十分に発揮させるには、胃での消化分解を免れるような製剤的な工夫、いわゆる腸溶化製剤により、ラクトフェリンが腸まで届いて働くようにする必要がある。ラクトフェリンを腸溶性にする製剤的な工夫としては、いくつかの公知の方法が考えられる。例えば、錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル或いは顆粒を腸溶性にするために被覆するコーティング剤としては、pH4以下の酸性条件では溶けにくく、pH5以上で溶解しやすいヒドロキシプロピルメチルセルローズフタレート、カルボキシメチルエチルセルローズ、酢酸フタール酸セルローズ、メタクリル酸コポリマーや、トウモロコシ由来のタンパク質であるツェイン(ゼイン)、や天然油脂由来のシェラックなどが適宜用いられる。或いは、脂質2重層からなるリポソーム製剤も胃内で崩壊せず、小腸で胆汁により乳化、崩壊するのでラクトフェリンを腸管の吸収部位にまで届けることが出来る。或いは、単純に胃内のpHを高くしてペプシンが作用しなくなるようにしても実質的に有効である。
本発明に用いられるラクトフェリンはラクトフェリンの生物活性があるものであれば何でも良く、哺乳類の乳、通常ウシの乳に含まれるラクトフェリン、或いは、遺伝子組換え技術により生産されるウシラクトフェリンもしくはヒトラクトフェリンでも構わない。近年、生理活性タンパク質にPEG鎖(ポリエチレングリコール鎖)を付加して体内寿命を延ばすなどの工夫がされることがあるが、そのようなPEG化されたラクトフェリンであっても勿論構わない。
本発明者等は牛乳から抽出したラクトフェリンを腸溶性製剤として、クロスオーバー方式による一重盲検の臨床試験を実施した。すなわち、月経痛に悩む女子学生ボランティアーを募集し、インフォームド・コンセントを取得してから、実薬か偽薬であるかを秘し被験者がプロトコールに従って内服して設問に答える方式である。この「ラクトフェリンの月経痛に及ぼす影響」の一重盲検クロスオーバー試験は、本発明者の一人がコントローラーを担当し、回答を集計して統計処理を行った。
月経時にはプロスタグランジンの産生が増加し、子宮収縮や虚血を引き起こし、知覚神経終末を増感させることから、下腹痛、腰痛などの疼痛が発生する。この月経痛は女性のQOLを低下させる原因の一つとなる。月経痛の対処については、鎮痛剤を使用する者も多いが、望月らの研究(非特許引用文献8;望月良美;埼玉医科大学短期大学紀要. 2001, 12, 59−65)によると、鎮痛剤を使用せずに月経痛を少しでも軽減し快適な生活を送りたいと希望する女性が多い。月経痛に対しラクトフェリンの有用性が確立されれば、薬物服用に抵抗を感じる女性たちにとって福音となり、月経痛による女性のQOLの低下を防ぐと考えられる。主として妊娠・出産に限られがちだった従来の「女性の健康」を、月経という面からとらえることで、女性が生涯にわたって自分の健康を主体的に確保することにつながり、リプロダクティブ・ヘルスを保障することができる。
プロトコールは鎮痛効果およびQOLに及ぼすラクトフェリンの影響をあきらかにすることを目的とした。腸溶性ラクトフェリンカプセル(2個、ラクトフェリン200mg)を朝、昼、夕の3回(一日量;600 mg)、月経予定の前3日から摂取を開始し、月経開始後4日間継続摂取した。外見が全く同じ実薬(A)と偽薬(B)を調製し、ボランティアーには実薬あるいは偽薬のいずれであるかを明かさずに渡した。実験期間は実施前、ラクトフェリン使用期、および偽薬使用期としクロスオーバー方式で統計解析した。対象者は22名で、開始前月経中における鎮痛剤内服は17名(77.2%)、鎮痛剤を服用しないは5名(22.7%)であった. 月経痛についてはVASにより測定し、日常生活への影響の程度はバーバルレイティングスケールを用いて、被験者自身に毎日記録を依頼し、回収して集計した。
この試験は高率でプラセボ効果を生じた。ボランティアーにラクトフェリンが鎮痛効果を示すことをあらかじめ説明したためと思われる。試験開始前、月経痛をコントロールするため市販鎮痛剤の併用が必要な者は22名のなかで15名であった。実験期間を通じて、月経痛コントロールに鎮痛剤併用が必要だったのは5名である。一方、鎮痛剤を併用せず痛みをコントロールできたのは、実薬期で17名(%)、偽薬期11名で、腸溶性ラクトフェリンカプセルは明らかに痛みをコントロールすることが判明した。副作用は実薬並びに偽薬の服用期のいずれにもなく、腸溶性ラクトフェリンカプセルは高度に安全であることが判明した。なお、実薬期に限って「強度の便秘が改善された」が4名、「肌がきれいになった」が2名、「情緒が安定した」が1名であった。ラクトフェリン使用期に市販鎮痛剤使用者が減少したこと、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)が減少したことQOLの全般改善度および全体改善度のスコアが上昇したことから、ラクトフェリンは月経痛に有効である。
本発明の腸溶性製剤を製造する際に用いる賦形剤としては、乳糖、蔗糖、グルコース,ソルビトール、ラクチトールなどの単糖ないし二糖類、コーンスターチ、ポテトスターチのような澱粉類、結晶セルローズ、無機物としては軽質シリカゲル、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウムなどがある。しかし、還元性の単糖類及び二糖類は、ラクトフェリンのε-アミノ基とアミノカルボニル反応をおこし、蛋白質を変性させる。特に、水分、鉄イオンの存在下では、急速なアミノカルボニル反応が進行するので、使用は控えるべきである。また、崩壊剤としては澱粉類、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、ヒドロキシプロピルセルローズ(HPC)、カルボシキメチルセルローズ・ナトリウム塩、ポリビニルピロリドンなどがある。滑沢剤としては蔗糖脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどを使用することができる。
本発明の製剤は、一般的には活性成分として一日当たり100 mgから15,000 mg、望ましくは300 mgから6,000 mgを一度にまたは分割して、本発明の製剤による治療または状態の改善が必要とされている患者に対し食事後又は食間に投与することができる。投与量は、個別に、投与される患者の年齢、体重、および投与目的に応じて定めることができる。以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
以下に本発明による実施例を記述する。
[腸溶性ラクトフェリン・ハードカプセルの製法]
ラクトフェリン1部と馬鈴薯澱粉1部をよく混合し、水を使用することなくスラグマシンで円盤状に圧縮し、円盤を粉砕して16メッシュの篩を通過する顆粒を集めて日本薬局方2号のハードカプセルに200mgずつ充填した。充填したハードカプセルはトウモロコシ穀粒の酸性タンパク質「ゼイン」の含水エタノール溶液を噴霧し、乾燥して腸溶性皮膜とした。偽薬カプセルはラクトフェリンに代えて乳糖1部と馬鈴薯デンプン1部を混合し、腸溶性ラクトフェリンカプセルと同様な方法により腸溶性の偽薬カプセルを調製した。
[プロトコール]
ボランティアーは協力依頼の学内掲示を見て集まった女子学生である。ボランティアーに対し次のような倫理的配慮を行った。まず研究の主旨について文書を用いて説明し、同意書を手渡して、同意の得られたものを対象者とした。同意後でも同意撤回が可能である旨の文書を手渡し、撤回しても不利益を被ることはないことを説明した。なお、本研究は2004年6月25日、鳥取大学医学部倫理審査を受けて実施した。応募した31名のうちプロトコールに記載された全期間を終了したのは22名であった(脱落率;29%)。
研究のプロトコール概要は次のとおりである。
1)開始前の1回の月経について調査紙を記入
2)毎日基礎体温を測定し、次回月経予定を予測
3)摂取日数:月経予定の前3日から摂取を開始し、月経が開始してから4日間継続摂取
4)試験はシングルブラインド方式とし、外見の全く同じ実薬A、偽薬Bを準備した。Aは腸溶性ラクトフェリンカプセル(1錠中ラクトフェリン100mg含有)であり、Bはラクトフェリンの代わりに乳糖を含有する偽薬である。1回に2カプセルを朝、昼、夕の3回、計6カプセルを内服する。
5)ボランティアに対するラクトフェリンの説明:動物実験における鎮痛効果は既に証明されているが、月経痛にどの程度の量で効果が得られるかを調査するためであり、痛みの強い場合は従来使用している鎮痛剤を併用してよい旨を説明した。
6)摂取期間中、被験者は1日1回、身体、心理的側面等の状況を質問紙に継続記録する。
ボランティアーを第1群(A、B、Aのグループ)と第2群(B、A、Bのグループ)に分け、平成16年4月〜8月に3周期の試験を実施した。本報告では実施前、ならびに続く2摂取期間について、対応のある2群として分析した(以下、実薬期と偽薬期と略す)。
[評価について]
自記式質問紙の内容は月経痛とQOLである。月経痛の程度をビジュアルアナログスケール(VAS)とバーバルレイティングスケール (表1)を用いて日常生活への影響(学業・家事・労働の支障、全身症状:頭痛、疲労感、嘔気、嘔吐、下痢、鎮痛剤使用)の程度を数値化した。月経痛は腰痛と下腹部痛に限定した。
Figure 0005106809
[結果の統計処理]
データの解析は、統計ソフトSPSS12.0Jを用いて、ノンパラメトリックで処理した。
[結果1]
18〜23歳までの女子学生31名が同意して試験を開始したが、4周期の有効データが得られた22名(継続実施率70.9%)のデータについて統計処理の対象とした。対象者の年齢は21.0±1.0(平均値±標準偏差、以下同様に表記)歳、初経年齢は12.9±1.2歳、月経周期は30.6±2.4日であった。
開始前の状況:実施前において月経痛のために鎮痛剤を服用したボランティアーは15名(68.2%)、服用しない名は7名(31.8%)であった。その他、月経痛による日常生活への影響についての自由記述では、「家にこもる」「行動を起こすのがつらい」「授業の早退、欠席」等の記述があった。月経痛のために鎮痛剤を必要とするボランティアーは、月経期間中の日常生活に支障を来し、QOLを低下させていることは明らかであった。
[結果2;月経痛に及ぼすラクトフェリンの影響]
市販の鎮痛剤の服用との関係:実施前の鎮痛剤内服者は15名(68.2%)、偽薬期は11名(50%)、実薬期では5名(22.7%)であった。いずれの期も実施前に比較し鎮痛剤の使用者を有意に減少させ、併用者は偽薬期と比較すると実薬期に有意に減少していた(P<0.05)。ラクトフェリンにより鎮痛剤の併用が減少したことは、偽薬と比べラクトフェリンが明らかに月経痛に有効であったことを示している。つまり、ラクトフェリンは鎮痛剤を内服しないと治まらない中程度の月経痛を、副作用なしに鎮痛剤不要に改善する効果がある。
VASへの影響:ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)は痛みの度合いを表現する唯一の方法である。試験開始前のVAS値は6.76であったが、鎮痛剤を併用せずラクトフェリン単独で17名平均1.93(P<0.01)、鎮痛剤とラクトフェリンを併用すると5名平均で4.36(NS)に変化した。偽薬の場合には、偽薬単独で3.06(11名、P<0.01),鎮痛剤と偽薬単独で3.06(11名、P<0.05)に低下した(図1)。実薬と偽薬の各群をunpaired t-testで比べると、実薬のみの服用期は、実薬+鎮痛剤服用期(P<0.01)、偽薬服用期(P<0.05)および偽薬+鎮痛剤服用期(P<0.01)と比べ有意差がある。鎮痛剤と併用しなくても耐えられるボランティアーを軽度〜中程度の月経痛とをすると、ラクトフェリンは明らかに軽度〜中程度の月経痛を改善すると見なすことができる。
Figure 0005106809
バーバルレイティングスケールによる自覚的疼痛度の比較:バーバルレイティングスケールは社会活動、一般症状と痛みの象徴として鎮痛剤の使用を加味した痛みの評価法である。VASの場合と同様にラクトフェリン単独17名、鎮痛剤とラクトフェリン併用5名、偽薬単独11名、偽薬と鎮痛剤併用11名のスコアを試験開始前のそれと比較した。試験開始前22名のスコアと実薬単独17名のスコアとを比べると、5%有意で痛みが軽減されたが、試験開始前のスコアと偽薬11名のスコアのあいだにも5%有意で痛みが軽減される結果が得られた。実薬期と偽薬期のあいだには有意差がないように見えるが、軽度〜中程度の月経痛を含む実薬期の17名が、偽薬単独期では中程度月経痛群(6名)が鎮痛剤併用群に移行し、軽度月経痛のみになった可能性があるので、一概に両群に差がないと決めつけることはできない。試験前に鎮痛剤を使用しなかった5名はいずれの期でも鎮痛剤の併用は無く、実薬期に鎮痛剤を併用した5名はいずれの期でも鎮痛剤を内服していた。そこで、通期にわたる鎮痛剤不使用者と鎮痛剤使用者を除外した12名のボランティアーについて、実薬期と偽薬期のバーバルスコアを比較すると、実薬期に有意なVAS減少がみられ(P<0.05)、ラクトフェリンは月経時の QOLを改善することが示唆された。
QOLへの影響:QOLのなかで環境、心理および社会等の各項目については、研究開始前の月経期と、実薬、実薬+鎮痛剤、偽薬、偽薬+鎮痛剤の各期とのあいだに有意な差は認められなかった。ただし、心理面で研究開始前の正常期と月経期とのあいだには、1%有意で月経期に心理的な低下が起こるが、実薬、実薬+鎮痛剤および偽薬の各期は研究開始前の正常期と差異がなくなり、月経による心理的な退行現象が消失していたことは注目に値する(図2)。身体面のQOLに及ぼす影響については、研究開始前の平常期と月経時を比較すると、月経により身体面のQOLが大きく低下(P<0.01)するが、実薬期には研究開始前の平常期と同じスコアまで改善した。さらに、「自分の生活の質をどう思いますか?」「自分の健康状態に満足していますか?」の二つの設問に対する回答を集計すると、平常期と比べて大きく低下する月経時のスコア(P<0.01)が、実薬期に限って平常期と有意差がないほど回復した(P<0.01)(図3)。さらに、全般、身体、環境、心理および社会等の各項目を総計した全体評価では、スコアが研究開始前の月経期を上回ったのは実薬単独期(P<0.05)のみで、他は実薬単独期よりスコアが低く、有意差も認められなかった(図)。
[結論]
ラクトフェリンは健康補助食品として、数社によって市販されている。これらの効果については、鉄欠乏性貧血の改善、健康の維持と向上、自己免疫力向上等の効果があるとされている。その際、必要とされるラクトフェリン摂取量は、いまだにコンセンサスに達していないが、腸溶性皮膜をもたない通常のラクトフェリン素錠は、1日に10グラム以上の摂取が必要と推定されている。高価なタンパク質製剤として1日に10グラムの摂取が必要とされるとはにわかに信じ難いが、遺伝子組替ヒト・ラクトフェリンを肺の非小細胞癌に標準的な化学療法と併用した際のラクトフェリン投与量が10グラム以上だったので妥当な数値である(非特許引用文献9:Agennix press release; May 17, 2005: Agennix's Oral Talactoferrin Improved Response Rates, Time to Progression and Duration of Response when Combined with First-Line Chemotherapy in Advanced Non-Small Cell Lung Cancer)。腸溶製剤についてはリポソーム化されたラクトフェリンを使った二重盲検試験が発表されているだけである(非特許引用文献10;Ishikado et al.: Biofactors. 2004;21(1-4):69-72)。Ishikadoらによると完璧な腸溶製剤であるリポソーム化されたラクトフェリンは、1日あたり300 mgを1〜4週間経口投与すると、単位容積に含まれる白血球のインターフェロン-α産生能を2〜3倍に増大させる。しかし、腸溶性でない素錠のラクトフェリンはまったく産生能を増大させなかった。従って、今回使用した腸溶性ラクトフェリン・カプセルの摂取量、1日あたり600 mgは有効性を発揮する範囲内であったと考えられる。
月経期間中における月経痛自覚で最も強い日のバーバルスコアをその周期の値とした。この値は、試験開始前の月経中における数値と比較して、偽薬内服時でも有意に低下し月経痛の緩和が認められるので、月経痛は心理的ストレスに強く影響されていることを示唆した。偽薬内服時のバーバルスコアにも有意な減少がみられており、月経痛には心理的な影響が大きいことが再び示唆された。これについては、小畑ら(非特許引用文献:日本臨床59: No.9,2001)も同様の指摘をして、カウンセリングの重要性を報告している。鎮痛剤使用者数が、偽薬期より実薬期で明らかに減少したこと、および実薬期も鎮痛剤を併用する強度の月経痛4名を除いた月経痛軽度〜中等度の13名は、痛みが軽減され、QOLの改善がみられたことから、月経痛改善にラクトフェリンは有用である。
VAS値の平均値の比較 WHO/QOL評価表による心理の改善度 WHO/QOL評価表による全般改善度の変化 WHO/QOL評価表による全体改善度

Claims (1)

  1. 月経痛を緩和するために用いられる腸溶性製剤であって、ラクトフェリンを有効成分として含有することを特徴とする腸溶性製剤。
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