JP5105985B2 - 電気部品 - Google Patents

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Description

本発明は、電気部品に関し、特に、機能素子を有する電気部品に関する。
マイクロ波及びミリ波等も含む高周波帯を用いる通信機器等の電子機器は広い分野において用いられている。このため、電子機器を構成する電気部品の製造も活発化している。この電気部品としては、例えば、マイクロマシン技術を応用したマイクロマシンスイッチが挙げられる。
このような電気部品は、実装用の基板と、その基板の表面に設けられた絶縁層と、基板上に絶縁層を介して設けられた信号用配線と、その信号用配線を跨ぐように基板上に設けられた機能素子と、その機能素子から離間して機能素子を覆うように基板2上に設けられた封止構造体とを備えている。機能素子は、ばね特性が高いTiNやAl等により形成された可動片であり、片持ちあるいは両持ちの梁構造になっている。この機能素子は、信号用配線との離間距離(ギャップ)の変化により可変電気容量やスイッチ等として機能する。
封止構造体は、機能素子をその動作を維持しながら保護するため、その機能素子を中空に封止する構造体である。この封止構造体は、製造コストの低減及び小型化を目的として、成膜方法(成膜プロセス)により薄膜として形成される(例えば、特許文献1参照)。
この薄膜による封止構造体の製造工程では、基板との間にギャップを有する機能素子を基板上に形成するための第1犠牲層が基板上に設けられ、その第1犠牲層上に機能素子が形成される。次いで、第1犠牲層上に機能素子を介して第2犠牲層が積層され、その第2犠牲層上に第1封止膜(封止構造体の一部となる)が形成される。この成膜中もしくは成膜後に、第1封止膜に、第1犠牲層及び第2犠牲層を除去するための開口部が形成される。その後、犠牲層除去用のエッチング材が開口部より導入され、第1犠牲層及び第2犠牲層が完全に除去される。最後に、開口部が完全に閉口するまで第1封止膜上に第2封止膜(封止構造体の一部となる)が形成される。このようにして封止構造体は第1封止膜及び第2封止膜により形成される。
このような製造工程において、スパッタリングや蒸着等の成膜方法により第2封止膜が形成される場合には、開口部の直下に膜材(封止材料)が堆積する。このため、開口部は、機能素子上に膜材を堆積させないように機能素子から離れた位置に設けられる。このような構造とするためには、機能素子よりも封止構造体を全体的に大きく形成する必要がある。
特開2005−207959号公報
しかしながら、封止構造体が全体的に大きく形成された場合には、その内部空間も広くなるため、犠牲層の体積(犠牲層形成用の材料量)も増加してしまう。このため、その犠牲層を除去するためのプロセス時間が長くなるので、電気部品の製造時間が長くなってしまう。
また、その犠牲層を除去するためのプロセス時間を短縮するため、単純に開口面積を大きくした場合には、その開口面積の増加に応じてそれらの開口部を全て閉口するためのプロセス時間が長くなるので、電気部品の製造時間が長くなってしまう。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造時間を短縮することができる電気部品を提供することである。
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、電気部品において、基板と、基板上に設けられて動作する機能素子と、機能素子と離間しかつ機能素子を覆うように基板上に設けられ、基板との間に形成される内部空間に連通する複数の開口部を有する第1封止体と、複数の開口部を閉口するように第1封止体上に設けられた第2封止体とを備え、第1封止体と基板との境界線は、内部空間が狭くなる方向に湾曲して形成されていることである。
本発明によれば、製造時間を短縮することができる電気部品を提供することができる。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について図1乃至図13を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電気部品1Aは、実装用の基板2と、その基板2の表面に設けられた絶縁層3と、基板2上に絶縁層3を介して設けられた信号用配線4と、基板2上に絶縁層3を介して設けられた一対の導体5、6と、それらの導体5、6に接続され信号用配線4を跨ぐように基板2上に設けられた機能素子7と、機能素子7を覆うように基板2上に設けられた第1封止体8と、その第1封止体8を覆うように第1封止体8上に設けられた第2封止体9とを備えている。
基板2は、例えばシリコン等からなる基板である。なお、基板2としては、シリコン基板の他にも、ガラス基板や半絶縁性GaAs基板等を用いることが可能である。絶縁層3は、基板2の表面(搭載面)に設けられている。この絶縁層3としは、例えばシリコン酸化膜等を用いる。
信号用配線4は、信号が通過する信号線路(伝送線路)であり、基板2の一辺(図1中の上辺)から対向する他の一辺(図1中の下辺)に渡って直線状に配設されている。この信号用配線4は、例えばAuやAl等の材料により形成されている。
一対の導体5、6は、信号用配線4の延伸方向に垂直な方向の両側にそれぞれ位置付けられ、信号用配線4から所定距離だけ離間させて基板2上の領域に絶縁層3を介して設けられている。これらの導体5、6は、例えばAuやAl等の材料により形成されている。
機能素子7は、信号用配線4に対向して接離する方向に移動可能に形成された可動片である。この機能素子7は、信号用配線4から数μmの離間距離(ギャップ)だけ離間させてその信号用配線4上に位置付けられ、一対の導体5、6に架け渡されている。機能素子7は、一対の導体5、6に対する電位供給により信号用配線4に近づく方向に変形可能に形成されている。すなわち、機能素子7は、可撓性を有する板状に形成されており、両持ちの梁構造により一対の導体5、6に固定されている。詳述すると、機能素子7の一端が導体5に固定され、その他端が導体6に固定されている。このとき、機能素子7は一対の導体5、6に電気的に接続されている。この機能素子7は、ばね特性が高い金属、例えばTiNやAl等の材料により形成されている。
このような機能素子7は、一対の導体5、6に対する電位供給による静電力等の駆動力により、信号用配線4に近づく方向に変形する。このとき、機能素子7は、信号用配線4側に撓んで変形し、信号用配線4に接近する。駆動力が除かれると、機能素子7は自身のばね特性による復元力により、信号用配線4から離反する方向に向かって変形し、所定の離間距離を有する元の位置に戻る。このように、機能素子7は、機能素子7と信号用配線4との離間距離(ギャップ)の変化により可変電気容量やスイッチ等として機能する。
第1封止体8は、機能素子7から離間して機能素子7の動作を妨げず、その機能素子7を覆うように基板2上に設けられている。この第1封止体8は、基板2との間に形成される内部空間N1に連通する複数の開口部8aを有している(図2参照)。これらの開口部8aは、例えば、基板2に対向する領域R内における機能素子7に対向する対向領域Ra以外の領域Rbにそれぞれ設けられている。各開口部8aは、電気部品1Aの製造工程で用いる犠牲層除去用のエッチング材を導入するための貫通孔である。このような開口部8aは、機能素子7に沿って領域Rb内に例えば20個設けられている。なお、各開口部8aは、例えば円形状にそれぞれ形成されている。
第2封止体9は、各開口部8aを閉口するように第1封止体8上に設けられている。これにより、第1封止体8の内部空間N1は完全に封止される。この内部空間N1は、基板2の表面(絶縁層3の表面)と第1封止体8の内面とにより形成された空間である。なお、第2封止体9により各開口部8aを閉口する際には、第2封止体9の形成用材料(封止材料)が開口部8aからその真下に堆積するが、領域Rbに各開口部8aを位置付けることによって、第2封止体9の形成用材料が機能素子7上に堆積することを防止することができる。
このような第1封止体8及び第2封止体9は、その中空の内部空間N1に機能素子7を封止して機能素子7を動作可能に保護する封止構造体として機能する。なお、第1封止体8及び第2封止体9は、製造コストの低減及び小型化を目的として、例えば成膜方法(成膜プロセス)により薄膜として形成される。
図3に示すように、第1封止体8の壁(壁面)H1は、各開口部8aと対向領域Raとの各々の離間距離L1が維持され、内部空間N1が狭くなる方向に変形されている。すなわち、第1封止体8の壁H1は、第1封止体8の長辺方向(長手方向)に複数のくびれ部K1を有している。したがって、第1封止体8の壁面は、例えばうねりを有するうねり面(波面)となる。換言すれば、第1封止体8と基板2との境界線(壁H1と基板2との境界線)は、内部空間N1が狭くなる方向に湾曲して形成されている。これにより、第1封止体8の壁H1は内部空間N1が狭くなる方向に変形することになる。
くびれ部K1は、各開口部8aと対向領域Raとの各々の離間距離L1を維持しつつ、第1封止体8に形成されている。離間距離L1は、第2封止体9の形成用材料が機能素子7上に堆積しない距離に設定されている。この距離が短い方が第1封止体8の内部空間N1を狭くすることが可能になるので好ましい。なお、第2封止体9は第1封止体8を覆っており、第2封止体9の壁も第1封止体8の壁H1の形状にならって同様の形状となる。
なお、第1封止体8の平面形状において、第1封止体8の長辺は、角部がなく波状のうねりを有する曲線となっている。第1封止体8の短辺は、長方形の角を無くすように半円形状となっている。くびれ部K1は、第1正円C1と第2正円C2とを外接させて表される曲線形状となる。ここで、図3に示す一点鎖線B1は、比較例として、平面形状が長方形である場合の第1封止体を示す。
次に、電気部品1Aの製造方法について図4乃至図7を参照して説明する。
電気部品1Aの製造工程(製造プロセス)は、基板2を準備する工程と、図4に示すように、その基板2上に絶縁層3、信号用配線4及び一対の導体5、6を形成し、さらに、機能素子7を形成するための第1犠牲層11を形成する工程と、図5に示すように、その第1犠牲層11上に機能素子7を形成し、第1犠牲層11上に機能素子7を介して第2犠牲層12を形成する工程と、図6に示すように、第1犠牲層11及び第2犠牲層12を覆うように第1封止体8を形成する工程と、その形成後、図7に示すように、第1犠牲層11及び第2犠牲層12を除去する工程と、その除去後、第1封止体8を覆うようにその第1封止体8上に第2封止体9を形成する工程とを有している。これらの工程が行われ、図1及び図2に示すような電気部品1Aが完成する。
最初に、準備する工程では、基板2を準備する。この基板2としては、例えば、シリコン基板を用いる。なお、他に、基板2としては、絶縁性基板や半導体基板を用いることが可能であり、例えば、ガラス基板やサファイア基板等を用いることができる。
次の工程では、図4に示すように、基板2上の全面に絶縁層3を形成し、その絶縁層3上に信号用配線4及び一対の導体5、6を形成し、その後、絶縁層3上に信号用配線4及び一対の導体5、6を介して、機能素子7を形成するための第1犠牲層11を形成する。なお、信号用配線4及び一対の導体5、6は、例えば、Au等の材料により絶縁層3上の全面に導電層を形成し、その導電層上にパターニング用のフォトレジスト膜を形成し、その後、エッチングを行う形成処理によって形成される。この形成処理と同様の処理を用いて、アルミニウム等の材料により第1犠牲層11も形成される。
次の工程では、図5に示すように、第1犠牲層11上に機能素子7を形成し、その第1犠牲層11上に機能素子7を介して第2犠牲層12を形成する。なお、機能素子7は、例えば、TiNやAl等の材料により基板2上の全面に金属層を形成し、その金属層上にパターニング用のフォトレジスト膜を形成し、その後、エッチングを行う形成処理によって形成される。この形成処理と同様の処理を用いて、アルミニウム等の材料により第2犠牲層12も形成される。
次の工程では、図6に示すように、第1犠牲層11及び第2犠牲層12の外面上にCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長法)やPVD(Physical Vapor Deposition:物理的蒸着法)等により第1封止体8を薄膜として形成し、その第1封止体8に各開口部8aを形成する。なお、各開口部8aは、第1封止体8の成膜中もしくは成膜後に形成される。このような工程において、CVDにより封止を行った場合には、内部空間(中空部)N1の圧力は成膜時の雰囲気圧である1乃至100Pa程度の真空圧となり、スパッタにより封止を行った場合には、内部空間N1の圧力は成膜時の雰囲気圧である0.3Pa程度になる。
次の工程では、図7に示すように、犠牲層除去用のエッチング材を各開口部8aから導入して第1犠牲層11及び第2犠牲層12を除去する。なお、エッチング材としては、例えば酸エッチング液等を用いる。その後、第1封止体8上にCVDやPVD等により第2封止体9を薄膜として形成する。このとき、第1封止体8の各開口部8aは第2封止体9により閉口される。これにより、図1及び図2に示すような電気部品1Aが完成する。
このような製造工程では、第1封止体の壁H1は、各開口部8aと対向領域Raとの各々の離間距離L1が維持され、内部空間(中空部)N1が狭くなる方向に変形されている。これにより、第1犠牲層11及び第2犠牲層12の体積が小さくなるので、各犠牲層11、12を除去するためのプロセス時間を短縮することが可能になる。これにより、電気部品1Aの製造時間を短縮することができ、加えて、その製造コストを抑えることができる。また、前述のように既存の半導体製造プロセスを使用して簡易に封止構造体を有する電気部品1Aを製造することができる。
なお、減圧したチャンバー内で行うプロセスにより封止構造体を成膜する場合には、内部空間(中空部)K1が大気よりも低い気圧となる。このため大気と中空部の圧力差が封止構造体(封止膜)に負荷として生じる。機能素子7よりも封止構造体を大きくすると、この影響が著しくなり、場合によっては封止構造体が大きな変形を伴って機能素子7と接触し、もしくは破断する。これを防止するため、封止構造体にくびれ部K1を設けることによって、機能素子7は剛性の高い封止構造体により封止されるので、開口部8aを有しかつ比較的薄い構造体であっても、大気との圧力差による変形を抑制することができる。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、第1封止体8と基板2との境界線は、基板2の表面と第1封止体8の内面とにより形成された内部空間N1が狭くなる方向に湾曲して形成されており、第1封止体の壁(壁面)H1は内部空間N1が狭くなる方向に変形することから、第1犠牲層11及び第2犠牲層12の体積が小さくなる。これにより、各犠牲層11、12を除去するためのプロセス時間を短縮することが可能になるので、電気部品1Aの製造時間を短縮することができ、さらに、製造コストを低減させることができる。
加えて、第1封止体8の壁H1は、第1封止体8の長手方向(長辺方向)に少なくとも1つのくびれ部K1を有していることから、変形強度を向上させることができ、さらに、くびれ部K1の数を増加させることによって、変位量をより抑えることが可能になるので、変形強度をさらに向上させることができる。その結果、製造プロセス中等に発生する第1封止体8(封止構造体)への亀裂や破断等の不良を回避することが可能になるので、電気部品1Aを安定して製造することができる。特に、第1封止体8の壁H1がうねるように形成されていることから、第1犠牲層11及び第2犠牲層12の体積を小さくし、各犠牲層11、12を除去するためのプロセス時間を確実に短縮することができる。
ここで、第1封止体8の壁H1の形状の変形例について図8乃至図12を参照して説明する。なお、図8乃至図11に示す一点鎖線B1は、比較例として、平面形状が長方形である場合の第1封止体を示す。
図8に示すように、変形例1の第1封止体8では、第1封止体8の平面形状において、第1封止体8の長辺は、角部がなく波状のうねり、すなわち正弦波形状を有する曲線となっている。第1封止体8の短辺は、長方形の角を無くすように半円形状となっている。なお、長辺方向に並ぶ各開口部8aは、第1封止体8の正弦波形状に合わせて長辺方向にスライド移動させて設けられている。
図9に示すように、変形例2の第1封止体8では、図3及び図8に比べ、開口部8aの数が20個から14個に減少しており、長辺方向のくびれ部K1の数が3個から6個に増加しており、第1封止体8の短辺方向にもくびれ部K1が1個設けられている。第1封止体8の平面形状において、第1封止体8の長辺は、角部がなく波状のうねり(図3及び図8に比べうねりが多い)を有する曲線となっている。第1封止体8の短辺も、角部がなく波状のうねりを有する曲線となっている。また、くびれ部K1は、図3に比べ径が小さい第3正円C3と第4正円C4とを外接させて表される曲線形状となる。なお、長辺方向に並ぶ各開口部8a及び短辺方向に並ぶ各開口部8aは、第1封止体8の正弦波形状に合わせて長辺方向にスライド移動させて設けられている。この変形例2では、湾曲形状の曲率を小さくすることで、くびれ部K1の数が3個から6個に増加しているので、図3及び図8に比べ、たわみ等の変形を低減する低減効果が大きくなる。なお、図3、図8及び図9では、湾曲する曲線の振幅は同じである。
図10に示すように、変形例3の第1封止体8では、図3及び図8に比べ、開口部8aの数が20個から10個に減少しており、くびれ部K1の数が3個から4個に増加しており、各くびれ部K1は、機能素子7側にその動作を妨げないように可能な限り大きくくびれている。これにより、各開口部8aは第1封止体8の突出部に設けられているような状態となる。また、くびれ部K1は、同じ径の第5正円C5と第6正円C6とを外接させて表される曲線と直線とからなる形状となる。この変形例3では、図3、図8及び図9に比べ、くびれ部K1の範囲が広いので、たわみ等の変形を低減する低減効果がより大きくなり、さらに、第1封止体8の内部空間N1が狭くなるので、犠牲層11、12を除去するプロセス時間を短縮することができる。
図11に示すように、変形例4の第1封止体8では、図10に比べ、開口部8aの数が10個から12個に増加しており、くびれ部K1の数が4個から5個に増加しており、各くびれ部K1は、機能素子7側にその動作を妨げないように可能な限り大きくくびれている。これにより、図10と同様に、各開口部8aは第1封止体8の突出部に設けられているような状態となる。さらに、各くびれ部K1は、第1封止体8の長辺方向に所定ピッチP1だけスライド移動させて各突出部と対向する位置に設けられている。これにより、各くびれ部K1は機能素子7の長手方向中心に対して非対称な位置に配置されている。この変形例4では、図3、図8及び図9に比べ、たわみ等の変形を低減する低減効果がより大きくなり、さらに、第1封止体8の内部空間N1が狭くなるので、犠牲層11、12を除去するプロセス時間を短縮することができる。加えて、図12に示すように、電子部品1Bにおいて、機能素子7を並列に設け、各機能素子7をそれぞれ第1封止体8及び第2封止体9(封止構造体)により封止した場合には、一方のくびれ部K1と他方の突起部とが嵌合するように各封止構造体を設けることが可能になるので、機能素子7、すなわち封止構造体の搭載面積を小さくすることができ、その結果、電気部品1Bを小型化することができる。
ここで、くびれ部K1を有する封止構造体の変形特性をシミュレーションすると、図13に示すような結果が得られる。図13では、各形状の封止構造体でのたわみ量が示されている。すなわち、平面形状が長方形である場合の封止構造体(長方形:比較例)、長辺方向に3つのくびれ部K1を有する封止構造体(くびれ型A:図3を参照)、及び、長辺方向に6つのくびれ部K1と短辺方向に1つのくびれ部K1とを有する封止構造体(くびれ型B:図9を参照)の各々のたわみ量が示されている。たわみ量は、真空封止により封止膜(封止構造体)の上面が中空部の方向へ変形した量である。なお、図13では、平面形状が長方形である場合の封止構造体のたわみ量を1としている。シミュレーションは、各封止膜の中空部が真空であり、大気との圧力差が0.1kPa程度で封止膜の内壁に生じる状態で行われている。また、封止膜の材料、封止膜の厚さ及び封止高さは同じである。
このシミュレーションの結果、長辺方向に3つのくびれ部K1を有する封止構造体(くびれ型A)、及び長辺方向に6つのくびれ部K1と短辺方向に1つのくびれ部K1とを有する封止構造体(くびれ型B)の各々のたわみ量は、0.6程度となり、平面形状が長方形である場合の封止構造体(長方形)に比べ、約40%低減することがわかる。このようにくびれ部K1を設けることによって、変形強度を向上させることができる。さらに、くびれ部K1の数を増加させることによって、より変位量を抑えることが可能になるので、さらに変形強度を向上させることができる。
なお、ここでは、第1封止体8にくびれ部K1を設けているが、これに限るものではなく、例えば、第1封止体8にくびれ部K1の一方である凹部を設けるようにしてもよく、すなわち第1封止体8の壁の一辺だけがうねるように形成されてもよい。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図14乃至図18を参照して説明する。
本発明の第2の実施の形態は第1の実施の形態と基本的に同様である。したがって、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。なお、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図14に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る電気部品1Cでは、第1封止体8はその平面形状が長方形状に形成されており、各開口部8aは、それらの開口部8aと対向領域Raとの各々の離間距離L1(図3参照)が維持され、それぞれ第1封止体8の外周辺に沿うように細長く、すなわち第1封止体8と基板2との境界線又は境界線の接線に沿って細長い開口形状、例えばスリット形状に形成されている。なお、開口部8aは、その長手方向が第1封止体8の外周辺に対して略平行になるように、すなわち第1封止体8の外周辺(外形)を表す曲線の接線方向とスリットの長手方向とが平行となるように設けられている。換言すれば、スリットは、第1封止体8の壁H1と基板2との境界線又はその境界線の接線と並行しかつ互いに異なる距離に配置された2つの相似あるいは同一の線を境界線方向の所定の長さ単位で閉じて得られる環形状をなしている。
図15に示すように、例えば、スリット形状の開口部8aの短手方向の幅は、正円B2(図15中の一点鎖線)の直径rの1/2であるr/2であり、その長手方向の幅は正円B2の直径rの2倍である2rである。なお、図15に示す正円B2は、開口部8aが円形状である場合の第1封止体比較例である。このとき、開口部8aの開口面積と正円B2の面積とは略同じである。
次に、各開口部8aを閉口する工程(プロセス)について図16乃至図18を参照して説明する。この工程では、各開口部8aは第2封止体9により略同時に閉口される。
第2封止体9により各開口部8aを閉口する工程では、図16に示すように、第2封止体9を生成するための膜材9aが例えばCVDにより第1封止体8上に蒸着される。このとき、膜材9aは、図17に示すように、第1封止体8の表面及び開口部8aの内壁にほぼ等速に堆積していき、第2封止体9の厚さt1が徐々に増加していく。最終的に、図18に示すように、第2封止体9の厚さt1がr/4(短手方向の幅r/2の半分)以上になり、開口部8aが完全に閉じられる。すなわち、開口部8aを完全に閉口するためには、第2封止体9の厚さt1を開口部8aの短手方向の幅r/2の半分以上にする必要がある。なお、スリット形状の開口部8aの長辺と短辺の長さの比を表すアスペクト比は4:1以上に設定されている。
ここで、犠牲層11、12を除去するプロセス時間を短縮するためには、開口部8aを大きくし、犠牲層除去用のエッチング材を多量に導入することによって、エッチング速度を向上させることが可能である。ところが、開口部8aを単純に大きくすると、その開口部8aを閉口するプロセスにおいて、開口部8aの直径(開口距離)の半分以上の厚さに第2封止体9を成膜する必要があり、開口部8aを閉口するプロセス時間(処理時間)が長くなってしまう。
したがって、開口部8aを長細い形状であるスリット形状にすることによって、同面積の他の形状の開口部、例えば正円形状の開口部に比べ、開口部8aの開口距離が狭くなり、開口部8aを閉口するために必要となる第2封止体9の厚さt1が薄くなる。これにより、開口部8aを閉口するプロセス時間を短縮することが可能になる。また、開口部8aの開口面積、すなわち犠牲層除去用のエッチング材の導入量を変更することなく、開口部8aを閉口するプロセス時間を短縮することが可能であるので、犠牲層11、12を除去するプロセス時間の延長も防止することができる。このように、スリット形状の開口部8aを適用することによって製造プロセスの短縮を実現することができる。さらに、開口部8aを閉口するプロセス時間を延長することなく、開口部8aを長手方向に伸ばして開口面積を広げることが可能になるので、犠牲層11、12を除去するプロセス時間を短縮することができる。
また、犠牲層11、12の材料として、有機材料のような比較的熱膨張が大きい材料を使用した場合には、犠牲層12とその上に形成した第1封止体8との熱膨張差により、第1封止体8への開口処理後及び犠牲層除去中において第1封止体8の開口部8aの近傍に応力が集中する。この応力は、開口部8aに近接する第1封止体8の外形と平行な方向への引張特性となる。この場合でも、開口部8aを長細い形状、例えばスリット形状にし、応力の引張方向と平行にスリットの長手方向が位置することによって、応力の集中を抑えることが可能になるので、前述の製造プロセス中に生じる第1封止体8の応力特性を良好にすることもできる。これにより、製造プロセス中に発生する第1封止体8への亀裂や破断等の不良を回避することが可能になるので、電気部品1Cを安定して製造することができる。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、各開口部8aがそれぞれ第1封止体8の外周辺に沿うように細長く、すなわち第1封止体8と基板2との境界線又は境界線の接線に沿って細長い開口形状となるように形成されていることから、同面積の他の形状の開口部、例えば正円形状の開口部に比べ、開口部8aの開口距離が狭くなり、開口部8aを閉口するために必要となる第2封止体9の厚さt1が薄くなる。これにより、開口部8aを閉口するためのプロセス時間を短縮することが可能になるので、電気部品1Cの製造時間を短縮することができる。
特に、犠牲層除去用の開口部8aをスリット形状、すなわち境界線又は接線と並行しかつ互いに異なる距離に配置された2つの相似あるいは同一の線を境界線方向の所定の長さ単位で閉じて得られる環形状とすることによって、同面積の他形状の開口部よりも閉口用のプロセス時間を確実に短縮することができる。例えば、正円型の開口部と同面積で、かつスリット短辺幅を正円径の半分とすることによって、閉口用のプロセス時間を半減することができる。また、各開口部の面積は同面積であり、犠牲層除去用のエッチング材の導入量を同程度にすることが可能であるので、エッチング時間をほとんど変化させずに犠牲層の除去を行うことができる。
さらに、スリット形状の開口部8aの先端を丸みを帯びた形状とすることによって、第1封止体8への開口プロセス及びその後の犠牲層除去プロセスにおいて、開口部8aの先端近傍に生じる応力を低減することができる。また、スリット形状の開口部8aを第1封止体8の外形形状に平行に配置することによって、開口プロセス後から犠牲層除去プロセスでの応力集中を低減することができる。加えて、スリット形状の開口部8aの長辺と短辺の長さの比を表すアスペクト比を4:1以上とすることによって、製造プロセス中におけるスリット近傍の応力低減効果を向上させることができる。これらにより、製造プロセス中に発生する第1封止体8への亀裂や破断等の不良を回避することが可能になるので、電気部品1Cを安定して製造することができる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態について図19乃至図22を参照して説明する。
本発明の第3の実施の形態は第1の実施の形態と基本的に同様である。したがって、したがって、第3の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。なお、第3の実施の形態においては、第1の実施の形態及び第2の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図19に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る電気部品1Dでは、第2の実施の形態に係る各開口部8aが形成されている。すなわち、第1の実施の形態に係る第1封止体8の壁H1と第2の実施の形態に係る開口部8aとが組み合わされている。なお、各開口部8aの中心点と対向領域Raとの各々の離間距離L1が維持されている。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、さらに、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。したがって、第1の実施の形態に係る第1封止体8の壁H1と第2の実施の形態に係る開口部8aとの組み合わせを行うことによって、開口部8aを閉口するプロセス時間を短縮し、加えて、各犠牲層11、12を除去するプロセス時間を短縮することが可能になるので、第1の実施の形態及び第2の実施の形態に比べ、電気部品1Dの製造時間をより短縮することができる。
ここで、くびれ部K1を有する封止構造体にスリット形状の開口部8aを適用した場合における第1封止体8の開口処理後及び犠牲層除去中の応力特性をシミュレーションすると、図20に示すような結果が得られる。図20では、異なる形状の開口部を有する各封止構造体での開口部近傍の応力比が示されており、白点が開口処理後であり、黒点が犠牲層除去中である。すなわち、開口部8aが正円である場合の封止構造体(正円:図1参照)での最大主応力と、開口部8aがスリット形状である場合の封止構造体(スリット:図19を参照)での最大主応力との応力比が示されている。なお、開口部8aが正円である場合の封止構造体での開口処理後及び犠牲層除去中の応力を1としている。また、スリット形状の開口部8aは、先端が半円で、かつ開口部8aの長辺が2rで短辺がr/2でありアスペクト比が4:1となるスリット形状である。さらに、開口部8aは近接する第一封止体の外周辺(外形)を表す曲線の接線方向とスリットの長手方向とが平行となるように配置させている。
シミュレーションは、各封止膜の内部空間(中空部)N1が真空であり、大気との圧力差が0.1kPa程度で封止膜の内壁に生じる状態で行われている。また、各形状において、封止膜の材料、封止膜の厚さ及び封止高さは同じである。犠牲層11、12の材料の線膨張係数としては、第1封止体8よりも10倍程度大きい有機材料が想定されている。
このシミュレーションの結果、開口部8aがスリット形状である場合の封止構造体(スリット)での応力は、開口部8aが正円である場合の封止構造体(正円)での応力に比べ、20%以上低減することがわかる。このように開口部8aの形状をアスペクト比4:1のスリット形状とし、かつ開口部8aに近接する第1封止体8の外形を表す曲線の接線方向とスリットの長手方向とが閉口となるように開口部8aを配置することによって、製造プロセス中の応力を抑制することが可能になるので、製造歩留まりを向上させることができる。
最後に、第1封止体8の壁H1の形状の変形例について図21及び図22を参照して説明する。なお、図21及び図22に示す一点鎖線B1は、比較例として、平面形状が長方形である場合の第1封止体を示す。
図21に示すように、変形例5の第1封止体8では、くびれ部K1を形成している壁H1の湾曲形状は、図19に示す連続的な曲線ではなく、線分の複合体となっている。すなわち、第1封止体8の平面形状において、第1封止体8の長辺は線分の複合体となっており、第1封止体8の短辺も線分の複合体となり、長方形の角部を切り落としたような形状となっている。さらに、各開口部8aは、それぞれ長方形状に形成されている。
図22に示すように、変形例6の第1封止体8では、図21に比べ、長辺方向のくびれ部K1の数が1個から3個に増加している。この変形例6では、図21に比べ、くびれ部K1の数が1個から3個に増加しているので、たわみ等の変形を低減する低減効果が大きくなる。
このように図21及び図22に示すように、くびれ部K1を形成している壁H1の湾曲形状(境界線)は、線分の複合体でもよく、図3、図8及び図9に示すように、連続的な曲線でもよく、図10及び図11に示すように、曲線と線分との組み合わせでもよい。
(他の実施の形態)
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、前述の実施の形態においては、機能素子7として可動片を用いているが、これに限るものではない。
また、前述の実施の形態においては、機能素子7の両端を一対の導体5、6に固定し、両持の梁構造により基板2上に設けているが、これに限るものではなく、例えば、機能素子7の一端だけを一対の導体5、6のどちらか一方に固定し、片持の梁構造により基板2上に設けるようにしてもよい。
最後に、前述の実施の形態においては、各種の数値を挙げているが、それらの数値は例示であり、限定されるものではない。
本発明の第1の実施の形態に係る電気部品の概略構成を示す平面図である。 図1のA1−A1断面図である。 図1に示す電気部品が備える第1封止体を示す平面図である。 図1及び図2に示す電気部品の製造方法を説明するための第1の工程断面図である。 第2の工程断面図である。 第3の工程断面図である。 第4の工程断面図である。 変形例1の第1封止体を示す平面図である。 変形例2の第1封止体を示す平面図である。 変形例3の第1封止体を示す平面図である。 変形例4の第1封止体を示す平面図である。 図11に示す第1封止体を複数備える電気部品の概略構成を示す平面図である。 本発明の第1の実施の形態に係る封止構造体の変形特性のシミュレーション結果を説明するための説明図である。 本発明の第2の実施の形態に係る電気部品の概略構成を示す平面図である。 図14に示す電気部品が備える第1封止体の開口部の大きさを説明するための説明図である。 開口部が閉口される過程を説明するための第1の工程図である。 第2の工程図である。 第3の工程図である。 本発明の第3の実施の形態に係る電気部品の概略構成を示す平面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る封止構造体の応力特性のシミュレーション結果を説明するための説明図である。 変形例5の第1封止体を示す平面図である。 変形例6の第1封止体を示す平面図である。
符号の説明
1A〜1D…電気部品、2…基板、7…機能素子、8…第1封止体、8a…開口部、9…第2封止体、H1…壁、K1…くびれ部、N1…内部空間

Claims (3)

  1. 基板と、
    前記基板上に設けられて動作する機能素子と、
    前記機能素子と離間しかつ前記機能素子を覆うように前記基板上に設けられ、前記基板との間に形成される内部空間に連通する複数の開口部を有する第1封止体と、
    前記複数の開口部を閉口するように前記第1封止体上に設けられた第2封止体と、
    を備え、
    前記第1封止体と前記基板との境界線は、前記内部空間が狭くなる方向に湾曲して形成されていることを特徴とする電気部品。
  2. 前記第1封止体の壁は、前記第1封止体の長手方向に少なくとも1つのくびれ部を有していることを特徴とする請求項1記載の電気部品。
  3. 前記第1封止体の壁は、前記第1封止体の長手方向にうねるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気部品。
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