JP5105820B2 - カルバゾール誘導体及びこれを用いた有機固体レーザー材料 - Google Patents
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本発明のカルバゾール誘導体は、下記一般式(II)で表されることを特徴とする。
本発明において、「置換基を有してもよい」とは、置換基を1以上有してもよいことを意味する。
本発明に係る有機固体レーザー材料は下記一般式(I)で表されるカルバゾール誘導体、好ましくは下記一般式(II)で表されるカルバゾール誘導体を最低1種類含む。
<Xについて>
Xは、発光波長のチューニングに寄与することが期待されるものであり、目的とする波長に応じて適宜選択することが可能である。
Xは、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアルキニル基である。
アルキニル基としては、エチニル基等が挙げられ、置換基の安定性を考えると、これらは置換基を有している方が好ましい。
nは0又は1の整数である。
nが1の場合、カルバゾリル基の置換位置としては、好ましくはXに対して5位又は4位が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物は、X以外に更に任意の置換基を有していてもよく、これらの置換基は隣接する置換基同士で環を形成してもよい。
該任意の置換基としては、化学的に安定な置換基であれば特に制限されないが、例えば、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよい主鎖の炭素数が1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアリールボリル基、シアノ基、ニトロ基、又はハロゲン原子などが挙げられ、また、これらは隣接する置換基同士で連結して環を形成していてもよい。
置換基を有していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、i−ブチル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数2〜20のアルキル基が特に好ましい。
置換基を有していてもよいシクロアルキル基の例としては、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロプロピル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数4〜20のシクロアルキル基が特に好ましい。
置換基を有していてもよいアルケニル基の例としては、ビニル基、スチリル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数2〜20のアルケニル基が特に好ましい。
置換基を有していてもよいアルキニル基の例としては、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数2〜20のアルキニル基が特に好ましい。
置換基を有してもよいアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基など直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。これらの中でも炭素数2〜20のアルコキシ基が特に好ましい。
置換基を有していてもよいアリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、カルバゾイル基などが挙げられる。
置換基を有していてもよいシリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などの置換基としてアルキル基、アリール基等を有するシリル基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリールボリル基の例としては、ジメシチルボリル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールアミノ基、シリル基、アリールボリル基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、フッ素原子などが挙げられる。
<Yについて>
Yは、ビニルベンゼンのπ電子と共役可能なπ電子を有する任意の置換基を表す。Yは、発光波長のチューニングに寄与することが期待されるものであり、目的とする波長に応じて適宜選択することが可能である。
Yの任意の置換基として好ましくは、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ビフェニレン基、アズレニル基、テルフェニル基、ナフチル基(好ましくは2−ナフチル基)、アントリル基(好ましくは2−アントリル基)、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ナフタセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
芳香族複素環基としてはピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環などの6員環単環;チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、チアゾール環などの5員環単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環などの6員環縮合環;インドール環、ベンゾチオフェンなどの6員環と5員環の縮合環;などの複素環由来の基、更にカルバゾールなどの6員環と5員環の縮合した3環性芳香族化合物由来の基などが挙げられる。
一般式(II)で表される化合物は、Y以外に更に任意の置換基を有してもよく、隣接する置換基同士で環を形成してもよい。この置換基としては、一般式(I)で表される化合物がX以外に有していてもよい置換基として前述したものが挙げられる。
一般式(I),(II)で表されるカルバゾール誘導体の分子量は、蒸着によるデバイス作成を行う場合、耐熱性の理由により、置換基を有する場合はその置換基も含めて、合計で2500以下であることが好ましい。また、湿式製膜法によるデバイス作成を行う場合には、溶剤に対する溶解性さえ確保できれば特に上限はないが、通常2000以下程度である。
一般式(I),(II)で表されるカルバゾール誘導体の好ましい具体例としては、例えば、以下に例示されるものが挙げられる。ただし、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、以下の例示化合物において、「Oct」はオクチル基を示し、「Et」はエチル基を示す。
一般式(I)で表されるカルバゾール誘導体のうち、特に一般式(II)で表され、Yが置換基Rを有するビニル基であるカルバゾール誘導体は、例えば以下のスキームで合成することができる。
この反応温度は用いる有機溶剤により変わるが、好ましくは0℃〜110℃である。更に添加剤としてクラウンエーテルを用いてもよい。
本発明に係るカルバゾール誘導体は、ASE特性を示し、単層膜において高い発光効率(PL.Q.E)を示す。更に、有機固体レーザー材料として用いることにより、様々な波長のレーザー発振が可能である。
ASE:自然放出増幅光(Amplified spontaneous emission)は、レーザ光等の励起により、反転分布を形成した媒質から発生した自然放出光が、媒質自身の誘導放出過程によって増幅された指向性の高い光であり、この媒質中に共振器を組み込むことにより、レーザー発振を実現することができる。ASE発振閾値は、このASE発振を生じさせるために必要な最低励起エネルギーの値であり、この値以上の励起エネルギーを加えた場合、ASE光が得られる。ASE発振閾値を測定することにより、ASE発振を生じさせるために必要な最低励起エネルギー強度の情報を得ることができる。
ASE閾値としては、通常0μJ/cm2〜1.5μJ/cm2、好ましくは0μJ/cm2〜0.9μJ/cm2、特に好ましくは0μJ/cm2〜0.55μJ/cm2である。以上の値を満たす場合には、レーザー材料として、低発振閾値の条件を満たし、有用な材料であるといえる。
PL.Q.Eは、有機化合物の発光効率を示し、レーザ光等の励起により、基底状態より一重項励起状態(又は交換交差により三重項励起状態)に励起された分子が、基底状態へ遷移する際に放出される光の励起光に対する効率である。レーザ材料のQ.Eとして、通常50%以上であり、好ましくは79%以上であり、より好ましくは80%以上である。
1)光学特性評価用基板ならびに基板処理方法
ASE特性の測定にはガラス(厚さ1.1mm)基板、蛍光量子効率、発光吸収スペクトル測定には石英基板、蛍光寿命測定にはシリコン基板(13mm×13mm)を使用した。
すべての基板は次のように洗浄処理を行った。
まず、中性洗剤(クリンエース、井内盛栄堂株式会社製)を用いて指洗いをし、その後多量の水で洗い流した。次に1:3の割合に調整した中性洗剤と蒸留水中に基板を入れ、5分間超音波洗浄を行った。洗浄液を蒸留水に変え、更に5分間超音波洗浄を行った後、蒸留水を捨て、適量のアセトンで10分間超音波洗浄を行った。アセトンを捨て、適量のイソプロパノールを入れ5分間超音波洗浄を行った。その後イソプロパノールを捨て、新たに適量のイソプロパノールを入れ160℃にて煮沸洗浄を行った。煮沸洗浄後、基板をイソプロパノール中から引き上げて、エアーを吹きかけて乾燥させた。乾燥させた基板をNippon Laser and Electric Lab社製UVオゾンクリーナーを用いて15分間紫外線照射処理を行った。
その後、1:3の割合に調整した中性洗剤と蒸留水中に基板を入れ、5分間超音波洗浄を行った。溶液を蒸留水に変え、5分間超音波洗浄を行った後、蒸留水を捨て適量のアセトンで10分間超音波洗浄を行った。アセトンを捨て、適量のイソプロパノールを入れ5分間超音波洗浄を行った。その後、イソプロパノールを捨て、新たに適量のイソプロパノールを入れ160℃にて煮沸洗浄を行った。煮沸洗浄後、基板をイソプロパノール中から引き上げて、エアーを吹きかけて乾燥させた。
電界効果トランジスタ(Field effect transistor, FET)特性の測定には、厚さ300nmのSiO2膜が製膜されたnドープSi基板を使用した。ソース−ドレイン電極としてはCr(厚さ1nm)/Au(厚さ40nm)を用いた。ソース−ドレイン電極間のチャネル長はLSD=25μm,チャネル幅はL=4mmである。基板洗浄はオゾンを用いて行った。
使用する有機材料をそれぞれボート中に適量入れ、真空蒸着機(Advanced Lab System社製)にセットした。その後、基板洗浄処理を施した基板を基板ホルダーに固定し、真空蒸着機にセットした。真空度が1×10−3Pa以下に到達したところで、モリブテンボートに電流を流し3.0A/sの蒸着速度で目標の膜厚70nmまで蒸着を行った。蒸着終了後、10分間放置しリークした。
1)ASE特性測定方法
波長337nmの窒素ガスレーザ(pulse width:500ps,repetition rate:20Hz,MNL200,Laser Technik Berlin)を励起光源として用いサンプルを光励起した。励起光はシリンドカルレンズによって0.1cm×0.5cmの大きさに集光し、サンプルへストライプ状に集光して照射した。そしてサンプルからの発光はMulti−channel photodiode(PMA−11,Hamamatsu photonics Co.)によって端面からASEを観測した。湿気と酸素による有機層の劣化を防ぐために、真空チャンバを用い、窒素雰囲気下で測定を行った。
NDフィルターを用いて、入射光強度を0.01%〜100%の間で変化させ、上記の要領でスペクトルを測定し、それぞれのスペクトルのピーク強度を求め、入射光強度/ピーク強度のグラフを作成し、ピーク強度の急激な変化に対して2本の近似線を引き、その交点からASE閾値を算出した。
入射光強度は、下記の式から求めた。単層膜は有機層側から光を照射した。
入射光強度(μJ/cm2)
=レーザー出力(μJ/pulse)×石英板透過率×活性層吸収率×面積補正
=レーザー出力(μJ/pulse)×0.93×活性層吸収率×20
面積補正:1cm2/(1mm×5mm)=20
1)電界効果トランジスタ特性測定方法
Au電極をソース−ドレイン電極として用い、n−ドープSi基板をゲート電極として用いた。作製したデバイスは真空チャンバの中にセットし、真空度1×10−3Pa以下において測定を行った。デバイスのドレイン電流−ドレイン電圧特性は半導体アナライザー(Agilent E5273A)を使用してドレイン電圧を10Vから−100Vまで−1Vずつ変化させ測定を行った。また、ゲート電圧は0Vから−100Vまで−20Vずつ変化させた。
飽和領域におけるホール移動度は式(1)を用いて算出した。
反応液を水にあけ、結晶をメタノール(純正化学株式会社)で洗浄した。また、結晶をヘキサン(純正化学株式会社)で熱時濾過し、酢酸エチル(純正化学株式会社)200mlで溶かし、再結晶し濾過した。
得られた固体をメタノールで洗浄し、加熱減圧下で乾燥して、黄色粉末状固体(化合物(II-A))を得た。同定はNMRにより行った(収量1.38g、収率15.0%)。
1H NMR(CDCl3、400MHz):δ8.16(d,4H)、7.72(s,2H)、7.60−7.59(m,4H)、7.47(s,4H)、7.46−7.40(m,10H)、7.32−7.28(td,4H)、7.18(d,4H)
化合物(II-A)を各基板上に厚さ100nmに製膜することによってサンプルを作製した。
化合物(II-A)を活性材料とした場合の光学特性を次に記す。
蛍光量子収率は82±2%、吸収ピーク波長、蛍光ピーク波長とASE発振波長はそれぞれ348nm、470nm、465nmであった。吸収と蛍光スペクトル、ならびにASE発光スペクトルを図1(a)〜(c)に示し、ASE測定における発光強度の励起光強度依存性と蛍光スペクトル半値幅の励起光強度依存性を図2に示す。
メタノール(純正化学株式会社)を加えて析出した結晶を吸引濾過で回収し、固体をメタノールで熱時濾過した。濾別した固体を加熱減圧下で乾燥して、黄色粉末状固体(化合物(II-B))を得た。同定はNMRにより行った(収量0.86g、収率57.0%)。
1H NMR(CDCl3、400MHz):δ8.16(d,4H)、7.74(s,2H)、7.65−7.58(m,12H)、7.48−7.42(m,10H)、7.33−7.28(td,4H)、7.22(d,4H)
化合物(II-B)を各基板上に厚さ100nmに製膜することによってサンプルを作製した。
化合物(II-B)を活性材料とした場合の光学特性を次に記す。
吸収ピーク波長、蛍光ピーク波長とASE発振波長はそれぞれ350nm、447nm、451nmであった。ASE発振閾値は0.50μJ/cm2であった。吸収と蛍光スペクトル、ならびにASE発光スペクトルを図3(a)〜(c)に示す。
メタノール(純正化学株式会社)を加えて析出した結晶を吸引濾過で回収し、固体をメタノールで熱時濾過した。濾別した固体を加熱減圧下で乾燥して、淡黄色粉末状固体(化合物(II-C))を得た。同定はマス分析により行った(収量1.25g、収率83%)。
メタノール(純正化学株式会社)を加えて析出した結晶を吸引濾過で回収し、固体をメタノールで熱時濾過した。濾別した固体を加熱減圧下で乾燥して、淡黄色粉末状固体(化合物(II-D))を得た。同定はNMRにより行った(収量1.52g、収率101.5%)。
1H NMR(CDCl3、400MHz):δ8.17(d,8H)、7.85(d,4H)、7.71−7.70(m,2H)、7.66−7.58(m,12H)、7.49−7.45(m,10H)、7.35−7.30(m,14H)
化合物(II-D)を各基板上に厚さ100nmに製膜することによってサンプルを作製した。
化合物(II-D)を活性材料とした場合の光学特性を次に記す。
吸収ピーク波長、蛍光ピーク波長とASE発振波長はそれぞれ348nm、448nm、447nmであった。ASE発振閾値は0.50μJ/cm2であった。吸収と蛍光スペクトル、ならびにASE発光スペクトルを図4(a)〜(c)に示す。
化合物BSB−Czを各基板上に厚さ100nmに製膜することによってサンプルを作製した。
化合物BSB−Czを活性材料とした場合の光学特性を次に記す。
蛍光量子収率は77±2%、吸収ピーク波長、蛍光ピーク波長とASE発振波長はそれぞれ371nm、476nm、482nmであった。
ASE発振閾値は0.56μJ/cm2であった。
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