JP5104656B2 - 可変容量型回転式ポンプ - Google Patents

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Description

本願発明は、複数のポンプを備え、外部への流体の供給量を変更可能にした可変容量型回転式ポンプに関する。
例えば、可変容量型回転式ポンプの1種類である可変容量型ギヤポンプが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された可変容量型ギヤポンプは、ケーシング内に駆動ギヤ及び駆動ギヤと噛み合う2つの従動ギヤを収容し、2系統の第1ポンプ及び第2ポンプとして作動するギヤポンプ本体(二重ギヤポンプ)で形成したものである。
具体的な構成として、第1ポンプを構成する第1ギヤポンプの吐出通路が接続する共通の吐出口と第2ポンプを構成する第2ギヤポンプの吐出通路との間には逆止弁が設けられる。共通の吐出口は油圧システムへ接続し、オイルを供給する。また、第2ギヤポンプの吐出口と前記逆止弁との間には、第2ギヤポンプの吸込口に接続するアンロード通路(オイルの戻し通路)が配管され、アンロード通路には電磁式開閉弁が設けられている。
電磁式開閉弁を閉じると、第1ポンプ及び第2ポンプが並列運転となって、吐出容量が大きくなり、この状態では高容量運転となる。電磁式開閉弁を開くと、第2ポンプがアンロードされるので、吐出容量が小さくなり、この状態では低容量運転となる。
特開2002−70757号公報(第3−4頁、図1)
特許文献1に開示されるような可変容量型ギヤポンプは、外部の油圧システムに対するオイルの供給量を減少させるために、第2ギヤポンプの電磁式開閉弁を作動してアンロード通路を開口しなければならない。アンロード通路は吸込口に接続しているため、電磁式開閉弁の作動と同時にアンロード通路が吸込口側と同じ低圧力に低下する。第1ギヤポンプの吐出通路とアンロード通路との間には、逆止弁が設けられ、第1ギヤポンプ側の吐出オイルがアンロード通路側に逆流しないように構成されている。
しかし、高容量運転時は第2ギヤポンプのオイルが共通の吐出口へ流れるため、逆止弁は開口している。この状態で電磁式開閉弁がアンロード通路を開口しても、逆止弁が閉口するまでのタイムラグが必ず生じる。従って、逆止弁が閉口する前に第1ギヤポンプから吐出されたオイルが逆止弁の隙間からアンロード通路側へ大量に逆流する現象が生じる。逆止弁はオイルの逆流中に閉口するため、大流量のオイルの流れが瞬間的に停止され、可変容量型ギヤポンプ特有の油撃が発生する。油撃は衝撃波としてオイルの通路を高速で伝播し、外部の油圧回路や油圧装置あるいはポンプ自体を損傷する恐れがある。
可変容量型ギヤポンプにおける油撃発生防止対策としては、一般的に、大量のオイルの逆流が発生する前に逆止弁を閉じるか、あるいは大量のオイルの流れが瞬間的に停止されないように逆止弁を極めてゆっくり閉じる事などが考えられる。しかし、逆止弁はばね力により動作する構成のため、現状ではいずれの方法も実現が難しかった。
本願発明は、可変容量型回転式ポンプにおいて高容量運転から低容量運転への切り換え時の油撃の発生を防止することを目的とする。
請求項1に記載の本願発明は、主となるポンプ及び副となる1又は複数のポンプを配列し、前記主及び副ポンプからそれぞれの吐出側空間部に吐出される流体を共通の吐出通路に合流して外部へ供給し、前記共通の吐出通路をバイパス通路を介して前記主及び副ポンプの共通の吸入通路に接続し、前記副ポンプに前記流体の合流を防止できる逆止弁を配設するとともに前記バイパス通路に開閉弁を配設し、前記開閉弁の開口動作と前記副ポンプの逆止弁の閉口動作とを行わせることにより前記共通の吐出通路から外部への流体供給量を減少できるようにした可変容量型回転式ポンプにおいて、前記開閉弁の流体通路に前記開閉弁の開口初期に機能する絞り通路を形成し、前記絞り通路は前記バイパス通路に進入する前記開閉弁の弁体の一部外周面と前記バイパス通路の内壁との間に形成した隙間であることを特徴とする。
請求項1記載の本願発明によれば、開閉弁の開口初期から絞り通路が作用してバイパス通路へ流れる流体の流量を制御し、逆止弁の閉口動作時に生じる流体の逆流を抑制することができるため、逆止弁の閉口時に発生する油撃を抑制することができる。
また、絞り通路はバイパス通路に進入する開閉弁の弁体の一部外周面と前記バイパス通路の内壁との間に形成した隙間であるため、簡単な構成により油撃の発生を抑制することができる。
請求項2に記載の本願発明は、前記絞り通路の絞り量及び絞り時間は前記逆止弁の閉口速度に応じて設定されることを特徴とするため、逆止弁の閉口時まで吸入通路側への流体の流れが増大しないように制御することができる。
請求項3に記載の本願発明は、前記隙間を形成する面は前記開閉弁の弁体の軸心線に対して平行であることを特徴とするため、絞り通路を形成するための加工が容易である。
請求項4に記載の本願発明は、前記絞り通路の絞り量は前記開閉弁の開口動作に伴い減少させたことを特徴とするため、油撃の影響が生じない程度に回転式ポンプの容量切り換え動作を速めることができる。
請求項5に記載の本願発明は、前記絞り通路を形成する面は断面がテーパ形状となるように形成されていることにより、請求項4と同じ作用効果を得ることができる。
請求項6に記載の本願発明は、前記絞り通路を形成する面は断面が階段状となるように形成されていることにより、請求項4と同じ作用効果を得ることができる。
請求項7に記載の本願発明は、前記絞り通路を形成する面は断面が湾曲形状となるように形成されていることにより、請求項4と同じ作用効果を得ることができる。
請求項8に記載の本願発明は、前記回転式ポンプはギヤポンプで構成されることにより、可変容量型ギヤポンプにおいて逆止弁の閉口時に発生する油撃を抑制することができる。
本願発明は、可変容量型回転式ポンプにおいて、高容量運転と低容量運転との切り換え時の油撃発生を防止し、安定した運転を行うことができる。
(第1の実施形態)
流体としてオイルを使用する可変容量型ギヤポンプに実施した第1の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、可変容量型ギヤポンプのハウジング1は、中央のボデー2の両側にフロントハウジング3及びリヤハウジング4を接合して図2に示した通しボルト5により一体化された構成である。なお、本願明細書では、フロントハウジング3側を前方とし、リヤハウジング4側を後方として説明する。また、図1の上側を上方、下側を下方とし、図2の左側を左方、右側を右方として説明する。
ボデー2、フロントハウジング3及びリヤハウジング4はボデー2を貫通する駆動軸6及び駆動軸6と平行に配置された被動軸7(図2参照)を軸受8によって回転可能に支持している。駆動軸6は駆動軸6に一体成型された第1駆動ギヤ9及び駆動軸6上にスプライン嵌合された第2駆動ギヤ10を有する。同様に、被動軸7は一体成型された第1被動ギヤ11及びスプライン嵌合された第2被動ギヤ(図示せず)を有する。なお、駆動軸6の前方端部はフロントハウジング3より外方に突出し、図示しない外部動力源に接続されている。
ボデー2の内部には、仕切部12を挟んでフロントハウジング3の後方側面との間に密閉された第1ギヤ室13が形成され、リヤハウジング4の前方側面との間に密閉された第2ギヤ室14が形成されている。図2に示されるように、第1ギヤ室13は2つの円形空間を繋げた断面めがね形状に形成され、内部に駆動軸6の第1駆動ギヤ9及び被動軸7の第1被動ギヤ11を歯合した状態で収容する。第2ギヤ室14は第1ギヤ室13と同一形状の空間で形成され、内部に駆動軸6の第2駆動ギヤ10及び被動軸7の第2被動ギヤ(図示せず)を歯合した状態で収容する。
第1駆動ギヤ9及び第1被動ギヤ11の前方側面とフロントハウジング3の後方側面との間、第1駆動ギヤ9及び第1被動ギヤ11の後方側面と仕切部12の前方側面との間にはそれぞれ、第1ギヤ室13と同様の断面めがね形状をしたサイドプレート15及びガスケット16が介在されている。同様に、第2駆動ギヤ10及び被動軸の第2被動ギヤ(図示せず)と仕切部12の後方側面との間、第2駆動ギヤ10及び被動軸の第2被動ギヤ(図示せず)とリヤハウジング4の前方側面との間には、それぞれサイドプレート17及びガスケット18が介在されている。
各サイドプレート15及び17には、第1駆動ギヤ9及び第2駆動ギヤ10と接触する側面にそれぞれ弧状の溝19が形成され、第1被動ギヤ11及び第2被動ギヤ(図示せず)と接触する側面にそれぞれ弧状の溝20が形成されている。サイドプレート15及び17の溝19は、図2に示すように、後述するオイルの吐出側(図2の上方)から第1駆動ギヤ9及び第2駆動ギヤ10の反回転方向に向けた略3分の1程度の領域において、第1駆動ギヤ9及び第2駆動ギヤ10の歯と対応するように配設されている。
同様に、第1被動ギヤ11及び第2被動ギヤ(図示せず)と接触するサイドプレート15及び17の溝20はオイルの吐出側(図2の上方)から第1被動ギヤ11及び第2被動ギヤ(図示せず)の反回転方向に向けた略3分の1程度の領域において、第1被動ギヤ11及び第2被動ギヤ(図示せず)の歯と対応するように配設されている。
各溝19及び溝20は第1駆動ギヤ9、第1被動ギヤ11、第2駆動ギヤ10及び第2被動ギヤ(図示せず)により第1ギヤ室13及び第2ギヤ室14の内周壁に沿って搬送されるオイルを受入れ、吐出側に吐出する機能を有する。ガスケット18は第1駆動ギヤ9、第1被動ギヤ11、第2駆動ギヤ10及び第2被動ギヤ(図示せず)のスラスト方向のガタ付きを防止する機能を有する。
第1ギヤ室13及び第2ギヤ室14の下方には、それぞれ吸入側空間部22及び23が形成され、ボデー2の下部に駆動軸6と平行に配設された共通の吸入通路21に連通している。吸入通路21はリヤハウジング4の下部に配設されたリヤ側の共通の吸入通路24及び吸入口25を介して外部のオイルタンク(図示せず)に連通している。第1ギヤ室13及び第2ギヤ室14の上方には、それぞれ吐出側空間部26、27が形成されている。
ボデー2の上部には、駆動軸6と平行に共通の吐出通路28が配設され、吐出通路28に吐出側空間部26、27がそれぞれ連通する。従って、第1ギヤ室13及び第2ギヤ室14から吐出側空間部26及び27に吐出されたオイルは吐出通路28に合流し、吐出口29を介して外部の油圧装置等へ接続する油圧回路(図示せず)に供給される。なお、前記第1ギヤ室13、吸入側空間部22及び吐出側空間部26は主ポンプ30を構成し、前記第2ギヤ室14、吸入側空間部23及び吐出側空間部27は副ポンプ31を構成する。
吐出側空間部27は吐出通路28とは別にバイパス通路32に連通している。バイパス通路32はリヤハウジング4に配設され、駆動軸6に平行な通路と直行する通路とからなる曲折した通路に形成されてリヤ側の吸入通路24に連通している。なお、バイパス通路32は吸入通路21に連通する構成であってもよい。第2ギヤ室14の吐出側空間部27が連通する吐出通路28には、逆止弁33が配設されている。逆止弁33は副ポンプ31に対応して設けられ、吐出通路28において、副ポンプ31よりも主ポンプ30側の位置に配設されている。逆止弁33の閉口動作は吐出通路28において、副ポンプ31から吐出されたオイルが主ポンプ30から吐出されるオイルに合流することを防止する。
逆止弁33は外周に雄ねじを有する有底円筒状の本体34と本体34に開口側から摺動可能に嵌合する有底円筒状の弁体35と弁体35の内部空間で本体34との間に介在されるコイル状の圧縮ばね36から構成されている。圧縮ばね36の強さは自由に設定できるが、強い圧縮ばねを使用した場合は弁体35の閉口速度を速めることができる。弁体35の有底側の周面及び本体34には、それぞれ通孔37及び通孔38が穿設され、またボデー2の上部には、吐出口29に開口する連通孔39が穿設されている。
通孔37、通孔38及び連通孔39は弁体35の最上昇時(逆止弁33の開口動作時)に連通し、吐出口29に流れる吐出オイルの一部が弁体35内に流入する。従って、弁体35は圧縮ばね36及び吐出オイルによる下方への付勢力を受けている。第2ギヤ室14の吐出側空間部27の上方には、吐出通路28を形成するボデー2の一部に弁座40が配設されている。弁体35が下降し、弁座40に当接すると、吐出通路28は主ポンプ30側と副ポンプ31側との間の連通状態が遮断される。なお、弁体35は下降しても通孔37が吐出通路28に連通するため、主ポンプ30の吐出オイルが通孔37から流入し、吐出オイルによる下方向への付勢力を継続して受けている。
副ポンプ31よりも吸入通路24側に当たるバイパス通路32の曲折部には、電磁式パイロット弁41によって開閉動作を行う開閉弁42が配設されている。開閉弁42は基本構成として、リヤハウジング4に前後方向に穿設された弁孔43及び弁孔43の内壁面に接触して摺動可能に嵌合された有底円筒状のバイパス弁体44からなる。弁孔43は駆動軸6に平行なバイパス通路32の延長上に、バイパス通路32よりも大径の通路として穿設されている。リヤハウジング4の後方に貫通した弁孔43の開口部は閉鎖ボルト45により密閉されている。
バイパス弁体44は前端側外周に円錐面状の弁体部46を有し、弁体部46よりも前端は駆動軸6に平行なバイパス通路32よりも小径に形成された円柱部47を有する。バイパス弁体44がバイパス通路32を閉口するために前方へ移動し、弁体部46がバイパス通路32の一部に形成された弁座48と当接した時、円柱部47は駆動軸6に平行なバイパス通路32に進入する。円柱部47の外周面と駆動軸6に平行なバイパス通路32の内壁との間の流体通路は、バイパス弁体44の軸心線と平行な隙間からなる絞り通路49として形成される。
絞り通路49において、絞り量である隙間の大きさ及び絞り時間である前後方向の隙間の長さは、逆止弁33の弁体35の閉口速度に合せて設定されている。この構成は、バイパス通路32からリヤ側の吸入通路24へ流れるオイル量が急激に増加することを防止している。バイパス弁体44の内部空間50は弁孔43に開口している。バイパス弁体44の外周面に形成された環状溝51はバイパス弁体44の前後方向に一定の長さを有し、適宜数の通孔52によって内部空間50と連通している。
電磁式パイロット弁41は次のように構成されている。開閉弁42の弁孔43よりも下方位置のリヤハウジング4に、リヤハウジング4の後方に貫通する弁孔53が穿設される。弁孔53の前方端部は弁孔53よりも小径の通孔54と連通する。通孔54はバイパス弁体44よりもリヤ側の吸入通路24寄りの位置でバイパス通路32に開口している。弁孔53内には円柱状のスプール弁55が前後方向に摺動可能に嵌合されている。
スプール弁55は前端側の外周面の2箇所に環状溝56、57を有し、略中心部に吸入圧連通路58を有する。吸入圧連通路58は後端部がスプール弁55の半径方向に曲折して環状溝56に接続し、前端部が弁孔53に開口している。スプール弁55は前端面と弁孔53の前方側内壁との間に介在されたコイル状の圧縮ばね59により後方へ付勢され、リヤハウジング4の後方に突出した後端部に弁孔53よりも大径のフランジ60を有する。従って、スプール弁55は圧縮ばね59に抗して前方へ移動された時、最前進位置をフランジ60によって規定される。
弁孔53はリヤハウジング4に穿設された貫通孔61によって弁孔43に接続され、また、リヤハウジング4に刻設された溝62に接続している。溝62は吐出通路28に開口された吐出圧連通路63と接続している。貫通孔61、溝62及び環状溝56、57の関係は次のように構成されている。即ち、貫通孔61はバイパス弁体44の移動位置に関わらず常に環状溝51と連通する。スプール弁55が前方へ移動した時、貫通孔61は環状溝56と連通し、スプール弁55が後方へ移動した時、貫通孔61は環状溝57と連通する。また、環状溝57は貫通孔61と連通している間、溝62とも連通する。
リヤハウジング4の後端面には、電磁石64及びプランジャー65を備えたケース66が適宜手段により固定されている。スプール弁55のフランジ60はプランジャー65の摺動通路に挿入され、プランジャー65の前端面に当接している。従って、スプール弁55は電磁石64が励磁されるとプランジャー65により前方へ移動され、電磁石64が消磁すると圧縮ばね59の付勢力により後方へ移動される。
以上のように構成された第1の実施形態における可変容量型ギヤポンプの運転について説明する。主ポンプ30及び副ポンプ31の吐出容量は同一である。主ポンプ30から吐出されるオイルのみが吐出口29から供給される場合は低容量の50%運転時となり、主ポンプ30及び副ポンプ31から吐出されるオイル全てが吐出口29から供給される場合は高容量の100%運転時となる。従って、第1の実施形態における可変容量型ギヤポンプはオイルを供給する油圧装置の負荷に応じて吐出容量を50%と100%の2段階に変更可能なギヤポンプを構成する。
図1〜図3は可変容量型ギヤポンプの100%運転時を示したもので、電磁石64は非通電状態にあり、スプール弁55は圧縮ばね59により後方へ移動された位置にある。このため、環状溝57が貫通孔61及び溝62に連通し、開閉弁42はオイルの吐出圧によりバイパス通路32を閉口している。
この状態で駆動軸6が外部から駆動力を与えられると、図2に矢印で示すように、第1駆動ギヤ9及び第2駆動ギヤ10は反時計方向に回転し、第1駆動ギヤ9及び第2駆動ギヤ10と噛み合う第1被動ギヤ11及び第2被動ギヤ(図示せず)は時計方向に回転する。各ギヤの回転により、吸入通路21内のオイルは主ポンプ30の吸入側空間部22から第1ギヤ室13に、また副ポンプ31の吸入側空間部23から第2ギヤ室14にそれぞれ吸入される。
第1ギヤ室13に吸入されたオイルは、第1駆動ギヤ9の歯間と第1ギヤ室13の内周面とにより形成される空間及び第1被動ギヤ11の歯間と第1ギヤ室13の内周面とにより形成される空間にそれぞれ閉じ込められて搬送され、吐出側空間部26に吐出される。第2ギヤ室14に吸入されたオイルは、第2駆動ギヤ10の歯間と第2ギヤ室14の内周面とにより形成される空間及び第2被動ギヤ(図示せず)の歯間と第2ギヤ室14の内周面とにより形成される空間にそれぞれ閉じ込められて搬送され、吐出側空間部27に吐出される。吐出側空間部26及び27に吐出されたオイルは共通の吐出通路28に合流し、吐出口29から外部油圧回路(図示せず)に供給されるため、外部油圧回路や油圧装置(図示せず)の負荷に応じて昇圧された吐出圧を有している。
吐出側空間部26から吐出通路28を介して吐出口29へ流れるオイルの一部は連通孔39、通孔38及び37から弁体35の内部空間へ流れるため、オイルの吐出圧及び圧縮ばね36は弁体35を閉口する方向に付勢する。一方、吐出側空間部27から吐出通路28に流れるオイルの吐出圧及びバイパス通路32の閉鎖に伴うオイル流れの圧損により生じる圧力が逆止弁33の弁体35を開口する方向にかかる。従って、弁体35が圧縮ばねの収縮によって圧力バランスが保たれ、逆止弁33は開口状態を維持される。
また、吐出通路28内のオイルの一部は吐出圧連通路63を流れ、溝62、環状溝57及び貫通孔61からバイパス弁体44の環状溝51及び通孔52を介して内部空間50に流入する。このため、バイパス弁体44の弁体部46がオイルの吐出圧により弁座48に当接され、開閉弁42はバイパス通路32の閉口状態を維持する。従って、副ポンプ31から吐出側空間部27に吐出されたオイルは吐出通路28に流れ、主ポンプ30から吐出側空間部26に吐出されたオイルと合流するため、100%のオイルが吐出口29から外部の油圧回路(図示せず)に供給される。
図4〜図6は可変容量型ギヤポンプの50%運転時への変更時を示したものである。100%運転中に電磁式パイロット弁41の電磁石64を通電すると、プランジャー65は磁力によって圧縮ばね59の付勢力に抗して前方へ移動し、スプール弁55を図4のように前方位置へ移動する。スプール弁55に形成した環状溝57は貫通孔61及び溝62から離れ、環状溝56が貫通孔61に連通する。開閉弁42によって閉口されたバイパス通路32はリヤ側の吸入通路24と同じ低圧の状態にある。このため、スプール弁55の内部空間50及び弁孔43内のオイルは吸入圧連通路58を介してバイパス通路32へ流出し、内部空間50及び弁孔43内は低圧状態になる(図4参照)。
バイパス弁体44は駆動軸6に平行なバイパス通路32内のオイルの吐出圧を受けて後方へ移動し、弁体部46が弁座48から離間するため、吐出側空間部27に吐出されたオイルはバイパス通路32側へ流れ始める。バイパス通路32の開口により圧損が低下するため、逆止弁33の弁体35は圧縮ばね36の伸張により、吐出通路28を閉口する方向へ移動する。しかし、バイパス通路32へ流れるオイルは開閉弁42の開口初期から絞り通路49により設定された流量に制限され、急激な流量増加が抑えられている。このため、主ポンプ30から吐出されるオイルは吐出通路28からバイパス通路32側への逆流を抑制される(図5参照)。
絞り通路49の前後方向の長さは、圧縮ばね36の強さによって定められる移動速度に対応して設定されているため、バイパス通路32に流入するオイル量は逆止弁33が吐出通路28を閉口するまで抑制される。従って、逆止弁33による閉口直前におけるオイルの逆流がほとんど無いため、油撃の発生を防止することができる。逆止弁33により吐出通路28が閉口された時点で、バイパス弁体44はバイパス通路32を全開口するため、副ポンプ31から吐出されるオイルは全て吸入通路24へ流れる。従って、外部油圧回路(図示せず)へは主ポンプ30から吐出されるオイルのみが供給され(図6参照)、流体供給量が減少する。
可変容量型ギヤポンプを100%運転に戻す場合は、電磁式パイロット弁41の電磁石64を非通電にすればよい。電磁石64が磁力を消失するため、スプール弁55は圧縮ばね59によって後方へ移動され、環状溝57が貫通孔61及び溝62に連通する(図3参照)。吐出通路28のオイルは吐出圧連通路63からバイパス弁体44の内部空間50に流入する。従って、バイパス弁体44はオイルの吐出圧によって前方へ移動し、バイパス通路32を閉口する。バイパス弁体44が閉口する方向へ移動するに伴い、駆動軸6に平行なバイパス通路32内の圧損が高まり、逆止弁33の弁体35は開口方向へ移動される。従って、バイパス弁体44がバイパス通路32を閉口した時、吐出通路28が全開口されるため、副ポンプ31から吐出されるオイルは吐出通路28に合流し、主ポンプ30から吐出されるオイルとともに吐出口29から外部油圧回路(図示せず)に供給される。なお、絞り通路49はバイパス弁体44の閉口方向への移動に伴い絞り機能を生じ、バイパス通路32へ流れるオイル量を徐々に絞るが、この絞り機能は50%運転時から100%運転時への流量切り換えを滑らかに行えるという利点がある。このため、外部油圧回路(図示せず)側への衝撃や圧縮ばね36の振動等を防止することができる。
前記した第1の実施形態は以下の作用効果を有する。
(1)開閉弁42の流体通路に絞り通路49を形成することにより、ギヤポンプの容量切り換えをゆっくりと行うことができ、逆止弁33における急激な流れの変化を防止できるので、油撃の発生を抑制し、外部の油圧回路や油圧装置あるいはギヤポンプ自体の衝撃や騒音の発生を防止することができる。
(2)逆止弁33の開閉口は圧力バランスによって行われるため、圧縮ばね36は小さなばね定数のものを使用することができ、構成を簡単に、かつ小型化することができる。
(3)絞り通路49は油撃の発生を抑制することにより、逆止弁33の圧縮ばね36の振動を防止する効果も期待できる。即ち、逆止弁33の閉口時期において圧縮ばね36の振動が生じると、弁体35が閉口位置、開口位置を繰り返して不安定な状態を生じる。そのため、主ポンプ30側のオイルが逆流と逆流停止を繰り返し、外部油圧回路(図示せず)への定量のオイル供給を阻害する恐れがあり、不安定な状態を生じる。しかし、圧縮ばね36の振動発生防止効果はこのような問題を無くすことができる。
(4)絞り通路49は50%運転から100%運転へ切り換える場合、逆止弁33及び開閉弁42の位置を流れるオイル量の変化を滑らかにすることができ、急激な流量変化に伴う外部油圧回路(図示せず)への衝撃や圧縮ばね36の振動発生を防止する効果を期待できる。
(第2の実施形態)
図7に示す第2の実施形態は、第1の実施形態における絞り通路49の形状を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第2の実施形態は、バイパス弁体44における円柱部67の外周面を前方に向けて径が縮小する截頭円錐形状に形成している。円柱部67が駆動軸6に平行なバイパス通路32に進入し、弁体部46が弁座48に当接した時、円柱部67の外周面と駆動軸6に平行なバイパス通路32の内壁との間に絞り通路68が形成される。絞り通路68を形成する円柱部67の外周面は断面が円柱部67の後方に向けて絞り通路68を形成する隙間の間隔を縮小するテーパ形状となる。従って、100%運転時に電磁石64が通電されると、スプール弁55が前方へ移動してバイパス弁体44の内部空間50は低圧状態になり、バイパス弁体44を後方へ移動する。絞り通路68の絞り量はバイパス弁体44の後方への移動初期(開口初期)に大きく、その後、バイパス弁体44による開口動作に伴い徐々に減少する。
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に油撃の発生を抑制することができる。また、開口動作に伴い絞りの程度が緩くなるので、容量切り換え動作を速めることができるとともに円柱部67が吐出通路28から抜け出た時のバイパス通路32内の圧力変化を小さくすることができる。また、開口動作の後半でオイルの流通量を増加させることができるので、低温高粘度のオイルを使用した場合好適である。
(第3の実施形態)
図8に示す第3の実施形態は、第1の実施形態における絞り通路49の形状を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第3の実施形態は、弁座48に近い駆動軸6に平行なバイパス通路32の内周壁69の壁面を断面でみて弁座48側に向けて拡大するテーパ形状に形成する。円柱部47は第1の実施形態と同様に円柱状に形成されている。即ち、第3の実施形態はテーパ面を第2の実施形態と逆に駆動軸6に平行なバイパス通路32側に形成した構成である。従って、円柱部47の外周面とバイパス通路32の内周壁69との間に形成される絞り通路70は前方へ向けて縮小する隙間で構成されている。第3の実施形態は第2の実施形態と同一の作用効果を有する。
(第4の実施形態)
図9に示す第4の実施形態は、第1の実施形態における絞り通路49の形状を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第4の実施形態は、バイパス弁体44における円柱部71の外周面を前方に向けて径が縮小するように断面階段状に形成し、絞り通路72の隙間を後方に向けて階段状に縮小した構成である。第4の実施形態は第2の実施形態と同一の作用効果を有する。
(第5の実施形態)
図10に示す第5の実施形態は、第1の実施形態における絞り通路49の形状を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第5の実施形態は、円柱部73の外周面74を湾曲面に形成し、絞り通路75を形成する隙間を後方へ向けて縮小する断面湾曲形状に形成した構成である。第5の実施形態は第2の実施形態と同一の作用効果を有する。
本願発明は、前記した各実施形態の構成に限定されるものではなく本願発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
(1)絞り通路49は前記各実施の形態に示したように開閉弁42のバイパス弁体44の円柱部47、67、71、73の外周面と駆動軸6に平行なバイパス通路32の内壁との間の隙間で構成するものに限らず、バイパス弁体44の内部を貫通させた開閉可能な流通路によって構成することができる。
(2)開閉弁42を作動する電磁式パイロット弁41は、電磁式に代えて差圧により作動する構成とすることができる。
(3)開閉弁42は電磁式パイロット弁41を使用せず、吐出通路28側の吐出圧と吸入通路21、24側の低圧との切り換え弁を介在したオイル通路に直接接続して作動するように構成しても良い。
(4)容量可変型回転式ポンプとしては、ギヤポンプに限らず、スクリューポンプ、ベーンポンプ及びルーツ式ポンプ等の他のポンプにおいても実施することが可能である。
第1の実施形態を示すギヤポンプの縦断面図である。 図1のA−A線断面図である。 開閉弁を示す拡大断面図である。 100%運転時の逆止弁と開閉弁との関係を示す断面図である。 50%運転に切り換え時の逆止弁と開閉弁との関係を示す断面図である。 50%運転時の逆止弁と開閉弁との関係を示す断面図である。 第2の実施形態を示す開閉弁の断面図である。 第3の実施形態を示す開閉弁の断面図である。 第4の実施形態を示す開閉弁の断面図である。 第5の実施形態を示す開閉弁の断面図である。
符号の説明
1 ハウジング
6 駆動軸
7 被動軸
9 第1駆動ギヤ
10 第2駆動ギヤ
11 第1被動ギヤ
13 第1ギヤ室
14 第2ギヤ室
21、24 吸入通路
22、23 吸入側空間部
26、27 吐出側空間部
28 吐出通路
29 吐出口
30 主ポンプ
31 副ポンプ
32 バイパス通路
33 逆止弁
41 電磁式パイロット弁
42 開閉弁
44 バイパス弁体
47、67、71、73 円柱部
49、68、70、72、75 絞り通路
55 スプール弁
58 吸入圧連通路
63 吐出圧連通路

Claims (8)

  1. 主となるポンプ及び副となるポンプを配列し、前記主及び副ポンプからそれぞれの吐出側空間部に吐出される流体を共通の吐出通路に合流して外部へ供給し、前記共通の吐出通路をバイパス通路を介して前記主及び副ポンプの共通の吸入通路に接続し、前記副ポンプに前記流体の合流を防止できる逆止弁を配設するとともに前記バイパス通路に開閉弁を配設し、前記開閉弁の開口動作と前記副ポンプの逆止弁の閉口動作とを行わせることにより前記共通の吐出通路から外部への流体供給量を減少できるようにした可変容量型回転式ポンプにおいて、
    前記開閉弁の流体通路に前記開閉弁の開口初期に機能する絞り通路を形成し
    前記絞り通路は前記バイパス通路に進入する前記開閉弁の弁体の一部外周面と前記バイパス通路の内壁との間に形成した隙間であることを特徴とする可変容量型回転式ポンプ。
  2. 前記絞り通路の絞り量及び絞り時間は前記逆止弁の閉口速度に応じて設定されることを特徴とする請求項1記載の可変容量型回転式ポンプ。
  3. 前記隙間を形成する面は前記開閉弁の弁体の軸心線に対して平行であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変容量型回転式ポンプ。
  4. 前記絞り通路の絞り量は前記開閉弁の開口動作に伴い減少させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変容量型回転式ポンプ。
  5. 前記絞り通路を形成する面は断面がテーパ形状となるように形成されていることを特徴する請求項4に記載の可変容量型回転式ポンプ。
  6. 前記絞り通路を形成する面は断面が階段状となるように形成されていることを特徴とする請求項に記載の可変容量型回転式ポンプ。
  7. 前記絞り通路を形成する面は断面が湾曲形状となるように形成されていることを特徴とする請求項に記載の可変容量型回転式ポンプ。
  8. 前記回転式ポンプはギヤポンプで構成されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の可変容量型回転式ポンプ。
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