JP5103096B2 - 端面の耐食性に優れる塗装鋼板 - Google Patents
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Description
防錆油を塗布する方法においても同様の問題があり、さらに防錆油の塗布により鋼板がべたついて、取り扱いが困難になるという問題もある。
すなわち、上記課題は以下の本発明により解決される。
前記塗膜は、(A)25℃の純水に対する溶解度が0.1〜10mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩、および(B)25℃の純水に対する溶解度が20〜100mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩を含む塗装鋼板。
[2]前記塗膜中の、(A)成分の亜リン酸塩およびリン酸塩の合計のモル数と前記(B)成分の亜リン酸塩およびリン酸塩の合計のモル数の比が、0.1〜4.0である[1]に記載の塗装鋼板。
[3]前記(B)成分の亜リン酸塩またはリン酸塩の平均粒径をDb、前記塗膜の平均厚みをTとするとき、Db/Tの値が1以上3未満である[1]または[2]に記載の塗装鋼板。
[4]前記(B)成分が、SrHPO3、MgHPO3、MnHPO3、CaHPO3である[1]〜[3]いずれかに記載の塗装鋼板。
[5]前記鋼板はアルミニウムめっき鋼板である[1]〜[4]いずれかに記載の塗装鋼板。
本発明の塗装鋼板は、鋼板の上に塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は(A)25℃の純水に対する溶解度が0.1〜10mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩、および(B)25℃の純水に対する溶解度が20〜100mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩を含むことを特徴とする。
塗装鋼板とは鋼板表面に塗膜を有する鋼板である。塗膜とは鋼板表面に塗料を塗布して(塗装して)得られる膜である。
鋼板とは板状の鋼である。鋼板の例には、冷圧延鋼板や、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっきなどが施されためっき鋼板が含まれる。溶融めっき鋼板の例には、溶融Zn浴、溶融Zn−Al合金浴、溶融Zn−Al−Mg合金浴、溶融Zn−Mg合金浴、溶融Zn−Ni合金浴、溶融Al浴、溶融Al−Si合金浴などを用い、連続めっきまたは浸漬めっきにより得られるものが含まれる。さらに溶融めっき後に合金化処理した合金化溶融めっき鋼板を用いてもよい。
また本発明に用いられる鋼板は、耐食性や密着性を向上させる前処理として、アルカリ溶剤などを用いた脱脂処理やリン酸塩処理などの化成処理が施されていてもよい。
塗膜は高分子化合物を主成分とする。高分子化合物とは、多数個の原子が共有結合により次々と結合(重合)してできた分子量の大きな化合物の総称であり、ポリマーともいう。高分子化合物の例には、有機化合物が重合してなる有機系高分子化合物、無機化合物が重合してなる無機系高分子化合物がある。
高分子化合物は塗膜のマトリックスとなる材料であり、公知のものを用いることができる。好ましい高分子化合物の例には、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ、アクリル、ポリビニルアルコール、フェノール等の有機系高分子化合物が含まれる。
以下に各成分について詳しく説明する。
本発明の塗膜は、(A)成分として25℃の純水に対する溶解度が0.1〜10mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩(「低水溶性リン酸塩等」という)を含む。溶解度とは、その物質が一定の量の溶媒に解ける物質量である。本発明においては25℃において、純水1Lに対する溶解する物質のモル数で規定される。溶解度は定法により測定してよいが、ICP−AES法やイオンクロマトグラフ法で測定することが好ましい。
本発明の塗膜は、(B)成分として25℃の純水に対する溶解度が20〜100mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩(「高水溶性リン酸塩等」という)を含む。25℃の純水に対する溶解度が20〜100mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩の例には、SrHPO3(前記溶解度が63mmol/L)、MgHPO3(前記溶解度が23mmol/L)、MnHPO3(前記溶解度が20mmol/L)、CaHPO3(前記溶解度が83mmol/L)が含まれる。
これらの化合物は1種用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
平均粒径とは一次粒子の平均粒径である。平均粒径は、公知の方法で測定できるが、レーザー回折法、遠心沈降法等により測定してよい。その際、平均粒径は得られた粒度分布から、重量累積粒度分布の50%として算出される。
本発明の塗装鋼板は端面の耐腐食性に優れる。端面とは主として加工の際に切断された鋼板の部分をいう。前述のとおり、端面は鋼素地(下地鋼)が露出しているため腐食を受けやすい。特に一般の塗装鋼板を屋外に放置しておくと、その端面の腐食の度合いは顕著である。
しかし本発明の塗装鋼板は、その塗膜に前記(A)および(B)成分を有する。そのため長期にわたり端面の防食性に優れる。その機構は次のように推察される。
以上のような機構により、暴露初期から長期にわたり端面の耐食性を向上させることができると考えられる。ただし、メカニズムはこれに限定されない。
0.5≦D/T<5 …(1)
1≦Db/T<3 …(2)
すなわち前記(B)成分のリン酸塩等の平均粒径を塗膜平均厚みの値以上とすることが好ましい。このような塗膜は、前記リン酸塩等が塗膜から突出しやすいため、降雨時に溶出しやすくなり、暴露初期における塗装鋼板の端面の耐食性がより向上できる。
塗装鋼板の端面の耐腐食性は公知の方法で評価できる。例えば、塗装鋼板から切り出したサンプルを屋外に暴露して切断端面の状態を観察することにより行ってよい。
本発明の塗装鋼板は発明の効果を損なわない範囲で任意に製造されうるが、以下好ましい製造方法を説明する。
本発明の塗料は、例えばポリエステル樹脂等の有機系高分子化合物に前記(A)および(B)成分、必要に応じて各種添加剤を混合して得られる。混合する手段は特に限定されないが、撹拌機、三本ロール、ビーズミル等を用いることが好ましい。このとき必要に応じて溶媒を加えてもよい。
塗料を塗装原板に塗布する方法の例には、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、ナイフコートが含まれる。塗料の塗布量は所望の膜厚となるように調整される。
焼付工程は到達板温が150〜250℃となるように行うことが好ましい。
1)鋼板の準備
以下の鋼種A(板厚0.8mm)の鋼板を用いて、組成;Al−9%Si、浴温;660℃のめっき浴を有する連続溶融アルミニウムめっきラインにて片面当たりのめっき付着量が80g/m2である溶融Al−Siめっき鋼板を製造した。
鋼種Aとは、Cが0.03質量%、Mnが0.15質量%、Pが0.01質量%、Sが0.005質量%、残部がFeおよび不可避的不純物である鋼板である。
ポリエステル樹脂、表1に示す種類および配合量(乾燥塗膜100質量部中の質量%)のリン酸塩または亜リン酸塩を三本ロールを用いて混練して塗料を調製した。この際、固形分(樹脂およびリン酸塩等)は塗料の50質量%となるようにした。
MgHPO4
CaHPO4
ZnHPO4
ZnHPO3
Mg3(PO4)2
SrHPO3
MgHPO3
MnHPO3
CaHPO3
上記のようにして得られた塗料を、ロールコートにて鋼板表面に塗布し、到達板温150℃で乾燥させて、平均膜厚が5μmの塗膜を形成した。
上記のようにして得た塗装鋼板を切断して、切断端面に鋼素地が露出した7cm×15cmのサンプルを得た。当該サンプルを大阪府堺市の工業地帯の屋外に暴露した。暴露は、まず塩化ビニル製の板を水平に設置した。その上に塗装鋼板サンプルを、水平面に対して35°傾くように設置した。その際、塗装面が上になるようにし、かつ直射日光および雨水が直接当たるようにした。このまま3ヶ月および6ヶ月の間暴露し、切断端面の観察を行い、以下のように評価した。
○;切断端面の赤錆発生面積率が10%以下であり、かつ赤錆流れが認められない。
△;切断端面の赤錆発生面積率が10%を超えるが、赤錆流れは認められない。
×;赤錆流れが認められる。
暴露期間6ヶ月においても切断端面からの赤錆流れが認められなかったもの(△評価以上)を合格、それ以外を不合格とした。
表2に示す種類の化合物を表2に示す配合量で用いた以外は実施例1と同様にして、比較用塗装鋼板を調整し、同様に評価を行った。
各種化合物は実施例で用いたもの以外に、以下のものを使用した。
Zn3(PO4)2
Ca3(PO4)2
ZnO
MgO
(A)成分、(B)成分またはそれ以外の化合物を配合しない以外は実施例1と同様にして塗装鋼板を調整した。続いて当該塗装鋼板から塗膜を剥離し、当該塗膜について実施例と同様の暴露試験を行った。
塗膜を形成しない溶融アルミめっき鋼板を用いて、実施例と同様の暴露試験を行った。
Claims (4)
- 鋼板の上に塗膜を有する塗装鋼板であって、
前記塗膜は、(A)25℃の純水に対する溶解度が0.1〜10mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩、および(B)25℃の純水に対する溶解度が20〜100mmol/Lであるリン酸塩または亜リン酸塩を含み、
前記(B)成分のリン酸塩または亜リン酸塩の平均粒径をDb、前記塗膜の平均厚みをTとするとき、Db/Tの値が1以上3未満である、
塗装鋼板。 - 前記塗膜中の、前記(B)成分のリン酸塩および亜リン酸塩の合計のモル数に対する前記(A)成分のリン酸塩および亜リン酸塩の合計のモル数の比が、0.1〜4.0である、請求項1に記載の塗装鋼板。
- 前記(B)成分が、SrHPO3、MgHPO3、MnHPO 3 またはCaHPO3である、請求項1に記載の塗装鋼板。
- 前記鋼板はアルミニウムめっき鋼板である、請求項1に記載の塗装鋼板。
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