JP5102669B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載される自動変速機の制御装置に関し、特に、前回エンジン停止時からの経過時間、エンジン冷却水の水温等に基づいて自動変速機内の作動油の油温を推定し、推定された油温に応じた制御を行う自動変速機の制御装置に関する。
車両用の自動変速機では、一般に、ギア(変速段)の切替えやギアの潤滑等のために、作動油(ATF)を利用している。この作動油は温度により粘性が変化する。すなわち、低温時にはその粘性が高くなり、高温時には低くなるため、特に、車両のエンジンの始動直後では、低温条件での油圧制御を行う必要がある。低温条件の油圧制御としては、例えば、ギアの切替を速くしたり、油圧を加える時間を長くしたり、油圧を高めたりする。適切な油圧制御を行うためには、自動変速機に油温センサを備え、計測された油温に基づいて低温条件の油圧制御をできるだけ短く(または少なく)すればよい。
ここで、油圧センサが故障した場合や、いわゆる軽自動車等の設置スペースや製造コストの問題で初めから油圧センサが設けられていない場合には、機能保護の観点から変速に制限を掛けたり、エンジン冷却水の水温(以下、「エンジン冷却水温」という)から油温を推定して、その推定に基づいて変速制御を行ったりしていた(例えば、特許文献2参照)。
特開2006−105322号公報 特開平8−233081号公報
特許文献1に開示される自動変速機では、原則として油温センサを備える構成が開示されるが、油温センサの故障時には、エンジン冷却水温から油温を推定している。具体的には、前回イグニッションスイッチをONしたときに計測されたエンジン冷却水温と今回計測されたエンジン冷却水温とを比較し、より低いエンジン冷却水温に基づいて油温を推定している。
また、特許文献2に開示される自動変速機では、前回エンジン停止時に測定されたエンジン冷却水温と、各部の発熱量および放熱量から推定された前回エンジン停止時の油温と、今回のエンジン始動時に測定されたエンジン冷却水温とに基づいて、冷却水温と油温との単純な比により今回のエンジン始動時の油温を推定している。
しかしながら、特許文献1のように、作動油の油温を検出するために一般的に油温センサを設置する場合には、自動変速機(および車両全体)の製造コストの上昇を招くとともに、設置スペースの増加が問題となる。また、エンジン停止後油温とエンジン冷却水温が最終到達温度(概ね外気温に等しい)にサチレートするにはある程度の時間が掛かることが知られている。特許文献1の自動変速機では、油温センサの故障時には上述のような油温の推定を行うが、油温およびエンジン冷却水温が最終到達温度に達していない状況において、再びエンジンを始動した場合、特に、エンジン停止から再始動までの時間が短い場合には、その特性の違いにより両温度は通常乖離している。そのため、そのような場合に、前回エンジン始動時または今回エンジン始動時のエンジン冷却水温に基づいて油温を推定すると、推定油温の精度が悪化してしまう。実際の油温と推定油温とに差がある場合、特に油温が低いときにはギアの切替時にショックを生じる等の不具合が発生するという問題がある。
また、特許文献2の自動変速機では、前回エンジン停止時の油温を推定し、さらにその推定値に基づいて、冷却水温と油温との単純な比によりエンジン始動時の油温を推定しているが、二重の推定を行っているため、最終的なエンジン始動時の油温の推定精度が低下する可能性があるとともに、演算処理による制御部への負荷が増大するという問題がある。
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジン冷却水温に基づいて油温を推定する際、実際の油温の最低値を保証することができ、それにより、油温推定の精度が悪い場合においても低油温に起因する不具合を防止することができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の自動変速機の制御装置は、複数の摩擦係合要素(3)に作動油を供給または排出することにより変速を行う自動変速機の制御装置(6、10)であって、エンジン冷却水の水温を検出するエンジン水温検出手段(18)と、車両の室外の空気の温度を判定する外気温判定手段(10)と、前回イグニションスイッチをOFFしたときから次回イグニッションスイッチをONするまでの経過時間を計測する計時手段(22)と、計時手段により計測された経過時間、次回イグニッションスイッチをONしたときのエンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温および外気温判定手段により判定された空気の温度のうち少なくとも経過時間に基づいて、作動油の油温が所定の温度(例えば、20℃)よりも高いか否かを判定する作動油温判定手段(10)とを備え、前記作動油温判定手段は、前記計時手段により計測された経過時間が第1の所定時間より長く、第2の所定時間(第1の所定時間<第2の所定時間)より短い場合であって、前記外気温判定手段により判定された空気の温度が前記所定の温度より高く、かつ、前記エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温が該所定の温度より高いとき、あるいは、前記計時手段により計測された経過時間が第2の所定時間より長い場合であって、前記エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温が前記所定の温度より高いとき、前記作動油の油温が前記所定の温度よりも高いと判定することを特徴とする。
本発明の自動変速機の制御装置によれば、車両のイグニッションスイッチをONしたときに自動変速機の作動油の油温を判定するに際し、前回イグニッションスイッチをOFFしてから今回イグニッションスイッチをONするまでの経過時間を利用する。油温の判定のために、エンジン冷却水の水温に加え、経過時間や車両の室外の空気の温度(外気温)を用いることにより、油温判定(実施形態では、油温推定)の精度が悪くなっていたとしても低油温に起因する不具合を効果的に防止することができる。また、このように作動油の油温を判定(推定)することにより油温の最低温度、ここでは所定の温度を保証することができるので、別途油温センサを設置することなく、低油温に起因する不具合を防止することができる。したがって、油温センサの設置スペースおよび自動変速機の製造コストを削減することができる。
また、本発明によれば、作動油温判定手段は、計時手段により計測された経過時間が第1の所定時間(例えば、10分)より長く、第2の所定時間(例えば、360分)(第1の所定時間<第2の所定時間)より短い場合であって、外気温判定手段により判定された空気の温度が所定の温度より高く、かつ、エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温が所定の温度より高いとき、あるいは、計時手段により計測された経過時間が第2の所定時間より長い場合であって、エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温が所定の温度より高いとき、作動油の油温が所定の温度よりも高いと判定するので、所定の条件が成立した場合には、作動油の油温が所定の温度よりも高いことを保証することができ、このとき、例えば、ロックアップクラッチの締結を開始する温度が複数設定されている場合には、より低温側の条件を用いることができる。したがって、自動変速機における無駄なエネルギーロスを回避することができるため、車両の低燃費を実現することができるとともに、そのような車両の商品性を高めることができる。
本発明の自動変速機の制御装置では、前回イグニッションスイッチをOFFしたときに、エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温を記憶するエンジン水温記憶手段をさらに備え、外気温判定手段は、エンジン水温検出手段により検出された現在のエンジン冷却水の水温、エンジン水温記憶手段に記憶された前回のエンジン冷却水の水温、および計時手段により計測された経過時間に基づいて、車両の室外の空気の温度を推定すればよい。例えば、熱伝導の原理に基づいた演算式により、油温の最終到達温度を推定し、これを車両の室外の空気の温度(外気温)と推定することができる。これにより、所定範囲内の経過時間において、このような空気の温度を利用することにより、実際の作動油の油温がその温度(最終到達温度)以上であることを保証することができる。
本発明の自動変速機の制御装置では、所定の温度は、ロックアップクラッチの締結を開始する温度(特に、上述のようにロックアップクラッチの締結開始温度が複数設定されている場合にはより低温側の設定温度)であればよい。
なお、上記で括弧内に記した図面参照符号は、後述する実施形態における対応する構成要素を参考のために例示するものである。また、上記で括弧内に記した温度および時間も後述する実施形態に対応して例示したものである。
本発明によれば、エンジン冷却水温に基づいて油温を推定する際、実際の油温の最低値を保証することができ、それにより、油温推定の精度が悪い場合においても低油温に起因する不具合を防止することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の自動変速機の制御装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置を備えた車両の動力伝達系統および制御系統を概略的に示すブロック図である。車両の動力伝達系統は、動力源であるエンジン1と、エンジン1の回転出力を変速ギア機構3に伝達するための流体継手であるトルクコンバータ2と、トルクコンバータ2の回転出力を入力して設定された速度比で変速して出力する変速ギア機構3と、変速ギア機構3の出力回転を左右の車輪(例えば後輪)5に分配するディファレンシャルギア機構4とを含む。トルクコンバータ2および変速ギア機構3に付属して油圧制御装置6が設けられており、この油圧制御装置6は、トルクコンバータ2および変速ギア機構3内に設けられている油圧制御型の複数の摩擦係合要素(クラッチなど)を所定の組み合わせで締結または解放することにより、トルクコンバータ2のロックアップや、該変速ギア機構3における入出力速度比を所要の変速段に設定することを行う。車両の自動変速機は、これらのトルクコンバータ2、変速ギア機構3、油圧制御装置6などによって構成される。
車両の動力伝達系統を制御するための制御系統は、車両の各部に設けられたセンサと、該各センサの出力が入力される電子制御ユニット(ECU)10と、該電子制御ユニット10によって制御される油圧制御装置6などで構成される。回転センサ11はトルクコンバータ2の入力軸の回転数(エンジン回転数)Neを検出し、回転センサ12は変速ギア機構3の入力軸の回転数Niを検出し、回転センサ13は変速ギア機構3の出力軸の回転数Noを検出し、車速センサ14は車速Nvを検出する。シフトレバーポジションセンサ15は、運転者によって操作されるシフトレバーのポジションを検出する。シフトレバーのポジションには、公知のように、例えば、P(パーキング)、R(後進走行)、N(ニュートラル)、D(自動変速モードでの前進走行)などがあり、さらに、3速、2速、1速等の特定の変速段を手動で指定するためのポジションが設けられてもよい。ブレーキセンサ16は、運転者によりブレーキペダルが所定量以上踏み込まれるとブレーキがかけられたことを検出する。スロットルセンサ17は、アクセルペダルの踏み込みに応じて開度が設定されるエンジン1のスロットルの開度(つまりアクセルペダル開度)を検出する。冷却水温センサ18は、エンジン冷却液の温度(冷却水温)を検出する。
図1に示した車両の動力伝達系統および制御系統の具体的構成は、公知の構成を適宜採用してよい。本発明に係る自動変速機の制御装置は、電子制御ユニット10に含まれるものであり、該電子制御ユニット10が実現可能な種々の制御機能のうちの一つとして実施される。以下述べる実施形態においては、本発明に係る自動変速機の制御装置は、電子制御ユニット10が具備するコンピュータプログラムによって実行されるものとする。しかしながら、本発明に係る自動変速機の制御装置は、このようなコンピュータプログラムに限らず、専用の電子回路ハードウェアで構成することができるのは勿論である。
図2は、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置を概略的に示すブロック図である。本発明の自動変速機の制御装置では、油圧制御装置6による油圧制御のためのエンジン1の始動時の作動油の温度(以下、「油温」という)を推定する処理が実行される。なお、図2では、その油温の推定に必要な各センサ等を示している。IG検出手段21は、車両のイグニッション(IG)スイッチのON/OFFを検出する。タイマ22(計時手段)は、電子制御ユニット10からの指令により、所定の時間(本発明では、イグニッションスイッチをOFFしてから次回イグニッションスイッチをONするまでの経過時間)を計時する。メモリ23(エンジン水温記憶手段としても機能する)は、電子制御ユニット10における演算処理の結果や各センサの検出結果を記憶する。なお、メモリ23は電子制御ユニット10内に設けられてもよい。
電子制御ユニット10は、IG検出手段21によりイグニッションスイッチがOFFされたことを検出すると、タイマ22に計時を開始させるとともに、そのときのエンジン冷却水の冷却水温を冷却水温センサ18(エンジン水温検出手段)から取得し、その値をメモリ23に保存する。また、電子制御ユニット10は、IG検出手段21によりイグニッションスイッチがONされたことを検出すると、タイマ22の計時を終了させ、計時された時間を経過時間としてメモリ23に保存する。電子制御ユニット10は、後述する外気温推定処理においては、メモリ23に保存されている経過時間および前回のエンジン冷却水温と、今回冷却水温センサ18から取得したエンジン冷却水温とを用いて、所定の演算処理を実行し、油温の最終到達温度(すなわち、概ね外気温)を推定する。そして、電子制御ユニット10は、推定油温に応じて油圧制御の温度条件を設定し、設定された温度条件の指令を油圧制御装置6に出力する。このように、電子制御ユニット10は、本発明における外気温判定手段および作動油温判定手段の機能を備えている。
図3は、エンジン停止後のエンジン冷却水および作動油の温度−時間特性を示すグラフである。図3に示すように、エンジン1の停止直後は、冷却水温と油温とは大きく乖離しているが、時間とともにその乖離が低減され、最終到達温度(概ね外気温に等しい)ではほとんど同じ温度になる。このように、エンジン冷却水温と油温の時間変化特性が異なるため、従来のようにエンジン冷却水温に基づいて油温を推定(シミュレーション)しても推定精度が悪い状況が起こり得る。
このため、本発明に係る自動変速機の制御装置では、前回イグニションスイッチをOFFしたときから次回イグニッションスイッチをONするまでの経過時間に基づいて、イグニッションスイッチON時(エンジン始動時)の油温を推定し、その推定油温に応じて油圧制御装置6の油圧制御の温度条件を変更するものである。
以下、本発明に係る自動変速機の制御装置の動作を説明する。まず、油温を推定するためのエンジン停止時の処理を説明する。図4は、本発明の一実施形態におけるエンジン停止時の処理を示すフローチャートである。この処理はイグニッションスイッチがONされた後、すなわち、エンジン始動後に実行される。
まず、ステップS101において、IG検出手段21の検出結果に基づいて、運転者によりイグニッションスイッチがOFFされたか否かを判断する。イグニッションスイッチがOFFされたと判断した場合には、冷却水温センサ18により冷却水温を検出し(ステップS102)、検出した冷却水温(検出結果)を取得した電子制御ユニット10は、その検出結果をメモリ23に保存する(ステップS103)。そして、電子制御ユニット10は、タイマ22の計時をスタートさせ(ステップS104)、この一連の処理を終了する。
なお、メモリ23に保存された冷却水温は、後述する油温の最終到達温度、すなわち、イグニッションスイッチON時の外気温の推定に用いられるが、別途外気温を検出するための温度センサが設けられている場合には、上記ステップS102、S103の処理は不要である。しかしながら、別途温度センサを設けた場合には、自動変速機の製造コストをアップさせ、また、軽自動車等の小型の車両においては設置場所の増大となってしまう。このため、本発明では、後述するように所定の条件下で外気温を推定する処理を行っている。
次に、エンジン始動時(イグニッションスイッチON時)の油温を推定する処理を説明する。図5は、本発明の一実施形態における初期油温推定処理を示すフローチャートである。この初期油温推定処理は、エンジン1の停止時、すなわち、イグニッションスイッチがOFFの状態において実行される。
まず、ステップS201において、IG検出手段21の検出結果に基づいて、運転者によりイグニッションスイッチがONされたか否かを判断する。イグニッションスイッチがONされたと判断した場合には、続いて、各センサが正常に動作しているか否かを判断する(ステップS202)。ここで、センサとしては、図1および図2に示す冷却水温センサ18、回転センサ11〜13、タイマ22等が含まれ、図示しないエンジン吸気温センサ等が含まれてもよい。いずれかのセンサにおいて異常または故障が発生していると判断した場合には、本処理はステップS209に移行し、油温を低温であると推定して(ステップS209)、本処理を終了する。なお、この場合、特に冷却水温センサ18が故障等しているときには油温が高いか否かについて判断することができないので、油温を低温と推定することにより、後述するロックアップクラッチの締結を開始する温度を高温側に設定させる。これにより、低油温に起因する不具合を防止することができる。
一方、ステップS202において各センサが正常であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、タイマ22から前回イグニッションスイッチOFFから今回イグニッションスイッチONまでの経過時間を取得する(ステップS203)。続いて、このように取得された経過時間が予め設定されている長時間(第2の所定時間)以上であるか否かを判断する(ステップS204)。なお、本実施形態では、実際の外気温(すなわち、季節等)により適宜変更することも考えられるが、長時間(第2の所定時間)としては、例えば、360分とすればよい。
ステップS204において経過時間が長時間以上であると判断した場合には、続いて、冷却水温センサ18から取得した現在の冷却水温が所定の温度以上であるか否かを判断する(ステップS208)。ステップS208において冷却水温が所定の温度以上であると判断した場合には、油温を高温であると推定して(ステップS209)、本処理を終了する。また、冷却水温が所定の温度以上ではないと判断した場合には、油温を低温であると推定して(ステップS210)、本処理を終了する。なお、所定の温度としては、例えば、後述するようなロックアップクラッチの締結を開始する低温側の温度として設定される20℃が例として挙げられる。
一方、ステップS204において経過時間が長時間以上ではないと判断した場合には、続いて、その経過時間が短時間(第1の所定時間)以上であるか否かを判断する(ステップS205)。ここで、経過時間が短時間以上ではないと判断した場合には、油温が低温であると仮定して(ステップS210)、本処理を終了する。なお、本実施形態では油温を判定せずに、実際の外気温(すなわち、季節等)により適宜変更することも考えられるが、短時間(第1の所定時間)としては、例えば、10分とすればよい。
ここで、前回イグニッションスイッチをOFF、すなわち、エンジン1を停止してから設定した短時間未満しか時間が経過していない場合には(ステップS205において「No」)、エンジン1の発熱等の影響により後述する外気温推定処理の推定精度が悪くなると考えられる。そのため、本処理においてはこのような条件のとき油温が高温であるとの保証をしていない。すなわち、実際の油温が所定の温度以上であるか否か不明のままである。これは、図3のグラフに示すように、特に短時間の場合には冷却水温と油温とが乖離しているためであり、低油温に起因する不具合を確実に防止するためである。
ステップS205において経過時間が短時間以上であると判断した場合には、外気温推定処理を実施する(ステップS206)。本実施形態では、外気温は、油温の最終到達温度を推定し、その温度と同じものとして推定される。油温の最終到達温度は、以下の式により求められる(推定される)。
Figure 0005102669
ここで、Tgは油温の最終到達温度(℃)、Twは現在の冷却水温(℃)、Twoは前回イグニッションスイッチをOFFしたときの冷却水温(℃)、αはエンジン1の形状等により決定される特性値、tは前回イグニションスイッチをOFFしたときから今回イグニッションスイッチをONするまでの経過時間(分)である。
なお、冷却水温Twは冷却水温センサ18により検出され、前回の冷却水温Twoはメモリ23に保存されたデータから得られ、経過時間tはステップS203において取得される。また、特性値αはメモリ23等に予め記憶されればよい。本実施形態では、このように外気温を推定することにより、実際の油温が推定した外気温(最終到達温度)以上であることを保証するものである。
続いて、ステップS207において推定された外気温が所定の温度以上であるか否かを判断する。ここで、所定の温度は上記と同様の20℃である。外気温が所定の温度以上ではないと判断した場合には、油温を低温であると推定して(ステップS210)、本処理を終了する。
一方、ステップS207において外気温が所定の温度以上であると判断した場合には、ステップS208に移行し、上記経過時間が長時間以上と判断した場合と同様に、現在の冷却水温が所定の温度以上であるか否かを判断する。本実施形態では、このように、推定された外気温が所定の温度以上であると判断した場合であっても、二重チェックのためにさらに冷却水温が所定の温度以上であるか否かを判断している。これにより、油温の推定精度を高めることができ、後述するロックアップクラッチを締結する温度条件を安全側に設定することができる。なお、ステップS207において外気温が所定の温度以上であると判断した場合には、ステップS208の処理を省略してもよい。
次に、ロックアップクラッチを締結する温度条件を設定する処理について説明する。図6は、本発明の一実施形態におけるロックアップクラッチ温度条件設定処理を示すフローチャートである。本処理は、イグニッションスイッチがONされたときに電子制御ユニット10において実行される。なお、設定された情報(指令)は、電子制御ユニット10から油圧制御装置6に出力され、その温度条件に基づいてロックアップクラッチの締結が実行される。
ステップS301において、上述の初期油温推定処理(図5)のステップS209またはS210において推定された油温が高温であるか否かを判断する。推定油温が高温であると判断した場合には、ロックアップクラッチ締結の温度条件を低温側に設定して(ステップS302)、本処理を終了する。一方、推定油温が高温ではないと判断した場合には、ロックアップクラッチ締結の温度条件を高温側に設定して(ステップS303)、本処理を終了する。油温が高温であると推定された場合には、実際の油温は少なくとも低温側の設定温度以上であることが保証される。そのため、低油温に起因する不具合を確実に防止することができるとともに、より速くロックアップクラッチを締結することで低燃費を実現することができる。ここで、低温側の設定温度は、例えば20℃であり、高温側の設定温度は、例えば40℃である。
なお、この設定がなされた以降は、電子制御ユニット10、油圧制御装置6等により通常の自動変速機の制御がなされるが、公知の制御方法で制御されればよいため、その詳細な説明を省略する。
以上、本発明の自動変速機の制御装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は、これらの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書および図面に記載のない形状・構造・機能を有するものであっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。すなわち、自動変速装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
本発明の一実施形態における自動変速装置を備えた車両の動力伝達系統および制御系統を概略的に示すブロック図である。 本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置を概略的に示すブロック図である。 エンジン停止後のエンジン冷却水および作動油の温度−時間特性を示すグラフである。 本発明の一実施形態におけるエンジン停止時の処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態における初期油温推定処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態におけるロックアップクラッチ温度条件設定処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 変速ギア機構
4 ディファレンシャルギア機構
5 車輪(例えば後輪)
6 油圧制御装置
10 電子制御ユニット(ECU)
18 冷却水温センサ
21 IG検出手段
22 タイマ
23 メモリ

Claims (3)

  1. 複数の摩擦係合要素に作動油を供給または排出することにより変速を行う自動変速機の制御装置であって、
    エンジン冷却水の水温を検出するエンジン水温検出手段と、
    車両の室外の空気の温度を判定する外気温判定手段と、
    前回イグニションスイッチをOFFしたときから次回該イグニッションスイッチをONするまでの経過時間を計測する計時手段と、
    前記計時手段により計測された経過時間、前記次回イグニッションスイッチをONしたときの前記エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温および前記外気温判定手段により判定された空気の温度のうち少なくとも前記経過時間に基づいて、前記作動油の油温が所定の温度よりも高いか否かを判定する作動油温判定手段と
    を備え
    前記作動油温判定手段は、
    前記計時手段により計測された経過時間が第1の所定時間より長く、第2の所定時間(第1の所定時間<第2の所定時間)より短い場合であって、前記外気温判定手段により判定された空気の温度が前記所定の温度より高く、かつ、前記エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温が該所定の温度より高いとき、あるいは、
    前記計時手段により計測された経過時間が第2の所定時間より長い場合であって、前記エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温が前記所定の温度より高いとき、
    前記作動油の油温が前記所定の温度よりも高いと判定する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 前回イグニッションスイッチをOFFしたときに、前記エンジン水温検出手段により検出されたエンジン冷却水の水温を記憶するエンジン水温記憶手段をさらに備え、
    前記外気温判定手段は、前記エンジン水温検出手段により検出された現在のエンジン冷却水の水温、前記エンジン水温記憶手段に記憶された前回のエンジン冷却水の水温、および前記計時手段により計測された経過時間に基づいて、前記車両の室外の空気の温度を推定することを特徴とする請求項に記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記所定の温度は、ロックアップクラッチの締結を開始する温度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の制御装置。
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