JP5102015B2 - 液状紙用嵩高剤 - Google Patents

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本発明は、抄紙用の液状嵩高剤に関する。
近年、白色度、不透明度、印刷適性、そしてボリューム感等の面に優れた品質の高い紙が求められている一方で、環境への配慮からパルプ使用量の少ない軽量な紙が望まれている。これらを紙の嵩高さによって解決すべく、これまでに種々の嵩向上の方法が試みられており、その一つとして嵩高剤等の紙質向上剤の利用が挙げられる。
特許文献1には、紙用嵩高剤として特定のアルコールにアルキレンオキサイドが付加した化合物、及び該化合物を多価アルコール型非イオン界面活性剤により乳化した嵩高剤としてパルプスラリーに均一に混合することを容易にする技術が開示されている。
国際公開第98/3730号パンフレット
嵩高剤は、取り扱い性や設計の自由度拡張などの点から、液状であることが望ましい場合がある。特に、有効分濃度が高い製品が望まれる。しかしながら、特許文献1のアルコールのアルキレンオキサイド付加物を用いて有効分濃度が高い液状の製品を得ようとすると、0℃以下の保存により乳化状態の嵩高剤が分離する場合があった。このため、高濃度の液状製品を得ることは困難であった。
本発明の課題は、嵩高効果に優れ、有効分濃度が高くても保存安定性に優れた液状の紙用嵩高剤を提供することである。
本発明は、 下記一般式(1)で示される化合物(以下、化合物Aという)と、スルホコハク酸と炭素数1〜6の直鎖アルコールとのエステル化合物(以下、化合物Bという)と、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸(以下、化合物Cという)とを含有する液状紙用嵩高剤であって、化合物Aの含有量が該嵩高剤中70重量%以上である液状紙用嵩高剤に関する。
RO[(EO)m/(PO) n]H (1)
〔式中、R は炭素数6〜22の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又は炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルアリール基を示し、Eはエチレン基、Pはプロピレン基を示し、m, n は平均付加モル数であり、0≦m≦20の範囲の数であり、nは0≦n≦50の範囲の数である。ただし、m, n は同時に0にはならない。なお、(EO)mと(PO)nは、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、EOとPOのいずれがRO基に結合してもよい。〕
本発明でいう液状とは、大気圧(1気圧)で−5〜40℃の温度範囲、好ましくは0〜40℃の温度範囲において液体状のものをいう。すなわち、これらの温度範囲の全域において液体状態を維持できるものである。
本発明の液状紙用嵩高剤は、化合物Aを70重量%以上含有するものであり、有効分濃度が高くても保存安定性、特に低温安定性に優れる。また、本発明の液状紙用嵩高剤を添加して抄紙することで、紙力を損なうことなく、嵩高いシートを得ることができる。
本発明の紙用嵩高剤は、上記一般式(1)で表される化合物Aを含有する。化合物Aは得られる紙の嵩を向上させる効果に寄与する。上記一般式(1)で表される化合物Aは、炭素数6〜22の高級アルコールや炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルフェノール等に、エチレンオキサイド(以下、EOと表記する)及び/又はプロピレンオキサイド(以下、POと表記する)を付加したものであるが、本発明では、EOの平均付加モル数mが0≦m≦20の範囲にあるものが使用される。Rは炭素数8〜18のアルキル基が好ましく、10〜14がより好ましい。平均付加モル数mは好ましくは0≦m≦10、更に好ましくは0≦m≦5の範囲である。mが20以下であれば紙に対する嵩高付与効果が良好となる。又、POの平均付加モル数nは0≦n≦50の範囲にあるものが使用され、好ましくは0≦n≦20の範囲である。nが50以下であれば性能面と経済面のバランスがよくなる。平均付加モル数mとnの組み合わせとしては、0≦m≦5と0≦n≦50がより好ましい。m=0の場合は0<n≦50が好ましく、0<n≦20がより好ましい。
また、一般式(1)中のRは炭素数6〜22の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又は炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルアリール基であるが、Rとしては、炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。Rがアルキル基もしくはアルケニル基の場合、炭素数が6〜22の範囲であると、またアルキルアリール基の場合は炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルアリール基であると、紙に対する嵩高付与効果が良好となる。
また、一般式(1)中のE及びPはそれぞれ、エチレン基及びプロピレン基を表す。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態はランダムでもブロックでもよい。その場合、好ましくはオキシプロピレン基を全平均付加モル数中の50モル%以上、より好ましくは70モル%以上含むものが良い。なお、RO基に結合するのは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基のいずれであってもよい。
本発明の紙用嵩高剤は、化合物Aを紙用嵩高剤中に70重量%以上、好ましくは70〜95重量%、特に好ましくは75〜90重量%含有する。
化合物Aは、アルコールに、アルキレンオキサイドを付加することにより製造することができる。付加反応は一般に行われている活性水素を有する化合物へのアルキレンオキサイドを付加する条件に準じて実施すればよく、例えば、温度は60〜180℃、圧力(ゲージ圧)は0〜8kg/cm2である。また、反応に要する時間は、通常2〜12時間である。触媒も用いることができ、例えば触媒としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。
本発明の紙用嵩高剤は、スルホコハク酸と炭素数1〜6の直鎖アルコールとのエステル化合物(化合物B)を含有する。化合物Bは、その一部又は全てが塩の形態で存在しても良い。塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。化合物Bを構成する炭素数1〜6の直鎖アルコールとしては、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の直鎖の1価アルコールが挙げられ、炭素数4〜6の直鎖の1価アルコールが好ましい。すなわち、化合物Bは、炭素数1〜6、更に炭素数4〜6のアルキル基を有するものが好ましい。エステルはモノエステル、ジエステルのいずれでもよいが、ジエステルが好ましい。化合物Bとしては、ジブチルスルホコハク酸等が挙げられる。
本発明の紙用嵩高剤は、化合物Bを紙用嵩高剤中に1〜30重量%、更に3〜20重量%、より更に4〜15重量%含有することが、保存安定性の向上効果の点で好ましい。なお、嵩高剤に別途配合した化合物由来のカチオンとの塩を形成する場合がある。本発明では、特記しない限り、化合物Bの量は酸換算の量に基づくものとする。
化合物Aと化合物Bの重量比は、保存安定性向上の観点から、化合物A/化合物Bで85/15〜97/3が好ましく、88/12〜96/4がより好ましい。
本発明の紙用嵩高剤は、低温での保存安定性向上の観点から、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸(化合物C)を含有する。化合物Cは、その一部又は全てが塩の形態で存在しても良い。塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。化合物Bに加え化合物Cを化合物Aと併用することにより、化合物Aの効果を損なうことなく保存安定性がより向上する。特に、紙用嵩高剤中に水を含有する場合に化合物Cによる保存安定性の向上効果はより顕著である。化合物Cとしては、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸及びそれらの塩が挙げられる。脂肪酸及び/又はその塩のクラフト点は、保存安定性の観点から30℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましい。本発明の紙用嵩高剤では、脂肪酸を配合して、別途配合した化合物由来のカチオンと塩を形成させてもよい。また、化合物Cは、紙用嵩高剤中で少なくとも一部が脂肪酸塩となっていることが好ましい。脂肪酸として配合する場合も、紙用嵩高剤中に脂肪酸塩として存在する化合物Cを含有することが好ましい。
本発明の紙用嵩高剤は、化合物Cを紙用嵩高剤中に0.5〜30重量%、更に1〜20重量%、より更に1〜15重量%含有することが、保存安定性の向上効果の点で好ましい。なお、嵩高剤に別途配合した化合物由来のカチオンとの塩を形成する場合もある。本発明では、特記しない限り、化合物Cの量は酸換算の量に基づくものとする。
化合物Aと化合物Cの重量比は、保存安定性向上の観点から、化合物A/化合物Cでは85/15〜99/1が好ましく、90/10〜99/1がより好ましく、95/5〜99/1が更に好ましい。
本発明の紙用嵩高剤は、パルプへの定着性の観点から、更にアルキルエーテル硫酸エステル塩(以下、化合物Dという)を含有することができる。
化合物Dとしては、一般式(2)で表される化合物が挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。
R1O[(EO)s/(PO)t]SO3M (2)
〔式中、R1は炭素数6〜22の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又は炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルアリール基を示し、Eはエチレン基、Pはプロピレン基を示し、s, tは平均付加モル数であり、0≦s≦20の範囲の数であり、tは0≦t≦50の範囲の数である。なお、(EO)sと(PO)tは、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、EOとPOのいずれがR1O基と結合してもよい。〕
化合物Dを併用する場合、その好ましい比率は、化合物A/化合物D=70/30〜99/1、更に80/20〜98/2(重量比)である。化合物Dを併用する場合、工業的には経済的な面から、化合物A、化合物B及び化合物Cの混合物を攪拌しながら水中に加え、化合物Dの濃度が10〜100重量%程度の水溶液もしくは化合物そのものを、添加すればよい。
本発明の紙用嵩高剤は、化合物Dを紙用嵩高剤中に0.5〜20重量%、更に1〜10重量%含有することが、高温での安定性の向上効果の点で好ましい。
本発明の好ましい紙用嵩高剤の形態は、上記化合物A、化合物B及び化合物C、更には化合物Dを含有する液状組成物であり、通常は、残部の水を含有する。水としては化合物A〜C等を有効分とする原料に含まれる水を用いることもできる。本発明の紙用嵩高剤が引火性を有さないようにする点から、水は紙用嵩高剤中に5重量%以上を含有することが好ましく、5〜25重量%含有することがより好ましく、10〜20重量%含有することが更に好ましく、10〜15重量%含有することが更に好ましい。
本発明の嵩高剤を適用できるパルプ原料としては、機械パルプ、化学パルプなどのヴァージンパルプから、各種古紙パルプに至るものまで広くパルプ一般に適用できるものである。また、本発明の嵩高剤の添加場所としては抄紙工程であれば特に限定するものではないが、例えば工場ではレファイナー、マシンチェスト、ヘッドボックスで添加するなど均一にパルプ原料にブレンドできる場所が望ましい。なお、本発明の嵩高剤はパルプ原料に添加後、そのまま抄紙され紙上に残存する。本発明の紙用嵩高剤の添加量は、パルプに対して好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明の紙用嵩高剤を用いて得られたパルプシートは、無添加品に比べて緊度(測定方法は、後述の実施例記載の方法による)が5%以上、好ましくは7%以上低く、且つJIS P 8116により測定された引き裂き強度が無添加品の90%以上、好ましくは95%以上であることがより好ましい。
表1に示す液状の紙用嵩高剤を調製し、以下の方法で製品安定性を評価した。結果を表1に示す。表1の数値は有効分の重量%である。また、表1中、nはプロピレンオキサイド平均付加モル数、sはエチレンオキサイド平均付加モル数である。
<製品安定性>
50mlのガラス製のサンプル瓶に紙用嵩高剤を入れ、表1の各温度で14日保存後、目視で白濁又は分離の有無の状態を観察した。分離や白濁のない場合をA、ある場合をBとした。結果を表1に示した。「−」は未評価である。
Figure 0005102015
表中の化合物は以下のものを用いた。
・ジブチルスルホコハク酸ナトリウム:エアロゾルIB(商品名)、三井ファイン(株)製
・ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム:シグマアルドリッチ社製
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム:ペレックスOT−P(商品名)、花王(株)製
・ポリオキシエチレン(s=3)ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム:エマール20CM(商品名)、花王(株)製
なお、実施例、比較例の紙用嵩高剤は、各紙用嵩高剤を添加せずに作製したパルプシートよりも緊度の低い嵩高なパルプシートを製造できる。しかし、比較例の紙用嵩高剤は製品安定性に劣るため、液状型であっても製品安定性に優れる実施例の紙用嵩高剤の方が当業界においてより有用である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で示される化合物(以下、化合物Aという)と、スルホコハク酸と炭素数1〜6の直鎖アルコールとのエステル化合物(以下、化合物Bという)と、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸(以下、化合物Cという)とを含有する液状紙用嵩高剤であって、化合物Aの含有量が該嵩高剤中70〜95重量%であり、化合物Bの含有量が該嵩高剤中1〜15重量%であり、化合物Cの含有量が該嵩高剤中0.5〜15重量%である液状紙用嵩高剤。
    RO[(EO)m/(PO)n]H (1)
    〔式中、R は炭素数6〜22の直鎖または分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又は炭素数4〜20のアルキル基を有するアルキルアリール基を示し、Eはエチレン基、Pはプロピレン基を示し、m, n は平均付加モル数であり、0≦m≦20の範囲の数であり、nは0≦n≦50の範囲の数である。ただし、m, n は同時に0にはならない。なお、(EO)mと(PO)nは、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、EOとPOのいずれがRO基に結合してもよい。〕
  2. 化合物Aと化合物Bの重量比が、化合物A/化合物Bで85/15〜97/3である請求項1記載の液状紙用嵩高剤。
  3. 化合物Aと化合物Cの重量比が、化合物A/化合物Cで85/15〜99/1である請求項1又は2記載の液状紙用嵩高剤。
  4. 化合物Bがジブチルスルホコハク酸であり、化合物Cがオレイン酸である請求項1〜3いずれか記載の液状紙用嵩高剤。
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