図1に実施の形態に係る光ディスク10の断面構造を示す。
図示の如く、光ディスク10は、基板11と表面層12の間に、サーボ層13、6つのスペース層14および5つの記録層15からなる組を4段配することにより構成されている。
基板11および表面層12は、ポリカーボネート、ポリオレフィンまたはアクリル等の透光性材料からなっている。この他、基板11および表面層12の材料として、生分解性材料を用いることもできる。
サーボ層13は、サーボ用レーザ光(以下、「サーボ光」という)に対する反射率が高く、記録用レーザ光(以下、「記録光」という)と再生用レーザ光(以下、「再生光」という)に対する反射率が低い材料にて形成されている。本実施の形態では、サーボ光として波長635nm程度の赤色レーザ光が用いられ、記録光および再生光としてそれぞれ波長800nmの赤外レーザ光と波長450nm程度の青色レーザ光が用いられるため、サーボ層13の材料として、たとえば、5酸化ニオブが用いられる。
図2は、5酸化ニオブで生成した膜の光学特性を示す図である。図示の如く、この膜は、波長635nm付近の光に対する反射率が高く、波長500nmおよび800nm付近の光に対する反射率が非常に低い。したがって、上記の如くサーボ光の波長を635nmとし、記録光および再生光の波長をそれぞれ450nmおよび800nmとする場合には、サーボ光に対する反射が高く、記録光および再生光に対する反射が低い膜となる。
なお、ここでは、サーボ層13の材料として5酸化ニオブを用いたが、これは、上記の如く、サーボ光、記録光および再生光の波長が、それぞれ635nm、800nmおよび450nmに設定されているためである。サーボ光、記録光および再生光の波長がこれら以外の値に設定される場合には、それに応じて、サーボ光に対する反射率が高く、記録光と再生光に対する反射率が低い材料が、サーボ層13の材料として選択される。
図1に戻り、スペース層14は、紫外線硬化樹脂または両面に粘着剤が塗布された透明なフィルム材によって構成される。
記録層15は、2光子吸収過程により屈折率が変化する材料からなっている。2光子吸収過程とは、物質が2つの光子を吸収して励起される現象のことである。2光子吸収の起こる確率は、入射光強度の2乗に比例する(非線形光学効果)。つまり、入射光のエネルギーが集中している領域においてのみ2光子吸収が誘起される。入射光をレンズで集光すれば、焦点付近でのみ2光子吸収が起こり、焦点が合っていないその他の空間では2光子吸収は起こらないという状態を作り出すことができる。具体的には、その材料の吸収波長帯のレーザ光を超短パルス且つ高強度にて集光照射することにより、2光子吸収材料に2光子吸収を誘起することができる。この他、その材料の吸収波長帯以外の波長の光を照射しつつ吸収波長帯のレーザ光を集光照射して、2光子吸収材料に2光子吸収を誘起させる方法もある。この場合、吸収波長帯以外の波長の光によって2光子吸収材料のエネルギー準位が上昇する。このため、吸収波長帯のレーザ光の強度レベルをある程度抑えても2光子吸収が生じる。
本実施の形態では、記録時に記録光と再生光が記録層15に同時に照射される。再生光の照射により記録層15のエネルギー準位を持ち上げつつ、記録光にて記録層15に2光子吸収を誘起させる。よって、記録層15の材料には、この光学作用に適応する2光子吸収材料が用いられる。
記録層15の材料として、たとえば、ジアリールエテン系またはスピロピラン系の材料を用いることができる。本実施の形態では、記録光と再生光の波長が800nmと450nmであるため、ジアリールエテン系の材料として、たとえば、cis-1,2-dicyano-1,2-bis(2,4,5-trimethy-3-thienyl)を用いることができ、また、スピロピラン系の材料として、たとえば、1,3,3-trimethylindolino-6-nitrobenzopyrylospiranを用いることができる。記録光と再生光の波長として800nmと450nm以外の波長が選択される場合には、それに応じて、記録層の材料が変更される。この他、記録層15の材料として、フォトポリマー、フォトリクラクティブ結晶、蛍光色素、ZnS、ZnOを含む蛍光材料などを用いることもできる。
サーボ層13には、螺旋状にグルーブが形成され、これにより、グルーブ間の領域に螺旋状のランドが形成されている。なお、グルーブおよびランドの構造は、追って図5(a)を参照して説明する。記録層15は、所定の厚みを有する均一かつ平坦な膜からなっている。スペース層14は、サーボ層13と記録層15の間、表面層12と記録層15の間、および、積層方向に隣り合う2つの記録層の間に介在している。
図3は、光ディスク10のエリアフォーマットを示す図である。図示の如く、光ディスク10のエリアは、内周から外周に向かってクランプエリア21、層検出ゾーン22、システムゾーン23、データゾーン24、リードアウトゾーン25に区分される。なお、上述のグルーブ構造は、層検出ゾーン22からリードアウトゾーン25まで形成されている。
クランプエリア21は、光ディスク10を光ディスク装置内のターンテーブルにチャッキングするためのエリアである。層検出ゾーン22は、それぞれのサーボ層13が表面層12から何番目のものであるかを検出するためのゾーンである。層検出ゾーンのサーボ層13には、サーボ層識別用の層構造が形成されている。たとえば、サーボ層13をディスク周方向に間欠的に消失させることにより各サーボ層の識別IDが記録されている。
システムゾーン23には、記録再生動作を制御するための情報が保持される。データゾーン24には、ユーザ情報が記録される。本実施の形態では、ランドに対応する走査軌跡のみならずグルーブに対応する走査軌跡にも追従して、データゾーン24の記録層15にユーザ情報が記録される。リードアウトゾーン25には、そこがディスク外周部であることを示す情報が記録される。
図4に、光ピックアップ装置の構成(光学系)を示す。なお、同図(a)は、1/4波長板106、117、サーボ用対物レンズ107および記録再生用対物レンズ118を除く光学系の平面図、同図(b)は、立ち上げミラー105、1/4波長板106、117、サーボ用対物レンズ107および記録再生用対物レンズ118の部分における光学系の側面図である。
図において、101から109は、サーボ光を光ディスク10に照射するための光学系であり、111から121は、記録光および再生光を光ディスク10に照射するための光学系である。
半導体レーザ101は、波長635nmのサーボ光を出射する。コリメートレンズ102は、半導体レーザ101から出射されたサーボ光を平行光に変換する。偏光ビームスプリッタ103は、コリメートレンズ102側から入射するサーボ光を略全透過し、エキスパンダ104側から入射するサーボ光を略全反射する。エキスパンダ104は、凹レンズと凸レンズの組み合わせからなり、このうち一方のレンズがアクチュエータ133によって光軸方向に駆動される。ここで、アクチュエータ133は、モータおよびウォームギア等を備え、サーボ層13上におけるサーボ光の収差を補正するためのサーボ信号に応じて駆動される。
立ち上げミラー105は、エキスパンダ104側から入射されるサーボ光をサーボ用対物レンズ107方向に反射する。また、立ち上げミラー105は、エキスパンダ116側から入射される記録光および再生光を記録再生用対物レンズ118方向に反射する。
1/4波長板106は、立ち上げミラー105側から入射されるサーボ光を円偏光に変換すると共に、サーボ用対物レンズ107側から入射されるサーボ光(光ディスク10からの反射光)を、サーボ用対物レンズ107へ向かう際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。サーボ用対物レンズ107は、サーボ光をサーボ層13上に収束させる。
アナモレンズ108は、偏光ビームスプリッタ103にて反射されたサーボ光(光ディスク10からの反射光)に非点収差を導入する。光検出器109は、アナモレンズ108によって収束されたサーボ光を受光して検出信号を出力する。なお、光検出器109には、サーボ光を受光する4分割センサが配されており、光検出器109はサーボ光の光軸が4分割センサのセンサ分割線の交点位置を貫くよう配置されている。
フェムト秒レーザ111は、波長800nmの記録光を出射する。なお、この記録光は、フェムト秒レーザ111から平行光の状態で出射される。半導体レーザ112は、波長450nmの再生光を出射する。コリメートレンズ113は、半導体レーザ112から出射された再生光を平行光に変換する。ダイクロプリズム114は、フェムト秒レーザ111から出射された記録光と半導体レーザ112から出射された再生光を結合する。
偏光ビームスプリッタ115は、ダイクロプリズム114側から入射する記録光と再生光を略全透過し、エキスパンダ116側から入射する記録光と再生光のうち再生光のみを略全反射する。すなわち、偏光ビームスプリッタ115には、再生光のみに作用する波長選択性の偏光膜が形成されている。
エキスパンダ116は、凹レンズと凸レンズの組み合わせからなり、このうち一方のレンズがアクチュエータ134によって光軸方向に駆動される。ここで、アクチュエータ134は、モータおよびウォームギア等を備え、記録光および再生光を記録または再生対象の記録層15(以下、この記録層を特に「ターゲット記録層15」という)に引き込むためのサーボ信号に応じて駆動される。
エキスパンダ116を通過した記録光および再生光は立ち上げミラー105によって記録再生用対物レンズ118に向かって反射される。1/4波長板117は、立ち上げミラー105側から入射される記録光および再生光を円偏光に変換すると共に、記録再生用対物レンズ118側から入射される記録光および再生光(光ディスク10からの反射光)を、記録再生用対物レンズ118へ向かう際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。
記録再生用対物レンズ118は、記録光と再生光をターゲット記録層15上に収束させる。記録再生用対物レンズ118の表面には、記録光と再生光を光ディスク10中の同一位置に収束させるための波長選択性のホログラムが形成されている。つまり、このホログラムによって、波長の異なる記録光と再生光の焦点距離が調整される。
集光レンズ119は、偏光ビームスプリッタ115にて反射された再生光(光ディスク10からの反射光)を収束させる。ピンホール板120は、微小なピンホールを有し、このピンホールがターゲット記録層15によって反射された再生光の焦点位置に位置するよう配置されている。したがって、ターゲット記録層15によって反射された再生光は大半がピンホールを通過し、その他の記録層15によって反射された再生光(迷光)は、その大半がピンホールを通過せず、ピンホール板120によって遮光される。
APD(Avalanche Photo Diode)121は、ピンホール板120を通過した再生光を受光して再生信号を出力する。なお、APD121は、微小な光量変化を検出可能な光検出器である。
1/4波長板106、117と、サーボ用対物レンズ107および記録再生用対物レンズ118は、共通のホルダ131に装着されている。ここで、ホルダ131は、対物レンズアクチュエータ132によって、フォーカス方向、トラッキング方向およびチルト方向に駆動される。対物レンズアクチュエータ132は、従来周知のコイルと磁気回路から構成され、このうちコイルがホルダ131に装着されている。この対物レンズアクチュエータ132にサーボ信号が供給されることにより、1/4波長板106、117とサーボ用対物レンズ107および記録再生用対物レンズ118が、ホルダ131と一体的に、フォーカス方向、トラッキング方向およびチルト方向に変位される。
図5(a)は、サーボ層13のグルーブ構造を示す図である。
図において、30はランド、31はグルーブ、32および33はランド30およびグルーブ31に一定間隔毎に形成されたFCM(ファインクロックマーク)である。FCM32の深さはグルーブ31の深さと同じで、FCM33の高さはランド30の高さと同じである。
34および35は、ランド30およびグルーブ31の物理アドレスを保持するアドレス構造である。アドレス構造34、35は、ランド30とグルーブ31の境界にある壁面をディスク径方向にウォブルさせることにより形成されている。ここで、グルーブ31上において連続する2つのアドレス構造34、35は、同じ物理アドレスを保持している。このため、ランド上において連続するアドレス構造34、35には、互いに異なる物理アドレスが保持される。
この場合、ランド30の物理アドレスは、そのランド30上のアドレス構造35によって規定され、そのランド30上のアドレス構造34は、アドレス構造35が読み取れなかった場合に、このアドレス構造35に保持された物理アドレスを取得するために用いられる。すなわち、この場合、アドレス構造34を読み取って取得された物理アドレスに、このランド30上のアドレス構造34、35のアドレス差を加減算することにより、当該ランドの物理アドレスが取得される。
36は、ビームスポット走査位置におけるサーボ層13のチルト状態を検出するためのチルトマークである。チルトマーク36は、ディスク径方向におけるグルーブ幅を一定寸法だけ広狭させることにより形成されている。
図5(b)は、光検出器109に配された4分割センサを示す図、図5(c)は、4分割センサの出力からフォーカスエラー信号(FOE)、ラジアルプッシュプル信号(RPP)およびファインクロックマーク信号(FCM)を生成するための回路構成(演算回路)を示す図である。
図示の如く、演算回路は、6つの加算回路と3つの減算回路を備えている。なお、同図(a)に示すビームスポットの4分割領域A、B、C、Dの反射光は、それぞれ同図(b)に示す4分割センサのセンサ領域A、B、C、Dに導かれる。ここで、センサ領域A、B、C、Dから出力される検出信号を、それぞれa、b、c、dとすると、フォーカスエラー信号(FOE)は、FOE=(b+c)−(a+d)の信号演算により生成される。また、ラジアルプッシュプル信号(RPP)は、RPP=(a+b)−(c+d)の信号演算により生成され、ファインクロックマーク信号(FCM)は、FCM=(b+d)−(a+c)の信号演算により生成される。
ビームスポットがグルーブ31のセンターからラジアル方向に変位すると、ラジアルプッシュプル信号(RPP)は、その変位方向と変位量に応じた極性および大きさを持つようになる。この極性および大きさを抽出することにより、トラッキングエラー信号(TRE)が生成される。
また、サーボ層13にチルトが生じている状態にてビームスポットがチルトマーク36を通過すると、ラジアルプッシュプル信号(RPP)上に、サーボ層13のチルト状態に応じたS字カーブが現れる。このS字カーブの振幅ピーク値を比較演算することによりチルトエラー信号(TIE)が生成される。
さらに、ビームスポットがアドレス構造34、35を通過すると、これらアドレス構造34、35のウォブル形状に応じて、ラジアルプッシュプル信号(RPP)が変調される。この変調成分を周波数フィルタにて抽出し、さらに抽出した変調成分を復調することにより、ビームスポット走査位置の物理アドレスが取得される。
図6に、光ディスク10に対し記録再生を行う光ディスク装置の構成を示す。
図示の如く、光ディスク装置は、エンコーダ201と、変調回路202と、レーザ駆動回路203と、光ピックアップ204と、信号増幅回路205と、復調回路206と、デコーダ207と、アドレス再生回路208と、サーボ回路209と、クロック生成回路210と、コントローラ211から構成されている。
エンコーダ201は、入力された記録データに対し誤り訂正符号の付加等のエンコード処理を施し、変調回路202へ出力する。変調回路202は、入力された記録データに所定の変調を施し、さらに記録信号を生成してレーザ駆動回路203に出力する。
レーザ駆動回路203は、記録時に、変調回路202からの記録信号に応じた駆動信号を光ピックアップ装置204内のフェムト秒レーザ111に供給すると共に、一定パワーにてサーボ光および再生光を発光させるべく、光ピックアップ装置204内の半導体レーザ101、112にそれぞれ駆動信号を供給する。また、レーザ駆動回路203は、再生時に、一定パワーにてサーボ光および再生光を発光させるべく、光ピックアップ装置204内の半導体レーザ101、112に駆動信号を供給する。
ここで、記録時および再生時のレーザパワーは、コントローラ211からの制御信号によってコントロールされる。コントローラ211は、記録時に、記録光のパワーを変えつつ試し書きエリアに試し書きを行い、その際に信号増幅回路205から入力されるAPD信号(APD121による検出信号)をモニタして、この信号のレベルが所定の閾値以上となる記録光パワーを記録時のパワーに設定する。また、コントローラ211は、再生時に、再生光のパワーを変えつつ信号増幅回路205から入力されるAPD信号をモニタし、この信号のレベルが所定の閾値以上となるよう再生光のパワーを調整する。
光ピックアップ装置204は、上記図4に示す光学系を備えている。信号増幅回路205は、図5(c)に示す演算回路と、光ピックアップ装置204内のAPD121における検出信号を増幅およびノイズ除去するための回路構成を備えている。復調回路206は、信号増幅回路205から入力されたAPD信号を復調して再生データを生成し、デコーダ207に出力する。デコーダ207は、復調回路206から入力されたデータに対し誤り訂正等のデコード処理を施し、後段回路に出力する。
アドレス再生回路208は、信号増幅回路205から入力されたラジアルプッシュプル信号(RPP)からアドレス構造34、35に応じた周波数成分を抽出し、これを復調して、物理アドレスを取得する。取得された物理アドレスは、コントローラ211に供給される。なお、アドレス再生回路208は、アドレス構造34、35のうち何れか一方から物理アドレスを再生できない場合、他方から物理アドレスを再生する。
サーボ回路209は、信号増幅回路205から入力されたフォーカスエラー信号(FOE)、トラッキングエラー信号(TRE)からフォーカスサーボ信号およびトラッキングサーボ信号を生成し、光ピックアップ装置204の対物レンズアクチュエータ132に出力する。また、サーボ回路209は、信号増幅回路205から入力されたラジアルプッシュプル信号(RPP)上のS字カーブをもとにチルトサーボ信号を生成し、光ピックアップ装置204の対物レンズアクチュエータ132に出力する。さらに、サーボ回路209は、信号増幅回路205から入力されたファインクロックマーク信号(FCM)からモータサーボ信号を生成し、ディスク駆動モータに出力する。この他、サーボ回路209は、記録再生動作時において、後述の如く、光ピックアップ装置204のアクチュエータ133、134を駆動する。
クロック生成回路210は、信号増幅回路205から入力されたファインクロックマーク信号(FCM)から記録再生用のクロック信号を生成し、これを各回路に供給する。
コントローラ211は、CPU(Central Processing Unit)と内蔵メモリを備え、内蔵メモリに各種データを格納するとともに、あらかじめ設定されたプログラムに従って各部を制御する。
図7は、記録再生時における光ピックアップ装置204の制御動作を概念的に示す図である。
ターゲット記録層15に記録光と再生光を照射する場合、まず、サーボ光を発光させつつ対物レンズアクチュエータ132が駆動制御され、サーボ光の焦点位置が、同図(a)に示す如く、ターゲット記録層15と組となるサーボ層13(以下、このサーボ層のことを特に「ターゲットサーボ層13」という)に引き込まれる。このとき、エキスパンダ116はイニシャル状態とされ、記録光と再生光の焦点位置は、たとえば、サーボ光と同じく、ターゲットサーボ層13上に位置づけられる。
しかる後、記録光と再生光の焦点位置をターゲット記録層15上に移動させるに必要なステップ数だけエキスパンダ116が駆動される。これにより、記録光と再生光の焦点位置はターゲット記録層15上に移動される。さらに、この状態において再生光が発光され、APD信号が最良となるよう、エキスパンダ116が微細に駆動制御される。これにより再生光がターゲット記録層15にオンフォーカスされ、ターゲット記録層15に対する再生が可能となる。
記録動作時には、この状態において、さらに記録光が発光される。このとき記録光は、記録信号に応じて変調(ON/OFF)される。これにより、記録光と再生光がターゲット記録層15に同時に照射され、ターゲット記録層15に対する記録が行われる。
なお、記録再生動作時には、上記の如く、フォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号およびチルトサーボ信号が対物レンズアクチュエータ132に印加され、サーボ用対物レンズ107と記録再生用対物レンズ118が、一体的に、フォーカス方向、トラッキング方向およびチルト方向に駆動される。これにより、記録光および再生光のビームスポットは、ターゲットサーボ層13上のグルーブまたはランドと同様のトラック軌跡に沿って、ターゲット記録層15上を走査する。
以上、本実施の形態によれば、記録再生用対物レンズ118とサーボ用対物レンズ107がホルダ131に一体的に保持され、このホルダ131が対物レンズアクチュエータ132によってフォーカス方向、トラッキング方向およびチルト方向に駆動される。このため、サーボ動作時に、記録再生用対物レンズ118とサーボ用対物レンズ107を連携させることができ、よって、記録光と再生光をターゲット記録層15上の走査軌跡に円滑に追従させることができる。
また、本実施の形態によれば、記録再生用対物レンズ118とサーボ用対物レンズ107が一体的に駆動されるため、ターゲットサーボ層13にサーボ光を引き込む際に、記録光と再生光の焦点位置をサーボ光の焦点位置に追従させることができ、記録光と再生光の焦点位置をターゲットサーボ層13の近くに位置づけることができる。よって、ターゲットサーボ層13にサーボ光を引き込んだ後に、ターゲット記録層15に記録光と再生光を円滑かつ迅速に引き込むことができる。この場合、ターゲット記録層15に対する記録光と再生光の引き込みは、エキスパンダ116を駆動することによって行われる。したがって、記録再生用対物レンズ118をサーボ用対物レンズ107に対しフォーカス方向に相対的に変位させるための構成をホルダ131に配する必要がなく、光ピックアップ装置の構成を簡素化できる。
なお、本発明の実施形態は、上記に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施の形態では、一つのサーボ層13と組となる記録層15を5つとしたが、これ以外の数の記録層15を一つのサーボ層13に組み合わせるようにしても良い。また、上記実施の形態では、サーボ層13と記録層15の組を積層方向に4段配したが、これ以外の段数とすることもでき、この組が1段のみである場合にも本発明を適用可能である。
また、上記実施の形態では、記録光および再生光の焦点位置を調整するためにエキスパンダ116を用いたが、これに換えて、液晶素子等を用いることもできる。焦点位置調整用の液晶素子は、たとえば、特開2006−12247号公報に記載されているものを用いることができる。
また、上記実施の形態では、記録光と再生光の焦点位置を整合させるようにしたが、記録光と再生光の焦点位置は必ずしも整合していなくとも良く、これらの光が記録層に同時に照射されるよう、これらの光の焦点位置が光軸方向にずれていても良い。この場合、記録時には記録光がターゲット記録層15に引き込まれ、再生時には再生光がターゲット記録層15に引き込まれるよう、エキスパンダ116がステップ駆動される。
なお、上記実施の形態では、記録光と再生光を同時に記録層15に照射して記録を行う形態を示したが、記録光のみを記録層15に照射して記録を行うようにすることもできる。この場合、光ピックアップ装置の構成は、上記と同様でよく、フェムト秒レーザ111と半導体レーザ112に対する制御のみが相違する。すなわち、記録動作時には、記録光を発光するフェムト秒レーザ111のみが超短パルスで発光され、再生光を発光する半導体レーザ112は発光されない。この場合、再生光によって記録層15のエネルギー準位が引き上げられないため、フェムト秒レーザ111の発光パワーは、上記実施の形態の場合よりも高められる。なお、記録光のみで記録を行う場合も、上記実施の形態と同様の2光子吸収材料を記録層15の材料として用いることができる。
この他、各レーザ光の波長や、各層の材料、膜厚等は上記に限定されるものではなく、また、光ディスク装置の構成も適宜変更可能である。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。