以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1および図2に、本発明の一実施形態としての眼内レンズの挿入器具10を示す。挿入器具10は、全長に亘ってその内部が貫通せしめられて前後端縁部が開口せしめられた略筒形状を有する器具本体12の内部に眼内レンズ14を収容せしめると共に、押出部材としてのプランジャ16が挿入されて構成されている。なお、以下の説明において、前方とは、プランジャ16の押出方向(図1中、左方向)を言うものとし、上方とは、図2中、上方向を言うものとする。また、左右方向とは、挿入器具10の背面視における左右方向(図1中、上方が右、下方が左)を言うものとする。
より詳細には、器具本体12は、図3乃至図6に示すように、略筒形状とされた本体筒部18を有している。本体筒部18の内部には、略矩形断面形状をもって軸方向に貫通する貫通孔20が形成されている。また、本体筒部18の後端部からやや前方の部位には、本体筒部18の延出方向と直交する向きに広がる板状部22が一体的に形成されている。
さらに、器具本体12における本体筒部18の前方には、載置部としてのステージ24が形成されている。図7に、ステージ24を示す。ステージ24には、眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きな幅寸法をもって軸方向に延びる凹状溝28が形成されている。凹状溝28は、眼内レンズ14の保持部30、30を含む最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりもやや大きな軸方向長さ寸法をもって形成されている。
ここにおいて、凹状溝28は上方に開口せしめらた開口部29を有する一方、その底面には載置面32が形成されている。載置面32は、眼内レンズ14の最小幅寸法(図1における上下方向寸法)よりも僅かに大きな幅寸法を有すると共に、眼内レンズ14の最大幅寸法(図1における左右方向寸法)よりも大きな軸方向長さ寸法を有する平坦面とされている。なお、載置面32の高さ位置は、本体筒部18における貫通孔20の底面の高さ位置よりも上方に位置せしめられており、本体筒部18における貫通孔20の前端縁部には、貫通孔20の底面から上方に延び出して載置面32の後端縁部に接続する壁部34(図4参照)が形成されている。このようにして、凹状溝28は貫通孔20と連通せしめられており、凹状溝28の幅寸法が貫通孔20の幅寸法と略等しくされている。
そして、凹状溝28の側方(本実施形態においては、右側)には、蓋体としてのカバー部36が器具本体12と一体形成されている。カバー部36は、凹状溝28の軸方向寸法と略等しい軸方向寸法を有すると共に、凹状溝28の幅寸法よりもやや大きな幅寸法をもって形成されている。更に、カバー部36は、ステージ24の上端縁部が側方(本実施形態においては、右側)に延び出して形成された略薄板形状の連結部38によって器具本体12と連結されている。連結部38は、幅方向略中央部分を器具本体12の軸方向に延びる屈曲部40において最も薄肉とされており、屈曲部40で折り曲げ可能とされている。これにより、カバー部36は、連結部38を折り曲げて凹状溝28に重ね合わせ、開口部29を覆蓋することが出来るようにされている。
ここにおいて、カバー部36において載置面32と対向せしめられる対向面42には、器具本体12の軸方向に延びる一対の案内突部としての左右案内板部44a,44bが突出して一体形成されている。これら左右案内板部44a,44bは凹状溝28の幅寸法よりもやや小さな対向面間距離をもって、カバー部36の軸方向の全体に亘って形成されている。なお、対向面42の外周縁部は、全周に亘ってやや肉厚に形成されており、左右案内板部44a,44bは、かかる対向面42の外周縁部よりも更に突出せしめられている。
また、対向面42における左右案内板部44a,44bの対向面間の略中央位置には、左右案内板部44a,44bと平行に器具本体12の軸方向に延びる案内突部としての中央案内板部46が一体形成されている。中央案内板部46は、肉厚に形成された対向面42の外周縁部と同じ高さ寸法とされており、対向面42の軸方向の全長に亘って外周縁部から延びるように一体形成されている。更に、対向面42の外周縁部と中央案内板部46の軸方向後端縁部との接続部位には、中央案内板部46を挟んで一対の案内突起48,48が形成されている。案内突起48は、略三角の断面形状をもって対向面42の外周縁部から突出せしめられて一体形成されており、その突出寸法は、左右案内板部44a,44bの突出寸法と等しくされている。
そして、特に本実施形態においては、中央案内板部46の軸方向中間部分に、カバー部36の厚さ方向に貫通する開口窓50が形成されており、開口窓50の軸方向後方の内周面には、開口窓50内に突出して弾性当接突起52が一体形成されている。弾性当接突起52は、開口窓50の軸方向後方の内周面に基端部53が接続された片持アーム構造とされており、カバー部36を覆蓋せしめた状態で、器具本体12の軸方向に沿って、基端部53から突出先端部54に向けて、次第に載置面32に接近する斜め方向に突出せしめられている。更に、突出先端部54においてカバー部36を覆蓋せしめた状態で載置面32と対向せしめられる面は、載置面32に向けて凸となる球状の湾曲面とされている。また、弾性当接突起52は、カバー部36を形成する部材弾性によって弾性的に突接せしめられており、突出先端部54が容易に変位可能とされている。
さらに、カバー部36における連結部38と反対側の縁部には、係合片56が突出形成されている一方、ステージ24におけるカバー部36と反対側の端部には、外側に突出する突出縁部58が形成されており、かかる突出縁部58における係合片56と対応する位置には、係合切欠60が形成されている。
このような構造とされたステージ24の載置面32の下側には、担持部材62が取外し可能に設けられている。図8および図9に示すように、担持部材62は器具本体12と別体として構成されており、一対の側壁部63,63が対向面間に一体形成された連結板部64で連結された構造とされている。ここにおいて、側壁部63における外側面の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法と略等しくされている。また、それぞれの側壁部63の下端縁部には、外側に向けて突出して広がる脚板部66が一体形成されている。なお、脚板部66は、上面視において軸方向の中央部分が僅かに凹んだ形状とされている。
そして、それぞれの側壁部63、63の上端部には、上面視において略円弧形状をもって上方に突出する支持部としての第一支持部68が一体形成されている。更に、第一支持部68の上端面における外側部分で、担持部材62の内方側には、周壁70が一体的に突出形成されている。ここにおいて、周壁70の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。
また、連結板部64の軸方向両端部には、上面視において矩形状をもって上方に突出する支持部としての一対の第二支持部72,72が一体形成されている。ここにおいて、第二支持部72の上端面の高さ位置は、第一支持部68の上端面の高さ位置と等しくされている。更に、第二支持部72の上端面における担持部材62の外方側には、第二支持部72の幅方向の全体に亘って上方に突出する周壁74が一体形成されており、かかる周壁74の離隔距離は、眼内レンズ14の本体部26の径寸法よりも僅かに大きくされている。それと共に、第二支持部72の上端部には幅方向の全体に亘って外側に僅かに突出せしめられた係止爪76が一体形成されている。
このような構造とされた担持部材62が、器具本体12の載置面32の下側から組み付けられるようになっている。具体的には、器具本体12の載置面32には、厚さ方向に貫通する貫通孔78が形成されている。かかる貫通孔78は、担持部材62の第一支持部68および第二支持部72の上面視よりも僅かに大きな略相似形状をもって形成されている。そして、担持部材62の第一支持部68および第二支持部72が、載置面32の下側から貫通孔78に挿通せしめられて、載置面32上に突出せしめられる。これにより、第二支持部72に設けられた係止爪76が載置面32上に突出せしめられて、載置面32の上面に係止せしめられることによって、担持部材62が器具本体12の外側から組み付けられ、第一支持部68および第二支持部72が載置面32から突出せしめられた状態が保持されることとなる。このように、本実施形態においては、係止爪76を含んでロック機構が構成されている。
さらに、ステージ24の前方で、器具本体12の軸方向先端部には、挿入筒部としてのノズル部80が一体形成されている。ノズル部80は、全体としてステージ24側の基端部から延出方向の先端部に行くに連れて次第に先細となる外形形状をもって形成されていると共に、延出方向の全長に亘って貫通する通孔82が形成されている。
通孔82は、ステージ24側に開口せしめられた基端開口部84が載置面32と接続されることによってステージ24と連通せしめられている。基端開口部84は、全体として、底面86が平坦面とされて、上面が略円弧形状とされた扁平な略楕円形状断面とされている。ここにおいて、通孔82には、底面86が載置面32と段差無く接続された導入部88が形成されている。導入部88は、扁平な略楕円形状断面とされて、基端開口部84から略一定の幅寸法および高さ寸法をもって器具本体12の軸方向に延び出されている。
さらに、通孔82には、導入部88の前方において導入部88と連通せしめられて断面積が次第に小さくされた縮径部90が形成されており、通孔82は、縮径部90の先端部から先端開口部92に向けて略一定の断面積をもってストレートに延び出す形状とされている。縮径部90は、先端に行くに連れて底面86および上面の幅寸法が小さくされることによって断面積が小さくされている。更に、縮径部90の後端部分の底面86は、先端に行くに連れて次第に上方に傾斜せしめられている。なお、通孔82の上面の高さ位置は、軸方向の全長に亘って略一定とされている。また、先端開口部92は、上面が底面よりも前方に延び出された側方視において斜めの開口形状とされている。
また、導入部88および縮径部90の後端部に亘る底面86には、底面86の幅方向中央部分を挟んで器具本体12の軸方向に延びる導入突部94が形成されている。導入突部94は、導入部88および縮径部90の底面86から僅かに上方に突出して互いに平行に延びる線形状とされている。更に、導入突部94は、縮径部90の後端部における底面86の高さ位置が器具本体12の軸方向前方に行くに連れて次第に高くされることによって、縮径部90の後端部において底面86と等しい高さ位置となるようにされている。
更にまた、導入突部94は、底面86の幅方向の中央を挟んで器具本体12の軸直角方向で互いに所定距離を隔てて略平行に配設されており、かかる導入突部94の離隔距離は、押出部材の先端部の幅寸法よりも僅かに大きい寸法とされることが好ましく、特に本態様においては、後述するプランジャ16の棒状部100の幅寸法よりも僅かに大きくされている。
以上のように、本実施形態における器具本体12は、本体筒部18、ステージ24、カバー部36、およびノズル部80が一体成形されて、単一の部材として構成されており、かかる器具本体12とは別体として構成された担持部材62が載置面32の下方から組み付けられるようになっている。なお、器具本体12は光透過性を有する部材で形成されており、ステージ24の開口部29がカバー部36で覆蓋せしめられた状態においても、カバー部36を通して、器具本体12に収容された眼内レンズ14が視認可能とされている。特に、本実施形態では、前述のとおり、ノズル部80と本体部26を含む器具本体12が一体形成品で構成されているのであり、その成形材料として可視光線の透過率の大きい合成樹脂材料が採用されていることに加えて、ノズル部80の周壁と本体部26のステージ24が、充分に薄肉とされることによって、器具本体12の外部から、器具本体12の内部に収容された眼内レンズ14を、少なくとも外形線において目視にて視認することが出来るようになっている。そこにおいて、特にノズル部80の周壁と本体部26のステージ24においては、外部からの眼内レンズ14の視認性を向上させるために、それらの部分を形成する成形面を鏡面に近い精度に設定した樹脂成形金型を採用することが望ましい。
そして、このような構造とされた器具本体12の後方から、押出部材としてのプランジャ16が貫通孔20に挿し入れられている。図10および図11に、プランジャ16を示す。プランジャ16は、器具本体12の軸方向長さ寸法よりもやや大きな軸方向長さ寸法を有する略ロッド形状とされており、略円柱形状とされた作用部96と、略矩形ロッド形状とされた挿通部98が一体形成されている。
作用部96は、プランジャ16の中心軸上を延びる略円柱形状とされた棒状部100と、棒状部100の幅方向両側に広がる薄板状の扁平部102とを含んで構成されている。扁平部102は、棒状部100の後端部から挿通部98と等しい幅寸法をもって先端方向に向けて延び出すと共に、棒状部100の長さ方向略中間部分から、棒状部100の先端部からやや後方の部位に行くに連れて次第に幅寸法が小さくされた先鋭部104が形成されている。ここにおいて、先鋭部104の上面視形状は、器具本体12のノズル部80における縮径部90の水平方向断面形状に沿う形状とされている。
さらに、作用部96の軸方向先端部分には、切欠105が形成されている。本実施形態においては、切欠105は、上方および幅方向両側に開口せしめられると共に、軸方向後端側の内周面は上面視において作用部96の軸方向に対して斜めに延びると共に作用部96の軸直方向に広がって形成されている一方、軸方向先端側の内周面は上面視において作用部96の軸直方向に延びると共に作用部96の先端に行くに連れて上方に向かう傾斜面とされている。
更にまた、作用部96の軸方向中間部分からやや後方には、上方に突出する上方突出部106が形成されている。上方突出部106は、棒状部100の幅寸法と等しい幅寸法とされており、棒状部100の軸方向中間部分からやや後方において、後方に行くに連れて上方に傾斜せしめられた傾斜面108が所定寸法に亘って形成されると共に、かかる傾斜面108の後端縁部から作用部96の後端縁部に亘って一定の高さ寸法を有して上端が平坦面とされた平坦部110が形成されている。
一方、挿通部98は、貫通孔20の軸方向寸法よりも僅かに大きな軸方向寸法をもって形成されている。かかる挿通部98は略全体が略H字状の横断面形状とされており、その幅寸法および高さ寸法が、貫通孔20の幅寸法および高さ寸法よりも僅かに小さくされている。また、挿通部98の後端縁部には、軸直角方向に広がる円板状の押圧板部111が一体形成されている。
さらに、挿通部98の軸方向中間部分からやや前方には、保持手段としての係止部112が形成されている。係止部112には、挿通部98の軸直方向に貫通する貫通孔114内に突出すると共に、挿通部98の上方に向けて突出する爪部116が形成されている。そして、プランジャ16が器具本体12の本体筒部18に挿通された状態で、本体筒部18の上面において厚さ方向に貫設された係止孔118とプランジャ16の爪部116が係合せしめられることによって、プランジャ16の器具本体12に対する相対位置が位置決めされた挿通状態で保持されるようになっている。なお、爪部116と係止孔118の形成位置は、係合状態において、作用部96の先端部が器具本体12の貫通孔20から突出せしめられて、切欠105が後述するステージ24内に収容せしめられた眼内レンズ14の保持部30を下方から支持せしめる位置となるように設定されている。なお、係止部112や係止孔118は、例えば、挿入器具10の下面や側面に形成しても良い。
このような構造とされた眼内レンズの挿入器具10においては、先ず、プランジャ16の先端部分が器具本体12の本体筒部18に後方から挿入されて、爪部116が係止孔118に係止せしめれらた初期位置に位置せしめられる。それと共に、担持部材62が、前述のように、載置面32の下方から器具本体12に取り付けられる。これにより、担持部材62の第一支持部68および第二支持部72が載置面32上に突出せしめらた状態に保持される。
そして、図12および図13に示すように、眼内レンズ14の本体部26が第一支持部68および第二支持部72の上端面に載置せしめられる。なお、図12においては、理解を容易とするために、器具本体12の必要部分と眼内レンズ14、担持部材62およびステージ24内に臨むプランジャ16の先端部分のみを示す。かかる載置状態において、眼内レンズ14は、本体部26の外周部分が第一及び第二支持部68,72に接触状態とされており、中央部分はこれら第一及び第二支持部材68,72に対して非接触状態で支持されている。このように、本実施形態においては、第一及び第二支持部68,72を含んで外周支持部が構成されている。また、かかる載置状態において、眼内レンズ14において器具本体12の軸方向後方に位置せしめられた保持部30が、プランジャ16の切欠105の底面によって支持せしめられる。更にまた、プランジャ16の初期位置において、プランジャ16の軸方向前方(図12中、左方向)には、載置面32から突出せしめられた第二支持部72が位置せしめられている。これにより、プランジャ16側(図12中、右側)に位置せしめられた第二支持部72によって、プランジャ16の前進を阻止するストッパが構成されており、プランジャ16は、後述するように第二支持部72が載置面32上から後退せしめられない限り、前進が不可能とされている。
さらに、第一支持部68および第二支持部72に形成された周壁70、74が、眼内レンズ14における本体部26の外側に位置せしめられるようになっており、特に本実施形態においては、第一支持部68に形成された周壁70が眼内レンズ14を器具本体12の軸方向に対する斜め方向の両側を挟んで位置せしめられると共に、第二支持部72に形成された周壁74が、眼内レンズ14を器具本体12の軸方向の両側を挟んで位置せしめられるようになっている。これにより、眼内レンズ14の器具本体12に対する軸方向および軸直方向の変位量を制限せしめて、眼内レンズ14を安定して保持出来るようになっている。
加えて、図14(a)に示すように、第一及び第二支持部68,72への載置状態において、眼内レンズ14の本体部26は、載置面32から所定距離を隔てて位置せしめられており、載置面32に対して非接触状態で支持せしめられるようになっている。
そして、屈曲部40が屈曲せしめれられて、カバー部36によってステージ24の開口部29が覆蓋せしめられることによって、眼内レンズ14が器具本体12内に収容状態でセットされる。なお、カバー部36は、係合片56が係合切欠60に係合せしめられることによって、閉状態に維持される。これにより、カバー部36に設けられた弾性当接突起52が載置面32に向けて突出せしめられて、突出先端部54が眼内レンズ14の本体部26の中央部分に上方から弾性的に当接せしめられることとなる。
以上のようにして、眼内レンズ14が挿入器具10内に収容される。そして、本実施形態における挿入器具10は、眼内レンズ14を収容した状態で殺菌処理等がなされた後に、梱包されて配送される。
そして、本実施形態における挿入器具10を用いて眼内レンズ14を眼内に挿入する場合には、先ず、担持部材62を器具本体12の下方に引き抜いて、器具本体12から取り外す。これにより、図14(b)に示すように、眼内レンズ14を支持せしめていた第一及び第二支持部68,72が載置面32から下方に引き抜かれて載置面32上から後退せしめられる。その結果、眼内レンズ14が載置面32上に載置せしめられる。ここにおいて、本実施形態における載置面32は平坦面とされていることから、眼内レンズ14を安定して載置せしめることが出来ると共に、凹状溝28の幅寸法が眼内レンズ14の本体部26の径寸法より僅かに大きい程度とされていることから、載置面32上での眼内レンズ14の周方向の回転も阻止されるようになっている。更に、眼内レンズ14が載置面32上に載置された状態においては、弾性当接突起52が眼内レンズ14から離隔せしめられるようになっている。
続いて、眼組織に設けた切開創にノズル部80の先端部分を挿入せしめた状態で、プランジャ16の押圧板部111を器具本体12側に押し込む。これにより、載置面32に載置せしめられた眼内レンズ14における本体部26の外周縁部にプランジャ16の先端が当接せしめられて、プランジャ16によって眼内レンズ14が基端開口部84に向けて案内される。ここにおいて、プランジャ16の棒状部100は、カバー部36に形成された案内突起48、48で挟まれることによって、左右方向の変位量が制限されると共に、中央案内板部46によって、上下方向の変位量が制限されている。これにより、プランジャ16を軸方向に安定して押し出すことが可能とされている。更に、かかる中央案内板部46および左右案内板部44a,44bが載置面32に向けて突出せしめられていることによって、眼内レンズ14の上方への変位量も制限されており、眼内レンズ14を基端開口部84に滑らかに案内することが可能とされている。
なお、眼内レンズ14の押し出しの前に、必要に応じて、適当な潤滑剤をステージ24やノズル部80の内部に注入することが望ましい。特に本実施形態においては、カバー部36に厚さ方向に貫通する注入孔120が形成されており、かかる注入孔120を通じて、カバー部36を閉じた状態で潤滑剤が注入出来るようになっているが、潤滑剤の注入は、例えば、ノズル部80の先端開口部92から注入したり、一旦カバー部36を開いて、ステージ24の開口部29から注入したり、或いは、一旦プランジャ16を器具本体12から引き抜いて、貫通孔20の後端の開口部から注入するなどしても良い。
そして、プランジャ16によって基端開口部84から導入部88内に案内された眼内レンズ14は、導入部88の底面86に形成された導入突部94によって、本体部26の中央部分を下方へ突出せしめた凹形状に初期変形が加えられつつ、縮径部90内に押し込まれる。
続いて、プランジャ16が更に押し込まれることによって、眼内レンズ14は、縮径部90内を先端方向に向けて案内されて、更に小さく湾曲変形せしめられた後に、ノズル部80の先端開口部92から挿入器具10の外部に押し出され、眼内に挿入されることとなる。なお、プランジャ16の器具本体12への最大押し込み量は、挿通部98の先端面が貫通孔20の壁部34で係止されることで制限されるようになっており、かかる最大押し込み位置で、プランジャ16の先端部が先端開口部92から僅かに外方に突出せしめられるようになっている。
このような構造とされた挿入器具10においては、眼内レンズ14の本体部26の外周部分のみが第一及び第二支持部68,72によって支持されると共に、載置面32の上方に離隔した非接触状態で支持されていることから、本体部26の中央部分を傷つけるおそれを軽減することが出来る。そして、第一及び第二支持部68、72に設けられた周壁70、74によって眼内レンズ14の変位量が制限されることによって、眼内レンズ14を安定して支持せしめると共に、載置面32に優れた位置決め精度をもって載置することが出来る。
さらに、本実施形態における挿入器具10においては、眼内レンズ14の本体部26の中央部分に、上方から弾性当接突起52が当接せしめられる。これにより、眼内レンズ14の本体部26は、その外周部分が下方から第一及び第二支持部68,72で支持せしめられると共に、その中央部分に上方から弾性当接突起52が当接せしめられることによって、上下両側から挟まれるように支持される。これにより、眼内レンズ14を上下両側から挟むように支持せしめることが出来て、より安定して眼内レンズ14を保持することが出来ると共に、載置面32に対する位置決め精度も向上せしめられる。また、本体部26の中央部分が載置面32と隙間を隔てて支持せしめられていることによって、弾性当接突起52の下方への押圧力による本体部26の中央部分の下方への湾曲変形が許容されており、本体部26を下方に向けて湾曲変形せしめることが可能とされている。これにより、弾性当接突起52による本体部26の中央部分への集中的な押力を分散、軽減せしめることが可能とされると共に、少ない押圧作用力によって眼内レンズ14の位置ずれを有効に抑えることが出来る。このように、本態様においては、眼内レンズ14の弾性力を巧く利用して上下両側から保持することが出来て、優れた保持安定性と位置決め精度の向上が図られ得る。その結果、眼内レンズ14を収容した状態で出荷されて、搬送に際して振動が及ぼされたり、施術に際して傾斜せしめられたりした場合でも、眼内レンズ14が挿入器具10内で大きく変位して載置面32やカバー部材36等に激しく打ち当たるようなことが回避されており、打ち当たりに際する損傷のおそれを軽減することが出来ると共に、そのような振動が加えられた場合でも、眼内レンズ14の位置ずれを有利に抑えて、載置面32に優れた位置決め精度をもって載置することが可能となるのである。
加えて、本実施形態においては、担持部材62の器具本体12への組み付け状態を保持して、第一及び第二支持部68,72の載置面32からの突出状態を保持する係止爪76が、第二支持部72に一体的に形成されている。これにより、第二支持部72を載置面32に対して直接的に係合せしめることが可能とされており、第一および第二支持部68、72を載置面32から所期の位置に精度良く突出せしめることが出来ると共に、弾性当接突起52によって眼内レンズ14を介して及ぼされる下方への押圧力に対して有効に対抗して、眼内レンズ14を安定して保持することが可能とされている。また、担持部材62を器具本体12へ組み付けるロック機構を、優れたスペース効率をもって形成することが出来ると共に、担持部材62を器具本体12に組み付ける際に、係止爪76が載置面32上に突出せしめられた際の節度感を与えることが出来て、担持部材62の組み付けが正しく行われたことを知らせることも出来る。
更にまた、眼内レンズ14の本体部26に直接接触することとなる弾性当接突起52の突出先端部54が球面形状とされていることによって、本体部26に滑らかに接触せしめることが出来て、本体部26を傷つけるおそれも軽減されている。そして、眼内レンズ14が載置面32に載置せしめられた状態においては、弾性当接突起52が眼内レンズ14に対して非接触状態とされることから、プランジャ16で押し出される眼内レンズ14を傷つけるおそれも回避されている。それと共に、弾性当接突起52は、片持アーム構造とされてプランジャ16の押出方向で載置面32に向けて傾斜せしめられていることから、プランジャ16の押し出しに際してプランジャ16によって上方へ逃げるように変位せしめられることが可能とされており、弾性当接突起52が引っ掛かってプランジャ16の押し出しを阻害するおそれも軽減されている。
なお、図15に示すように、本実施形態における挿入器具10は、眼内レンズ14が比較的肉厚寸法の大きなものである場合には、本体部26の両面で曲率の大きな凸面122側がカバー部36に向けられた状態で、第一及び第二支持部68,72に支持されるようになっている。これにより、肉厚寸法の大きな眼内レンズ14であっても、載置面32と本体部26との隙間を安定して確保することが出来て、前述の如き凹状の湾曲変形を安定して生ぜしめて、優れた保持特性および位置決め精度を得ることが可能とされている。それと共に、弾性当接突起52が片持アーム形状とされていることによって、眼内レンズ14の肉厚寸法に合わせて容易に変位可能とされていることから、弾性当接突起52を開口窓50内に逃がすことによって、本体部26に過度の押圧力を与えることも回避される。一方、前述の図14(a)に示した眼内レンズ14のように、比較的肉厚寸法の小さなものである場合には、弾性当接突起52が載置面32に向けて突出せしめられて、突出先端部54が載置面32に向けて変位せしめられることによって、本体部26の中央部分に当接せしめられる。このように、本実施形態における挿入器具10においては、眼内レンズ14の肉厚寸法等に関わらず、弾性当接突起52を当接せしめて、眼内レンズ14を両側から安定して支持することが可能とされている。
そして、本実施形態における挿入器具10を使用する際には、担持部材62を器具本体12から取り外すという非常に簡易な操作によって眼内レンズ14を載置面32上に載置することが可能とされている。そこにおいて、本実施形態における挿入器具10においては、前述の如き第一及び第二支持部68,72および弾性当接突起52によって安定した位置決め精度を得られることから、このような簡易な操作にも関わらず、眼内レンズ14を載置面32上に優れた位置決め精度をもって載置することが可能とされているのである。更にまた、カバー部36によってステージ24の開口部29を覆蓋せしめた状態を維持して眼内レンズ14の載置を行えることから、眼内レンズ14の挿入器具10からの脱落を抑えることが出来ると共に、眼内レンズ14の外界との接触の機会も軽減されて、衛生面上も優れた効果を得ることが出来る。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前述の実施形態において弾性当接突起52は、カバー部36に一体形成されて、カバー部36を形成する部材の弾性によって眼内レンズ14に弾性的に当接せしめられるようにされていたが、必ずしもカバー部36と一体形成される必要は無いのであって、弾性当接突起52をゴム弾性体などを用いてカバー部36とは別途に形成して、カバー部36に固着するなどしても良い。更に、弾性当接突起52における突出先端部54の形状についても何等限定されるものではなく、前述の如き球面形状のみならず、例えば、前述の如き球面形状を形成することなく単純な平板形状としても良いし、或いは、そのような突出先端の角を落として、突出先端に行くに連れて眼内レンズ14から次第に離隔する滑らかな湾曲面を形成する等しても良い。
また、担持部材62を器具本体12に固定するロック機構としては、必ずしも前述の第二支持部72に形成された係止爪76のように、第二支持部72に形成されている必要は無い。例えば、係止爪76に代えて、第一支持部68および第二支持部72を、脚板部66側へ行くに連れて上面視寸法が次第に大きくなる形状として、これら第一支持部68および第二支持部72が載置面32の貫通孔78に押し込まれることによって、貫通孔78の復元力および互いの部材間の摩擦力によって担持部材62を載置面32の裏側に固定するようにしても良いし、或いは、担持部材62の側壁部63を、器具本体12において載置面32の幅方向両端部から下方に突出する下方突出壁124(図5参照)で挟持せしめることによって固定するなどしても良い。
更にまた、前記実施形態において挿入器具10に収容される眼内レンズ14は、本体部26と保持部30が別体として形成されていたが、本体部26と保持部30が同一部材で一体成形されたものを採用することも勿論可能である。
10:挿入器具、12:器具本体、14:眼内レンズ、16:プランジャ、24:ステージ、29:開口部、32:載置面、36:カバー部、52:弾性当接突起、54:突出先端部、68:第一支持部、72:第二支持部、80:ノズル部