JP5093438B2 - 酸性多糖類無機塩、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩、及びそれらの製造方法 - Google Patents

酸性多糖類無機塩、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩、及びそれらの製造方法 Download PDF

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本発明は、主に、酸性多糖類無機塩及びその製造方法、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品に関する。本発明は、さらに、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維或いは/並びに吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品を利用する塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム、塩水中の栄養塩類の濃度低減方法、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水、並びに、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の中で生産された外洋性生物にも関する。
酸性多糖類は分子内にカルボキシル基(−COOH)やエステル型硫酸(−SOH)を持っており、これらが金属イオンとイオン交換的に結合する能力を有している。海藻は多くの酸性多糖類を生産する。紅藻類海藻の生産する代表的な酸性多糖類は、カラギーナン、ポルフィラン、フノランなどである。褐藻類海藻の生産する代表的な酸性多糖類は、アルギン酸、フコイダンなどである。緑藻類海藻の生産する代表的な酸性多糖類は、ウロン酸含有硫酸多糖、などである。
ある種の酸性多糖類無機塩は、無機カチオン種が交換すると存在状態が変化することが知られている。アルギン酸ナトリウムは水溶性であるが、アルギン酸カルシウムは不溶性でありゲルを形成する。アルギン酸は鉛イオン(Pb2+)、銅イオン(Cu2+)、カドミウムイオン(Cd2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、コバルトイオン(Co2+)、マンガンイオン(Mn2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、バリウムイオン(Ba2+)など2価金属イオンとアルギン酸無機塩ゲルを作る。2価金属イオンの中で、マグネシウムイオン(Mg2+)と水銀イオン(Hg2+)とはアルギン酸無機塩ゲルを作らない。そのゲル強度は、無機カチオン種によって異なり、Pb2+>Cu2+>Cd2+>Zn2+、Ni2+、Co2+>Mn2+の順であることが知られている。一方、アルギン酸のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、及びアンモニウム塩は水溶性である。
しかし天然資材故に生物から製造された酸性多糖類無機塩は、無機カチオン主成分以外に多くの夾雑無機カチオンを含んでいる。所望する物性を発揮する酸性多糖類無機塩ゲル又は繊維を製造する目的で、所望の無機カチオン成分の比率を高めた多糖類無機塩を製造する技術が求められている。
アルギン酸ナトリウムのような水溶性酸性多糖類無機塩は、その用途により、溶液の粘度が重要になっている。水溶性酸性多糖類無機塩であるアルギン酸ナトリウムは、水に溶けて粘ちょうな液になる性質を利用して食品工業を初め医療、化粧品、染色、繊維、製紙、及びその他諸工業で広く利用されている。食品工業では、食品の安定剤、増粘剤、分散剤、ゲル化剤として用いられている。前記用途での使用には、それぞれアルギン酸ナトリウム水溶液に求められる適切な粘度範囲が存在する。
しかし、ゼリー、飲料などの透明性を要求される食品への用途向けには、低濁度のアルギン酸ナトリウムが求められている。アルギン酸ナトリウム水溶液中に不純物としてアルギン酸カルシウムなど不溶性アルギン酸無機塩が存在すると、アルギン酸ナトリウム水溶液の濁度が上昇する。
現在のアルギン酸ナトリウムの製造方法は、主として酸(沈殿)法とカルシウム(沈殿)法である。酸法とカルシウム法については、比較例1及び2で記述するが、両者とも、酸処理工程及びアルカリ処理工程があり、そのために、アルギン酸の分子鎖切断が起こり、結果的に分子量が減る確率が高くなる。MG比(アルギン酸は2種類のウロン酸から構成されている。その2種類のウロン酸はマンヌロン酸とグルロン酸である。マンヌロン酸とグルロン酸の比をMG比という。MG比はM/Gとも記載される)が同じであれば、分子量が減れば、粘度も低減する。すなわちアルギン酸ナトリウムの高純度化を酸法及び/又はカルシウム法を用いて行えば、分子量の低下即ち粘度の低下を引き起す可能性が高い。
そこで、現在、食品など用途によって求められるアルギン酸ナトリウムの粘度を保ったままで、アルギン酸ナトリウムから不溶性アルギン酸無機塩の原因となる無機カチオン種を除去して低濁度アルギン酸ナトリウムを製造する技術が求められている。
カラギーナンは食品加工の分野で利用度が高く、特にミルク製品において使われ、広く糊料としても多く利用され、医薬の基剤にも用いられる。またカラギーナンのナトリウム塩は水溶性であるが、カラギーナンのカリウム塩やアンモニウム塩は不溶性でゲル状になる。
これらは天然で生物由来の高分子(バイオポリマーともいう)であり、かつ、分子内にカルボキシル基(−COOH)やエステル型硫酸(−SOH)など酸性基を持ち金属イオンとイオン交換するため、粗水溶性酸性多糖類無機塩には様々な無機カチオン種と酸性多糖類との塩が含まれている。また、酸やアルカリ処理によって、酸性多糖類の鎖が切断される危険性も多い。
そこで、現在、食品など用途によって求められる水溶性酸性多糖類無機塩の粘度を保ったままで、かつ、不溶性酸性多糖類無機塩の原因となる無機カチオン種を除去して低濁度水溶性酸性多糖類無機塩水溶性酸性多糖類無機塩を製造する技術が求められている。
また、アルギン酸ナトリウムは、アルギン酸カルシウムゲルや繊維の原料となる。原料であるアルギン酸ナトリウム水溶液中にカルシウムイオンなどアルギン酸と結合しゲル化する2価の金属イオンが含まれていると、アルギン酸ナトリウム水溶液の粘度が上昇したり、濁度が上昇たり、タマになったり、更に塩化カルシウム水溶液など凝固液を入れた凝固槽にアルギン酸ナトリウム水溶液を注入しゲル化際に、ゲルの固まり方が一定でなくなったり、ノズルを詰まらせたりする原因となっていた。特に細いノズルから液を噴射しゲルを調整するときは問題となっていた。更に調製したアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維の強度も低いことが問題となっていた。
そのため、現在、カルシウムイオンなどアルギン酸と結合しゲル化する2価の金属イオンを極力取り除いた高純度アルギン酸ナトリウムとその製造方法が求められている。
一方、マグネシウムあるいは水銀イオンと結合したアルギン酸はゲル化せず水溶性のアルギン酸塩となる。マグネシウムイオンあるいは水銀イオンが含まれているアルギン酸ナトリウム水溶液を、アルギン酸カルシウムゲルや繊維の原料として用いると、マグネシウムあるいは水銀イオンが結合しているため、調製したアルギン酸カルシウムゲルや繊維の強度が落ちることが問題となっていた。
そのため、現在、マグネシウムイオンや水銀イオンを極力取り除いた高純度アルギン酸ナトリウムとその製造方法が求められている。特に、カルシウムイオンとマグネシウムイオンに関しては、アルギン酸ナトリウムの原料である海藻類に多く含まれているため、アルギン酸ナトリウムからカルシウムイオンとマグネシウムイオンを低減する技術が最も求められている。
本発明者らは、異常吸着クロマト現象及び疑似異常クロマト吸着現象により溶液中の微量成分を除去することが出来ることを見出し(特許文献1)、高純度塩化ナトリム結晶の製造方法を発明した(特許文献2)。更に特許文献1及び2に記載した発明を、塩化ナトリム中の特にカリウムイオン除去に応用することにより、低カリウム塩化ナトリウム医用材料が得られること(特許文献3)、塩化ナトリム中の特にマグネシウムイオンあるいはカルシウムイオン除去に応用することにより、藻類育成用人工海水組成物が得られること(特許文献4)をすでに発見した。
しかし、異常吸着クロマト現象及び疑似異常クロマト吸着現象により溶液中の微量成分を除去して得た高純度無機塩水溶液を多糖類無機塩水溶液(本発明では、多糖類無機塩水溶液のことを水溶性多糖類無機塩ともいう。)の透析液として用いると、分子量を低下せずに純度を上昇させた高純度多糖類無機塩水溶液(本発明では、高純度多糖類無機塩水溶液のことを高純度水溶性多糖類無機塩ともいう。)を得ることが可能になることは、今まで知られていなかった。
異常吸着クロマト現象及び疑似異常クロマト吸着現象により溶液中の微量成分を除去して得た高純度塩化ナトリウム水溶液をアルギン酸ナトリウム水溶液の透析液として用いると、分子量を低下せずに純度を上昇させた高純度アルギン酸ナトリウム水溶液を得ることが可能になることは、今まで知られていなかった。
不溶性多糖類無機塩;
多糖類無機塩を繊維やゲルとして使用する場合には、その強度が高くなくては産業的に使用できないことがある。多糖類無機塩繊維及び/又は多糖類無機塩ゲル、あるいはそれらを原料とした多糖類無機塩製品の強度に影響を与えているのは、多糖類無機塩の分子量である。
これまでのアルギン酸ナトリウム製法の精製方法では、分子量が低下すること、高純度アルギン酸ナトリウムが得られないことが問題となっていた。そこで分子量を保ったままアルギン酸ナトリウムの純度を高める製造方法が求められていた。
粉状吸着剤の欠点;
有機系吸着剤と異なり、無機系吸着剤は、粉状のモノが多い。無機系吸着剤は優れた吸着特性を示すが、粉状であるために幾つかの欠点を有している。
比重が水より重いと沈んでしまい混合率が悪い、比重が水より軽いと水と混合できない。これら欠点が、粉状吸着体の吸着効率を低下させている原因となっていた。
また、粉状であるために、カラム状に充填できないし、流水化下では漏れてしまうため使えない。
そこで現在、粉状吸着剤を分散させて固定化するポリマーが求められていた。
固定化するポリマーの欠点;
親水性のポリマーでないと、硝酸イオンなど親水性の物質の吸着剤をさせて使用することは出来ない。
しかし、従来の親水性ポリマーに粉状吸着剤を固定化してしまうと、吸着能力は25%以下に低減してしまう欠点があった。
粉状吸着剤の吸着効率を落とさないで、粉状吸着剤を固定化するポリマーが求められている。
固定化用のポリマーは一般に有機系ポリマーが多く、その合成には有害な試薬を使用しなければならないことがあり問題になっていた。更に、吸着処理が終了した後でポリマーに固定化した吸着剤を回収することは、有機系ポリマーに固定化した場合は事実上困難であった。
また、粉状吸着剤を固定化するポリマーが生分解性ポリマーであることが望ましい。
特開2004−261636号公報(特許請求の範囲その他) 特開2004−262676号公報(特許請求の範囲その他) 特開2004−262766号公報(特許請求の範囲その他) 特開2004−261011号公報(特許請求の範囲その他)
本発明は、主として、酸性多糖類無機塩及びその製造方法、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品を提供することを目的とする。本発明は、さらに、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維或いは/並びに吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品を利用する塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム、塩水中の栄養塩類の濃度低減方法、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水、並びに、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の中で生産された外洋性生物を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、以下の事項に関する。
〔項1〕
全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、90モル%以上である、酸性多糖類無機塩。
〔項2〕
全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.85モル%以上である、項1に記載の酸性多糖類無機塩。
〔項3〕
全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.9モル%以上である、項2に記載の酸性多糖類無機塩。
〔項4〕
酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維製造用の、項1〜3のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩。
〔項5〕
前記酸性多糖類がアルギン酸である、項1〜4のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩。
〔項6〕
前記主成分となる酸性多糖類1価無機塩が、酸性多糖類ナトリウム塩である、項1〜5のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩。
〔項7〕
前記主成分となる酸性多糖類1価無機塩が、アルギン酸ナトリウムである、前記項1〜6のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩。
〔項8〕
主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液を、1価無機カチオンを含む透析液に対して透析する工程(ここで、透析液中の1価無機カチオンの比率は、水溶液中の主成分となる1価無機カチオンの比率よりも高い)を包含する、酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項9〕
前記酸性多糖類がアルギン酸である、項8に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項10〕
前記主成分となる1価無機カチオンがナトリウムイオンである、項8又は9に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項11〕
前記酸性多糖類がアルギン酸であり、且つ、前記主成分となる1価無機カチオンがナトリウムイオンである、8〜10のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項12〕
前記透析液が塩化ナトリウム水溶液である、項8〜11のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項13〕
前記塩化ナトリウム水溶液中の塩化ナトリウムの純度が99.99質量%以上である、項12に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項14〕
前記塩化ナトリウム水溶液中の塩化ナトリウムの純度が99.999質量%以上である、項13に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項15〕
前記塩化ナトリウム水溶液が、異常クロマト現象又は擬似異常クロマト現象を利用して製造されたものである、項12〜14のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項16〕
主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液について、前記透析工程後の溶液粘度が、前記透析工程前の溶液粘度の90%以上であることを特徴とする、項8〜15のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項17〕
主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液について、前記透析工程後の溶液分子量が、前記透析工程前の溶液分子量の90%以上であることを特徴とする、項8〜15のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項18〕
主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液について、前記透析工程後の溶液粘度が、前記透析工程前の溶液粘度の95%以上であることを特徴とする、項16に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項19〕
主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液について、前記透析工程後の溶液分子量が、前記透析工程前の溶液分子量の95%以上であることを特徴とする、項17に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
〔項20〕
酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項21〕
酸性多糖類無機塩の水溶液(ここで、酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、90モル%以上である)と、無機塩水溶液とを接触させることにより得られる、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項22〕
全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.85モル%以上である、項21に記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項23〕
酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.9モル%以上である、項22に記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項24〕
吸着剤を保持させるための、項20〜23のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項25〕
風乾繊維の単繊維の引張強度が1.5g/デニール以上、又は、湿潤繊維の単繊維の引張強度が0.15g/デニール以上である、項20〜24のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項26〕
前記酸性多糖類がアルギン酸である、項20〜25のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項27〕
前記主成分となる酸性多糖類1価無機塩が、酸性多糖類ナトリウム塩である、項21〜26のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項28〕
項20〜27のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維を原料とする、酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品。
〔項29〕
項28に記載の酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品、並びに、吸着剤を有する、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品。
〔項30〕
吸着剤がリンを含む栄養塩類及び/又は窒素を含む栄養塩類を吸着する吸着剤であることを特徴とする、項29に記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品。
〔項31〕
項20〜27のいずれかに記載の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、並びに、吸着剤を有する、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項32〕
吸着剤を含有する酸性多糖類無機塩の水溶液(ここで、酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、90モル%以上である)と、無機塩水溶液とを接触させることにより得られる、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項33〕
全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.85モル%以上である、項32に記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項34〕
酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.9モル%以上である、項32に記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項35〕
吸着剤がリンを含む栄養塩類及び/又は窒素を含む栄養塩類を吸着する吸着剤であることを特徴とする、項31〜33のいずれかに記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
〔項36〕
項31〜33のいずれかに記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維を原料とする、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品。
〔項37〕
アルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項38〕
アルギン酸無機塩の水溶液(ここで、アルギン酸無機塩において、全てのアルギン酸無機塩に対する主成分となるアルギン酸ナトリウムの比率が、90モル%以上である)と、カルシウムイオン水溶液とを接触させることにより得られる、アルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項39〕
全てのアルギン酸無機塩に対する主成分となるアルギン酸ナトリウムの比率が、99.85モル%以上である、項39に記載のアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項40〕
前記アルギン酸無機塩において、全てのアルギン酸無機塩に対する主成分となるアルギン酸ナトリウムの比率が、99.9モル%以上である、項39に記載のアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項41〕
吸着剤を保持させるための、項38〜40のいずれかに記載のアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項42〕
風乾繊維の単繊維の引張強度が1.5g/デニール以上、又は、湿潤繊維の単繊維の引張強度が0.15g/デニール以上である項38〜41のいずれかに記載のアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項43〕
項38〜42のいずれかに記載のアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維を原料とする、アルギン酸カルシウムゲル製品及び/又は繊維製品。
〔項44〕
項43に記載のアルギン酸カルシウムゲル製品及び/又は繊維製品、並びに、吸着剤を有する、吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル製品及び/又は繊維製品。
〔項45〕
項38〜42のいずれかに記載のアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維、並びに、吸着剤を有する、吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項46〕
吸着剤を含有するアルギン酸無機塩の水溶液(ここで、アルギン酸無機塩において、全てのアルギン酸無機塩に対する主成分となるアルギン酸ナトリウムの比率が、90モル%以上である)と、カルシウムイオン水溶液とを接触させることにより得られる、吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項47〕
全てのアルギン酸無機塩に対する主成分となるアルギン酸ナトリウムの比率が、99.85モル%以上である、項46に記載の吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項48〕
アルギン酸無機塩において、全てのアルギン酸無機塩に対する主成分となるアルギン酸ナトリウムの比率が、99.9モル%以上である、項47に記載の吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項49〕
吸着剤がリンを含む栄養塩類及び/又は窒素を含む栄養塩類を吸着する吸着剤であることを特徴とする、項45〜48のいずれかに記載の吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維。
〔項50〕
項45〜49のいずれかに記載の吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維を原料とする、吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル製品及び/又は繊維製品。
〔項51〕
項31〜35に記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、項45〜49に記載の吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維、項29、30及び36に記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品、並びに、項44及び50に記載の吸着剤を保持するアルギン酸カルシウムゲル製品及び/又は繊維製品、からなる群より選択される少なくとも1種を備える、塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
〔項52〕
濃度低減する栄養塩類が、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、尿素態窒素、有機態リン、無機態リン及び珪素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、項51に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
〔項53〕
項51又は52に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、並びに、流路切り替え機、硝化菌を定着させた硝化槽、酸素供給槽、泡沫分離槽、沈殿槽、pH調製水槽、水温調整槽、ろ過槽、循環ポンプ及び生物飼育槽からなる群より選択される少なくとも1種を備えることを特徴とする、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム。
〔項54〕
塩水を項51又は52に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、並びに、項53に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減システムからなる群より選択される少なくとも1種で処理する工程を包含する、塩水中の栄養塩類の濃度低減方法。
〔項55〕
項54に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減方法により得られた、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水。
〔項56〕
項55に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の中で生産された外洋性生物。
さらに、本発明は以下の事項に関する。
〔項57〕
流路切り替え弁と該流路切り替え弁に接続された複数の濃度低減ユニットを備える、項51に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
〔項58〕
濃度低減ユニットが塩水流入側培養部と塩水流出側培養部を備える項57に記載の濃度低減装置。
〔項59〕
濃度低減する栄養塩類が、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、尿素態窒素、有機態リン、無機態リン(オルトリン酸など)、珪素(珪酸など)のうち1種類以上であることを特徴とする項57または58に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
〔項60〕
吸着剤を装置内に導入することを特徴とする項57〜59のいずれかに記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
〔項61〕
吸着剤が多糖類無機塩に保持されていることを特徴とする項57〜60のいずれかに記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
以下、本発明をより詳細に説明する。
現在工業的に製造されている酸性多糖類無機塩は、多くの場合、特定の酸性多糖類アニオンに対して、2種以上の無機カチオンが塩を形成している。例えば、現在工業的に製造されているアルギン酸無機塩は、主成分としてアルギン酸ナトリウムを含有するほか、検出限界以上のアルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムを含有している。
この酸性多糖類無機塩は、酸性多糖類無機塩ゲル又は繊維の原料として用いられ得る。得られる酸性多糖類無機塩ゲル又は繊維の特性は、酸性多糖類無機塩(原料)における全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩(ゲル又は繊維成分)の比率、酸性多糖類1価無機塩の分子量、酸性多糖類無機塩の溶液粘度等によって変化する。通常、酸性多糖類無機塩(原料)における全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩(ゲル又は繊維原料成分)の比率が高い程、ゲル又は繊維のポアサイズがそろい、ゲル又は繊維強度が高い。また、主成分となる酸性多糖類1価無機塩の分子量が大きい程、ゲル又は繊維強度が高い。例えば、アルギン酸無機塩(原料)を用いてアルギン酸カルシウムゲル又は繊維を製造する場合、アルギン酸無機塩における全てのアルギン酸無機塩に対する主成分となるアルギン酸ナトリウム(ゲル又は繊維原料成分)の比率が高い程、アルギン酸カルシウムゲル又は繊維のポアサイズがそろい、ゲル又は繊維強度が高い。また、主成分となるアルギン酸ナトリウムの分子量が大きい程、ゲル又は繊維強度が高い。
従来の市販の酸性多糖類無機塩は、主成分となる(ゲル又は繊維成分となる)酸性多糖類1価無機塩以外に、他の酸性多糖類1価無機塩や酸性多糖類多価無機塩を含んでいる。また、従来の酸性多糖類無機塩の高純度化を、従来の工業的抽出・精製法である酸やカルシウム法などで行った場合、酸とアルカリの処理により低分子化さてる。これらの理由により、従来の市販の酸性多糖類無機塩又はこれを従来法により高純度化したものを原料として用いて製造される酸性多糖類無機塩繊維は、ポアサイズがそろわない、ゲル又は繊維強度が高くない、といった問題点を有する。
本発明では、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が高められた酸性多糖類無機塩を提供する。
本発明の酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率は、通常、90モル%以上、好ましくは、99.85モル%以上、より好ましくは、99.9モル%以上である。
本発明の酸性多糖類無機塩は、基本的に、主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液を、1価無機カチオンを含む透析液に対して透析することによって得られる。
主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液は、酸性多糖類無機塩を溶媒に溶解することにより得られる。
水溶液の調製に使用される酸性多糖類無機塩としては、通常、天然由来の酸性多糖類無機塩であるが、人工的に加工された酸性多糖類無機塩であってもよい。ここで、天然由来とは、自然界に存在するあらゆる藻類、植物又は生物から得られることを意味する。かかる天然由来の酸性多糖類無機塩は、既知の方法により抽出することができるが、簡便のため市販品を用いてもよい。藻類としては、例えば、褐藻類(例えば、コンブ属海藻、ワカメ属海藻、レッソニア属海藻、マクロシスチス属海藻、カジメ属海藻、アラメ属海藻、アスコフィラム、ダービリアなど)、紅藻類(例えば、キリンサイ属海藻、イバラノリ属海藻、ムカデノリ属海藻、テングサ属海藻、オゴノリ属海藻、フノリ属海藻、アマノリ属海藻など)、緑藻類(例えばミル属海藻、アオサ属海藻、アオノリ属海藻、イワヅタ属海藻、ヒトエグサ属海藻など)等が挙げられる。植物としては、例えば、柑橘類、テンサイ、リンゴ等が挙げられる。その他の生物としては、例えば、哺乳動物、カブトガニ、イカ、細菌等が挙げられる。
水溶液の調製に使用される酸性多糖類無機塩の分子量は、特に限定されないが、例えば、20,000〜20,000,000、好ましくは100,000〜20,000,000、さらに好ましくは200,000〜20,000,000である。ただし、これら以外の分子量を有する酸性多糖類の分解物や縮合物がわずかに含まれていても、本発明の酸性多糖類無機塩が所望の効果を有する限りにおいて特に問題はない。
酸性多糖類とは、2以上の単糖から構成され、且つ、水溶液に溶解されたときに無機カチオンと塩を形成し得る酸性の官能基を有する糖質であれば、特に限定されない。酸性多糖類の構成単位となる単糖は、特に限定されないが、例えば、グルコース、ガラクトース(D形、L形)、キシロース、マンノース、ラムノース、フコース、フコース、アラビノースなどの中性糖、グルロン酸、イズロン酸、マンヌロン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸などのウロン酸、グルコサミン、ガラクトサミンなどのアミノ糖等が挙げられる。酸性の官能基としては、例えば、−COOH(カルボキシ基)、−SOH(スルホ基)、−OSOH、−CHOSOH等が挙げられるが、これらに限定されない。
代表的な酸性多糖類としては、アルギン酸、アガロペクチン、カラゲナン(カラギーナン)、ヒアルロン酸、ポルフィラン、フコイダン(硫酸化フカン)、アスコフィラン好ましくは、アルギン酸、アガロペクチン、カラゲナン(カラギーナン)、特に好ましくは、アルギン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
水溶液の調製に使用される酸性多糖類無機塩において、無機塩とは、上記酸性多糖類のアニオンが金属イオン又は陽性の塩基性基と形成する塩を意味する。無機塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ニッケル塩、銀塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、コバルト塩、バリウム塩、ストロンチウム塩、マンガン塩、鉛塩、銅塩、カドミウム塩、亜鉛塩、水銀塩などが挙げられる。
水溶液の調製に使用される酸性多糖類無機塩は、主成分として酸性多糖類1価無機塩を含み、副成分として、主成分以外の酸性多糖類1価無機塩及び/又は酸性多糖類多価無機塩を含み得る。本発明において「主成分となる酸性多糖類1価無機塩(又は1価無機カチオン)」とは、ある特定の酸性多糖類に対して複数の1価無機塩(又は1価無機カチオン)が存在する場合、最も多い比率で存在する1価無機塩(又は1価無機カチオン)を意味する。例えばアルギン酸1価無機塩について、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が存在する中でナトリウム塩が最も多く存在している場合、ナトリウム塩が主成分となる1価無機塩である。
水溶液の調製に使用される酸性多糖類無機塩において、主成分となる酸性多糖類1価無機塩としては、好ましくは、酸性多糖類のナトリウム塩である。
水溶液の溶媒は、通常、水であるが、本発明の酸性多糖類無機塩が所望の効果を有する限りにおいて、水をベースとしてさらに別の溶媒を含む溶媒であってもよい。
本発明では、前述の主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液を、1価無機カチオンを含む透析液に対して透析する。
透析液は、前述の水溶液において主成分となる1価無機カチオンと同種の1価無機カチオンを、当該水溶液よりも高い比率で含有する。即ち、透析液における1価無機カチオンの比率は、前記水溶液における主成分となる1価無機カチオンの比率よりも高い。例えば、水溶液における主成分となる1価無機カチオンがナトリウムイオンである場合、透析液におけるナトリウムイオンの比率は、水溶液における主成分となるナトリウムイオンの比率よりも高い。なお、本書における1価無機カチオンとは、1価の金属イオン又は陽性の塩基性基のことであり、水素イオンは含まれない。
透析液としては、基本的に、高純度1価無機塩水溶液が使用される。
高純度1価無機塩水溶液は、高純度1価無機塩を溶媒(通常、水又は水をベースとする溶媒)に溶解することにより得られる。
高純度1価無機塩の純度は、例えば、99.9質量%以上、好ましくは、99.99質量%以上、更に好ましくは99.999質量%以上である。
本発明の好ましい実施形態において、透析液は、高純度塩化ナトリウム水溶液である。
本発明の好ましい実施形態において、透析液は、異常クロマト現象又は擬似異常クロマト現象を利用して製造された高純度塩化ナトリウム水溶液である。
本発明の好ましい実施形態において、透析液は、塩化ナトリウム純度が99.99質量%以上、好ましくは99.999質量%以上の高純度塩化ナトリウム水溶液である。
透析液は、水溶液における主成分ではない(副成分である)無機カチオンを実質的に含まないか又は水溶液よりも低い比率で含むことが特に好ましい。このように主成分ではない無機カチオンを実質的に含まない又は水溶液よりも低い比率で含む透析液を用いることにより、主成分ではない無機カチオンが水溶液から透析液へ移動し、水溶液において主成分ではない無機カチオンの比率が低下する。
本発明の好ましい実施形態において、透析液は、水溶液において主成分ではない無機カチオンを実質的に含まない。
本発明の好ましい実施形態において、透析液は、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオンからなる群より選択される1種、より好ましくは2種、さらに好ましくは3種全てを実質的に含まない高純度塩化ナトリウム水溶液である。
透析液の溶媒は、通常、水であるが、本発明の酸性多糖類無機塩が所望の効果を有する限りにおいて、水をベースとしてさらに別の溶媒を含む溶媒であってもよい。
透析膜としては、酸性多糖類アニオンを通さず且つ1価無機カチオンを通す限りにおいて特に限定されない。
透析膜の分画分子量は、特に限定されないが、例えば、3,500〜60,000、好ましくは3,500〜10,000、更に好ましくは3,500〜8,000である。
透析膜の素材は、特に限定されないが、例えば、セルロース(例えば、再生セルロース、酢酸セルロース)、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート等である。
本発明では、市販の透析膜を好適に用いることができる。市販される透析膜としては、例えば、酸性多糖類の分子量が100,000〜1,000,000程度である場合には、スペクトラ/ポア透析チューブ(スペクトラム社製)、ディスポーザブル透析カセットSlide−A−Lyzer(PIERCE社製)等が好適に例示される。
透析温度は、通常4〜50℃、好ましくは4〜30℃、更に好ましくは4〜25℃であるが、特に限定されない。
透析時間は、特に限定されず、水溶液の組成、透析液の組成、透析条件、所望の効果等に応じて適宜選択される。透析は、1価無機カチオンの比率が水溶液と透析液とで実質的に等しくなる状態又はそれに近い状態に達するまで行われることが好ましい。
かかる透析工程により、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が高い(好ましくは、99.9モル%以上である)本発明の酸性多糖類無機塩の水溶液が得られ得る。
透析後、必要に応じて、本発明の酸性多糖類無機塩の水溶液を慣例的な方法により濃縮、希釈又は乾燥(乾固)することによって、本発明の酸性多糖類無機塩の所定濃度の水溶液(ゾル状の水溶液を含む)又は固形物を得ることができる。
このように、透析を用いる本発明の製造方法により得られた酸性多糖類無機塩は、通常、酸又はアルカリ処理を用いる従来法に比べて、低分子化を受けていない。
透析工程において酸性多糖類無機塩が受けた低分子化の程度については、例えば、透析工程前と透析工程後の酸性多糖類無機塩の物性(例えば、溶液粘度)を指標として、知ることができる。つまり、例えば、酸性多糖類無機塩の水溶液(即ち、主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液)について、透析工程前の溶液粘度と、透析工程後の溶液粘度とを比較することによって、透析工程において酸性多糖類無機塩が受けた低分子化の程度を調べることができる。このとき、前記透析工程後の溶液体積を前記透析前の溶液体積と同じになるように濃縮又は希釈し、前記透析工程後の溶液粘度と前記透析工程前の溶液粘度とを比較する。透析工程において酸性多糖類無機塩が受けた低分子化の程度が大きい程、透析工程前の溶液粘度に比べて透析工程後の溶液粘度が低下する。
本発明において、酸性多糖類無機塩の水溶液(即ち、主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液)について、前記透析工程後の溶液粘度が、前記透析工程前の溶液粘度の例えば90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは100%以上である。ここで、溶液粘度は、後述の参考例の粘度測定法に従って測定することができる。
本発明において、酸性多糖類無機塩の水溶液(即ち、主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液)について、前記透析工程後の溶液分子量が、前記透析工程前の溶液分子量の90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは100%以上である。
従来の酸法やカルシウム法では、酸性多糖類無機塩が壊れて、溶液粘度や溶液分子量が大幅に低減するが、本発明を用いれば、酸性多糖類無機塩の溶液粘度や溶液分子量を大きく低減させることなく且つ純度を高めることができる。
本発明によれば、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維が提供される。
かかる酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維は、基本的に、前述した本発明の酸性多糖類無機塩の水溶液と、無機塩水溶液とを接触させることにより得られる。
酸性多糖類無機塩水溶液の濃度は、無機塩水溶液と接触されたときに所望のゲル又は繊維が得られる限りにおいて特に限定されないが、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%、更に好ましくは2〜5質量%である。
無機塩水溶液としては、無機塩水溶液中の無機カチオンが、本発明の酸性多糖類無機塩水溶液中の酸性多糖類アニオンと塩を形成して固体化又はゲル化する限りにおいて、特に限定されない。
無機塩水溶液は、酸性多糖類の種類に応じて適宜選択され、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、その他の二価の無機塩、或いは、カリウム塩、その他の1価無機塩、好ましくは、カルシウム塩の水溶液である。例えば、酸性多糖類がアルギン酸である場合には、無機塩水溶液は、好ましくは、カルシウムイオンを含む水溶液(通常、カルシウム塩水溶液)である。例えば、酸性多糖類がカラギーナンである場合には、無機塩水溶液は、好ましくは、カリウム塩水溶液又はアンモニウム塩水溶液である。
無機塩水溶液の濃度は、酸性多糖類無機塩水溶液と接触されたときに所望のゲル又は繊維が得られる限りにおいて特に限定されないが、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。
本発明の酸性多糖類無機塩水溶液と無機塩水溶液とを接触させる方法は、如何なる方法であってもよい。
繊維を製造する場合の接触させる方法は、例えば、酸性多糖類無機塩水溶液を細い液流で無機塩水溶液中に注入する方法、無機塩水溶液を細い液流で酸性多糖類無機塩水溶液中に注入する方法等が用いられる。
細い液流で溶液を接触させる場合、細い液流は、水溶液を液量調節器具に通すことにより達成され得る。液量調節器具としては、例えば、ノズル、キャピラリー、パイプ、ホース、穴のあいた容器、注射器等が挙げられる。また、複数の液量調節器具を併用してもよい。液量調節器具の先端部分(水溶液の出口)の内径は、特に限定されないが、例えば、0.01〜5.0mm、好ましくは、0.1〜2.5mm、更に好ましくは、0.25mm〜1mmである。
ゲルを製造する場合の接触させる方法は、例えば、(1)ゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液を容器に入れて(例えば、容器の底又は側面に空いた穴から)無機塩水溶液を浸透させる方法、(2)ゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液を直接、無機塩水溶液に接触させる方法、(3)ゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液の入った容器の底又は側面に空いた穴を透析膜で覆い、無機塩水溶液の入った容器につけ、無機塩を透析膜から浸透させる方法、(4)ゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液を透析膜で覆い、無機塩水溶液の入った容器につけ、無機塩を透析膜から浸透させる方法、等が用いられる。
本発明の好ましい実施形態において、本発明のアルギン酸ナトリウムの比率が高い(好ましくは、99.9モル%以上)アルギン酸無機塩水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを接触させることにより、アルギン酸カルシウムゲル及び/又は繊維が得られる。
本発明の酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維は、特に好ましくは、風乾繊維の単繊維の引張強度が約1.5g/デニール以上、又は、湿潤繊維の単繊維の引張強度が約0.15g/デニール以上である。風乾繊維及び湿潤繊維の単繊維の引張強度は、JIS L1069「繊維の引張試験方法」法によって測定され得る。
本発明では、上記酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維を原料とするゲル製品及び/又は繊維製品が提供される。ゲル製品及び/又は繊維製品には、ゲルのみ、繊維のみ、及びゲルと繊維の両方を原料とするものも含まれる。
ゲル製品の形態は、特に限定されないが、プレート、ポール、ひも状、球状、膜状、網目状、サイコロ状等が挙げられる。
繊維製品の形態は、特に限定されないが、織物、編物、ネット、不織布、糸、紐、ロープ、紙等が挙げられる。
ゲル製品及び/又は繊維製品の形態は、例えば、吸着剤を保持し得る凹部又は切り込みを備える形態であってもよい。
ゲル製品及び/又は繊維製品の一部に、金具、ロープ、ひも等の前記ゲル製品/繊維製品を設置又は回収するための器具を備えてもよい。
本発明では、酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品、並びに、吸着剤を有する、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品が提供される。
かかる吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品は、例えば、前記の酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品に、吸着剤の少なくとも一部を保持させることにより得られる。例えば、吸着剤の少なくとも一部を製品に埋め込むことにより成される。或いは、例えば、製品で吸着剤を包むことにより成される、或いは、例えば、凹部を有する形状に製品を加工し(例えば、成型し)、吸着剤を製品の凹部に入れ、製品で蓋をすることにより成される。
本発明によれば、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、並びに、吸着剤を有する、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維が提供される。
かかる吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維は、基本的に、吸着剤を含有する本発明の酸性多糖類無機塩水溶液と、無機塩水溶液とを接触させることにより得られる。
接触させる方法については、如何なる方法であってもよい。
繊維を製造する場合の接触させる方法としては、前述と同様に、例えば、吸着剤を含有する本発明の酸性多糖類無機塩水溶液を細い液流で無機塩水溶液に注入する方法、無機塩水溶液を細い液流で吸着剤を含有する本発明の酸性多糖類無機塩水溶液に注入する方法が挙げられる。
ゲルを製造する場合の接触させる方法としては、例えば、(1)吸着剤の少なくとも一部が埋め込まれたゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液を容器に入れて、(例えば、容器の底又は側面に空いた穴から)無機塩水溶液を浸透させる方法、(2)当該ゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液を直接、無機塩水溶液に接触させる方法、(3)当該ゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液の入った容器の底又は側面に空いた穴を透析膜で覆い、無機塩水溶液の入った容器につけ、無機塩を透析膜から浸透させる方法、(4)当該ゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液を透析膜で覆い、無機塩水溶液の入った容器につけ、無機塩を透析膜から浸透させる方法等が用いられる。このとき、吸着剤は、所定の間隔でゾル状の酸性多糖類無機塩水溶液に配置されることが好ましい。
本発明によれば、かかる吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維を原料とする、ゲル製品及び/又は繊維製品が提供される。製品の形態及び特性については、前述の通りである。
吸着剤としては、窒素、リンの吸着剤として既知の吸着剤を広く使用してもよいが、中でも妨害イオンが多い塩水中での栄養塩類吸着を目的としたオキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれている)である窒素吸着剤あるいはリン吸着剤を使用することが好ましい。オキソ陰イオン吸着剤は、塩水中で他の共雑イオン存在下でも、吸着速度が速く、高吸着容量で、かつ吸着した窒素やリンを効率的に脱着できる性質を有している。オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤とも呼ばれている)で硝酸吸着剤としては、例えば、複合金属水酸化物の結晶の加熱処理物を有効成分とするNi−Feを含む水酸化物から合成した層状複水酸化物(LDH)を有効成分とする硝酸吸着剤(特許文献5)を、リン酸吸着剤としてはMII 1−xIII (OH)n− ・mHOで表わされる複合金属水酸化物の結晶の加熱処理物を有効成分とするリン吸着剤を(特許文献6)を例に挙げることができる。
栄養塩類として硝酸を吸着する公知の硝酸吸着剤としては、例えば、トリブチルアミノ基含有のイオン交換樹脂(特許文献7)、黒鉛と硝酸の層間化合物(特許文献8)、三次元架橋高分子を基本骨格とし、基本骨格に二級アミン型置換基、および、三級アミン型置換基を化学結合した合成高分子吸着剤(特許文献9)、スチレンとジビニルベンゼンの三次元共重合体を基本骨格とし、そのベンゼン核の少なくとも一部に、リン酸エステル基とアミノ基を有することを特徴とするスチレン系三次元共重合体(特許文献10)などを用いることができる。またアンモニウムイオン吸着剤としてはゼオライトなどを用いることができる。
栄養塩類としてリンを吸着する公知のリン酸吸着剤としては、例えば、産業廃棄物の溶融処理で生成したスラグを鉄除去処理後、微粉砕し、その中の酸化カルシウムをアルカリ処理して除去し、多孔状にしたリン除去用無機吸着剤(特許文献11)、アロフェンを主成分とする物質を成形し、300〜600℃で焼成してなるリン除去材(特許文献12)、流動床ボイラーから排出される灰を主成分とする硬化体よりなる汚水の脱リン材(特許文献13)、ハイドロタルサイト類を有効成分とする水に溶存しているリンの除去剤(特許文献14)、石灰質原料、珪酸質原料及びゼオライトの反応生成物からなる脱リン材(特許文献15)、などを用いることができる。
吸着剤として、前述のようなリンを含む成分を吸着する吸着剤や窒素を含む成分を吸着する吸着剤のほか、硫黄を含む成分を吸着する吸着剤、ホウ素を含む成分を吸着する吸着剤等を使用することができる。
吸着剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。また、2種類以上の吸着剤を用いる場合、同様の効果を奏する吸着剤であってもよいし、異なる効果を奏する吸着剤であってもよい。例えば、リンを含む栄養塩類を吸着する吸着剤と窒素を含む栄養塩類を吸着する吸着剤との組み合わせが用いられる。
吸着剤の形態は、如何なる形態であってもよく、例えば、粉末、顆粒、タブレット、微粒子、粒子、膜状、糸状などが挙げられる。
本発明によれば、さらに、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、或いは/並びに、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品を備える、塩水中の栄養塩類の濃度低減装置が提供される。
本発明において、塩水は、海水と汽水を含む。塩水としては、例えば、魚類養殖槽由来の海水であり得るが、これに限定されない。
本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置を用いれば、例えば、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、尿素態窒素、有機態リン、無機態リン(オルトリン酸など)、珪素(珪酸など)からなる群より選択される少なくとも1種の栄養塩類の濃度が好適に低減され得る。
本発明によれば、上記の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置に加え、流路切り替え機、硝化菌を定着させた硝化槽、酸素供給槽、泡沫分離槽、沈殿槽、pH調製水槽、水温調整槽、ろ過槽、循環ポンプ、海藻生育槽及び生物飼育槽からなる群より選択される少なくとも1種をさらに備えることを特徴とする、塩水中の栄養塩類の濃度低減システムが提供される。
本発明によれば、前記の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、並びに、前記の塩水中の栄養塩類の濃度低減システムからなる群より選択されるいずれか1種において塩水を処理する工程を包含する、塩水中の栄養塩類の濃度低減方法が提供される。
本発明によれば、塩水中の栄養塩類の濃度低減方法により得られた、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水が提供される。本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水は、塩水中の栄養塩類濃度が高いと増殖が困難である生物、たとえば、外洋性の紅藻類大型海藻のキリンサイなどの飼育水として有用である。
本発明によれば、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の中で生産された外洋性生物が提供される。
本発明で製造される外洋性生物としては、貝類、藻類、原生動物、海綿動物、刺胞動物、有櫛動物などが挙げられる。
本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水を使用して生産された生物は、観賞用として用いることも出来るし、有用物質の原料として利用することもできる。例えば、外洋性の紅藻類大型海藻のキリンサイからは、有用なタンパク質や糖質などが得られる。また本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置は、方法あるいはシステムの方式として、バッチ式(バッチ方式)、間欠流れのかけ流し方式、連続かけ流し方式、あるいはそれらが組み合わさった方式、のいずれの方式の方法あるいはシステムにおいても使用することができる。また、かけ流し方式の場合には、流路切り替え弁を備えた塩水中の栄養塩類の濃度低減装置又はシステムを用いれば、効果的に栄養塩類の濃度を低減することができる。図4に流路切り替え弁及びこれを備える塩水中の栄養塩類の濃度低減装置の概略図を示す。流路切り替え弁は、通常、切り替えバルブ、弁、送液ポンプ等を備える。切り替えバルブとしては、多方向バルブを用いることができ、例えば、八方バルブ、六方バルブまたはそれらを組み合わせて用いることができる。弁は、電磁式であっても、手動式であってもよい。ポンプは、連続的に作動させてもよいし、一時的に(例えば、流路切り替えの前と後に)停止させてもよい。また、本発明の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置内は、必要に応じて、エアレーションを行ってもよい。
ユニット1(U1と表記)の右隣のユニットは図4ではユニット2(U2)となる。電磁弁は2つの3方切り替え弁により構成されている(図5)。各ユニットの流入口と流出口に3方切り替え弁は1個ずつ接続されている。電磁弁は手動の流路切り替え弁で代用してもよい。弁の流路切り替え操作の前あるいは後あるいは前と後でポンプを一旦停止してもよい。
図4と異なる流路切り替えプログラムを持つ栄養塩類濃度低減装置E(図6a)を用いて塩水中の栄養塩類の濃度低減を行うこともできる。
図4bと異なり、栄養塩類濃度の高い塩水が8方バルブAを通してU1の流入口と接続し、またU2の流出口から塩水が8方バルブBを通して環境への返還されている(図6a,図6b)。
一つのプログラム例を以下に述べる。
I 塩水送液開始から0〜6時間後
あらかじめ各ユニットには、塩水10リットルと適量の吸着剤が入っている。
各ユニットの流出口は、左となりのユニットの流入口と2つの流路切り替えバルブ(電磁弁でもよい)をはさんで接続されている(例えば、U1流出口はU8流入口と接続されている。)。ただし、U1流入口とU2流出口との間は切断されており、U1流入口は、8方バルブAを通して、栄養塩濃度の高い塩水の供給源とつながっている。
U2流出口は、8方バルブAを通して処理水用水槽につながっている。
この状態で、栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を栄養塩類濃度低減装置Eに流速40リットル/日で流し始める。栄養塩濃度の高い塩水の供給源からU1へ流し始めて6時間経過するまで、U2から流出する塩水は処理水用水槽にためられる。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
II 塩水送液開始から6〜12時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて6時間経過した時点で、II-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(II-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU1流入口からU2流入口へ変更する。
(II-2)U1流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U1流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U1流入口とU2流出口との流路を接続する。
(II-3)U3流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U3流出口とU2流入口との流路を切断し、U3流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(II-4)8方バルブBを切り替えてU3流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
III 塩水送液開始から12〜18時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて12時間経過した時点で、III-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(III-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU2流入口からU3流入口へ変更する。
(III-2)U2流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU3流出口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U2流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U2流入口とU3流出口との流路を接続する。
(III-3)U4流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU3流入口の切り替えバル
ブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U4流出口とU3流入口との流路を切断し、U4流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(III-4)8方バルブBを切り替えてU4流出口からの流水が処理水用水槽にたまるよう
に接続する。処理水用水槽海水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
IV 塩水送液開始から18〜24時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて18時間経過した時点で、IV-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(IV-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU3流入口からU4流入口へ変更する。
(IV-2)U3流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU4流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U3流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U3流入口とU4流出口との流路を接続する。
(IV-3)U5流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU4流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U5流出口とU4流入口との流路を切断し、U5流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(IV-4)8方バルブBを切り替えてU5流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
V 塩水送液開始から24〜30時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて24時間経過した時点で、V-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(V-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU4流入口からU5流入口へ変更する。
(V-2)U4流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU5流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U4流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U4流入口とU5流出口との流路を接続する。
(V-3)U6流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU5流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U6流出口とU5流入口との流路を切断し、U6流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(V-4)8方バルブBを切り替えてU6流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
Vにおいて、U6流出口から溶出する海水は、吸着剤による塩水中の栄養塩類濃度低減装置の中に24時間滞留した海水である。Vにおいて(栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて24経過して)、Iにおいて最初にU1に流入した塩水が栄養塩類濃度低減装置から溶出する。
VI 塩水送液開始から30〜36時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて30時間経過した時点で、VI-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(VI-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU5流入口からU6流入口へ変更する。
(VI-2)U5流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU6流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U5流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U5流入口とU6流出口との流路を接続する。
(VI-3)U7流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU6流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流出口とU6流入口との流路を切断し、U7流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VI-4)8方バルブBを切り替えてU7流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
VII 塩水送液開始から36〜42時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて36時間経過した時点で、VII-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(VII-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU6流入口からU7流入口へ変更する。
(VII-2)U6流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU7流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U6流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U6流入口とU7流出口との流路を接続する。
(VII-3)U8流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU7流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流出口とU6流入口との流路を切断し、U8流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VII-4)8方バルブBを切り替えてU7流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
VIII 塩水送液開始から42〜48時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて42時間経過した時点で、VIII-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(VIII-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU7流入口からU8流入口へ変更する。
(VIII-2)U7流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU8流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U7流入口とU8流出口との流路を接続する。
(VIII-3)U1流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU8流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U8流出口とU7流入口との流路を切断し、U1流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VIII-4)8方バルブBを切り替えてU1流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
IX 塩水送液開始から48〜54時間後
栄養塩濃度の高い塩水の供給源から塩水を流し始めて48時間経過した時点で、IX-1〜4の操作をほぼ同時に行う。
(IX-1)8方バルブAを切り替えて栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水流路をU8流入口からU1流入口へ変更する。
(VIII-2)U8流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU1流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U7流入口と8方バルブAとの流路を遮断し、U8流入口とU1流出口との流路を接続する。
(VIII-3)U2流出口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)とU1流入口の切り替えバルブ(電磁弁でも良い)を切り替えて、U1流出口とU8流入口との流路を切断し、U2流入口と8方バルブBとの流路を接続する。
(VIII-4)8方バルブBを切り替えてU2流出口からの流水が処理水用水槽にたまるように接続する。処理水用水槽塩水中の栄養塩類濃度を測定し、栄養塩類濃度が基準値以下であることを確かめて周辺水域(環境)へ返還する。
塩水の流れについていえば、IXの状態は元のIの状態と同じである。
X 塩水送液開始から54時間後以降
6時間毎に切り替えバルブ(電磁弁でも良い)2個と8方バルブAとB8方バルブBを切り替えることを繰り返し、塩水中の栄養塩類の濃度低減を行う。
各ユニット中で栄養塩類を吸収して増殖した吸着剤は、任意の時間に塩水中から隔離することができ、栄養塩類を吸着した吸着剤の代わりに新しい吸着剤を各ユニット内に投入することができる。その時期は吸着剤の栄養塩類吸着容量、ユニットへの吸着剤の導入量、塩水中の栄養塩類の濃度によって決めることもできる。
吸着剤の入ったユニットに栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水が導入されてから(Iの状態)、当該ユニットが8方バルブを通して処理水用水槽にたまるように接続されるまで(IXの状態)をめどとして吸着剤の交換をした場合、新規に導入された吸着剤は48時間にわたって塩水中の栄養塩類濃度低減に利用されることとなる。
図6の栄養塩類の濃度低減装置は、吸着剤による塩水中の栄養塩類の濃度低減処理の時間が48時間であり、図4の18時間に比較して長いため、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理装置Eよりでる処理海水の栄養塩濃度は、図4の塩水中の栄養塩類の濃度低減処理装置Cよりでる処理塩水の栄養塩濃度よりも低い。そのため、塩水中の栄養塩濃度が高濃度の場合に図4よりも有効な手段と考えられる。
特開2004−130200号公報(特許請求の範囲その他) 特願2004−89760号公報(特許請求の範囲その他) 米国特許第4,479,877号明細書(特許請求の範囲その他) 特公昭60−18605号公報(特許請求の範囲その他) 特開平5−15776号公報(特許請求の範囲その他) 特開平7−238113号公報(特許請求の範囲その他) 特開平3−68445号公報(特許請求の範囲その他) 特開昭63−39632号公報(特許請求の範囲その他) 特開平5−261378号公報(特許請求の範囲その他) 特開2000−24658号公報(特許請求の範囲その他) 特開2001−9470号公報(特許請求の範囲その他)
本発明は、酸性多糖類無機塩及びその製造方法、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品を提供する。本発明は、さらに、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維或いは/並びに吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品を利用する塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム、塩水中の栄養塩類の濃度低減方法、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水、並びに、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の中で生産された外洋性生物を提供する。
本発明の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維、或いは、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル製品及び/又は繊維製品は、吸着剤単独と比べて、(1)装置内で吸着剤が沈殿したり水流の遅い場所(例えば、装置の隅)に集ったりすることがないので、栄養塩類を効率よく濃度低減することができる、(2)吸着剤を酸性多糖類無機ゲル及び/又は繊維中に所定の分布(例えば、等間隔)で存在させることにより、栄養塩類をより効率的に濃度低減することができる、(3)微小サイズの吸着剤であっても、吸着剤を酸性多糖類無機ゲル及び/又は繊維ごと容易に回収することができる、(4)吸着剤による排水口フィルターの目詰まりを避けることができる、(5)吸着剤が酸性多糖類無機ゲル及び/又は繊維に支持(固定化)されているため、吸着剤同士が衝突することによるあるいは吸着剤が他の物質(例えば、装置の底又は側壁)と衝突することによる吸着剤の摩耗を防ぐことができ、持続的な塩水中の栄養塩類濃度低減効果を期待できる(6)特に、アルギン酸ゲル及び/又は繊維は、適度な親水性を有するため栄養塩類を含む塩水を適度に通し、優れたゲル及び/又は繊維強度を有するため吸着剤をしっかり支持することができ、塩水中での吸着剤の支持体として望ましい性質を有する、といった利点が得られる。さらに、(7)一般の合成ゲルが合成時に有害な試薬や有機溶媒の使用を避けられないのに対して、アルギン酸ゲルは、調製に有害な試薬が入らない。(8)アルギン酸カルシウムゲルなど酸性多糖類無機塩ゲルは、カチオンを交換することにより、容易に水溶性酸性多糖類水溶液に返還できるため、保持していた吸着剤の回収が可能である。合成ゲルでは、保持していた吸着剤の回収が困難なことが多い。(9)アルギン酸カルシウムゲルは、保持していた吸着剤を回収することが出来るため、吸着剤に吸着した栄養塩類の回収が可能である、といった利点が得られる。
更に、高純度酸性多糖類無機塩水溶液を用いて調製した酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維の場合は、夾雑無機カチオンを含む酸性多糖類無機塩水溶液を用いて調製した酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維よりも、ゲルの強度、繊維強度が強く、塩水耐性も高い利点が得られる。このため、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維からの保持している吸着剤の漏れが少ない。このことは、酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維が、アルギン酸カルシウムゲル及び/繊維で、酸性多糖類無機塩水溶液がアルギン酸ナトリウム水溶液の時に顕著である。
以下、本発明の実施例を記載するが、この実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
参考例1
食塩上級グレードの塩化ナトリウム結晶の純度;
食塩上級グレードの塩化ナトリウムの純度を測定した。塩化ナトリウム水溶液中のカチオンの定量、アニオンの定量には、適切な分析方法であればどんな分析方法を用いても良いが、本明細書ではナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンの定量については原子吸光分析により行い、硫酸イオン(SO 2−)、塩化物イオン(Cl)の定量についてはイオンクロマトグラフィーを用いて行った。なお、本明細書では、ナトリウム純度が99.86質量%以上99.90質量%未満の食塩を食塩上級グレードの塩化ナトリウムともいう。また市販されている食塩を市販食塩ともいう。
食塩上級グレードの塩化ナトリウム結晶1gを10ミリリットルの蒸留水に溶解して10%食塩水溶液を調製した。測定値は10ロットの食塩上級グレードの塩化ナトリウム結晶での実測値の平均である。食塩上級グレードの塩化ナトリウム結晶の化合物別質量%は、塩化ナトリウム99.8940質量%、硫酸カルシウム0.0010質量%、塩化カルシウム0.0120質量%、塩化マグネシウム0.0310質量%、塩化カリウム0.0620質量%であった。食塩上級グレードの塩化ナトリウム結晶のイオン別質量%はナトリウムイオン39.2903質量%、カルシウムイオン0.0046質量%、マグネシウムイオン0.0079質量%、カリウムイオン0.0252質量%であった。全無機カチオン(ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及びカリウムイオン:食塩上級グレードの塩化ナトリウム結晶中の39.34284質量%に相当)に対する各無機カチオンの質量%は、ナトリウムイオン99.8855質量%、カルシウムイオン0.0117質量%、マグネシウムイオン0.0201質量%、カリウムイオン0.0826質量%であった。即ち塩化ナトリウムの純度としては、塩化ナトリウム99.8940質量%、全無機カチオンに対する無機カチオン主成分の純度はナトリウムイオン99.8855質量%であった。なお、本発明では無機カチオンとは金属イオン又は陽性の塩基性基のことであり、水素イオンは含まれない。
参考例2
市販食塩の純度;
市販食塩についてナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの定量を原子吸光分析により行い、4種類の無機カチオン合計に対する各無機カチオンの質量%及びモル%を計算した。その結果、1Mの市販食塩水溶液中には、ナトリウムイオンが22274ppm(968.43mmol/l)、カリウムが20.14ppm(0.52mmol/l)、マグネシウムイオンが11.45ppm(0.47mmol/l)、カルシウムイオンが1.80ppm(0.04mmol/l)含まれていた。
1Mの市販食塩水溶液は、4種類の無機カチオン合計が22307.39ppm(969.46mmol/l)、ナトリウムイオンが99.85質量%(99.89モル%)、カリウムイオンが0.09質量%(0.05モル%)、マグネシウムイオンが0.05質量%(0.05モル%)、カルシウムイオンが0.01質量%(0.005モル%)であった。
このように市販食塩にはマグネシウムイオンやカルシウムイオンが不純分として含まれていることが明らかである。マグネシウムイオンやカルシウムイオンを塩化ナトリウム水溶液からソーダ灰のような薬品を添加して除去する方法が試みられたが、大量の塩化ナトリウムを処理するには、大規模な設備を必要とする上に、処理に長時間を要することが大きな問題になっていた。
参考例3
市販アルギン酸ナトリウムの純度
1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液の調製;
約1質量%(W/V)のアルギン酸ナトリウム水溶液を調製するために、5種類の市販アルギン酸ナトリウムA、B、C、D、Eをそれぞれ約3.3gずつ秤量し、蒸留水の入った300ミリリットルビーカーへ加え、そのまま30分間静置後、撹拌し、全容を300ミリリットルに調製し溶解させた。秤量した量は、市販アルギン酸ナトリウムAが3.3003g、アルギン酸ナトリウムBが3.3001g、アルギン酸ナトリウムCが3.3004g、アルギン酸ナトリウムDが3.2995g、アルギン酸ナトリウムEが3.3004gであった。
ナトリウムイオン濃度;
前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を10倍に希釈後、0.1規定の塩酸で100倍に希釈して、原子吸光分析にてして調製した前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のナトリウムイオン濃度を求めた。その結果、Aで1075.8ppm(46.77mmol/l)、Bで938.7ppm(40.81mmol/l)、Cで903.1ppm(39.27mmol/l)、Dで826.5ppm(35.93mmol/l)、Eで981.8ppm(42.69mmol/l)であった。ナトリウムの分子量を23.0として計算した。
夾雑無機イオン濃度;
前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を0.1規定の塩酸で10倍に希釈後、生じた沈殿をフィルタで除去後の液を分析試料として原子吸光分析によりカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオンの定量を行った。前記約1%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカリウムイオン濃度は、Aで10.35ppm(0.26mmol/l)、Bで4.99ppm(0.13mmol/l)、Cで13.70ppm(0.35mmol/l)、Dで73.85ppm(1.89mmol/l)、Eで5.75ppm(0.15mmol/l)であった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のマグネシウムイオン濃度は、Aで1.44ppm(0.059mmol/l)、Bで1.00ppm(0.041mmol/l)、Cで1.38ppm(0.057mmol/l)、Dで1.19ppm(0.049mmol/l)、Eで1.25ppm(0.051mmol/l)であった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカルシウムイオン濃度は、Aで4.14ppm(0.103mmol/l)、Bで13.66ppm(0.341mmol/l)、Cで3.00ppm(0.075mmol/l)、Dで10.99ppm(0.274mmol/l)、Eで13.28ppm(0.331mmol/l)であった。カリウムの分子量を39.1、マグネシウムの分子量を24.3、カルシウムの分子量を40.1として計算した。マンガンイオン、コバルトイオン、鉄イオン、ニッケルイオン、亜鉛イオンは検出限界以下であった。
以上のことから前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液には、無機カチオン主成分であるナトリウムイオンの他に、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが夾雑成分として含まれていることがあきらかである。アルギン酸ナトリウムが褐藻類由来であり、藻類の体内では2価の無機カチオンの塩として存在している。約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中の夾雑イオンは原料由来と考えられる。
ナトリウム純度;
ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの全無機カチオンに対する各無機カチオンの質量%及びモル%を計算した。
前記約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液Aでは全無機カチオン合計が1091.73ppm(47.19mmol/l)、ナトリウムイオンが98.54質量%(99.11モル%)、カリウムイオンが0.95質量%(0.55モル%)、マグネシウムイオンが0.13質量%(0.13モル%)、カルシウムイオンが0.38質量%(0.22モル%)であった。
前記約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液Bでは全無機カチオン合計が958.35ppm(41.32mmol/l)、ナトリウムイオンが97.95質量%(98.77モル%)、カリウムイオンが0.52質量%(0.31モル%)、マグネシウムイオンが0.10質量%(0.10モル%)、カルシウムイオンが1.43質量%(0.83モル%)であった。
前記約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液Cでは全無機カチオン合計が921.18ppm(39.75mmol/l)、ナトリウムイオンが98.04質量%(98.79モル%)、カリウムイオンが1.49質量%(0.88モル%)、マグネシウムイオンが0.15質量%(0.14モル%)、カルシウムイオンが0.33質量%(0.19モル%)であった。
前記約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液Dでは全無機カチオン合計が912.53ppm(38.14mmol/l)、ナトリウムイオンが90.57質量%(94.20モル%)、カリウムイオンが8.09質量%(4.96モル%)、マグネシウムイオンが0.13質量%(0.13モル%)、カルシウムイオンが1.20質量%(0.72モル%)であった。
前記約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液Eでは全無機カチオン合計が1002.08ppm(43.22mmol/l)、ナトリウムイオンが97.98質量%(98.77モル%)、カリウムイオンが0.57質量%(0.35モル%)、マグネシウムイオンが0.12質量%(0.12モル%)、カルシウムイオンが1.33質量%(0.77%)であった。
5種類の市販アルギン酸ナトリウムは、無機カチオン主成分であるナトリウム純度が90.57〜98.54質量%(94.20〜99.11モル%)であった。このことからナトリウム純度が質量99%未満の塩化ナトリウムを使用した透析では、前記市販アルギン酸ナトリウムの高純度化を効率的に行うことは困難であることが明らかである。
記載の市販食塩はナトリウム純度99質量%未満であるので、前記市販アルギン酸ナトリウムの高純度化のための透析液としては不適当である。
前記市販アルギン酸ナトリウムの高純度化のための透析液としては、塩化ナトリウム純度の高いほど効率がよいことが理解できる。
参考例4
異常吸着クロマト現象、疑似異常吸着クロマト現象;
本発明者らは、水溶性化合物水溶液から、その中に含まれている微量の不純物を効率よく除去するために鋭意研究を重ねた結果、あらかじめ不純物と同一の物質を含有させておいた吸着カラムを用いて、これに処理すべき水溶液を通液すれば、異常吸着クロマト現象を生じ、不純物濃度の大きい画分が形成され、これを除去することにより通過後の最終処理液として、微量不純物が除かれた純度の高い水溶性化合物を含む水溶液が得られることをすでに見出した(特許文献1)。
すなわち、少なくとも1種の微量不純物を含有する水溶性化合物水溶液を、その不純物を選択的に吸着する吸着剤を充填したカラムに通して、不純物を除去するに当り、異常吸着クロマト現象を起させて、原溶液中の微量不純物濃度よりも大きい不純物濃度を有する画分を形成させ、これを除去することを特徴とする溶液中の微量不純物除去方法である。
一般に、少なくとも1種の微量不純物を含む水溶性化合物水溶液、例えば微量のカリウムイオンを含む塩化ナトリウム水溶液を、カリウムイオンを選択的に吸着する吸着剤、例えばアンモニウムイオン型ゼオライトを充填したカラムに通す際に、この吸着剤にあらかじめ微量不純物と同じ物質、すなわちカリウムイオンを吸着させておくと、主成分たるナトリウムイオンが、細孔中に存在するカリウムイオンと置換し、これが不純物として含まれるカリウムイオンとともに流出し、もともと水溶液中に含まれているカリウムイオンの濃度よりも高濃度の画分が得られる。
この吸着剤に一時的に吸着されたナトリウムイオンは、後続の水溶液中のカリウムイオンと再び置換するが、この際活性化された吸着点を生成するために、通常の吸着クロマト現象の場合よりも多い量のカリウムイオンを吸着するという異常吸着クロマト現象を示す。
このような異常吸着クロマト現象を利用して、水溶性化合物水溶液中に含まれる微量不純物を除去して、純度の向上した水溶性化合物を得る方法である。
この異常吸着クロマト現象は、通常以下の過程の存在により特徴づけられている。すなわち、あらかじめ微量不純物を含む吸着剤を充填したカラムを用いてクロマトグラフィーを行った際に、
(1)カラムに微量不純物を含む所定物質の濃厚溶液を導入後、カラムからの溶出液体積がカラム体積の5倍に達するまでに、該微量不純物が富化された溶出液画分を生じる過程、
(2)次いでその微量不純物が単調減少する溶出液画分を生じる過程、
(3)引き続いて該微量不純物濃度が初濃度(原液中の濃度)よりも小さな値で一定となる溶出液画分を生じる過程、
(4)さらに引き続いて該不純物濃度が初濃度よりも小さい値で単調増加する溶出液画分を生じる過程、及び
(5)場合により該不純物濃度が初濃度よりも大きい値となる溶出液画分を生じる過程。
なお、この溶液中の微量不純物除去方法においては、上記の(1)ないし(5)の過程のうちの(1)の過程を欠く異常吸着クロマト現象(以下擬似異常吸着クロマト現象という)についても同様に利用可能である。
この溶液中の微量不純物除去方法で処理される微量不純物を含有する水溶性化合物水溶液としては、様々な水溶液に適応できるが無機塩水溶液が好ましい。この水溶性化合物水溶液の濃度としては、その水溶性化合物の種類、使用する吸着剤の種類、クロマトグラフィー条件、例えば温度、圧力、カラムへの通液速度などにより変わるが、通常は1質量%を下限とし、上限は飽和濃度の範囲、好ましくは2〜30質量%の範囲内、より好ましくは2〜10質量%の範囲内で選ばれる。
また、この水溶性化合物水溶液中に主成分以外の成分として含まれる微量不純物の濃度としては、主成分の水溶性化合物の濃度の20分の1以下、好ましくは50分の1以下が望ましい。
この溶液中の微量不純物除去方法において用いられる吸着剤としては、除去しようとする水溶液中の微量不純物の種類により左右されるが、不純物が金属イオンの場合は、陽イオン型ゼオライト、例えばアンモニウムイオン型ゼオライト、H型天然ゼオライトなどやカチオン交換樹脂が用いられるし、微量不純物が有機物の場合は、シリカゲル、アルミニウムオキシド、活性炭、セルロース、化学修飾シリカゲル、セファデックス、ポリアクリルアミドゲルなどが用いられる。これらの吸着剤は通常粒径0.1〜2.5mmの粒子として用いられる。また、この通液の際の線速度としては、通常、0.1〜300cm/hr、好ましくは0.1〜100cm/hrの範囲で選ばれる。
この溶液中の微量不純物除去方法においては、不純物を選択的に吸着する吸着剤に、あらかじめ不純物と同じ物質を吸着させておくことが必要である。この場合の吸着量としては、吸着剤1g当り1.0〜10μmolの範囲が好ましい。なお、この場合、吸着剤として既に不純物と同じ物質を吸着しているものを用いれば、特に不純物と同じ物質を吸着させる処理を行う必要はない。
この溶液中の微量不純物除去方法を好適に行うには、カラムに通した水溶性化合物水溶液のカラム溶出液全画分を分取し、各画分中における所望成分の濃度を測定し、濃度が近似している画分を捕集する。そして、このように、特定成分の濃縮された画分をまとめて採取することにより、所望成分の濃縮溶液を得ることができるし、また微量不純物の濃度が初濃度に比べ、低い溶出液画分を捕集することにより、高純度の水溶性化合物を得ることができる。
さらに、カラムに一時的に吸着された所定成分を適当な溶離液により脱離させることにより、その成分を濃縮した溶液を得ることもできる。
この溶液中の微量不純物除去方法の好適な実施態様を、微量カリウム塩を含む濃度2.3質量%のナトリウム塩水溶液を例にして説明すると、まずあらかじめカリウムイオンを吸着させた吸着剤、例えば陽イオン型ゼオライトに上記水溶液を通すと、吸着剤に吸着していたカリウムイオンが移動相に溶出し、カラムに導入した溶出液の体積がカラム体積の5倍に達するまでの画分(以下最初の画分という)において、原液中の不純物濃度よりも高濃度になる。その後、さらに水溶液の通液を続けると、移動相から吸着剤への微量不純物の吸着量が、吸着剤から移動相への微量不純物の脱着量より多くなり、原液中の濃度よりも低濃度の溶出液画分が現れる。この際の微量不純物の濃度変化は、原液濃度の100倍以上から100分の1以下の範囲で変動するが、破過点に達すると、通常の吸着クロマトグラフィーにおける破過曲線と同様、原液濃度まで上昇し、条件によってはそれ以上にもなる。
この溶液中の微量不純物除去方法における操作は、通常の吸着クロマトグラフィーの場合と全く同様にして行うことができる。この際の操作条件としては、通常、室温、大気圧下が選ばれる。
この溶液中の微量不純物除去方法において、異常吸着クロマト現象が起っているかどうかは、カラム溶出液の各画分を分取し、分析することによって確認することができる。
次に例によりこの溶液中の微量不純物除去方法をさらに詳細に説明する。
送液ポンプ、吸着剤カラム及びフラクションコレクターからなる装置を用いて、不純物としてカリウムイオン13mg/リットル、マグネシウムイオン4mg/リットル、カルシウムイオン2mg/リットルを含む1M−塩化ナトリウム水溶液からの不純物の分離を行った。
すなわち、ガラス製カラム(内径50mm、高さ200mm)のカラムに、吸着剤として、カリウムイオン約7μmol/gを吸着したH型天然ゼオライト(サンゼオライト社製、クリノプチロライト、商品名「サンゼオライト」、平均粒径0.5mm)を70mmの高さまで充填し、温度50℃において流速1ml/分で上記の塩化ナトリウム水溶液を通液した。
次いで、カラムからの溶出液を2mlずつの画分に分取し、各画分についてカリウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度及びカルシウムイオン濃度を定量分析し、その結果をグラフとして図1に示した。図中、Aはカリウムイオン、Bはマグネシウムイオン、Cはカルシウムイオンのグラフである。
図1の縦軸は溶出液中のカリウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度(mg/リットル)、横軸はカラム体積に対する溶出液体積の比である。この図から初期段階で、カリウムイオン、マグネシウムイオンが濃縮された画分が溶出し、その後カリウムイオン、マグネシウムイオンが除去された画分が溶出していることが分る。また、カルシウムイオンについては、濃縮されることなく除去されていることが分る。
この溶液中の微量不純物除去方法に従って、微量不純物を含む水溶性化合物水溶液を、微量不純物に選択的な吸着剤を充填したカラムに導入することにより、異常吸着クロマト現象を利用し、効率よく微量不純物を除去することができる。さらに、吸着剤の再生処理時に微量成分の濃縮も可能であり、しかも吸着剤は繰り返し使用することができる。
参考例5
純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の塩化ナトリウム結晶を得る方法;
次に、本発明者らは、塩化ナトリウム水溶液から、その中に不純物として含まれているカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンを効率よく除去するために鋭意研究を重ねた結果、あらかじめこれらのイオンと同一のイオンを含有させておいた吸着カラムを用いて、これに処理すべき塩化ナトリウム水溶液を通液すれば、異常吸着クロマト現象を生じ、不純物濃度の大きい画分が形成され、これを除去することにより通過後の最終処理液として、不純物が除かれた塩化ナトリウムを含む水溶液を生じるので、これから塩化ナトリウム結晶を晶出させ、固液分離工程、乾燥工程を行うと、純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を分離回収しうることを見出した(特許文献2)。
すなわち、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの中から選ばれた少なくとも1種のイオンを微量不純物として含有する固形分含有量50g/リットル以上の濃厚塩化ナトリウム水溶液を、その中に含まれているカリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの中から選ばれた少なくとも1種のイオンに対して選択的な吸着性を示す吸着剤を充填したカラムに通液し、異常吸着クロマト現象を利用して微量不純物を除去する処理を行い、次いでこの処理液から塩化ナトリウムを晶出させ、固液分離工程、乾燥工程を行うことにより分離回収することを特徴とする純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶の製造方法である。
一般に、微量のカリウムイオンを含む塩化ナトリウム水溶液を、カリウムイオンを選択的に吸着する吸着剤、例えばアンモニウムイオン型ゼオライトを充填したカラムに通す際に、この吸着剤にあらかじめカリウムイオンを吸着させておくと、主成分たるナトリウムイオンが、細孔中に存在するカリウムイオンと置換し、もともと水溶液中に含まれているカリウムイオンとともに流出し、水溶液中に含まれているカリウムイオンの濃度よりも高濃度の画分が得られる。
この吸着剤に一時的に吸着されたナトリウムイオンは、後続の水溶液中のカリウムイオンと再び置換するが、この際活性化された吸着点を生成するために、通常の吸着クロマト現象の場合よりも多い量のカリウムイオンを吸着するという異常吸着クロマト現象を示す。
この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法は、このような異常吸着クロマト現象を利用して、塩化ナトリウム水溶液中に含まれるカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンのような微量不純物を除去して、純度の向上した塩化ナトリウムを得る方法である。
この異常吸着クロマト現象は、通常以下の過程の存在により特徴づけられている。すなわち、あらかじめ微量不純物と同じ物質を含む吸着剤を充填したカラムを用いてクロマトグラフィーを行った際に、
(1)カラムに微量不純物を含む所定物質の濃厚溶液を導入後、カラムからの溶出液体積がカラム体積の5倍に達するまでに、該微量不純物が富化された溶出液画分を生じる過程、
(2)次いでその微量不純物が単調減少する溶出液画分を生じる過程、
(3)引き続いて該微量不純物濃度が初濃度(原液中の濃度)よりも小さな値で一定となる溶出液画分を生じる過程、
(4)さらに引き続いて該不純物濃度が初濃度よりも小さい値で単調増加する溶出液画分を生じる過程、及び
(5)場合により該不純物濃度が初濃度よりも大きい値となる溶出液画分を生じる過程。
なお、この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法においては、上記の(1)ないし(5)の過程のうちの(1)の過程を欠く異常吸着クロマト現象(以下擬似異常吸着クロマト現象という)についても同様に利用可能である。
この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法において、原料として用いられる塩化ナトリウム水溶液の濃度としては、使用する吸着剤の種類、クロマトグラフィー条件、例えば温度、圧力、カラムへの通液速度などにより変わるが、通常は1質量%を下限とし、上限は飽和濃度の範囲内、好ましくは2〜30質量%の範囲内で、通常は固形分含有量50g/リットル以上で選ばれる。
一方、この塩化ナトリウム水溶液中に含まれる微量不純物の濃度は、主成分の塩化ナトリウムの濃度の20分の1以下、好ましくは50分の1以下である。
この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法において用いる吸着剤としては、シリカゲル、アルミナなど通常のクロマトグラフィーで用いられている吸着剤を用いてもよいが、カリウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンに対して優れた吸着性を示すイオン交換性物質、例えばアンモニウムイオン型ゼオライトやセルロース性イオン交換体やセファデックスイオン交換体などが好適である。これらは通常粒径0.2〜2.0mmの粒子としてクロマトグラフィー管、すなわちカラム中に充填して用いられる。
この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法においては、異常クロマト現象を利用する関係上、上記の吸着剤に、あらかじめ微量不純物と同じ物質を吸着させておくことが必要であるが、この場合の吸着量としては、吸着剤1g当り1.0〜10μmolの範囲が好ましい。なお、この場合、吸着剤として既に不純物と同じ物質を吸着しているものを用いれば、特に不純物と同じ物質を吸着させる処理を省くことができる。
この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法は、この吸着剤を充填したカラムに、先ずカリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの中から選ばれた1種又は2種以上の金属イオンを吸着させ、次いでこれに所定の濃厚塩化ナトリウム水溶液を通すことによって行われる。この際の通液速度としては、通常、線速度で0.1〜300cm/hr、好ましくは0.1〜100cm/hrの範囲が用いられる。この通液に際しては、所望により加圧又は減圧して通過を促進することもできる。
このようにして、最終的に不純物濃度が固形分質量に基づき1質量%以下の高純度塩化ナトリウムを得ることができる。そして、濃厚塩化ナトリウム水溶液を通した後の不純物を吸着した吸着剤カラムは、例えば塩化水素又は塩化アンモニウムの水溶液を通液することによって再生し、再利用することができる。また、この際、カリウムイオンが富化した画分同士、マグネシウムイオンが富化した画分同士、あるいはカルシウムイオンが富化した画分同士を集め、上記の再生操作を行えば、それぞれカリウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンに富んだ画分を得ることができるので、これを濃縮すれば、それぞれに対応する塩、すなわち塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムを回収することができる。この再生に用いられる塩化水素水溶液又は塩化アンモニウム水溶液の濃度には特に制限はないが、取り扱いやすさの点で0.55M−濃度の範囲が適当である。
次に、カラムを通して不純物を除去した後の濃厚塩化ナトリウム水溶液から塩化ナトリウム結晶を得るには、蒸発乾固するのが最も普通であるが、そのほか、処理液にアルコール類、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどを加えて塩化ナトリウムを晶出させてもよい。またさらに処理液に水酸化ナトリウムを加えて沈殿を生成させ、次いでこの沈殿をろ去後、アルコール類を加えて塩化ナトリウムを晶出させることにより、さらに高純度の塩化ナトリウムを得ることもできる。
例えば、カリウムイオン濃度の低い画分を集め、濃縮後、アルコール類(好ましくはエチルアルコール)を添加することで、塩化ナトリウムの結晶を得ることができる。塩化ナトリウムが濃厚(20%以上)であれば、濃縮することなく、結晶を得ることも可能である。すなわち、塩化ナトリウム濃厚溶液にアルコール類(好ましくはエチルアルコール)を添加することにより、高収率で塩化ナトリウムの結晶を得ることができる。通常の条件では、塩化ナトリウム純度が低いため、不純物の混入により純度低下が考えられるが、元の母液が塩化ナトリウム純度99.95質量%以上の高純度溶液であるため、カリウム、カルシウム、マグネシウムの混入による純度低下は、ほとんど認められない。
このアルコール類添加による超高純度塩化ナトリウム(塩化ナトリウム純度:99.99質量%以上)の結晶化は、また、マグネシウムイオン選択的イオン交換体処理後のマグネシウムイオン除去画分からの超高純度塩化ナトリウム結晶化あるいはカルシウムイオン選択的イオン交換体処理後のカルシウムイオン除去画分から超高純度塩化ナトリウム(塩化ナトリウム純度:99.99質量%以上)の結晶化のなどにも有効である。
この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法を好適に行うには、不純物成分であるカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンのうち1種類以上のイオンを含む濃厚塩化ナトリウム水溶液(蒸発乾固物含有量100g/リットル、蒸発乾固物中の塩化ナトリウム純度は90質量%以上)のカラム溶出液の全画分を分取し、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンのうち1種類以上のイオンの濃度を分析し、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンのうち1種類以上のイオン濃度の類似した画分を集めることである。初濃度に比べカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンのイオン濃度の低い画分を集めることにより、さらに濃厚な塩化ナトリウム母液を得ることができる。
このようにして得られた濃厚な塩化ナトリウム母液を蒸発晶析又は反応晶析などにより晶析することにより、超高純度塩化ナトリウム(塩化ナトリウム純度:99.99質量%以上)を製造することができる。
そして、この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法においては、カリウムイオンの選択的イオン交換体を用いた場合、対カチオンとして、アンモニウムイオン又はプロトンが適当である。カリウムイオンの選択的イオン交換体は、カリウムイオンと親和性が高いため、塩酸処理のみでは、カリウムイオンを充分除去することができない。そのため、カリウムイオンと類似したイオン半径を有するアンモニウムイオンとのイオン交換処理(好ましくは塩化アンモニウム溶液による処理)は有効である。
アンモニウムイオン型を直接カリウムイオン除去に用いることは可能であるが、塩化ナトリウム結晶化の際に塩化アンモニウムが混入する可能性がある。その点、プロトン型にしておくと、塩酸は析出することはないので、高純度塩化ナトリウムを得ることが保証される。ただし、塩酸処理を行うと吸着剤が溶解し、構成元素が溶出しやすくなるので、充分洗浄することが必要である。この塩酸洗浄は、上記に限定されず、マグネシウムイオン選択的イオン交換体を用いた場合のマグネシウムイオン除去あるいはカルシウムイオン選択的イオン交換体を用いた場合のカルシウムイオン除去などにも有効である。
次に例によりこの純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法をさらに詳細に説明する。
送液ポンプ、吸着剤カラム及びフラクションコレクターからなる装置を用いて、不純物としてカリウムイオン9mg/リットル、マグネシウムイオン1mg/リットル、カルシウムイオン0.8mg/リットルを含む30質量%塩化ナトリウム水溶液からの不純物の除去を行った。
すなわち、ガラス製カラム(内径10mm、高さ500mm)のカラムに、吸着剤として、アンモニウムイオン型天然ゼオライト(オクタゼオライト社製、クリノプチロライト、商品名「オクタゼオライト」、平均粒径0.5mm)を450mmの高さまで充填し、温度50℃において線速度9cm/hrで上記の塩化ナトリウム水溶液を通液した。
このようにして、カラム体積に対する溶出液体積の比と各成分濃度(mg/リットル)との関係を求め、グラフとして図2に示した。この図から、カリウムイオンについて著しい異常吸着クロマト現象が起っていることが認められ、0.05mg/リットルまでカリウムイオン濃度の低下していることが分る。
次に、カリウムイオンの低い画分を集め、2倍体積量のエチルアルコールを添加し、結晶を析出させることにより、高純度塩化ナトリウム結晶を得た。
このようにして得た高純度塩化ナトリウム結晶を真空乾燥後、水に溶解して10質量%水溶液とした。これについて、原子吸光光度法で分析したところ、カリウムイオン濃度0.3mg/リットル、マグネシウムイオン濃度0.03mg/リットル、カルシウムイオン濃度0.04mg/リットルであった。
この純度98質量%以上、特に純度99.99質量%以上の高純度の塩化ナトリウム結晶を得る方法によれば、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンの中から選ばれた少なくとも1種の不純物を含む濃厚塩化ナトリウム水溶液から、異常吸着クロマト現象を利用することにより、高純度の塩化ナトリウム結晶を得ることができる。
食塩上級グレード塩化ナトリウムから透析液用塩化ナトリウムの精製;
食塩上級グレードの塩化ナトリウムを蒸留水に溶解して、食品上級グレードの1M塩化ナトリウム水溶液を調製した。送液ポンプ、吸着剤カラム及びフラクションコレクターからなる装置を用いて、不純物としてカリウムイオン18.99mg/リットル、マグネシウムイオン4.63mg/リットル、カルシウムイオン2.70mg/リットルを含む1M−食塩上級グレードの塩化ナトリウム水溶液からの不純物の分離を行った。
すなわち、ガラス製カラム(内径50mm、高さ200mm)のカラムに、吸着剤として、カリウムイオン約7μmol/gを吸着したH型天然ゼオライト(サンゼオライト社製、クリノプチロライト、商品名「サンゼオライト」、平均粒径0.5mm)を70mmの高さまで充填し、温度25℃において流速1ml/分で上記の塩化ナトリウム水溶液を通液した。
次いで、カラムからの溶出液を2mlずつの画分に分取し、各画分についてカリウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度及びカルシウムイオン濃度を定量分析し、その結果をグラフとして図3に示した。図中、中抜きの丸はカリウムイオン、中抜きの四角はマグネシウムイオン、中抜きの三角はカルシウムイオンのグラフである。
図3の縦軸は溶出液中のカリウムイオン濃度、マグネシウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度(mg/リットル)、横軸はカラム体積に対する溶出液体積の比である。この図から初期段階で、カリウムイオン、マグネシウムイオンが濃縮された画分が溶出し、その後カリウムイオン、マグネシウムイオンが除去された画分が溶出していることが分る。この図から、カリウムイオンについて著しい異常吸着クロマト現象が起っていることが認められ、0.33mg/リットルまでカリウムイオン濃度の低下していることが分る。マグネシウムイオンに関しては、カラムに1M−食塩上級グレードの塩化ナトリウム水溶液を導入後、カラムからの溶出液体積がカラム体積の5倍に達するまでに、マグネシウムイオンが富化された溶出液画分を生じる過程、次いでマグネシウムイオンが単調減少する溶出液画分を生じる過程を取り、2.29mg/リットルまでマグネシウムイオン濃度が低下していることが分かる。また、カルシウムイオンについては、カルシウムイオンが単調減少する溶出液画分を生じる過程を最初に取り、濃縮されることなく除去されていることが分る。カルシウムイオン濃度は、0.40mg/リットル以下まで低下していることが分かる。
カリウムイオン濃度が0.50mg/リットル以下、マグネシウムイオン濃度が3.80mg/リットル以下、カルシウムイオン濃度が0.35mg/リットル以下のフラクションを集めた。フラクション番号750番からフラクション番号1350番に相当するフラクションを集め、ロータリーエバポレーターで濃縮したのち、エチルアルコールを添加し、結晶を析出させた。この結晶をろ別し、エチルアルコールで洗浄後、乾燥し、高純度塩化ナトリウム結晶を得た。
このようにして得た塩化ナトリウム結晶を水に溶解して分析し化合物別質量%を求めたところ、塩化ナトリウムが99.99984質量%、塩化カリウムが0.000014質量%、塩化マグネシウムが0.00010質量%、塩化カルシウムが0.000043質量%であった。イオン別質量%は、ナトリウムイオンが39.3394質量%、カリウムイオンが0.000007質量%、マグネシウムイオンが0.000026質量%、カルシウムイオンが0.000016質量%であった。全無機カチオン(ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及びカリウムイオン:精製した高純度塩化ナトリウム結晶中の39.339449質量%に相当)に対する各無機カチオンの質量%は、ナトリウムイオンが99.99988質量%、カリウムイオンが0.000018質量%、マグネシウムイオンが0.000066質量%、カルシウムイオンが0.000041質量%であった。即ち塩化ナトリウムの純度としては、塩化ナトリウム濃度99.99984質量%、全無機カチオンに対する無機カチオン主成分の純度はナトリウムイオンが99.99988質量%であった。
食塩上級グレード塩化ナトリウムから透析液用塩化ナトリウムを精製する前記操作を繰り返し、高純度アルギン酸ナトリウムを得るための透析液用高純度塩化ナトリウム結晶を回収し、保存した。
透析液として高純度塩化ナトリウムを使用したアルギン酸ナトリウムの高純度化;
実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した1M−塩化ナトリウム水溶液に対して、参考例3記載の約1質量%(W/V)の市販アルギン酸ナトリウム水溶液B,約1質量%(W/V)の市販アルギン酸ナトリウム水溶液C,及び約1質量%(W/V)の市販アルギン酸ナトリウム水溶液Eを透析することにより、アルギン酸ナトリウムの高純度化を試みた。
透析法によるアルギン酸ナトリウムの高純度化は次に示す工程(1)から(4)を含む操作により行った。
(1)高純度ナトリウム水溶液による透析工程
前記約1質量%の3種類の市販アルギン酸ナトリウム水溶液B、C,及びEをそれぞれ別々のディスポーザブル透析カセット(分画分子量は3,500、材質は再生セルロース、厚さは25ミクロン、容積である。PIERCE社製)に3ミリリットルずつ注入し、カセットにブイを取り付け、実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した1M−塩化ナトリウム水溶液3リットルの入ったそれぞれ別々の3リットルビーカーに付けて、スターラーバーで透析外液を撹拌しながら、透析を行った。透析外液は適当な時間で交換した。透析時間は透析が効率的に行われれば適当な時間でよいが、実施例2では、20時間透析した。
(2)蒸留水による透析工程
次いで、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の詰まったディスポーザブル透析カセットを3リットルビーカーから取り出し、蒸留水1リットルが入った1リットルビーカーに付け、スターラーバーで透析外液を撹拌しながら、透析を行った。1時間毎に、透析外液である蒸留水を取り替えて透析を行った。透析外液中の塩化物イオン(Cl)をイオンクロマトグラフィーで定量し、透析内液中の塩化物イオン(Cl)が十分除かれるまでこの工程を続けた。
(3)透析内液の取り出し工程
透析外液中の塩化物イオン(Cl)が十分除かれたら、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の詰まったディスポーザブル透析カセットを1リットルビーカーから取り出し、透析内液を注射器で取り出した。
(4)透析内液の濃縮工程
透析内液は、透析操作により体積が上昇しているので、透析前の体積まで濃縮した。アルギン酸ナトリウム水溶液の濃縮は様々な方法で行えるが、低温での自然乾燥(風乾)や真空乾燥機中での乾燥が好ましく、また低温でロータリーエバポレーターを使用して濃縮すると時間の節約になる。
前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Bを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液B1を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Cを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液C1を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Eを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液E1を得た。次に透析処理液B1、C1、E1の純度を測定した。
ナトリウムイオン濃度;
市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B1でのナトリウムイオン濃度は938.6ppm(40.81mmol/l)、透析処理液C1でのナトリウムイオン濃度は903.0ppm(39.26mmol/l)、透析処理液E1でのナトリウムイオン濃度は981.7ppm(42.68mmol/l)であった。
夾雑無機イオン濃度;
前記透析処理液(約1質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液)中のカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの定量を原子吸光分析により行った。
その結果、カリウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B1、C1、E1とも、0.175ppm以下(0.0045mmol/l以下)であった。
マグネシウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B1、C1、E1とも、0.10ppm以下(0.0041mmol/l以下)であった。
カルシウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)B1、C1、E1とも、0.20ppm以下(0.0050mmol/l以下)であった。
以上のことから市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B1、C1、及びE1には、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが、合計で0.475ppm以上(0.0136mmol/l以上)含まれていないことが明らかである。
ナトリウム純度;
参考例3の結果から前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカリウムイオン濃度は、Bで4.99ppm(0.13mmol/l)、Cで13.70ppm(0.35mmol/l)、Eで5.75ppm(0.15mmol/l)であった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のマグネシウムイオン濃度は、Bで1.00ppm(0.041mmol/l)、Cで1.38ppm(0.057mmol/l)、Eで1.25ppm(0.051mmol/l)であった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカルシウムイオン濃度は、Bで13.66ppm(0.341mmol/l)、Cで3.00ppm(0.075mmol/l)、Eで13.28ppm(0.331mmol/l)であった。
高純度塩化ナトリウム水溶液による透析処理により、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の透析処理液中のカリウムイオンは0.175ppm以下(0.0045mmol/l以下)、マグネシウムイオンは0.10ppm以下(0.0041mmol/l以下)、カルシウムイオンは0.20ppm以下(0.0050mmol/l以下)に低減されている。以上のことから、実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した高純度塩化ナトリウム水溶液を透析液に用いた透析処理により、アルギン酸ナトリウムの純度が予想以上に上昇していることが分かる。実施例1で精製した塩化ナトリウム純度99.999質量%以上の高純度塩化ナトリウム結晶から調製した高純度塩化ナトリウム水溶液を透析液に用いた透析処理により夾雑イオンであるカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンを低減した高純度アルギン酸ナトリウム水溶液が得られていることが明らかである。アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B1はナトリウム純度が99.94質量%以上(99.96モル%以上)、C1はナトリウム純度が99.94質量%以上(99.96モル%以上)、E1はナトリウム純度が99.95質量%以上(99.96モル%以上)であることが明らかである。
前記市販アルギン酸ナトリウムの高純度化のためには、透析液として使用する塩化ナトリウム水溶液の塩化ナトリウム純度が高いほど高純度化の効率がよいことが理解できる。
安価な食添用アルギン酸ナトリウムから、簡単に高純度アルギン酸ナトリウムを得ることができている。
実施例2の変法;
さらに、高純度ナトリウム水溶液による透析工程において20時間の透析処理を行う代わりに5時間の透析処理を行なったこと以外は、上記と同様の方法により、下記の通りアルギン酸ナトリウムの高純度化をおこなった。
前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Bを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液B2を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Cを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液C2を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Eを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液E2を得た。次に透析処理液B2、C2、E2の純度を測定した。
ナトリウムイオン濃度;
市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B2でのナトリウムイオン濃度は938.6ppm(40.81mmol/l)、透析処理液C2でのナトリウムイオン濃度は903.0ppm(39.26mmol/l)、透析処理液E2でのナトリウムイオン濃度は981.7ppm(42.68mmol/l)であった。
夾雑無機イオン濃度;
前記透析処理液(約1質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液)中のカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの定量を原子吸光分析により行った。
その結果、カリウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B2、C2、E2とも、0.700ppm以下(0.0180mmol/l以下)であった。
マグネシウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B2、C2、E2とも、0.400ppm以下(0.0164mmol/l以下)であった。
カルシウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B2、C2、E2とも、0.800ppm以下(0.020mmol/l以下)であった。
以上のことから市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B2、C2、及びE2には、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが、合計で1.900ppm以上(0.0544mmol/l以上)含まれていないことが明らかである。
高純度塩化ナトリウム水溶液による透析処理により、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の透析処理液中のカリウムイオンは0.700ppm以下(0.0180mmol/l以下)、マグネシウムイオンは0.400ppm以下(0.0164mmol/l以下)、カルシウムイオンは0.800ppm以下(0.0200mmol/l以下)に低減されている。以上のことから、実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した高純度塩化ナトリウム水溶液を透析液に用いた透析処理により、アルギン酸ナトリウムの純度が予想以上に上昇していることが分かる。実施例1で精製した塩化ナトリウム純度99.999質量%以上の高純度塩化ナトリウム結晶から調製した高純度塩化ナトリウム水溶液を透析液に用いた透析処理により夾雑イオンであるカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンを低減した高純度アルギン酸ナトリウム水溶液が得られていることが明らかである。アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B2はナトリウム純度が99.79質量%以上(99.86モル%以上)、C2はナトリウム純度が99.79質量%以上(99.86モル%以上)、E2はナトリウム純度が99.80質量%以上(99.87モル%以上)であることが明らかである。
短時間の透析処理によってもアルギン酸ナトリウム水溶液を純度99.85モル%以上に精製することができることが明らかである。
透析液としてキレート溶液及び高純度塩化ナトリウムを使用したアルギン酸ナトリウムの高純度化;
実施例2の透析工程(1)にて透析液として、実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した1M−塩化ナトリウム水溶液を使用する代わりに、実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した0.1M−塩化ナトリウム水溶液に0.05Mエチレンジアミン四酢酸ナトリウムを含んだ液に対して、参考例3記載の約1質量%(W/V)の市販アルギン酸ナトリウム水溶液B,約1質量%(W/V)の市販アルギン酸ナトリウム水溶液C,及び約1質量%(W/V)の市販アルギン酸ナトリウム水溶液Eを透析することにより、アルギン酸ナトリウムの高純度化を試みた。
透析法によるアルギン酸ナトリウムの高純度化は次に示す工程(1)から(5)を含む操作により行った。
(1)高純度ナトリウム水溶液による透析工程
前記約1質量%の3種類の市販アルギン酸ナトリウム水溶液B、C,及びEをそれぞれ別々のディスポーザブル透析カセット(分画分子量は3,500、材質は再生セルロース、厚さは25ミクロン、容積である。PIERCE社製)に3ミリリットルずつ注入し、カセットにブイを取り付け、実施例1で精製した0.1M−塩化ナトリウム水溶液に0.05Mエチレンジアミン四酢酸ナトリウムを含んだ液3リットルの入ったそれぞれ別々の3リットルビーカーに付けて、スターラーバーで透析外液を撹拌しながら、透析を行った。透析時間は透析が効率的に行われれば適当な時間でよいが、実施例3では、20時間透析した。
(2)実施例1で精製した0.1M−塩化ナトリウム水溶液による透析工程
次いで、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の詰まったディスポーザブル透析カセットを3リットルビーカーから取り出し、実施例1で精製した0.1M−塩化ナトリウム水溶液3リットルの入った3リットルビーカーに付け、スターラーバーで透析外液を撹拌しながら、透析を行った。透析時間は透析が効率的に行われれば適当な時間でよいが、実施例3では、20時間透析した。
(3)蒸留水による透析工程
次いで、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の詰まったディスポーザブル透析カセットを3リットルビーカーから取り出し、蒸留水1リットルが入った1リットルビーカーに付け、スターラーバーで透析外液を撹拌しながら、透析を行った。1時間毎に、透析外液である蒸留水を取り替えて透析を行った。透析外液中の塩化物イオン(Cl)をイオンクロマトグラフィーで定量し、透析内液中の塩化物イオン(Cl)が十分除かれるまでこの工程を続けた。
(4)透析内液の取り出し工程
透析外液中の塩化物イオン(Cl)が十分除かれたら、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の詰まったディスポーザブル透析カセットを1リットルビーカーから取り出し、透析内液を注射器で取り出した。
(5)透析内液の濃縮工程
透析内液は、透析操作により体積が上昇しているので、透析前の体積まで濃縮した。アルギン酸ナトリウム水溶液の濃縮は様々な方法で行えるが、低温での自然乾燥(風乾)や真空乾燥機中での乾燥が好ましく、また低温でロータリーエバポレーターを使用して濃縮すると時間の節約になる。
前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Bを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液B3を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Cを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液C3を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Eを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液E3を得た。次に透析処理液B3、C3、E3の純度を測定した。
ナトリウムイオン濃度;
市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)B3でのナトリウムイオン濃度は938.4ppm(40.80mmol/l)、透析処理液C3でのナトリウムイオン濃度はCで902.8ppm(39.25mmol/l)、透析処理液E3でのナトリウムイオン濃度は981.5ppm(42.67mmol/l)であった。
夾雑無機イオン濃度;
前記透析処理液(約1質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液)中のカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの定量を原子吸光分析により行った。
その結果、カリウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B3、C3、E3とも、0.175ppm以下(0.0045mmol/l以下)であった。
マグネシウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B3、C3、E3とも、0.10ppm以下(0.0041mmol/l以下)であった。
カルシウムイオン濃度は、市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)B3、C3、E3とも、0.20ppm以下(0.0050mmol/l以下)であった。
以上のことから市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B3、C3、及びE3には、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが、合計で0.475ppm以上(0.0136mmol/l以上)含まれていないことが明らかである。
ナトリウム純度;
参考例3の結果から前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカリウムイオン濃度は、Bで4.99ppm(0.13mmol/l)、Cで13.70ppm(0.35mmol/l)、Eで5.75ppm(0.15mmol/l)であった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のマグネシウムイオン濃度は、Bで1.00ppm(0.041mmol/l)、Cで1.38ppm(0.057mmol/l)、Eで1.25ppm(0.051mmol/l)であった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカルシウムイオン濃度は、Bで13.66ppm(0.341mmol/l)、Cで3.00ppm(0.075mmol/l)、Eで13.28ppm(0.331mmol/l)であった。
高純度塩化ナトリウム水溶液による透析処理により、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の透析処理液中のカリウムイオンは0.175ppm以下(0.0045mmol/l以下)、マグネシウムイオンは0.10ppm以下(0.0041mmol/l以下)、カルシウムイオンは0.20ppm以下(0.0050mmol/l以下)に低減されている。以上のことから、実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した高純度塩化ナトリウム水溶液を透析液に用いた透析処理により、アルギン酸ナトリウムの純度が予想以上に上昇していることが分かる。実施例1で精製した塩化ナトリウム純度99.999質量%以上の高純度塩化ナトリウム結晶から調製した高純度塩化ナトリウム水溶液を透析液に用いた透析処理により夾雑イオンであるカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンを低減した高純度アルギン酸ナトリウム水溶液が得られていることが明らかである。アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液B3はナトリウム純度が99.94質量%以上(99.96モル%以上)、C3はナトリウム純度が99.94質量%以上(99.96モル%以上)、E3はナトリウム純度が99.95質量%以上(99.96モル%以上)であることが明らかである。
前記市販アルギン酸ナトリウムの高純度化のためには、透析液として使用する塩化ナトリウム水溶液の塩化ナトリウム純度が高いほど高純度化の効率がよいことが理解できる。
比較例1
透析液として食塩水溶液を使用した市販アルギン酸ナトリウムの高純度化試験;
実施例1で精製した高純度塩化ナトリウム結晶から調製した1M−塩化ナトリウム水溶液を透析液として使用する代わりに、1M−市販食塩水溶液を透析液として使用する以外は、実施例2と同様の操作で参考例3の市販アルギン酸ナトリウムB,C,及びEを透析することにより、アルギン酸ナトリウムの高純度化を試みた。
透析法によるアルギン酸ナトリウムの高純度化は次に示す工程(1)から(4)を含む操作により行った。
(1)1M―市販食塩水溶液による透析工程
前記約1質量%の3種類の市販アルギン酸ナトリウム水溶液B、C,及びEをそれぞれ別々のディスポーザブル透析カセット(分画分子量は3,500、材質は再生セルロース、厚さは25ミクロン、容積である。PIERCE社製)に3ミリリットルずつ注入し、カセットにブイを取り付け、1M−市販食塩水溶液3リットルの入ったそれぞれ別々の3リットルビーカーに付けて、スターラーバーで透析外液を撹拌しながら、透析を行った。透析時間は透析が効率的に行われれば適当な時間でよいが、比較例1では実施例2と同じ透析時間すなわち20時間透析した。
(2)蒸留水による透析工程
次いで、市販アルギン酸ナトリウム水溶液の詰まったディスポーザブル透析カセットを3リットルビーカーから取り出し、蒸留水1リットルが入った1リットルビーカーに付け、スターラーバーで透析外液を撹拌しながら、透析を行った。1時間毎に、透析外液である蒸留水を取り替えて透析を行った。透析外液中の塩化物イオン(Cl)をイオンクロマトグラフィーで定量し、透析内液中の塩化物イオン(Cl)が十分除かれるまでこの工程を続けた。
(3)透析内液の取り出し工程
実施例2と同様に行った。
(4)透析内液の濃縮工程
実施例2と同様に行った。
前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Bを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液B4を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Cを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液C4を得た。前記の操作で市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Eを透析処理後、透析内液(アルギン酸ナトリウム水溶液)をとりだし、透析処理前の体積まで濃縮して、透析処理液E4を得た。次に透析処理液B4、C4、E4の純度を測定した。
ナトリウムイオン濃度;
市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)の透析処理液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)B4でのナトリウムイオン濃度は947.37ppm(41.19mmol/l)、透析処理液C4でのナトリウムイオン濃度はCで909.52ppm(39.54mmol/l)、透析処理液E4でのナトリウムイオン濃度は990.68ppm(43.07mmol/l)であった。
夾雑無機イオン濃度;
前記透析処理液(約1質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液)中のカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの定量を原子吸光分析により行った。
その結果、カリウムイオン濃度は、透析処理液B4で1.54ppm(0.039mmol/l)、C4で1.84ppm(0.047mmol/l)、E4で1.55ppm(0.040mmol/l)であった。
マグネシウムイオン濃度は、透析処理液B4で6.66ppm(0.274mmol/l)、C4で7.36ppm(0.303mmol/l)、E4で7.31ppm(0.301mmol/l)であった。
カルシウムイオン濃度は、透析処理液B4で2.43ppm(0.061mmol/l)、C4で2.25ppm(0.056mmol/l)、E4で2.45ppm(0.061mmol/l)であった。
参考例3の結果では前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカリウムイオン濃度は、Bで4.99ppm、Cで13.70ppm、Eで5.75ppmであった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のマグネシウムイオン濃度は、Bで1.00ppm、Cで1.38ppm、Eで1.25ppmであった。前記約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液中のカルシウムイオン濃度は、Bで13.66ppm、Cで3.00ppm、Eで13.28ppmであった。
塩化ナトリウム純度;
前記透析処理液B4[約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液]では全無機カチオン合計が958.00ppm(41.56mmol/l)、ナトリウムイオンが98.89質量%(99.11モル%)、カリウムイオンが0.16質量%(0.094モル%)、マグネシウムイオンが0.70質量%(0.659モル%)、カルシウムイオンが0.25質量%(0.147モル%)であった。
前記透析処理液C4[約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液]では全無機カチオン合計が927.97ppm(39.95mmol/l)、ナトリウムイオンが98.76質量%(98.97モル%)、カリウムイオンが0.20質量%(0.118モル%)、マグネシウムイオンが0.80質量%(0.758モル%)、カルシウムイオンが0.24質量%(0.140モル%)であった。
前記透析処理液E4[約1質量%(W/V)アルギン酸ナトリウム水溶液]では全無機カチオン合計が1001.99ppm(43.47mmol/l)、ナトリウムイオンが98.87質量%(99.08モル%)、カリウムイオンが0.15質量%(0.092モル%)、マグネシウムイオンが0.73質量%(0.692モル%)、カルシウムイオンが0.24質量%(0.140モル%)であった。
市販食塩水溶液による透析処理では、市販アルギン酸ナトリウム水溶液中のカリウムイオンとカルシウムイオンは低減されたが、マグネシウムイオンは増加してしまった。
以上のことから、市販食塩水溶液を透析液に用いた透析処理では、透析処理後に得られるアルギン酸ナトリウムの純度があまり上昇していないことが分かる。
市販食塩水溶液を透析液に用いた透析処理では、市販アルギン酸ナトリウム中の夾雑イオンであるカリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンを低減した高純度アルギン酸ナトリウム水溶液が得られていないことが明らかである。
記載の市販食塩はナトリウム純度99.9質量%未満であるので、前記市販アルギン酸ナトリウムの高純度化のための透析液としては不適当である。
前記市販アルギン酸ナトリウムの高純度化のための透析液としては、塩化ナトリウム純度の高いほど効率がよいことが理解できる。
参考例6
アルギン酸ナトリウムの分子量の測定方法と粘度と分子量の関係;
アルギン酸ナトリウムの分子量の測定方法として、浸透圧計を用いた浸透圧の測定による方法がある。またアルギン酸ナトリウム1%質量水溶液の粘度は分子量(アルギン酸ナトリウムは高分子なので、重合度で表現されることもある。)の増加と共に上昇していく(非特許文献1)。
工業化学雑誌第56巻(昭和28年4月)252〜253頁
参考例7
分子量と粘度の関係;
すでに報告されているように、粘度が高いと分子量は高い(非特許文献2)。
の関係を利用して、粘度測定からアルギン酸ナトリウムの分子量(あるいは重合度)を推定することが行われている。
フレグランス・ジャーナル、73巻、100頁、1985年
回転粘度計を用いた粘度測定と分子量測定実験;
アルギン酸ナトリウムの粘度は、アルギン酸ナトリウムの1質量%(w/v)水溶液を調製し、B型回転粘度計で測定した。
実施例2記載の透析による高純度化処理をしたアルギン酸ナトリウム[透析法高純度化アルギン酸ナトリウム、高純度化処理による透析処理液、透析法によってアルギン酸ナトリウム中の夾雑イオン(マグネシウム、カルシウム、カリウムイオンなど)を低減した透析法高純度化アルギン酸ナトリウム水溶液ともいう]と、透析による高純度化処理をしなかったアルギン酸ナトリウム(未処理アルギン酸ナトリウムともいう)の粘度を測定した。
高純度化アルギン酸ナトリウム水溶液は、実施例2記載の透析により低濃度化したので1質量%に濃縮後に粘度を測定した。アルギン酸ナトリウム水溶液の濃縮は様々な方法で行えるが、低温での自然乾燥(風乾)や真空乾燥機中での乾燥が好ましく、また低温でロータリーエバポレーターを使用して濃縮すると時間の節約になる。
未処理アルギン酸ナトリウムの1質量%水溶液の粘度は、500cp(センチポズ)であった。一方、透析法高純度化アルギン酸ナトリウムの1質量%の粘度は、530cpであった。
比較例2
酸法の一部手法による高純度化アルギン酸ナトリウムの粘度測定
海藻からアルギン酸を製造する方法に大きく分けて酸法(酸沈殿法ともいう)とカルシウム法(カルシウム沈殿法ともいう)がある。
酸法は、海藻から炭酸ナトリウムなどアルカリでアルギン酸ナトリウムを粗抽出し、処理した粗抽出液に、鉱酸(硫酸など)を加えて、アルギン酸ナトリウムをアルギン酸(酸)として析出させ、析出したアルギン酸を炭酸ナトリウムで中和し、可溶性のアルギン酸ナトリウムとして分別し、脱水し精製アルギン酸ナトリウムを得る方法である。酸法は、アルギン酸アトリウム中の夾雑物であるカルシウム含有量が0.01〜0.05質量%とカルシウム法(カルシウム法でのアルギン酸アトリウム中の夾雑物であるカルシウム含有量が0.2〜1.0質量%)よりも低減できる長所を持っている。しかし、酸を用いると多糖のグリコシド結合の加水分解が起こりやすく、特殊な場合を除き、多糖の抽出・精製にはあまり用いられない。一方、アルカリは、酸に比べてグリコシド結合を加水分解する力は弱いが、多糖の還元末端から酸化的に分解する作用を有する。更に、多糖のエステル結合もアルカリにより加水分解を受けやすい(非特許文献3)。
カルシウム法は、酸の代わりに塩化カルシウムをアルギンナトリウム水溶液に加えて、アルギン酸カルシウム沈殿として分別し、塩酸を添加し、アルギン酸ゲルとし、このアルギン酸ゲルを炭酸ナトリウムで中和してアルギン酸ナトリウムを精製する方法である。
実施例2で透析による高純度化を行う変わりに、酸法の一部の手法によってアルギン酸ナトリウムの高純度化を試みた。1質量%水溶液の粘度が500cpである市販アルギン酸ナトリウム(高純度化処理をしていないため、本明細書では未処理アルギン酸ナトリウムともいう)を試料とした。
市販アルギン酸ナトリウム水溶液に硫酸を加え、アルギン酸として沈殿として分離した。次に、この分離したアルギン酸にアルコール存在下で炭酸ナトリウムを添加し、中和することにより水溶性のアルギン酸ナトリウムが得られた。アルギン酸ナトリウム水溶液を乾燥し、アルギン酸ナトリウム(本明細書では酸法一部準拠の精製アルギン酸ナトリウムともいう)粉末を得た。
得られた酸法による高純度化アルギン酸ナトリウム(酸法高純度化アルギン酸ナトリウムともいう)の粘度を測定した。
酸法高純度化アルギン酸ナトリウムの1質量%の粘度は、110cpであった。このように、アルギン酸ナトリウムの高純度化を酸法の一部手順に準拠しておこなうと、粘度が低下してしまうことが明らかである。粘度の低下はアルギン酸ナトリウムの分子量の低下であり、この原因は精製に酸やアルカリを使用するためと考えられる。
生化学実験法20 多糖の分離・精製法、松田和雄 編著、学会出版センター、1987年、17頁〜頁
比較例3
カルシウム法の一部手法による高純度化アルギン酸ナトリウムの粘度測定;
実施例2で透析による高純度化を行う変わりに、カルシウム法によってアルギン酸ナトリウムの高純度化を行った。1質量%水溶液の粘度が500cpである市販アルギン酸ナトリウム(高純度化処理をしていないため、本明細書では未処理アルギン酸ナトリウムともいう)を試料とした。
市販アルギン酸ナトリウム水溶液に塩化カルシウムを加え、アルギン酸カルシウムとして沈殿として分離した。次に、この分離したアルギン酸カルシウムに塩酸を添加し、アルギン酸とした。ついでこうして得たアルギン酸にアルコール存在下で炭酸ナトリウムを添加し、中和することにより水溶性のアルギン酸ナトリウムが得られる。アルギン酸ナトリウム水溶液を乾燥し、アルギン酸ナトリウム(本明細書ではカルシウム法一部準拠の精製アルギン酸ナトリウムともいう)粉末を得た。
得られたカルシウム法の一部手法に準拠した方法による高純度化アルギン酸ナトリウム(カルシウム法高純度化アルギン酸ナトリウムともいう)の粘度を測定した。
カルシウム法高純度化アルギン酸ナトリウムの1質量%の粘度は、120cpであった。
これらのことから、アルギン酸ナトリウムの高純度化をカルシウム法の一部手順に準拠しておこなうと、著しい粘度の低下が起こることが分かる。粘度の低下は高純度化操作時の酸やアルカリによるアルギン酸分子(多糖)の分子量の低下が原因と考えられる。
参考例8
分子量測定
アルギン酸ナトリウムの粘度平均分子量は次のようにして求めた。
アルギン酸ナトリウムの濃度を5段階の濃度(g/l)(0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、1.00%などからなる5段階の濃度)に変えた水溶液を調製し、それぞれの粘度をB型回転粘度計を用いて測定し、極限粘度intrinsic viscosity[η:イータ]をもとめ、Smidsrodの式(O.Smidsrod and
A. Haug, Acta Chem. Scand.,22巻、797頁、1968年)
[η]=2.0×10−5× M (20℃、0.1MNaCl溶液)
:粘度平均分子量
を適用して、分子量Mを算出した。
用いたアルギン酸ナトリウムは、1質量%水溶液のB型回転粘度計による粘度は795cp(センチポイズ)で、平均分子量Mは642,500であった。東機産業(株)製デジタル回転粘度計DVL−B型を使用した。
アルギン酸ナトリウム水溶液から塩化カルシウム水溶液中へ注入してアルギン酸カルシウム繊維を製造する実験;
アルギン酸ナトリウム水溶液を注射器(あるいは紡糸機)のノズルを通して、凝固液である塩化カルシウム水溶液に押し出して繊維状のアルギン酸カルシウムを調製し、水洗を行った。
具体的には、4.5(絶乾w/w)%アルギン酸ナトリウム(AlgNaとも記載する)水
溶液(ドープ)を注射器(あるいは紡糸機の貯槽)に入れ、ノズル孔( 直径1.0mm,あるいは直径0.5mm)を通して、凝固液である0.5M(モル濃度)塩化カルシウム(CaCl)水溶液の入った凝固槽中へ手で、途切れずに連続的に液が出る速度で押し出した。アルギン酸カルシウム繊維になる。直ちに直線状になるように両端を引っ張ってしわにならないようになるまでそのままを数分保った(あるいは紡糸機の凝固槽で巻取りを行うことにより直線状繊維が達成された)。その後、2時間以上凝固槽に保持し、水洗を脱イオン水を用いて6回以上の液交換を行い、2時間以上かけて行った(あるいは紡糸機の水洗槽2槽に引き続いて巻き取って、水洗を完了させた)。水洗後は脱イオン水を入れたポリエチレン製の袋にいれて4℃の冷蔵庫に保存し、実験に使用した。
延伸;
また、巻き取りの際に延伸工程を加えることも可能である。
アルギン酸カルシウム繊維を、凝固槽を出た後、水洗段階で繊維長を1.3倍程度に引っ張って延伸した。繊維の巻き取り・進行方向に配向が起こり、繊維強度が向上した。
詳細に説明すると、凝固槽で生成したアルギン酸カルシウム繊維を、巻き取って凝固槽を出た後、第1水洗槽で巻き取り速度を1.3倍に増やして繊維長を1.3倍に引っ張って延伸した。繊維の巻き取り・進行方向に配向が起こり、繊維強度が向上した
更に2段延伸の場合は、第1水洗槽のあと引き続いてさらに第2水洗槽で巻き取り速度を1.2倍に増やして1.5倍に延伸した。やわらかい繊維の条件では2段延伸が出来る。
アルギン酸カルシウム単繊維の引張強度測定の実験;
コントロールのアルギン酸カルシウム単繊維の引張強度をJIS法によって測定したとこ
ろ、風乾繊維の引張強度は約1.7(1.5〜2.2)グラムパーデニール(g/d)で
、湿潤繊維の引張強度は約0.35(0.15〜0.40)g/dであった。湿潤単繊維
の強度は、ポリエチレン製袋内で水中に入って保存している湿潤単繊維を、乾燥させない状態で測定した。
粉体(粉末状吸着剤)を入れた場合は風乾単繊維の引張強度は約1.0(0.25〜1.5)g/dで、湿潤単繊維の引張強度は約0.10(0.042〜0.20)g/dであった。粉体を270メッシュ(53ミクロン)で処理したのちにアルギン酸ナトリウム水溶液に混ぜた。粉体のアルギン酸ナトリウム水溶液中での濃度は、10質量%であった。この粉体入りアルギン酸ナトリウム水溶液を塩化カルシウム水溶液中へ0.5mm径のノズルで注入し、アルギン酸カルシウム繊維を調製した。
具体的にコントロールの実験は次のように行った。アルギン酸カルシウムの単繊維の引張強度をJIS L1069「繊維の引張試験方法」法によって測定した。単繊維をチャックつかみ間隔を2cmとして、光沢紙に風乾単繊維の両端を瞬間接着剤アロンアルファーで接着した。光沢紙を上下のチャックでつかみ固定した。株式会社島津製作所製オートグラフAG100A、ロードセル100kgf、引張速度20mm/min, 測定室16〜19℃,35〜42RH%。測定は2本以上の平均を取った。湿潤単繊維の場合は光沢紙への接着の代わりに定性ろ紙No.2の2枚に湿潤繊維をはさみチャックで強く締めて引張荷重をかけて測定し、2cmの単繊維の中央で切断された値を採用した。
様々なアルギン酸ナトリウムからのアルギン酸カルシウム繊維の強度;
実施例5と同様の操作を行い、4.5(絶乾w/w)%の高純度化未処理のアルギン酸ナトリウム水溶液(ドープ)からアルギン酸カルシウム繊維を得た。得られた繊維の強度は、約1.7(1.5〜2.2)g/dであった。
実施例2記載の透析法高純度化アルギン酸ナトリウム水溶液[市販アルギン酸ナトリウム水溶液(約1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液)Eの透析処理液]E1を濃縮し、4.5(絶乾w/w)%の透析法高純度化アルギン酸ナトリウム水溶液(ドープ)からアルギン酸カルシウム繊維を得た。得られた繊維の強度は、約2.6(2.4〜2.9)g/dであった。
以上のことから、ドープであるアルギン酸ナトリウム水溶液中に不純物としてマグネシウムが含まれると、製造したアルギン酸カルシウム単繊維の強度が低いことが明らかである。一方、透析法によってアルギン酸ナトリウム中のマグネシウム、カルシウム、カリウムイオンを低減した透析法高純度化アルギン酸ナトリウム水溶液(ドープ)から製造したアルギン酸カルシウム単繊維は、高純度化未処理のアルギン酸ナトリウムから製造したアルギン酸カルシウム単繊維より強度が上昇していることが分かる。
参考例9
アルギン酸カルシウム繊維製品の強度へのアルギン酸ナトリウム水溶液粘度の影響
アルギン酸カルシウム繊維を原料とした製品としてアルギン酸紙を用いた。調製したアルギン酸カルシウム紙の引張強度をJIS法に拠って測定し、アルギン酸ナトリウムの分子量が高くなるほど(すなわち粘度が高くなるほど)、製造されたアルギン酸カルシウム繊維の強度も上昇することが明らかになった。
詳しくは、紡糸機で製造した調製したアルギン酸カルシウム長繊維を3mmに切断し、水中で離解し分散させた後TAPPI抄紙機で紙を作成し、紙の引張強度をJIS法に拠って測定した。分子量約280,000ダルトン、分子量約480,000ダルトン。及び分子量約640,000ダルトンの3種類のアルギン酸ナトリウムで比較した。
その結果、分子量約280,000ダルトン、分子量約480,000ダルトン。及び分子量約640,000ダルトンのアルギン酸ナトリウムから製造したアルギン酸カルシウム繊維紙の強度(ゼロスパン裂断長)[Zero span breaking length(Km)]は、それぞれ4.71、5.06、及び5.47であった。すなわちアルギン酸ナトリウムの分子量が高くなるほど製造されたアルギン酸カルシウム繊維の強度も上昇することが明らかになった。ゼロスパン裂断長は単繊維の強度に比例するので、単繊維も原料となるアルギン酸ナトリウムの分子量が増加するほど単繊維強度も上昇することが明らかである。したがって高分子量のアルギン酸ナトリウムから作られたアルギン酸カルシウム繊維の単繊維強度が強くなることが分かる。
参考例10
簡易的なアルギン酸カルシウム繊維の製法
アルギン酸ナトリウム水溶液から簡易的にアルギン酸カルシウム繊維やゲルを調製することも可能であるし、製造時に延伸を行わなくても繊維やゲルを作ることが出来る。
アルギン酸ナトリウムを貯槽に入れて、ノズル孔(針孔をここでは示す)を通して、凝固槽中の凝固液である塩化カルシウム水溶液に押し出して得られるアルギン酸カルシウム繊維は延伸していないので、1.3倍程度に延伸すれば強度は増加すると考えられる。単繊維の引張強度を風乾繊維と湿潤繊維についてJIS L1069「繊維の引張試験方法」法によって測定した。
詳しく説明すると、4.5(絶乾w/w)%アルギン酸ナトリウム(AlgNaとも記載する)水溶液(ドープ)を貯槽(注射器あるいは紡糸機の貯槽)に入れ、ノズル孔(直径1.0mmあるいは直径0.5mm)を通して、凝固槽(シャーレあるいは凝固槽)中の凝固液である0.5M塩化カルシウムCaCl水溶液の入った凝固槽中へ手(あるいは機械)で、途切れずに連続的に液が出る速度で押し出した。アルギン酸カルシウム繊維になる。直ちに直線状になるように両端を引っ張ってしわにならないようになるまでそのままを数分保った(あるいは紡糸機の凝固槽で巻取りを行うことにより直線状繊維が達成された。)。その後、2時間以上凝固槽に保持し、水洗を脱イオン水を用いて6回以上の液交換を行い、2時間以上かけて行った(あるいは紡糸機の水洗槽2槽に引き続いて巻き取って、水洗完了させた)。水洗後は脱イオン水を入れたポリエチレン製の袋にいれて4℃の冷蔵庫に保存し、実験に使用した。
単繊維の引張強度を風乾繊維と湿潤繊維についてJIS L1069「繊維の引張試験方法」法によって測定した。
参考例11
延伸の実験(凝固槽);
凝固槽において、以下の操作をすることにより更に繊維強度を上げることが可能である。
凝固槽において、延伸をかける事により、凝固の均一化と繊維の配向がおきることにより強度が増加する。
凝固槽に入ったアルギン酸ナトリウム水溶液は、0.5M塩化カルシウム凝固液の場合直ちに繊維の外周からイオン交換によるアルギン酸カルシウム膜が作成され、内側へとイオン交換が進み凝固固化が進み最後には全部アルギン酸カルシウムになり、固くなる。
順次凝固する途中に、すなわち外周が凝固し内部が凝固進行中の単繊維に巻き取り速度を切れる少し前の速度に上げて延伸をかける事により、凝固の内部/外周の均一化と繊維の長い方向(巻き取り方向)に向けての配向が十分に進むため、強度の増加が図られる。延伸をかけるため繊維は延伸をかけない時よりも細くなる。
参考例12
装置と器具;
アルギン酸ナトリウム水溶液からアルギン酸カルシウム繊維を製造するのに必要な装置の例を以下に挙げる。(1)コントロールアルギン酸塩繊維の製造の場合、と(2)添加物を含有するアルギン酸塩繊維の製造についてアルギン酸塩(カルシウム)繊維の製造装置・フローについて記載する。
(1)コントロールアルギン酸塩繊維の場合
[貯槽:アルギン酸ナトリウム水溶液(ドープ)の調製 濃度5%]
[凝固槽:凝固液塩化ナトリウム水溶液の調製 濃度0.5M]
[凝固槽での繊維化:ノズル孔からの凝固槽への押し出し]
[水洗槽:巻き取り]
[水洗槽での延伸:巻き取り速度を上げたことによる延伸あり]
[保存:冷蔵庫4℃]

[貯槽(注射器):アルギン酸ナトリウム水溶液(ドープ)の調製 濃度5%]
[凝固槽(シャーレ):凝固液塩化ナトリウム水溶液の調製 濃度0.5M]
[凝固槽での繊維化:ノズル孔(注射器孔)からの凝固槽への押し出し]
[水洗槽:蒸留水の交換]
[水洗槽での延伸:延伸なし]
[保存:冷蔵庫4℃]

(2)添加物をいれたアルギン酸塩繊維の場合
[貯槽:粉体入りアルギン酸ナトリウム5%水溶液(ドープ)の調製]
[凝固槽:凝固液0.5M塩化ナトリウム水溶液の調製]
[凝固槽での繊維化:ノズル孔(注射器孔)からの凝固槽への押し出し]
[水洗槽:巻き取り]
[水洗槽での延伸:巻き取り速度を上げたことによる延伸あり]
[保存:冷蔵庫4℃]

[貯槽注射器:粉体入りアルギン酸ナトリウム5%水溶液(ドープ)の調製]
[凝固槽シャーレ:凝固液0.5M塩化ナトリウムの調製]
[凝固槽での繊維化:ノズル孔からの凝固槽への押し出し]
[水洗槽:蒸留水の交換]
[水洗槽での延伸:延伸なし]
[保存:冷蔵庫4℃]
アルギン酸ナトリウムの分子量とアルギン酸カルシウムゲルにしたときの強度の関係;
重合度500(DP500とも記載)及び重合度80(DP80とも記載)のアルギン酸ナトリウム水溶液(濃度、0.5、1.0,2.0、3.0,4.0,5.0質量%)をポリプロピレン製の注射器に入れ、塩化カルシウム水溶液(濃度0.05、0.2、及び0.5M)の入ったポリプロピレン製容器に、注射器で押し出し、径約1.0mm程度の繊維にゲル化し、4時間保持したのち、水洗を2時間(3回蒸留水交換)行った。次に10cmの長さに切り取り、ろ過海水8ミリリットルに浸す。4時間後に1回液を交換し一夜放置(常温28℃)。各種アルギン酸カルシウムゲルの強度と海水耐性を評価した。結果を表1に示す。
以下の結果を得た。
結果1:海水耐性のない場合、海水浸漬で最初は不透明であったゲルが透明になる、表面ヌルヌルになり、引っ張ると容易にちぎれるようになる。結果2:強い、伸びる場合はDP500>DP80である。AlgNa(アルギン酸ナトリウム)濃度5%、3%、2%のものは細い形状となり、AlgNa1%のものは太い形状であった。結果3:強い、伸びるAlgNa−CaClの(塩化カルシウムはアルギン酸ナトリウムを凝集する凝集剤として利用される)の組み合わせは:DP500のアルギン酸ナトリウムで濃度5%、3%、2%では塩化カルシウム濃度は0.5Mあるいは0.2Mであった。DP500のアルギン酸ナトリウムで濃度5%では塩化カルシウム濃度0.05Mの時であった。DP80のアルギン酸ナトリウムで濃度5%では、塩化ナルシウム濃度は0.5M,0.2M、0.05Mであった。結果4:浸漬前に強度の強い(硬く、伸びる)ゲルは、海水浸漬後も強い(形状維持し、硬く、引張の際に切れずにのびる)。
また表1には示さなかったが、繊維状ゲルでなく、板状(5x10x10mm)ゲルでも、重合度500のアルギン酸ナトリウムから調製したアルギン酸カルシウムゲルの方が、重合度80のアルギン酸ナトリウムから調製したアルギン酸カルシウムゲルよりもゲルの強度及び海水耐性が強かった。
表1に示した例の中では、重合度500のアルギン酸ナトリウムの5%水溶液を0.5M塩化カルシウムで凝固した場合が最大の強度が得られ、しかも海水中でのゲルの耐久性も最大であった。以上のことから、アルギン酸ナトリウムのみから、アルギン酸カルシウムゲルを調製する場合、重合度500の方が重合度80のアルギン酸ナトリウムよりも強度が強く、海水中でもゲルの崩壊が起こりにくいアルギン酸カルシウムゲルが得られることが分かる。
アルギン酸ナトリウム分子量が高いほど、ゲル強度が高く、海水中でのゲルの耐久性も高いアルギン酸カルシウムゲルが得られることが明らかである。分子量の高いアルギン酸ナトリウムほど、アルギン酸カルシウムゲルそのものを単独で使用する場合でも、また海藻及び/又は吸着剤などを固定化して海水中で使用するアルギン酸カルシウムゲル固定化担体として用いる場合でも、原料として好ましいことが分かる。
なお、DP500のアルギン酸ナトリウム1質量%水溶液の粘度は約500cp、DP80のアルギン酸ナトリウム1質量%水溶液の粘度は約80cpに相当する。
海藻及び/又は粉体を含有するアルギン酸ナトリウム水溶液についても、アルギン酸ナトリウムの分子量(重合度)と、それを原料として調製した海藻及び/又は粉体を含有するアルギン酸カルシウムゲルについて、そのゲル強度と海水耐性を評価した。その結果、海藻及び/又は粉体を含有していないアルギン酸ナトリウム水溶液での結果と同様に、アルギン酸ナトリウム分子量が高いほど、ゲル強度が高く、海水中でのゲルの耐久性も高いアルギン酸カルシウムゲルが得られることがわかった。なお、本明細書では、海藻胞子、海藻藻体、海藻切片からなる群のいずれも海藻ともいう。
Figure 0005093438
参考例13
栄養塩類吸着剤の性質
新規オキソ陰イオン吸着剤(ナノ空間制御吸着剤)である硝酸イオン吸着剤;
ニッケルと鉄を含む水酸化物である硝酸イオン吸着剤を次のように合成した(特開2004−130200号公報(特許請求の範囲その他)。FeClとNiClの混合溶液にNaOHを加えて共沈させ、120℃で1日熟成した後、沈殿物を濾過洗浄し、50℃で1日間乾燥した。合成により得られた硝酸吸着剤の海水中での硝酸イオン吸着容量を測定した。本発明では、この合成した硝酸吸着剤をNi−Fe型硝酸吸着剤という。海水に硝酸ナトリウムを添加し、硝酸イオン濃度が1.86mg/リットルの海水を調製した。本発明では、この海水を硝酸添加海水という。硝酸添加海水1リットル中にNi−Fe型硝酸吸着剤0.1gを添加し、25℃で72時間放置した。72時間放置後の硝酸添加海水中の硝酸イオンを低濃度硝酸塩試薬セット(HACH製)を用いてカドミウム還元法により測定した。Ni−Fe型硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は、4.203mg硝酸態窒素/g吸着剤であった。同様にして、市販されているアクアリウム用硝酸吸着剤イオン交換樹脂などの硝酸態窒素吸着容量を測定した。その結果、市販されているアクアリウム用硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は1.47mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、イオン交換樹脂の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、マグネシウムとアルミニウムからなる吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、マグネシウムと鉄からなる吸着剤の硝酸吸着容量は1.12mg硝酸態窒素/g吸着剤、亜鉛とアルミニウムからなる吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、市販されている硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下、Zr(OH)からなる吸着剤の硝酸吸着容量は0.23mg硝酸態窒素/g吸着剤以下であった。これらの結果から、Ni−Fe型硝酸吸着剤の硝酸吸着容量は、評価した他の吸着剤の硝酸吸着容量と比較して、約3倍以上高く、硝酸吸着能力が優れていることが分かる。
また、海水中での硝酸イオン吸着速度を測定したところ、Ni−Fe型硝酸吸着剤は反応2時間で吸着容量の80%の硝酸イオンを吸着するという結果が得られ、この結果からNi−Fe型硝酸吸着剤は非常に早い硝酸吸着速度を有していることが分かった。なお、反応4時間で吸着容量のほぼ100%の硝酸イオンを吸着していた。
Ni−Fe型硝酸吸着剤の硝酸イオン吸着量のpH依存性はHClおよびNaOHでpHを調整したNaNOが1.86mg/Lの海水1Lに吸着剤0.1gを添加し、25℃で3日間行った。硝酸イオンの吸着量は海水のpHに大きく依存し、pH8付近で最大となった。これらの結果から、Ni−Fe型硝酸吸着剤は海水から硝酸イオンを選択的に除去する吸着剤として有望である。
粉末吸着剤;
塩水として、100mM硝酸ナトリウムを用いた。粉末吸着剤として参考例13記載のNi−Fe型硝酸吸着剤を用いた。
粉末吸着剤は270メッシュのふるいをかけ、ふるいを使用した。なお、270メッシュの孔径は約53ミクロンである。本命最初では、ふるいを通った粉末吸着剤を固定化用粉末吸着剤という。
4.5(絶乾w/w)%アルギン酸ナトリウム水溶液2ml当たり、固定化用粉末吸着剤200mgの割合で混合し、吸着剤を含有したアルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。
吸着剤を含んだ4.5(絶乾w/w)%アルギン酸ナトリウム(AlgNaとも記載する)水溶液(ドープ)を注射器に入れ、ノズル孔( 直径0.5mm)を通して、凝固液である0.5M塩化カルシウム(CaCl)水溶液の入った凝固槽中へ手で、途切れずに連続的に液が出る速度で押し出した。アルギン酸カルシウム繊維になったので、直ちに直線状になるように両端を引っ張ってしわにならないようになるまでそのままを数分保った。その後、2時間以上凝固槽に保持し、水洗を脱イオン水を用いて6回以上の液交換を行い、2時間以上かけて行った。水洗後は脱イオン水を入れたポリエチレン製の袋にいれて10℃の恒温槽に実験に使用するまで保存した。このようにして得られた吸着剤を含有するアルギン酸カルシウム繊維を固定化吸着剤繊維ともいう。
塩水として、100mM硝酸ナトリウムを用いた。100mM硝酸ナトリウム水溶液50mLの入った50mL容量のスクリュー管に固定化吸着剤繊維固定化用粉末吸着剤200mg相当の固定化吸着剤繊維を浸し、100rpmの速度でしんとうした。4日間しんとうし、フィルターで固定化吸着剤繊維と液を分離した。分離した液は、イオンクロマトにより硝酸イオン濃度を測定した。
その結果、固定化吸着剤繊維は、元の硝酸イオンの93%まで硝酸イオンの濃度を低減できていた。
比較例4
粉末吸着剤をゲルに固定化せずに直接、溶液につけて栄養塩類の吸着性能を評価した。粉末吸着剤200gを100mM硝酸ナトリウム水溶液50mlに浸し、100rpmの速度でしんとうした。4日間しんとうし、フィルターで粉末吸着剤と液を分離した。分離した液は、イオンクロマトにより硝酸イオン濃度を測定した。その結果、吸着剤は元の硝酸イオンの90.6%まで硝酸イオンの濃度を低減できていた。
以上のことから、アルギン酸カルシウム繊維は、粉末吸着剤の性能を低下させずに固定化することが出来る担体であることが明らかである。更に、アルギン酸カルシウム担体に固定化したために、固定化してない吸着剤の103%の性能を発揮していることが分かった。PVC等の有機系担体で固定化した場合の性能は、固定化しないときの性能の約25%であるから、アルギン酸カルシウムゲルの性能の高さが分かる。
実施例4記載の固定化吸着剤繊維を用いて栄養塩の吸着実験をした結果、固定化していない粉末吸着剤と比較して、前記固定化吸着剤繊維には以下などの利点があることが明らかになった。
(1)塩水をかけ流しで行っている場合、固定化しない吸着剤では、吸着剤が一定の場所に集まってしまったり、フィルターに詰まってしまったりしてしまい、実質的に粉体吸着剤はバッチ処理でしか使用できない。一方、固定化吸着剤繊維は、流水でも使用できるし、カラムにつめても使用できるという利点を備えていた。
(2)固定化吸着剤繊維は、固定化繊維内に粉体吸着剤が分布しているため、粉体吸着剤の硝酸イオン吸着速度よりも、固定化吸着剤繊維の硝酸イオン吸着速度が速かった。迅速な吸着処理に利用できる。
(3)アルギン酸カルシウムが親水性のため、硝酸イオンなど親水性イオンの透過が良好である。
(4)粉体吸着剤の回収は固定化吸着剤繊維を取り出せばよいので簡便である。
(5)吸着剤で吸着処理をした後で吸着剤を取り出すことが出来るためには、吸着剤を固定化する担体自身が繊維あるいは固体からゾルあるいは水溶液へ簡単に返還できる高分子であることが好ましいが、アルギン酸カルシウム繊維はこの特性を有している。
更に高純度化処理して得た実施例2記載の透析法高純度化アルギン酸ナトリウム水溶液E1を原料とした固定化吸着剤繊維は、高純度化処理をしていない(未処理)アルギン酸ナトリウムを原料とした固定化吸着剤繊維に比べて以下などの利点を持っていた。
(6)流水中で培養する場合、ゲル強度が強く海水耐性も高いので、固定化した吸着剤の繊維からの脱離が観測されなかった。一方、高純度化処理をしていない(未処理)アルギン酸ナトリウムを原料とした固定化吸着剤繊維では、固定化した約20%の吸着剤が繊維から脱離してしまった。
(7)酸法及びカルシウム法で高純度化処理を行ったアルギン酸ナトリウムを原料として、固定化吸着剤繊維を調製し同様の実験を行ったが、アルギン酸カルシウム繊維の強度が低く、固定化した30%〜40%の吸着剤の漏れが起こった。
高純度アルギン酸ナトリウムを、吸着剤を固定化するアルギン酸カルシウム繊維の原料にしたところ、予想をうわまわる性能の固定化吸着剤繊維を得ることができた。
参考例4について、カラム体積に対する溶出液体積の比と各成分濃度を示す図である。 参考例5について、カラム体積に対する溶出液体積の比と各成分濃度を示す図である。 実施例1について、カラム体積に対する溶出液体積の比と各成分濃度を示す図である。 本発明の栄養塩類濃度低減装置(特に、かけ流し方式の場合)に備える流路切り替え機の一例の概略図を示す。図4aに示すように、容量10リットルのポリカーボネート製の立方体の水槽2つを、チューブでつなぎ、一つのユニットを作る。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間にフィルターを装着し、吸着剤がポリカーボネート水槽から流出するのを防いだ。ポリカーボネート水槽中でエアレーションを行った。ポリカーボネート水槽と連結チューブの間には、逆流防止弁を挿入し、塩水の逆流を防ぐのが好ましい。栄養塩類濃度低減装置は、上述したユニットを8つ連結した大ユニット構造を採用した(図4b)。塩水の栄養塩類の濃度低減を行う際は、ポリカーボネート水槽に高さの半分まで塩水を注入後、吸着剤を投入した。すなわち栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水を栄養塩類濃度低減装置に流す前に、前もって栄養塩類濃度低減装置の各ポリカーボネート製の水槽には環境塩水(塩水)5リットルと吸着剤を投入した。したがって、一つのユニット(Uとも表記する。)あたり、環境塩水10リットルと吸着剤が含まれるようにする。栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの塩水を栄養塩類濃度低減装置に流し始めてからは、6時間毎に電磁弁、8方バルブが切り替わり、栄養塩濃度の高い塩水の供給源の塩水の流路を換えることにより、栄養塩類濃度低減装置に導入した吸着剤が入ったそれぞれの水槽に、栄養塩濃度の高い塩水の供給源からの高い濃度の栄養塩類を含んだ塩水が接触するようにした(図4c)。 本発明の流路切り替え弁(電磁弁でも手動弁でもよい)の一例を示す図である。 本発明のシステムの栄養塩類濃度低減装置の一例を示す図である。 本発明のシステムの栄養塩類濃度低減装置の一例を示す図である。

Claims (23)

  1. 主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液を、1価無機カチオンを含む透析液に対して透析する工程(ここで、透析液中の1価無機カチオンの比率は、水溶液中の主成分となる1価無機カチオンの比率よりも高い)を包含する、酸性多糖類無機塩の製造方法。
  2. 前記酸性多糖類がアルギン酸である、請求項1に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  3. 前記主成分となる1価無機カチオンがナトリウムイオンである、請求項1又は2に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  4. 前記酸性多糖類がアルギン酸であり、且つ、前記主成分となる1価無機カチオンがナトリウムイオンである、1〜3のいずれか1項に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  5. 前記透析液が塩化ナトリウム水溶液である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  6. 前記塩化ナトリウム水溶液中の塩化ナトリウムの純度が99.99質量%以上である、請求項5に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  7. 前記塩化ナトリウム水溶液中の塩化ナトリウムの純度が99.999質量%以上である、請求項6に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  8. 前記塩化ナトリウム水溶液が、異常クロマト現象又は擬似異常クロマト現象を利用して製造されたものである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  9. 主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液について、前記透析工程後の溶液粘度が、前記透析工程前の溶液粘度の90%以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  10. 主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液について、前記透析工程後の溶液分子量が、前記透析工程前の溶液分子量の90%以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  11. 主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液について、前記透析工程後の溶液粘度が、前記透析工程前の溶液粘度の95%以上であることを特徴とする、請求項9に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  12. 主成分となる1価無機カチオンを含む無機カチオンと酸性多糖類アニオンとの塩の水溶液
    について、前記透析工程後の溶液分子量が、前記透析工程前の溶液分子量の95%以上で
    あることを特徴とする、請求項10に記載の酸性多糖類無機塩の製造方法。
  13. 吸着剤を含有する酸性多糖類無機塩の水溶液であって、酸性多糖類無機塩が請求項1〜12のいずれか1項記載の方法により得られる、酸性多糖類無機塩である水溶液と、無機塩水溶液とを接触させることにより得られる、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維。
  14. 酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、90モル%以上である、請求項13に記載の、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維
  15. 酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.85モル%以上である、請求項14に記載の、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維
  16. 酸性多糖類無機塩において、全ての酸性多糖類無機塩に対する主成分となる酸性多糖類1価無機塩の比率が、99.9モル%以上である、請求項15に記載の、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維
  17. 吸着剤がリンを含む栄養塩類及び/又は窒素を含む栄養塩類を吸着する吸着剤であることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の、吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維
  18. 請求項13〜17のいずれか1項に記載の吸着剤を保持する酸性多糖類無機塩ゲル及び/又は繊維を備える、塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
  19. 濃度低減する栄養塩類が、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素、アンモニア態窒素、尿素態窒素、有機態リン、無機態リン及び珪素からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項18に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置。
  20. 請求項18又は19に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、並びに、流路切り替え機、硝化菌を定着させた硝化槽、酸素供給槽、泡沫分離槽、沈殿槽、pH調製水槽、水温調整槽、ろ過槽、循環ポンプ及び生物飼育槽からなる群より選択される少なくとも1種を備えることを特徴とする、塩水中の栄養塩類の濃度低減システム。
  21. 塩水を請求項18又は19に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減装置、並びに、請求項20に記載の塩水中の栄養塩類の濃度低減システムからなる群より選択される少なくとも1種で処理する工程を包含する、塩水中の栄養塩類の濃度低減方法。
  22. 請求項21に記載の方法により塩水中の栄養塩類の濃度を低減する工程を含む、塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の製造方法。
  23. 請求項22に記載の方法により水中の栄養塩類の濃度低減処理水を製造する工程、及び
    前記工程で製造した塩水中の栄養塩類の濃度低減処理水の中で外洋性生物を生産する工程を含む、
    外洋性生物の製造方法。
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