以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態の可変圧縮比機構を備えるエンジンの概略図である。
1はピストン、2はシリンダブロック、3はアッパーリンク、4はロアリンク、5はコントロールリンク、6はクランクシャフト、7はコントロールシャフト、11は固定リンクとしての第1リンク、12は連結リンクとしての第2リンク、13はアクチュエータロッド、16はハウジング、17は減速機、18は駆動モータ、19はコントロールユニットである。
ピストン1は、シリンダブロック2のシリンダ内に往復動可能に収められている。コントロールシャフト7はクランクシャフト6と略平行に気筒列方向に延びている。ロアリンク4はクランクシャフト6のクランクピン6aに相対回転可能に連結されている。
アッパーリンク3は、上端がピストンピンに、下端がロアリンク4に、それぞれピストンピン1a、連結ピン8を介して相対回転可能に連結されている。コントロールリンク5は、上端がロアリンク4に、下端がコントロールシャフト7に、それぞれ連結ピン9、10を介して相対回転可能に連結されている。なお、コントロールリンク5はコントロールシャフト7の回転軸7aから偏心した位置に連結されており、例えば、コントロールシャフト7に回転軸7aに対して偏心した偏心カムを設け、この偏心カムにコントロールシャフト7を連結する。
第1リンク11の一端は、コントロールシャフト7と一体に回転するよう、回転軸7aに固定されており、他端は第2リンク12の一端に連結ピン14を介して相対回転可能に連結されている。第2リンク12の他端はアクチュエータロッド13の先端に連結ピン15を介して相対回転可能に連結されている。
アクチュエータロッド13は、ハウジング16内に進退可能に設けられており、基端側(図中右側)には図示しない雄ねじ部が設けられている。ハウジング16には前記雄ねじ部と螺合する雌ネジ部が設けられており、ハウジング16が駆動モータ18によって軸周りに回転駆動されると、アクチュエータロッド13はハウジング16に対して相対的に往復動する。なお、駆動モータ18の回転は、減速機17を介してハウジング16に伝達される。すなわち、ハウジング16及び減速機17はいわゆるボールネジ減速機を形成し、アクチュエータロッド13はボールネジ減速機のボールネジシャフトと一体に形成されている。
アクチュエータロッド13が後退すると、第2リンク12、第1リンク11を介してコントロールシャフト7が回転軸7a周りに図中反時計回り方向に回転し、連結ピン10の位置は下降する。これにより、ロアリンク4がクランクピン6a周りに図中反時計回り方向に傾き、連結ピン8の位置が上昇するので、ピストン1の位置が上昇する。すなわち、上死点位置でのピストン位置が上昇することで、圧縮比が上昇する。これとは反対に、アクチュエータロッド13が前進するとコントロールシャフト7及びロアリンク4は図中時計回り方向に回転するので、ピストン1は下降し、圧縮比が低下する。
すなわち、本実施形態では、アクチュエータロッド13が前進するほど圧縮比は低下する。
上記のように、本実施形態の可変圧縮比機構は、アッパーリンク3、ロアリンク4、コントロールリンク5、コントロールシャフト7、第1リンク11及び第2リンク12、アクチュエータロッド13、ハウジング16、減速機17、駆動モータ18を備える。そして、コントロールユニット19により駆動モータ18の駆動を制御し、運転状態に応じてアクチュエータロッド13を進退させることでコントロールシャフト7の回転角を制御し、圧縮比を変化させるものである。
なお、コントロールシャフト7には、筒内の燃焼圧やピストン1の慣性力等がアッパーリンク3、ロアリンク4、コントロールリンク5を介して伝達される。そして、この伝達された荷重は、連結ピン10がコントロールシャフト7の回転軸7aから偏心しているため、コントロールシャフト7を回転させる荷重(以下、これをコントロールシャフトトルクという)として作用する。そこで、コントロールシャフトトルクに抗してコントロールシャフト7を所定の回転角に保持するための保持機構(図示せず)を備える。保持機構は、駆動モータ18を用い、駆動時とは逆方向の電流を流すことでコントロールシャフトトルクに抗するものでもよいし、又はコントロールシャフト7に回転の許可・禁止を切換える機構を取り付けてもよい。
なお、運転状態に応じた具体的な圧縮比制御は、例えば特開2002−115571号公報に開示されたものと同様であるので、説明を省略する。
次に、第1リンク11、第2リンク12、連結ピン10の配置について説明する。
図2は図1のコントロールシャフト7、第1リンク11、第2リンク12、アクチュエータロッド13、ハウジング16部分について略最低圧縮比時の状態を表した図である。
図2に示すように、第2リンク12とアクチュエータロッド13とがなす角度をθ1、第1リンク11と第2リンク12とがなす角度をθ2、コントロールシャフト7の回転角(コントロールシャフト角度)をθcsとする。回転軸7aを原点、水平方向をX軸、垂直方向をY軸とした場合に、回転角θcsはX軸と第1リンク11とがなす角度であり、図中反時計回り方向を正方向とする。
図3はアクチュエータロッド13を進退させた場合の、連結ピン14及び連結ピン15の軌跡とアクチュエータロッド13の軸線との関係を表した図である。図3に示すように、連結ピン14の軌跡はコントロールシャフト7の回転軸7aを中心とした円弧となり、連結ピン15の軌跡はアクチュエータロッド13の軸線に重なる。本実施形態では、最低圧縮比と最高圧縮比との間の中間圧縮比時に、第1リンク11とアクチュエータロッド13の軸線とが交差するような設定にする。
このように設定すると、図7(a)に示すように、連結ピン14の軌跡とアクチュエータロッド13の軸線とが交差しない場合(図7(b))に比べて、最高圧縮比から最低圧縮比までの全圧縮比域に渡って、連結ピン14とアクチュエータロッド13の軸線との距離(連結ピン・アクチュエータロッド軸間距離D1、D2)を短くできる。このため、アクチュエータロッド13とハウジング16との接触点においてアクチュエータロッド13に作用する曲げトルクを低減することができる。
また、連結ピン14の軌跡は、第1リンク11とアクチュエータロッド13の軸線が直角に交差する位置を基準として、アクチュエータロッド13の軸端(ハウジング16側の端部)から遠ざかる方向の長さが近づく方向の長さよりも長くなるように設定する。このように設定した場合の、コントロールシャフト角度θcsと、コントロールシャフト7の回転角(又は駆動モータ18の回転量)あたりのアクチュエータロッド13の移動量Vrodとの関係を図8に示す。図8の横軸はコントロールシャフト角度θcs、縦軸は移動量Vrodであり、実線Vrod-rは本実施形態の場合を表しており、鎖線Vrod-fはフォーク式連結機構の場合の移動量Vrodを表している。コントロールシャフト回転角θcsが大きくなるほどコントロールシャフト7は図中反時計回り方向に回転して高圧縮比状態になる。
図8に示すように、本実施形態では、低圧縮比時よりも高圧縮比時の方がコントロールシャフト7の回転角当りのアクチュエータロッド13の移動量が大きい。すなわち、アクチュエータロッド13の移動量(又は駆動モータ18の回転量)に対するコントロールシャフト角度θcsの変化量が小さい。このため、微少なコントロールシャフト角度θcsの制御が容易になり、また、アクチュエータロッド13が曲げ変形した場合のコントロールシャフト角度θcsへの影響が小さくなるので、高圧縮比時に高精度の圧縮比制御を行うことができる。なお、低圧縮比時には、上記とは逆にコントロールシャフト角度θcsを変化させるために必要なアクチュエータロッド13の移動量が高圧縮比時に比べて小さくなるが、最高圧縮比から最低圧縮比までのコントロールシャフト角度θcsが後述する図5に示すような領域となるように設定すると、低圧縮比になるほどコントロールシャフト7の回転角当りの圧縮比変化量が相対的に小さくなるので、圧縮比制御の精度が悪化することはない。
図4は最高圧縮比時と最低圧縮比時の第1リンク11、第2リンク12、アクチュエータロッド13の関係を表した図である。図4に示すように、最高圧縮比時のθ1の方が最低圧縮比時のθ1よりも180度に近くなるように、すなわち、最高圧縮比時の方が最低圧縮比時よりも、第2リンク12とアクチュエータロッド13とが平行に近くなるように設定する。
この設定による効果について図9を参照して説明する。図9(a)はθ1が180度でない場合、図9(b)はθ1が180度の場合について、第1リンク11からアクチュエータロッド13へのコントロールシャフトトルクの伝達について表した図である。
図9(a)に示すように、第2リンク12とアクチュエータロッド13が平行ではない場合には、第1リンク11に作用したコントロールシャフトトルクのうち、第2リンク12の軸方向への分力が第2リンク12に伝達される。そして、第2リンク12に伝達された分力のうち、アクチュエータロッド13の軸方向分力はアクチュエータロッド13の軸方向に作用するが、アクチュエータロッド13と垂直方向の分力は曲げ荷重として作用する。これに対して、第2リンク12とアクチュエータロッド13とが平行の場合には、図9(b)に示すように、第2リンク12からアクチュエータロッド13へ伝達される荷重にアクチュエータロッド13に垂直方向の分力がないので、アクチュエータロッド13に曲げ荷重は作用しない。
すなわち、第2リンク12とアクチュエータロッド13とが平行に近づくほど、アクチュエータロッド13に作用する曲げ荷重は小さくなる。
図5は最高圧縮比時と最低圧縮比時の連結ピン10の位置について表した図である。図5に示すように、本実施形態では、コントロールシャフト角度θcsが概ね90度付近から180度付近の範囲内で変化し、最低圧縮比時には90度付近、最高圧縮比時には180度付近となるように設定する。
これにより、コントロールシャフト角度θcsが増大するほど圧縮比も大きくなり、単位変化角当りの圧縮比増加率はコントロールシャフト角度θcsが大きくなるほど大きくなる(図10(a)参照)。また、高圧縮比になるほど、コントロールリンク5から伝達される荷重を回転軸7a周りのトルクに変換する有効腕長さが長くなる。
一方、機関負荷が高い場合には低圧縮比、低い場合には高圧縮比となるように制御するので、コントロールリンク5からコントロールシャフト7に伝達される力は高圧縮比になるほど小さくなる。しかしながら、伝達される力と有効腕長さの積で表されるコントロールシャフトトルクTCSは、有効腕長さの方が伝達される力よりも支配的であるため、圧縮比が高くなるほど増大する(図10(b)参照)。したがって、コントロールシャフトトルクTCSを第1リンク11の長さLで除して得られる荷重(TCS/L)も圧縮比が高くなるほど大きくなる(図10(c)参照)。
図6は、最高圧縮比時と最低圧縮比時のアクチュエータロッド13とハウジング16との関係を表した図である。図6に示すように、アクチュエータロッド13のハウジング16からの突き出し量は、最高圧縮比時に最小、最低圧縮比時に最大とすると、圧縮比と突き出し量との関係は図10(d)のようになる。
すなわち、高圧縮比時のように荷重が大きい条件では、アクチュエータロッド13の突き出し量が小さくなり、一方、アクチュエータロッド13の突き出し量が大きい低圧縮比時には荷重が小さいので、全圧縮比域で曲げトルクを低減することができる。これにより、アクチュエータロッド13の曲げ変形による実圧縮比と目標圧縮比との乖離を低減することができる。また、アクチュエータロッド13の曲げ応力が低減するため、アクチュエータロッド13の小径化、アクチュエータロッド13の支持構造の小型化が可能となり、エンジンを小型化することができる。
ここで、アクチュエータロッド13の形状について図11を参照して説明する。図11(a)は従来のフォーク式連結機構に用いていたアクチュエータロッドの概略図、図11(b)はハウジング16のアクチュエータロッド軸方向端面(図11(a)の破線で囲んだ領域A)におけるアクチュエータロッド13の断面図、図11(c)は本実施形態で用いるアクチュエータロッド13の断面図である。
図11(a)に示すように、従来のフォーク式連結機構を用いる場合は、フォークとアクチュエータロッド13との干渉を避けるため、ロッド先端の連結部を二股にする必要があった。
このため、曲げ荷重によってアクチュエータロッド13がハウジング16と接触して、ハウジング16から図中矢印Pのような力を受けると、二股部分には図中矢印Tで示すような曲げトルクが作用する。この曲げトルクによってアクチュエータロッド13には曲げ変形が生じ、二股部の根元部分の曲げ応力が増大する。
しかしながら、本実施形態では、アクチュエータロッド13と第2リンク12との干渉を考慮する必要はないので、アクチュエータロッド13の先端部を一股にする。このため、図11(b)の矢印Pのような力を受けても、図11(b)の矢印Tのような曲げトルクが作用することはなく、アクチュエータロッド13の根元部分への応力集中を回避することができる。
なお、第2リンク12には、引張り又は圧縮荷重のみ作用し、曲げ荷重は作用しないため、二股部分を備えていても、二股部分根元への応力集中を回避することができる。
以上により本実施形態では次のような効果を得ることができる。
(1)ピストン1とクランクシャフト6とを機械的に連繋するアッパーリンク3、ロアリンク4と、クランクシャフト6と略平行に延びるコントロールシャフト7と、一端がアッパーリンク3に連結されるとともに、他端がコントロールシャフト7の回転軸7aから偏心した位置に連結されたコントロールリンク5と、コントロールシャフト7を所定の制御範囲内で回転駆動し、かつ所定の回転位置に保持する駆動モータ18と、を有し、コントロールシャフト7が回転することにより圧縮比が連続的に低下又は増加する可変圧縮比機構において、コントロールシャフト7に結合される第1リンク11と、第1リンクに連結ピン14で回転可能に連結される第2リンク12と、駆動モータ18に進退可能に支持され第2リンク12と連結ピン15で回転可能に連結されるアクチュエータロッド13と、アクチュエータロッド13を進退させることでコントロールシャフト7を回転させて圧縮比を制御する制御手段と、を備えるので、アクチュエータロッド13の曲げ荷重を低減することが可能となる。そのため、アクチュエータロッド13への曲げ荷重による応力・変形を低減することができるので、曲げ荷重低減のために機関出力を制限したり、高負荷時の圧縮比を制限したりする必要が無くなる。また、従来のフォーク式連結機構と異なり、コントロールシャフト7及び第1リンク11と第2リンク12とが干渉することがないので、アクチュエータロッド13の長さ短縮が可能となり、アクチュエータロッドの変形、応力を低減できる。曲げ荷重が低減するため、アクチュエータロッド13が駆動する際のアクチュエータロッド13と支持部との間のフリクションが低減し、圧縮比変更の応答性が向上する。アクチュエータロッド13の曲げ応力が低減することでアクチュエータロッド13の小径化が可能となるので、レイアウトの自由度が高まり、エンジンの小型化が可能となる。
(2)アクチュエータロッド13の移動量又は駆動モータ18の回転量に対するコントロールシャフト7の回転量は、低圧縮比時よりも高圧縮比時の方が小さくなるので、高圧縮比時の圧縮比制御の精度を向上することができる。この高圧縮比時の圧縮比制御の精度向上は、アクチュエータロッド13が支持位置から遠ざかる方向に前進するほど圧縮比は低下し、アクチュエータロッド13の進退範囲は、第1リンク11とアクチュエータロッド13の軸線とが直交する位置に対して、圧縮比が低下する方向の領域が、圧縮比が上昇する方向の領域よりも広くなるように設定することで実現できる。
(3)略最高圧縮比となるときに、第2リンク12とアクチュエータロッド13とが略平行になるので、略最高圧縮比時にアクチュエータロッド13に作用する曲げ荷重を低減することができる。
(4)連結ピン14の軌跡がアクチュエータロッド13の軸線と交差するので、最高圧縮比及び最低圧縮比時の連結ピン14とアクチュエータロッド13との軸間距離を低減することができ、これにより、全圧縮比域でアクチュエータロッド13の変形による実圧縮比の目標圧縮比からの乖離を低減することができる。
(5)コントロールシャフト7の可動角度を、コントロールリンク5から連結ピン14に作用する荷重をコントロールシャフト7の回転軸7a周りのトルクに変換する有効腕長さが低圧縮比時には小さく高圧縮比時には大きくなるように、かつ圧縮比を高める方向に回転させたときにアクチュエータロッド13の先端部の支持位置からの突出量が減少するように設定するので、低圧縮比時にコントロールシャフトトルクTCSが最小になり、低圧縮比時のアクチュエータロッド13の曲げ荷重増大やアクチュエータロッド13の突き出し量増大を相殺して曲げトルクを低減することができる。また、高圧縮比時にはコントロールシャフトトルクTCSが最大となるが、アクチュエータロッド13の突き出し量が最小となるため曲げトルクを低減することができる。すなわち、全圧縮比域でアクチュエータロッド13の曲げトルクが低減され、曲げ変形による実圧縮比の目標圧縮比からの乖離を低減することができる。また、アクチュエータロッド13の曲げ応力が低減するため、アクチュエータロッド13の小径化、支持構造の小型化によりエンジンを小型化することができる。
なお、上記の各設定は、コントロールシャフト7及びアクチュエータロッド13の配置や、第1リンク11、第2リンク12の長さ、そして第1リンク11のコントロールシャフト7への取り付け角度等により実現する。
(6)第2リンク12とアクチュエータロッド13との連結部は、第2リンク12を二股、アクチュエータロッド13を一股にするので、アクチュエータロッド13の支持位置近傍への応力集中を回避することができる。また、第1リンク11との連結部についても同様に第2リンク12を二股にすることで、第2リンク12及びアクチュエータロッド13に干渉することなくアクチュエータロッド13及び第1リンク11のピンボス径を増大することができる。すなわち、ピンボス幅を縮小した場合にもピンボス径の増大によって応力増大を避けることができる。これにより、第1リンク11、第2リンク12及びアクチュエータロッド13の連結部の幅を縮小して、周辺に位置するコントロールリンク5やコントロールシャフト7を支持するキャップ(図示せず)、第1リンク11、ロアリンク4等との干渉を回避することができる。
(7)コントロールシャフト7とアクチュエータロッド13とを第1リンク11及び第2リンク12を介して連結するので、フォーク状部材のみを介して連結する従来のフォーク式連結機構と比較して、アクチュエータロッド13のストローク量を低減することができる。このため、アクチュエータロッド13、ハウジング16、減速機17及び駆動モータ18からなるアクチュエータ機構の全長を短縮することができる。
(8)コントロールシャフト7と一体の第1リンク11を用いる本実施形態では、第1リンク11の根元に二股部が存在しないため、当該根元部分近傍の断面積を従来のフォーク式連結機構のフォーク部材よりも大きくとることができる。そのため、曲げ応力を低減することができる。
(9)第2リンク12に作用する力は主に引張力または圧縮力のみであるので、曲げ荷重が作用する第1リンク11に対して第2リンク12の断面積を低減することができる。そのため、周辺に位置するコントロールリンク5やコントロールシャフト7を支持するキャップ(図示せず)、第1リンク11、ロアリンク4等との干渉を回避することができる。
(10)従来のフォーク式連結機構では、連結ピンからフォーク部材の先端までの所定長さが必要であったため、アクチュエータロッド13の軸受位置は、フォーク部材との干渉を回避できる位置まで離す必要があった。そのため、軸受位置はアクチュエータロッド13への荷重入力点から離れた位置となり、アクチュエータロッド13の軸受を支点とする曲げモーメントが増大してしまうという問題があった。しかし、第2リンク12を介して連結する本実施形態によれば、第2リンク12とアクチュエータロッド13との連結ピン15との干渉を回避できる位置であればよいので、曲げモーメントを低減することができる。
(11)従来のフォーク式連結機構は、フォーク部材にガイド部を設け、このガイド部に沿って連結ピンが移動する構造であるため、連結ピンとガイド部とのクリアランスが大きくなりがちであった。これに対して、本実施形態ではピン連結構造であるため、連結ピン15とピンボス部との間のクリアランスを縮小することができる。これにより、連結ピン15に変動荷重が作用したときの振動や騒音を低減することができる。また、クリアランスを縮小することによって、コントロールシャフト角度のクリアランス分の変動を低減することができるので、圧縮比のバラツキを低減することができる。
第2実施形態について図12、図13を参照して説明する。図12、図13は、それぞれ第1実施形態の図5、図10(a)に相当する図である。
本実施形態で用いる可変圧縮比機構は基本的に第1実施形態と同様であり、図8に示すように、低圧縮比時よりも高圧縮比時の方がコントロールシャフト7の回転角当りのアクチュエータロッド13の移動量が大きいという関係は第1実施形態と同様である。
しかし、図12に示すように、コントロールシャフト角度θcsが概ね180度付近から270度付近の範囲内で変化し、最低圧縮比時には180度付近、最高圧縮比時には270度付近となるように設定する点が異なる。
これにより、圧縮比はコントロールシャフト角度θcsが増大するほど大きくなるが、第1実施形態とは異なり、単位変化角当りの圧縮比増加率はコントロールシャフト角度θcsが大きくなるほど小さくなる(図13参照)。すなわち、最高圧縮比に近づくほど、コントロールシャフト角度θcsの変化量に対する圧縮比変化量が小さくなるので、高圧縮比側の圧縮比制御の精度をより高めることができる。
第3実施形態について説明する。
本実施形態の可変圧縮比機構の構成は、図14に示すように、基本的に第1実施形態と同様である。なお、図14(a)は最低圧縮比、図14(b)は最高圧縮比の状態を表した図である。
連結ピン10は、最低圧縮比の状態ではコントロールシャフト角度θcsが90度付近にあり、最高圧縮比の状態ではコントロールシャフト角度θcsが180度付近となる。すなわち、コントロールシャフト7に作用する荷重F3をコントロールシャフトトルクTcsに変換する有効腕長さは、最高圧縮比の状態で最大になる。
また、第2リンク12とアクチュエータロッド13とがなす角度θ2が、最高圧縮比の状態で最大となるように、第1リンク11、第2リンク12及びアクチュエータロッド13を配置する。これにより、第2リンク12からアクチュエータロッド13に作用する荷重の、機関垂直方向成分(アクチュエータロッド13の径方向成分)をF1、機関水平方向成分(アクチュエータロッド13の軸方向成分)をF2、としたときに、F2に対するF1の比率、つまりF1/F2が最高圧縮比の状態で最小となる。
前述したように、作用する荷重F3と有効腕長さとの積で表されるコントロールシャフトトルクTCSの大きさは、有効腕長さが支配的である。そのためコントロールシャフトトルクTCSは最高圧縮比の状態で最大となる。したがって、有効腕長さが最大となる圧縮比、言い換えるとコントロールシャフトトルクTCSが最大となる圧縮比において、F2に対するF1の比率が最小となる。
径方向成分はアクチュエータロッド13に対して曲げ荷重として作用するので、F1/F2が小さくなるほど、アクチュエータロッド13に作用する曲げ荷重は相対的に小さくなることとなる。
したがって、コントロールシャフトトルクTCSの最大値が作用するときにF1/F2が最小となるように設定することで、コントロールシャフトトルクTCSが最大値をとるときに大きくなりがちであった曲げ荷重を相対的に小さくすることができる。これによりアクチュエータロッド13の小径化が可能となる。
さらに、アクチュエータロッド13の曲げ荷重の低減及び小径化により、ハウジング16とアクチュエータロッド13との間のフリクションが低減するので、可変圧縮比機構の応答性を向上させることができる。
ところで、図14(a)、(b)に示したような設定にすると、コントロールシャフト7の単位回転角あたりのピストン上死点位置変化量は、低圧縮比側よりも高圧縮比側の方が大きくなる。また、コントロールシャフトトルクTCSは、低圧縮比側よりも高圧縮比側の方が大きく、かつ燃焼荷重が作用した場合にはコントロールシャフト7を低圧縮比側に回転させようとする方向に作用する。
したがって、ノッキングが発生し易い高圧縮比領域から速やかに低圧縮比へと変化させることが可能となるので、確実にノッキングを回避しつつ、加速性能を向上させることが可能となる。
また、高圧縮比から低圧縮比に変化させる場合には、圧縮比が目標圧縮比近傍まで低下するとコントロールシャフト7の単位回転角あたりのピストン上死点位置変化量が小さくなる。そして、コントロールシャフトトルクTCSは圧縮比が低下するほど小さくなる。したがって、圧縮比が低下するほど圧縮比の変化速度が低下する。
さらに、低圧縮比になるほどアクチュエータロッド13に作用する曲げ方向荷重が大きくなり、アクチュエータロッド13とハウジング16との間のフリクションが増大するので、さらに圧縮比の変化速度が低下する。
よって、高圧縮比から低圧縮比に変化させる場合には、低圧縮比化が進むと駆動モータ18のトルクによる減速が不要となるか、もしくは低減できるため、駆動モータ18の駆動による消費エネルギを低減することが可能となる。
上述した最高圧縮比時に有効腕長さが最大、最低圧縮比時に最小となり、かつF2に対するF1の比率が最高圧縮比時に最小となる構成は、図14の構成に限られるわけではなく、例えば図15、図16、図17のような構成であってもよい。
図15〜図17は、最高圧縮比時及び最低圧縮比時における連結ピン10及び連結ピン14の位置を表した図である。ここで、連結ピン10、連結ピン14、連結ピン15の位置の変化範囲を表すのに、便宜上、ゼロ度≦θcs<90度の範囲を第1象限、90度≦θcs<180度の範囲を第2象限、180度≦θcs<270度を第3象限、270度≦θcs<360度の範囲を第4象限とする。
図15は、連結ピン10の変化範囲がほぼ全域が第1象限、連結ピン14の変化範囲のほぼ全域が第4象限である。連結ピン14の軌跡は、最高圧縮比から最低圧縮比までのほぼ全域に渡ってアクチュエータロッド13の軸線よりも機関上方側にある、又は最高圧縮比近傍でアクチュエータロッド13の軸線と接する、もしくは交差する。
図16は、連結ピン10の変化範囲のほぼ全域が第2象限、連結ピン14の変化範囲のほぼ全域が第4象限である。連結ピン14の軌跡は、最高圧縮比から最低圧縮比までの全域に渡ってアクチュエータロッド13の軸線よりも機関下方側にある。
図17は連結ピン10の変化範囲のほぼ全域が第1象限、連結ピン14の変化範囲のほぼ全域が第3象限である。連結ピン14の軌跡は、最高圧縮比から最低圧縮比までのほぼ全域に渡ってアクチュエータロッド13の軸線よりも機関下方側にある。
上記の図15〜図17のような構成であっても、最高圧縮比時に有効腕長さが最大、最低圧縮比時に最小となり、かつF2に対するF1の比率が最高圧縮比時に最小とすることができる。
ところで、図14および図15の構成では、図22(a)、(b)に示すように、アクチュエータロッド13の軸線に対して直角方向の連結ピン14とコントロールシャフト7の中心との距離(y1)よりも、アクチュエータロッド13の軸線とコントロールシャフト7の中心との距離(y2)の方がほぼ全圧縮比域に渡って大きくなる。ここで、図22(a)、(b)は、それぞれ最高圧縮比時または最低圧縮比時の第1リンク11、第2リンク12及びアクチュエータロッド13の状態の一例を表す図である。図のアクチュエータロッド13の上方の実線は、運転中のロアリンク4下端部付近の軌跡を表している。
このような構成にすることで、F1の大きさは全圧縮比域で略一定になる。これについて図23(a)〜(g)、図24(a)〜(g)を参照して説明する。
図23(a)は、コントロールシャフト角度に対する圧縮比の変化の特性を表す図であり、コントロールシャフト角度が大きくなるほど圧縮比は二次曲線的に高くなっている。
図23(b)は、コントロールシャフト角度に対する有効腕長さの変化の特性を表す図であり、コントロールシャフト角度が大きくなるほど有効腕長さが増大するが、コントロールシャフト角度の変化量に対する有効腕長さの増大の割合はコントロールシャフト角度が大きくなるほど小さくなっている。
図23(c)は、コントロールシャフト角度に対する、コントロールシャフト7に作用する荷重F3の変化の特性を表す図であり、コントロールシャフト角度が大きくなるのに比例してF3は小さくなっている。
図23(d)は、コントロールシャフト角度とコントロールシャフトトルクTCSとの関係を表す図である。コントロールシャフトトルクTCSはF3と有効腕長さとの積で表されるが、有効腕長さの方が支配的であることから、結果として、有効腕長さと同様の特性を示す。
図23(e)は、コントロールシャフトトルクTCSを第1リンク11の長さLで除した値、すなわち連結ピン15に作用する荷重の大きさの、圧縮比の変化に対する特性を表す図であり、有効腕長さと同様の特性を示している。
図23(f)は、圧縮比に対するF1/F2の変化の特性を表す図である。F1/F2は高圧縮比になるほど小さくなっている、また、高圧縮比になるほど、圧縮比の変化に対するF1/F2の変化の割合は小さくなっている。
なお、図15の構成の場合、最高圧縮比近傍では連結ピン14が第3象限にあるため、図23(e)、(f)の最高圧縮比近傍の特性が、厳密には図14の構成の場合とは異なる。しかしながら、全圧縮比域で見た場合には概ね同じ特性とみて差し支えない。
図23(g)は、圧縮比に対するF1の大きさの変化の特性を表す図である。F1の大きさは、連結ピン15に作用する荷重の機関垂直方向成分なので、図23(e)に示したTCS/Lと図23(f)に示したF1/F2との積で表される。したがって、圧縮比が高くなるほど大きくなるが、高圧縮比側では低圧縮比側に比べて変化の割合が小さくなるというTCS/Lの特性と、圧縮比が高くなるほど小さくなり、高圧縮比になるほど圧縮比の変化に対する変化の割合が小さくなるF1/F2の特性とが相殺しあい、結果として図23(g)に示すようにF1は圧縮比によらず略一定となる。
これに対して、図24(a)〜(g)は、図16又は図17の構成にした場合について、図23(a)〜(g)に相当する変化の特性を表す図である。図24(a)〜(e)は図23(a)〜(e)と同様の特性となっている。しかしながら、図24(f)は、圧縮比が高くなるほどF1/F2の値が小さくなるのは図23(f)と同様であるが、圧縮比が高くなるほどF1/F2の変化の割合が大きくなる点が異なる。そのため、TCS/LとF1/F2とが相殺しないため、F1の大きさは図24(g)に示すように中間圧縮比において最大となる。
すなわち、本実施形態の構成では、図16または図17の構成に比べて、最低圧縮比及び最高圧縮比の近傍ではF1が大きくなるが、その他の領域では図16または図17の構成に比べて小さくなり、かつ最大値も小さくなる。よって、全圧縮比域で見た場合には、本実施形態の方がF1の大きさを低減できることとなる。
以上により本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
(1)第2リンク12からアクチュエータロッド13に作用する荷重のアクチュエータロッド径方向成分をF1、アクチュエータロッド軸方向成分をF2とし、コントロールリンク5からコントロールシャフト7の偏心軸に作用する力をF3とし、F3によってコントロールシャフト7の回転軸7a周りに働くトルクをコントロールシャフトトルクTCSと定義したときに、コントロールシャフトトルクTCSが最大となる圧縮比においてF2に対するF1の比率が最小となるように構成するので、コントロールシャフトトルクTCSの最大値が作用したときのアクチュエータロッド径方向荷重を低減でき、これによりアクチュエータロッド13の小径化が可能となる。また、アクチュエータロッド径方向荷重の低減とアクチュエータロッド13の小径化により、アクチュエータロッド13とハウジング16との間のフリクションが低減でき、圧縮比可変応答性を向上することができる。
(2)コントロールシャフト7に作用する荷重F3をコントロールシャフトトルクTCSに変換する有効腕長さが最大となる圧縮比時に、F2に対するF1の比率が最小となるように構成することにより、上記(1)と同様の効果が得られる。
(3)コントロールシャフト7の可動角度を、コントロールシャフトトルクTCSが低圧縮比時よりも高圧縮比時の方が大きくなるように設定し、かつ、高圧縮比時の方が低圧縮比時よりもF2に対するF1の比率が小さくなるように構成することにより、低圧縮比よりも高圧縮比の方がコントロールシャフト7の単位回転角当りのピストン上死点位置変化量が増大する。また、低圧縮比側よりも高圧縮比側の方がコントロールシャフトトルクTCSが大きいため、低圧縮比化方向にコントロールシャフト7を回転させようとする作用がより大きく働く。そのため、よりノッキングが発生しやすい高圧縮比から急速に低圧縮比化することが可能となる。すなわち、加速時等に最適圧縮比に急速に可変することが可能となるので、ノッキングを回避しつつ加速性能を向上させることができる。
また、高圧縮比時にF2に対するF1の比率が小さくなるので、アクチュエータロッド13を縮径化することができる。これによりアクチュエータロッド13とハウジング16との間のフリクションを低減することができるので、さらに圧縮比可変応答性を向上させることができる。
その他にも、低圧縮比化の過程において圧縮比が目標圧縮比近傍に達したときに、コントロールシャフト7の単位角度変化当りのピストン上死点位置変化量が減少し、また低圧縮比化方向にコントロールシャフトを回転させようとする作用も減少する。そして、アクチュエータロッド13の軸受に作用する荷重のアクチュエータロッド径方向成分の比率が増大するため、軸受部でのフリクションが増大する。これらにより圧縮比可変速度が低下するので、低圧縮比化の終盤付近に駆動モータ18のモータトルクによる減速が不要となるか、もしくは低減することができ、消費エネルギを低減することができる。
(4)コントロールシャフト7の可動角度を、コントロールシャフトトルクTCSが低圧縮比時よりも高圧縮比時の方が大きくなるように設定し、かつ、高圧縮比時の方が低圧縮比時よりも連結ピン14の中心とアクチュエータロッド13の軸線との距離が短くなるように構成することにより、上記(3)と同様の効果を得ることができる。
(5)連結ピン14の中心とアクチュエータロッド13の軸線とのアクチュエータロッド13の軸線に対して直交する方向の距離(y1)よりも、アクチュエータロッド13の軸線とコントロールシャフト7の回転軸7aとのアクチュエータロッド13の軸線に対して直交する方向の距離(y2)の方が、略全圧縮比域に渡って大きいので、全圧縮比域に渡って相対的にコントロールシャフトトルクを低減することができる。これにより、アクチュエータロッド13に作用する荷重も相対的に低減することができるので、アクチュエータロッド13、ハウジング16等からなるアクチュエータ機構を小型化することができる。
第4実施形態について図18を参照して説明する。
本実施形態の可変圧縮比機構の構成は基本的に第1実施形態と同様であるが、連結ピン10、連結ピン14、連結ピン15の変化範囲が異なる。図18は本実施形態の各連結ピン10、14、15の変化範囲を表す図である。
図18に示すように、連結ピン10の位置は第2象限と第3象限とに渡る変化範囲で変化し、最高圧縮比時は第3象限、最低圧縮比時は第2象限となるように設定する。
一方、連結ピン14の位置は第3象限と第4象限とに渡る変化範囲で変化し、最高圧縮比時には第4象限、最低圧縮比時には第3象限となるように設定する。さらに、連結ピン14の位置は、中間圧縮比時にアクチュエータロッド13の軸線に最も近づくように設定する。
上記のような設定にすることで、コントロールリンク5から伝達される荷重を回転軸7a周りのトルクに変換する有効腕長さは、中間圧縮比時(θcs=180度)に最大となる。そして、この中間圧縮比時に連結ピン14とアクチュエータロッド13の軸線との距離が最小となり、F2に対するF1の比率が最小となる。これにより、アクチュエータロッド13に作用する曲げ方向荷重の最大値を低減させることができる。
コントロールシャフト7の単位変化角あたりのピストン上死点位置変化量は、連結ピン10の変化範囲が第1象限もしくは第2象限のみの場合に比べて、最大値は同等であるが、最小値は大きくなる。つまり、コントロールシャフト7の単位変化角あたりのピストン上死点位置変化量は、圧縮比域全体としてみると大きくなる。また、燃焼荷重等は、第3実施形態と同様に低圧縮比化する方向により大きく作用する。
したがって、高圧縮比から低圧縮比へ速やかに変化させることが可能となる。
ところで、本実施形態と同様の効果は、例えば図19、図20、図21のような構成によっても得られる。図19〜図21は、最高圧縮比時、中間圧縮比時及び最低圧縮比時における連結ピン10及び連結ピン14の位置を表した図である。
図19は、連結ピン10の変化範囲が第4象限と第1象限とに渡っており、最高圧縮比時には第4象限、最低圧縮比時には第1象限、中間圧縮比時にはθcsがほぼゼロ度の位置にある。連結ピン14の変化範囲は第3象限と第4象限とに渡っており、最高圧縮比時には第3象限、最低圧縮比時には第4象限、中間圧縮比時にはθcsがほぼ270度の位置にある。また、連結ピン14の軌跡は、全圧縮比域に渡ってアクチュエータロッド13の軸線よりも機関上方にある。
図20は、連結ピン10の変化範囲が第2象限と第3象限とに渡っており、最高圧縮比時には第3象限、最低圧縮比時には第2象限、中間圧縮比時にはθcsがほぼ180度の位置にある。連結ピン14の変化範囲は第3象限と第4象限とに渡っており、最高圧縮比時には第4象限、最低圧縮比時には第3象限、中間圧縮比時にはθcsがほぼ270度の位置にある。また、連結ピン14の軌跡は、最低圧縮比及び最高圧縮比のときにはアクチュエータロッド13の軸線よりも機関上方、中間圧縮比のときにアクチュエータロッド13の軸線と接し、又は軸線よりも機関下方側となる。
図21は、連結ピン10の変化範囲が第4象限と第1象限とに渡っており、最高圧縮比時には第4象限、最低圧縮比時には第1象限、中間圧縮比時にはθcsがゼロ度付近の位置にある。連結ピン14の変化範囲は第3象限と第4象限とに渡っており、最高圧縮比時には第3象限、最低圧縮比時には第4象限、中間圧縮比時にはθcsがほぼ270度の位置にある。また、連結ピン14の軌跡は、最低圧縮比及び最高圧縮比のときにはアクチュエータロッド13の軸線よりも機関上方、中間圧縮比のときにアクチュエータロッド13の軸線と接し、又は軸線よりも機関下方側となる。
上記図18〜図21のような構成にすることで、コントロールシャフト7の単位角度変化当りのピストン1の上死点位置の変化量は、中間圧縮比時に最大となる。そして、最高圧縮比時及び最低圧縮比時に最小となるが、この最小値は、図14及び図15の構成における最小値よりは大きくい。すなわち、図14及び図15の構成に比べると、全圧縮比域に渡って、コントロールシャフト7の単位角度変化当りのピストン1の上死点位置の変化量は大きくなる。また、燃焼圧は低圧縮比化方向にコントロールシャフト7を回転させる向きにより大きく作用する。
したがって、図18〜図21のような構成にすることで、低圧縮比化方向の応答性を向上させることができる。
以上により本実施形態では、次のような効果を得ることができる。
(1)低圧縮比と高圧縮比との中間である中間圧縮比時にコントロールシャフトトルクTCSが最大値をとるようにコントロールシャフト7の可動角度を設定し、かつ、中間圧縮比時の方が低圧縮比時及び高圧縮比時よりもF2に対するF1の比率が小さくなるように構成するので、全圧縮比域に渡って単位角度変化量当りのピストン上死点位置変化量が相対的に大きくなると同時に、コントロールシャフト7を低圧縮比化方向に回転させようとする作用が大きく働くため、低圧縮比化応答性を向上させることができる。
(2)低圧縮比と高圧縮比との中間である中間圧縮比時にコントロールシャフトトルクTCSが最大値をとるようにコントロールシャフト7の可動角度を設定し、かつ、中間圧縮比時の方が低圧縮比時及び高圧縮比時よりも連結ピン14の中心とアクチュエータロッド13の軸線との距離が短くなるように構成することにより、上記(1)と同様の効果を得ることができる。
第5実施形態について図25を参照して説明する。図25は本実施形態のアクチュエータロッド13付近の構造を表した図である。ピストン1とクランクシャフト6とをアッパーリンク3、ロアリンク4を介して連結し、ロアリンク4とコントロールシャフト7とをコントロールリンク5を介して連結し、コントロールシャフト7とアクチュエータロッド13とを第1リンク11及び第2リンク12を介して連結する構成は図1等と同様であるが、アクチュエータロッド13の支持構造が異なる。
具体的には、アクチュエータロッド13を支持する支持部材20及び支持部材21を備え、支持部材20と支持部材21は、アクチュエータロッド13の軸方向に連結ピン15を挟むように配置する。
このように、荷重が入力される連結ピン15の両側でアクチュエータロッド13を支持する構成にすることで、アクチュエータロッド13の曲げ方向の変形を抑制することができる。したがって、連結ピン15から入力される荷重に対する曲げ剛性を確保しつつアクチュエータロッド13の径を小さくすることができる。また、剛性確保のためにハウジング16を大型化する必要がなくなる。
すなわち、アクチュエータロッド13の小径化及びハウジング16の小型化を図ることができる。
また、上述したようにアクチュエータロッド13の曲げ変形を抑制することができるので、連結ピン15から入力される荷重の機関垂直方向成分の増大に対する許容範囲も拡がる。すなわち、アクチュエータロッド13の軸線に対して直角方向の連結ピン14とコントロールシャフト7の中心との距離(y1)と、アクチュエータロッド13の軸線とコントロールシャフト7の中心との距離(y2)との比率y2/y1を、図22に比べてより大きくすることが可能となる。
y2/y1をより大きくすることにより、アクチュエータロッド13とコントロールシャフト7とが十分離れた配置となる。すなわち、コントロールシャフト7を支持するキャップ部材、コントロールリンク5及びロアリンク4等とアクチュエータロッド13の周辺部品との干渉を容易に回避することが可能となる。
以上により本実施形態では、次のような効果を得ることができる。
連結ピン15をアクチュエータロッド13の軸方向に挟むようにアクチュエータロッド支持用の軸受部材を2つ設ける、すなわちアクチュエータロッド13を荷重作用点の両側で支持することにより、アクチュエータロッド13の縮径化、アクチュエータ機構の小型化が可能となる。また、距離y1に対する距離y2の比率を大きくしても、アクチュエータロッド13の曲げ変形を抑制することができるので、アクチュエータロッド13をコントロールシャフト7から十分に離した位置に配置することによって、アクチュエータロッド13とコントロールシャフト7支持用のキャップ部材、コントロールリンク5等の部品との干渉を回避することができる。
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。