JP5089971B2 - MnCoZnフェライトおよびトランス用磁心 - Google Patents

MnCoZnフェライトおよびトランス用磁心 Download PDF

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Description

本発明は、イーサネット(登録商標)機器等のパルストランス用磁心に用いて好適なMnCoZnフェライトおよび同フェライトからなるトランス用磁心に関するものである。
イーサネット機器では、入出力端子でのインピーダンス整合を図る、もしくは電気的絶縁を保つ目的から、軟磁性材料からなる磁心を有するパルストランスが主に用いられている。このパルストランスには、米国の規格であるANSI X3.263−1995[R2000]により、−40〜85℃という広い温度域において、直流磁場が印加された下でも高い実効透磁率μを有することが求められている。
上記軟磁性材料からなる磁心には、トロイダル形状で、外径が約3mmと超小型のMnZnフェライトが一般に用いられている。MnZnフェライトは、多くの軟磁性材料の中でも、特に、高透磁率、高インダクタンスが容易に得られる、また、アモルファス金属等の金属磁性材料と比較して安価である等の特長を有している。
しかし、MnZnフェライトは、酸化物磁性材料であることから、金属磁性材料と比較して、温度変化により磁気特性が大きく変化するという特性を有する。そのため、幅広い温度域において、安定した磁気特性を得るのが難しい。そのため、通常のMnZnフェライトでは、ANSI X3.263−1995[R2000]で定められたような、−40〜85℃の温度域において、直流磁場が印加された下でも高い実効透磁率を実現することは難しいという問題がある。
MnZnフェライトが有する磁気特性の上記温度依存性を改善するには、正の磁気異方性を有するCoOの添加が有効であることが知られている。例えば、特許文献1には、50〜56mol%の酸化鉄と30〜36mol%の酸化マンガンと20〜6mol%の酸化亜鉛とからなる基本成分組成に0.01〜1.0mol%の酸化コバルトを添加することにより、−30〜90℃の温度範囲における初透磁率の温度依存性を改善した酸化物磁性材料が開示されている。また、特許文献2には、本発明と同じ通信用トランス等の磁心に用いられる、Fe:51〜54mol%、ZnO:14〜21mol%、残部MnOを主成分とするMnZn系フェライトに、適正量のCoOを添加することにより、0〜70℃の広い温度帯域において、直流磁場印加下でも高い透磁率を示すMnZnフェライトが得られることが開示されている。
特公昭52−031555号公報 特開2004−196632号公報
確かに、CoOの添加は、MnZnフェライトの磁気特性の温度依存性を改善するには有効な手段である。しかし、その反面、欠点も有する。というのは、Co2+イオンのサイズは、置換されるMn2+イオンと比較して小さいことから、Co2+の添加は、焼結速度の支配因子であるO2−の移動速度を上昇させる。そのため、CoOが固溶したMnCoZnフェライトは、部分的な焼結が進んで結晶粒が成長しやすく、初透磁率が上昇する傾向がある。
しかし、初透磁率が高い磁性材料は、磁界の印加によって容易に磁化されるため、磁気飽和を起こしやすく、直流磁場が印加された下では、透磁率が低下する。つまり、CoOを添加したMnCoZnフェライトは、添加していないMnZnフェライトと比較して、直流磁場印加下での実効透磁率μが劣化するという欠点を有する。そのため、33A/mという高い直流磁場印加下においてもなお高い透磁率を実現するためには、何らかの手段によって磁気飽和を起こさないよう、透磁率を適度に低下させてやる必要がある。
一般に、初透磁率は、フェライトの一次粒子径の増大に伴い上昇する。そこで、直流磁場印加下での実効透磁率を高めるためには、フェライトの結晶粒成長を適度に抑制してフェライト結晶粒径を微細化し、初透磁率を低下させることが有効であると考えられる。
しかしながら、従来技術である特許文献1には、初透磁率の温度依存性に関する記載はあるものの、フェライト結晶粒径に関する記載はない。また、特許文献2には、平均結晶粒径に関する記載はあるものの、その結晶粒径を実現する手段については記載がない。したがって、これらの特許文献の記載内容に従うだけでは、透磁率の温度依存性を小さくして、直流磁場が印加された下でも高い実効透磁率を確保することは困難であった。
そこで、本発明の目的は、温度依存性が小さく、直流磁場印加下でも広い温度範囲において高い実効透磁率を維持することができるMnCoZnフェライトと、そのMnCoZnフェライトからなるトランス磁心を提供することにある。
発明者らは、結晶粒成長を適度に抑制して初透磁率μiを低下し、直流磁場印加下での実効透磁率を上昇させるために、まず、MnCoZnフェライトにSiOを添加して結晶組織を均一化すると共に、粒界に偏析するCaOを同時に適量添加して結晶粒成長を抑制し、初透磁率μiを低下させることにより、33A/mの直流磁場印加時の実効透磁率μを上昇させることを検討した。しかし、この検討の中で、特に、CaOを添加した場合に、しばしば異常粒成長が出現するという新たな問題が顕在化した。この異常成長した結晶粒の内部には、本来結晶粒界に存在するべき成分が取り込まれており、磁壁の移動を妨げることから、異常粒が出現したフェライトでは、実効透磁率が大きく低下する。また、このフェライトは、強度も通常より大きく劣るものとなる。
そこで、異常粒成長の出現を防ぐ手段として、成形前の平均粉砕粒径を粗大化することを検討した。これは、粒径が小さい方が、焼結時の粉体同士の反応性が高いことから、逆に、粒径を適度に大きくしてやることで、反応性を抑え、異常粒の出現を防止しようとするものである。しかし、CaOを添加した場合では、この平均粉砕粒径の粗大化によっても、異常粒成長の出現は防ぐことはできなかった。
そこで、発明者らは、フェライトの原料、中でも、主原料であるFeの大半が鉄鋼製造の際に発生するスケールを素材としていることに着目し、Fe原料に含まれるスケール由来の不純物と上記異常粒成長との関係を調査した。その結果、鉄鋼(スケール)中に不可避に含まれている不純物のPおよびBを微量でも含有するフェライトは、結晶粒の成長が促進されて初透磁率が上昇し、直流磁場が印加された下での実効透磁率が低下する傾向があること、そしてさらに、フェライトに、PおよびBが所定量を超えて多量に混入した接合には、異常成長粒が出現し易いことを突き止めた。
また、並行して、直流磁場重畳下での透磁率上昇に有効なさらなる手段を検討した結果、フェライトに添加成分として適量のTiOを加えることにより、結晶粒成長を効果的に抑制でき、その結果、初透磁率μiの上昇が適度に抑制され、直流磁場重畳下での透磁率の上昇を実現し得ること、しかし、このTiOの添加量には適正範囲があり、過度の添加は、逆に異常粒成長を誘発し、直流磁場重畳下での透磁率の大幅低下を招くことを突き止めた。
これらの点について、上記した特許文献1には、初透磁率に関する記載はあるものの、直流磁場が印加された下での実効透磁率に関する記載はなく、しかも、不純物成分であるP,Bに関する記載や、添加成分としてのTiOの効果に関する記載がないことから、同文献に記載された技術内容に従うだけでは、直流磁場印加下でも、幅広い温度域において高い実効透磁率を実現することは困難であった。まして、特許文献2には、不純物であるBやTiOの含有量についての記載がないばかりでなく、「Pの含有が好ましい」としているのであるから、同文献の記載に基づいて、直流磁場印加下で、高い実効透磁率を実現することは不可能であった。
上記知見に基き開発された本発明は、基本成分と添加成分と不純物とからなるフェライトであって、基本成分組成が、Fe:51.0〜53.0mol%、ZnO:16.0〜18.0mol%、CoO:0.04〜0.60mol%および残部MnOからなり、添加成分として、全フェライトに対してSiO:0.005〜0.040mass%、CaO:0.020〜0.400mass%およびTiO:0.010〜0.400mass%を含有し、さらに不純物として含有するPおよびBの量が、全フェライトに対してP:3massppm未満、B:3massppm未満であり、33A/mの直流磁場印加時のフェライトの実効透磁率が、−40〜85℃の温度域において常に2300以上の値を示すことを特徴とするMnCoZnフェライトである。
本発明のMnCoZnフェライトは、上記添加成分に加えてさらに、全フェライトに対して、ZrO:0.005〜0.075mass%、Ta:0.005〜0.075mass%、HfO:0.005〜0.075mass%およびNb:0.005〜0.075mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
また、本発明は、上記のMnCoZnフェライトを用いたことを特徴とするトランス用磁心である。
本発明によれば、33A/mの直流磁場が印加された下でも、従来のMnZnフェライトでは不可能であった、−40〜85℃という幅広い温度域において、直流磁場印加の下で実効透磁率が2300以上、−40〜85℃の幅広い温度域において、2300以上という高い実効透磁率を有するMnCoZnフェライトおよび該フェライトを用いたトランス磁心を実現することができる。上記磁心は、特にイーサネット機器のパルストランス用磁心として好適である。
本発明に係るMnCoZnフェライトの基本成分組成を、上記の範囲に限定する理由について説明する。
Fe:51.0〜53.0mol%
Feは、基本成分の中で最も重要な成分であり、このFeの量が少ない場合には、低温度域における直流磁場印加下での実効透磁率が低下する。そのため、Feは、51.0mol%以上含有する必要がある。逆に、多過ぎる場合には、高温度域における直流磁場印加下での実効透磁率が低下するため、上限は53.0mol%とする必要がある。なお、上記Feの含有量は、フェライトに含まれるFeをすべてFeとして換算した値である。
ZnO:13.0〜18.0mol%
ZnOは、基本成分の1つであり、直流磁場印加下での実効透磁率を上昇させる効果があり、最低でも13.0mol%は含有させる必要がある。しかし、ZnOの含有量が適正量を超えると、低温における直流磁場印加下での実効透磁率が低下し、また、強磁性体が磁性を失う温度であるキュリー温度が低下するため、高温における直流磁場印加下での実効透磁率も低下する。よって、ZnOの上限は、18.0mol%とする。
CoO:0.04〜0.60mol%
CoOは、正の磁気異方性を有する成分であり、このCoOの添加によって初めて、直流磁場印加下でも、−40〜85℃という広い温度領域において、高い実効透磁率を実現することができる。この効果を得るためには、CoOは、最低でも0.04mol%含有する必要がある。しかし、適正量よりも多くなると、逆に、全温度域における直流磁場印加下での実効透磁率を低下させるようになることから、上限は、0.60mol%とする。
MnO:基本成分の残部
本発明に係るフェライトは、MnCoZn系であり、基本成分の残部は、MnOである。このMnOは、33A/mの直流磁場印加下で、2300以上という高い実効透磁率を得るためには必須の成分である。なお、上記MnOの含有量は、フェライトに含まれるMnをすべてMnOとして換算した値である。
次に、本発明のMnCoZnフェライトは、上記基本成分の他に、添加成分としてSiO、CaOおよびTiOを下記の範囲で含有する必要がある。
SiO:0.005〜0.040mass%
SiOは、フェライトの結晶組織を均一化する効果と、結晶粒内に残留する空孔を減少させて結晶粒界の生成を促し、結晶粒成長を抑制する効果を有する成分であり、初透磁率を適度に低下させて、直流磁場印加下でも高い実効透磁率を実現するためには必須の添加成分である。上記効果を得るためには、SiOは最低でも0.005mass%含有する必要がある。しかし、SiOの添加量が多すぎる場合には、反対に異常粒が出現し、直流磁場印加下での実効透磁率の値を著しく低下させる。よって、SiOの含有量は、0.040mass%以下に収める必要がある。
CaO:0.020〜0.400mass%
CaOは、MnCoZnフェライトの結晶粒界に偏析する成分であり、これによって、結晶粒成長を抑制することから、適量を添加することによって初透磁率μiを適度に低下させ、ひいては、直流磁場印加下での高い実効透磁率の実現に寄与することができる。そのためには、CaOは、最低でも0.020mass%を含有する必要がある。しかし、添加量が多過ぎると、異常粒が出現し、直流磁場印加下での実効透磁率を逆に著しく低下させることから、0.400mass%以下に収める必要がある。
TiO:0.010〜0.400mass%
TiOは、適量添加することで、結晶粒成長を抑制し、初透磁率μiを適度に低下させる効果があり、直流磁場印加時での高い実効透磁率の実現に寄与する。TiOが、結晶粒成長抑制効果を有する原因は不明であるが、上記効果を発現するためには0.010mass%以上含有する必要がある。しかし、適量より過剰に添加すると、異常粒が出現し、逆に直流磁場印加時の実効透磁率を著しく低下させるので、上限は0.400mass%とする。好ましくは、TiOは0.025〜0.200mass%の範囲に収めるのが望ましい。
次に、本発明のMnCoZnフェライト中に含まれる不純物であるPおよびBの含有量は、以下の範囲に規制する必要がある。
P:3massppm未満
Pは、Feの原料となる酸化鉄中に不可避に含まれる成分である。このPは、フェライトの結晶粒成長を促進して初透磁率を上昇させ、ひいては直流磁場印加下での実効透磁率の低下を招く有害成分である。Pの含有量が3massppm未満であれば、上記弊害は無視できるが、3massppm以上となると、フェライトの結晶粒成長が促進されて、初透磁率が上昇し、直流磁場印加下での実効透磁率の低下が起こるようになる。さらに過多に含有する場合には、異常粒成長を誘発し、直流磁場印加下での実効透磁率を著しく低下させる。よって、フェライト結晶粒の成長を抑制し、異常粒成長を防止するためには、Pの含有量は、3massppm未満に制限する必要がある。
B:3massppm未満
Bは、フェライトの製造工程において、不可避に混入してくる不純物であり、一旦混入した場合には、焼成等の途中工程で除去するのが難しい成分である。また、発明者らの調査では、Bは、フェライトの異常粒成長と密接な関係があり、異常粒成長を完全に防止するためには、その含有量は3massppm未満に規制する必要がある。
なお、PおよびBの含有量を、上記の範囲に制御するためには、例えば、FeやMnO,ZnO等の原料に、これらの含有量の少ない高純度のものを用いる必要がある。また、ボールミル等の混合・粉砕に用いる媒体についても、磨耗による混入のおそれがあるため、これらの不純物の少ないものを用いることが望ましい。
また、本発明のMnCoZnフェライトは、必要に応じて、上述した添加成分に加えてさらに、ZrO:0.005〜0.075mass%、Ta:0.005〜0.075mass%、HfO:0.005〜0.075mass%およびNb:0.005〜0.075mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を添加してもよい。
これらの添加成分は、いずれも高い融点を持つ化合物であり、MnCoZnフェライトに添加した場合には、結晶粒を小さくする働きを有することから、粗大な結晶粒の生成を抑制し、直流磁場印加下での実効透磁率を上昇させる効果がある。この効果は、上記添加成分の単独添加でも、複合添加でも得ることができる。しかし、添加量が上記適正範囲より少ない場合は、その効果が得られず、一方、多過ぎる場合には、異常粒の発生を引き起こし、直流磁場印加下での実効透磁率を大きく低下させる。よって、上記任意の添加成分の添加量は、それぞれ上記の範囲内に収めることが望ましい。
次に、本発明に係るMnCoZnフェライトの製造方法について、説明する。
本発明のMnCoZnフェライトは、まず基本成分組成が本発明の規定する所定比率となるようFe,ZnO,CoOおよびMnOの粉末原料を秤量し、これらを十分に混合したのち仮焼し、得られた仮焼粉を粉砕する。そして、上述した添加成分を加える場合には、それらを本発明が規定する所定の比率となるよう仮焼粉に加えて、さらに粉砕する。この粉砕作業においては、添加した成分の濃度に偏りがないよう、粉末に充分な均質化する必要がある。その後、粉砕した仮焼粉の粉末に、ポリビニルアルコール等の有機物バインダーを添加し、造粒し、圧力を加えて所定の形状に成形し、その後、適宜の条件下で焼成し、製品とする。
かくして得られた本発明のMnCoZnフェライトは、従来のMnZnフェライトでは不可能であった、33A/mの直流磁場印加下でも、−40〜85℃という幅広い温度域において、実効透磁率が2300以上という高い値を有するものとなる。
フェライト製品中に含まれるFeおよびMnをすべてFeおよびMnOとして換算した場合に、Fe,ZnO,CoOおよびMnOの比率(mol%)が表1に示す値となるよう各原料粉末を秤量し、これらを、ボールミルを用いて16時間混合、粉砕し、その後、空気中で925℃×3時間の仮焼を施した。次いで、この仮焼粉に、SiO,CaOおよびTiOをそれぞれ表1に示す比率(mass%)となるよう添加してから、ボールミルで12時間粉砕し、次いでこの粉砕粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、118MPaの圧力を加えてトロイダルコアを成形した。その後、この成形体を焼成炉に装入して、最高温度1350℃で焼成し、外径:25mm×内径:15mm×高さ5mmの焼結体試料を得た。なお、酸化鉄等の各原料粉末には、すべて高純度なものを用い、また混合、粉砕媒体であるボールミルも、PおよびB含有量の低いものを用いたため、最終的なPおよびBの含有量はいずれも、全ての試料で2massppmであった。
Figure 0005089971
このようにして得た各試料(焼結体コア)について、10ターンの巻線を施し、直流印加装置(42841A:アジレント・テクノロジ社製)を用いて33A/mの直流磁場を印加した状態で、LCRメータ(4284A:アジレント・テクノロジ社製)を用い、−40℃,0℃,23℃,70℃および85℃の各温度における、電圧:100mV、周波数:100kHzでの実効透磁率μを測定した。
上記測定の結果を、表1に併記した。表1から、本発明例である試料番号1−3,1−5,1−9,1−11〜1−13および1−17のフェライトコアはいずれも、33A/mの直流磁場を印加した時の実効透磁率μが、−40〜85℃の広い温度範囲において、常に2300以上という優れた特性を有することがわかる。
これに対して、Feが53.0mol%より多い比較例(試料番号1−1)は、85℃でのμが2300未満に低下している。反対に、Feを51.0mol%未満しか含まない比較例(試料番号1−2)は、−40℃でのμが2300未満に低下している。
また、CoOを含まない比較例(試料番号1−4)は、−40℃および85℃におけるμが2300に達していない。反対に、CoOを多量に含む比較例(試料番号1−6)は、全温度域でのμが低下し、−40℃,70℃および85℃で、μが2300未満に低下している。
また、ZnO量が不足している比較例(試料番号1−8)でも、全温度域でμが低下し、やはり−40℃,70℃および85℃におけるμが2300未満にまで低下している。
次に、SiOおよびCaOに着目すると、これらの一方でも適量範囲よりも少ない比較例(試料番号1−15,1−16)では、粗大な結晶粒が出現したため、全温度域で、μが発明例と比較して低下し、−40℃,85℃でのμが2300未満である。また反対に、どちらか一方でも適量よりも多く含有している比較例(試料番号1−18〜1−15)では、異常粒が出現した結果、実効透磁率は全温度域において、大幅に劣化している。
また、TiOに着目すると、適量よりも含有量が少ない比較例(試料番号1−14)では、結晶の粒成長が進むため、初透磁率が高くなった結果、全温度域における磁場重畳下でのμが比較して低下しており、−40℃、85℃での値が2300未満である。反対に、適量よりも多く含む比較例(試料番号1−10)では異常粒が出現し、その結果、実効透磁率は、全温度域で大幅に低下している。また、TiOを好ましい量含む発明例(1−3,1−5,1−9,1−12,1−17)では、直流磁場重畳下での透磁率が上昇し、−40〜85℃において2500以上が得られている。
PおよびBの含有量が異なる種々の酸化鉄原料を使用し、試料中のPおよびB含有量が最終的に表2に示す量を含有するよう計算した上で、基本成分組成が、含まれるFeおよびMnをすべてFeおよびMnOとして換算した場合に、Fe:52.0mol%、ZnO:16.0mol%、CoO:0.4mol%,残部MnOの組成となるよう原料を秤量し、ボールミルを用いて16時間混合した後、空気中で925℃×3時間仮焼し、次いで、この仮焼粉に、SiOを0.010mass%、CaOを0.050mass%、TiOを0.050mass%となるよう加えてから、ボールミルで12時間粉砕し、次いで、この粉砕粉にポリビニルアルコールを加えて造粒し、118MPaの圧力を加えてトロイダルコアに成形し、その後、この成形体を焼成炉に装入し、最高温度1350℃で焼成し、外径:25mm×内径:15mm×高さ:5mmの焼結体試料を得た。
上記のようにして得た各試料(焼結体コア)に、10ターンの巻線を施し、実施例1と同じ直流印加装置、同じLCRメータを用いて、33A/mの直流磁場をコアに印加した状態で、−40℃,0℃,23℃,70℃および85℃の各温度における、電圧:100mV、周波数:100kHzでの実効透磁率μを測定した。
得られた結果を表2に示す。表2から、PおよびBの含有量をともに3massppm未満とした発明例(試料番号1−5)は、粗大な結晶粒の発現もなく、33A/mの直流磁場印加下での実効透磁率も、−40〜85℃の全温度域において2500以上を示すという優れた特性が得られている。
これに対して、PあるいはBのいずれか一方でも、3massppm以上含む比較例(試料番号2−1〜2−7)は、いずれも粗大な結晶粒が出現したため、33A/mの直流磁場印加下での実効透磁率は低下し、2300を切っている。さらに、Pおよび/またはBを30massppm以上含む比較例(試料番号2−4,2−6,2−7)では、異常粒成長が認められ、実効透磁率は全温度域において、大幅に低下している。
Figure 0005089971
PおよびBの含有量を2massppmに調整した以外は、実施例2と同じ成分組成を有する仮焼粉に、SiOを0.010mass%、CaOを0.050mass%、TiOを0.050mass%加え、さらに、添加成分としてZrO,Ta,HfOおよびNbをそれぞれ最終組成が表3に示す比率となるよう添加し、ボールミルで12時間粉砕した。この粉砕粉に、ポリビニルアルコールを加えて造粒し、118MPaの圧力を加えてトロイダルコアに成形し、その後、この成形体を焼成炉に入れて最高温度1350℃で焼成し、外径:25mm×内径:15mm×高さ:5mmの焼結体試料を得た。
上記のようにして得た各試料(焼結体コア)について、10ターンの巻線を施し、実施例1と同じ直流印加装置、同じLCRメータを用いて、33A/mの直流磁場をコアに印加した状態で、−40℃,0℃,23℃,70℃および85℃の各温度における、電圧:100mV、周波数:100kHzでの実効透磁率μを測定した。
上記測定結果を表4に示す。表3から、ZrO,Ta,HfOおよびNbの1種または2種以上を適量添加した発明例(試料番号3−1〜3−15)は、いずれも粗大な結晶粒の出現が抑制された結果、33A/mの直流磁場印加下での実効透磁率μは、−40〜85℃の全温度域において常に2300以上を示すという優れた特性が得られている。また、これらを添加していない同組成の発明例(試料番号1−5)と比較すると、μの値は同等かもしくはそれ以上の値を示している。
これに対して、これら4成分のうちの1種類でも適正範囲を超えて多量に含有している比較例(試料番号3−16〜3−18)は、いずれも異常粒成長が発生し、実効透磁率は全温度域において大幅に低下している。
Figure 0005089971

Claims (3)

  1. 基本成分と添加成分と不純物とからなるフェライトであって、基本成分組成が、Fe:51.0〜53.0mol%、ZnO:16.0〜18.0mol%、CoO:0.04〜0.60mol%および残部MnOからなり、添加成分として、全フェライトに対してSiO:0.005〜0.040mass%、CaO:0.020〜0.400mass%およびTiO:0.010〜0.400mass%を含有し、さらに不純物として含有するPおよびBの量が、全フェライトに対してP:3massppm未満、B:3massppm未満であり、33A/mの直流磁場印加時のフェライトの実効透磁率が、−40〜85℃の温度域において常に2300以上の値を示すことを特徴とするMnCoZnフェライト。
  2. 上記添加成分に加えてさらに、全フェライトに対して、ZrO:0.005〜0.075mass%、Ta:0.005〜0.075mass%、HfO:0.005〜0.075mass%およびNb:0.005〜0.075mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のMnCoZnフェライト。
  3. 請求項1または2に記載のMnCoZnフェライトを用いたことを特徴とするトランス用磁心。
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