JP5089718B2 - 無線通信方法、及び無線通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、無線通信方法、及び無線通信装置に関する。
近年、2.4GHz帯又は5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などに基づいたアクセスポイント(基地局装置)が広く普及している。これらの規格に基づいたシステムでは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用い、最大で54Mbpsの伝送速度を実現している。
なお、ここでの伝送速度とは物理レイヤ上での伝送速度である。ユーザにとって有効なデータのスループットは、MAC(Medium Access Control)レイヤでの伝送効率が50〜70%程度であるために、30Mbps程度が上限値となっている。しかし、IEEE802.11nが2010年に標準化完了予定であり、MIMO(Multiple input multiple output)技術により100Mbps超の高速通信の実現を目指している。
また、有線LANの通信速度もFTTH(Fiber to the home)の普及から、上昇の一途をたどっており、今後無線LANにおいても更なる伝送速度の高速化が求められることが想定される。
更なる無線LANにおける伝送速度の高速化の技術として、最も注目されているのがマルチユーザMIMO送信技術である。マルチユーザMIMO送信技術とは、送信局側において複数の送信アンテナから同一周波数同一タイミングで異なる独立な信号を複数のアンテナを備える複数の通信相手に送信する。また、複数の通信相手の受信アンテナ全体を巨大な受信アレーとみなして下りスループットの向上を実現する技術である。
マルチユーザMIMO送信技術の一例としてブロック対角化(Block diagonalization;BD)送信技術を示す。ここでは、無線通信装置から複数の無線端末装置にデータを伝送する場合において、送信側の無線通信装置のアンテナ素子数をMt、受信側の無線端末装置の数をMa、i番目の無線端末装置の受信アンテナ素子数をMr(i)、i番目の無線端末装置に同時に、且つ、同周波数帯において送信する通信系列数をL(i)、Mt≧Mr(i)としたときの無線通信装置について説明する。
図11は、伝搬環境に応じて送信指向性を制御し、空間多重化により伝送速度を向上させる無線通信装置900の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、無線通信装置900は、データ出力回路901と、送信信号変換回路902と、無線部903−1〜903−Mtと、アンテナ素子904−1〜904−Mtと、チャネル情報取得回路905と、通信相手選択回路906と、送信符号化法決定回路907と、送信モード決定回路908とを具備している。
データ出力回路901は、無線通信装置900の通信相手であるMa個の無線端末装置に対して送信するデータを生成する。
送信信号変換回路902は、送信モード決定回路から入力される送信モード情報に応じて、データ出力回路901により生成されたデータに対して誤り訂正符号化と変調とを行いベースバンド信号に変換する。ここで、送信モード情報には、誤り訂正符号化における符号化率と、変調方式とを示す情報が含まれている。
無線部903−1〜903−Mtは、それぞれが送信信号変換回路902により変換されたベースバンド信号に対して周波数変換(アップコンバート)をして、接続されたアンテナ素子904−1〜904−Mtを介して無線端末装置に対して送信する。
また、無線部903−1〜903−Mtは、それぞれがアンテナ素子904−1〜904−Mtを介して、無線端末装置より送信された信号を受信する。チャネル情報取得回路905は、無線部903−1〜903−Mtにより受信された信号に含まれる既知信号(プリアンブル)などに基づいて、アンテナ素子904−1〜904−Mtそれぞれと、無線端末装置のアンテナ素子との間のチャネル状態を示すチャネル情報を公知の方法を用いて算出(推定)する。
なお、無線端末装置は、チャネル情報を算出し、算出されたチャネル情報を含むフィードバック情報を無線通信装置900に送信するようにしてもよい。この場合、チャネル情報取得回路905は、無線部903−1〜903−Mtにより受信された信号からフィードバック情報を抽出するようにしてもよい。
通信相手選択回路906は、予め定められた方法によりデータを送信する相手となる無線端末装置を少なくとも1つ選択し、選択した無線端末装置を示す情報を送信符号化法決定回路907に出力する。
送信符号化法決定回路907は、通信相手選択回路906により選択された無線端末装置との間の伝送路に対応するチャネル情報をチャネル情報取得回路905により得られたチャネル情報から選択する。また、送信符号化法決定回路907は、選択したチャネル情報により各アンテナ素子904−1〜904−Mtから送信される信号系列それぞれの送信ウエイトと、通信品質とを無線端末装置ごとに算出する。
送信モード決定回路908は、送信符号化法決定回路907により算出された無線端末装置ごとの送信ウエイト及び通信品質に基づいて、各無線端末装置に送信する信号系列における変調方式及び符号化率とを含む送信モード情報を信号系列ごとに生成する。例えば、送信モード決定回路908に、送信ウエイト及び通信品質と、変調方式及び符号化率とが予め対応付けられたテーブルを設けておく。送信モード決定回路908は、送信符号化法決定回路907により算出された送信ウエイト及び通信品質に対応付けられた変調方式及び符号化率をテーブルから読み出すことにより送信モード情報を生成する。
以下、マルチユーザMIMO送信を行う無線通信装置900における、送信符号化法決定回路907が、BD指向性制御法に基づいて行う演算処理について説明する。
チャネル情報取得回路905は、次式(1)に示すチャネル情報を示すチャネル行列Hi(Mr(i)×Mt行列)を算出する。
Figure 0005089718
ここで、チャネル情報取得回路905により算出された式(1)に示したチャネル行列Hは、次式(2)に示す特異値分解により、右特異行列V(Mt×Mt行列)、左特異行列U(Mr(i)×Mr(i)行列)、及び固有値の二乗根√λを対角要素とし、非対角要素を0とする行列Σ(Mr(i)×Mt行列)に分けることができる。なお、行列V は、行列Vの共役複素数行列を示し、行列(V'V''は、行列(V'V'')の共役複素数行列を示す。
Figure 0005089718
ここで、行列Hの要素Hi,jkは、無線通信装置900のk番目のアンテナからi番目の無線端末装置におけるj番目のアンテナまでの伝達係数を表す。また、右特異行列Vのうち、V'は固有値に対応する列ベクトル群を示し、V''は0に対応する列ベクトル群を示す。
また、無線通信装置900から1つの無線端末装置にのみ信号系列を送信するシングルユーザ通信において、最大の周波数利用効率が得られる方法として固有ベクトル送信が知られている。この固有ベクトル送信において、V'の列ベクトルを送信ウエイトとし、送信電力をpとすることで、固有値λと送信電力pの乗算値pλで表せる信号電力を得ることができる(λ≧λ≧・・・≧λMr(i))。このとき、送信電力pが一定であれば、固有値が大きいほど信号電力は大きくなる。
BD法を用いて、Ma個の無線端末装置に対して同一周波数、且つ、同一タイミングのチャネルを用いて送信する場合において、Ma個の無線端末装置のうちi番目の無線端末装置に着目する。このとき、送信符号化法決定回路907は、i番目の通信相手に対し、i番目の通信相手以外のMa−1の通信相手のチャネル行列H からなる集合行列を次式(3)として設定する。
Figure 0005089718
ここで、行列R'は、i番目の通信相手に仮定した受信ウエイトである。式(3)に示す集合行列H に対して、特異値分解を行うと、次式(4)と表すことができる。
Figure 0005089718
ここで、ベクトルV は、固有値Σ に対応する信号空間ベクトルである。また、ベクトルV は、固有値がない、もしくは固有値が0であるヌル空間ベクトルである。このとき、無線通信装置900が、ベクトルV のヌル空間に対して送信を行うと、i番目以外の無線端末装置が形成する受信ウエイトに対して干渉を生じさせることがない。
また、i番目の通信相手のチャネル行列に対し、次式(5)に示すように、このヌル空間ウエイトV を乗算して得られる行列の特異値を計算することで、この送信空間において得られる通信品質を評価(算出)することができる。
Figure 0005089718
式(5)において、行列U'''と、行列V'''とはそれぞれ、行列(H )の左特異行列と右特異行列である。行列Σ'''は、行列(H )の固有値の自乗根を対角要素とする対角行列である。
ここで、ベクトル(V [V'''L(i))を送信ウエイトWとすることで、行列Σ'''の対角成分の二乗値であるヌル空間固有値、λ'i,1,…,λ'i,Mr(i)に対応する品質が得られることになる。ここで、[A]は右特異行列Aの列ベクトルから、高い固有値に対応するL個の列ベクトルからなるMt×Lの行列を示す。
また、このヌル空間固有値は、繰り返し演算により増大させることが可能である。つまり、式(3)で仮定した受信ウエイトR'〜R'Maが、V [V'''L(i)を送信ウエイトとした場合の対応する通信装置の受信ウエイトに近づくほど、行列Σ'''の対角成分の二乗値であるヌル空間固有値、λ'i,1,…,λ'i,Mr(i)は大きくなる。このヌル空間固有値を大きくするために、R'〜R'Maの初期値として、各チャネル行列の左特異行列のエルミート行列U 〜UMa を用いたり、式(5)まで演算し、得られた左特異行列のエルミート行列U''' を式(3)に示した受信ウエイトR'とし、更に式(5)までを計算し、左特異行列のエルミート行列U''' を受信ウエイトR'とする計算を繰り返すことで、通信品質を向上させることができる。
BD法の達成可能な周波数利用効率C(Ma)は、次式(6)により表すことができる。
Figure 0005089718
ここで、σは、熱雑音の分散であり、Pは、対角要素をpi,1,・・・,pi,Mr(i)の二乗根とする電力配分を表す対角行列である。また、|A|は行列Aの行列式を示す。また、C (Ma)はi番目の通信相手に対応する周波数利用効率であり、次式(7)と表される。
Figure 0005089718
ここで、i番目の通信相手のj番目のアンテナの通信ストリームに対応する信号対雑音比(Signal-Noise Ratio;SNR)Si,jは、次式(8)のように表される。
Figure 0005089718
送信符号化法決定回路907は、信号対雑音比Si,jにより、電力分配の設定、変調方式の選択、及び符号化率の設定を行う。なお、送信電力pi,jとσの単位は、例えば、[W]やdBmである。また、固有値λ'i,jの単位は、例えば、dBとする。この場合、SNRは、dBで表される。
Q. H. Spencer, A. L. Swindlehurst, and M. Haardt,"Zero-Forcing Methods for Downlink Spatial Multiplexing in Multiuser MIMO Channels," IEEE Trans. Sig. Processing, vol. 52, issue 2, Feb. 2004, pp. 461-71.
上述したように、複数の通信相手に対し、複数のアンテナから複数の信号列を同時に送信することで、送信可能な情報量を高めることができる。ここで示したBD法の他にも、Successive optimization(SO)アルゴリズムや、Zero forcing(ZF)アルゴリズム、Dirty paper codingなど複数のアルゴリズムにより、BD法と同様に伝送する情報量を向上することが可能である。しかし、いずれのアルゴリズムを用いた場合においても、送信側の無線通信装置は、送信側に備えられた各アンテナと、各無線端末装置に備えられた各アンテナとの間のチャネル情報(チャネル行列Hi)を取得することが必要となる。
BD法において、チャネル行列Hiが全く誤り及び誤差を含まない場合、上述したように、無線通信装置から各無線端末装置に送信する信号が互いに干渉しないように通信ウエイトを選択することができる。また、その場合のSNRは、式(8)により表される。
しかし、チャネル行列Hiに誤り又は誤差が含まれる場合、無線通信装置から各無線端末装置に送信される信号が互いに干渉して、伝送品質が劣化してしまう。
そのため、無線通信装置と各無線端末装置との間の伝送路の推定の誤差、すなわち、チャネル行列Hiの誤差を考慮する必要がある。このとき、チャネル行列Hiに含まれる誤差を考慮せずに、データストリーム数、変調方式、符号化率を設定すると、受信側の無線端末装置において、ビット誤りが生じて再送が頻繁に発生することにより通信速度が低下してしまう可能性が高い。この場合、マルチユーザMIMO通信による通信速度の効果を十分に得ることができないことがあるとともに、マルチユーザMIMO送信を利用しない場合よりも通信速度が低下してしまう可能性もある。
マルチユーザMIMO送信における通信速度などの通信品質は、式(1)に示したチャネル行列Hiの全ての要素が正確に得られるか否かに依存している。
つまり、チャネル行列Hiの全ての要素が得られない場合、例えば、無線端末装置が無線通信装置にチャネル情報を送信する機能を有していない場合など、無線通信装置と各無線端末装置との間の伝送路を示すチャネル行例Hiを正確に得ることができないので、マルチユーザMIMO通信において互いの送信信号が干渉して通信品質が劣化して、通信速度の低下を招いてしまう可能性がある。
これは、後方互換を求める無線LAN規格であるIEEE802.11で問題となる。例えば、マルチユーザMIMO機能を有する標準化が行われた場合においても、アクセスポイントとなる無線通信装置は、マルチユーザMIMO機能を有さない過去の標準化規格であるIEEE802.11a、11b、11g、11nそれぞれの規格に準拠した無線端末装置もサポートする必要がある。しかし、これらの規格に準拠した無線端末装置において、チャネル情報を無線通信装置に送信する機能は、必須の機能ではないので、実装されて否ことが多い。このため、無線通信装置が過去の標準化規格に準拠した無線端末装置と通信をする場合、不完全なチャネル行列Hiに基づいてマルチユーザMIMO通信を行わなければならない状況が考えられる。なお、マルチユーザMIMO通信において、BD法以外のアルゴリズムを用いた場合においても、BD法と同様にチャネル行列Hiに基づいて送信を行うため、通信速度の低下などの通品品質の劣化を避けることができない。
上述のように、マルチユーザMIMO技術は複数の無線端末装置に対し、同一時間、同一周波数帯において、空間多重により高い周波数利用効率を得ることを可能とする。しかし、伝送路の状態を示すチャネル行列Hiに誤差が含まれる場合、また、伝送路の状態を示す情報を得ることができずにチャネル行列Hiが不完全な場合、マルチユーザMIMO技術による効果を十分に得ることができないばかりか、逆に通信速度が遅くなってしまうという問題がある。
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、伝送路の状態を示すチャネル行列が正確に得られない場合においても、マルチユーザMIMO送信により通信速度を向上させることができる無線通信方法、及び無線通信装置を提供することにある。
[1]上記問題を解決するために、本発明は、複数のアンテナ素子を備え、複数の無線端末装置に対し、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線通信装置における無線通信方法であって、前記複数の無線端末装置と、前記複数のアンテナ素子との伝送路の状態を示すチャネル情報を推定するチャネル情報取得ステップと、推定された前記チャネル情報の推定誤差を、信号対雑音電力比、伝搬環境の時間変動、チャネル推定から送信までに要する時間、チャネル情報のフィードバックに用いたビット数、の少なくとも一つから算出するチャネル情報誤差・条件判定ステップと、算出された前記推定誤差に基づいて、前記複数の無線端末装置ごとに、該無線端末装置と共に空間多重されたデータを送信する他の無線端末装置に対して割り当てる送信電力の上限値を示す許容送信電力条件を算出する送信電力条件決定ステップと、前記複数の無線端末装置から算出された前記許容送信電力条件を満たす無線端末装置の組み合わせを選択し、選択した無線端末装置それぞれに対して送信電力配分、符号化率、変調方式を決定する通信方法決定ステップと、選択された無線端末装置のチャネル情報から、送信ウエイトを演算する送信ウエイト決定ステップと、選択された無線端末装置それぞれに対して、決定された送信電力、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトによりデータを空間多重して送信する送信ステップとを有することを特徴とする無線通信方法である。
[2]また、本発明は、上記に記載の発明において、通信方法決定ステップにおいて選択した無線端末装置それぞれに対し、データを空間的に多重して送信する際の干渉抑圧処理による受信信号電力の減衰量を算出する減衰量ステップを有し、前記通信方法決定ステップにおいて、算出された前記許容送信電力条件と、選択した無線端末装置それぞれに対して算出された受信号電力の減衰量とに基づいて、送信電力配分、符号化率、変調方式、送信ウエイトを決定することを特徴とする。
[3]また、本発明は、上記に記載の発明において、前記通信方法決定ステップにおいて、選択した無線端末装置のうち信号電力対干渉雑音電力比の大きさが、予め定めた最小信号電力対干渉雑音電力比より小さくなる無線端末装置を、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線端末装置の組み合わせから外すことを特徴とする。
[4]また、本発明は、上記に記載の発明において、前記通信方法決定ステップにおいて、選択した無線端末装置のうち最もチャネル推定誤差が大きい無線端末装置を、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線端末装置の組み合わせから外した際に、残りの無線端末装置で得られるスループットの上昇が、外された無線端末装置へのスループットより大きい場合、選択した無線端末装置の組み合わせから最もチャネル推定誤差が大きい無線端末装置を外すことを特徴とする。
[5]また、本発明は、上記に記載の発明において、前記許容送信電力条件は、無線端末装置に備えられているアンテナの全て、または一部に対するチャネル情報が得られない場合、該無線端末装置に備えられているアンテナの数に対するチャネル情報が得られないアンテナの数の比を、信号電力対熱雑音電力比に乗じて算出されるチャネル推定誤差に基づいて算出されることを特徴とする。
[6]また、本発明は、上記に記載の発明において、前記通信方法決定ステップにおいて、データを送信したい無線端末装置を第一の無線端末装置として選択し、第一の無線端末装置の許容送信電力条件に基づいて、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線端末装置の組み合わせを決定し、各無線線端末装置に対する送信電力分配、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを算出することを特徴とする。
[7]また、本発明は、上記に記載の発明において、前記通信方法決定ステップにおいて、自無線通信装置が通信対象としない他の無線通信装置が通信している無線端末装置が、通信可能領域内にある場合、該無線端末装置との間のチャネル情報を推定し、推定したチャネル情報に基づいて、該無線端末装置における干渉電力が予め定められた干渉電力値以下となる送信電力分配、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを、選択した無線端末装置に対して決定することを特徴とする。
[8]また、本発明は、上記に記載の発明において、前記通信方法決定ステップにおいて、無線端末装置の複数の組み合わせを選択し、無線端末装置の組み合わせごとに送信電力分配、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを決定し、無線端末装置の組み合わせごとに異なる周波数チャネルを割り当て、無線端末装置の各組み合わせに対して同一時間に空間多重してデータを送信することを特徴とする。
[9]また、本発明は、複数のアンテナ素子を備え、複数の無線端末装置に対し、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線通信装置であって、前記複数の無線端末装置と、前記複数のアンテナ素子との伝送路の状態を示すチャネル情報を推定するチャネル情報取得回路と、前記チャネル情報取得回路により推定されたチャネル情報を記憶するチャネル情報記憶回路と、前記チャネル情報記憶回路に記憶されてているチャネル情報に基づいて、前記複数の無線端末装置それぞれのチャネル情報の推定誤差を、信号対雑音電力比、伝搬環境の時間変動、チャネル推定から送信までに要する時間、チャネル情報のフィードバックに用いたビット数、チャネル推定可能なアンテナと受信アンテナ全体の比、の少なくとも一つから算出するチャネル情報誤差・条件判定回路と、算出された前記推定誤差に基づいて、前記複数の無線端末装置ごとに、該無線端末装置と共に空間多重されたデータを送信する他の無線端末装置に割り当てる送信電力の上限値を示す許容送信電力条件を算出する送信電力条件決定回路と、前記複数の無線端末装置から算出された前記許容送信電力条件を満たす無線端末装置の組み合わせを選択し、選択した無線端末装置それぞれに対して送信電力配分、符号化率、変調方式を決定する通信方法決定回路と、選択された無線端末装置のチャネル情報から、送信ウエイトを演算する送信ウエイト決定回路と、選択された無線端末装置それぞれに対して、決定された送信電力、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトによりデータを空間多重して送信する無線部とを具備することを特徴とする無線通信装置である。
この発明によれば、伝送路の状態を示すチャネル行列が正確に得られない場合においても、マルチユーザMIMO送信により通信速度を向上させることができる。
本発明の第1実施形態における無線通信装置100の構成を示す概略ブロック図である。 干渉電力対熱雑音比(Ii,j/σ2)と、減少量Di,jとの関係の一例を示すグラフである。 本実施形態における無線通信装置100の通信相手となる無線端末装置の一例を示す図である。 同実施形態の無線通信装置100における送信処理を示すフローチャートである。 同実施形態において、マルチユーザMIMO送信の受信対象の無線端末装置を3つ以上にした場合の送信電力を算出する処理を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態における無線通信装置200の構成を示す概略ブロック図である。 同実施形態の無線通信装置200における送信処理を示すフローチャートである。 同実施形態における計算機シミュレーションの結果を示すグラフである。 同実施形態における、無線端末装置の割り当てのイメージを示した模式図である。 同実施形態における効果を示す計算機シミュレーションの結果を示すグラフである。 伝搬環境に応じて送信指向性を制御し、空間多重化により伝送速度を向上させる無線通信装置900の構成を示す概略ブロック図である。
図面を参照して、本発明の実施形態による無線通信方法及び無線通信装置を説明する。以下、無線通信装置からデータを送信する相手である無線端末装置の数がMa(Maは、2以上の自然数)個である場合について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における無線通信装置100の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、無線通信装置100は、データ出力回路101と、送信信号変換回路102と、無線部103−1〜103−Mt(Mtは、2以上の自然数)と、アンテナ素子104−1〜104−Mtと、チャネル情報取得回路105と、チャネル情報記憶回路106と、チャネル情報誤差・条件判定回路107と、電力条件決定回路108と、通信方法決定回路109と、送信ウエイト決定回路110とを具備している。
データ出力回路101は、無線通信装置100の通信相手であるMa個の無線端末装置へ送信するデータを生成する。また、データ出力回路101は、通信方法決定回路109から入力される情報に示されている各無線端末装置に対して送信するデータを送信信号変換回路102に出力する。
送信信号変換回路102は、通信方法決定回路109より入力される送信モード情報に基づいて、データ出力回路101より入力された各無線端末装置のデータに対して誤り訂正符号化及び変調を行いベースバンド信号を生成する。ここで、送信モード情報には、データの送信対象となる無線端末装置ごとに変調方式及び符号化率と、ユーザあたり又はストリームごとの送信電力とを示す情報が含まれている。
また、送信信号変換回路102は、送信ウエイト決定回路110から入力される送信ウエイト情報に基づいて、送信信号に送信ウエイトを乗算する。
無線部103−1〜103−Mtは、それぞれに接続されたアンテナ素子104−1〜104−Mtを通じて、送信信号変換回路102から入力されるベースバンド信号をアップコンバートして無線端末装置に送信する。また、無線部103−1〜103−Mtは、各無線端末装置から受信した信号を周波数変換(ダウンコンバート)及び復調しデジタル信号に変換した後、チャネル情報取得回路105に出力する。
チャネル情報取得回路105は、無線部103−1〜103−Mtにより受信された信号に含まれる既知信号(プリアンブル)に基づいて公知の技術により、アンテナ素子104−1〜104−Mtと、各無線端末装置のアンテナ(又は、受信ビーム)との間のチャネル情報を算出(推定)する。又は、チャネル情報取得回路105は、各無線端末装置から受信するフィードバック情報に含まれるチャネル情報を抽出する。また、チャネル情報取得回路105は、算出したチャネル情報、もしくは抽出したチャネル情報とをチャネル情報記憶回路106に記憶させる。なお、チャネル情報には、無線通信装置100と無線端末装置との間の伝送路の状態を示す情報と、無線通信装置100と無線端末装置と相対的な位置関係を示す情報とが含まれる。更に、チャネル情報取得回路105は、入力されたデジタル信号の中にチャネル情報の誤差を示す情報が含まれる場合には、抽出し、チャネル情報記憶回路106へ出力する。
チャネル情報記憶回路106は、チャネル情報から得られる信号対雑音比(Signal to Noise Ratio:SNR)、及びチャネル情報推定方法から、チャネル情報に含まれる推定誤差を求め、チャネル情報誤差・条件判定回路107に出力する。また、複数の時間で得られる同じ無線端末装置のチャネル情報の時間変動から、チャネルの時間変動による推定誤差を推定し、チャネル情報誤差・条件判定回路107に出力するようにしてもよい。チャネル情報誤差・条件判定回路107は、入力された情報から無線端末装置ごとのチャネル情報誤差を推定する。なお、チャネル情報をフィードバックデータから得る場合には、チャネル情報記憶回路106は、量子化雑音によるチャネル推定誤差量を、チャネル情報誤差・条件判定回路107は、に入力することもできる。
電力条件決定回路108は、チャネル情報誤差・条件判定回路107により算出されるチャネル情報の誤差量に基づいて、無線端末装置ごとに対する許容送信電力条件を算出する。この許容送信電力条件は、任意の無線端末装置Aと、少なくとも1つの他の無線端末装置とに対してマルチユーザMIMO送信を行う場合に、無線端末装置A以外の他の無線端末装置に割り当てられる総送信電力の上限値である。この許容送信電力条件より小さい総送信電力を他の無線端末装置に割り当てた場合、他の無線端末装置に対する送信信号の干渉の影響を受けたとしても、無線端末装置Aにおいて生じる干渉量を一定値以下に制御することができる。
通信方法決定回路109は、外部から指定された通信相手、優先順位の高い通信相手、SNRや推定誤差量の順番、又は、予め定められたアルゴリズム、例えば、ラウンドロビン・スケジューリングなどにより無線通信装置100の通信対象である無線端末装置のうち1つの無線端末装置を選択する。通信方法決定回路109は、電力条件決定回路108により算出された許容送信電力条件に基づいて、選択された無線端末装置と組み合わせる無線端末装置を選択し、選択された無線端末装置にそれぞれ決定された許容送信電力条件を満たすように、各無線端末装置に対する送信電力を決定する。また、通信方法決定回路109は、選択した無線端末装置にデータを送信する際のデータストリーム数、符号化率及び変調方法を設定する。
通信方法決定回路109は、選択した無線端末装置を示す情報をデータ出力回路101に出力する。また、通信方法決定回路109は、選択した無線端末装置を示す情報と、選択した無線端末装置それぞれに割り当てた送信電力を示す情報とを送信ウエイト決定回路110に出力する。また、通信方法決定回路109は、選択した無線端末装置ごとに設定した符号化率及び変調方法を示す送信モード情報を送信信号変換回路102に出力する。
送信ウエイト決定回路110は、通信方法決定回路109から入力された情報に示される各無線端末装置に対応するチャネル情報をチャネル情報記憶回路106から読み出す。
また、送信ウエイト決定回路110は、通信方法決定回路109から入力された情報に示される無線端末装置の組み合わせと、読み出したチャネル情報を用いて、各送信ビームが、対象となる無線端末装置のSNRを向上させ、それ以外の無線端末装置に干渉を生じないように送信ウエイトを算出する。また、送信ウエイト決定回路110は、無線端末装置ごとに算出した送信ウエイトと、無線端末装置ごとに割り当てられた送信電力とを示す送信ウエイト情報を送信信号変換回路102に出力する。
なお、送信ウエイト決定回路110は、選択された無線端末装置それぞれに割り当てられた送信電力と、選択された無線端末装置の組み合わせとに基づいて、各通信ストリームに期待される伝送品質を算出して通信方法決定回路109に出力するようにしてもよい。
ここで、期待される伝送品質としては、例えば、式(5)で得られる行列Σ'''の対角要素の自乗値、ヌル空間固有値と、熱雑音の分散値との比を期待されるSNRとして用いることができる。この場合、通信方法決定回路109は、入力された伝送品質を満たす符号化率及び変調方式を選択して送信信号変換回路102に出力するようにしてもよい。このとき、通信方法決定回路109には、例えば式(8)で得られるSNRの値ごとに対応付けられ、伝送品質を満たす符号化率及び変調方式を記憶したテーブルを予め設けておき、推定されたSNRに対応する符号化率及び変調方式を当該テーブルから読み出して選択するようにしてもよい。
以下、本実施形態の無線通信装置100がチャネル情報に含まれる誤差に対して行う処理について説明する。
まず、チャネル情報誤差・条件判定回路107がチャネル情報(チャネル行列Hi)の誤差から許容送信電力条件を算出する過程について説明する。
無線通信装置100から各無線端末装置にデータを送信する際に用いるチャネル情報に誤差が含まれる場合、式(7)に示した周波数利用効率C(Ma) は、次式(9)と表すことができる
Figure 0005089718
ここで、Ii,jはi番目の無線端末装置のj番目の通信ストリームに影響する干渉電力を表している。この干渉電力Ii,jの量は無線端末装置で用いる受信アルゴリズムに依存するが、式(9)の2行目に示すように、無線端末装置が線形の受信ウエイトwr,i,jを用いた表すことができる。ここで、受信ウエイトwr,i,jは、例えば、MMSE(Minimum Mean Square Error;最小2乗誤差)法を用い、次式(10)のように表すことができる受信ウエイト行列のj番目の行ベクトルを用いることができる。ここで、(a)*は、aの複素共役を表す。
Figure 0005089718
チャネル情報取得回路105が算出するチャネル情報に誤差がない場合、Wを算出するために用いた推定チャネル行列G〜GMaは、実際の伝送路の状態を示すチャネル行列H〜HMaと一致する。このとき、チャネル行列G(=H)と、行列W(i≠j)とは、直交するため、式(9)の右辺に含まれる干渉電力Ii,jは、0となり、式(9)は、式(7)に示した周波数利用効率C(Ma) と一致する。以下、式(9)で用いたように、干渉電力Ii,jを線形の受信ウエイトwr,i,jを用いて次式(11)により表される。
Figure 0005089718
一方、チャネル情報に誤差がある場合、Wを算出するために用いたチャネル情報取得回路105により推定されたチャネル行列Gは、誤差を含み実際のチャネル行列Hと異なる。このため、チャネル行列Hと行列W(i≠j)とは、完全には直交しない。この場合におけるチャネル情報取得回路105が推定したチャネル行列Gを次式(14)と表すことができる。
Figure 0005089718
ここで、行列ΔHは、チャネル推定における誤差を示す行列である。なお、送信ウエイト算出に用いた推定されたチャネル行列Gは、W(i≠j)と直行するため、周波数利用効率C(Ma) を表す式(9)を、行列Gと行列ΔHとを用いて書き直すと、次式(13)となる。
Figure 0005089718
式(13)において、1行目から2行目への変換は行列Gと行列W(i≠j)との積が0行列になる関係(G・W=0、i≠j)を用いている。また、式(13)は、i番目の無線端末装置への通信の伝送品質には、i番目の無線端末装置と、無線通信装置100との間の伝送路に対するチャネル推定の誤差のみが影響することを示している。すなわち、i番目の無線端末装置以外の無線端末装置と、無線通信装置100との間の伝送路に対するチャネル推定の誤差には、影響されないことを示している。
更に、式(13)において、次式(14)で表される2行目の右辺分母の第2項を小さくするほど、高い伝送品質を得られることがわかる。
Figure 0005089718
このことから、Ma個の無線端末装置のうちi番目の無線端末装置以外の無線端末装置に割り当てる電力P (j≠i)を小さくすることにより、伝送品質の劣化を低減できることが分かる。つまり、マルチユーザMIMO送信を行う場合、許容される干渉電力による特性劣化量が予め決定され、誤差を示す行列ΔHの大きさに関する情報を得ることができれば、誤差により生じる伝送品質の劣化を抑制するための電力P (j≠i)の和に対する条件を定めることができる。
無線通信装置100と各無線端末装置との間の各通信ストリームにおける伝送品質の劣化の程度は、行列ΔHiにより表現することができる。ここで、式(8)の表記と、受信側の無線端末装置における受信ウエイトwi,jとを用いて、i番目の無線端末装置がj番目の通信ストリームの復号を行ったとすると、信号対雑音干渉電力比(Signal to Interference and Noise Ratio;SINR)は、次式(15)により表される。
Figure 0005089718
ここで、干渉電力Ii,jを正確に求めることはできないが、wr,i,j、WがΔHと無相関であることを利用し、期待値であれば次式(16)により推定することができる。
Figure 0005089718
ここで、PA,iは、i番目の無線端末装置に割り当てた電力の総和であるとする。式(16)において、1行目から2行目の変換では、wr,i,jをM×Mのユニタリ行列のうちの1ベクトルとみなし、2行目から3行目の変換では、送信ウエイトWiがM×Mのユニタリ行列のうちのL(i)のベクトルであることから、変換している。
また、3行目から4行目への変換では、j番目の無線端末装置への送信において、各ストリームに割り当てる電力は、等電力であり、PA,i/L(j)で表せると仮定している。4行目から5行目の変換では、行列ΔHの要素における、分散値σH,i を用いて、ΔHのフロベニウスノルムの二乗値‖ΔH が、MσH,i と表せることを利用している。
式(16)において、i番目の通信相手へのSINRの期待値はすなわち、i番目の無線端末装置に対するチャネル推定誤差σH,i と、i番目の無線端末装置以外に送信電力Γに依存することがわかる。i番目の無線端末装置以外に送信電力Γは次式(17)のように表せる。
Figure 0005089718
式(15)で表されるSINRi,jと、式(8)で表される信号対雑音比Si,jとを比較した減少量の期待値Di,jは、(SINRi,j)/(Si,j)として、次式(18)と表される。
Figure 0005089718
よって、伝送品質を表すSINRの減少量の期待値Di,jは、熱雑音σと、推定誤差σH,i と、i番目以外の無線端末装置への送信電力Γにより表される。
ΔHiの要素成分の分散値σH,i は、通信方式や、チャネル推定に用いるパイロット信号の長さ、チャネルを推定してから送信するまでにかかる遅延時間、チャネルの時間変動、チャネル情報のフィードバックを用いる場合にはそのビット量により決定される。これらの通信方式や通信条件により、σH,i を推定してもよいし、経験的に得られる値を参照してもよい。いずれの場合でも、チャネル推定の際には無線通信装置100と無線端末装置との通信時の無線通信装置100の送信電力Γと信号対雑音電力比がσH,i に影響を与える。例えば、チャネルが静的で、時間変動がない場合に、送信を行う装置のアンテナ数分のパイロットシンボルを用いてチャネル推定を行えば、σH,i =σ/Γと表せる。この倍だけチャネル推定用の信号を用いれば、σH,i =0.5σ/Γとなる。チャネル推定用の信号の送信電力Γを高く設定し、チャネル推定誤差を低減することもできる。まず、チャネル推定に用いることができるパイロット数で基本的な値が決まり、これに、チャネルの時変動や、フィードバックのための量子化誤差が付加されていく。よって、以下、チャネル推定誤差σH,i がασと表せるものとして、この場合には、式(14)で表せる干渉電力の期待値は、式(16)から、次式(19)のように表せる。
Figure 0005089718
ここで、αiは、前述のパイロット信号を1つ用い、送信電力Γで通信を行って得られるチャネル推定誤差に対するずれを表す係数であり、大きく設定するほど、推定誤差を大きく見積もることになる。αiとして、チャネル推定時の送信アンテナ数を、チャネル推定に用いるパイロット信号の数により割った数を用いたり、チャネルの時変動を表す係数ψiと、推定してから送信するまでに要する時間tiの積ψiiの関数にしたり、その両方の乗算値とすることもできる。また、複数のアンテナを備える無線端末装置において、アンテナの全て、又は一部のアンテナに対するチャネル情報が得られない場合、無線端末装置に備えられているアンテナの数に対する、チャネル情報が得られないアンテナの数の比をαとしてもよい。また、信号電力対熱雑音電力比にαを乗じて算出される値をチャネル推定誤差としてもよい。
または、信号対雑音比が小さいほど、時間位置検出や、周波数ずれ補償などのアルゴリズムの精度が下がるため、αをi番目の無線端末装置の信号対雑音比がさがるほど大きくなるように設定することもできる。
図2は、干渉電力対熱雑音比(Ii,j/σ)と、減少量の期待値Di,jとの関係の一例を示すグラフである。同図において、横軸方向は、干渉電力対熱雑音比(Ii,j/σ)を示し、縦軸方向は、減少量の期待値Di,jを示している。SINRの減少量の期待値Di,jは、図示するように、干渉電力対熱電力比(Ii,j/σ)と1対1に対応している。そこで、許容し得るSINRの減少量の期待値Di,jを設定すれば、対応する干渉電力対熱雑音比(Ii,j/σ)が一意に定まる。
例えば、マルチユーザMIMO送信において、各ストリームのSINRの劣化量を−3dBまで許容できる伝送システムを設計する場合には、i番目の無線端末装置以外の無線端末装置に送信する信号の送信電力Γをσ/σH,i 以下にすればよい。
また、各ストリームのSINRの劣化量を1dBまで許容する伝送システムを設計にする場合には、干渉電力は熱雑音0.25893σまで許容される。(図2において、Ii,j/σを約−5.8687dB以下に対応)この場合も同様に、式(19)において、E(Ii,j)に0.25893σを代入して、Γの電力条件を0.25893σ/σH,i と算出できる。SINRの許容し得る減衰量を減衰量の期待値Dと設定した場合の、i番目の通信相手以外に送信できる送信電力の許容される送信電力の総和Γiの最大値Γmax,i(以下、許容送信電力条件という)は、次式(20)により表される。
Figure 0005089718
この送信電力の総和Γiの最大値Γmax,iが、許容送信電力条件である。許容送信電力条件は、チャネル推定誤差の熱雑音レベルに対する比αとSINRの減衰量の期待値D、チャネル推定時の送信電力Γから得られる。ここで、チャネル推定誤差の熱雑音レベルに対する比の大きさに応じて許容送信電力は小さくなることが分かる。
次に、許容送信電力条件Γmax,iを設定する過程を説明する。ここで、熱雑音の受信電力を−80dBmとし、i番目の無線通信端末のチャネル行列の推定誤差σH,i のフロベニウスノルムが−60dBの場合を例にして説明する。この場合、無線通信装置100は、送信電力15dBmで送信する。また、シングルユーザMIMO送信により、単一ストリームを送信して、受信ダイバーシチを行わないとき、i番目の無線端末装置の受信電力は、15dBm−60dB=−45dBmとなり、SNRは、35dBとなる。
以下、簡単のため、チャネル推定時の送信電力は通信時の送信電力と同じ15dBmであることとする。このi番目の無線端末装置において、1シンボル分の既知信号を用いてチャネル行列Hを推定し、時変動によるチャネル推定精度の劣化がない場合、推定精度はSNRに対応する精度が期待できるため、推定誤差σH,i はチャネル行列のフロベニウスノルムよりSNRの大きさだけ小さい−60dB−35dB=−95dBと表すことができる(α=1)。ここで、許容できる減少量Dを−3dBとすると、式(20)において、許容送信電力条件Γmax,iは、Γmax,i=(σ−Dσ)/(DσH,i )=(−83dBm)−(−3−95)dB=15dBmとなる。
また、許容できる減衰量D=−1dBとすると、条件は厳しくなり、許容送信電力条件Γmax,iは、Γmax,i=(0.25893)×15dBm=−5.8687dB+15dBm=9.1317dBmがi番目の無線端末装置以外の無線端末装置に対して割り当てられる送信電力の最大値となる。行列ΔHは、IEEE802.11aに記載のロングプリアンブルを使ったり、複数のシンボルからチャネルを推定することで、SNR以上の推定精度を得ることができ、許容送信電力条件を大きくできる。
しかし、チャネルの推定時から送信するまでに、時間変動により行列Hが変化してしまったり、フィードバック情報に基づいて量子化ビットによりチャネルを推定した場合には、対応する通信装置のSNRより推定精度が悪くなることが考えられる。この場合、無線端末装置、又は無線通信装置100が、過去のチャネル情報を記憶しておき、時間的な変化を相関値により評価し、チャネルの時間変動による推定誤差を評価するようにしてもよい。具体的には時間tに推定したチャネル行列と時間t+Δtに推定したチャネル行列の変動を相関値もしくは誤差で評価し、時間ずれ量Δtで規格化してチャネル推定誤差とし、送信する際にはチャネル推定から送信までの時間差Δtの値で補正し、推定誤差とすることができる。又は、チャネル情報のフィードバックを行う場合には、量子化誤差を推定誤差として与えるようにしてもよい。
次に、許容送信電力条件を決定する過程について説明する。
まず、無線通信装置100が通信を行う無線端末装置が、チャネル情報を無線通信装置100に送信できない場合について説明する。この場合には、無線通信装置100は、無線端末装置が有するアンテナ素子それぞれとの伝送路の状態を取得することができないため、チャネル行列Hを推定することができない。しかし、チャネル行列Hのフロベニウスノルムの値は、送信及び受信における信号の信号対雑音比から推定することができる。
例えば、平均送信電力10dBmの通信端末装置から信号を受信し、平均受信電力が−60dBmの場合、平均送信電力及び平均受信電力より伝送路における減衰量は、−70dBであると推定できる。すなわち、チャネル行列Hのフロベニウスノルムの値は、−70dBであると推定できる。
これにより、チャネル行列の推定ができない場合においても、式(11)の場合と同様に、チャネル推定における誤差を定義することができる。また、チャネル情報取得回路105が推定したチャネル行列Giは、式(21)のようにとらえることができる。
Figure 0005089718
E(‖G )=E(‖H )と設定すれば、チャネル誤差の大きさはチャネル行列のフロベニウスノルムと同じとして扱える。以下、例を示し、許容送信電力条件Γmax,iの設定方法について説明する。
チャネル行列のフロベニウスノルムが−80dBと推定される通信端末装置に対して、許容できる減衰量D=−3dBとし、熱雑音電力を−80dBmとする場合について説明する。
まず、通信端末装置がチャネル情報を通知する機能を有していない場合、チャネル推定における推定誤差σH,i はチャネル行列のフロベニウスノルムに同じ−80dBに設定する。送信電力が15dBmのとき、無線端末装置における受信電力は、15dBm−80dBm=−65dBmであるため、信号対雑音比は、−65dBm−(−80dBm)=15dBである。ここで、式(20)において、σH,i =−60dB、σ=−80dBmを代入すると、チャネル行列の推定誤差−80dB、許容送信電力条件Γmax,iは、Γmax,i=(−80dB−3dB)−(−3dB−80dB)=0dBmに設定できる。
また、許容できる減衰量D=−1dBと条件を厳しくした場合、許容送信電力条件Γmax,iは、Γmax,i=(−80dBm−(−80dBm))×0.25893=0dBm−5.8683dB=−5.8683dBmに設定できる。
次に、通信端末装置がチャネル情報を通知する機能を有していないが、チャネル行列の一部の情報について通知可能な場合における許容送信電力条件Γmax,iの設定方法について説明する。
この場合は、例えば、無線端末装置からパイロット信号や、プリアンブルなどのチャネルを推定することのできる信号を送信する場合や、無線端末装置が有する複数のアンテナ素子のうち一部のアンテナ素子に対応するチャネル情報を無線通信装置100にフィードバックする場合が該当する。このような場合、無線通信装置100は、通信する無線端末装置に対するチャネル行列の全ての要素を得ることはできないが、一部の要素について推定することができる。
例えば、無線端末装置が2つのアンテナ素子を有し、いずれか一方のアンテナ素子を送信に使う場合である。この場合、チャネル情報取得回路105は、送受信の対称性を利用して、無線端末装置の一方のアンテナ素子に対応するチャネル行列を推定することができる。無線端末装置が2つのアンテナ素子を有する場合、チャネル行列は、2×Mt行列となるが、このうち、1×Mt行列を推定することができる。つまり、推定されるチャネル行列Giは、次式(22)と表すことができる。
Figure 0005089718
チャネル行列Hiの1番目の行ベクトルhi,1について推定することができるため、ベクトルΔhi,1のフロベニウスノルムは、通信したSNRに対応する精度分だけ、ベクトルhi,1より小さい値とすることができる。このとき、ベクトルhi,2は、全く推定できないため、Δhi,2のフロベニウスノルムは、チャネル行列の行ベクトルの期待値と同じ値を設定する。つまり、チャネルの推定条件は、Δhi,1を通信したSNRに対応する精度分だけ小さくすることができるので、前述の通信端末装置がチャネル情報を通知する機能を有していない場合に比べて、推定誤差のフロベニウスノルムを小さくすることができる。
例えば、通信端末装置が2つのアンテナ素子を有し、いずれか一方のアンテナ素子に対応するチャネルベクトルが推定可能の場合を例にして説明する。ここで、通信端末装置に対するチャネル行列のフロベニウスノルムが−80dBであり、許容し得る減衰量D=−3dBとし、送信電力を15dBmとし、熱雑音電力を−80dBmとする。この場合、チャネル推定誤差には、チャネル行列のうち半分は既知であるためにチャネル行列のフロベニウスノルムより3dB(≒10log102)小さく推定でき、−83dB(=−80dB−3dB)が設定される。
このとき、式(20)から、許容送信電力条件Γmax,iを導出すると、Γmax,i=(−83dBm)−(−3dB−83dB)=3dBmが得られる。また、許容し得る減衰量D=−1dBと条件を厳しくしたとき、許容送信電力条件Γmax,iには、Γmax,i=(−80dBm−(−83dB))×0.25893=3dBm−5.87=−2.87dBmを設定する。
このように、チャネル行列のうち推定可能なアンテナ素子の割合が増えると、許容送信電力条件Γmax,iを大きく設定することができる。
続いて、許容送信電力条件Γmax,iを用いて、通信相手となる無線端末装置の組み合わせの選択する過程と、選択した無線端末装置に対する送信電力を設定する過程とについて説明する。
図3は、本実施形態における無線通信装置100の通信相手となる無線端末装置の一例を示す図である。図示するように、無線端末装置M1〜M6それぞれに対して、チャネル行列のノルムと、チャネル情報を送信するチャネル通知機能の有無と、無線通信装置100からの送信電力が15dBmのときの信号対雑音比と、チャネル推定誤差と、チャネル推定誤差におけるずれを表すαと、許容し得る減衰量D=−3dBにおける許容送信電力Γmax,iと、許容し得る減衰量D=−1dBにおける許容送信電力Γmax,iとを示している。ここでは、熱雑音レベルは、−80dBとしている。
また、チャネル通知機能において、「NG」は、チャネル情報を通知する機能を有していない無線端末装置を示し、「OK」は、チャネル情報を通知する機能を有している無線端末装置を示し、「Partial」は、上述したように、一部のアンテナ素子に対してチャネル情報を取得することができる無線端末装置を示している。
また、チャネル推定誤差には、チャネル情報を通知する機能を有していない無線端末装置に対してチャネル行列のノルムと同じ値が設定され、一部のアンテナ素子に対してチャネル情報を取得することができる無線端末装置に対してチャネル行列のノルムより3dB小さい値が設定されている。例えば、4素子のアンテナを無線端末装置が有し、1素子に対応するチャネル情報のみが得られる場合にはチャネル行列のノルムより1.25dB(=10log10(3/4))小さい値を設定できる。
無線端末装置M1は、送信を行う無線通信装置100の近傍に存在する通信装置であり、チャネル通知機能を持たない端末である。無線通信装置100の近傍に位置する無線端末装置M1では、他の無線端末装置M2〜M6に対する送信信号からの干渉を受けやすいので、送信電力条件は非常に小さく設定しなければならない。
許容し得る減衰量D=−3dBとしたとき、無線端末装置M1の許容送信電力条件は−20dBmである。また、他の無線端末装置M2〜M6のチャネル行列ノルムが−55dB以下であるため、送信電力−20dBmにより送信すると、各無線端末装置M2〜M6における受信電力は、最大でも熱雑音より5dBしか高くならず、−75dBm以下となってしまう。信号対雑音電力比5dB以下で伝送可能な変調方式や誤り訂正符号がない場合、無線端末装置M1は、他の無線端末装置M2〜M6と組み合わせるマルチユーザMIMO送信の対象にはならないため、シングルユーザモードで送信を行う必要がある。
このようにマルチユーザMIMOが可能かの判定に用いることもできる。例えば、許容送信電力条件×チャネル行列ノルムの熱雑音レベルに対する比がある値以下になる場合(例えば5dBなど)、マルチユーザMIMO通信を行わない、などの設定が可能である。又は、許容送信電力条件が−60dBm以下ならマルチユーザMIMO送信を行わないなど、許容送信電力条件のみでマルチユーザMIMO通信の可否を判定することもできる。ここで、マルチユーザMIMO通信とは、同一時刻、同一周波数で複数の無線端末装置に異なる信号を送信することである。
無線端末装置M2についても、無線端末装置M1と同様に評価する。無線端末装置M2における許容し得る減衰量Dを−1dBとした場合、許容送信電力条件Γmax,iは、−5.87dBmとなる。このとき、無線端末装置M4〜M6それぞれの受信電力は、熱雑音電力(−80dB)より高いので、無線端末装置M4〜M6のうちいずれか1つの無線端末装置は、無線端末装置M1と同時に同一周波数で送信可能である。すなわち、無線端末装置M2と、無線端末装置M4〜M6のうちいずれか1つの無線端末装置とは、マルチユーザMIMO送信の選択対象となる。
例えば、無線端末装置M2と無線端末装置M4とに対して同時に同一周波数で送信する場合、無線端末装置M2の許容送信電力条件が、−5.87dBmであるので、無線端末装置M4への送信電力は−5.87dBm以下とする必要がある。ここで無線通信装置100は、−6dBmの送信電力により無線端末装置M4へ送信したとき、無線端末装置M4における受信電力は−66dBmとなる。ここで、熱雑音レベルが−80dBmであるので、無線端末装置M4は、SNR14dBが得られる。
また、無線端末装置M2とM4でマルチユーザMIMO通信を行う場合、どちらか一方の許容送信電力のみを考慮することもできるし、無線端末装置M4の許容送信電力条件が9.13dBmであるので、無線端末装置M2への送信電力を9.13dBm以下に設定することもできる。ここでは、無線端末装置M2に対する送信電力を9dBmに設定する。この場合、単純に送信電力9dBmで送信すれば、無線端末装置M2の受信信号電力は9−80=−71dBであり、SNRは−71−(−80)=9dBとなる。また、無線端末装置M4への干渉電力はチャネル情報を用いることを前提としているため、無線端末装置M4のチャネル情報を用いて、無線端末装置M2への送信ウエイトを決定することが必要となる。
すなわち、無線端末装置M2への送信ウエイトは、式(4)のヌル空間ウエイトV の一部、またはV に任意のベクトルを乗算したものを、無線端末装置M2へ送信ウエイトとする。この制御により、無線端末装置M2のSNRは9dBより低下する場合がある。このSNRの低下の大きさはチャネル行列の相関値に比例する。ここで、この干渉抑圧信号処理により、1dB信号電力が低下したとき、無線端末装置M2へのSNRは8dBとなる。
この指向性制御による信号電力の低減はチャネル行列の固有値λと、ヌル空間固有値λ'の比に対応しており、ヌル空間固有値λ'が小さくなるほど相関値が高く、このSNRの低下量が大きい。無線端末装置の組み合わせごとに固有値λと、ヌル空間固有値λ'との比を求めてもよいし、予め期待値の低下量をユーザの多重数に応じて決めておいてもよい。例えば、2ユーザで多重する場合は、3dB、3ユーザでは4dB、などとして決定できる。
ここで、無線通信装置100において、通信方法決定回路109は、マルチユーザMIMO送信による信号電力の低下量を1dBとし、無線端末装置M2へSNR8dB、無線端末装置M4へSNR14dBで送信できる符号化率及び変調方式が選択できるか否かを判定する。また、通信方法決定回路109は、マルチユーザMIMO送信したときの伝送速度が、無線端末装置M2及び無線端末装置M4それぞれに対して個別に送信電力15dBmにより送信したときの伝送速度より高いか否かを判定することもできる。
通信方法決定回路109は、上記の符号化率及び変調方式が選択でき、かつ、マルチユーザMIMO送信の伝送速度が個別に送信したときより高い場合、無線端末装置M2、M4とを対象とするマルチユーザMIMO送信によりデータを送信することを選択する。
また、チャネル推定誤差が無線端末装置M4より小さい無線端末装置M6と、無線端末装置M2とを組み合わせたマルチユーザMIMO送信を行う場合、無線端末装置M2のSNRを大きく設定することができる。無線端末装置M6の許容送信電力条件Γmax,iは、許容し得る減衰量Dを−1dBとした場合、12.13dBであるので、無線端末装置M2に対する送信電力を12dBとすることができる。このとき、干渉抑圧信号処理による信号電力の減少が1dBとしても、無線端末装置M2に対してSNR11dBとし、無線端末装置M6に対してSNR9dBとしてマルチユーザMIMO送信することができる。
無線端末装置M4〜M6は、チャネル通知機能を有しているため、同時に同一周波数でデータを多重して送信するマルチユーザMIMO送信により伝送容量を大きく向上することが期待できる。なお、図3に示す例では、チャネル推定誤差Eが様々な値をとるケースを示している。
無線端末装置M4は、平均SNRと同等のチャネル推定精度を有する(α=1=0dB)。無線端末装置M5は、チャネルの推定から送信までの時間変動か、もしくは量子化誤差などの要因によりチャネル推定精度が無線端末装置M4より3dB低くなっている(α=3dB)。無線端末装置M6は、複数のシンボルを用いてチャネル情報を推定することができ、チャネル推定誤差が無線端末装置M4より3dB高くなっている(α=−3dB)。
以下、無線端末装置M4と無線端末装置M5を組み合わせた場合、無線端末装置M4と無線端末装置M6を組み合わせた場合、無線端末装置M4〜M6を組み合わせた場合のそれぞれにおける送信電力を設定する過程について説明する。以下、許容し得る減衰量Dを−1dBとする。
無線端末装置M4と無線端末装置M6を組み合わせる場合について説明する。許容し得る減衰量Dが−1dBのとき、無線端末装置M6の許容送信電力条件Γmax,iは、12.13dBmであり、無線端末装置M4の許容送信電力条件Γmax,iは、9.13dBmである。したがって、無線端末装置M4に許容される送信電力は12.13dBmであり、無線端末装置M6に許容される送信電力は9.13dBmである。
簡単のため、通信方法決定回路109は、例えば、無線端末装置M4に対する送信電力を12dBmとし、無線端末装置M6に対する送信電力を9dBmとした場合を考える。
マルチユーザMIMO用の干渉抑圧信号処理を考慮しなければ、無線端末装置M4はSNR32dBが得られ、無線端末装置M6ではSNR24dBが得られる。例えば、無線端末装置M4、M6の組み合わせによる干渉抑圧信号処理による所望信号の減少量を3dBと予め設定したとき、無線端末装置M4はSNR29dBが得られ、無線端末装置M6はSNR21dBが得られる。
このとき、通信方法決定回路109は、無線端末装置M4と無線端末装置M6とが上記のSNRで送信できる符号化率及び変調方式を選択できるか否かを判定する。また、通信方法決定回路109は、無線端末装置M4及び無線端末装置M6を組み合わせてマルチユーザMIMO送信したときの伝送速度が、無線端末装置M4及び無線端末装置M6それぞれに対して個別に送信電力15dBmにより送信したときの伝送速度より高いか否かを判定する。
そして、通信方法決定回路109は、符号化率及び変調方式を選択でき、且つ、マルチユーザMIMO送信したときの伝送速度が高い場合、無線端末装置M4及び無線端末装置M6を組み合わせたマルチユーザMIMO送信を選択する。一方、通信方法決定回路109は、符号化率及び変調方式を選択できないか、又は、マルチユーザMIMO送信したときの伝送速度が高くない場合、無線端末装置M4に対するシングルユーザMIMO送信を選択する。
次に、無線端末装置M4と無線端末装置M5とを組み合わせる場合について説明する。許容し得る減衰量Dが−1dBのとき、無線端末装置M4に許容される送信電力は、6.13dBm、無線端末装置M6に許容される送信電力は、9.13dBmである。通信方法決定回路109は、例えば、それぞれに6dBm、9dBmの送信電力を割り当てる。この場合、マルチユーザMIMO用の干渉抑圧信号処理を考慮しなければ、無線端末装置M4はSNR26dBを得ることができ、無線端末装置M5はSNR34dBを得ることができる。
また、無線端末装置M4と6の組み合わせによる干渉抑圧信号処理による所望信号の減少が3dBであったとすると、無線端末装置M4には、SNR23dB、無線端末装置M6にはSNR34dBが得られる。
そして、通信方法決定回路109は、同様の判定を行い、判定結果に応じて、無線端末装置M4及び無線端末装置M5を組み合わせたマルチユーザMIMO送信と、無線端末装置M4に対するシングルユーザMIMO送信とのいずれか一方を選択する。
次に、無線端末装置M4、M5、M6を組み合わせる場合には、各無線端末装置に対し、自無線端末装置以外の無線端末装置に対して既定される許容送信電力条件Γmax,iの最小値により組み合わせられるか否かの判定を行う。無線端末装置M4、M5、M6の中では無線端末装置M5の許容送信電力条件Γmax,iが小さいので、無線端末装置M5の許容送信電力条件Γmax,iに基づいて判定を行う。
このとき、無線端末装置M4に割り当てる送信電力は、無線端末装置M5の許容送信電力条件Γmax,iから6.13dBm−3dB=3.13dBとして得られる。ここで、3dBを引いているのは、無線端末装置M4と無線端末装置M6とで、6.13dBmの電力を等分しているからである。同様に、無線端末装置M6の送信電力条件も3.13dBmとなる。
次に無線端末装置M5には、無線端末装置M4と6の許容送信電力条件Γmax,iのうち小さい無線端末装置M4の許容送信電力条件Γmax,iが規定する9.13dBm以下に設定する。なお、9.13dBmは無線端末装置M5とM6の総和の値での規定であることに注意が必要である。
無線端末装置M5に割り当てる送信電力は、無線端末装置M6に既に3.13dBm=2.05mWの送信電力を割り当てているので、9.13dBm−2.05mW=6.13mW=7.87dBmが設定される。
この場合、無線端末装置M4〜M6に対して割り当てる送信電力は、それぞれ3.13dBm、7.87dBm、3.13dBmと設定される。干渉抑圧のための信号処理による信号電力の低下が各4dBであったとすると、無線端末装置M4〜6における平均受信SNRはそれぞれ、19.13dB、28.87dB、14.13dBとなる。
そして、通信方法決定回路109は、同様の判定を行い、判定結果に応じて、無線端末装置M4〜M6を組み合わせたマルチユーザMIMO送信と、無線端末装置M4に対するシングルユーザMIMO送信とのいずれか一方を選択する。
または、複数の無線端末装置に送信を行う際に、許容送信電力条件の設定はそれらのうちいずれか一つにのみ決定し、他の無線端末装置への送信は、干渉電力に対する条件を用いないこともできる。例えば、許容し得る減少量D=1dBとして、無線端末装置M4〜M6へ通信する場合に、代表無線端末装置を一つ決定する。例えば、無線端末装置M4を代表無線端末装置に選択した場合、無線端末装置M4の許容送信電力条件9.13dBmを無線端末装置M5とM6に割り当て、無線端末装置M5とM6の許容送信電力条件は考慮しないことができる。
無線端末装置M4への送信電力は、無線通信装置100の最大送信電力値と、許容送信電力条件とから、(最大送信電力)―(許容送信電力条件)により決定することができる。代表無線端末装置への最小代表無線端末装置送信電力Pを予め設定しておき、(最大送信電力)−(許容送信電力条件)がPを下回る場合には、無線端末装置M4への送信電力をPとするように制御できる。無線端末装置M5とM6へ生じる干渉電力は式(111)や式(19)により推定でき、この値に応じて、変調方式や符号化率、ストリーム数などを決定することができる。
また、この干渉電力を考慮したSINRの値が一定値を下回る場合に、これらの無線端末装置へのマルチユーザMIMOによる送信を行わないこともできる。また、この代表無線端末装置が送信を行うそれぞれの無線端末装置に対し決定することで、無線端末装置間の公平性を保つことができる。また、それぞれの無線端末装置を代表無線端末装置として決定した送信方法を、別の時間、または別の周波数チャネルに振り分けて送信することもできる。別の周波数チャネルへの振り分け方としては、OFDMシステムを用い、代表無線端末の数で周波数チャネルを振り分け、各周波数チャネルでそれぞれに割り振られた代表無線端末装置を基準にした送信を行うこともできる。
また、各無線端末装置への電力割り当てを決定する際に、最小割り当て電力を予め決定しておき、この電力を下回る送信電力が割り当てられる場合には、同時に送信する通信相手数を減らし、無線端末装置へ割り当てられる送信電力が最小割り当て電力を上回るように設定することができる。このように制御することで、送信装置のデジタル・アナログ変換回路の量子化ビットの不足により、量子化雑音により生じる送信信号の誤差が増加することを抑制することができる。
また、無線端末装置M1〜M6が無線通信装置と直接通信を行う無線端末装置ではなく、他の無線通信装置と通信している無線端末装置だったとしても、同様に送信電力の制御を行うことができる。このような場合には、当該他無線通信装置に属する無線端末装置と、自無線通信装置との間のチャネル行列を式(3)で表せる集合行列に含め、この無線端末装置以外の通信を行う無線端末装置への送信ウエイトを計算することで、当該他無線通信装置と通信する無線端末装置へ干渉電力を送信しないように送信することができる。
この場合も、当該他無線通信装置と通信する無線端末装置のチャネル誤差に応じて、許容送信電力を式(20)のように設定できる。また、この無線端末に対応するαを、自無線通信装置と通信する無線端末装置とは異なる値に設定することで、当該他無線通信装置と通信する無線端末装置への干渉条件を厳しくしたり、緩めたりすることができる。ここでαを大きく設定すると、干渉電力を小さく設定でき、αを大きく設定すると、干渉電力を大きく設定できる。また、このような場合、他の無線通信装置が送信する信号が、自無線通信装置が信号を送信した際に干渉電力として無線端末装置において受信されることが考えられるため、この干渉電力を考慮して、変調方式や符号化率などを決定し送信を行うこともできる。
図4は、同実施形態の無線通信装置100における送信処理を示すフローチャートである。
まず、チャネル情報取得回路105は、無線部103−1〜103−Mtを通じて、各無線端末装置との間のチャネル情報を取得して、チャネル情報記憶回路106に記憶させる(ステップS401)。
チャネル情報取得回路105は、受信される信号に無線端末装置の時間変動を通知する信号が含まれていれば取得し、これもチャネル情報記憶回路106に出力する。チャネル情報誤差・条件判定回路107は、チャネル情報記憶回路106に記憶されているチャネル情報の信号対雑音比から推定される推定誤差、複数の時間に対して記憶されたチャネル情報の時間変動から推定される環境の変化による推定誤差、チャネル推定のために用いたフィードバック信号のビット数、チャネル推定から送信までに要する時間、の少なくとも一つから、無線端末装置に対応するチャネル推定誤差を推定する(ステップS402)。
電力条件決定回路108は、チャネル情報誤差・条件判定回路107の推定したチャネル情報の誤差から式(22)により各無線端末装置の許容送信電力条件Γmax,iを算出する(ステップS403)。
通信方法決定回路109は、通信対象とする無線端末装置のうちから第一の無線端末装置を1つ選択する(ステップS404)。通信方法決定回路109は、電力条件決定回路108により算出された許容送信電力条件Γmax,iに基づいて、選択した第一の無線端末装置と同時に同一周波数によりデータを送信する無線通信端末を選択し、選択された無線通信端末の許容送信電力条件を満たすか判定する(ステップS405)。
すなわち、ステップS405では、選択した第一の無線端末装置の許容送信電力条件Γmax,iを満たす無線端末装置を選択(スケジューリング)し、データを送信する対象の無線端末装置の組み合わせを決定する。
送信ウエイト決定回路110は、選択された無線端末装置の組み合わせと、チャネル情報記憶回路106に記憶され、選択された無線端末装置に対応するチャネル情報とにより送信ウエイトと得られる信号対雑音電力比を算出する(ステップS406)。
また、通信方法決定回路109は、選択された無線端末装置の組み合わせから得られる信号対雑音比と、選択された無線端末装置それぞれに割り当てられた送信電力とに基づいて符号化率及び変調方式を無線端末装置ごとに選択する(ステップS407)。
送信信号変換回路102は、通信方法決定回路109により選択された符号化率及び変調方式により、データ出力回路101から出力されるデータに対して誤り訂正符号化及び変調と、直交波周波数分割多重方式やシングルキャリア伝送などの伝送方式に応じた信号形式に変換とを行い、ベースバンド信号を生成する。また、送信信号変換回路102は、送信ウエイト決定回路110の算出した送信ウエイト及び送信電力値を乗算し、生成したベースバンド信号を増幅し、無線部103−1〜103−Mtを介して無線端末装置に送信する(ステップS408)。
また、ステップS405において、通信方法決定回路109は、電力条件決定回路108により算出された許容送信電力条件Γmax,iに基づいて、選択した第一の無線端末装置に関してのみ許容送信電力条件を満たす送信電力配分を行い、同時に同一周波数によりデータを送信する無線通信端末に対しては、生じる干渉電力について推定し、(例えば式(19)を用いることができる)、後述する信号対雑音比電力の評価や変調方式・符号化率、スループットの決定に用いることができる。
また、通信を行う複数の無線端末に対し、それぞれを第一の無線端末装置として、通信相手の組み合わせ、電力割り当て、変調方式・符号化率を決定し、異なる時間・周波数チャネルでそれぞれを第一無線端末装置とした送信を行うことができる。すなわち、無線端末装置の複数の組み合わせを選択し、無線端末装置の組み合わせそれぞれに対して異なる周波数チャネルを割り当て、同時にデータを送信するようにしてもよい。また、無線端末装置の組み合わせそれぞれに対して異なる時間においてデータを送信するようにしてもよい。
また、ステップS404において、通信方法決定回路109は、基地局装置1から送信するデータが存在する無線端末装置を優先的に選択するようにしてもよい。そして、通信方法決定回路109は、選択した無線端末装置(第一の無線端末装置)の許容送信電力条件Γmax,iに基づいて、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線端末装置の組み合わせを決定し、各無線線端末装置に対する送信電力分配、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを算出するようにしてもよい。
なお、ステップS406と、ステップS407との順序を入れ替えて、変調方式及び符号化率を選択して、送信するデータのパケット長を定めてから、送信ウエイトを算出するようにしてもよい。また、ステップS404をステップS401の前に行い、通信相手が選択された後に、チャネル情報を取得し、チャネル推定誤差から許容送信電力条件Γmax,iを算出するようにしてもよい。
なお、ステップS406で送信ウエイトを求める際に得られた固有値の情報から推定できる信号対干渉雑音電力比や、ステップ407で決定される各無線端末装置への送信ビット数から、予め定めた値より低い信号対雑音電力比や、スループットとなる無線端末装置が存在しないか確認し、このような無線端末装置がいる場合、または同時同一周波数で送信する無線端末装置の数が、現状より少ない場合の信号対雑音電力比またはスループットより、現状の信号対雑音電力比またはスループットが低下している場合に、再度無線端末の選択をやり直し、ステップ405に戻すこともできる。このようにステップ405〜407を繰り返し、最適な無線端末装置の組み合わせを選択するようにしてもよい。
または、ステップS405において、マルチユーザMIMO送信による空間多重化する無線端末装置を1つ増加させた場合に得られる伝送速度の向上の度合が、所定の条件を満たす場合にのみ、多重数を増加させるようにしてもよい。例えば、所定の条件として、多重化する無線端末装置を1つ増やした場合に得られる伝送速度が、予め定めた規定数倍を超えること、などとする。または、最もチャネル推定誤差が大きい無線端末装置を空間多重化する無線端末装置から外した際に得られるスループットの上昇が、外された無線端末装置へのスループットより大きい場合、当該無線端末装置を空間多重化する無線端末装置から外すようにしてもよい。
ここで、規定値を1.5とした場合について、一例を示す。シングルユーザMIMO送信(同時同一周波数で単一通信相手と通信する方法)において、無線端末装置AとBに対し、それぞれ16QAM変調と64QAM変調とで誤り訂正符号化率3/4によりデータを送信していた場合、無線通信装置100は、単位時間当たりにそれぞれ3bit、4.5bit送信することができる。これをマルチユーザMIMO送信としてデータを多重化して送信するとき、式(15)により得られるSINRの値からそれぞれ16QAM変調と1/2の符号化率とにより送信できるとき、同時に2bitずつ送れるため、4bitの送信が可能となる。
このとき、シングルユーザMIMO送信における単位時間当たりの伝送量の平均値は、(3+4.5)/2=3.75bitであるのに対し、マルチユーザMIMO送信の単位時間当たりの伝送量は、4bitであり、0.25bit増加する。しかし、規定値から算出される条件値5.625bit(=3.75×1.5)より小さいので、マルチユーザMIMO送信を行わずに、シングルユーザMIMO送信を行うことになる。このようにある程度の伝送速度の増大を求めるのは、MACサブレイヤなどでマルチユーザMIMO通信を行うことで、伝送効率が低下することを鑑みているためである。
このように、マルチユーザMIMO送信を行うことにより伝送量が増える場合であっても、規定値により予め定められた伝送量の増加が得られないときには、マルチユーザMIMO送信を行わないようにする。これにより、マルチユーザMIMO送信により所望の効果が得られない場合は、シングルユーザMIMO送信を行うことにより無線通信装置100の演算量を増加させずにデータの伝送を行うことができ、無線通信装置100の消費電力の増加を抑えることができる。
なお、条件を規定値による倍数ではなく、増加するビット数で定めてもよい。
図5は、同実施形態において、マルチユーザMIMO送信の受信対象の無線端末装置を3つ以上にした場合の送信電力を算出する処理を示すフローチャートである。
3つ以上の無線端末装置がマルチユーザMIMO送信の受信対象となるとき、まず、通信方法決定回路109は、送信相手となる無線端末装置を選択すると、その中で第一の無線端末装置を決定し(ステップS501)、第一の無線端末の許容送信電力条件Γmax,iを算出する。他の無線端末装置への送信電力をΓmax,iとしてもよいが、無線通信装置100の最大送信電力の制約があるため、この値が大きいと第一の無線端末装置に十分な送信電力を割り当てられなくなる場合がある。このため、第一の無線端末装置への最低送信電力は、予め定めておく。例えば、7dBmなど、電力値で設定するようにしてもよいし、通信装置で送信できる最大電力(15dBmなど)を同時同一周波数チャネルで送信する無線端末装置で割ったものとしてもよい。同様に、第一の無線端末装置以外の無線端末装置へ送信する送信電力に最大値を設定し、10dBm以下、のように定めておいてもよい。ここで、第一の無線端末装置以外への送信電力の最大値をPとすると、第一の無線端末装置以外への送信電力はmin(P,Γmax,i)と表すことができる。(ステップS502)。なお、許容送信電力条件Γmax,iで示される電力を割り当てる際には、それぞれの無線端末装置に等分して割り当ててもよいし、予め定められた優先度に応じて割り当ててもよい。
次に、通信方法決定回路109は、決定された第一の無線端末装置以外への送信電力を上述のように設定した場合に、第一の無線端末装置以外の無線端末装置における、信号電力対干渉雑音電力比や、変調方式や符号方式を割り当てたスループットを算出し、条件を満たすか判定する。例えば、各無線端末装置に対し、信号対雑音電力比、スループット、干渉電力量のいずれか一つ以上が予め定められた既知値以上かどうかを判定する。または、総スループットが既定値以上となっているか否かを判定する(ステップS503)。
総スループットの既定値は例えば、シングルユーザMIMO通信におけるスループットの既定値倍(1.5倍など)としたり、ステップS502で選択した無線端末装置の数より低い無線端末装置の数の時の総スループットを用いてもよい。または、スループットではなくSNRやSINRを用いた指標としてもよい。
既定値以上でない場合(ステップS503、No)、ステップS502に戻り、同時同一周波数チャネルで送信を行う無線端末装置の組み合わせを変更する。具体的には、既定値を満たさなかった無線端末装置を組み合わせから除外したり、組み合わせの中で最も低いスループット・信号対干渉雑音比となった無線端末装置を除外したり、各無線端末装置へのデータストリーム数を変更したりしてもよい。
また、ステップS503において伝送品質をチェックする際に、第一の無線端末装置以外の無線端末装置への許容送信電力条件のみを考慮することもできるし、第一の無線端末装置以外の無線端末装置においても、許容送信電力条件を考慮し、これらの許容送信電力条件も満たすように送信電力の分配を決定し、それぞれの無線端末装置に対して、伝送品質の判定を行うようにしてもよい。
規定値以上である場合(ステップS503、Yes)、通信方法決定回路109は、送信電力分配、送信ウエイト、変調方式、及び符号化率を決定する(ステップS504)。なお、無線端末装置M4〜M6を組み合わせてマルチユーザMIMO送信をする例において示したように、干渉抑圧のための信号処理による信号電力の低下を考慮して、送信電力を設定してもよく、各無線端末装置の組み合わせに対してヌル空間固有値を計算することもできる。
また、送信を行う全ての無線端末が第一の無線端末装置となるまでステップS501〜S504の動作を続け、得られた複数の組み合わせの送信ウエイト、電力分配、変調方式、及び符号化率を異なる時間や周波数チャネルに用いることで、全ての無線端末装置が自端無線末装置を第一の無線端末装置とした通信を受けることで、公平性を保つことができる。
また、ステップS502において、第一の無線端末装置以外の無線端末装置への送信電力が決定された際に、当該送信電力、または各データストリームあたりの送信電力が既定値を上回っているかを確認し、上回っていなければ、S501にもどり、第一の無線端末装置以外の無線端末装置を選択しなおしたり、データストリーム数を変更したりすることができる。このように制御することで、送信側におけるデジタル・デジタル変換器により量子化誤差が増幅されることを防ぐことができる。また、この既定値は総送信電力の比で設定してもよく、例えば、無線端末装置に割り当てる送信電力が、総送信電力の1/10以下になる場合に、S501において第一の無線端末装置以外の無線端末装置の数を減らし、無線端末装置に割り当てる送信電力が、総送信電力の1/10以上になる送信電力となるように設定することができる。
また、無線通信装置100の通信対象ではなく、他の無線通信装置が通信を行っている無線端末装置が、無線通信装置100の通信可能な空間的な領域(セル)内に位置する場合、以下のようにして、当該無線端末装置に対する干渉を抑制するようにしてもよい。
チャネル情報取得回路105は、セルの内側に位置する他の無線通信装置と通信する無線端末装置との間のチャネル情報を推定する。そして、通信方法決定回路109は、通信対象の無線端末装置に対する送信電力を決定する際に、セルの内側に位置する無線端末装置のチャネル情報に基づいて、当該無線端末装置における干渉電力が予め定められた干渉電力値以下となるように送信電力を決定するようにしてもよい。また、この送信電力に応じて、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを決定するようにしてもよい。
これにより、他の無線通信装置への干渉を抑制することができ、他の無線通信装置が送信を行っている時間においても送信することが可能となる。
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態における無線通信装置200の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、無線通信装置200は、データ出力回路101と、送信信号変換回路102と、無線部103−1〜103−Mt(Mtは、2以上の自然数)と、アンテナ素子104−1〜104−Mtと、チャネル情報取得回路105と、チャネル情報記憶回路106と、チャネル情報誤差・条件判定回路107と、電力条件決定回路108と、通信方法決定回路209と、送信ウエイト決定回路110と、組み合わせ評価回路211とを具備している。本実施形態の無線通信装置200は、第1実施形態の無線通信装置100における通信方法決定回路109に替えて通信方法決定回路209を具備した点と、組み合わせ評価回路211を具備した点とが異なる。
なお、無線通信装置200において、第1実施形態の各部と同じ構成には、同じ符号を付してその説明を省略する。
通信方法決定回路209は、予め定められた順番、又は、予め定められたアルゴリズムにより無線通信装置200の通信対象である無線端末装置のうち1つの無線端末装置を選択する。通信方法決定回路209は、電力条件決定回路108により算出された許容送信電力条件に基づいて、選択された無線端末装置と組み合わせる無線端末装置を選択する。通信方法決定回路209は、組み合わせる無線端末装置に送信電力を割り当てる。
また、通信方法決定回路209は、組み合わせる無線端末装置に対応する無線端末装置ごとの受信信号電力の減衰量を示す情報を組み合わせ評価回路211から読み出し、読み出した情報に基づいて符号化率及び変調方式を選択する。
また、通信方法決定回路209は、選択した無線端末装置の組み合わせを示す情報をデータ出力回路101に出力する。また、通信方法決定回路209は、選択した無線端末装置の組み合わせを示す情報と、各無線端末装置に割り当てた送信電力を示す情報とを送信ウエイト決定回路110に出力する。また、通信方法決定回路209は、選択した無線端末装置ごとに設定した符号化率及び変調方法を示す送信モード情報を送信信号変換回路102に出力する。
組み合わせ評価回路211は、チャネル情報記憶回路106に記憶されているチャネル情報から無線端末装置を組み合わせごとに各無線端末装置における受信信号電力の減衰量を算出して、算出した減衰量を示す情報を記憶する。
組み合わせ評価回路211は、無線端末装置を組み合わせることによる信号電力の低下量、通信ストリームの伝送品質について予め推定する。DB法の場合、ヌル空間の固有値λ'i,jや、このヌル空間固有値の元の固有値から算出される減衰量λ'i,1/λi,jを用いることができる。減衰量λ'i,1/λi,jは、次式(23)として評価することもできる。
Figure 0005089718
なお、組み合わせ評価回路211は、無線端末装置の組み合わせごとに、単にチャネル行列又は、チャネル行列から得られる特異行列の相関値から減衰量を算出し、算出した減衰量と、無線端末装置の組み合わせとを対応付けたテーブルを設けるようにしてもよい。このとき、通信方法決定回路209は、無線端末装置の組み合わせを選択する際に、選択の候補となる無線端末装置の組み合わせそれぞれの減衰量を読み出して、無線端末装置の組み合わせを選択する基準としてもよい。
図7は、同実施形態の無線通信装置200における送信処理を示すフローチャートである。
まず、チャネル情報取得回路105は、無線部103−1〜103−Mtを通じて、各無線端末装置との間のチャネル情報を取得して、チャネル情報記憶回路106に記憶させる(ステップS701)。
チャネル情報誤差・条件判定回路107は、無線部103−1〜103−Mtにより受信される信号に含まれる既知信号により、チャネル情報の時間変動を推定する。そして、チャネル情報誤差・条件判定回路107は、チャネル情報記憶回路106に記憶されているチャネル情報と、推定したチャネル情報の時間変動とからチャネル情報の誤差とチャネル情報推定条件のいずれか一方、もしくは両方を推定する(ステップS702)。
電力条件決定回路108は、チャネル情報誤差・条件判定回路107の推定したチャネル情報の誤差又はチャネル情報推定条件から式(22)により各無線端末装置の許容送信電力条件Γmax,iを算出する(ステップS703)。通信方法決定回路209は、通信対象とする無線端末装置のうちから無線端末装置を1つ選択する(ステップS704)。
組み合わせ評価回路211は、チャネル情報記憶回路106にチャネル情報が記憶されると(ステップS701が完了すると)、チャネル情報記憶回路106に記憶されているチャネル情報に基づいて、無線端末装置の組み合わせごとに各無線端末装置の受信信号電力の減衰量を推定(算出)し、算出した減衰量を示す減衰量情報を記憶する(ステップS709)。
通信方法決定回路209は、電力条件決定回路108により算出された許容送信電力条件Γmax,iと、組み合わせ評価回路211に記憶されている減衰量情報とに基づいて、選択した無線端末装置と同一時刻に同一周波数によりデータを送信する無線通信端末を選択するスケジューリングを行う(ステップS705)。
送信ウエイト決定回路110は、選択された無線端末装置の組み合わせと、チャネル情報記憶回路106に記憶され、選択された無線端末装置に対応するチャネル情報とにより送信ウエイトを算出する(ステップS706)。なお、ステップS706に用いるチャネル情報は、通信相手となる無線端末装置にチャネル情報の通知を要求し、最新のチャネル情報を取得しなおし、送信ウエイトを算出するようにしてもよい。
通信方法決定回路209は、選択された無線端末装置の組み合わせと、選択された無線端末装置それぞれに割り当てられた送信電力に基づいて符号化率及び変調方式を無線端末装置ごとに選択する(ステップS707)。
送信信号変換回路102は、通信方法決定回路209により選択された符号化率及び変調方式により、データ出力回路101から出力されるデータに対して誤り訂正符号化及び変調を行い、ベースバンド信号を生成する。また、送信信号変換回路102は、送信ウエイト決定回路110の算出した送信ウエイト及び送信電力値に応じて、生成したベースバンド信号を増幅し、無線部103−1〜103−Mtを介して無線端末装置に送信する(ステップS708)。
なお、ステップS706と、ステップS707との順序を入れ替えて、変調方式及び符号化率を選択して、送信するデータのパケット長を定めてから、送信ウエイトを算出するようにしてもよい。
また、ステップS704をステップS701の前に行い、通信相手が選択された後に、チャネル情報を取得し、チャネル推定誤差から許容送信電力条件Γmax,iを算出するようにしてもよい。このとき、ステップS709において、組み合わせ評価回路211は、選択された無線端末装置に対し、チャネル情報記憶回路106に記憶されているチャネル情報から受信信号電力の減衰量を推定するようにしてもよい。また、チャネル情報取得回路105は、ステップS706が行われる前に、チャネル情報の更新を行ってもよい。これにより、送信ウエイトの算出に最新のチャネル情報と減衰量情報とを用いることができ、チャネル推定誤差を小さくすることができる。
また、ステップS705において、マルチユーザMIMO送信による空間多重化する無線端末装置を1つ増加させた場合に得られる伝送速度の向上の度合が、所定の条件を満たす場合にのみ、多重数を増加させるようにしてもよい。例えば、所定の条件として、多重化する無線端末装置を1つ増やした場合に得られる伝送速度が、予め定めた規定数倍を超えること、などとする。
また、本実施形態においても、第1実施形態におけるステップS503(図5)のように、組み合わせ評価回路211は、各無線端末装置それぞれに対して算出した信号電力の減衰量から、信号対雑音干渉電力比やスループットを評価して、無線端末装置の組み合わせを選択するようにしてもよい。具体的には、算出された信号電力対干渉雑音電力比の大きさが、予め定められた最小信号電力対干渉雑音電力比より小さい無線端末装置を組み合わせから除外するようにしてもよい。
また、上記の第1実施形態及び第2実施形態では、それぞれ1つのパラメータを用いて説明したが、例えば、OFDMを用いた通信方式においては、複数のサブキャリアそれぞれから得られる値の平均値を用いたり、複数のサブキャリアのうち特定のサブキャリアの値を代表値として用いるようにしてもよい。
また、無線部103−1〜103−Mtに設けられるデジタル−アナログ変換器(Digital-Analogue Converter;DAC)の有効ビット数からチャネル推定誤差を算出し、送信可能となる電力制限値を予め定めておき、この電力制限値より大きい電力値をとる場合のみ送信可能としてもよい。
また、熱雑音の分散値σは予め既知のものとして記載したが、無信号区間において計測してもよいし、予めメモリに保持しておいてもよい。
また、送信電力条件を求める際に用いる熱雑音の分散値σは正確な値である必要はなく、実際の熱雑音の分散値より小さめ、又は大きめに設定するようにしてもよい。
また、通信方法決定回路109(209)は、チャネル情報推定誤差の大きい無線端末装置と組み合わされる無線端末装置に対して優先的に送信の機会を与えるようにしてもよい。これは、チャネル推定誤差の大きい無線端末装置と組み合わされた無線端末装置は、大きな送信電力を割り当てることができない場合が多く、スループットが低下する可能性が高い。そこで、優先的に送信の機会を与えるスケジューリングを行うことで、スループットの低下を抑制することができる。
次に、式(19)で表記した干渉電力の推定の有効性を計算機シミュレーションにより確認する。ユーザ数を4、送信素子数を8、受信素子数を2、データストリーム数を2とし、チャネル行列Hを平均0、分散σ として与え、各ユーザごとに完全無相関、シングルユーザでSISO通信を行った際のSNRσ を各ユーザとも30dBとした。このとき、チャネル推定誤差をσとし、チャネル推定時の送信電力とデータ通信における送信電力が等しいとすると、式(19)から、干渉電力の期待値は、
他の無線端末装置への送信電力Γiと送信電力Γの比、つまり電力の分配比となっていることが予想される。4ユーザへの送信電力を等電力に配分すると、この比Γi/Γは0.75となる。式(19)でαi=1とすれば、干渉対雑音比の期待値は0.75であるはずである。
図8は、上述の条件における計算機シミュレーションの結果を示すグラフである。
同図において、横軸はINRを示し、縦軸は累積確率分布(Cumulative Distribution function;CDF)を示している。同図には、2つのデータストリームそれぞれに対し、累積確率分布(CDF)を示している。MMSEによる線形の受信ウエイトによる復号を行った。図8において、第1ストリーム(First data stream)と、第2ストリーム(Second data stream)の結果が示されているが、期待値はそれぞれ0.740と0.748になっており、ほぼ予測された結果になっている。ただし、図8で明らかなように、期待値は予想できるが、実際の値はおおきくばらついている。よって、最悪ケースを考える設計にすることもでき、式(19)及び式(20)においてαを大きめに設定するなどして、干渉電力の増大を抑えることもできる。
図9は、本実施形態における、無線端末装置の割り当てのイメージを示した模式図である。同図において、横軸はリソースを示し、縦軸は送信電力を示している。また、同図において、一般的なシングルユーザ通信、及びマルチユーザMIMO通信のケースと比較して示す。図9は、それぞれ3つ無線端末装置への送信をリソースと送信電力により表現している。無線端末装置1〜3におけるチャネル推定誤差は、無線端末装置1が一番小さく、無線端末装置3が最も大きい場合について説明する。図9(a)は、シングルユーザMIMO通信を表しており、リソースを3分割してそれぞれ3つの無線端末装置へ送信する例を示している。
ここで、リソースとは時間、周波数、符号化の少なくとも一つを示している。時間と解釈すると、異なる時間で、周波数と解釈すると、異なる周波数チャネルで、符号化と解釈すると、異なる直交符号で、3つの無線端末装置に送信を行うことが示されている(時間分割多重接続、周波数分割多重接続、符号分割多重接続に対応)。この場合、同時・同一周波数・同一直交符号において送信する通信相手は1つの無線端末装置であるために、空間リソースにより得られるゲインは小さくなる。
図9(b)は、マルチユーザMIMO通信を表しており、同時・同一周波数・同一直交符号に無線端末装置を多重することで、空間リソースにより大きなゲインが得られる場合を示している。しかし、チャネル推定誤差が大きい無線端末装置が存在する場合、その無線端末装置のスループット・伝送品質は大きく劣化する。この無線端末装置は、シングルユーザによる送信時よりも特性が劣化するため、無線端末装置間でのスループットの差が大きくなる。よって、チャネル推定誤差に応じて、シングルユーザMIMO通信と、マルチユーザMIMO通信とを切り替えたり、その間の特性を持つ通信が必要である。
図9(c)は、本実施形態における無線端末装置に対するリソース割り当てのイメージを示した図である。
ここで、図9(c)では、3つの無線端末装置をそれぞれ第一の無線端末と指定した3つの送信ブロックに分けて送信しており、許容送信電力条件を第一の無線端末装置にのみ指定した例を示している。無線端末装置3を第一の無線端末装置とした際に、無線端末装置2が同時・同一周波数チャネルで送信されていない理由は、同図に示された電力配分において、無線端末装置2へのデータストリームが予め定めた品質を満たさなかったためである。ここで、無線端末装置1はチャネル推定誤差が小さいため、他の無線端末への許容送信電力条件が大きく、無線端末装置3を第一の無線端末装置とした場合の許容送信電力条件は小さいことが分かる。このように制御すると、チャネル推定誤差が大きい場合は図9(a)に近づき、チャネル推定誤差が小さい場合は図9(b)になるため、このシングルユーザMIMO通信と、マルチユーザMIMO通信の中間の特性を有することが分かる。
また、図9(c)において、3番目のリソースに何らかの規定値を満たさなかったために、無線端末装置2が割り当てられていない。よって、無線端末装置間の公平性をある程度保つため、無線端末装置2が第一の無線端末として選択された際に、無線端末装置3を同時同一周波数チャネルで送信する通信相手として選択しないこともできる。この場合、図9(c)で、中央のリソースにおける無線端末装置3を削除することができる。
図10は、本実施形態における効果を示す計算機シミュレーションの結果を示すグラフである。同図において、横軸は周波数帯域あたりの周波数利用効率の和(伝送レート)を示し、縦軸は累積確率分布(CDF)を示している。ここでは、無線端末装置数を4、各無線端末装置ごとに完全無相関のチャネル行列を与え、チャネル行列の各要素の電力値σ と熱雑音の電力値σの比を各ユーザとも30dBとし、チャネル推定誤差σH,i はσ/2〜10σの範囲でランダムに各無線端末装置に与え、計算機シミュレーションにより4つの無線端末装置に対する周波数利用効率の合計を算出した。総送信電力は、シングルユーザ通信の場合には電力配分pi,jのjがとりうる範囲で総和をとった値Σpi,jが1になるように設定し、マルチユーザMIMO通信では、pi,jのiとjがとりうる範囲において総和をとったΣpi,jが1となるように設定した。式(16)のPA,iを用いると、全てのiについて総和をとったΣPA,iが1に設定されたといいかえることもできる。
また、図10において、CSUは、シングルユーザ通信を行った際の各通信相手の周波数利用効率の累積確率分布である。また、CMUは、各通信相手に等電力配分でマルチユーザMIMO通信を行った際の周波数利用効率の累積確率分布である。また、Cは、本実施形態における電力配分方法を用い、第一の無線端末装置のみに許容送信電力条件を指定し、送信した際の周波数利用効率の累積確率分布である。ここで、本実施形態における電力配分方法では、4つの無線端末装置それぞれを第一の無線端末装置とした際に、無線端末装置の割り当て及び送信電力配分の割り当ての決定を行った。第一の無線端末装置に割り当てる送信電力は次式(24)のように定義した。
Figure 0005089718
ここで、i番目の無線端末装置が第一の無線端末装置である場合の例が示されている。他の無線端末装置に割り当てられる許容送信電力Γmax,iと、無線端末装置で等電力配分を行った場合のうち大きい方の値となっている。ここで、Maは同時に通信を行う無線端末装置の数である。よって、第一の無線端末装置以外のj番目の無線端末装置(j≠i)には、次式(25)により表される送信電力が割り当てられる。
Figure 0005089718
ここで、図10の例では、割り当てられた送信電力PA,jが0.1を下回る場合には、同時に通信する無線端末装置を一つ減らし、M=M−1として、再度、無線端末装置の組み合わせをやり直し、チャネル推定精度σH,j が大きい無線端末装置から同時同一周波数チャネルに配分する無線端末装置から除外した。ここで、通信機会の公平性から、i番目の無線端末装置を第一の無線端末装置とした際に、j番目の無線端末装置への送信電力の割り当てが0.1以下となり、このj番目の無線端末装置が同時同一周波数チャネルでの組み合わせから外した場合、j番目の無線端末装置が第一の無線端末装置となった際の、同時同一周波数チャネルでの送信組み合わせから、i番目の無線端末装置は外すこととしている。計算機シミュレーションにおいて、チャネル係数およびチャネル誤差は、ランダムに与えられて、5000回の試行が行われた。
図10(a)では、ユーザ数を4、送信素子数を4、無線端末装置の受信素子数を1に設定した場合の結果である。また、図10(b)では、ユーザ数を4、送信素子数を8、無線端末装置の受信素子数を2に設定している。周波数利用効率の全無線通信端末への和は、中央値、最大値共に、等電力配分のマルチユーザMIMO通信で得られており、本実施形態の電力制御の方が、等電力配分の特性をやや下回っていることが分かる。しかし、図10(a)及び図10(b)においてそれぞれの累積確率が10%以下の値にの場合、本実施形態の電力分配方法における伝送レートが、等電力配分マルチユーザMIMO通信の伝送レートを上回っていることが分かる。累積確率1%値では、本実施形態の周波数量効率は等電力配分マルチユーザMIMOの2.3倍、1.1倍になっており、チャネル推定誤差のため周波数利用効率が低下しているケースで、スループットの低下を抑制したことが確認できる。
本発明は、複数の通信端末装置に向けてデータを送信する無線通信装置において、同一時刻に同一周波数チャネル上において空間多重を用いて、1つ又は複数の信号系列を送信する際に、複数の通信端末装置と無線通信装置との間の伝送路の推定に誤差がある場合でも、干渉電力を最小化してスループットの増加を図ることができる。
100、200…無線通信装置
101…データ出力回路
102…送信信号変換回路
103−1〜103−Mt…無線部
104−1〜104−Mt…アンテナ素子
105…チャネル情報取得回路
106…チャネル情報記憶回路
107…チャネル情報誤差・条件判定回路
108…電力条件決定回路
109、209…通信方法決定回路
110…送信ウエイト決定回路
211…組み合わせ評価回路

Claims (9)

  1. 複数のアンテナ素子を備え、複数の無線端末装置に対し、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線通信装置における無線通信方法であって、
    前記複数の無線端末装置と、前記複数のアンテナ素子との伝送路の状態を示すチャネル情報を推定するチャネル情報取得ステップと、
    推定された前記チャネル情報の推定誤差を、信号対雑音電力比、伝搬環境の時間変動、チャネル推定から送信までに要する時間、チャネル情報のフィードバックに用いたビット数、の少なくとも一つから算出するチャネル情報誤差・条件判定ステップと、
    算出された前記推定誤差に基づいて、前記複数の無線端末装置ごとに、該無線端末装置と共に空間多重されたデータを送信する他の無線端末装置に対して割り当てる送信電力の上限値を示す許容送信電力条件を算出する送信電力条件決定ステップと、
    前記複数の無線端末装置から算出された前記許容送信電力条件を満たす無線端末装置の組み合わせを選択し、選択した無線端末装置それぞれに対して送信電力配分、符号化率、変調方式を決定する通信方法決定ステップと、
    選択された無線端末装置のチャネル情報から、送信ウエイトを演算する送信ウエイト決定ステップと、
    選択された無線端末装置それぞれに対して、決定された送信電力、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトによりデータを空間多重して送信する送信ステップと
    を有することを特徴とする無線通信方法。
  2. 通信方法決定ステップにおいて選択した無線端末装置それぞれに対し、データを空間的に多重して送信する際の干渉抑圧処理による受信信号電力の減衰量を算出する減衰量ステップを有し、
    前記通信方法決定ステップにおいて、算出された前記許容送信電力条件と、選択した無線端末装置それぞれに対して算出された受信号電力の減衰量とに基づいて、送信電力配分、符号化率、変調方式、送信ウエイトを決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
  3. 前記通信方法決定ステップにおいて、選択した無線端末装置のうち信号電力対干渉雑音電力比の大きさが、予め定めた最小信号電力対干渉雑音電力比より小さくなる無線端末装置を、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線端末装置の組み合わせから外す
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の無線通信方法。
  4. 前記通信方法決定ステップにおいて、選択した無線端末装置のうち最もチャネル推定誤差が大きい無線端末装置を、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線端末装置の組み合わせから外した際に、残りの無線端末装置で得られるスループットの上昇が、外された無線端末装置へのスループットより大きい場合、選択した無線端末装置の組み合わせから最もチャネル推定誤差が大きい無線端末装置を外す
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の無線通信方法。
  5. 前記許容送信電力条件は、無線端末装置に備えられているアンテナの全て、または一部に対するチャネル情報が得られない場合、該無線端末装置に備えられているアンテナの数に対するチャネル情報が得られないアンテナの数の比を、信号電力対熱雑音電力比に乗じて算出されるチャネル推定誤差に基づいて算出される
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線通信方法。
  6. 前記通信方法決定ステップにおいて、データを送信したい無線端末装置を第一の無線端末装置として選択し、第一の無線端末装置の許容送信電力条件に基づいて、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線端末装置の組み合わせを決定し、各無線線端末装置に対する送信電力分配、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを算出する
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無線通信方法。
  7. 前記通信方法決定ステップにおいて、自無線通信装置が通信対象としない他の無線通信装置が通信している無線端末装置が、通信可能領域内にある場合、該無線端末装置との間のチャネル情報を推定し、推定したチャネル情報に基づいて、該無線端末装置における干渉電力が予め定められた干渉電力値以下となる送信電力分配、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを、選択した無線端末装置に対して決定する
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線通信方法。
  8. 前記通信方法決定ステップにおいて、無線端末装置の複数の組み合わせを選択し、無線端末装置の組み合わせごとに送信電力分配、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトを決定し、無線端末装置の組み合わせごとに異なる周波数チャネルを割り当て、無線端末装置の各組み合わせに対して同一時間に空間多重してデータを送信する
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の無線通信方法。
  9. 複数のアンテナ素子を備え、複数の無線端末装置に対し、同一周波数チャネル及び同一時間に空間多重してデータを送信する無線通信装置であって、
    前記複数の無線端末装置と、前記複数のアンテナ素子との伝送路の状態を示すチャネル情報を推定するチャネル情報取得回路と、
    前記チャネル情報取得回路により推定されたチャネル情報を記憶するチャネル情報記憶回路と、
    前記チャネル情報記憶回路に記憶されてているチャネル情報に基づいて、前記複数の無線端末装置それぞれのチャネル情報の推定誤差を、信号対雑音電力比、伝搬環境の時間変動、チャネル推定から送信までに要する時間、チャネル情報のフィードバックに用いたビット数、チャネル推定可能なアンテナと受信アンテナ全体の比、の少なくとも一つから算出するチャネル情報誤差・条件判定回路と、
    算出された前記推定誤差に基づいて、前記複数の無線端末装置ごとに、該無線端末装置と共に空間多重されたデータを送信する他の無線端末装置に割り当てる送信電力の上限値を示す許容送信電力条件を算出する送信電力条件決定回路と、
    前記複数の無線端末装置から算出された前記許容送信電力条件を満たす無線端末装置の組み合わせを選択し、選択した無線端末装置それぞれに対して送信電力配分、符号化率、変調方式を決定する通信方法決定回路と、
    選択された無線端末装置のチャネル情報から、送信ウエイトを演算する送信ウエイト決定回路と、
    選択された無線端末装置それぞれに対して、決定された送信電力、符号化率、変調方式、及び送信ウエイトによりデータを空間多重して送信する無線部と
    を具備することを特徴とする無線通信装置。
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