JP5088911B2 - 抗微生物物質産生・分泌促進剤 - Google Patents
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Description
(1)パネト細胞群の調製
[1−1]クリプト懸濁液の調製
ICRマウス(日本チャールズ・リバー社)から、従来法に従って小腸の組織を採取した。続いて、既報(Ayabe Tら、Nature Immunol.第1巻、第113〜118頁、2000年)に従い、クリプトを含む懸濁液(クリプト懸濁液)を調製した。血球計算盤(Burker−Turk;サンリード硝子社)を用いてこのクリプト懸濁液に含まれるクリプト数を数えたところ、1〜3×104個/mLであった。
本実施例(1)[1−1]のクリプト懸濁液から、本発明者らによる日本国特許出願第2009−230904号に記載の方法により、蛍光物質などで標識されていない、生きたパネト細胞をPBS(−)中に含むパネト細胞群懸濁液を調製した。なお、細胞を分取する際のパラメーターは、前方散乱光の強度(Forward scatter−height;FSC−H)を390≦FSC−H≦930、かつ側方散乱光の強度(Side scatter−height;SSC−H)を510≦SSC−H≦660とした。調製したパネト細胞群懸濁液における細胞の濃度は2〜4×104個/mLであり、細胞総数に対するパネト細胞数の割合は60〜80%であった。
生のタモギタケ150kg〜200kgを水200Lに入れて加熱し、沸騰させた状態で5分間煮出した後、濾過して150Lの濾液を得た。続いて、凍結乾燥機(RLE;共和真空技術社)を用いて濾液150Lを凍結乾燥し、2kgの凍結乾燥物を得て、これをタモギタケの熱水抽出物とした。
本実施例(1)[1−2]のパネト細胞群懸濁液(クリプト10,000〜12,000個、パネト細胞0.5〜1×105個に相当)を1サンプルとして計4サンプル用意し、a、b、cおよびdとした。各サンプルに、本実施例(2)のタモギタケの熱水抽出物を下記の終濃度となるよう添加した後、37℃にて30分間インキュベートした。
a:終濃度 1000μg/mL
b:終濃度 100μg/mL
c:終濃度 10μg/mL
d:添加しない(コントロール)
本実施例(3)のa、b、cおよびdについて、400×g、4℃の条件下で5分間遠心分離を行い、上清を約1mLずつ回収した。続いて、回収した上清に30%(v/v)となるように酢酸を添加した後、室温で30分間撹拌を行うことによって酢酸抽出を行い、それぞれ約1.5mLの酢酸抽出液を得た。次に、外液として0.1%(v/v)酢酸水溶液を用いて、メンブレンフィルター(Spectra/Por Membrane 1000cut;Spectrum Laboratories社)により透析し、それぞれ約1.5mLの内液を回収した。その後、凍結乾燥機(FreeZone;Labconco社)により凍結乾燥し、各サンプルの凍結乾燥物を得た。凍結乾燥物はそれぞれ滅菌蒸留水1mLで溶解して、パネト細胞分泌物水溶液とした。
サルモネラ菌(ATCC)を1×103CFU含むTryptic Soy Broth(TSB)培地40μLを5つ用意し、A、B、C、DおよびEとした。また、黄色ブドウ球菌(ATCC)を1×103CFU含むTSB培地40μLを5つ用意し、F、G、H、IおよびJとした。続いて、A、B、C、D、E、F、G、H、IおよびJに本実施例(3)のa、b、cおよびdのパネト細胞分泌物水溶液ならびに滅菌蒸留水を下記のとおり、10μLずつ添加して、37℃にて1時間培養した。
B、G:bのパネト細胞分泌物水溶液
C、H:cのパネト細胞分泌物水溶液
D、I:dのパネト細胞分泌物水溶液(コントロール)
E、J:滅菌蒸留水
(1)シイタケの熱水抽出物およびマイタケの熱水抽出物の調製
包丁を用いて生のシイタケ300gを約1cm角にカットした。一方、生のマイタケ300gを小房となるよう手で割いてほぐした。続いて、シイタケおよびマイタケをそれぞれ水800Lに入れて加熱し、沸騰させた状態で3分間煮出した。その後、濾布を敷いたザルに注いで濾過し、シイタケの濾液709gおよびマイタケの濾液740gを回収した。続いて、凍結乾燥機(RLE;共和真空技術社)を用いて濾液を凍結乾燥し、シイタケ濾液の凍結乾燥物6gおよびマイタケ濾液の凍結乾燥物6gを得て、それぞれシイタケの熱水抽出物およびマイタケの熱水抽出物とした。
実施例1(1)[1−2]のパネト細胞群懸濁液(クリプト10,000〜12,000個、パネト細胞0.5〜1×105個に相当)を1サンプルとして計4サンプル用意し、a、b、cおよびdとした。各サンプルに、実施例1(2)のタモギタケの熱水抽出物、本実施例(1)のシイタケの熱水抽出物およびマイタケの熱水抽出物を下記のとおり添加した後、37℃にて30分間培養した。
a:タモギタケの熱水抽出物 終濃度 100μg/mL
b:シイタケの熱水抽出物 終濃度 100μg/mL
c:マイタケの熱水抽出物 終濃度 100μg/mL
d:添加しない(コントロール)
本実施例(2)のa、b、cおよびdについて、実施例1(4)に記載の方法により、パネト細胞分泌物水溶液を調製した。続いて、a、b、cおよびdのパネト細胞分泌物水溶液について、実施例1(5)に記載の方法により、抗菌率の測定を行った。
(1)エルゴチオネインの調製
生のタモギタケ150kg〜200kgを水200Lに入れて加熱し、沸騰させた状態で5分間煮出した後、濾過して150Lの濾液を得た。この濾液について、5000rpm、10℃の条件下で30分間遠心分離を行って135Lの上清を回収した。5×30cmのカラムに充填したイオン交換樹脂(アンバーライトIR120B H型;オルガノ社)に、回収した上清のうちの7.5Lを入れ、一晩自然落下させた。続いて、イオン交換樹脂を回収し、蒸留水2.5Lを用いて洗浄して糖質成分を除去した後、0.28%(w/w)アンモニア水10Lを用いてイオン交換樹脂に吸着していた陽イオン性化合物を溶出した。ロータリーエバポレーターを用いてこの溶出液を濃縮して濃縮液10mLを得た後、下記の条件により定法に従って高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行い、流出開始3〜4分に検出されるピークの画分を分取した。
HPLCシステム;日立高速液体クロマトグラフLaChrom Elite
溶離溶媒;0〜1%(v/v)アセトニトリル水溶液
カラム;Inertsil ODS−SP(ジーエルサイエンス社)
検出器;UV検出器
検出条件;250nm
実施例1(1)[1−2]のパネト細胞群懸濁液(クリプト10,000〜12,000個、パネト細胞0.5〜1×105個に相当)を1サンプルとして計3サンプル用意し、a、bおよびcとした。各サンプルに、本実施例(1)のエルゴチオネインおよび実施例1(2)のタモギタケの熱水抽出物を下記のとおり添加した後、37℃にて30分間培養した。
a:エルゴチオネイン 終濃度 1000μg/mL
b:タモギタケの熱水抽出物 終濃度 1000μg/mL
c:添加しない(コントロール)
本実施例(2)のa、bおよびcについて、実施例1(4)に記載の方法により、パネト細胞分泌物水溶液を調製した。続いて、a、bおよびcのパネト細胞分泌物水溶液について、実施例1(5)に記載の方法により、抗菌率の測定を行った。ただし、サルモネラ菌(ATCC)を含むTSB培地は4つ用意してA、B、CおよびDとし、黄色ブドウ球菌(ATCC)を含むTSB培地は4つ用意してE、F、GおよびHとした。また、A、B、C、D、E、F、GおよびHに添加したパネト細胞分泌物水溶液および滅菌蒸留水は下記のとおりとし、抗菌率はA、BおよびCについてはDの、E、FおよびGについてはHの生存コロニー数を基準として算出した。
B、F:bのパネト細胞分泌物水溶液
C、G:cのパネト細胞分泌物水溶液(コントロール)
D、H:滅菌蒸留水
(1)タモギタケ水抽出物の調製
フードプロセッサーに生のタモギタケ100gと水100gとを投入し、粉砕した後、濾布を用いて濾過し、70mLの濾液を得た。得られた濾液のpHを測定したところ、pH6.08であった。続いて、オートクレーブ装置を用いて、濾液を120℃で15分間滅菌処理し、これをタモギタケ水抽出物とした。
水を0.4%(w/w)クエン酸水溶液に代えて、本実施例(1)に記載の方法によりタモギタケの抽出物を調製し、これをタモギタケ酸性溶媒抽出物とした。なお、オートクレーブによる滅菌処理を行う前の濾液のpHは、pH4.61であった。
水を1%(w/w)重曹水溶液に代えて、本実施例(1)に記載の方法により、タモギタケの抽出物を調製し、これをタモギタケ塩基性溶媒抽出物とした。なお、オートクレーブによる滅菌処理を行う前の濾液のpHは、pH7.6であった。
本実施例(1)〜(3)で調製したタモギタケの水性溶媒抽出物、酸性溶媒抽出物および塩基性溶媒抽出物は、いずれも同様の作用効果を示すことが明らかとなった。
Claims (1)
- パネト細胞において抗菌物質の産生および/または分泌を促進するための剤であって、タモギタケから抽出されるエルゴチオネインを有効成分とする前記剤。
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