JP4422404B2 - 感染予防・治療剤および食品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動物やヒトにとって有害な病原性微生物、特には病原性細菌に対する予防・治療剤および食品に関する。本発明の感染予防・治療剤および食品は、医薬品として投与することができるだけでなく、種々の形態、例えば、保険機能食品(特定保険用食品、栄養機能食品)やいわゆる健康食品(いずれも飲料を含む)、または飼料として飲食物の形で与えることも可能である。さらには、口中に一時的に含むものの、そのほとんどを口中より吐き出す形態、例えば、歯磨き剤、洗口剤、チューインガム、うがい剤などの形で与えることも、あるいは鼻から吸引させる吸入剤の形で与えることも可能である。
【0002】
【従来の技術】
マツタケ〔Tricholoma matsutake(S. Ito & Imai)Sing.〕はキシメジ属(Tricholoma)に属する担子菌類で、種々の生理活性物質が含まれていることが知られている。例えば特公昭57−1230号公報(特許文献1)には、マツタケ菌糸体の液体培養物を熱水または希アルカリ溶液で抽出して得られる抽出液から分離精製されたエミタニン−5−A、エミタニン−5−B、エミタニン−5−C、およびエミタニン−5−Dに、サルコーマ180細胞の増殖阻止作用があることが開示されている。また特許第2767521号明細書(特許文献2)には、マツタケ子実体の水抽出物から分離精製された分子量20〜21万のタンパク質(サブユニットの分子量10〜11万)が抗腫瘍活性を有することが開示されている。
【0003】
さらに、本発明者らにより、マツタケ熱水抽出液、マツタケアルカリ溶液抽出液、あるいはこれら抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分が免疫増強活性を有することが見出されている(国際公開第01/49308号パンフレット(特許文献3))。本発明者らはまた、マツタケの特定の菌糸体由来の部分精製画分にストレス負荷回復促進作用があることも見出した(特願2002−106632号明細書)。
【0004】
【特許文献1】
特公昭57−1230号公報
【特許文献2】
特許第2767521号明細書
【特許文献3】
国際公開第01/49308号パンフレット
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のようにマツタケには抗腫瘍活性、免疫増強活性、ストレス負荷回復促進作用などの種々の生理活性が含まれることが見出されている。しかしながら、本発明者らの知る限りにおいて、マツタケ、あるいは該マツタケが属するキシメジ属に属する担子菌類が、緑膿菌、リステリア菌などの病原性細菌に対する感染に優れた予防・治療効果を有するということについては、これまで報告がされていない。
本発明者らは、マツタケ、あるいは該マツタケが属するキシメジ属に属する担子菌類が、緑膿菌、リステリア菌などの病原性細菌に対する感染に優れた予防・治療効果を有することを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって本発明の課題は、マツタケ等のキシメジ属に属する担子菌類を利用した感染予防・治療剤および食品、特には前記感染予防・治療剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、マツタケ(T. matsutake)のFERM BP−7304株あるいはそれらの抽出物を含む、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および/またはリステリア菌(Listeria monocytogenes)に対する感染予防・治療剤に関する。
【0008】
また本発明は、マツタケ(T. matsutake)のFERM BP−7304株が菌糸体、培養物(Broth)または子実体(胞子を含む)である、上記感染予防・治療剤に関する。
【0010】
また本発明は、マツタケのFERM BP−7304株抽出物が、FERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液、アルカリ溶液抽出液、および、これら抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分の中から選ばれる1種または2種以上を含む、上記感染予防・治療剤に関する。
【0011】
また本発明は、マツタケのFERM BP−7304株抽出物が、FERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液と、前記菌糸体熱水抽出液を得る際に残留する菌糸体残渣のアルカリ溶液抽出液とを混合して得られる混合液の陰イオン交換樹脂吸着画分であって、(a)フェノール硫酸法によるグルコース換算値としての糖質含量が60〜72%であり、(b)銅フォリン法によるアルブミン換算値としてのタンパク質含量が28〜40%である、上記陰イオン交換樹脂吸着画分を含む、上記感染予防・治療剤に関する。
【0015】
また本発明は、さらに抗生物質と組合せてなる、上記感染予防・治療剤に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の感染予防・治療剤および食品に用いられるキシメジ属(Tricholoma)は、キシメジ科に属する担子菌類で、マツタケ〔Tricholoma matsutake(S. Ito & Imai)Sing.〕、ニセマツタケ(T. fulvocastaneum Hongo sp. nov.)、バカマツタケ(T. bakamatsutake Hongo sp. nov.)、ハイトリシメジ(T. muscarinum Kawamura)等の種が挙げられるが、本発明ではマツタケ〔T. matsutake(S. Ito & Imai)Sing.〕が特に好ましく用いられる。
【0018】
マツタケは、菌糸体、培養物(Broth)、子実体のいずれの形態のものも用いることができ、生でも乾燥したものでもよい。本発明では子実体は胞子も含むものとする。これら菌糸体、培養物(Broth)、子実体の抽出物や、その陰イオン交換樹脂吸着画分なども用いることができる。
【0019】
本発明では特にマツタケFERM BP−7304株が用いられる。
【0020】
マツタケFERM BP−7304株は、本出願人によって新規菌株として従前に出願され(国際出願PCT/JP01/08876号明細書)、独立行政法人産業技術総合研究所((旧)工業技術院生命工学研究所)に平成12年9月14日に寄託されている。このマツタケFERM BP−7304株は、京都府亀岡市で採取したマツタケCM6271株から子実体組織を切り出し、試験管内で培養することにより菌糸体継代株を得たものであり、呉羽化学工業(株)生物医学研究所で維持している。
【0021】
マツタケFERM BP−7304株の子実体の形態は、「原色日本新菌類図鑑(1)」(今関六也・本郷次雄編、保育社、昭和32年発行)プレート(plate)9頁および26頁に記載のマツタケ子実体に合致するものであった。
【0022】
マツタケFERM BP−7304株の継代は、エビオス寒天斜面培地で実施することができる。マツタケFERM BP−7304株の菌糸体をエビオス寒天平板培地に接種すると、白色の菌糸が放射状に密に生育し、大きなコロニーを形成する。走査型電子顕微鏡で観察すると、太さ1〜2μmの枝状の菌糸体が無数に存在し、菌糸体側部に数μm程度の突起物が時々みられる。該菌株の菌糸体を大量培養する場合は、液体培地に接種し、静置培養、振盪培養、タンク培養等により行うことができる。
【0023】
なお、マツタケFERM BP−7304株は、もっぱら菌糸体の形状で継代維持または培養することが可能であるが、子実体の形状となることもある。
【0024】
マツタケFERM BP−7304株の菌学的性質は以下のとおりである。
(1)麦芽エキス寒天培地における培養的・形態的性質
白色の菌糸が放射状に密に生育してコロニーを形成する。接種30日目のコロニー径は約4cmである。
【0025】
(2)ツアペック寒天培地、オートミール寒天培地、合成ムコール寒天培地、およびフェノールオキシダーゼ反応検定用培地における培養的・形態的性質
上記いずれの培地においても、接種後1ヶ月経過しても菌糸の発育はほとんどみられない。
【0026】
(3)YpSs寒天培地における培養的・形態的性質
白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約5mmである。
【0027】
(4)グルコース・ドライイースト寒天培地における培養的・形態的性質
白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約2mmである。
【0028】
(5)最適生育温度および生育範囲
滅菌処理した液体培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス、pH7.0)10mLの入った100mL容三角フラスコに、マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、5〜35℃の種々の温度でそれぞれ培養し、28日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定した。その結果、菌体質量は5〜15℃の範囲で直線的に増加し、15〜25℃の範囲で緩やかに増加した。27.5℃以上ではほとんど増殖しなかった。最適生育温度は15〜25℃である。
【0029】
(6)最適生育pHおよび生育範囲
液体培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス)のpHを1モル/L塩酸または1モル/L水酸化カリウムで調整し、pH3.0〜8.0の種々の培地を調製して菌体の生育pHを調べた。すなわち各培地をフィルター滅菌し、培地10mLを滅菌済100mL容三角フラスコに分注した。マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種後、22℃で培養し、フラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定した。その結果、菌体の生育限界はpH3.0〜7.0、最適生育pHは4.0〜6.0であった。
【0030】
(7)対峙培養による帯線形成の有無
エビオス寒天平板培地に、マツタケFERM BP−7304株のブロック(約3mm×3mm×3mm)と、公知の13種類のマツタケ株(例えば、IFO6915株;(財)発酵研究所)の各ブロック(約3mm×3mm×3mm)とを、約2cm間隔に対峙して植菌し、22℃で3週間培養した後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定した。
【0031】
その結果、マツタケFERM BP−7304株は、公知のマツタケ株(13種類)のいずれの株に対しても明確な帯線を形成しなかった。なお、マツタケでは異株間対峙培養で帯線は生じないとされており、公知のマツタケ株(13種類)間についても、明確な帯線を形成した組み合わせはなかった。
【0032】
(8)栄養要求性
滅菌処理した菌根菌用合成培地(「太田培地」。Ohtaら、"Trans. Mycol. Soc. Jpn.", 31, 323-334, 1990)10mLの入った100mL容三角フラスコに、マツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、22℃で培養し、42日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、質量を測定したところ、菌体441mgが得られた。
【0033】
上記菌根菌用合成培地中の炭素(C)源であるグルコースの代わりに、28種類の糖質関連物質のいずれか1つを加えた各培地に、マツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体質量を測定した。その結果、菌体質量が多かった糖質関連物質から菌体質量が少なかった糖質関連物質を順に示せば、以下のとおりである。
【0034】
小麦デンプン>トウモロコシデンプン>デキストリン>メチルβグルコシド>セロビオース>マンノース>フラクトース>アラビノース>ソルビトール>グルコース>ラクトース>グリコーゲン>マンニトール>リボース>マルトース>トレハロース>ガラクトース>ラフィノース>メリビオース>N−アセチルグルコサミン。
【0035】
なお、セルロース、ダルチトール、シュークロース、キシロース、メチルαグルコシド、イヌリン、イノシトール、およびソルボースでは、菌の発育はほとんどみられなかった。
【0036】
次に、上記菌根菌用合成培地中の窒素(N)源である酒石酸アンモニウムの代わりに、15種類の窒素関連物質のいずれか1つを加えた各培地に、マツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体質量を測定した。
【0037】
その結果、菌体質量が多かった窒素関連物質から菌体質量が少なかった窒素関連物質を順に示せば、以下のとおりである。
【0038】
コーンスティープリカー>大豆ペプトン>ミルクペプトン>硝酸アンモニウム>硫酸アンモニウム>酒石酸アンモニウム>炭酸アンモニウム>アスパラギン>リン酸アンモニウム>塩化アンモニウム>硝酸ナトリウム>肉エキス>酵母エキス>カザミノ酸>クロレラ>トリプトーン>硝酸カリウム。
さらに、上記合成培地中のミネラルおよびビタミン類のうち、特定の1成分を除去した培地に、マツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体質量を測定した。
【0039】
その結果、塩化カルシウム・二水和物、硫酸マンガン(II)・五水和物、硫酸亜鉛・七水和物、硫酸コバルト・七水和物、硫酸銅・五水和物、硫酸ニッケル・六水和物、塩酸アミン、ニコチン酸、葉酸、ビオチン、塩酸ピリドキシン、塩化カーチニン、アデニン硫酸・二水和物、または塩酸コリンのいずれか1つを培地から除いても、菌体質量にほとんど影響がなかった。
【0040】
一方、硫酸マグネシウム・七水和物、塩化鉄(II)、またはリン酸二水素カリウムのいずれか1つを培地から除くと、菌体質量は顕著に減少した。すなわち、マグネシウム、鉄、リン、およびカリウムは、マツタケFERM BP−7304株の増殖に必須と考えられる。
【0041】
(9)DNA塩基組成(GC含量)
GC含量は49.9%である。
【0042】
(10)RAPD法により生成するDNAパターン
6種類の異なるPCR(Polymerase Chain Reaction)用プライマー(10mer)をそれぞれ単独で用いるRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)法により生成するDNAパターンについて、マツタケFERM BP−7304株と、公知の44種類のマツタケ株(例えば、IFO 6915株;(財)発酵研究所)とを比較したところ、マツタケFERM BP−7304株は、公知のマツタケ株(44種類)のいずれとも異なるDNAパターンを示した。
【0043】
本発明の感染予防・治療剤および食品は、有効成分として、(i)マツタケFERM BP−7304株(例えば、当該株の菌糸体、培養物(Broth)または子実体)、(ii)マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液(例えば、当該株の菌糸体、培養物(Broth)または子実体の、熱水抽出液)、(iii)マツタケFERM BP−7304株のアルカリ溶液抽出液(例えば、当該株の菌糸体、培養物(Broth)または子実体の、アルカリ溶液抽出液)、(iv)マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液またはアルカリ溶液抽出液の陰イオン樹脂吸着画分(例えば、当該株の菌糸体、培養物(Broth)または子実体の、熱水抽出液またはアルカリ溶液抽出液の陰イオン樹脂吸着画分)、(v)マツタケFERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液と、前記菌糸体熱水抽出液を得る際に残留する菌糸体残渣のアルカリ溶液抽出液とを混合して得られる混合液の陰イオン交換樹脂吸着画分であって、(a)フェノール硫酸法によるグルコース換算値としての糖質含量が60〜72%であり、(b)銅フォリン法によるアルブミン換算値としてのタンパク質含量が28〜40%である、前記陰イオン交換樹脂吸着画分、などを含む態様が好ましく例示されるが、これら例示に限定されるものではない。
【0044】
本発明では上記(v)の態様が好ましい。なおこの(v)の態様に示す陰イオン交換樹脂吸着画分(M2画分)および該画分を含む免疫増強剤、ストレス負荷回復促進剤は、本出願人によって従前に出願されている(特願2002−106632号明細書)。
【0045】
上記(v)に示す陰イオン交換樹脂吸着画分は、例えば、
マツタケFERM BP−7304株をタンク培養により培養し、菌糸体を得る工程(以下、培養工程と称する)、
得られたマツタケFERM BP−7304株の菌糸体を熱水で抽出して、菌糸体熱水抽出液を得る工程(以下、熱水抽出工程と称する)、
熱水で抽出した後の前記菌糸体の残渣を、アルカリ溶液で抽出して、菌糸体残渣アルカリ溶液抽出液を得る工程(以下、アルカリ溶液抽出工程と称する)、
前記菌糸体熱水抽出液と前記菌糸体残渣アルカリ溶液抽出液とを混合して得られる混合抽出液を、陰イオン交換樹脂に吸着させる工程(以下、陰イオン交換樹脂吸着工程と称する)、および
適当な溶離液により吸着画分を溶出する工程(以下、溶出工程と称する)
を含む製造方法により調製することができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
上記各工程は、例えば以下に示すように実施することができるが、これに限定されるものでない。
【0047】
[培養工程]
培養工程は特に限定されるものでなく、一般にマツタケ菌を培養する方法を任意に用いることができるが、例えば、マツタケFERM BP−7304株(「マツタケ菌I」)を固形培地または液体培地で培養または保存してマツタケ菌IIを得る工程、前記マツタケ菌IIを静置液体培養してマツタケ菌IIIを得る工程、前記マツタケ菌IIIを振盪培養してマツタケ菌IVを得る工程、前記マツタケ菌IVを100L未満の小型培養装置を用いて、培養液中に通気を行わない攪拌培養してマツタケ菌Vを得る工程、前記マツタケ菌Vを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部攪拌培養してマツタケ菌VIを得る工程、前記マツタケ菌VIIを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部攪拌培養してマツタケ菌VIIを得る工程、および前記マツタケ菌VIIを100L以上の中型・大型培養装置を用いて深部撹拌培養してマツタケ菌VIIIを得る工程、からなる培養方法(特願2002−311840号明細書)が、マツタケ菌の生理活性を損うことなく大量生産できるという点から好適に用いられる。
【0048】
〈マツタケ菌Iを培養または保存してマツタケ菌IIを得る工程〉
用いる培地としては、一般にマツタケ菌を培養する栄養源基質を有する培地であれば特に制限なく使用することができる。例えば、太田培地(Ohtaら、"Trans. Mycol. Soc. Jpn.", 31, 323-334, 1990)、MMN培地(Marx, D. H., "Phytopathology", 59:153-163, 1969)、浜田培地(浜田、"マツタケ", 97-100, 1964)等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
【0049】
固形培地用の固形化剤としては、カラギーナン、マンナン、ペクチン、寒天、カードラン、デンプン、アルギン酸等が好適例として挙げられる。これらのうち寒天が好ましい。
【0050】
使用可能な培地の栄養源基質には、炭素源、窒素源、無機元素源などが挙げられる。
【0051】
上記炭素源としては、米デンプン、小麦粉デンプン、バレイショデンプン、サツマイモデンプン等のデンプン類;デキストリン、アミロペクシン等の多糖類;マルトース、シュクロース等の少糖類;フラクトース、グルコース等の単糖類などが挙げられる。さらに麦芽エキスを挙げることができる。マツタケ菌の生長速度から、グルコースなどの単糖類が好ましい時期と、デンプン類が好ましい時期とがあるので、時期に応じた炭素源を選択し、必要に応じて組合せて使用する。
【0052】
上記窒素源としては、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティーブリカー、大豆粉、大豆ペプトンなどの天然由来物質や、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素などが挙げられる。これらは単独で、あるいは組合せて用いることができる。一般に生長速度を考慮すると、天然由来物質、特に酵母エキスが好ましい。
【0053】
上記無機元素源は、リン酸および微量元素を供給するために使用される。例を挙げると、リン酸塩のほか、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、銅、鉄などの金属イオンの無機塩(例えば、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、等)があり、必要量を培地中に溶解する。
また、培地にビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類を添加することもできる。
【0054】
さらに、使用するマツタケ菌の性質に応じて、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質などを添加することができる。植物抽出物としては、果菜類、根菜類、葉菜類などの抽出物が例示される。有機酸としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸などが例示される。核酸関連物質としては、市販の核酸、核酸抽出物、酵母、酵母エキスなどが例示される。
【0055】
固形培地を調製する場合、炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは10〜50g/L、特に好ましくは20〜30g/Lである。
【0056】
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
【0057】
リン酸塩の使用量は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.02モル/Lである。さらに他の無機塩、ビタミン類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜添加することができる。また、調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.0、特に好ましくは5.0〜5.5とする。
【0058】
〈静置液体培養〉
次に、マツタケ菌II(固形培地または液体培地で培養または保存したマツタケ菌)を静置液体培養してマツタケ菌IIIを製造する方法について記載する。
通常、100mL〜2L容の三角フラスコを用いて行う。
【0059】
この静置液体培養は、液体培地にマツタケ菌IIを接種することにより開始する。
【0060】
接種したマツタケ菌IIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物と、接種したマツタケ菌IIを含有する培養液との体積比(「接種時拡大倍率」)が好ましくは2〜50倍、より好ましくは3〜30倍となる量の液体培地を使用する。
【0061】
接種したマツタケ菌IIを含有する培養液中のマツタケ菌IIの乾燥菌糸体質量と、接種したマツタケ菌IIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物の体積比(「初発菌糸体濃度」)を、好ましくは0.05〜3g/L、より好ましくは0.1〜2g/Lとなるように、液体培地にマツタケ菌IIを含有する培養液を接種する。
【0062】
該静置液体培養での培養温度は15〜30℃が好ましく、より好ましくは20〜25℃であり、培養期間は30〜400日間が好ましく、より好ましくは120〜240日間である。培養期間が30日未満、あるいは400日超では、大量培養に適した生育能を有するマツタケ菌IIIを得ることが困難となる。
【0063】
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)を初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加率」)が、2〜25倍となるように培養することが、生育能の点から好ましい。
【0064】
静置液体培養に使用する液体培地は、その浸透圧を、好ましくは0.01〜0.8MPa、より好ましくは0.02〜0.7MPa、特に好ましくは0.03〜0.5MPaとなるように、栄養源基質を使用する。
【0065】
静置液体培養に用いる栄養源基質として、マツタケ菌Iを培養する固形培地と同じ炭素源、窒素源、無機元素源、ビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類等を使用することができる。
【0066】
炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは20〜60g/L、特に好ましくは25〜45g/Lである。通常、グルコース等の単糖類を使用する。
【0067】
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
【0068】
リン酸塩を使用する場合は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.02モル/Lになるようにする。
【0069】
さらに、他の無機塩、ビタミン類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜添加することができる。
【0070】
調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.5、特に好ましくは5.0〜6.0とする。
【0071】
マツタケ菌IIIを含有する静置液体培養による培養液の一部若しくは全部を、マツタケ菌IIを含有する培養液(若しくは培養物)と同様に静置液体培養の接種源として、再度、静置液体培養工程で使用することもできる。
【0072】
〈振盪培養〉
次いで、マツタケ菌IIIを振盪培養して、マツタケ菌IVを製造する方法について記載する。
【0073】
通常、300mL〜5L容の三角フラスコを用いて行う。
【0074】
この振盪培養は、液体培地にマツタケ菌IIIを接種することにより開始する。
【0075】
接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物と、接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液との体積比(「接種時拡大倍率」)が、好ましくは2〜50倍、より好ましくは3〜30倍、特に好ましくは5〜10倍となる量の液体培地を使用する。
【0076】
なお、接種時拡大倍率に見合う培養液の量を確保するために、静置液体培養を複数の培養装置を用いて製造することもできる。
【0077】
接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液中のマツタケ菌IIIの乾燥菌糸体質量と、接種したマツタケ菌IIIを含有する培養液と液体培地とを合せた混合物の体積比(「初発菌糸体濃度」)を、好ましくは0.05〜3g/L、より好ましくは0.1〜2g/Lとなるように、液体培地にマツタケ菌IIIを含有する培養液を接種する。
【0078】
振盪培養では、培養温度は15〜30℃が好ましく、より好ましくは20〜25℃であり、培養期間は7〜50日間が好ましく、より好ましくは14〜28日間である。
【0079】
振盪培養に要する動力として、通常、三角フラスコ内の培養液単位体積あたりの攪拌所要動力0.05〜0.4kW/m3を用いる。
【0080】
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)と初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加倍率」)が2〜25倍となるように培養することが、生育能の点で好ましい。
【0081】
振盪培養に使用する液体培地は、その浸透圧を、好ましくは0.01〜0.8MPa、より好ましくは0.02〜0.7MPa、特に好ましくは0.03〜0.5MPaとなるように、栄養源基質を使用する。
【0082】
振盪培養に用いられる栄養源基質として、マツタケ菌IIを培養する液体培地と同じ炭素源、窒素源、無機元素源、ビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類を使用することができる。
【0083】
炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは20〜60g/L、特に好ましくは25〜45g/Lである。通常、グルコース等の単糖類を使用する。
【0084】
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
【0085】
リン酸塩の使用量は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.02モル/Lになるようにする。
【0086】
さらに、他の無機塩、ビタミン類、アミノ酸類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜添加することができる。
【0087】
調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.5、特に好ましくは5.0〜6.0とする。
【0088】
〈攪拌培養〉
次に、攪拌培養により、マツタケ菌V、マツタケ菌VI、マツタケ菌VII、マツタケ菌VIIIを製造する方法について記載する。
【0089】
この攪拌培養は、液体培地にマツタケ菌(IV〜VII)を接種することにより開始する。
【0090】
攪拌培養で用いる液体培地は、次のようにして調製することができる。
【0091】
栄養源基質は、振盪培養で使用する、炭素源、窒素源、無機元素源、ビタミンB1などのビタミン類、アミノ酸類と同じものを使用することができる。
【0092】
炭素源の使用量は、好ましくは10〜100g/L、より好ましくは20〜60g/L、特に好ましくは25〜45g/Lである。デンプン類を好ましく使用できる。
【0093】
攪拌を行う培養液中の浸透圧に影響するグルコースなどの単糖類を併用する場合、その使用量は、好ましくは0.1〜60g/L、より好ましくは0.5〜40g/L、特に好ましくは0.7〜20g/Lである。
【0094】
窒素源の使用量は、窒素元素相当量で0.005〜0.1モル/Lが好ましく、より好ましくは0.007〜0.07モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
【0095】
リン酸塩の使用量は、リン元素相当量で0.001〜0.05モル/Lが好ましく、より好ましくは0.005〜0.03モル/L、特に好ましくは0.01〜0.05モル/Lである。
【0096】
さらに、他の無機塩、ビタミン類、アミノ酸類、植物抽出物、有機酸、核酸関連物質など、マツタケ菌の性質に応じて適宜、添加することができる。
【0097】
調製した栄養源基質溶液のpHを、好ましくは4〜7、より好ましくは4.5〜6.5、特に好ましくは5.0〜6.0とする。
【0098】
攪拌培養に使用する液体培地は、その浸透圧を、好ましくは0.01〜0.8MPa、より好ましくは0.02〜0.7MPa、特に好ましくは0.03〜0.5MPaとなるように、栄養源基質を使用する。
【0099】
攪拌培養の培養温度は、15〜30℃、好ましくは20〜25℃とする。
【0100】
接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液と液体培地とを合せた混合物と、接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液との体積比(「接種時拡大倍率」)が、好ましくは2〜50倍、より好ましくは3〜30倍、特に好ましくは5〜10倍となる量の液体培地を使用する。
【0101】
接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液中のマツタケ菌(IV〜VII)の乾燥菌糸体質量と、接種したマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液と液体培地とを合せた混合物の体積比(「初発菌糸体濃度」)を、好ましくは0.01〜5g/L、より好ましくは0.05〜3g/L、特に好ましくは0.1〜2g/Lとなるように、液体培地にマツタケ菌(IV〜VII)を含有する培養液を接種する。
【0102】
攪拌培養で得られるマツタケ菌(V〜VII)を、さらに攪拌培養の母菌として用いる場合の培養日数は、3〜20日間が好ましく、特には5〜14日間である。
【0103】
これらの培養日数後に、マツタケ菌(V〜VII)の乾燥菌糸体含有量が、好ましくは0.5〜10g/L、より好ましくは1〜8g/L、特に好ましくは1〜6g/Lになっている培養液は、攪拌培養に適した生育能を有するマツタケ菌(V〜VII)を含有している。
【0104】
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)と初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加率」)が2〜25倍となるように培養することが、生育能の点で好ましい。
【0105】
他方、攪拌培養で得られるマツタケ菌(V〜VIII)を、マツタケ菌糸体として分離する場合の培養日数は5〜30日間であり、好ましくは7〜20日間、特に好ましくは10〜15日間である。
【0106】
これらの培養日数から、炭素源の資化速度が著しく低下した時を培養終了とするのが好ましいが、適宜、製造サイクル、製造コスト等の製造形態に合せて決定することができる。
【0107】
静置液体培養後の培養液中の乾燥菌糸体含有量(単位:g/L)と初発菌糸体濃度との比(「菌糸体増加倍率」)が35〜100倍となるように培養することが、工業的な生産の点で好ましい。
【0108】
マツタケ菌IVを含有する振盪培養で製造した培養液を、100L以上の中型、および大型培養槽などの培養装置による攪拌培養工程で使用することもできる。
攪拌培養に使用する培養装置は、通気攪拌ができ、無菌性が確保できれば特に制限なく使用することが可能で、必要に応じて通気することができ、または通気装置を装着できるものを使用する。したがって、通常の、小型、中型および大型の培養槽、またはジャーファーメンターを使用することができる。
【0109】
100L未満のジャーファーメンターまたは小型培養槽を用いて、マツタケ菌IVの培養を行いマツタケ菌Vを製造する場合、液体培地中に通気せずに、攪拌培養を行うのが好ましい。100L未満のジャーファーメンターまたは小型培養槽で通気を行って培養すると、菌糸が凝集し、成長点が欠失して母菌としての生育能が損われる場合があるからである。
【0110】
また、100L以上の中型、および大型培養槽などの培養装置により工業スケールで深部攪拌培養を行う場合、必要に応じて通気を行う。この場合の通気量は0.05〜1.0vvm、特には0.2〜0.5vvmとするのが好ましい。
【0111】
攪拌培養における攪拌は、培養初期では培養液単位体積あたりの所要攪拌動力で制御する。通常、0.01〜2kW/m3、好ましくは0.05〜1kW/m3の範囲で攪拌を行うことにより、マツタケ菌糸体が良好に生育する。培養初期を過ぎれば菌が生育を始め、酸素供給量が不足し、さらに、生育した菌糸体の分散が不十分になるので、適宜、攪拌の強度を大きくすることが必要になる。当該深部攪拌では、培養初期には低通気、低撹拌速度で培養し、培養後期には高通気、高攪拌速度で培養するのが好ましい。
【0112】
深部攪拌培養から得られたマツタケ菌糸体の分離・回収は、常法によって行うことができる。例えば、フィルタープレスなどによる濾過、遠心分離などである。
得られた菌糸体は、例えば蒸留水により充分に洗浄してから、次の熱水抽出工程を実施するのが好ましい。また抽出効率が向上するように、破砕物または粉体の状態に加工するのが好ましい。
【0113】
[熱水抽出工程]
上記熱水抽出工程に用いる熱水の温度は60〜100℃が好ましく、より好ましくは80〜98℃である。抽出の際には、抽出効率が向上するように、攪拌または振盪しながら実施することが好ましい。抽出時間は、例えば、菌糸体の状態(例えば、破砕物または粉体の状態に加工した場合にはその加工状態)、熱水の温度、または攪拌若しくは振盪の有無若しくは条件に応じて、適宜決定することができるが、通常1〜6時間程度であり、2〜3時間程度が好ましい。
【0114】
熱水抽出後、適当な分離操作、例えば、遠心分離または濾過により、菌糸体熱水抽出液と菌糸体残渣とを得ることができる。
【0115】
[アルカリ溶液抽出工程]
上記アルカリ溶液抽出工程に用いるアルカリ溶液としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物、特には水酸化ナトリウムの水溶液を用いることができる。アルカリ溶液のpHは8〜13が好ましく、9〜12がより好ましい。アルカリ溶液抽出は0〜30℃程度で実施するのが好ましく、0〜25℃程度がより好ましい。抽出時間は、例えば、菌糸体残渣の状態(例えば、破砕物または粉体の状態に加工した場合にはその加工状態)、アルカリ溶液のpH若しくは温度、または攪拌若しくは振盪の有無若しくは条件に応じて、適宜決定することができるが、通常30分間〜5時間程度であり、1〜3時間程度が好ましい。
【0116】
アルカリ溶液抽出後、適当な分離操作、例えば、遠心分離または濾過により、菌糸体残渣アルカリ溶液抽出液と菌糸体残渣とを得ることができる。
得られた菌糸体残渣アルカリ溶液抽出液は、中和処理を実施してから、次の陰イオン交換樹脂吸着工程に用いるのが好ましい。
【0117】
[陰イオン交換樹脂吸着工程]
熱水抽出工程で得られた菌糸体熱水抽出液と、アルカリ溶液抽出工程で得られた菌糸体残渣アルカリ溶液抽出液とを混合して得られる混合抽出液は、不溶物が混在する状態で、そのまま次の陰イオン交換樹脂吸着工程に用いることもできるが、不溶物を除去してから、あるいは不溶物を除去しさらに抽出液中の低分子画分を除去してから、次の陰イオン交換樹脂吸着工程に用いるのが好ましい。例えば、不溶物が混在する混合抽出液を遠心分離することにより不溶物を除去し、得られる上清のみを次の陰イオン交換樹脂吸着工程に用いることができる。あるいは、不溶物が混在する混合抽出液を遠心分離して得られる前記上清を透析し、低分子画分(好ましくは分子量3500以下の画分)を除去してから、次の陰イオン交換樹脂吸着工程にて用いることができる。
【0118】
上記陰イオン交換樹脂吸着工程に用いることのできる陰イオン交換樹脂としては、公知の陰イオン交換樹脂を用いることができ、例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)セルロースまたはトリエチルアンモニオエチル(TEAE)セルロースを挙げることができる。
【0119】
[溶出工程]
上記溶出工程に用いる溶離液は、陰イオン交換樹脂吸着工程に用いる陰イオン交換樹脂の種類に応じて適宜決定することができ、例えば、塩化ナトリウム水溶液などを挙げることができる。
【0120】
溶出工程により溶出される画分は、そのまま、本発明の感染予防・治療剤の有効成分として用いることができるが、通常、溶離液に由来する塩を含有するので、それを除去するために、さらに透析を実施するのが好ましい。
【0121】
本発明の感染予防・治療剤および食品に有効成分として好適に用いられる、上記した混合抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分は、以下に示す理化学的性質を有する。
【0122】
(1)糖質含量: フェノール硫酸法によるグルコース換算値として60〜72%(好ましくは62〜70%)である。。
【0123】
(2)タンパク質含量: 銅フォリン法によるアルブミン換算値として28〜40%(好ましくは30〜38%)である。
【0124】
(3)糖組成: グルコース61μg/mg、マンノース3.3μg/mg、およびガラクトース2.0μg/mgである。
【0125】
(4)アミノ酸組成: アスパラギン酸およびアスパラギン10.35モル%、トレオニン5.83モル%、セリン6.27モル%、グルタミン酸およびグルタミン10.49モル%、グリシン8.55モル%、アラニン9.19モル%、バリン6.88モル%、1/2−シスチン0.60モル%、メチオニン1.49モル%、イソロイシン5.36モル%、ロイシン9.25モル%、チロシン2.55モル%、フェニルアラニン4.05モル%、リシン5.17モル%、ヒスチジン2.18モル%、アルギニン4.44モル%、トリプトファン1.82モル%、およびプロリン5.54モル%である。
【0126】
(5)等電点: 等電点電気泳動法によれば、メインバンドの等電点は5.85付近である。
【0127】
(6)核磁気共鳴分析(NMR)
(i)1H一次元NMR分析: 図1に示すスペクトル(測定条件は、後述の実施例6(6)(i)参照)を示す。
【0128】
(ii)13C一次元NMR分析: 図2および図3に示すスペクトル(測定条件は、後述の実施例6(6)(ii)参照)を示す。
【0129】
(7)円偏光二色性分析: 図4に示すスペクトル(測定条件は、後述の実施例6(7)参照)を示す。
【0130】
(8)旋光度: 42(25℃)である。
【0131】
(9)赤外分光分析: 図5に示すスペクトル(測定条件は、後述の実施例6(9)参照)を示す。
【0132】
(10)紫外分光分析(UV): 図6に示すスペクトル(測定条件は、後述の実施例6(10)参照)を示す。
【0133】
(11)電子スピン共鳴(ESR): 図7および図8に示すスペクトル(測定条件は、後述の実施例6(11)参照)を示す。
【0134】
(12)粘度: 還元粘度は108(30℃)である。
【0135】
(13)分子量: 主成分の分子量は2000kDaである。
【0136】
(14)元素分析: 炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)および塩素(Cl)の各含量は、それぞれ、41.3%、6.0%、5.1%、1.0%、0.052%、および0.16%である。
【0137】
(15)α−グルカン推定含有率: 全糖質に対して71%である。
【0138】
(16)エンドトキシン含量: 2.5ng/mgである。
【0139】
なお、上記陰イオン交換樹脂吸着画分に限らず、本発明の感染予防・治療剤および食品の有効成分として、マツタケFERM BP−7304株の菌糸体、培養物(Broth)、子実体、あるいはこれらの熱水抽出液、アルカリ抽出液、さらにはこれら抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分等も用いることができる。
【0140】
本発明の感染予防・治療剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の菌糸体としては、例えば、培養により得られる菌糸体(すなわち培養菌糸体)と培地との混合物から適当な除去手段(例えば、濾過)により培地を除去しただけの状態で使用することもできるし、あるいは、培地を除去した後の菌糸体から適当な除去手段(例えば、凍結乾燥)により水分を除去した菌糸体乾燥物の状態で使用することもでき、さらには前記菌糸体乾燥物を粉砕した菌糸体乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
【0141】
本発明の感染予防・治療剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の培養物(Broth)としては、例えば、培養により得られる菌糸体(すなわち培養菌糸体)と培地との混合物の状態で使用することもできるし、あるいは、前記混合物から適当な除去手段(例えば、凍結乾燥)により水分を除去した培養物(Broth)乾燥物の状態で使用することもでき、さらには前記培養物(Broth)乾燥物を粉砕した培養物(Broth)乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
【0142】
本発明の感染予防・治療剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の子実体としては、例えば、子実体をそのままで、または子実体を破砕した状態で使用することもできるし、あるいは、子実体から適当な除去手段(例えば、凍結乾燥)により水分を除去した子実体乾燥物の状態で使用することもでき、さらには、前記子実体乾燥物を粉砕した子実体乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
【0143】
本発明の感染予防・治療剤および食品における有効成分として用いられ得るマツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液、アルカリ抽出液、これら抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分は、上述した「混合液の陰イオン交換樹脂吸着画分」調製で述べた各方法に準じた方法や、上記特許文献3に示す公知の方法等により、それぞれ得ることができるが、これら方法に限定されるものではない。
【0144】
本発明の感染予防・治療および食品は、有効成分であるキシメジ属(Tricholoma)に属する担子菌類あるいはそれらの抽出物、好ましくはマツタケFERM BP−7304株あるいはその抽出物、特にはM2画分を、単独で、あるいは所望により薬剤学的または獣医学的に許容し得る担体とともに、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)に投与することができる。
【0145】
本発明において、病原性微生物とは、それ自体が病原性を有する微生物のみならず、従来いわゆる非病原菌あるいは平素無害菌と呼ばれる、平素は無害でも宿主の抵抗力が弱ったときになどに二次的に起る感染(日和見感染)症の原因微生物も含む。なお、病原性「微生物」としては、細菌、ウイルス、菌類、原生動物など、通常いわゆる微生物の範疇に含まれるものをすべて包含し得るが、本発明では特に、病原性細菌に対する感染の予防・治療効果に優れる。
【0146】
本発明の感染予防・治療剤および食品の対象となる病原性細菌としては、例えば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、O−157等を含む大腸菌(Escherichia coli)、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)、バンコマイシン耐性を含むサルモネラ菌(Salmonella enteritidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N. meningitidis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、バンコマイシン耐性を含む腸球菌(Enterococcus faecalis)等のグラム陰性菌や、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、メチシリン耐性を含むブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎球菌(Diplococcus pneumoniae)等のグラム陽性菌などが挙げられるが、本発明では特に、緑膿菌、リステリア菌を対象とする。
【0147】
本発明において「感染予防・治療」とは、動物やヒトなど、各種生体にとって有害な病原性微生物の感染(病原微生物の生体内侵入)の予防、感染後の発症の阻止(増殖阻止)並びに病原性微生物感染による発症(病的状態)の治療を意味する。例えば緑膿菌による感染では敗血症、肺炎等が引起される可能性があり、リステリア菌による感染では単球増加症等が引起される可能性があり、本発明感染予防・治療剤および食品はこれら感染症に罹患することを未然に防止する効果を有し、感染症に罹患した場合においてはその治癒効果を有する。したがって、本発明感染予防・治療剤および食品の投与・摂取時期は特に限定されるものでなく、例えば日常的に投与・摂取することによって感染を未然に防止することができ、また、感染した場合は速やかに投与・摂取することにより感染症治癒を効果的に図ることができる。
【0148】
本発明の感染症予防・治療剤および食品の投与・摂取剤型としては特に限定されるものでなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、または注射剤、外用液剤、軟膏剤、座剤、局所投与のクリーム、点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。
【0149】
経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、または合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、または酸化防止剤等を用いて、常法により製造することができる。
【0150】
非経口投与方法としては、注射(皮下、静脈内など)または直腸投与等が例示される。なかでも注射剤が最も好適に用いられる。
【0151】
例えば、注射剤の調製においては、有効成分の他に生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、または乳化剤などを任意に用いることができる。
【0152】
また、本発明の感染症予防・治療剤および食品は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明の感染症予防・治療剤および食品をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、このペレットを治療または予防すべき組織中に外科的に移植することができる。
【0153】
本発明の感染症予防・治療剤および食品は、これに限定されるものではないが、マツタケFERM BP−7304株あるいはその抽出物、陰イオン交換樹脂吸着画分等の有効成分を0.01〜99質量%、好ましくは0.1〜80質量%の量で含有することができる。
【0154】
本発明の感染症予防・治療剤および食品を用いる場合の投与・摂取量は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、または投与・摂取方法などに応じて適宜決定することができ、経口的にまた非経口的に投与・摂取することが可能である。
【0155】
また、投与・摂取形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、保険機能食品(特定保険用食品、栄養機能食品)やいわゆる健康食品(いずれも飲料を含む)、または飼料として飲食物の形で与えることも可能である。さらには、口中に一時的に含むものの、そのほとんどを口中より吐き出す形態、例えば、歯磨き剤、洗口剤、チューインガム、うがい剤などの形で与えることも、あるいは鼻から吸引させる吸入剤の形で与えることも可能である。例えば、マツタケFERM BP−7304株あるいはその抽出物、陰イオン交換樹脂吸着画分等の有効成分を、添加剤(食品添加剤など)として、所望の食品(飲料を含む)、飼料、歯磨剤、洗口剤、チューインガム、またはうがい剤等に添加することができる。
【0156】
なお、上記において、特定保険用食品は、その食品が持つ健康機能の表示が認められる食品(食品ごとに厚生労働省の許可を必要とする)をいい、栄養機能食品は栄養成分の機能を明記できる食品(厚生労働省が作成した規格基準を満たす必要あり)をいい、いわゆる健康食品とは上記保険機能食品以外の食品一般を広く意味するもので、健康補助食品等を含むものである。
【0157】
また本発明感染予防・治療剤および食品に抗生物質を含有させて製剤化(食品、飲料等含む)してもよい。これにより、感染症の治療において抗生物質の投与量を通常投与量より減じて治療が可能となり、抗生物質による生体への影響を抑えることができる。抗生物質は例えばバンコマイシン、ペニシリン、テトラサイクリン等が例示されるが、これらに限定されるものでなく、感染症の種類に応じて適宜、選択され得る。
【0158】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲をこれらの実施例によってなんら限定されるものでない。
【0159】
下記実施例では、病原性細菌の中から、グラム陰性菌として緑膿菌を用い、グラム陽性菌としてリステリア菌を用いて、マツタケの病原性細菌に対する感染予防性を評価した。
【0160】
(実施例1)
[マツタケFERM BP−7304株菌糸体の混合抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分の調製]
マツタケFERM BP−7304株菌糸体を、滅菌処理した培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス、pH6.0)3.5tの入った7t容培養タンクに接種し、25℃で攪拌しながら4週間培養を行った。得られた培養物を濾布濾過し、菌糸体を分離した後、蒸留水で充分に洗浄した。
【0161】
得られた菌糸体の一部(約1kg)に精製水30Lを加えて、98℃の湯浴中で3時間攪拌抽出した。冷却後、遠心分離(8000rpm、30分間)を行い、上清A1を得た。残渣に精製水30Lを加えて、同一条件下で、再度、抽出および遠心操作を行い、上清A2を得た。
【0162】
続いて、上清A2を得た後の残渣に、0.5モル/L水酸化ナトリウム水溶液20Lを加え、25℃で1時間攪拌抽出した。遠心分離を行い、上清B1を得た。残渣に1.0モル/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、同一条件で、再度、抽出および遠心操作を行い、上清B2を得た。得られた上清B1および上清B2を合せた後、1.0モル/L塩酸にて、pHを7.0に調整した(以下、上清Bと称する)。
【0163】
上清A1、上清A2、および上清Bを合せて得られた混合液(以下、抽出混合液Mと称する)を透析チューブ(分画分子量3500)に入れ、流水中で48時間透析した。透析内溶液を回収し、凍結乾燥機で乾燥し、白色の粉末(約70g)を得た。
【0164】
得られた粉末の一部(10g)を50ミリモル/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.0)500mLに溶解し、あらかじめ同じ緩衝液で平衡化させておいたジエチルアミノエチルセファセル(DEAE Sephacel;ファルマシア社)を充填したカラムを通過させ、素通り画分(非吸着画分)M1を得た。カラムを前記トリス塩酸緩衝液で充分に洗浄した後、0.5モル/L塩化ナトリウム含有50ミリモル/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.0)をアプライし、溶出画分(吸着画分)M2を得た。
【0165】
得られたM1画分およびM2画分を、それぞれ、4℃にて注射用蒸留水で48時間透析した後、透析内液を凍結乾燥して粉末を得た。菌糸体(乾燥質量)に対するM1画分およびM2画分の各収量は、それぞれ、7%および13%であった。
【0166】
(実施例2)
[緑膿菌に対するM2画分の感染予防性の評価(緑膿菌接種1日前、M2画分単回投与)]
【0167】
(i)被検細菌
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853株を用いた。この菌株は北里研究所付属病院で維持しているものである。
【0168】
(ii)対象動物
6週齢のBALB/c雌性マウスを日本チャールズリバー(株)から入手した。マウスは感染実験動物室のセーフティクリーンラック内、ポリカーボネート製ケージCL−0103−1(日本クレア)内に収容し、飼料CE−2(オリエンタル酵母社)と滅菌水道水を自由に与え、温度23±2℃と湿度55±15%、ルミナリ気流(luminary air flow)環境下、午前8時〜午後8時までの光サイクルで飼育した。このマウスを検疫・検収の終了後、1週間予備飼育を行った(7週齢マウス)。
【0169】
(iii)細菌懸濁液の調製(in vivo passage)
超低温冷凍庫に凍結保存してある緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853株を、Heart Infusion Broth(HI液体培地)1mLに加えて再懸濁し、白金耳を用いて、HI液体培地に1.5%アガロースを加えた平板培地(HIA培地)に画線し、37℃孵卵器で18時間培養した。HIA培地上に発育した単一のコロニーより白金線にて釣菌し、HIA培地上に画線培養した。HIA培地上に発育した菌を白金耳にてコロニーを掻き取り、108CFU/mLになるようにPBSにて希釈し、BALB/cマウスに200μL尾静脈より接種した。
【0170】
48時間後に同マウスの脾臓を採取し、ブレンダーにてすり潰し、PBS5mL中に再懸濁し、菌液を調製した。調製した菌液をBALB/cマウスに腹腔内接種し、48時間後に同マウス脾臓を採取し、上記と同様にブレンダーにてすり潰し、PBS5mL中に再懸濁した後、白金耳を用いてHIA培地に画線し、37℃孵卵器で18時間培養した。
【0171】
HIA培地上に発育した単一のコロニーより白金線にて釣菌し、5mLのHI液体培地中に懸濁した後、37℃恒温槽にて3時間振盪培養を行った。培養後、細菌浮遊液を300mLのHI培地中に加えて、さらに37℃恒温槽にて3時間振盪混合培養した。
【0172】
培養後、細菌浮遊液を5000×g 4℃にて30分間高速遠心し、上清除去後、50%グリセロール含有HI培地20mLに再懸濁し、1mLずつ分注後、−80℃にて実験使用時まで保存した。なお、菌液の一部は10倍段階希釈法にて菌数を測定した。
【0173】
(iv)細菌の接種と被検物資の投与
上記(ii)に示す7週齢マウスに、被検細菌接種1日前に、上記実施例1で得たM2画分(被検物質)の単回腹腔内投与を行った。1回投与ごとの動物あたりの被検物質投与濃度は、投与時に体重計にて体重を測定し、100mg/kg、20mg/kg、5mg/kgの濃度になるように腹腔内に投与した。
【0174】
被検物質投与1日後に、上記(iii)で調製した5.0×106CFUの緑膿菌を腹腔内に接種した。なお、コントロール群は菌接種1日前に生理食塩水を腹腔内に投与した。
【0175】
(v)生存率の測定
生存率の算出には、1群あたり8匹の動物を用いた。細菌接種後2週間、毎日生死の観察を行った。観察中、生存した個体数を群あたりの総数で除した値に、100を乗じた値を生存率とした。
【0176】
(vi)統計処理
実験対照群と各被検物質投与群間の有意差は、マン−ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定を、被検物質投与群間の有意差はクルスカル−ワリス(Kruskal-Wallis)のH検定を行い、いずれの場合も危険率5%未満を有意とした。
【0177】
(vii)緑膿菌接種1日前、M2画分単回投与における感染抵抗生の効果
M2画分を菌接種1日前に投与したBALB/cマウスに、致死量の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853株を腹腔内に5.0×106CFU接種し、M2画分における感染防御能について生存率を算出した。結果を表1に示す。
【0178】
【表1】
Figure 0004422404
【0179】
表1に示されるように、コントロールであるPBS投与群では菌接種後2日目より死亡個体が認められ、菌接種2日目で2例、5日目に4例死亡し、最終的な試験終了2週間目における生存率は25%であった。M2画分投与群のうち、100mg/kg投与群と20mg/kg投与群では、菌接種1日目から試験終了時まで全例生存し、生存率100%であった。5mg/kg投与群では、菌接種1日目に1例、2日目に1例死亡が認められ、最終的な生存率は75%であった。
【0180】
また各群14日目までの生存日数をマン−ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定を用いて検定を行ったところ、コントロールのPBS群に対して、M2画分100mg/kg、20mg/kg投与群の生存日数は有意(P<0.05)な延長が認められた。M2画分投与群間での有意な差は認められなかった。
【0181】
(実施例3)
[緑膿菌に対するM2画分の感染予防性の評価(緑膿菌接種3日前、M2画分単回投与)]
実施例2において、緑膿菌接種1日前にM2画分を投与する代わりに、緑膿菌接種3日前にM2画分を投与した以外は、実施例2と同様にして評価実験を行った。結果を表2に示す。
【0182】
【表2】
Figure 0004422404
【0183】
表2に示されるように、コントロールであるPBS投与群では菌接種後2日目より死亡個体が認められ、菌接種2日目で2例、5日目に4例死亡し、最終的な試験終了2週間目における生存率は25%であった。M2画分投与群のうち、100mg/kg投与群では菌接種1日目から試験終了時まで全例生存し、生存率100%であった。20mg/kg投与群では、菌接種2日目に1例死亡したのみで、最終的な生存率は87.5%であった。5mg/kg投与群では、菌接種2日目に2例、3日目に2例死亡が認められ、最終的な生存率は50%となった。
【0184】
また各群14日目までの生存日数をマン−ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定を用いて検定を行ったところ、コントロールのPBS群に対して、M2画分100mg/kg投与群のみが生存日数の有意(P<0.05)な延長が認められた。M2画分投与群間での有意な差は認められなかった。
【0185】
(実施例4)
[リステリア菌に対するM2画分の感染予防性の評価(リステリア菌接種1日前、M2画分単回投与)]
【0186】
(i)被検細菌
リステリア菌(Listeria monocytogenes)EGD株を用いた。この菌株は北里研究所付属病院で維持しているものである。
【0187】
(ii)対象動物
6週齢のC57BL/6雌性マウスを日本チャールズリバー(株)から入手した。マウスは感染実験動物室のセーフティクリーンラック内、ポリカーボネート製ケージCL−0103−1(日本クレア)内に収容し、飼料CE−2(オリエンタル酵母社)と滅菌水道水を自由に与え、温度23±2℃と湿度55±15%、ルミナリ気流(luminary air flow)環境下、午前8時〜午後8時までの光サイクルで飼育した。このマウスを検疫・検収の終了後、1週間予備飼育を行った(7週齢マウス)。
【0188】
(iii)細菌懸濁液の調製(in vivo passage)
超低温冷凍庫に凍結保存してあるリステリア菌(Listeria monocytogenes)EGD株を、1%デキストロース含有Tryptic Soy Broth(TS液体培地)1mLに加えて再懸濁し、白金耳を用いて、TS液体培地に1.5%アガロースを加えた平板培地(TSA培地)に画線し、37℃孵卵器で18時間培養した。TSA培地上に発育した単一のコロニーより白金線にて釣菌し、10mLのTSA液体培地中に溶解した後、37℃恒温槽にて3時間振盪培養を行った。培養後、細菌浮遊液を5000×g 4℃にて30分間高速遠心を行った。上清除去後、PBS10mLを加えて再懸濁し、菌液を調製した。
【0189】
調製した菌液200μLをC57BL/6マウスに腹腔内接種し、48時間後に同マウス脾臓を採取した。採取した脾臓は、ブレンダーにてすり潰し、PBS10mL中に再懸濁した後、白金耳を用いてTSA培地に画線し、37℃孵卵器で18時間培養した。調製した菌液200μLをC57BL/6マウスに腹腔内接種し、48時間後に同マウス脾臓を採取し、上記と同様にブレンダーにてすり潰し、PBS10mL中に再懸濁した後、白金耳を用いてTSA培地に画線し、37℃孵卵器で18時間培養した。
【0190】
TSA培地上に発育した単一のコロニーより白金線にて釣菌し、10mLのHI液体培地中に溶解した後、37℃恒温槽にて3時間振盪培養を行った。培養後、細菌浮遊液を300mLのHI培地中に加えて、さらに37℃恒温槽にて3時間振盪混合培養した。
【0191】
培養後、細菌浮遊液を5000×g 4℃にて30分間高速遠心し、上清除去後、50%グリセロール含有TS培地20mLに再懸濁し、1mLずつ分注後、−80℃にて実験使用時まで保存した。なお、菌液の一部は10倍段階希釈法にて菌数を測定した。
【0192】
(iv)細菌の接種と被検物資の投与
上記(ii)に示す7週齢マウスに、被検細菌接種1日前に、上記実施例1で得たM2画分(被検物質)の単回腹腔内投与を行った。1回投与ごとの動物あたりの被検物質投与濃度は、投与時に体重計にて体重を測定し、100mg/kg、20mg/kg、5mg/kgの濃度になるように腹腔内に投与した。
【0193】
被検物質投与1日後に、上記(iii)で調製した1.0×106CFUのリステリア菌を腹腔内に接種した。なお、コントロール群は菌接種1日前に生理食塩水を腹腔内に投与した。
【0194】
(v)生存率の測定
生存率の算出には、1群あたり8匹の動物を用いた。細菌接種後2週間、毎日生死の観察を行った。観察中、生存した個体数を群あたりの総数で除した値に、100を乗じた値を生存率とした。
【0195】
(vi)統計処理
実験対照群と各被検物質投与群間の有意差は、マン−ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定を、被検物質投与群間の有意差はクルスカル−ワリス(Kruskal-Wallis)のH検定を行い、いずれの場合も危険率5%未満を有意とした。
【0196】
(vii)リステリア菌接種1日前、M2画分単回投与における感染抵抗生の効果M2画分を菌接種1日前に投与したC57BL/6マウスに、致死量(1.0×106CFU)のリステリア菌(Listeria monocytogenes)EGD株を腹腔内に接種し、M2画分における感染防御能について生存率を算出した。結果を表3に示す。
【0197】
【表3】
Figure 0004422404
【0198】
表3に示されるように、コントロールであるPBS投与群では菌接種後3日目より死亡個体が認められ、菌接種3日目で2例、4日目に4例死亡し、最終的な試験終了2週間目における生存率は25%であった。M2画分投与群のうち、100mg/kg投与群と20mg/kg投与群では、菌接種1日目から試験終了時まで全例生存し、生存率100%であった。5mg/kg投与群では、菌接種5日目に1例死亡が認められ、最終的な生存率は87.5%となった。
【0199】
また、各群14日目までの生存日数をマン−ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定を用いて検定を行ったところ、コントロールのPBS群に対して、M2画分100mg/kg、20mg/kg、5mg/kg投与群の生存日数は有意(P<0.05)な延長が認められた。M2画分投与群間での有意な差は認められなかった。
【0200】
(実施例5)
[リステリア菌に対するM2画分の感染予防性の評価(リステリア菌接種3日前、M2画分単回投与)]
実施例4において、リステリア菌接種1日前にM2画分を投与する代わりに、リステリア菌接種3日前にM2画分を投与した以外は、実施例4と同様にして評価実験を行った。結果を表4に示す。
【0201】
【表4】
Figure 0004422404
【0202】
表4に示されるように、コントロールであるPBS投与群では菌接種後3日目より死亡個体が認められ、菌接種3日目で2例、4日目に4例死亡し、最終的な試験終了2週間目における生存率は25%であった。M2画分投与群のうち、100mg/kg投与群と20mg/kg投与群では、菌接種1日目から試験終了時まで全例生存し、生存率100%であった。5mg/kg投与群では、菌接種4日目に1例死亡が認められ、最終的な生存率は87.5%となった。
【0203】
また、各群14日目までの生存日数をマン−ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定を用いて検定を行ったところ、コントロールのPBS群に対して、M2画分100mg/kg、20mg/kg、5mg/kg投与群の生存日数は有意(P<0.05)な延長が認められた。M2画分投与群間での有意な差は認められなかった。
【0204】
[考察]
緑膿菌感染早期における生体の防御反応は、好中球やマクロファージなどが中心となって、菌の排除が行われる。しかしこれら食細胞の短期的な働きでは処理されないような大量の菌に対する防御反応は、感染数日後より働く適応免疫(特に緑膿菌の場合は抗原特異的な抗体)によって菌が排除される。上記実施例2および3の結果から、M2画分投与後の生体内の免疫賦活効果による緑膿菌感染抵抗生は、単回投与では長続きせず、連日投与によって効果が得られる可能性がある。
【0205】
一方、リステリア菌は、結核菌やサルモネラ菌などの細菌と同様に、細胞内に寄生し増殖する代表的な細胞内寄生菌である。リステリア菌はマクロファージによる食菌からエスケープし細胞質内で増殖することが可能なため、菌の排除には抗原特異的に感作されたT細胞と、サイトカインによって活性化されたマクロファージが感染防御の主体となるため、抗体や補体による感染防御は無効である。上記実施例4および5の結果から、M2画分はThl細胞を分化・誘導させ、強力に防御免疫を生ずる可能性が示唆された。
【0206】
(実施例6)
[M2画分の理化学的性質の検討]
実施例1で得られたM2画分、および後述の実施例7で得られた市販マツタケの子実体由来のm2画分の理化学的性質を検討した。測定方法およびその結果を以下に示す。
【0207】
(1)糖質の定量
フェノール硫酸法を用いる比色により定量した。M2画分の糖質含量は、グルコース換算値として62%であった。
【0208】
実施例1の操作を別途、2回繰返して得られた2種のM2画分について、同様にフェノール硫酸法を用いる比色により糖質含量を測定したところ、グルコース換算値として69%および70%であった。
【0209】
なお、m2画分の糖質含量は、グルコース換算値として35%であった。
【0210】
さらに、ヨウ素呈色反応を実施したところ、M2画分およびm2画分のいずれも陰性であり、デンプンとは性状の異なる糖質が存在すると考えられた。
【0211】
(2)タンパク質の定量
銅フォリン法を用いる比色により定量した。M2画分のタンパク質含量は、アルブミン換算値として38%であった。
【0212】
実施例1の操作を別途、2回繰返して得られた2種のM2画分について、同様に銅フォリン法を用いる比色によりタンパク質含量を測定したところ、アルブミン換算値として31%および30%であった。
【0213】
なお、m2画分のタンパク質含量は、アルブミン換算値として65%であった。
【0214】
(3)糖質の組成分析
封入管にM2画分1.0mgと2モル/Lトリフルオロ酢酸0.2mLとを入れ、100℃で6時間加水分解した後、エバポレータで減圧乾固し、残渣を得た。残渣を純水500μLに溶解し、純水で2倍または10倍希釈した。この溶液50μLに内部標準物質ヘプトース500ngを添加し、カラムTSK−gelSugar AXGLC−9A(15cm×4.6mmI.D.)(東ソー)と検出器分光光度計RF−535(島津製作所)とを装着した高速液体クロマトグラフィー装置LC−9A(島津製作所)にアプライした。カラム温度は70℃で、移動相およびその流速は0.5Mホウ酸カリウム緩衝液(pH8.7)および0.4mL/分であった。ポストカラム標識の条件は、反応試薬として1%アルギニン/3%ホウ酸を用い、流速は0.5mL/分、反応温は150℃、検出波長はEX320nmおよびEM430nmである。
【0215】
M2画分の糖組成は、多い方から順に、グルコース61μg/mg、マンノース3.3μg/mg、およびガラクトース2.0μg/mgであった。
【0216】
また、m2画分の糖組成は、多い方から順に、グルコース12.9μg/mg、ガラクトース12.6μg/mg、マンノース5.6μg/mg、フコース3.5μg/mg、およびキシロース0.4μg/mgであった。
【0217】
(4)アミノ酸組成分析
酸加水分解は、以下の手順で実施した。すなわち、封入管にM2画分0.33mgと6モル/L塩酸0.2mLとを入れ、110℃で22時間加水分解した後、エバポレータで減圧乾固し、残渣を得た。残渣を純水0.5mLに溶解し、その50μLをアミノ酸分析に用いた。
【0218】
また、アルカリ加水分解(トリプトファン分析用)は、以下の手順で実施した。すなわち、M2画分0.48mgをプラスチックチューブに入れた後、可溶性デンプン(Starch soluble)5mgを含む1%n−オクチルアルコール−4.2モル/L水酸化ナトリウム溶液100μLを加えた。このプラスチックチューブをガラス試験管に入れ、真空封管下、110℃で16時間加水分解した。空冷後、開封し、プラスチックチューブを氷中で冷却し、1.0モル/L塩酸を添加し、中和した。さらに、精製水840μLを添加して総量1000μLとし、その50μLをアミノ酸分析に用いた。
【0219】
装置は日立L−8500型アミノ酸分析計(日立製作所)を用い、ニンヒドリン発色により定量した。
【0220】
アミノ酸組成は、アスパラギン酸およびアスパラギン10.35モル%、トレオニン5.83モル%、セリン6.27モル%、グルタミン酸およびグルタミン10.49モル%、グリシン8.55モル%、アラニン9.19モル%、バリン6.88モル%、1/2−シスチン0.60モル%、メチオニン1.49モル%、イソロイシン5.36モル%、ロイシン9.25モル%、チロシン2.55モル%、フェニルアラニン4.05モル%、リシン5.17モル%、ヒスチジン2.18モル%、アルギニン4.44モル%、トリプトファン1.82モル%、およびプロリン5.54モル%であった。
【0221】
(5)等電点分析
M2画分を1mg/mLに調製し、(i)M2画分溶液10μLに純水10μLを添加したものに、あるいは、(ii)M2画分溶液20μL(タンパク質量として約1.14μg)に、それぞれ、40%(体積/体積)程度のサッカロースを加え、電気泳動を実施した。電気泳動の条件は以下のとおりである。
【0222】
ゲル: IEF−PAGEmini(4%、pH3〜10;テフコ社)
泳動用緩衝液: (陰極)0.04モル/L水酸化ナトリウム溶液、(陽極)0.01モル/Lリン酸溶液
泳動条件: 100Vで30分間泳動を行い、続いて300Vで20分間泳動を行い、さらに500Vで40分間泳動を行った。
PIマーカー: 各バンドが1.35g(ファルマシア)
染色: 銀染色
メインバンドの等電点は5.85付近であった。
【0223】
(6)核磁気共鳴分析(NMR)
測定条件は以下のとおりである。
【0224】
(i)1H一次元NMR測定
M2画分7mgにD2O 800μLを加え、超音波で約5分間溶解を試みた後、遠心機にかけ、その上清部分を測定に使用した。測定条件は以下のとおりである。
【0225】
測定装置: UNITY INOVA600型(バリアン社)
観測周波数: 599.6MHz(1H核)
溶媒: D2O溶液(飽和溶液)
基準: TSP0.00ppm(1H)
温度: 25℃
繰返し時間: 7.0秒(1H)
積算回数: 256回
【0226】
得られたスペクトルを図1に示す。3.0〜5.6ppmに糖由来のシグナルが強く観測された。0.5〜3.0ppmに観測されたシグナルがアミノ酸の側鎖由来であると考えると、糖由来のシグナル強度がアミノ酸由来のシグナル強度よりかなり強いことから、M2画分は構造内に多くの糖を含むことが推定された。また、6.6〜7.6ppmに芳香族アミノ酸のNMRシグナルが観測された。
【0227】
また、α−グルカンの推定含有率は71%であった。
【0228】
(ii)13C一次元NMR測定
M2画分を、約20.5mg/0.75mLになるように、D2O/CD3OD(725/25)に溶解し、以下の操作条件で測定した。
【0229】
観測周波数: 125.8MHz
基準: 重メタノール(δ=49ppm)
温度: 45℃
観測幅: 31.4kHz
データ点: 64K
パルス幅: 約41°
パルス繰返し時間: 2.5秒
積算回数: 4000
デカップリング: 1H完全デカップリング
【0230】
結果を図2および図3に示す。糖質由来のシグナルとアミノ酸由来のシグナルとを観察したが、糖質のシグナル強度はアミノ酸由来のものよりも強かった。M2画分の構成糖の大部分はグルコースであることから、95〜110ppmのシグナルはグルコースの1位の炭素であり、105ppm付近のシグナルはβ1位の炭素であり、102ppm付近および99ppm付近のシグナルはα1位の炭素であると考えられる。この結果から、少なくとも3種類以上の結合様式が推定された。63ppm付近のシグナルは6位の炭素であるが、ここでも3種類のシグナルが存在し、M2画分が3種類以上の結合様式を有することを支持している。また、70〜80ppm付近のシグナルから、4位が結合に関与していると考えられ、α1−4結合とβ1−4結合の存在が推定される。
【0231】
(7)円偏光二色性分析(CD)
M2画分約3mgに水を添加し、2mg/mLとした。沈殿が若干あったので、遠心して上清部分を測定に使用した。測定条件は以下のとおりである。
【0232】
測定装置: JASCOJ−500A
溶媒: 水
タンパク質濃度: 約2mg/mL
波長範囲: 200〜250nm
セル長: 1mm
温度: 室温(約23℃)
積算回数: 8回
【0233】
得られたCDスペクトルを図4に示す、CD値(縦軸)は楕円核(mdeg)で示した。αヘリックスなどの規則的な二次構造は若干存在するが、不規則構造が主要な構造と推定された。
【0234】
(8)旋光度
25℃で測定したところ、42であった。
【0235】
(9)赤外分光分析
赤外分光分析は、KBr法により実施した。より具体的には、M2画分0.5mgと、KBr粉末15mgとを均質に混合した後、プレスして円盤状に成型し、測定を実施した。
【0236】
得られたスペクトルを図5に示す。このスペクトルからM2画分には多糖類が含まれることが示唆された。
【0237】
(10)紫外分光分析(UV)
M2画分を純水に溶解し、0.5mg/10mL濃度で測定した。装置は2500PC(島津製作所)を使用した。
【0238】
得られた紫外可視吸収スペクトルを図6に示す。260〜270nmにおいて弱い吸収極大が認められた。
【0239】
(11)電子スピン共鳴(ESR)
ESP350E(Brucker社)を用い、窒素雰囲気下での試料のESRを測定した。おもな操作条件は表5に示すとおりである。
【0240】
結果を表6、図7および図8に示す。図7および図8において、縦軸の「強度(arb. units)」は、縦軸に示す「強度」の単位が任意単位であることを意味する。炭素ラジカルに起因すると考えられるシグナルを、g=2.004付近に観察した。また、g=4.25(Fe3+)付近とg=2.03〜2.05付近のシグナルは、遷移金属イオンに起因するものと考えられる。
【0241】
【表5】
Figure 0004422404
【0242】
【表6】
Figure 0004422404
【0243】
(12)粘度
試料(M2画分またはm2画分)0.5gを精製水100mLに溶解し、10000rpmで遠心分離後、上清をとり、精製水で1.67mg/mLに調整した後、オストワルド粘度計を用いて、30℃で還元粘度を測定した。M2画分の還元粘度は108ηであり、m2画分の還元粘度は924ηであった。
【0244】
(13)分子量
試料(M2画分またはm2画分)を精製水で2〜3mg/mLとなるように溶解し、以下の条件でゲル濾過を実施した。分子量既知の標準曲線に溶出時間を外挿し、分子量を算出した。
【0245】
装置: 送液ポンプLC−7A(島津製作所)
検出器: 紫外分光光度計検出器SPD−6A(島津製作所)
カラム: TSK−gel G3000SW(7.5mmI.D.×30cm)(東ソー)
カラム温度: 室温
移動相: 0.15モル/L硫酸ナトリウム含有50ミリモル/Lリン酸緩衝系(pH7.0)
移動相流速: 0.8mL/分
検出波長: 214nm
【0246】
M2画分では、主成分の分子量は2000kDaであり、それ以外に4.0kDaおよび1.2kDaの成分も確認された。また、m2画分では、主成分の分子量は2000kDaであり、それ以外に7.0kDaおよび1.0kDaの成分も確認された。
【0247】
(14)元素分析
炭素(C)、水素(H)、および窒素(N)は、有機微量元素分析計(ヤナコCHNコーダーTM−5型)を用いて測定した。
【0248】
また、硫黄(S)、リン(P)、および塩素(Cl)については、試料をボンベ法で燃焼分解後、吸収液中のSO4 2-、PO4 3-、およびCl-をイオンクロマトグラフィー(IC)法で測定し、各元素に換算した。具体的には、試料0.1gにアセトン1mLを加え、酸素3Mpa導入後、燃焼して30分間水冷した。0.1モル/L−NaOHの吸収液と洗浄液とを合せて100mLに定容後、ダイオネクスDX−300型ICを用いて測定した。結果を表7に示す。
【0249】
【表7】
Figure 0004422404
【0250】
(15)α−グルカン推定含有率
試料(M2画分またはm2画分)を0.5モル/L酢酸緩衝液(pH4.3)に溶解し、アミログルコシダーゼ溶液(Sigma Chem. Co.)を加えて、60℃で30分間振盪した。次いで、液のpHを4.5に調整後、グルコアミラーゼ(和光純薬)を加えて、60℃で30分間振盪した。反応終了後、得られた各反応液中のグルコース量をグルコース測定計にて測定後、ブランク溶液のグルコース量から差し引いた値を、「α−グルカン推定量」とした。一方、試料に1.0モル/L硫酸を加え、100℃で18時間加水分解後、中和し、得られた各反応液中のグルコース量をグルコース測定計にて測定し、「総グルカン量」とした。α−グルカン推定含有率は、前記「総グルカン量」に対する前記「α−グルカン推定量」の百分率として算出した。
【0251】
M2画分のα−グルカン推定含有率は、全糖質に対して71%であり、m2画分α−グルカン推定含有利通は、全糖質に対して32%であった。
【0252】
(16)エンドトキシンの定量
市販測定キット(エンドスペーシー;生化学工業)およびエンドトキシンフリーの器具および試薬(生化学工業)を用い、LAL(Limulus Amoebocyte Lysate)反応(Ohbayashi T.ら、"Clin. Chem. Acta", 149, 55-65, 1985)によりエンドトキシン量を定量した。
【0253】
すなわち、M2画分を適当な濃度になるように蒸留水に溶解した後、その50μLをエンドトキシンフリーの96ウェルマイクロプレートに分注した。別のウェルには、蒸留水またはエンドトキシン標準液の希釈系列を同量分注した。次いで、マイクロプレートの各ウェルにLAL溶液(カブトガニ由来試液)50μLを分注し、37℃で30分間インキュベートし、ジアゾカップリング試薬を加え、発色させた後、545nm(対照630nm)の吸光度を測定した。標準液の検量線からM2画分のエンドトキシン量を算出したところ、2.5ng/mgであった。
【0254】
(実施例7)
[市販マツタケの混合抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分の調製]
市販の長野産マツタケ子実体100gを凍結乾燥して水分を除去した後、粉砕して粉末15gを得た。
【0255】
以下、出発材料として菌糸体の代わりに、前記子実体粉末を用いること以外は、実施例1の抽出および分画操作を繰返すことにより、非吸着画分m1および吸着画分m2を得た。
【0256】
m2画分も、M2画分よりは低いものの、病原性細菌に対する感染抵抗性が認められた。
【0257】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の感染予防・治療剤および食品は、緑膿菌、リステリア菌等の病原性細菌に対する感染を未然に防止することができ、また感染症に罹患した場合でも効果的に治療を行うことができる。さらに抗生物質とともに摂取することにより、抗生物質の使用量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】吸着画分M2の1H一次元NMR測定により得られたスペクトルである。
【図2】吸着画分M2の13C一次元NMR測定により得られたスペクトルである。
【図3】吸着画分M2の13C一次元NMR測定により得られたスペクトル(広域)である。
【図4】吸着画分M2の円偏光二色性分析により得られたCDスペクトルである。
【図5】吸着画分M2の赤外分光分析により得られたスペクトルである。
【図6】吸着画分M2の紫外分光分析により得られたスペクトルである。
【図7】吸着画分M2のESR分析により得られたスペクトルである。
【図8】吸着画分M2のESR分析により得られたスペクトル(広域)である。

Claims (5)

  1. マツタケ(T. matsutake)のFERM BP−7304株あるいはそれらの抽出物を含む、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および/またはリステリア菌(Listeria monocytogenes)に対する感染予防・治療剤。
  2. マツタケ(T. matsutake)のFERM BP−7304株が菌糸体、培養物(Broth)または子実体(胞子を含む)である、請求項1記載の感染予防・治療剤。
  3. マツタケのFERM BP−7304株抽出物が、FERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液、アルカリ溶液抽出液、および、これら抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項1または2記載の感染予防・治療剤。
  4. マツタケのFERM BP−7304株抽出物が、FERM BP−7304株の菌糸体の熱水抽出液と、前記菌糸体熱水抽出液を得る際に残留する菌糸体残渣のアルカリ溶液抽出液とを混合して得られる混合液の陰イオン交換樹脂吸着画分であって、(a)フェノール硫酸法によるグルコース換算値としての糖質含量が60〜72%であり、(b)銅フォリン法によるアルブミン換算値としてのタンパク質含量が28〜40%である、上記陰イオン交換樹脂吸着画分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感染予防・治療剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の感染予防・治療剤と抗生物質とを含有する、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および/またはリステリア菌(Listeria monocytogenes)に対する感染予防・治療剤。
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