JP5087768B2 - 生体適合性高強度セラミック複合材料とその製造方法 - Google Patents

生体適合性高強度セラミック複合材料とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は生体適合性高強度セラミック複合材料及びその製造方法に関する。
高齢社会が進行する社会情勢の中で、歯の喪失、骨粗鬆症など高齢者特有の疾病も増加しつつある。歯科医療用材料の生産量と輸入量の総額は、ほとんどの材料の総額がこの20年間ほとんど変動がないのに対し、歯科用インプラントは約8倍に増加している。これは、患者数の増大だけでなく、インプラント材料および治療技術の進歩が貢献していることは言うまでもない。医用インプラントも同様に、使用量が増大しており、高齢社会におけるQOLを高める治療法としてインプラントが汎用されてきている。
人工歯根や股関節・大腿骨などのインプラントは大きな負荷がかかり、強度的に耐え、複雑な形態が製造でき、しかも生体適合性を有する必要性から、純チタンおよびチタン系合金が、臨床での主流である。さらに、チタンの生体適合性を向上するための多くの取り組みがなされてきた。発明者は、ハイドロキシアパタイト(以下「HA」と略記する)とガラスを複合化して金属チタンへコーティングした生体適合性複合体を開発し、多くの関連特許出願(例えば、特許文献1,2,3など)および論文発表(例えば、非特許文献1,2など)を行ってきた。現在、治験結果の集積をもとに厚生労働省への認可申請中である。
金属インプラントは機械的強さは十分であるが、母体の骨との結合性が低いという問題がある。大腿骨インプラントの場合は、骨セメントと呼ばれる常温化学重合型アクリルレジンを用いて固定されるが、重合発熱と残留モノマーによる為害作用が報告されている。セメントレスにするためにHAコーティングがなされている商品もある。しかしながら、金属インプラントは、金属アレルギー患者には用いることができないという問題がある。また、人工歯根金属インプラントの場合は光透過性がなく金属光沢を有するため、審美性が劣るという問題がある。
アルミナ、ジルコニア等の高強度セラミックは破壊靱性および曲げ強度が大きく、インプラントや歯科修復物などの生体材料として一部応用されている。口腔内に露出する部分である上部構造や補綴物はすでにセラミックが多用されるようになっている(例えば、非特許文献3,4,5)。しかしながら、人工歯根や股関節・大腿骨などの高荷重負荷インプラントへの高強度セラミックの応用は進んではいない。股関節・大腿骨インプラントにはジルコニア製のものが市販されているが使用実績は低い。その一因は、ジルコニアおよびアルミナは表面の親水性が低く、生体組織(たとえば血液、粘膜組織などの軟組織、骨などの硬組織)との親和性、すなわち生体適合性が劣るためである。HAは骨や歯の無機成分に類似しており生体適合性の高い人工材料として知られている。しかしながら、HAは機械的強度が低いという問題がある。HA焼結体、リン酸3カルシウム(TCP)、バイオアクティブガラスなど生体活性の高いセラミックは強度が不十分で、単体で高負荷部位のインプラントとしては使用されていない。
以上のような事情から、現在では、人工歯根の用途にはチタンが、人工骨、人工関節などの用途にはチタンあるいはコバルトクロム合金が汎用されている。ジルコニアおよびアルミナは摩耗特性を利用して人工関節の骨頭に利用されている例はある。
インプラント用の複合材料の公知例としては、本発明者らによる上記の材料のほかに次のようなものがある。
Kimらはゾルーゲル法を用いてフルオロアパタイトをジルコニア表面にコーティングする方法を報告している(非特許文献6)。しかしながらこの技術ではフルオロアパタイトの層の厚さは1μmであるため、長期に体内に埋入された場合、消失する可能性がある。
Kimらはナトリウム・リン酸カルシウム系ガラスとHA混合物をジルコニア表面に焼きつける技術を報告している(非特許文献7)。しかしながら、ナトリウム・リン酸カルシウム系ガラスは強度、化学的耐久性が劣るという問題がある。また使用されているガラスはナトリウム分が多いことから、水溶液と接触した場合はアルカリ性を呈するものと推定される。また、最表層がガラスで覆われているため、生体適合性が低いという問題がある。
Ferrarisらはカルシウム分の多い生体活性ガラスをジルコニア表面に焼き付け、体液に接触した時点で表面にリン酸カルシウム塩が沈着し生体活性が向上すると報告している(非特許文献8)。
Brovaroneらはアルミナ基板に対し、第1層は珪酸ガラスと70vol%ジルコニア分散粒子、第2層は生体活性ガラスと70vol%ジルコニア分散粒子、第3層は生体活性ガラスのみまたは20vol%HA分散粒子の積層構造を有する構造を報告している(非特許文献9)。この文献では最表層は約20μmのガラス層を形成したと報告されている。この文献で使用されているガラスもナトリウムを多く含むことから、生体適合性に疑問が残る。
米国特許明細書50771321 特公平4-3226号公報 欧州特許公報0264917B1 Maruno S, Ban S, Wang Y-F, Iwata H, Itoh H. Properties of fuctionally gradient composite consisting of hydroxyapatite containing glass coated titanium and characters for bioactive implant. J Ceram Soc Japan 1992; 100: 362-367. Ban S, Maruno S, Iwata H, Itoh H. Calcium phosphate precipitation on the surface of HA-G-Ti composite under physiologic conditions. J Biomed Mater Res 1994; 28: 65-71. Ban S, Nawa M, Suehiro Y, Nakanishi H. Mechanical properies of zirconia/alumina nano-composite after soaking in various water-based conditions. Key Engineering Mater 2006; 309-311: 1219-1222. 伴 清治。最新の高強度歯科用セラミックス材料について、日本歯技 2006; No.442, 1-8. 伴 清治。オールセラミックスの歯科材料学、歯科技工別冊 オールセラミックスレストレーション、医歯薬出版(東京)2005, p.32-43 Biomaterials 25:2919-2926, 2004 Biomaterials 25, 4203-4213, 2004 Biomaterials 21:765-773, 2000 J European Ceram Soc 21: 2855-2862, 2001
本発明は、生体適合性が高く、且つ強度が高いインプラント用材料を提供することを目的とする。
上記のようにHAは生体適合性が高く、セラミックは強度が高い。しかしながら、両者を組み合わせて上記目的を達成することは容易ではない。なぜなら、HAとアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料とは熱膨張係数の差が大きいため単純な焼成では両者を化学的に結合することは困難であるからである。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の発明を包含する。
(1) セラミック基材上にリン酸カルシウム塩を分散したガラス層を有し、該ガラス層の表層にはリン酸カルシウム塩が露出しており、かつ多数の空孔が形成されていることを特徴とする生体適合性セラミック複合体。
(2) セラミック基材上に中間ガラス層を有し、該中間ガラス層上にリン酸カルシウム塩を分散したガラス層を有し、該ガラス層の表層にはリン酸カルシウム塩が露出しており、かつ多数の空孔が形成されていることを特徴とする生体適合性セラミック複合体。
(3) 前記ガラス層を構成するガラスがアルミナホウ珪酸系ガラスからなることを特徴とする(1)または(2)記載の生体適合性セラミック複合体。
(4) 前記ガラス層中のリン酸カルシウム塩含量が表層に近いほど高くなるように構成されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の生体適合性セラミック複合体。
(5) ガラス粉末とリン酸カルシウム塩粉末を混合分散し、得られた混合物をセラミック基材上にコーティングし、焼成後、表面のガラスを酸で溶解エッチングし、表層にリン酸カルシウム塩が露出しており、かつ多数の空孔が形成されている複合体を得ることを特徴とする生体適合性セラミック複合体の製造方法。
(6) ガラス粉末とリン酸カルシウム塩粉末を混合分散し、得られた混合物を、表面にガラス層を有するセラミック基材上にコーティングし、焼成後、表面のガラスを酸で溶解エッチングし、表層にリン酸カルシウム塩が露出しており、かつ多数の空孔が形成されている複合体を得ることを特徴とする生体適合性セラミック複合体の製造方法。
(7) 前記ガラス粉末がアルミナホウ珪酸系ガラスからなることを特徴とする(5)または(6)記載の方法。
(8) ガラス粉末とリン酸カルシウム塩粉末を種々の比率で混合分散して、リン酸カルシウム塩粉末含量が異なる複数の混合物を得て、得られた複数の混合物のうちでリン酸カルシウム塩粉末含量が最も低いものをセラミック基材または表面にガラス層を有するセラミック基材上にコーティングし、焼成し、次いで、焼成された層の外側に、リン酸カルシウム塩粉末含量が直下の層に使用した混合物の次に低い混合物をコーティングし、焼成する操作を、リン酸カルシウム塩粉末含量が最も高い混合物をコーティングし焼成するまで反復した後、表面のガラスを酸で溶解エッチングすることを特徴とする(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
本発明により、生体適合性が高く、且つ強度が高いインプラント用材料が提供される。
中間ガラス層を設ける形態では、セラミック基材とリン酸カルシウム塩の層との結合強度がより強くなる。
本発明の生体適合性セラミック複合体は金属アレルギー患者など金属を体内に埋入することができない特殊患者に対しても使用することができる。
本発明の生体適合性セラミック複合体は表面の凹凸と生体適合性材料であるHAの作用により、生体組織との結合性に優れ、インプラント周囲組織の早期治癒およびインプラント体と骨組織との早期結合が実現できる。
本発明の生体適合性セラミック複合体はリン酸カルシウム塩がその表面に露出しており且つ多数の空孔を有しているため、生体骨と容易に接合することができる。
基材として使用されるセラミックとしてはアルミナ、ジルコニア、及びアルミナ・ジルコニア複合体が挙げられるがこれらには限定されない。
本発明で使用されるリン酸カルシウム塩としてはCa10(PO4)6(OH)2で表されるハイドロキシアパタイト(HA)、Ca3(PO4)2で表される第3リン酸カルシウム(TCP)、Ca4(PO4)2Oで表されるリン酸四カルシウム(TTCP)等が挙げられる。リン酸カルシウム塩はガラス層中で分散して存在する。リン酸カルシウム塩の粒子径は典型的には1〜75μmの範囲であるがこれには限定されない。
ガラス層または中間ガラス層に使用し得るガラスとしては、アルミナホウ珪酸系ガラスが好ましい。アルミナホウ珪酸系ガラスは、ナトリウムリン酸カルシウム系ガラスと比較して化学的耐久性が高いため生体内での使用に適している。また、アルミナ・ホウケイ酸ガラスはセラミック基材との接合強度及び熱膨張係数、さらには焼成時において分散するリン酸カルシウム塩粒子と過剰には反応しない観点から、SiO2+B2O3+Al2O3は75〜85重量%、アルカリ成分は15〜20重量%が好ましい。アルカリ成分が多すぎると熱膨張係数が大きくなりすぎる。またアルカリ溶出が生じやすく生体適合性が劣ることになる。更には、焼成時にリン酸カルシウム塩粒子との過度の反応が生じることになる。逆にアルカリ成分が少ないと、溶融温度が高くなり、コーティング温度が高くなるため基材セラミックの相変態が生じやすく、かつ、リン酸カルシウム塩粒子とガラスとが過度に反応することになるため好ましくない。
本発明の複合体では、セラミック基材上にリン酸カルシウム塩を分散したガラス層が配置される。リン酸カルシウム塩分散ガラス層中でのリン酸カルシウム塩粒子の含量の分布は均一であってもよいし、セラミック基材に面する側からガラス層表面の方向にかけてリン酸カルシウム塩粒子の含量が高くなるように調整されてもよいが、とりわけ後者が好ましい。上記のリン酸カルシウム塩分散ガラス層とセラミック基材との間には、更にリン酸カルシウム塩を含有しないガラス層が配置されていてもよい。このガラス層を本発明では中間ガラス層と称する。中間ガラス層を設けるとセラミック基材との接合強度がより向上するとともに、リン酸カルシウム塩分散ガラス層中のリン酸カルシウム塩含有量を広範囲に変化させることが可能となり、適用範囲の広い生体適合性セラミック複合体とすることが可能となる。セラミック基材上にリン酸カルシウム塩分散ガラス層を直接配置する場合は、リン酸カルシウム塩分散ガラス層のうちセラミック基材に接する部分でのリン酸カルシウム塩含量は50重量%以下(ただし0重量%ではない)が好ましく、セラミック基材上に中間ガラス層を介してリン酸カルシウム塩分散ガラス層を配置する場合は、リン酸カルシウム塩分散ガラス層のうち中間ガラス層に接する部分でのリン酸カルシウム塩含量は70重量%以下(ただし0重量%ではない)が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。リン酸カルシウム塩分散ガラス層の表層にはリン酸カルシウム塩の粒子が露出しており、リン酸カルシウム塩分散ガラス層の表面は実質的にリン酸カルシウム塩の粒子により被覆されている。すなわち最表層におけるリン酸カルシウム塩含量はほぼ100重量%である。そしてリン酸カルシウム塩分散ガラス層の表層ではリン酸カルシウム塩の粒子間に空孔が形成される。リン酸カルシウム塩分散ガラス層の厚さ(中間ガラス層がある場合はリン酸カルシウム塩分散ガラス層と中間ガラス層との合計の厚さ)は50〜300μmの範囲が好ましい。リン酸カルシウム塩分散ガラス層の厚さが50μmに満たない場合にはリン酸カルシウム塩濃度に傾斜をつけた層を形成することが困難であることがある。一方、リン酸カルシウム塩分散ガラス層の厚さが300μmを越える場合にはリン酸カルシウム塩分散ガラス層自体の機械的強さがインプラント体全体の強さに反映されてしまい基材である高強度セラミックの利点が活用できないため望ましくないことがある。
本発明の複合体の典型的な断面模式図を図1に示す。図1に示す複合体は、ジルコニアまたはアルミナであるセラミック基材上に、中間ガラス層と、ヒドロキシアパタイト含量30%のガラス層と、ヒドロキシアパタイト含量50%のガラス層と、ヒドロキシアパタイト含量70%のガラス層とが順に配置され、表面をヒドロキシアパタイトが被覆している構造を有している。リン酸カルシウム塩分散ガラス層と中間ガラス層との合計の厚さは約100μmである。
次に本発明の複合体の製造方法について説明する。
まず、セラミック基材上に直接リン酸カルシウム塩分散ガラス層が配置された複合体の製造方法について説明する。
基材として用いるセラミックの前処理としては、サンドブラスト処理により表面粗さを大きくし、アセトン脱脂、純粋中での超音波洗浄を施すことが好ましい。
リン酸カルシウム塩は公知の方法で調製できる。また市販品を購入して使用してもよい。リン酸カルシウム塩を湿式法で製造する場合には、生成したリン酸カルシウム塩を乾燥後約800℃で仮焼し、約1200℃で焼成した後、粉砕して所定の粒度に粒度調整する。一方、ガラスも所定の粒度に粒度調整する。次に粒度調整されたリン酸カルシウム塩とガラス粉末とを混合し、この混合物をコーティングした後焼成する。リン酸カルシウム塩の含量の勾配をつける場合には、リン酸カルシウム塩とガラス粉末との比率が異なる複数の混合物を用意し、最初にセラミック基材にリン酸カルシウム塩含量が最も低い混合物をコーティングし焼成を行い、次いで、リン酸カルシウム塩含量が次に低い混合物をコーティングし焼成するという操作を繰り返す。最後にリン酸カルシウム塩含量が最も高い混合物をコーティングし焼成する。この場合、リン酸カルシウム塩含量が最も低い混合物の同含量は10〜40重量%であることが好ましく、リン酸カルシウム塩含量が最も高い混合物の同含量は80〜95重量%であることが好ましい。用意される、リン酸カルシウム塩が異なる複数の混合物は、2種類以上であれば特に限定されないが、通常は2〜6種類である。焼成温度は850℃〜1150℃の範囲が好ましい。焼成温度が1150℃を超える場合には分散したリン酸カルシウム塩が分解し、ガラス中に溶解しやすくなる。また、焼成温度が850℃未満である場合には分散したリン酸カルシウム塩粒子とガラスとの反応が不十分であり形成した膜の強度が低くなってしまうことがある。
次に上記のようにガラス層を形成した後、酸でエッチング処理を行う。エッチング処理はHFとHNO3の混液で行うのが簡便で好ましいが、HF蒸気中で適度の時間をかけて試片表面をむらなくエッチングする方法も採用し得る。
セラミック基材上に中間ガラス層を介してリン酸カルシウム塩分散ガラス層が配置された形態の本発明の複合体の製造方法については、セラミック基材上に中間ガラス層をコーティングする工程が追加される以外は上記と同様にすればよい。中間ガラス層のコーティングの際の焼成温度は850℃〜1150℃が好ましい。焼成温度が1150℃を超える場合には中間ガラス層とセラミック基材とが過剰に反応し基材の強度低下が起こることがある。一方、焼成温度が850℃未満である場合には中間ガラス層とセラミック基材との結合が不十分となる場合がある。
酸によってガラスを溶解してエッチング処理することにより、リン酸カルシウム塩分散ガラス層の表層にはリン酸カルシウム塩の粒子が露出し、且つ多数の空孔が形成された構造となる。該空孔の径は数μm〜500μmの範囲が好ましい。
次に実施例を挙げて本発明を詳しく説明する。
下記表に示す2種類の組成を有するアルミナホウ珪酸系ガラスを1400℃から水中に急冷し、フリットを作製した。
Figure 0005087768
湿式法により、高純度Ca(OH)2の水溶液にH3PO4水溶液を滴下し沈殿物を得、仮焼、焼成を経てハイドロキシアパタイト(HA)を合成した。ガラスフリットおよびHAは粉砕し、フルイにより粒度44μm以下の粉末に調製し、種々の割合(0〜90wt%)で混合し、コーティング用HA-ガラス混合体を作製した。
粒径70μmのアルミナ粒子でサンドブラスト仕上げしたジルコニア板(Nanocomposite)表面に第1層にガラスを950℃で5分間大気中で焼き付けコーティングした後、第2層に30%HA-ガラス、第3層に50wt%HA-ガラス、第4層に70wt%HA-ガラス、第5層に90wt%HA-ガラスを各々950-1050℃で5-10分間大気中で焼き付けコーティングし、最表層のガラスは3%HF+5%HNO3混合酸で2-3分間溶解し、HA粒子が均一に分散し無数の空孔を有するセラミック複合体が得られた。ガラスとしてAガラスを使用した場合のセラミック複合体表面の走査型電子顕微鏡像を図2に示す。酸処理によりHA粒子が露出していることが確認できる。図3に基板のジルコニアとHA-ガラス層 (Aガラス使用) との断面およびその界面の高倍率の走査型電子顕微鏡像を示す。ガラスがジルコニア内に1-2μm浸透し、一体となり、強固な結合の生じていることが確認できる。基板をアルミナに変えた場合も同様な断面組織が観察された。
図4に示すようにジルコニア基板に同素材のジルコニア基板(3〜5 mm角)をガラスAまたはBで焼付け、せん断接着試験を行った。ジルコニア板としてはY-TZP、Nanocompositeの2種類を用いた。図5に示すように、2種のジルコニア基板ともガラスAを用いて950℃で焼き付けた場合70MPa、1050℃で焼き付けた場合130-150MPaで、1050℃で焼き付けた場合の方が、より高い接着強さを示した。また、図6に示すように2種のガラスとも同程度の接着強さを示した。これらのガラスとジルコニア基板との接着強さは、インプラントと骨との接着強さ(10-15MPa)および骨の強度を考えると、きわめて大きな強さであり、インプラント体の表面皮膜として十分機能する接着強さを有している。
図1は本発明の複合体の断面模式図である。 図2は複合体表面の走査型電子顕微鏡像である。a.HA50wt%-ガラス焼成後の表面、b. HA70wt%-ガラス焼成後の表面、c. HA90wt%-ガラス焼成後の表面、d. HA90wt%-ガラス焼成後さらに酸処理した表面。 図3はジルコニア-HA-ガラス層断面の走査型電子顕微鏡像を示す。上図は低倍率の像であり、下図は上図に示す四角内(界面部)の高倍率の像である。 図4はせん断接着試験の模式図である。 図5は2種類のジルコニア基板をAガラスで950℃または1050℃において焼き付けた場合のせん断接着試験結果を示す図である。 図6は2種類のジルコニア基板をAガラスまたはBガラスで950℃において焼き付けた場合のせん断接着試験結果を示す図である。

Claims (8)

  1. セラミック基材上にリン酸カルシウム塩を分散したガラス層を有し、該ガラス層の厚さは50〜300μmの範囲であり、該ガラス層の表層にはリン酸カルシウム塩が露出しており、該ガラス層中のリン酸カルシウム塩含量は表層に近いほど高くなるように構成されており、かつ多数の空孔が形成されていることを特徴とする生体適合性セラミック複合体。
  2. セラミック基材上に中間ガラス層を有し、該中間ガラス層上にリン酸カルシウム塩を分散したガラス層を有し、該中間ガラス層と該ガラス層との合計の厚さは50〜300μmの範囲であり、該ガラス層の表層にはリン酸カルシウム塩が露出しており、該ガラス層中のリン酸カルシウム塩含量は表層に近いほど高くなるように構成されており、かつ多数の空孔が形成されていることを特徴とする生体適合性セラミック複合体。
  3. 前記ガラス層を構成するガラスがアルミナホウ珪酸系ガラスからなることを特徴とする請求項1または2記載の生体適合性セラミック複合体。
  4. 前記アルミナホウ珪酸系ガラスに含有されるSiO 2 +B 2 O 3 +Al 2 O 3 が75〜85重量%であることを特徴とする請求項3記載の生体適合性セラミック複合体。
  5. ガラス粉末とリン酸カルシウム塩粉末を種々の比率で混合分散しリン酸カルシウム塩粉末含量が異なる複数の混合物を得て、得られた複数の混合物のうちでリン酸カルシウム塩粉末含量が最も低いものをセラミック基材上にコーティングし、焼成し、次いで、焼成された層上に、リン酸カルシウム塩粉末含量が直下の層に使用した混合物の次に低い混合物をコーティングし焼成する操作を、リン酸カルシウム塩粉末含量が最も高い混合物をコーティングし焼成するまで反復した後、表面のガラスを酸で溶解エッチングすることを特徴とする、請求項1記載の生体適合性セラミック複合体の製造方法。
  6. ガラス粉末とリン酸カルシウム塩粉末を種々の比率で混合分散しリン酸カルシウム塩粉末含量が異なる複数の混合物を得て、得られた複数の混合物のうちでリン酸カルシウム塩粉末含量が最も低いものを、表面にガラス層を有するセラミック基材上にコーティングし、焼成し、次いで、焼成された層上に、リン酸カルシウム塩粉末含量が直下の層に使用した混合物の次に低い混合物をコーティングし焼成する操作を、リン酸カルシウム塩粉末含量が最も高い混合物をコーティングし焼成するまで反復した後、表面のガラスを酸で溶解エッチングすることを特徴とする、請求項2記載の生体適合性セラミック複合体の製造方法。
  7. 前記ガラス粉末がアルミナホウ珪酸系ガラスからなることを特徴とする請求項5または6記載の方法。
  8. 前記アルミナホウ珪酸系ガラスに含有されるSiO 2 +B 2 O 3 +Al 2 O 3 が75〜85重量%であることを特徴とする請求項7記載の方法。
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