JP5082446B2 - 被覆磁性粒子含有製剤およびその製造方法、並びに診断治療システム - Google Patents

被覆磁性粒子含有製剤およびその製造方法、並びに診断治療システム Download PDF

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Description

本発明は、有機化合物が結合した磁性微粒子を脂質膜で被覆した被覆磁性粒子を含有する製剤およびその製造方法、並びに診断治療システムに関する。
次世代医療技術に用いられる有望な医用材料の一つとして、「磁性ナノビーズ」の開発が進められている。磁性ナノビーズ(本明細書では、「磁性微粒子」ともいう)は、フェライト(Fe34とδ−Fe23の固溶体)のナノレベルサイズの微粒子であり、最近、4〜25℃、中性pH付近の温和な条件下で合成できる技術が開発された(特許文献1)。このような磁性微粒子にデキストラン、脂質、リポソーム、ポリマーなどで被覆した被覆磁性粒子にさらに薬剤、生理活性物質などを固定化(結合または包摂)させた医用磁性ナノビーズが提案されている(特許文献1、2)。これは、磁気を帯びる微粒子であるため、医療分野における応用として、MRI診断用の造影物質、薬物輸送担体に応用されるほか、高周波磁場内における磁性微粒子のヒステリシス損に基く発熱を利用した温熱療法、さらには両者を組み合わせたがんの診断と治療を同時に行う利用も考えられている(非特許文献1)。
がんの温熱療法(ハイパーサーミア、Hyperthermia)は、数十年前から提唱され、研究が進められたがん治療法の1つである。その治療原理は、がん細胞が正常細胞よりも熱に弱い性質を利用して、人為的に高温環境にして治療することに基づく。がん温熱療法は、一般にがん治療に施行される外科切除手術に比べて非侵襲的な治療であり、また、副作用が問題となりやすい化学療法または放射線療法と比較すると、選択的ではあるが、副作用がより低くなる。このように臓器温存が可能であり、患者の生活の質(Quality of Life)を向上させる治療法である。したがって初期がんの治療、あるいは手術侵襲、副作用などに耐えられない高齢者、幼児などのがん治療には好適な治療法である。従来の温熱療法では、誘電加熱法または収束超音波加熱法などの手法、最近はフェライト系MRI造影剤を用いる交番磁場加熱法が利用されてきたが、それぞれ一長一短がある。したがって、交流磁場内における新規な発熱素子として、上記フェライト系微粒子を使用する可能性が検討されている(非特許文献1)。
医療分野における磁性微粒子の利用が実用化できるか否かは、生理活性物質、治療薬剤などを安定的にビーズに保持させることができるか、また目的部位への選択的な送達(ターゲティング能力)を可能とできるかにかかっている。その点、これまでに提案された被覆磁性粒子は、改良の余地があった。磁性微粒子をリポソームに被覆(内包)させる方法も、リポソームの作製に関わる様々な問題、例えば使用した有機溶媒の残留、リポソーム構造の安定性などが実用化の妨げとなっている。
特開2002−128523号公報 特開平09−110722号公報 「BIO INDUSTRY」21巻、8号、48頁〜54頁、2004年
本発明は、腫瘍部位への選択的な送達(ターゲティング能力)を可能とすることができ、造影物質、薬物輸送担体に応用されるほか、発熱を利用した温熱療法、さらにはこれらを組み合わせたがんの診断と治療に用いることができる被覆磁性粒子含有製剤およびその製造方法、並びに診断治療システムを提供することを目的とする。
本発明に係る被覆磁性粒子含有製剤は、分子内に水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、メルカプト基、スルホ基、ジチオ基、チオカルボキシ基、およびジチオカルボキシ基から選ばれる結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物が結合された磁性微粒子を、脂質膜で被覆した被覆磁性粒子を含有する製剤であって、
前記被覆磁性粒子が、下記式
0.05≦R/(r×100)≦1.5
(式中、Rは被覆磁性粒子の平均粒子径を表し、rは被覆磁性粒子に含まれる磁性微粒子の平均粒子径を表す。)を満たすことを特徴とする。
前記被覆磁性粒子が、下記式
0.05≦R/(r×100)≦1.0
(式中、Rは被覆磁性粒子の平均粒子径を表し、rは磁性微粒子の平均粒子径を表す。)を満たすことが好ましい。
前記磁性微粒子が、分子内に水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、メルカプト基、スルホ基、ジチオ基、チオカルボキシ基、およびジチオカルボキシ基から選ばれる結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物の存在下、pHが7〜10であって、かつ温度が3℃〜30℃である条件で生成されたことが好ましい。
前記磁性微粒子の平均粒子径が1nm〜30nmの範囲にあり、かつその主成分がフェライトであることも好ましい。
前記被覆磁性粒子が、磁性微粒子を含有する脂質膜のリポソームであることが好ましく、このリポソームの表面電荷が正であることが好ましい。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、画像化剤および/または腫瘍に対する治療剤として用いることが好ましい。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、脂質膜の表面に直接または連結物質を介して、生理機能性物質および/または抗腫瘍活性物質を結合させたことが好ましく、画像化剤として、超音波画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、またはX線画像診断装置のための造影剤に用いられることが望ましい。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤を画像化剤として用いる場合には、被検者の静脈内に被覆磁性粒子含有製剤の投与が開始されてから、1分以上48時間以内に、超音波画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、またはX線画像診断装置においてスキャンを行うことにより、腫瘍組織の検出能を向上させることができる。
一方、被検者の腫瘍組織の近傍に被覆磁性粒子含有製剤の注入が開始されてから0.5分以上36時間以内に、超音波画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、またはX線画像診断装置においてスキャンを行うことにより、腫瘍組織の検出能を向上させることもできる。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、脂質膜の最外層に直接または連結物質を介して、生理機能性物質、付加的安定化物質、薬理活性物質、薬理的活性キレート物質、抗腫瘍活性物質、免疫増強物質、細胞融合物質および遺伝子導入媒介物質から選ばれる少なくとも1種の物質を結合していることが好ましい。
前記治療剤が、温熱療法用治療剤であることが好ましく、この温熱療法がエネルギー照射による方法であって、該エネルギー照射によって被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させることが可能となる。
前記エネルギー照射が、交番磁場照射または超音波照射であることが好ましく、そのうちでも周波数25〜500kHzの交番磁場照射であることが望ましい。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤を治療剤として用いる場合には、被検者の静脈内に被覆磁性粒子含有製剤の投与が開始されてから1分以上48時間以内に、該被検者に交番磁場照射または超音波照射を行うことにより、被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させることができる。
一方、被覆磁性粒子含有製剤を治療剤として用いる場合には、被検者の腫瘍組織の近傍に被覆磁性粒子含有製剤の注入が開始されてから0.5分以上36時間以内に、該被検者に交番磁場照射または超音波照射を行うことにより、被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させることができる。
本発明による被覆磁性粒子含有製剤の製造方法は、脂質膜構成成分と、超臨界二酸化炭素とを混合するとともに、ここに有機化合物が化学結合した磁性微粒子の分散液を添加し、次いで二酸化炭素を排出することにより磁性微粒子を脂質膜で被覆することを特徴とする。
前記磁性微粒子が、分子内に水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、メルカプト基、スルホ基、ジチオ基、チオカルボキシ基、およびジチオカルボキシ基から選ばれる結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物の存在下、pHが7〜10であって、かつ温度が3℃〜30℃である条件で生成されたことが好ましい。
本発明に係る診断治療システムは、前記の被覆磁性粒子含有製剤を用いて、被検者の腫瘍部の診断および治療を行うシステムであって、
前記診断治療システムは、被覆磁性粒子含有製剤を被検者に自動的に投与する自動注入装置と、
該製剤が注入された被検者に、超音波、電磁波またはX線を照射する第1照射部と、該照射により被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位をスキャンする撮像部とを備える診断装置と、
被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位に対し、交番磁場または超音波を照射する第2照射部と、交番磁場または超音波が照射される際に腫瘍部とその近傍の正常部の温度を計測する温度測定部とを備える治療装置と、
前記自動注入装置、診断装置、および治療装置とネットワークを介して接続され、これらの装置の動作を制御するとともに、各装置間の制御を行う制御装置と
を備えることを特徴とする。
前記温度測定部が、被検者に対し非侵襲の温度測定を行うことが好ましく、この前記非侵襲の温度測定は、核磁気共鳴画像診断装置を用いた、信号強度法による縦緩和時間、位相法におけるプロトンケミカルシフト、あるいは拡散画像法における拡散係数、または複数の周波数で測定したマイクロ波ラジオメトリで測定された値により算出される方法であることも好ましい。
前記温度測定部は、腫瘍部とその近傍の正常部の温度を計測するとともに、測定結果を順次制御装置に送信し、前記制御装置は受信した測定結果から腫瘍部が所定の温度に上昇したことを確認すると、前記第2照射部に対し交番磁場または超音波の照射を中止する命令を発して、治療を制御することが好ましい。
前記第2照射部が、被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位に対し交番磁場または超音波を照射している際に、前記第1照射部が該腫瘍部位に対し超音波、電磁波またはX線を照射し、前記撮像部が該照射により被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位をスキャンすることによって、腫瘍部位を確認しながら治療を行うように制御されていることも好ましい。
本発明の製剤に含有される被覆磁性粒子によれば、疾患部位、腫瘍病巣への選択的な送達を可能とすることができるため(ターゲティング能力)、本発明の製剤は、治療剤、造影物質、薬物輸送担体に応用されるほか、発熱を利用した温熱療法、さらにはこれらを組み合わせたがんの診断と治療に用いることができる。
また、本発明の被覆磁性粒子含有製剤の製造方法によれば、有機溶剤を用いることなく被覆磁性粒子を調製することができるために、得られる被覆磁性粒子含有製剤は生体に対する安全性が高い。
さらに、本発明の診断治療システムは、疾患部位、腫瘍病巣の検査、診断から治療までが1つのシステムとして実施することも可能である。従って、今まで別々行われていた診断と治療とを同時的もしくは連続的に行なうことができ、患者に与える負担が少なくて済む。
図1は、本発明の製剤中に含有される被覆磁性粒子の概念を模式的に示す図である。複数の磁性微粒子が内包された例を示す。 図2は、本発明の製剤中に含有される被覆磁性粒子の好ましい態様を示す。生理活性物質5および抗腫瘍活性物質6は、脂質膜4の外部のほかに、その膜内にも内包されてもよい。 図3は、本発明の被覆磁性粒子含有製剤を用いた診断治療システムの好ましい実施態様を示す。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、被覆磁性粒子を含有する製剤である。他に製剤助剤などを必要に応じて含む。
被覆磁性粒子1は、図1に示されるように、分子内に水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、メルカプト基、スルホ基、ジチオ基、チオカルボキシ基、およびジチオカルボキシ基から選ばれる結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物3(以下、単に有機化合物3ということがある)が化学結合により結合された磁性微粒子2を、脂質膜4で被覆すること、即ち該磁性微粒子を脂質膜内に内包することにより形成されている。なお、図1において、被覆磁性粒子は、複数個の磁性微粒子が脂質膜で被覆されてなる態様を示すが、1個の磁性微粒子が脂質膜で被覆されていてもよい。この被覆磁性粒子は、さらに下記式
0.05≦R/(r×100)≦1.5
(式中、Rは被覆磁性粒子の平均粒子径を表し、rは全被覆磁性粒子に含まれる磁性微粒子の平均粒子径を表す。)
を満たすことを特徴としている。
また、本発明に用いられる被覆磁性粒子1は、図2に示すように、有機化合物3が化学結合した磁性微粒子2を脂質膜4で被覆され、さらにその表面には、連結物質7を介して、抗体などの生理機能性物質5や抗腫瘍活性物質6が結合されていることが好ましい。なお、図2においても、複数個の磁性微粒子が脂質膜で被覆されている態様を示すが、1個の磁性微粒子が脂質膜で被覆されていてもよい。また、図2においては、生理機能性物質および抗腫瘍活性物質が結合されている態様を示すが、後述するような生理機能性物質、付加的安定化物質、薬理活性物質、薬理的活性キレート物質、抗腫瘍活性物質、免疫増強物質、細胞融合物質および遺伝子導入媒介物質から選ばれる少なくとも1種の生理活性物質が結合されていればよい。このように、生理活性物質が結合していることにより、被覆磁性粒子は腫瘍部に検出用として送達されるだけでなく、腫瘍組織に特異的に作用することができる。したがって、腫瘍組織の検出能に優れた造影剤として用いることができるとともに、交番磁場照射または超音波照射などのエネルギー照射を用いた温熱療法により被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を特異的に上昇させ、さらに生理活性物質により腫瘍組織に作用することの可能な治療剤として用いることもできる。なお図1および2は、本発明の製剤に含有される被覆磁性粒子の概念を模式的に示すものであり、具体的な態様はこれに限定されるものではない。
本明細書で、「がん」は、悪性腫瘍を指し、単に「腫瘍」ということもある。脂質膜もしくはリポソーム膜内に「内包」されるとは、脂質膜内またはリポソーム内に封入されてその脂質膜と会合しているか、または脂質膜内部に閉じ込められている水相(内部水相)中に存在している状態の両方を含むものとする。
磁性微粒子は、基本的には、その主成分として、磁鉄鉱、Fe23、Fe34、混合フェライト、有機強磁性材料を包含する他の鉄含有化合物など何れも使用することできるが、最大の磁力を示すFe34であるフェライトは磁気応答性が良好であり、特に好ましい。磁気特性が良好なフェライト(Fe34とδ−Fe23の固溶体)のナノレベルサイズの微粒子が、4〜25℃、中性pH付近の温和な条件下の制御沈殿法によって合成できる技術が開発された(特許文献1)。本発明の製剤では、このような混合フェライト微粒子を好適な磁性微粒子として使用する。上記フェライトをコアとする磁性微粒子には、さらにZn、Co、Niなどの各種金属元素を含有させて磁気特性を制御することができる。
磁性微粒子の平均粒子径は、1nm〜30nm、好ましくは5nm〜25nm、さらに好ましくは5nm〜20nmの範囲であることが望ましい。
被覆磁性粒子は、磁性微粒子を1個以上、フェライトコアとして含有している。その個数は、磁性微粒子の平均粒子径、被覆磁性粒子の平均粒子径、さらには本発明の製剤として必要とされる磁気特性などにより変化するため、必要に応じて適宜調整する。
他方、このような磁性微粒子を1個以上含有する被覆磁性粒子の平均粒子径については、受動的ターゲティング能力を持たせるためにその粒子径のサイジングも考慮する必要がある。特許2619037号公報には、粒径3000nm以上のリポソームを排除することにより、肺毛細血管における塞栓形成が回避されると記載されている。しかし150〜3000nmの粒径範囲のリポソームは、必ずしも抗腫瘍性とはならない。このため、造影剤の目的に応じて、粒子径が適切に設定される必要がある。本発明では、被覆磁性粒子の平均粒子径は、通常50〜300nm、好ましくは50〜200nm、より好ましくは50〜150nmである。例えば腫瘍部分への選択的な送達目的の場合には、特に80〜150nmが好ましい。その粒子径を100〜200nm、より好ましくは110〜130nmの範囲に揃えることにより癌組織へ選択的に被覆磁性粒子を集中させることが可能となる(「EPR効果」)。固形癌組織にある新生血管壁の孔は、正常組織の毛細血管壁窓(fenestra)の孔サイズ、30〜80nm未満に比べて異常に大きく、約100nm〜約200nmの大きさの分子でも血管壁から漏れ出る。EPR効果は、癌組織にある新生血管壁では、正常組織の微小血管壁より透過性が高いことによるものであるため、血中滞留性の向上が図られねばならない。被覆磁性粒子が特に大きい粒子ではないため、細網系内皮細胞による捕獲の対象になりにくい。
本発明の製剤を造影剤として用いる場合、被覆磁性粒子の平均粒子径が上記の範囲にあると、腫瘍組織の検出能が向上する。一方、本発明の製剤を腫瘍に対する温熱療法用治療剤として用いる場合、平均粒子径がこの範囲にあるとエネルギー照射により被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度が限定的に上昇し、正常細胞にほとんど影響を与えることなく腫瘍組織の温度を上昇させることができる。エネルギー照射が交番磁場照射である場合に、交番磁場による磁性微粒子の回転性の面からは、平均粒子径が10nm以上であることが好ましい。10nm未満では、磁性微粒子の回転運動性が悪く、その結果として昇温効率が劣る。具体的には、平均粒子径が10nm〜30nm、好ましくは10nm〜25nm、さらに好ましくは10nm〜20nmの範囲であることが望ましい。
一方、磁性微粒子は、核磁気共鳴画像法(MRI)用造影剤のコントラスト性能の面(特にT2緩和時間)または温熱療法の発熱素子としての機能面からは、粒子径と磁気モーメントとの相互依存性のためにその効力に影響することを考慮すると、なるべく大きい粒子径とするべきである。他方、被覆磁性粒子の粒子径は、生物学的な各種の特性、特に標的指向性から、全径にある大きさ以下である制約が課せられる。従って、両者のパラメータ妥協点を見出すための平均粒子径の好ましい範囲として、この被覆磁性粒子は、磁性微粒子の粒子径と被覆磁性粒子の粒子径との関係を示す下記式を満たすことが要請される。
0.05≦R/(r×100)≦1.5、好ましくは
0.05≦R/(r×100)≦1.0、さらに好ましくは
0.05≦R/(r×100)≦0.8
(式中、Rは被覆磁性粒子の平均粒子径を表し、rは磁性微粒子の平均粒子径を表す。)
被覆磁性粒子が上記式を満たすことにより、構成員の磁性微粒子のサイズと全体粒子のサイズについて、好適な範囲内に入っていることが保証される。これにより被覆磁性粒子を腫瘍患部に特異的に送達することができ、腫瘍組織の検出能を向上させ得る造影剤として、あるいは交番磁場照射または超音波照射などのエネルギー照射を伴う温熱療法により被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を限定的に上昇させ得る治療剤として用いることもできる。
この磁性微粒子に化学結合されている有機化合物は、分子内に水酸基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、カルバモイル基(-CONH2)、アミノ基(-NH2)、メルカプト基(-SH)、スルホ基(-SO3H)、ジチオ基(-SS-)、チオカルボキシ基(-C(S)OHまたは-C(O)SH)、およびジチオカルボキシ基(-CSSH)から選ばれる結合基(a)を少なくとも2個以上有する有機化合物である。一般に化学結合は共有結合、イオン結合、金属結合、配位結合(キレート結合も含む)に分類される。従って有機化合物はこれらの化学結合のいずれでも結合してよい。これらの結合基(a)は、それぞれが磁性微粒子表面に化学結合することで、該有機化合物の多価結合性の効果が発揮される。すなわち有機化合物は少なくとも2以上の結合基(a)が、磁性微粒子に結合しているため、これらの結合基を介して磁性微粒子に強固に結合することになる。こうした多価結合性の有機化合物は、複数の磁性微粒子同士を結び付け、さらに磁性微粒子2を被覆する脂質膜4とも結合するために、いわゆる「コネクタ」としての役割を担う。その結果、被覆磁性粒子全体として構造的に安定化する。このような有機化合物3の存在により、磁性微粒子は脂質膜内に安定的に内包される。場合によっては、磁性微粒子に結合した有機化合物3は、その他端に後記の生理活性物質、薬効物質などを結合していてもよい。被覆磁性粒子を担体にして送達される生理活性物質、薬効物質が親油性であれば、磁性微粒子2を被覆する脂質膜4とも好ましく相互作用することが期待される。
かかる有機化合物としては、結合基(a)を2個以上有していれば特に限定されない。結合基(a)は、同一の官能基であってもよく、または異なる官能基の組合せでもよい。具体的には、結合基(a)を少なくとも2個以上有する化合物(A)の所定の炭素原子の位置に、水素原子、または有機基(b)を有する有機化合物が挙げられる。好ましくは、化合物骨格の少なくとも一端が分岐した構造を有する形態の化合物である。
化合物(A)の基本骨格となる化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メルカプトアミン、6−アミンヘキサンチオール、2−メルカプトプロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リンゴ酸、オキサロ酢酸、2−ケトグルタル酸、セリン、スレオニン、システイン、システイン酸、シスチン、Nアセチルシステイン、システインエチルエステル、ジチオスレイトールなどが挙げられる。これらの中から選ばれる1つの化合物であってもよく、あるいは2種以上を組み合わせてもよい。またその例示に限定されるものではない。
有機基(b)としては、特に限定されず、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキレンオキシ基、脂肪族炭化水素基、ポリオキシアルキレン基等が挙げられ、さらに置換基を有していてもよい。有機基(b)と脂質膜とを、共有結合、イオン結合、疎水結合、水素結合などの各種結合を介して相互作用させることにより磁性微粒子と脂質膜とを結び付ける役割を有機化合物が持つことが好ましい。この観点からは、有機基(b)として脂質膜のリン脂質とも相互作用できる疎水性の中長鎖アルキル基または解離性の基が好ましい。従って、これらの有機基(b)の中でも、炭素数3〜30程度である、直鎖状の脂肪族炭化水素基、ポリオキシアルキレン基を用いて、化合物(A)に側鎖を形成することが望ましい。
有機基(b)を化合物(A)の所定の炭素原子の位置に有する有機化合物は、特に限定されず従来公知の方法により調製される。
図2に示すように、有機化合物3は、2個以上有する結合基(a)を介して磁性微粒子2の表面に化学結合され、さらに脂質膜4は有機基(b)の一部を取り込んで形成されるため、脂質膜4に強固に接合される。したがって、有機化合物を介して磁性微粒子と脂質膜とが強固に結合されるため、人体内や保存時における安定性が高く、また、例えば温熱治療時のエネルギー照射により被覆磁性粒子が分解されることがないため、温熱治療を効率的に行うことができる。
このような有機化合物が化学結合された磁性微粒子は、有機化合物の存在下、所定の条件で磁性微粒子を生成することにより行われる。
具体的には、上記の官能基を2個以上有する有機化合物の水溶液または分散液に、Fe2+イオンなどの金属イオンを含む水溶液を滴下し攪拌混合する。このとき、反応液は、有機化合物の活性を損なわないように、pHを7〜10、反応液の温度を3℃〜30℃となるように管理することが好ましい。pHは、pH緩衝液として酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム等やこれらの混合液を用いて上記範囲となるように調整される。また、このときの酸化条件としては攪拌によって空気中の酸素を取りこむ程度の緩やかな条件でよいので、有機化合物を変質させたりその活性を損なったりすることなく、フェライトに有機化合物を固定することができる。このように温和な条件下で形成される磁性微粒子は、その組成が均一であり磁気特性も揃ったものが得られる。なお、酸化条件は発明の目的を損なわない範囲で、亜硝酸や過酸化水素などを用いて、公知の方法を併用してもよい。
金属イオンを含む水溶液を滴下混合すると、金属イオンが有機化合物の所定の基に吸着され、さらにこのFe2+イオンの一部が酸化されてFe3+に酸化され、スピネルフェライト層の生成反応が起こる。このスピネルフェライト層の表面には水酸基が生成しており、反応液中のFe2+イオンがさらに吸着し、酸化されて再びスピネルフェライト層が形成される。このプロセスが繰り返され、フェライトが生長し、有機化合物が化学結合した磁性微粒子が形成される。また、金属イオンとして、Fe2+イオンの他に、Co2+イオン、Ni2+イオン、Zn2+イオンなどの他の金属イオンを添加することにより、各種のフェライトを調製することができる。反応は、磁性微粒子が所定の大きさとなるまで行われる。さらに本発明では、上述したように化合物(A)の基本骨格に有機基(b)を結合させた有機化合物を磁性微粒子形成時に予め存在させて磁性微粒子を調製してもよいし、化合物(A)の基本骨格を有する有機化合物のみで磁性微粒子を形成した後に、有機基(b)を化合物(A)に結合させてもよい。
また、有機化合物の水溶液または分散液に、予め磁性微粒子の核としてフェライト微粒子を分散させておき、上述の方法にしたがって、このフェライト微粒子の表面に、有機化合物が結合したスピネルフェライト層を形成させることも好ましい。この製造方法により得られる有機化合物が化学結合した磁性微粒子は、結晶構造が均一なフェライトの核を有しているため、電磁波をあてて全身の断層像を作成する核磁気共鳴画像法(MRI)診断の造影剤として用いる場合、正確な造影を行うことができる。
上記のようにして得られる、有機化合物が化学結合された磁性微粒子は分散液の状態で得られるが、この磁性微粒子を後述する被覆磁性粒子の製造に用いる場合には、磁性微粒子を所定の方法で精製し、水性媒体中に分散させることが好ましい。水性媒体には、蒸留水、局方注射用水、純水などの水のほか、生理食塩水、各種緩衝液、塩類などを含む水溶液などが用いられる。
被覆磁性粒子1の構成において、有機化合物3を結合した磁性微粒子2は、該有機化合物を介してさらに脂質膜4により被覆される(図1および2)。この脂質膜は、磁性微粒子を被覆することにより水性媒体中で良好に分散させ、分散安定性に優れる磁性微粒子を含有する製剤を可能とするものである。残留磁化が大きい磁性微粒子では、お互いに磁気凝集することになり、液体中で沈殿を生じやすい。さらに脂質膜は、本来生体適応性であり、生体組織と親和性が高く、特に疎水性組織への指向性を磁性微粒子に付与することができる。脂質膜の構成成分、膜表面の修飾などの設計により、生理活性物質、薬効物質などを付加することもできる利点もある。
磁性微粒子を被覆する脂質膜は、一般には脂質多重膜である。好ましくは2つの中長鎖脂肪酸残基もしくは中長鎖アルキル基と親水基とを有する両親媒性分子で形成される脂質膜の多重層である。そうした脂質膜構成成分として、通常リン脂質および/または糖脂質が好ましく使用される。このようなリン脂質を基本とする脂質二重膜から構成される小胞は一般に「リポソーム」と称されている。
リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリンなどに代表されるリン脂質が挙げられる。卵黄、大豆その他の動植物材料に由来するリン脂質、それらの水素添加物、水酸化物の誘導体といった半合成のリン脂質、または合成加工品など、限定されることなく用いられる。リン脂質の構成脂肪酸も特に限定されることはなく、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のどちらでもよい。
具体的な中性リン脂質の例として、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられる。
本発明においては、脂質膜がリポソームであることが好ましく、リポソームが正の表面電荷を有することがさらに好ましい。リポソームが正の表面電荷を有するためには、上記中性リン脂質とともに、カチオン性リン脂質、カチオン性脂質、およびリン脂質と相溶する長鎖のカチオン性化合物から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。リポソーム膜が正の表面電荷を有することにより、本発明の製剤中に含有される被覆磁性粒子を負の電荷を有する腫瘍細胞へ特異的に導入することができる。
カチオン性リン脂質として、ホスファチジン酸とアミノアルコールとのエステル、例えばジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)もしくはジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルなどが挙げられる。一方、カチオン性脂質の例としては、1、2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、N、N−ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2、3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチル]−N、N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)およびN−[1−(2、3−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N、N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(DMRIE)などが挙げられる。また、長鎖のカチオン性化合物としては、例えば炭素数10以上のアンモニウ塩やホスホニウム塩などのオニウム塩などが挙げられる。
また、糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
なお、上述のリン脂質は、後述する生理活性物質を結合するために、本発明の目的を逸脱しない範囲で生理活性物質と結合可能な官能基を導入させてもよい。
リポソームの膜構成成分として、上記脂質の他に必要に応じて他の物質を加えることもできる。例えばエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、膜安定化剤として作用するステロール類、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステルなどが挙げられる。ステロール誘導体もリポソームの安定化に効果があることが示されている(特開平5−245357号公報)これらのうち、コレステロールが特に好ましい。
ステロール類の使用量として、リン脂質1重量部に対して0.05〜1.5重量部、好ましくは0.2〜1重量部、より好ましくは0.3〜0.8重量部の割合が望ましい。0.05重量部より少ないと混合脂質の分散性を向上させるステロール類による安定化が発揮されず、1.5重量部を超えるとリポソームの形成が阻害されるか、形成されても不安定となる。
他に添加できる化合物として、負荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなど、正電荷を与える化合物としてステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。
本発明では、ポリエチレングリコール(PEG)を、磁性微粒子を被覆するリポソームの一成分として使用することができる。すなわちPEGをリポソームに付けることにより、後記の「連結物質」としての役割または新たな機能を付与することができる。例えば、リポソームが親水的傾向を有することになるか、免疫系から認識されにくくなるか、あるいは血中安定性を増すなどの効果が期待できる。具体的には脂質成分は肝臓に貯まりやすいために肝臓への集積を目的とする場合には、PEGを使用しないか、あるいはPEG含有量の少ないリポソームを用いる。反対に他臓器の集積の場合には、PEGの使用により肝臓に集まりにくくなる理由で、PEG化リポソームの使用が推奨される。PEGのオキシエチレン単位の長さ、導入する割合を変えることによりあるいはPEGに何らかの修飾をさらに加えることによりその機能を調節することができる。PEGとして、オキシエチレン単位が10〜3500のポリエチレングリコールが好適である。またPEGを使用する場合の使用量は、該リポソームを構成する脂質に対して0.1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%程度含む。
リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。具体的にはリポソーム膜構成成分として膜中に含めるコレステロールには、必要に応じリンカーを介してその先にポリアルキレンオキシド基を結合させてもよい。リンカーには、短鎖のアルキレン基、オキシアルキレン基などを用いる。特開平09−3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、効率よく種々の機能性物質を共有結合により固定化することができ、リポソームの形成成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。
リポソームのPEG化は、公知の技術を利用することができる。PEGが結合するアンカー(例えばコレステロールやリン脂質など)を膜構成成分であるリン脂質と混ぜてリポソームを作製し、そのアンカーに活性化PEGを結合させてもよい。なお、リポソーム表面に導入されたポリエチレングリコール基は、後記「生理活性物質」と反応しないため、そうしたリポソーム表面上に「生理活性物質」を固定化することは困難である。代わりに、PEG先端に何らかの修飾をさらに施したPEGをリン脂質に結合させ、これをリポソーム構成成分として含めてリポソームを作製することもできる。
上記PEGに代わり、公知の各種ポリアルキレンオキシド基、−(AO)n−Yをリポソーム表面に導入してもよい。ここでAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で、1〜2000の正数である。また、Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基を表す。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AOで表される)として、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基などが挙げられる。
nは1〜2000、好ましくは10〜500、さらに好ましくは20〜200の正数である。
nが2以上の場合、オキシアルキレン基の種類は、同一のものでも異なるものでもよい。後者の場合、ランダム状に付加していても、ブロック状に付加していてもよい。ポリアルキレンオキシド鎖に親水性を付与する場合、AOとしてはエチレンオキシドが単独で付加したものが好ましく、この場合、nが10以上のものが好ましい。また種類の異なるアルキレンオキシドを付加する場合、エチレンオキシドが20モル%以上、好ましくは50モル%以上付加しているのが望ましい。ポリアルキレンオキシド鎖に親油性を付与する場合はエチレンオキシド以外の付加モル数を多くする。例えばポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物を含有するリポソームが好ましい。
Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基である。アルキル基として、炭素数1〜5の、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。機能性官能基は、ポリアルキレンオキシド鎖の先端に糖、糖タンパク質、抗体、レクチン、細胞接着因子といった「生理活性物質」を付するためのもので、例えばアミノ基、オキシカルボニルイミダゾール基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基といった反応性に富む官能基が挙げられる。
脂質膜に導入された各種ポリアルキレンオキシド基は、ポリエチレングリコールと同様に後記の「連結物質」としての役割を発揮する。先端に「生理活性物質」を結合しているポリアルキレンオキシド鎖(連結物質)が固定化されたリポソームは、ポリアルキレンオキシド鎖導入の効果に加えて、ポリアルキレンオキシド鎖に邪魔されることなく「生理活性物質」の機能、例えば「認識素子」として特定臓器指向性、がん組織指向性などの作用が充分に発揮される。
ポリアルキレンオキシド基を有するリン脂質または化合物は、一種類を単独で使用することができ、あるいは二種以上のものを組み合わせて使用することもできる。その含有量は、リポソーム膜形成成分の合計量に対し、0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜25モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。0.001モル%未満では期待される効果が小さくなる。
リポソームへのポリアルキレンオキシド鎖の導入は、公知の技術を利用することができる。ポリアルキレンオキシドが結合するアンカー(例えばコレステロールやリン脂質など)を膜構成成分であるリン脂質と混ぜてリポソームを作製し、そのアンカーに活性化ポリアルキレンオキシドを結合させてもよい。このような方法では、リポソーム調製後にリポソーム膜表面上で多段階の化学反応を行う必要があり、このため目的とする前記「生理活性物質」の導入量が低く制限され、また反応による副生成物や不純物が混入し、リポソーム膜へのダメージが大きいなどの問題点がある。
これに代わる好ましい製造方法として、原料のリン脂質類の中に、予めリン脂質ポリアルキレンオキシド誘導体などを含めてリポソームを作製するのがよい。これには、ホスファチジルエタノールアミンなどのポリエチレンオキシド(PEO)誘導体、例えばジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレンオキシド(DSPE−PEO)などといった修飾リン脂質が提案された(特開平7−165770号公報)。さらに特開2002−37883号公報には、血中滞留性を高めた水溶性高分子修飾リポソームを作製するための高純度ポリアルキレンオキシド修飾リン脂質が開示されている。そうしたリポソームを作製する際にモノアシル体含量が低いポリアルキレンオキシド修飾リン脂質を使用すると、リポソーム分散液の経時安定性が良好であったことが記載されている。
被覆磁性粒子内において、「連結物質」は、リンカーとして、各種の生理活性物質、薬効物質などを結合させている。生理活性物質、薬効物質が低分子化合物の場合、それらがリガンドとして受容体などに結合する際に被覆磁性粒子による立体障害のために接近が妨げられることがある。リガンドが適当な長さを持つスペーサとしての連結物質を介して被覆磁性粒子に結合しておれば、そうした障害も回避できる。連結物質として、上記のポリエチレングリコール鎖、ポリアルキレンオキシド鎖、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)誘導体が好適である。ヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リンなど)を含むことがある炭化水素鎖でもよい。そうした炭化水素鎖は、炭素数が2〜50、好ましくは3〜40、より好ましくは4〜30であり、必要に応じてさらに官能基、アルキル基、アリール基で置換されていてもよい。上記の連結物質の末端または鎖の途中に、チオール基、エポキシ基、アミノ基、カルボシキル基、ヒスチジンタグアビジン、ストレプトアビジン、ビオチンなどの結合基をさらに設けていてもよい。またアミノ基、カルボキシル基、チオール基などで修飾されたオリゴヌクレオチド(核酸塩基数3〜100)またはポリペプチド(アミノ酸残基数3〜50)でもよい。
連結物質は、脂質膜を構成する脂質の誘導体として脂質膜を構成する一員であってもよく、あるいは上述したようにリン脂質、コレステロールなどに結合していてもよい。
本発明の被覆磁性粒子は、上記の連結物質7または有機化合物3を介して「生理活性物質」を結合させている。リポソームなどの脂質層で被覆した被覆磁性粒子は、さらにリポソームの脂質膜表面にも直接「生理活性物質」を結合させてもよい。生理活性物質は、有機化合物3に結合して、脂質膜内または膜中に存在する形態であってもよい。「生理活性物質」には、生理機能性物質、付加的安定化物質、薬理活性物質、薬理的活性キレート化物質、抗腫瘍活性物質、免疫増強物質、細胞融合物質、遺伝子導入媒介物質などが挙げられる。このような生理活性物質を被覆磁性粒子に結合させて、磁気的な操作により目標の部位へ選択的に集中させることも可能である。
「生理機能性物質」には糖、糖タンパク質、アプタマー、抗体、抗原、レクチン、サイトカイン、成長因子、調整因子、生理活性ペプチド、細胞接着因子、ホルモンといった生理物質、代謝物質、アルカロイドなどの生理機能を発揮する物質が挙げられる。
抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれでもよい。細胞表面に存在する各種の糖タンパク質と結合する抗体が例示される。例えばCD44、CD54、CD56、Fasなどが挙げられる。さらにがん細胞に特異的に発現する抗原、または「腫瘍関連抗原」に対する抗体が望ましい。これにはMN、HER2、MAGE3、VEGF、CEAなどの抗原が公知である。
好ましい抗体として、正常な細胞には無く、さまざまな種類のがん細胞や、白血病細胞などに多く存在する「WT1タンパク質」に対する抗体も例示される。WT1タンパク質の一部分(9個のアミノ酸-WT1ペプチド)ががん細胞の表面にあるHLAという分子に結合して存在し、これががん細胞の目印となることが証明されている。上記抗体は、WT1ペプチドを用いて定法により調製することができる。
付加的安定化物質は、溶媒和などによって結合した磁性微粒子の構造を安定化させる物質であり、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、セルロース誘導体、ムコ多糖類、タンパク質、ポリペプチド、ポリアミノ酸、ポリヌクレオチドなどが挙げられる。
薬理活性物質は、ここでは主に治療用の生物活性または薬効を有する化合物であり、例えば抗腫瘍活性物質、抗感染症化合物、抗ウィルス物質、抗生物質、抗炎症性化合物、化学療法剤、循環系薬剤、消化管系薬剤、神経薬物などが挙げられる。
薬理的活性キレート化物質は、錯体形成による解毒化作用、錯化による安定化作用を有する物質であり、例えばEDTA、DTPA、サイクレン、ポリカルボン酸、ポリアミノ酸、ポルフィリン、カテコールアミンなどが挙げられる。
抗腫瘍活性物質は、腫瘍縮小効果を有する物質であり、例えば抗生物質、植物アルカロイド、アルキル化剤、代謝拮抗物質などが含まれる抗腫瘍剤、血管新生阻害薬、腫瘍壊死因子などが挙げられる。血管新生阻害剤としては、TNP−470(AGM−1470、フマギリンという真菌分泌物の合成アナログ;武田薬品工業株式会社(大阪))、アンジオスタチン (ハーバードメディカルスクールChildren's Hospital, Surgical Research Lab.)およびインテグリンαVβ3拮抗薬(例:インテグリンαVβ3のモノクローナル抗体、The Scripps Research Institute, LaJolla, CA)などがある。
免疫増強物質は、リンパ球、マクロファージを含む免疫細胞の活性を増強する作用がある物質であり、例えばインターフェロン、クレスチン、ピシバニール、レンチナン、IFA、OK-432などが挙げられる。
細胞融合物質は、細胞融合操作に使用し、細胞融合を促進する物質であり、例えばポリアルキレングリコール、アルキルポリアルキレングリコール、アリールポリアルキレングリコール、アルキルアリールポリアルキレングリコールとそれらの誘導体などが挙げられる。
遺伝子導入媒介物質は、遺伝子導入のキャリヤーとなる物質であり、例えば、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコールなど)、ポリイミン(スペルミン、スペルミジン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、プロタミンサルフェートなど)、ウィルスベクター、プラスミドベクターなどが挙げられる。
なお、転移温度を有するリン脂質を含むリポソームの光線力学療法(Photodynamic therapy、PDTともいう)用の光増感剤とがん温熱療法との組み合わせも可能であり、治療効果が増強されることが期待される。光増感性化合物、例えばポルフィリン類、5−アミノレブリン酸、クロリン類、フタロシアニン類などを結合もしくは内包するリポソームを用いた被覆磁性粒子の製剤を患者に投与した後、一定時間経過してから身体の外から加温する場合、マイクロ波や電磁波を用いる局所温熱療法が主に行われる。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は製剤化に際し、必要に応じてさらに製剤助剤として薬理学的に許容される緩衝剤、安定化剤、α‐トコフェロールなどの抗酸化剤、粘度調節剤、キレート化剤なども含めてもよい。これらは、酸化還元反応、変質、例えば凝集、沈殿などを防止するために適宜使用される。本発明の製剤は、含有する脂質膜にもその内部水相にも有機溶媒が実質的に含まれていないことを特徴としている。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、上記の有機化合物が化学結合した磁性微粒子の表面を、脂質膜で被覆することができれば特に限定されず、従来公知の振盪法等を用いて調製することもできる。しかしながら、従来の方法は、リン脂質をクロロホルムなどのクロル系溶剤に溶解する必要があるため、製剤中に除去できなかったクロル系溶剤が残留する恐れがあり、人体に対する安全性に対し問題が発生する場合があった。したがって、本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、実質的にクロル系溶剤などの有機溶剤を用いないで製造することが可能な、超臨界二酸化炭素を用いた製造方法により調製することが好ましい。「実質的に」とは、製剤における残存有機溶媒の濃度の上限値が10μg/Lであることを意味する。なお、以下の記載において、超臨界二酸化炭素には亜臨界状態の二酸化炭素を含むものとする。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤の好ましい製造方法は、
圧力容器内で上記の脂質膜構成成分と液化二酸化炭素とを混合させながら、該圧力容器内を加温加圧して液化二酸化炭素を超臨界状態として、脂質膜構成成分と超臨界二酸化炭素とを混合するとともに、さらに、上述のようにして製造された「有機化合物が化学結合した磁性微粒子」の分散液を添加し混合する第1の工程と、
次いで、前記工程で混合液を得た後に、該圧力容器内を減圧して二酸化炭素を排出することにより磁性微粒子を脂質膜で被覆し、被覆磁性粒子の水性分散液を調製する第2の工程と、を有する。
さらに、被覆磁性粒子の水性分散液を、100〜1000nmの孔径を有する濾過膜で濾過する第3の工程を有することも好ましい。
以下、各工程に沿って説明する。
第1の工程では、まず圧力容器内で脂質膜構成成分と液化二酸化炭素とを混合させながら、圧力容器内を二酸化炭素が臨界状態となるように圧力及び温度を調整し、脂質膜構成成分と超臨界二酸化炭素とを混合する。
本発明の製造方法で使用する超臨界状態の二酸化炭素の好適な圧力は、50〜500kg/cm2、好ましくは100〜400kg/cm2である。また好適な臨界状態の二酸化炭素の温度としては、25〜200℃、好ましくは31〜100℃、さらに好ましくは35〜80℃である。これらの範囲内で、温度および圧力を適宜選択して組み合わせることにより、超臨界状態を確立するのが好ましい。また攪拌条件は特に限定されず、好適な条件を適宜選択して行われる。
次いで、脂質膜構成成分と超臨界二酸化炭素とを混合するとともに、有機化合物が化学結合した磁性微粒子の分散液を添加し混合する。分散液は、一度に添加してもよく、間欠的に添加してもよいが、超臨界状態が維持されるように制御しながら行う。
第2の工程では、第1の工程で混合液を得た後、圧力容器内を減圧して混合液から二酸化炭素を排出し、磁性微粒子が脂質膜で被覆された被覆磁性粒子の水性分散液が生成する。
磁性微粒子に結合している有機化合物は、上記のように有機基(b)を有しており、脂質膜を形成する際にその一部を取り込むため、脂質膜に接合されると考えられる。したがって、有機化合物を介して磁性微粒子と脂質膜とが強固に結合されるため、人体内や保存時における安定性が高く、また、例えば温熱治療時のエネルギー照射により被覆磁性粒子が分解されることがないため、温熱治療を効率的に行うことができる。この工程により、1個の磁性微粒子または複数個の磁性微粒子が脂質膜で被覆され、このような被覆磁性粒子が分散している水性分散液が得られる。
第3の工程では、第2の工程により得られた被覆磁性粒子の水性分散液を、100〜1000nmの孔径を有する濾過膜で濾過する。
具体的には、濾過膜として100〜1000nmの孔径のフィルターを装着したエクストルーダーに通すことにより、100〜150nmの被覆磁性粒子を効率よく調製することができる。このように被覆磁性粒子のサイズおよびその分布を調整することにより、被覆磁性粒子含有製剤の目的とする効果を得ることができる。
上記の被覆磁性粒子は、多重層膜(multilamellar vesicles; MLV)からなる被覆磁性粒子と比較して、被覆磁性粒子の投与量、換言すると投与脂質量が大きくならないという利点がある。これに対して従来のリポソーム作製方法によると、様々なサイズ、形態のMLVがかなりの割合で存在することが多く、一枚膜または数枚膜のリポソームの比率を高めるためには、さらに超音波を照射するか、一定孔サイズのフィルターに何度も通すなどの操作を必要としていた。しかしながら、本発明のようにさらに、超臨界二酸化炭素を使用してリポソームを調製することにより、一枚膜リポソームまたは数枚膜からなるリポソームを効率よく調製することができ、さらにリポソーム内への薬剤の内包率を向上させることができる。
このようにして得られた被覆磁性粒子の水性分散液を、上記のような濾過膜で濾過することにより、本発明の被覆磁性粒子含有製剤を調製することができるが、さらに、遠心分離、限外濾過などの方法を用いて、水性媒体を分離して濃縮してもよい。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、医用製剤として検査診断のための画像化剤ならびに治療剤に用いることができる。具体的にはX線造影剤、MRI(核磁気共鳴画像法)用造影剤または超音波造影剤などの造影剤、またはがんなどの治療剤、好ましくは温熱療法用治療剤として用いることができる。
X線造影剤は、血管、尿管、輸卵管などの管腔部位に投与され、管腔の形状、狭窄などの診断に使用されている。しかしながら、従来の化合物は組織や疾患部位と相互作用をすることなく管腔部位から速やかに排出されるために、組織や疾患部位、特に癌組織をより詳細に診断する目的には役立たない。このため目標とする組織もしくは疾患部位に選択的に集積し、その周囲またはその他の部位と明瞭なコントラストで区別できる画像を提供するX線造影剤が望まれている。
また、MRI(Magnetic resonance imaging, 磁気共鳴画像法)による検査・診断は、放射線被曝の問題がなく、非侵襲的に生体の任意断面の画像を得られることから、急速に普及している画像診断技術である。コントラストを増強して鮮明な画像を得るために、プロトンなどの緩和時間を変動させるMRI用造影剤が使用される。現在、使用されているMRI用造影剤として、ガドリニウム−ジエチレントリアミン五酢酸(以下、「Gd−DTPA」と略す)錯体化合物が唯一のコントラスト増強剤である。体内に入った造影剤のGd−DTPAは、循環血流により組織に運ばれる。しかし造影剤自体には、組織を識別する能力を有しない。
超音波画像診断法は、通常1〜10MHzの周波数域の超音波を、変換器を介して被験者体内に浸透させ、超音波が体組織や体液の界面と相互作用することに基づいている。すなわち超音波信号の染像は、そうした界面における音波の示差的反射・吸収に由来している。この診断法においては、気体または気泡がマイクロカプセルに封入された超音波造影剤が用いられている。しかしながら、気体または気泡の封入量は他の要因にも左右されるために必ずしも多くはない。したがって、大量に投与しないとコントラスト効果が充分に得られないことになる。
そこで本発明の被覆磁性粒子を体内に導入して、X線造影剤、MRI(核磁気共鳴画像法)用造影剤または超音波造影剤として使用すれば、目標とする組織もしくは疾患部位に選択的に集積し、その周囲またはその他の部位と明瞭なコントラストで区別できる画像を提供することができる。つまり、本発明の被覆磁性粒子は、その粒子径や表面電荷により組織もしくは疾患部位に選択的に集積することができ、脂質膜表面に結合した生理活性物質により組織を識別する能力を付与することができ、さらに磁性微粒子は生体(水)に比べて超音波の伝播速度が速いことを利用して腫瘍組織の造影を効果的に行うことができる。そうした特性を利用して、本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、X線造影剤、超常磁性MRI(核磁気共鳴画像法)造影剤または超音波造影剤として好適に用いることができる。
具体的には、被検者の静脈内に、本発明の被覆磁性粒子含有製剤の投与が開始されてから1分以上48時間以内、好ましくは10分以上36時間以内に、超音波画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、またはX線画像診断装置においてスキャンを行うことにより、腫瘍組織の検出能を向上させることができる。一方、被検者の腫瘍組織の近傍に、直接被覆磁性粒子含有製剤を注入してもよく、注入が開始されてから0.5分以上36時間以内、好ましくは10分以上24時間以内に、超音波画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、またはX線画像診断装置においてスキャンを行うことにより腫瘍組織の検出能を向上させることができる。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤は、上記検査診断のための画像化剤として用いると同時に、生理活性物質、薬効物質、例えば抗腫瘍剤などを脂質膜内外に結合もしくは内包しているため、各種疾患の治療剤として用いることができる。上記被覆磁性粒子は、疾患部位または腫瘍組織などの病巣に選択的に集積されるため、生理活性物質、薬効物質の作用が効果的に発揮されるとともに副作用が軽減される。その具体的な応用例を次に示すが、本発明製剤の適用はこれだけに限られない。
がんの温熱療法は、レーザー治療法、光線力学療法などともに非侵襲的ながん治療法の範疇に属する。このように、がんの温熱療法は、独特の特性、優れた側面を有する治療法であるが、必ずしもがんの治療現場では積極的に採用されて来なかった。温熱療法は単独で用いるのではなく、むしろ放射線や抗がん剤の効果を強めることを目的に、放射線や抗がん剤と併用されているのが現状である。その理由としていくつか挙げられるが、必ずしもその治療効果が他の治療法を凌ぐほどの成果を上げることができないために、従来法にとって代わるほどの理由はなかったと言っても差し支えない。このため、がんの温熱療法に使用される部材、薬剤、装置に依然として改良の余地があると考えられる。
今のところ、この治療法の対象となるのは、通常の治療法では治すことが難しい局所進行がんや再発がんである。温熱療法には全身を加温する方法(全身温熱療法)と、がんやその近傍を温める方法(局所温熱療法)がある。一般には局所温熱療法が主に行われる方法であり、マイクロ波、電磁波(交番磁場)、超音波を用いた装置で局所を加温する。身体の外から加温する方式が最も多く行われるが、その他に食道、直腸、子宮、胆管といった管腔内に器具を入れて加温する方法、がん組織の中に数本の電極針を刺し入れて加温する方法なども試みられている。がんに対する効果は41℃以上で得られるが、42.5℃以上で特に強くなることが知られている。身体の表面に近いがんは目的の温度まで比較的容易に温めることができるが、身体の奥深いところにあるがんは脂肪、空気、骨が邪魔をして十分に温めることが難しい場合が多く、温熱療法の効果が不十分になることが多い。そこで本発明の被覆磁性粒子を体内に導入して、温熱療法の発熱素子として使用すれば、身体奥のがん組織、散在するがん細胞、微小な初期がんの細胞について効果的な治療が可能となる。
具体的には、被検者の静脈内に、本発明の被覆磁性粒子含有製剤の投与が開始されてから1分以上48時間以内、好ましくは30分以上36時間以内に、該被検者にエネルギー照射を行うことにより、被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させ、正常細胞にほとんど影響を与えることなく、治療を行うことができる。一方、被検者の腫瘍組織の近傍に、直接被覆磁性粒子含有製剤を注入してもよく、注入が開始されてから0.5分以上36時間以内、好ましくは10分以上24時間以内に、該被検者にエネルギー照射を行うことにより、被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させることができる。エネルギー照射としては、好ましくは交番磁場照射または超音波照射が挙げられ、交番磁場照射は、周波数25〜500kHzで行うことが好ましい。
本発明の被覆磁性粒子含有製剤を用いた診断治療システムの好ましい実施形態を、図面を参考にして以下に詳述する。なお、図面で示した実施形態は本願の一態様であり、本発明の範囲内であれば図示したものに限定されない。
図3に示すように、本発明の診断治療システム10は、
被覆磁性粒子含有製剤を被検者に自動的に投与する自動注入装置20と、
該製剤が注入された被検者に、超音波、電磁波またはX線を照射する第1照射部32と、該照射により被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位をスキャンする撮像部34とを備える診断装置30と、
被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位に対し、交番磁場または超音波を照射する第2照射部42と、交番磁場または超音波が照射される際に腫瘍部とその近傍の正常部の温度を計測する温度測定部44とを備える治療装置40と、
自動注入装置20、診断装置30、および治療装置40とネットワーク60を介して接続され、これらの装置の動作を制御するとともに、各装置間の制御を行う制御装置50とを備える。
自動注入装置20としては、従来公知の自動注入装置を用いることができ、診断装置30としては、X線画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、または超音波画像診断装置を用いることができ、治療装置40としては、集束超音波加熱装置、または交番磁場加熱装置を用いることができる。なお、自動注入装置20、診断装置30、および治療装置40は、患者に対する診断および治療を同時に行うことができるように、一体化していることが好ましい。
制御装置50としては、制御部(CPU)、キーボードやマウスなどの操作部、メモリ、ディスプレイなどの表示部を備える装置であれば特に限定されず、例えばコンピュータなどが挙げられる。ネットワーク60としては、インターネット、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の情報通信網で接続されていてもよい。これらの端末相互の接続は、有線無線を問わない。
また、本発明の診断治療システム10は、図示しないが、患者情報データベースを有していることが好ましい。制御装置50は、必要に応じてデータベースにアクセスして、被検者の情報を取得することができ、予め腫瘍部の大まかな位置、患者の体質や健康状態を確認することができる。
本発明の診断治療システム10では、まず、自動注入装置20において腫瘍部の治療診断を行う患者に対し、被覆磁性粒子含有製剤を自動的に投与する。具体的には、まず、患者が診断治療システム内に収容されると、患者のICタグや指紋、虹彩などのバイオメトリクス認証などにより患者を特定する情報を取得する。制御装置50はかかる情報を元に、データベースにアクセスして患者を特定し、患者のデータ(カルテ)から被覆磁性粒子含有製剤の種類、投与量を決定し、自動注入装置20に送信する。
自動注入装置20は、制御装置50から製剤の種類、投与量などを受信すると、所定の事項にしたがって患者に被覆磁性粒子含有製剤を投与する。被覆磁性粒子含有製剤の投与が終了すると、自動注入装置20は制御装置50に投与が終了した旨の信号を発し、受信した制御装置50は、次に診断装置30に対し腫瘍部の診断を開始するよう信号を発する。
受信した診断装置30は、第1照射部32により超音波、電磁波またはX線を患者に対して照射し、撮像部34により被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位をスキャンする。撮像部34によりスキャンされた画像はデータとして制御装置50に送信され、制御装置50は予め入力されたデータに基づいて画像のコントラストを確認し、被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位を特定する。なお、システム10にモニターなどの表示部を設けておき、撮像部34によりスキャンされた画像を人為的に確認できるようにしておくことも好ましい。
制御装置50は、腫瘍部位を特定すると患者データベースに腫瘍部位の位置情報等を格納させるとともに、腫瘍部位の位置情報を治療装置40に送信する。
腫瘍部位の位置情報を受信した治療装置40は、患者に対し、第2照射部42により交番磁場または超音波を照射するとともに、温度測定部44により腫瘍部とその近傍の正常部の温度を計測する。温度測定部44による温度計測は、温度の変化が共鳴周波数の変化として表現されることを応用して、センサーなどを埋め込むことなく生体内部の温度を非侵襲的に計測する。温度測定部44による温度計測は、核磁気共鳴画像(MRI)診断装置を用いた、信号強度法による縦緩和時間、位相法におけるプロトンケミカルシフト、あるいは拡散画像法における拡散係数、または複数の周波数で測定したマイクロ波ラジオメトリで測定された値により算出される方法であることが好ましい。
また、制御装置50が、腫瘍部が小さく治療を効果的に行うことができないと判断した場合や、腫瘍部位を確認しながら治療を行う必要がある判断した場合には、第1照射部32が該腫瘍部位に対し超音波、電磁波またはX線を照射し、前記撮像部が該照射により被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位をスキャンしながら、第2照射部42が、腫瘍部位に対し交番磁場または超音波を照射して治療を行うように制御される。
温度測定部44により腫瘍部とその近傍の正常部の温度が測定されると、温度測定部44は測定結果を順次制御装置50に送信する。制御装置50は測定結果の受信し、腫瘍部が所定の温度(例えば42℃)に上昇したことを確認すると、第2照射部42に対し交番磁場または超音波の照射を中止する命令を発する。なお、所定の温度に達した後に、一定の時間、交番磁場または超音波を照射するように制御してもよい。また、制御装置50は、腫瘍部が所定の温度に到達せず、腫瘍部の近傍の正常部が所定の温度に到達したような場合には、第2照射部42に対し交番磁場または超音波の照射を中止する命令を発する。
このような診断治療システムによれば、腫瘍部の確認から治療までが1つのシステムで行うことができるため、今まで別々行われていた診断と治療を同時に行え、患者に与える負担が少なく、診断と治療を効果的かつ効率的に行うことができる。
以上、本発明の診断治療システムを説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(磁性微粒子形成時に添加される有機化合物A)
リンゴ酸の水酸基とテトラエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とをヘキサメチレンジイソシアネートを介して反応させ、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル変性したリンゴ酸(A−1)を調製した。また同様にヘキサメチレングリコールモノメチルエーテル変性したリンゴ酸(A−2)およびデカエチレングリコールモノメチルエーテル変性したリンゴ酸(A−3)も同様の方法にて調製した。アスパラギン酸のアミノ基とヘキサメチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とをヘキサメチレンジイソシアネートを介して反応させ、ヘキサメチレングリコールモノメチルエーテル変性したアスパラギン酸(A−4)を調製した。
また、リンゴ酸の水酸基にオクタン酸クロライドを反応させてオクタン酸変性したリンゴ酸(A−5)を調製した。アスパラギン酸のアミノ基にステアリン酸クロライドを反応させステアリン酸変性したアスパラギン酸(A−6)を調製した。
上記の方法で得られた有機化合物Aを以下に示す。
・A−1:テトラエチレングリコール変性したリンゴ酸
・A−2:ヘキサメチレングリコールモノメチルエーテル変性したリンゴ酸
・A−3:デカエチレングリコールモノメチルエーテル変性したリンゴ酸
・A−4:ヘキサメチレングリコールモノメチルエーテル変性したアスパラギン酸
・A−5:オクタン酸変性したリンゴ酸・A−6:ステアリン酸変性したアスパラギン酸
さらに、本実施例において磁性微粒子形成時に添加される有機化合物B,Cを以下に示す。
・B−1:リンゴ酸
・B−2:アスパラギン酸
・B−3:ジチオストレイトール
・B−4:システイン
・B−5:シスチン
・C−1:オクタン酸クロライド
・C−2:ステアリン酸クロライド
<磁性微粒子の形成方法>
(磁性微粒子の形成方法1)
0.1mol/Lの塩化第一鉄溶液と0.1mol/Lの塩化第二鉄溶液とを等体積で混合し溶液1を調製した。また、28重量%のアンモニア水溶液を0.01重量%となるように蒸留水で希釈し溶液2を調製した。別途表1に記載した有機化合物Aを1mmol/L濃度で含む水溶液を調製し、この水溶液を水酸化アンモニウムと塩化アンモニウムとからなる1mol/L濃度緩衝液によりpH8.4〜10.0に調整して溶液3を得た。
10.00mlの溶液3の温度を5℃にコントロールし、この溶液3に空気を吹き込みながら撹拌を継続し、この溶液3に、溶液1と溶液2をそれぞれ5.0mlずつ滴下した。なお、滴下速度はpHが7.0〜8.5の範囲と成るようにpHメータで確認し、液温も5℃〜15℃となるように温度コントローラーで計測しながら調整した。滴下終了後1時間撹拌した後、磁気分離で磁性微粒子を分離し蒸留水で良く洗浄して、特定の結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物Aが化学結合された磁性微粒子を調製した。また、撹拌速度、溶液1と溶液2を滴下している際の溶液3のpHおよび液温を、前述した範囲内となるように滴下速度を調整し、表1に記載した粒子径(r)の磁性フェライト粒子を形成した。
なお、粒子径(r)は形成した磁性微粒子を透過型電子顕微鏡で20個観察し、その平均粒子径として求めた。
(磁性微粒子の形成方法2)
磁性微粒子の形成方法1と同様の方法で溶液1、溶液2を調製した。別途表1記載の有機化合物Aを1mmol/L濃度で含む水溶液を調製し、水酸化アンモニウムと塩化アンモニウムとからなる1mol/L濃度緩衝液によりpH8.4〜10.0に調整して溶液3とした。また、前記水溶液を水酸化アンモニウムと塩化アンモニウムからなる1mol/L濃度緩衝液によりpH8.4〜10.0に調整して溶液4とした。
5.00mlの溶液4の温度を5℃にコントロールし、この溶液4に空気を吹き込みながら撹拌を継続し、この溶液4に溶液1と溶液2をそれぞれ2.5mlずつ滴下し溶液5を調製した。次いでこの溶液5に溶液3を5.0ml添加し、この溶液3を添加した溶液5に溶液1と溶液2をそれぞれ2.5mlずつ滴下した。なお溶液1と溶液2の滴下速度はpHが7.0〜8.5の範囲となるようにpHメータで確認し、液温も5〜15℃となるように温度コントローラーで計測しながら調製した。滴下終了後1時間撹拌した後、磁気分離で磁性微粒子を分離し、蒸留水でよく洗浄して、特定の結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物Aが化学結合された磁性微粒子を調製した。また、撹拌速度、溶液1と溶液2を滴下している際の溶液4または溶液5のpHおよび液温を、前述した範囲内となるように滴下温度を調整し、表1に記載した粒子径の磁性フェライト粒子を形成した。なお、粒子径は溶液5を調製した時点(r1)と、最終的に形成した磁性微粒子の粒子径(r)を透過型電子顕微鏡で20個観察しその平均粒子径として求めた。
(磁性微粒子の形成方法3)
磁性微粒子の形成方法1と同様の方法で溶液1、溶液2を調製した。別途表1に示す有機化合物Bを1mmol/L濃度で含む水溶液を調製し、水酸化アンモニウムと塩化アンモニウムからなる1mol/L濃度緩衝液によりpH8.4〜10.0に調整して溶液3を得た。次いで磁性微粒子の形成方法1と同様の方法で溶液を混合し特定の結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物Bが化学結合された磁性微粒子を調製した。
さらに、この磁性微粒子を乾燥させた後ヘキサンに投入して超音波分散機で分散させた。この磁性微粒子のヘキサン分散液に、ヘキサンで1重量%に希釈した表1に示す酸クロライド(有機化合物C)を加え、磁性微粒子と化学結合された有機化合物Bと有機化合物Cとを反応させた。次いで、イソプロピルアルコールを加えて過剰な有機化合物Cをエステル化した後に磁気分離で磁性微粒子を分離し、アセトンと蒸留水でよく洗浄して、有機化合物Bが化学結合された磁性微粒子において、この有機化合物Bに有機化合物Cがさらに化学結合された磁性微粒子を調製した。
なお、撹拌速度、溶液1と溶液2を滴下している際の溶液3のpHおよび液温を、前述した範囲内となるように滴下速度を調整し、表1に記載した粒子径(r)の磁性微粒子を形成した。また、粒子径(r)は磁性微粒子の形成方法1と同じ方法で測定した。
(磁性微粒子の形成方法4)
有機化合物Bを用いた以外は、磁性微粒子の形成方法2と同様の方法で溶液1、溶液2及び溶液4を調製し、磁性微粒子の形成方法3と同様の方法で溶液3を調製した。次いで、磁性微粒子の形成方法2と同様の方法で、特定の結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物Bと化学結合された磁性微粒子を形成した。
さらに、この磁性微粒子を乾燥させた後、磁性微粒子の形成方法3と同様の方法で、ヘキサン中で磁性微粒子と化学結合された有機化合物Bと有機化合物Cとを反応させた。次いで、イソプロピルアルコールを加えて過剰な有機化合物Cをエステル化した後に磁気分離で磁性微粒子を分離し、アセトンと蒸留水でよく洗浄して、有機化合物Bが化学結合された磁性微粒子において、この有機化合物Bに有機化合物Cがさらに化学結合された磁性微粒子を調製した。
また、撹拌速度、溶液1と溶液2を滴下している際の溶液4または溶液5のpHおよび液温を、前述した範囲内となるように滴下温度を調整し、表1に記載した粒子径の磁性微粒子を形成した。なお、粒子径は磁性微粒子の形成方法2と同様に溶液5を調製した時点(r1)と、最終的に形成した磁性微粒子の粒子径(r)を透過型電子顕微鏡で20個観察しその平均粒子径として求めた。
なお、磁性微粒子形成時に添加される有機化合物を添加しない磁性微粒子を、比較として上述の磁性微粒子の形成方法1〜4と同様の方法で作成し、同じく表1に記載した。
(磁性微粒子の形成方法5)
比較として表面にステアリン酸の付着した磁性微粒子を以下に示す方法で作成した。
硫酸化鉄の7水和物(FeS04(II)・7H2O)を1.67gサンプル瓶に取り、窒素置換した水8mlに溶解した。40℃に保温し、亜硝酸ナトリウム水溶液(濃度:0.07g/ml)1mlを加え、さらに28重量%アンモニア水5mlを加え、窒素雰囲気下で攪伴した。磁性微粒子を取り出し容器に入れ、40℃の温度で30分間放置した。この磁性微粒子を1.4重量%のアンモニア水25mlで2回洗浄したのち、遠心分離器を用いて、回転速度3,000rpmで5分間遠心を行い、沈降させた磁性微粒子をサンプル瓶に移した。引き続き、110℃で5分間加温したのち、ステアリン酸0.14gを加え、110℃に加熱し、攪拌と放置を15分間繰り返した。次に、10mlの脱気水を加え、4℃で一夜放置したのち、純水に対して透析し、ステアリン酸が化学結合された磁性微粒子を調製した。なお、粒子径(r)は磁性微粒子の形成方法1と同じ方法で測定した。
Figure 0005082446
(実施例1〜44、比較例1〜10)
表2に示すような磁性微粒子を用い、以下に示す調製法により被覆磁性微粒子を調製した。
<脂質膜で被覆した被覆磁性粒子の調製方法>
(被覆磁性粒子の調製方法1)
10mlのナス型フラスコにジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)1.5mg、フォスファチジルエタノールアミン8.5mgおよびフォスファチジルコリン20mgをクロロホルム2.0mlに溶解し均一溶液とし、この均一溶液の溶媒を減圧除去した後デシケータで一晩乾燥させ、ナス型フラスコにDPPC膜を形成した。
次いで、上述の方法で作成した表2記載の磁性微粒子に蒸留水を加え、磁性微粒子を10μg/μlの濃度で含有するスラリー懸濁液とした。このスラリー懸濁液を、ナス型フラスコ内に0.5〜6.0μl範囲で加え、さらに10倍の濃度のリン酸緩衝生理食塩水0.4mlを加えた。この混合液に対して、60秒の超音波撹拌を30秒の休止を挟んで60分行なった。次に、超音波撹拌後の混合液について、回転速度3,300rpmで15分間遠心分離器を用いて遠心分離し、得られた上清につき、回転速度7,500rpmで50分遠心を行い、沈殿物とし表2記載の粒子径(R)を有するリン脂質膜で被覆された磁性微粒子を得た。
なお、リン脂質膜に被覆された磁性微粒子の粒子径(R)は形成した粒子を透過型電子顕微鏡で20個観察し、その平均粒子径として求めた。
(被覆磁性粒子の調製方法2)
ナス型フラスコにジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、C−2セラミドを1:1:2(全量2μmol)の割合でクロロホルムに溶解して均一溶液とし、この均一溶液の溶媒を減圧除去した後デシケータで一晩乾燥させ、ナス型フラスコにDOPE膜を形成した。
次いで、上述の方法で作成した表2記載の磁性微粒子に蒸留水を加え、磁性微粒子を10μg/μlの濃度で含有するスラリー懸濁液とした。このスラリー懸濁液を、ナス型フラスコ内に0.5〜6.0μl範囲で加え、さらに10倍の濃度のリン酸緩衝生理食塩水を磁性微粒子のスラリー状水溶液に対して1/10容量加え、この混合溶液に対して、60秒の超音波撹拌を30秒の休止を挟んで60分行なった。次に、超音波撹拌後の混合溶液について、回転速度3,300rpmで15分間遠心分離器を用いて遠心分離し、得られた上清につき、回転速度7,500rpmで50分遠心を行い、沈殿物とし表2記載の粒子径(R)を有するリン脂質膜で被覆された磁性微粒子を得た。
なお、リン脂質膜に被覆された磁性微粒子の粒子径(R)は脂質膜で被覆した被覆磁性粒子の調製1と同様の方法で求めた。
(被覆磁性粒子の調製方法3)
40mgのDPPCと、1.2mgのポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体[アデカ(株)製、プルロニックF−88]、900mgのエタノールの混合物をステンレス製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。オートクレーブ内の圧力を50kg/cm2から200kg/cm2にまで加圧し、オートクレーブ内を撹拌して、超臨界二酸化炭素中にDPPCを溶解させた。また、上述の方法で作成した表2記載の磁性微粒子にリン酸緩衝生理食塩水を加え、磁性微粒子を10mg/mlの濃度で含有するスラリー懸濁液とした。
超臨界二酸化炭素溶液を撹拌しながら、上記スラリー懸濁液を0.5〜6.0ml範囲で連続的に注入した。その後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、最後に回転速度3,300rpmで15分間遠心分離器で遠心分離し、得られた上清につき、回転速度7,500rpmで50分遠心を行い、沈殿物とし表2記載の粒子径(R)を有するリン脂質膜で被覆された磁性微粒子を得た。
なお、リン脂質膜に被覆された磁性微粒子の粒子径(R)は脂質膜で被覆した被覆磁性粒子の調製1と同様の方法で求めた。
(被覆磁性粒子の調製方法4)
ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、C−2セラミドを1:1:2(全量2μmol)の割合で混合したものと、900mgのエタノールをステンレス製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。オートクレーブ内の圧力を50kg/cm2から200kg/cm2にまで加圧し、オートクレーブ内を撹拌して、超臨界二酸化炭素中にDOPEを溶解させた。また、上述の方法で作成した表2記載の磁性微粒子にリン酸緩衝生理食塩水を加え、磁性微粒子を10μg/μlの濃度で含有するスラリー懸濁液とした。
超臨界二酸化炭素溶液を撹拌しながら、上記スラリー懸濁液を0.5〜6.0μlの範囲で連続的に注入した。その後系内を減圧して二酸化炭素を排出し、最後に回転速度3,300rpmで15分間遠心分離器で遠心分離し、得られた上清につき、回転速度7,500rpmで50分遠心を行い、沈殿物とし表2記載の粒子径(R)を有するリン脂質膜で被覆された磁性微粒子を得た。
なお、リン脂質膜に被覆された磁性微粒子の粒子径(R)は脂質膜で被覆した被覆磁性粒子の調製1と同様の方法で求めた。
(被覆磁性粒子の調製方法5)
特開平11−106391号明細書の実施例1記載の方法に従って、マレイミド基を有する脂質(EMCーDPPE)を調製した。このEMCーDPPE1.5mg、フォスファチジルエタノールアミン8.5mg、フォスファチジルコリン20mgおよび900mgのエタノールをステンレス製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。オートクレーブ内の圧力を50kg/cm2から200kg/cm2にまで加圧し、オートクレーブ内を撹拌して、超臨界二酸化炭素中に脂質を溶解させた。また、上述の方法で作成した表2記載の磁性微粒子にリン酸緩衝生理食塩水を加え、磁性微粒子を10mg/mlの濃度で含有するスラリー懸濁液とした。
超臨界二酸化炭素溶液を撹拌しながら、上記スラリー懸濁液を0.5〜6.0mlの範囲で連続的に注入し、その後系内を減圧して二酸化炭素を排出した。
この溶液に特開平11−106391号明細書の実施例1記載の方法に従って、G22モノクロナール抗体を結合させ、最後に回転速度3,300rpmで15分間遠心分離器で遠心分離し、得られた上清につき、回転速度7,500rpmで50分遠心を行い、沈殿物とし表2記載の粒子径(R)を有するリン脂質膜で被覆された磁性微粒子を得た。
なお、リン脂質膜に被覆された磁性微粒子の粒子径(R)は脂質膜で被覆した被覆磁性粒子の調製1と同様の方法で求めた。
Figure 0005082446
このようにして得られた脂質膜で被覆された被覆磁性粒子を用いて、以下の試験(試験例1〜6)を行った。
(試験例1)
表3に示す被覆磁性粒子を、等張グルコース液で希釈して、10mg鉄/mlの濃度とした。この液を、実験腫瘍VXー2を肝臓に異なる大きさで移植させた兎に静脈注射し、表3で示す時間経過後に超音波画像診断装置で観察し、識別出来る肝癌の大きさを判別した。結果を表3に示す。
表3から判るように、本発明の脂質膜で被覆した被覆磁性粒子は識別出来る腫瘍の大きさも比較例に比べて問題なく、また時間が経過しても比較例に比べて識別出来る腫瘍の大きさに変化が少ないこと判る。
Figure 0005082446
(試験例2)
表4に示す被覆磁性粒子を等張グルコース液で希釈して、10mg鉄/mlの濃度とした。この液を、ヒト乳癌細胞株を皮下移植したマウスの乳癌腫瘍部位に局部注射し、表4で示す時間経過後に核磁気共鳴画像診断装置で観察し、識別出来る腫瘍の大きさを計測した。結果を表4に示す。
表4から判るように、本発明の脂質膜で被覆した被覆磁性粒子は、時間が経過しても比較例に比べて識別可能であること判る。
Figure 0005082446
(試験例3)
表5に示す被覆磁性粒子を等張グルコース液で希釈して、10mg鉄/mlの濃度とした。この液を、ヒト悪性グリオーマ細胞株を移植したラットに静脈注射した。表5で示す時間経過後に核磁気共鳴画像診断装置で観察し、識別出来る腫瘍の大きさを計測した。結果を表5に示す。
Figure 0005082446
(試験例4)
表6に示す被覆磁性粒子を等張グルコース液で希釈して、10mg鉄/mlの濃度とした。この液を、ヒト肺由来低分子型線癌細胞株を胸膜直下に移植したマウスの肺癌部位に局部注射し、30分後または24時間後に、下記の条件で交番磁場照射を行なった。
周波数:375KHz、磁界を発生させる為のコイル:直径300mm、磁場強度:6mT、電流:225A、出力:3KW、アプリケーターからの距離:20mm
腫瘍部位には温度計測を行なうため、光ファイバ温度計を配置し、腫瘍部と正常部位との温度を計測し、腫瘍部の温度が43℃になるまでの時間を測定し、その際の正常部位の温度について併せて計測した。結果を表6に示す。
表6からも判るように、本発明の脂質膜で被覆した被覆磁性粒子は、温熱療法を行なう際に、比較例に比べて短時間に腫瘍部のみを効率的に温度上昇させることができることが判り、局部注射した後の時間の経過によらず効率的な温熱治療を施すことが可能なことが判る。
Figure 0005082446
(試験例5)
表7に示す被覆磁性粒子を等張グルコース液で希釈して、10mg鉄/mlの濃度とした。この液を、ヒト悪性グリオーマ細胞株を移植したラットに静脈注射し1時間経過後及び表7記載の時間経過後に、下記の条件で交番磁場照射を連続して行なった。
周波数:370KHz、磁界を発生させる為のアプリケーター:コイル径310mm、磁場強度:8mT、電流:300A、出力:5KW、アプリケーターからの距離:20mm
腫瘍部位には温度計測を行なうため、光ファイバ温度計を配置し、腫瘍部と正常部位との温度を計測し、腫瘍部の温度が43℃になるまでの時間を測定し、その際の正常部位の温度について併せて計測した。結果を表7に示す。
表7からも判るように、本発明の脂質膜で被覆した被覆磁性粒子は、温熱療法を行なう際に、比較例に比べて短時間で腫瘍部のみを効率的に温度上昇させることができることが判り、腫瘍部への集積性が高いため、数回の温熱治療を施す場合でも新たに磁性微粒子を供給することなく効率的に治療を施すことができることが判る。
Figure 0005082446
(試験例6)
表8に示す被覆磁性粒子を等張グルコース液で希釈して、10mg鉄/mlの濃度とした。この液を、ヒト乳癌細胞株を皮下移植させたマウスに1回目の静脈注射し、2時間後経過後及び24時間経過後に試験例5と同様の条件で交番磁場照射を行なった。さらに、1回目の静脈注射から6日後に2回目の静脈注射を行い、2時間後経過後及び24時間経過後に試験例5と同様の条件で交番磁場照射を行なった。さらに、2回目の静脈注射から15日後に3回目の静脈注射を行った。
被覆磁性粒子の1回目、2回目、3回目の注射後1時間後に核磁気共鳴画像診断装置で観察し、観察されたグリーマ腫瘍部の大きさを診断画像から計測した。結果を表8に示す。なお腫瘍に対する造影剤としてのコントラストを得る能力は、腫瘍が存在する場合はいずれも実用上全く問題の無いレベルであった。
表8からも判るように、本発明の被覆磁性粒子は造影剤と治療剤の両方の機能を備えるだけではなく、治療剤として効率的に作用していることが判る。
Figure 0005082446
本発明の構成により、腫瘍部位への選択的な送達(ターゲティング能力)を可能とすることができ、造影物質、薬物輸送担体に応用されるほか、発熱を利用した温熱療法、さらにはこれらを組み合わせたがんの診断と治療に用いることができる被覆磁性粒子含有製剤およびその製造方法、並びに診断治療システムを提供することができる。

Claims (24)

  1. 分子内に水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、メルカプト基、スルホ基、ジチオ基、チオカルボキシ基、およびジチオカルボキシ基から選ばれる結合基を少なくとも2個以上有する有機化合物が結合された磁性微粒子を、脂質膜で被覆した被覆磁性粒子を含有する製剤であって、
    前記被覆磁性粒子が、下記式
    0.05≦R/(r×100)≦1.5
    (式中、Rは被覆磁性粒子の平均粒子径を表し、rは磁性微粒子の平均粒子径を表す。)を満たすことを特徴とする被覆磁性粒子含有製剤。
  2. 前記被覆磁性粒子が、下記式
    0.05≦R/(r×100)≦1.0
    (式中、Rは被覆磁性粒子の平均粒子径を表し、rは磁性微粒子の平均粒子径を表す。)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  3. 前記磁性微粒子の平均粒子径が1nm〜30nmの範囲にあり、かつその主成分がフェライトであることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  4. 前記被覆磁性粒子が、磁性微粒子を含有する脂質膜のリポソームであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  5. 前記リポソームの表面電荷が正であることを特徴とする請求項4に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  6. 画像化剤および/または腫瘍に対する治療剤として用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  7. 前記脂質膜の表面に直接または連結物質を介して、生理機能性物質および/または抗腫瘍活性物質を結合させたことを特徴とする請求項6に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  8. 前記被覆磁性粒子含有製剤が、画像化剤として超音波画像診断、核磁気共鳴画像診断、またはX線画像診断のための造影剤に用いられることを特徴とする請求項6または7に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  9. 被検者の静脈内に被覆磁性粒子含有製剤の投与が開始されてから、1分以上48時間以内に、超音波画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、またはX線画像診断装置においてスキャンを行うことにより、腫瘍組織の検出能を向上させることが可能な請求項6〜8のいずれかに記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  10. 被検者の腫瘍組織の近傍に被覆磁性粒子含有製剤の注入が開始されてから0.5分以上36時間以内に、超音波画像診断装置、核磁気共鳴画像診断装置、またはX線画像診断装置においてスキャンを行うことにより、腫瘍組織の検出能を向上させることが可能な請求項6〜8のいずれかに記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  11. 前記脂質膜の最外層に直接または連結物質を介して、生理機能性物質、付加的安定化物質、薬理活性物質、薬理的活性キレート物質、抗腫瘍活性物質、免疫増強物質、細胞融合物質および遺伝子導入媒介物質から選ばれる少なくとも1種の物質を結合させたことを特徴とする請求項6に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  12. 前記治療剤が、温熱療法用治療剤であることを特徴とする請求項6に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  13. 前記温熱療法がエネルギー照射による方法であって、該エネルギー照射によって被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させることが可能な請求項12に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  14. 前記エネルギー照射が、交番磁場照射または超音波照射であることを特徴とする請求項13に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  15. 前記エネルギー照射が、周波数25〜500kHzの交番磁場照射であることを特徴とする請求項13に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  16. 被検者の静脈内に被覆磁性粒子含有製剤の投与が開始されてから1分以上48時間以内に、該被検者に交番磁場照射または超音波照射を行うことにより、被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させることが可能な請求項14に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  17. 被検者の腫瘍組織の近傍に被覆磁性粒子含有製剤の注入が開始されてから0.5分以上36時間以内に、該被検者に交番磁場照射または超音波照射を行うことにより、被覆磁性粒子に近接する腫瘍組織の温度を上昇させることが可能な請求項14に記載の被覆磁性粒子含有製剤。
  18. 脂質膜構成成分と、超臨界二酸化炭素とを混合するとともに、分子内に水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、メルカプト基、スルホ基、ジチオ基、チオカルボキシ基、およびジチオカルボキシ基から選ばれる結合基(a)を少なくとも2個以上有する有機化合物が化学結合した磁性微粒子の分散液を添加し、次いで二酸化炭素を排出することにより磁性微粒子を脂質膜で被覆することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の被覆磁性粒子含有製剤の製造方法。
  19. 前記磁性微粒子が、分子内に水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミノ基、メルカプト基、スルホ基、ジチオ基、チオカルボキシ基、およびジチオカルボキシ基から選ばれる結合基(a)を少なくとも2個以上有する有機化合物の存在下、pHが7〜10であり、かつ温度が3℃〜30℃である条件で生成されたことを特徴とする請求項18に記載の被覆磁性粒子含有製剤の製造方法。
  20. 請求項1〜17のいずれかに記載の被覆磁性粒子含有製剤を用いて、被検者の腫瘍部の分析および該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を行うシステムであって、
    記システムは、被覆磁性粒子含有製剤を被検者に自動的に投与する自動注入装置と、
    該製剤が注入された被検者に、超音波、電磁波またはX線を照射する第1照射部と、該照射により被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位をスキャンする撮像部とを備える分析装置と、
    被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位に対し、交番磁場または超音波を照射する第2照射部と、交番磁場または超音波が照射される際に腫瘍部とその近傍の正常部の温度を計測する温度測定部とを備える照射装置と、
    前記自動注入装置、分析装置、および照射装置とネットワークを介して接続され、制御部、操作部、メモリおよび表示部とを備える制御装置
    を備えることを特徴とする、被検者の腫瘍部の分析および該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を行うシステム。
  21. 前記温度測定部が、被検者に対し非侵襲の温度測定を行うことを特徴とする請求項20に記載の、被検者の腫瘍部の分析および該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を行うシステム。
  22. 前記非侵襲の温度測定は、核磁気共鳴画像診断装置を用いた、信号強度法による縦緩和時間、位相法におけるプロトンケミカルシフト、あるいは拡散画像法における拡散係数、または複数の周波数で測定したマイクロ波ラジオメトリで測定された値により算出される方法であることを特徴とする請求項21に記載の、被検者の腫瘍部の分析および該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を行うシステム。
  23. 前記温度測定部は、腫瘍部とその近傍の正常部の温度を計測するとともに、測定結果を順次制御装置に送信し、前記制御装置は受信した測定結果から腫瘍部が所定の温度に上昇したことを確認すると、前記第2照射部に対し交番磁場または超音波の照射を中止する命令を発して、該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を制御することを特徴とする請求項20〜22のいずれかに記載の、被検者の腫瘍部の分析および該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を行うシステム。
  24. 前記第2照射部が、被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位に対し交番磁場または超音波を照射している際に、前記第1照射部が該腫瘍部位に対し超音波、電磁波またはX線を照射し、前記撮像部が該照射により被覆磁性粒子が集積している腫瘍部位をスキャンすることによって、腫瘍部位を確認しながら該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を行うように制御されていることを特徴とする請求項20〜23のいずれかに記載の、被検者の腫瘍部の分析および該腫瘍部に対し交番磁場または超音波の照射を行うシステム。
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