JP2008019202A - メラノーマ標的温熱免疫療法治療剤 - Google Patents

メラノーマ標的温熱免疫療法治療剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、磁気微粒子が有する腫瘍細胞に対する温熱免疫効果と、システアミニルフェノール誘導体が有する殺腫瘍細胞効果を相乗的に発現させることにより、従来のメラノーマ治療法の概念とは全く異なる新しい、化学・温熱免疫ナノメディシン療法に使用することができるメラノーマ標的温熱免疫治療剤を提供することを課題とする。
【解決手段】次式(I):
【化1】
Figure 2008019202

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はC1〜C8のアルキル基を、R3は、水素原子、C1〜C8のアルキル基又はC1〜C8のアルカノイル基を表し、nは1〜5までの整数を表す。ただしnが1のとき、R1、R2及びR3が同時に水素原子であることはない。)で表されるシステアミニルフェノール誘導体と、磁性微粒子(磁気ナノ粒子)、または磁性微粒子(磁気ナノ粒子)を内包するリポソームとの重合体を有効成分とすることを特徴とするメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、メラノーマ(悪性黒色腫)を特異的に標的し、メラノーマ細胞に対する殺細胞効果と、磁気微粒子を用いる温熱免疫効果を相乗的に発揮する、特異的メラノーマ治療に使用するメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤に関する。
近年、日本においてメラノーマ(悪性黒色腫)患者は急速に増加する傾向にある。メラノーマは早期から転移を起しやすく、これら転移性癌を持った患者に対し現時点では全ての治療法が無効に等しい。
すなわち、メラノーマは、全身の皮膚、粘膜のみならず、目、脳、脊髄等の臓器に発生する癌であり、本症の発生は、近年加速度的に上昇している。予後は極めて悪く、病初期から皮膚、リンパ節、肺、肝、脳等への転移をとる。この治療に対しては、外科的療法以外に手段はなく、外科的手術後に抗癌剤を使用せざるを得ない。しかしながら、抗癌剤による激しい副作用のため、抗癌剤自体の使用が制限される場合も多い。
一方、癌の別の治療方法として温熱療法(ハイパーサーミア)が行われている。これは、腫瘍(癌)細胞が正常細胞に比較して熱に弱いという性質を利用した治療法である。多くの腫瘍細胞は体温から僅かに高い温度領域(42.5℃〜45℃)において正常細胞より温度感受性が高く、温度が高ければ高いほど腫瘍細胞は殺傷されるという性質を利用して、腫瘍細胞を加温殺傷させる治療法である。
現在広く用いられている温熱療法は、電極で身体を挟んでラジオ波を印加する誘電加温法である。しかしながら、この加温法では、腫瘍細胞を充分に殺傷する温度に加温する前に、正常細胞が火傷をしてしまい、患者の苦痛で加温を中止しなければならない欠点がある。
そこで最近、磁性微粒子、特にマグネタイトを発熱素子とした温熱療法が検討されてきている。マグネタイトは、Fe34酸化鉄(磁鉄鉱)のコロイドであり、高周波磁場内で発熱し、この発熱効果により熱ショック蛋白90(温熱免疫蛋白;Heat Shock Protein:HSP90)産生による腫瘍免疫効果を発現することが知られている。そこで、マグネタイトを選択的に腫瘍細胞へ集積させるため、リポソーム膜の表面に四級アミンなどの正電荷官能基を持たせたカチオニックリポソームを利用し、このリポソームにマグネタイトを封入したマグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)を作成し、腫瘍局所投与による腫瘍へのターゲティングが検討され、腫瘍細胞のみを選択的に加温殺傷させる試みが行われている(非特許文献1)。
しかしながら、MCLは、中性付近でも正電荷をもっており、腫瘍細胞への選択性はなく、貪食能があるすべての細胞に取り込まれることから、腫瘍組織への局所注入による以外、すでに遠隔転移を含めた腫瘍細胞を標的とした全身的治療ができないという欠点を有している。そのため、抗体を用いた腫瘍組織への選択性をもたせるという試みがなされているが、臨床的応用には問題があり、また抗体結合磁性粒子内包リポソームの作成は複雑である等の欠点を有している。
ところで本発明者は、メラノーマ細胞の分化形質発現のキー酵素として知られているチロシナーゼの基質となるある種のシステアミニルフェノール誘導体が、メラノーマ細胞に選択的に取り込まれ、直接殺細胞効果を有することを見出してきている(特許文献1)。
すなわち、メラニン形成経路は全てのメラノーマ細胞にとり特異な分化形質であり、癌化と共に異常に亢進する。本発明者が提案しているシステアミニルフェノール誘導体は、メラニン形成酵素であるチロシナーゼの基質となり、このシステアミニルフェノール誘導体がメラノーマ細胞に選択的に接着して取り込まれ、その場で直接殺細胞効果を発揮するものである。
しかし、このような殺腫瘍細胞効果と、前記の温熱免疫効果との両者を備える治療剤は、これまで開発されていなかった。
特許第3178834号公報 Shinkai M.ら:Jpn.J.Cancer Res.,87:1179−1183(1996)
したがって本発明は、従来のメラノーマ治療法の概念とは全く異なる新しい、化学・温熱免疫ナノメディシン療法に使用することができるメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、前記したシステアミニルフェノール誘導体の有するメラノーマ細胞への選択性を利用し、温熱殺細胞効果を有する磁気微粒子、特にマグネタイトに前記誘導体を固定化する新しい選択的ナノ・ドラッグ・デリバリー・システムを開発するに至った。前記システムによれば、システアミニルフェノール誘導体が有するメラノーマ細胞への特異的な選択性に基づき、メラノーマ細胞に対する特異的な殺細胞効果と、マグネタイトの磁場照射に伴う温熱発生による殺細胞効果と免疫効果が相乗的に発揮され、従来の概念にない特異的なメラノーマ治療法を行い得るものといえる。
かかる考え方を基に、本発明者は、システアミニルフェノール誘導体を磁気微粒子、特にマグネタイト、あるいは磁気微粒子を包含するリポソームに固定化して、実際にメラノーマ細胞標的ナノ粒子を作成した。係る粒子が、メラノーマ細胞にin vivo/in vitroの両者で一定の細胞膜表面レセプターと思われる機構を介して選択的に取り込まれ、取り込まれたシステアミニルフェノール誘導体が単独で殺細胞効果を発揮することを確認し、さらに、かかる選択的ナノ・ドラッグ・デリバリー・システムによる温熱療法は、従来の誘電加温型と異なり、癌に指向性を持つ磁気微粒子だけが発熱する周波数を交番磁場発生装置によって照射することで、メラノーマに特異な加温が可能であることを確認し、本発明を完成させるに至った。
かかる課題を解決するための本発明は、その基本的態様として、次式(I):
Figure 2008019202
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はC1〜C8のアルキル基を、R3は、水素原子、C1〜C8のアルキル基又はC1〜C8のアルカノイル基を表し、nは1〜5までの整数を表す。ただしnが1のとき、R1、R2及びR3が同時に水素原子であることはない。)
で表されるシステアミニルフェノール誘導体と、磁性微粒子、または磁性微粒子を内包するリポソームとの重合体を有効成分とすることを特徴とするメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤である。
より具体的には、本発明は、前記磁性微粒子がマグネタイトであることを特徴とする上記メラノーマ標的温熱免疫療法治療剤である。
さらに具体的には、本発明は、前記式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はC1〜C6のアルキル基を、R3は、水素原子、C1〜C6のアルキル基又はC1〜C8のアルカノイル基を表し、nは1または2の整数である上記メラノーマ標的温熱免疫療法治療剤である。
さらに具体的には、本発明は、前記式(I)中、R1が水素原子又はメチル基であり、R2が水素原子又はメチル基であり、R3がメチル基、アセチル基又はプロピオニル基である上記メラノーマ標的温熱免疫療法治療剤である。
より具体的には、本発明は、前記重合体において、前記磁性微粒子又は前記リポソーム間の結合が活性化架橋結合基およびメルカプト基との結合を介しており、前記メルカプト基は前記式(I)の末端に付加されてなるものであるメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤であり、なかでも前記活性化架橋結合基が、マレイミド基であるメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤である。
本発明が提供する治療剤により、これまで外科的手術による治療しか手段の無かったメラノーマ治療に対して、化学薬剤としての殺腫瘍効果と、磁場照射による温熱殺腫瘍効果を相乗的に発揮させることが可能となり、患者に対して外科的手術の侵襲を回避しうる、極めて特異的なメラノーマ治療法を確立することができる利点を有している。
さらに、本発明の治療剤によれば、単にメラノーマ細胞を選択的に熱死滅させる効果を有するのみならず、熱ショック蛋白を介し、細胞障害性T細胞を活性化し、遠隔転移癌に対しても細胞破壊の腫瘍免疫を行うことが出来る利点を有している。
本発明は、前記した式(I)で示されるシステアミニルフェノール(cysteaminyl phenol)誘導体と、磁性微粒子(磁気ナノ粒子)との直接重合体、または磁性微粒子(磁気ナノ粒子)を内包(包理)するリポソームとの重合体を有効成分とすることを特徴とするメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤である。
式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体は、メラノーマ細胞指向性を有し、メラノーマに対して直接的な殺細胞効果を発揮する。すなわち、メラニン形成酵素であるチロシナーゼの基質であるチロシンにイオウを結合させたアミン誘導体である。
かかるシステアミニルフェノール誘導体の中でも、本発明にあっては、式(I)で表されるシステアミニルフェノール誘導体が用いられる。式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はC1〜C8のアルキル基を、R3は、水素原子、C1〜C8のアルキル基又はC1〜C8のアルカノイル基を表し、nは1〜5までの整数を表す(ただしnが1のとき、R1、R2及びR3が同時に水素原子であることはない。)。特に、式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はC1〜C6のアルキル基を、R3は、水素原子、C1〜C6のアルキル基又はC1〜C8のアルカノイル基を表し、nは1または2の整数を表す(ただしnが1のとき、R1、R2及びR3が同時に水素原子であることはない。)構造からなるシステアミニルフェノール誘導体が好ましい。この場合において、式(I)中のアミノ基における置換基の一つであるアルカノイル基は、細胞膜親和性を高める性質の置換基である。なお、本発明の式(I)で表されるシステアミニルフェノール誘導体は、特許第3178834号公報に記載の方法によって製造することができる。
そのなかでも、R1が水素原子又はメチル基であり、R2が水素原子又はメチル基であり、R3がメチル基、アセチル基又はプロピオニル基であるシステアミニルフェノール誘導体等が好ましい。具体的には、N−アセチル−4−S−システアミニルフェノール、N−プロピオニル−4−S−システアミニルフェノール、N,N−ジメチル−4−S−システアミニルフェノール、4−S−ホモシステアミニルフェノール、α−メチル−4−S−システアミニルフェノール等を挙げることができる。
本発明にあっては、そのようなシステアミニルフェノール誘導体の中でも、R1が水素原子であり、アミノ基における置換基であるアルカノイル基として、式中R2が水素原子であり、R3がアセチル基又はプロピオニル基であるシステアミニルフェノール誘導体が、メラノーマ細胞に対する特異的親和性を顕著に発揮する点で、好ましい。
このものは、具体的には、次式(I−a)で示されるN−アセチル−4−S−システアミニルフェノール(以下、「NAcCAP」と略記する場合もある)、及び(I−b)で示されるN−プロピオニル−4−S−システアミニルフェノール(以下、「NPrCAP」と略記する場合もある)である。
Figure 2008019202
Figure 2008019202
そのなかでも、NPrCAPが特にメラノーマ細胞に対する親和性と殺細胞効果に優れ、好ましく使用される。
一方、本発明にいう磁性微粒子(磁気ナノ粒子)は、高周波磁場でシステリシス損によって発熱する。このシステリシス損による発熱は、磁性微粒子の粒子径に依存することが知られている。本発明にあっては、腫瘍細胞に指向性を有する磁性微粒子だけが発熱する周波数を、交番磁場発生装置により照射することで、メラノーマ細胞に特異的な加温を与えることが可能となる。
交番磁場とは、変動磁場の一種であり、磁力が時間とともに変化するものである。すなわち交番磁場とは、電磁石に交流を流してつくった磁場をいい、磁力は強くなったり、弱くなったり、またN極とS極は一定のリズムで方向が逆向きになる特異性を有する磁場である。かかる交番磁場の照射により、本発明のメラノーマ細胞に集積された磁性微粒子のみが特異的に発熱する。
磁性微粒子の平均粒子径は5〜25nmであることが好ましく、より好ましくは10nm程度であるのがよい。平均粒子径が5nm未満であると、磁性微粒子は超常磁性(SPIO)となりシステリシス損が生じず、したがって発熱が生じにくくなるおそれがある。また、粒子径が25nmを超える場合には、粒子自身の磁気により凝集が生じ磁性微粒子のコロイド、例えばマグネタイトコロイドの水分散性が損なわれ、リポソームへ包理することができなくなることがある。なお、磁性微粒子の平均粒子径は透過型電子顕微鏡観察によって測定される粒子径を平均することで求めることができる。
上記のシステアミニルフェノール誘導体を固定する磁性微粒子としては、鉄、コバルト、ニッケル等の化合物の他、マグネタイトが挙げられる。そのなかでもマグネタイト(以下、「M」と記す場合もある)が好ましく使用される。
本発明が提供する治療剤にあっては、上記磁性微粒子と、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体を直接重合させて得たもの、或いは磁性微粒子を内包(包理)するリポソームと重合させて得たものの両者を使用することが可能である。そのなかでも、上記磁性微粒子と直接重合して得たもの、特にマグネタイトと直接重合して得たものは、室温保存に安定な治療剤として得ることができ、好ましい。
一方、磁性微粒子を内包(包理)するリポソーム、すなわちマグネトリポソーム(以下、「ML」と記す場合もある)は、磁性微粒子をリン脂質で被覆したものである。リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸等の脂質の単独あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、特にホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロールの単独又はこれらの混合物が好ましい。それらの中でも、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンを、モル比でそれぞれ2:1となるように混合した混合物を使用するのがよい。
本発明が提供する治療剤にあって、その有効成分は、磁性微粒子、或いは磁性微粒子を内包するリポソームと、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体とが重合したものである。この重合にあっては、磁性微粒子或いは磁性微粒子を内包するリポソームの表面に結合させた活性化架橋結合基を介して、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体を重合することができる。
そのような活性化架橋結合基としては、例えば、メルカプト基(SH基)と結合し得るものを挙げることができる。中でも、マレイミド基を有する活性化架橋結合基が好ましい。マレイミド基を有する活性化架橋結合基としては、例えば次式(A)〜(C)で示されるものを挙げることができる。
Figure 2008019202
(式中、m、n、及びpは1〜6の整数を表す)
一方、上記のような活性化架橋結合基を介する重合の場合、更に式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体側には、活性化架橋結合基と重合結合する官能基が付加されることが好ましい。このような官能基としては、活性化架橋結合基がマレイミド基を有する活性化架橋結合基の場合、マレイミド基の二重結合と重合結合する官能基が挙げられる。具体的には、メルカプト基が好ましい。
式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体が前記した次式(I−a)で示されるN−アセチル−4−S−システアミニルフェノール(NAcCAP)、及び(I−b)で示されるN−プロピオニル−4−S−システアミニルフェノール(NPrCAP)のそれぞれである場合を例にとり説明すると、以下の通りである。まず、それぞれの化合物の、例えばアセチル基或いはプロピオニル基の末端に、メルカプト基を付加導入し、次式(II)、(III):
Figure 2008019202
で示される化合物へ誘導する。その後、上記した活性化架橋結合基、すなわちマレイミド基の二重結合とメルカプト基との重合結合により、マグネタイト(M)或いはマグネタイトを内包するリポソーム(ML)と重合されることとなる。
磁性微粒子がマグネタイト(M)の場合、マグネタイトに式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体を直接重合させたものは、より具体的には、以下の方法により調製することができる。
例えば、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体がNPrCAPであり、磁性微粒子がマグネタイトである場合を具体例として記載すると以下の通りである。まず、マグネタイトの表面に上記の活性化反応性架橋基(B)を有する直接結合型マグネタイトを得る。この直接結合型マグネタイトを水中に懸濁させ、そこに末端にメルカプト基を有する上記(III)のシステアミニルフェノール誘導体を加え室温下に攪拌する。その後、冷所に一夜放置し、遠心後ミリQ水による洗浄を繰り返し、最後にミリQ水中に懸濁させる。こうして、NPrCAPがマグネタイトに直接重合した重合体、すなわちNPrCAP/Mを調製することができる。
なお、マグネタイトの表面に上記の活性化反応性架橋基(B)を有する直接結合型マグネタイト、すなわちマレイミド基が導入されたマグネタイトは、例えば以下のようにして得ることができる。まず、マグネタイトを水に分散させ懸濁させ、水分散マグネタイトの懸濁液を得るこの懸濁液に、アミノシランカップリング剤、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシランを攪拌下に滴下し、室温で反応させる。その後、遠心分離して上清液を除き、更にミリQ水にて数回の洗浄を行った後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)に置き換える。続いて、この溶液にSulfo−GMBS(PIERCE社製)のPBS溶液を加え、激しく攪拌し反応させ、遠心分離して上清液を除く。更にミリQ水にて数回の洗浄を行い、直接結合型マグネタイトを調製することができる。
また、磁性微粒子を内包するリポソームと式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体を重合させて得たもの、例えば、NPrCAP/MLは具体的には、以下のようにして調製することができる。
リポソームは、形態学的に小さな1枚膜リポソーム(small unilamellar vesicles;SUV)と大きな1枚膜(large unilamellar vesicles;LUV)と多重層リポソーム(multilamellar vesicles:MLV)に分類されるが、SUVが一般に最も頻用される。本発明においても、SUVを使用するのが好ましい。
先ず、脂質(リポソーム;SUV)を溶媒、例えば、クロロホルムに溶解し、上記式(III)で示されるプロピオニル基の末端にメルカプト基を有するNPrCAPを加え反応を行う。続いて、溶媒を減圧除去した後、脂質のフィルムにマグネタイト水溶液を入れてボルテックスし、超音波処理を、例えば30分間程度行うことによりNPrCAP/MLを調製することができる。
また、別法として、マグネタイトを内包するリポソームの表面に活性化反応性架橋基、例えば、式(A)を有する直接結合型マグネタイト内包リポソーム、すなわちマレイミド基が導入されたマグネタイト内包リポソームを先に調製してから、それと上記式(III)で示されるプロピオニル基の末端にメルカプト基を有するNPrCAPを加え反応を行い、NPrCAP/MLを調製することもできる。
具体的には、まず、リン脂質としてホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、並びに活性型リン脂質(活性型反応性架橋基を有するリン脂質)、例えばジパルミトイル型ホスファチジルエタノールアミン−プロピルマレイミド(DPPE−プロピルマレイミド:日本油脂社製)を、溶媒、例えばクロロホルムに混合、溶解させる。溶媒を留去した後、半日以上冷所にて乾燥保存する。その後、これに水分散マグネタイトを加え、激しくボルテックス等で撹拌し、その後超音波処理を行う。こうして、マグネタイトを内包するリポソームの表面に活性化反応性架橋基を有する直接結合型マグネタイトリポソームを調製することができる。
次いで、この溶液に、上記式(III)で示される、プロピオニル基の末端にメルカプト基を有するNPrCAPを加え、室温にて10分間程度攪拌反応させる。続いて、冷所(4℃程度)に一夜放置した後、3000rpm/分で遠心分離し、ミリQ水で洗浄し、ミリQ水中に懸濁させる。こうして、NPrCAP/MLを調製することができる。
なお、本発明の式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体として、4−S−システアミニルフェノール(4−S−CAP)を、直接マグネタイトを内包するリポソームと重合することも可能である。
例えば、TMAG(相互薬工社製)、DLPC(日本油脂社製)、DOPE(日本油脂社製)及び4−S−CAPの所定量を溶媒、例えばメタノール中に混合、溶解させ溶媒を留去下後、冷所(4℃程度)にて乾燥保存を行う。次いで、これに予め洗浄して濃度を調整した水分散マグネタイトの水懸濁液を加え、激しくボルテックスし、さらに超音波処理を行うことにより調製することもできる。
以上のようにして得られた本発明が提供する治療剤は、具体的には、以下の特色を有する。
すなわち、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体の特徴としては、
低分子アミノ酸のイオウ誘導体であり、細胞内への取り込みに問題がない;
また、チロシンよりVmax、Kmにおいてはるかに高いメラニン形成の基質であり、メラニン形成細胞に選択的に、かつ非可逆的に細胞膜リセプターと考えられる機構を介し細胞膜に接着し、その後細胞内に取り込まれる;
チロシナーゼ・メラニン形成は臨床的に無色素産生メラノーマでも常に存在し、癌化と共に異常に亢進する。すなわちメラノーマ細胞に正常細胞(メラノサイト)と比較しより高く取り込まれる;
イオウは細胞膜親和性を高める;
従来標的として用いられた抗体と異なり、人体にとり異種蛋白ではなく、頻回使用しても無害である;
等の特色が挙げられる。これらの特色は、本発明の治療剤の特色でもあり、磁気微粒子が有する腫瘍細胞に対する温熱免疫効果とともに相乗的に発現される効果である。
また、本発明が提供する治療剤として、磁性微粒子を内包するリポソームを用いる場合には、標的化可能な因子との組み合わせで癌細胞への特異的ターゲティングが可能である。リポソームであるので、例えば、本発明の式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体であるNPrCAPを介し、細胞内へ容易に取り込まれ得る。
一度細胞内に取り込まれ、人体に無浸襲で加温された場合には、in situで最も効率的に、熱ショックたんぱく質(Heat Shock Protein:HSP)等を介し細胞破壊を行い得るものであり、結果として直接の細胞殺効果のみならず、HSPの結果、間接的に細胞傷害性T細胞・サイトカイン等を刺激し遠隔転移巣に対し免疫療法も誘導し得るものである。
本発明の治療剤を使用するメラノーマの治療は、以下のようにして実施される。例えば本発明の式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体としてNPrCAPを用いた場合には、生理的食塩水に可溶化された4%のNPrCAP/ML、又はNPrCAP/Mを皮下の癌組織内に注射する(一回注射総量2mL程度が好ましい)。または、親水軟膏基材に溶かした10〜20%のNPrCAP/ML、又はNPrCAP/M軟膏を、癌組織直上部の皮膚に密封療法(ODT)で24時間塗布する。
注射24時間後、または密封療法終了直後、磁場照射を行う。これ等の投与と磁場照射は隔日に3回行うのがよい。その後腫瘍組織は外科的処置にて全切除を行う。外科的手術時には、同時に加療後の免疫反応を検索するために領域リンパのセンチネルリンパ節生検を行う。
この治療方法は、具体的には以下に記載するマウスを用いた動物実験の結果に基づくものである。
対象動物としてマウス(C57BLマウス、4週目、メス)を各群7匹使用し、それぞれにメラノーマ細胞(B16F1)を移植した。移植後9日目から4%のNPrCAP/Mを1日3回連続3日間投与した群(その後の磁場照射を行わない群)を群IIとした。また、同様に4%のNPrCAP/Mを1日3回連続3日間投与し、更に磁場照射(周波数118kヘルツ;保磁力30.8kA/meter)投与日から5日間連続して行った群を群IIIとした。更に何も処理をしないコントロール群を群Iとした。群I、IIおよびIIIを比較すると、群IIでは、コントロール群(群I)と比較して注射直後に、統計的に優位に癌組織の増殖抑制が認められたが(NPrCAP/M自体には抗癌作用を有する)、更に磁場照射を行うと(群III)、群II及びコントロール群(群I)よりはるかに有効な癌組織の増殖抑制効果を示し、多くの実験マウス(7匹中6匹)において、癌組織の完全な消失が認められた。
さらに興味を引くことは、上記実験後(群IIIについては磁場照射後)の各実験マウス群において、メラノーマ細胞を移植しなかった反対側の正常皮膚にメラノーマ癌組織を移植したところ、コントロール群(群I)ではメラノーマの増殖が認められたのに、群IIIの磁場照射群の実験マウスでは、メラノーマの増殖拒絶が認められ、メラノーマが発生しなかった。
このことは、磁場照射後に生ずる温熱ショック蛋白を介した腫瘍拒否免疫機構が実験マウス群に生じたことを示すものである。
上記の動物実験に基き、実際のヒトに対して用いる場合には、以下の方法で行うことが可能となる。
すなわち、皮膚メラノーマ原発、転移巣に対し、NPrCAP/MまたはNPrCAP/MLを軟膏に混ぜ(好ましくは、10%軟膏碁剤をテープストリッピングに表皮角層を剥離後塗布)、封鎖密封療法(ODT療法)にて12時間塗布する。
或いは、直接マイクロインジェクターで腫瘍内に注射(好ましくは4%濃度・生食液)し、投与後24時間後に磁場照射(具体的条件としては、例えば、field frequency=118kHz;intensity=30.6kA/m;384 Oe)を隔日に、3回行い、24時間後に全切除する。
本発明の治療剤の治療効果に関しては、前記実験の群IIIのマウスにおける予備動物実験にて、3回の薬剤投与と磁場照射により腫瘍はほぼ消失することが判明している。また磁場照射を5回行うと腫瘍は完全に消失している。
しかしながら、患者の温熱免疫効果を発現させるためには、腫瘍を少し残すところまで本発明の治療剤および磁場照射を用いた治療を施した後、腫瘍免疫を高め、その後に腫瘍を外科的切除により完全に除去するのがよい。
本発明が提供する治療剤の剤形としては、外用剤として皮膚外用には親水軟膏基剤を用いるのが好ましく、製剤学的に汎用されている親水基剤を用いて、常法にしたがって軟膏剤を調製することができる。
また、局所投与に際しては注射による溶液投与が好ましく、通常の生理的食塩水を用い、投与するのがよい。
なお、外用軟膏剤を皮膚表面に塗布する前、ストリッピングで表皮のバリアーを省き、密封療法(12時間)を用い行うのが好ましい。局所投与は微量注入ポンプを用い、4%NPrCAP/MLの場合、2mLを30分程度かけて、また、NPrCAP/Mの場合には、5分程度をかけて投与するのがよい。
本発明が提供する治療剤は、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体自体の抗癌作用と、磁性微粒子、或いは磁性微粒子内包リポソームを用いた温熱による細胞殺効果に加えて、温熱照射に基づく熱ショック蛋白(heat shock protein,HSP)を介した温熱免疫効果が期待できるものである。
事実、マグネタイト内包リポソームを用い、磁場照射を行ったマウス・グリオーマはHSP70を介し、抗腫瘍免疫を起し、治療グリオーマの反対側の無治療グリオーマを消失させるものであった。
本発明が提供する治療剤による癌免疫の誘導は、次のようにして行われるものと推測される。まず、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体、例えば、NPrCAP/ML、或いはNPrCAP/Mをメラノーマ細胞にとりこませ、磁場をあてることにより、細胞内でマグネタイトが発熱し、細胞が壊死に陥る。この際、壊死細胞から、HSP−癌抗原ペプチド複合体が放出され、HSPレセプターにより樹状細胞にとりこまれ、MHC分子にペプチドが提示され、メラノーマ特異的なcytotoxic T cellを誘導し、獲得免疫を誘導するものと考えられる。またtoll like receptorを介して、サイトカインの産生を増加させ、免疫細胞を活性化することにより、自然免疫が活性化される。本発明においては、このような獲得免疫の誘導および自然免疫の活性化の2点により、癌免疫が誘導されるものといえる。
本発明が提供する治療剤による腫瘍免疫機構としては、以下の2経路が考えられる。その主たるものはメラノーマ細胞質に存在するHSPはTYRP−Iなどのメラノーマ特異癌抗原からプロテアソームにより生成された抗原ペプチドと結合し、癌抗原ペプチドを小胞体へ運ぶシャペロンの役割を果たす経路が挙げられる。
HSPによって小胞体へ運ばれた癌抗原ペプチドは、MHC class I分子に受け渡され、このMHC class i−癌抗原ペプチド複合体はゴルジ体をへて、細胞表面上に発現し、cytotoxic T cellに認識される。
一方、メラノーマ細胞に熱などのストレス負荷、あるいは細胞死が起こった場合、HSP−ペプチド複合体(HSP結合ペプチド)は細胞外に放出され、樹状細胞に結合もしくはとりこまれて、樹状細胞を活性化する。同時に、HSP結合ペプチドは、MHC class i分子によって提示され、cytotoxic T cellを誘導すると考えられる。
これまでにHSPにはいくつかの種類があることが知られており、これらのうちHSP70、HSP90、gp96の3つが癌免疫に関与していることが報告されている。本発明者等は、予備実験にてB16F1のメラノーマ細胞にCAP/ML、MLを取り込ませ、磁場をかけて、上清をELISA法にかけHSPを特定した。例えば、NPrCAP/ML 200μgに温熱を加え培養すると、46時間後にはHSP70の放出を認めた。同様にHSP90の放出も認められた。
さらに、本発明者等は、実際の人での治療法に順じ、予備動物実験で前記動物実験で準備したものと同様のB16F1メラノーマ担癌マウスに、式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体であるNPrCAP/Mを前記実験群IIIと同様に投与し、磁場照射(周波数118kヘルツ;保磁力30.8kA/meter)をNPrCAP/Mの投与日から3日間連続して行い、その後腫瘍を完全に切除し、その後再度同一マウスにB16F1メラノーマを接種したところ、コントロールは腫瘍の発育をみたが、NPrCAP/M投与加療群、及びNPrCAP/M投与/磁場照射加療群のいずれにおいても、再チャレンジしたB16F1メラノーマの発育阻止が認められた。
興味を引くことは、NPrCAP/Mのみ投与で磁場照射を行わない加療群においても、弱いながら抗メラノーマ発育抑制効果が認められたが、何よりもHSPを介した抗腫瘍免疫が認められ、再チャレンジしたメラノーマの拒絶反応が認められた。このことは、本発明の式(I)で示されるシステアミニルフェノール誘導体、例えば、NPrCAP/M自体にもHSPを介した癌拒絶免疫機構が存在することを示しているものであり、本発明の特異性がよく理解される。
以下に本発明を、具体的実施例を示すことにより、より詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:1−メルカプトプロピオニル−4−S−CAP(NPrCAP)の合成
Figure 2008019202
[第一工程]
Padgetteらの文献(J.Med.Chem.,27:1354−1357,1984)に従い、4−メルカプトフェノールと2−メチル−2−オキサゾリンを2時間還流させ、N−アセチル−4−S−システアミニルフェノールを、再結晶後70%の収率で結晶として得た。
次いで、このものを6M−塩酸水溶液で3時間還流させ、目的物の4−S−システアミニルフェノール(4−S−CAP)を、再結晶後80%の収率で得た。
[第二工程]
上記で得た4−S−システアミニルフェノール(4−S−CAP)を、N−スクシンイミジル−3−((2−ピリジル)ジチオ)プロピオネートとピリジン中室温下に2時間反応させた後、薄層クロマトグラフィーで精製した。得られた生成物をメタノール中ジチオトレイトールと室温下で2時間反応させ、目的物質である、1−メルカプトプロピオニル−4−S−CAP(NPrCAP)を薄層クロマトグラフィーで精製後、40%の収率(2段階)で得た。
実施例2:活性化反応性架橋基を有する直接結合型マグネタイト内包リポソーム(ML)の合成
リン脂質であるホスファチジルコリン10mg(SIGMA社製)、ホスファチジルエタノールアミン4.5mg(東京化成社製)と、活性型リン脂質であるDPPE−プロピルマレイミド2mg(日本油脂社製)を500μLのクロロホルムに混合、溶解させ、溶媒を留去した後、半日以上4℃のデシケーターにて乾燥保存し、これに平均粒子径10nmのマグネタイト(戸田工業株式会社製)で40mg/mLの濃度に調整した水分散マグネタイトを2mL加え、激しくボルテックスし、その後超音波処理(28W)20分間を行い、下式で示される、マグネタイトを内包する1重膜のリポソーム(ML)の表面に活性化反応性架橋基(A)を有する直接結合型マグネタイト内包リポソームを得た。
Figure 2008019202
実施例3:活性化反応性架橋基を有する直接結合型マグネタイト(M)の合成
実施例2で用いたものと同様の40mg/mLの濃度の水分散マグネタイトの懸濁液10mLをスターラーで攪拌しながら、アミノシランカップリング剤として3−アミノプロピルトリエトキシシラン(TCI)を100μL滴下し、60分間室温で反応させた後、2,500rpmで2分間遠心分離して上清液を除き、更にミリQ水にて3回の洗浄を行った後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)に置き換え、この溶液にSulfo−GMBS(PIERCE社製)のPBS溶液を加え、激しく攪拌し反応させ、遠心分離して上清液を除き、更にミリQ水にて3回の洗浄を行い、10mLのミリQ水を加えることで、下式で示される、活性化反応性架橋基(B)を有する直接結合型マグネタイト(M)を得た。
Figure 2008019202
実施例4:N−(1−メルカプトプロピオニル−4−S−CAP結合型マグネタイト内包リポソーム(NPrCAP/ML)の合成
リポソームの表面に活性化反応性架橋基(A)を有するマグネタイト内包リポソーム(ML)の40mg/mLに、実施例1で得たNPrCAPを1mg加えて、室温で10分間攪拌後、4℃の冷蔵庫で一晩放置した。その後、3,000rpm/分で遠心し、沈殿物をミリQ水による洗浄を3回繰り返した後、ミリQ水10mLで懸濁させ、目的とするマレイミド基にNPrCAPが結合したNPrCAP/MLを得た。
Figure 2008019202
実施例5:n−(1−メルカプトプロピオニル−4−S−CAP直接結合型マグネタイト(NPrCAP/M)の合成
マグネタイトの表面に活性化反応性架橋基(B)を有する直接結合型マグネタイト(M)の40mg/mLに、実施例1で得たNPrCAPを1mg加えて、室温で10分間攪拌後、4℃の冷蔵庫で一晩放置した。その後、3,000rpm/分で遠心し、沈殿物をミリQ水による洗浄を3回繰り返した後、ミリQ水10mLで懸濁させ、目的とするマレイミド基にNPrCAPが結合したNPrCAP/Mを得た。
Figure 2008019202
実施例6:NPrCAPのマグネタイトへの取り込み量の測定
NPrCAPのマグネタイトへの取り込み量は、NPrCAP/Mを6M−塩酸(5%チオグリコール酸を含む)で110℃、1.5時間反応させ、生成する4−S−CAP量をHPLCで定量することにより測定した。
その結果、マグネタイト1mgあたり610nmolのNPrCAPが結合していることがわかった。
HPLCの分析条件
カラム:Capcel pak(C18)、
移動相:メタノール:水:1M−HClO4(用量比で10:90:1.5)、
流速:0.7ml/min、
検出器:UV(250nm)、
カラム温度:50℃
実施例7:NPrCAPのチロシナーゼ酸化
NPrCAP/Mは4−S−CAP部分を含むので、NPrCAP/Mのチロシナーゼ酸化を行う前に、4−S−CAPのチロシナーゼ酸化を検討した。
0.1mMの4−S−CAPを0.2mMシステインの共存下に、チロシナーゼ(40μg/mL)酸化した。酸化反応は、10分で終了した。
生成した4−S−システアミニル−6−S−システイニル カテコールは7.5分の保持時間であった。なお、初期濃度が半分になる時間は、4.2分であった。
実施例8:NPrCAP/Mのチロシナーゼ酸化
NPrCAP/Mの0.1mMを0.2mMのシステインの共存下、チロシナーゼ(40μg/mL)酸化し、30分、1時間、3時間反応させた。反応生成物を6M−塩酸(5%チオグルコール酸を含む)で110℃、1.5時間反応させHPLCで分析後、残存する4−S−CAP量と生成する4−S−システアミニル−6−S−システイニル カテコール量を測定した。NPrCAP/Mの初期濃度が半分になる時間は、69分であった。
この結果から、4−S−CAP/(NPrCAP/M)の反応速度の比は、16.4になった。
一方、生成した4−S−システアミニル−6−S−システイニル カテコール量は時間とともに増加し、3時間後、80μMとなった。
以上の事から、NPrCAP/Mがチロシナーゼの基質になることが判明した。
実施例9:製剤例(1)軟膏剤
実施例4又は5で得たNPrCAP/ML又はNPrCAP/Mを、日本薬局方記載のマクロゴール軟膏に、10%含有量で混合し、軟膏剤を得た。
(2)注射剤
実施例4又は5で得たNPrCAP/ML又はNPrCAP/Mを、用時生理食塩水と4%濃度で懸濁させ、注射剤とした。
以上記載のように、本発明は、磁気微粒子が有する腫瘍細胞に対する温熱免疫効果と、システアミニルフェノール誘導体が有する殺腫瘍細胞効果を相乗的に発現させることにより、従来のメラノーマ治療法の概念とは全く異なる新しい、化学・温熱免疫ナノメディシン療法に使用することができるメラノーマ標的温熱免疫治療剤を提供するものであり、その医療上の価値は多大なものである。

Claims (6)

  1. 次式(I):
    Figure 2008019202
    (式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はC1〜C8のアルキル基を、R3は、水素原子、C1〜C8のアルキル基又はC1〜C8のアルカノイル基を表し、nは1〜5までの整数を表す。ただしnが1のとき、R1、R2及びR3が同時に水素原子であることはない。)
    で表されるシステアミニルフェノール誘導体と、磁性微粒子、または磁性微粒子を内包するリポソームとの重合体を有効成分とすることを特徴とするメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤。
  2. 前記磁性微粒子がマグネタイトであることを特徴とする請求項1に記載のメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤。
  3. 前記式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はC1〜C6のアルキル基を、R3は、水素原子、C1〜C6のアルキル基又はC1〜C8のアルカノイル基を表し、nは1または2の整数である請求項1又は2に記載のメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤。
  4. 前記式(I)中、R1が水素原子又はメチル基であり、R2が水素原子又はメチル基であり、R3がメチル基、アセチル基又はプロピオニル基である請求項1〜3のいずれかに記載のメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤。
  5. 前記重合体において、前記磁性微粒子又は前記リポソーム間の結合が活性化架橋結合基およびメルカプト基との結合を介しており、前記メルカプト基は前記式(I)の末端に付加されてなるものである請求項1〜4のいずれかに記載のメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤。
  6. 前記活性化架橋結合基が、マレイミド基である請求項5に記載のメラノーマ標的温熱免疫療法治療剤。
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