JP5082439B2 - 水系カーボンブラック分散液及びその製造方法、並びに水系インク - Google Patents
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本発明に使用される上記(A)成分(ジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体又はジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体の水添物であって、かつスルホン酸基またはその塩を有する重合体)は、ジエン単量体を必須成分とするジエン系(共)重合体あるいはその水添物(以下「ベース重合体」ともいう)を、スルホン化することによって得られるものである。(A)成分は、水系カーボンブラック分散液やそれを使用した水系インクにおけるカーボンブラックの分散剤として使用される。(A)成分を使用することにより、保存安定性及び耐マーカー性に優れた水系カーボンブラック分散液や、それを使用した水系インクを得ることができる。
本発明の水系カーボンブラック分散液には、(B−1)成分(DBP吸収量が250ml/100g〜500ml/100gのカーボンブラック)と、(B−2)成分(DBP吸収量が130ml/100g〜230ml/100gのカーボンブラック)とが含有されている。(B−1)成分は、得られた水系インクを印字物にしたときの印字濃度を高くすることが可能であるが、水系インクの粘度、保存安定性(再分散性)及び耐マーカー性を低下させるものであった。これに対し、(B−2)成分は、得られた水系インクの粘度を低下させ、保存安定性及び耐マーカー性を向上させることが可能であるが、水系インクを印字物にしたときの印字濃度を高くできないものであった。なお、上記において、DBP吸収量とは、カーボンブラックに吸着されるジブチルフタレート容量をいい、JIS K6221に従って測定される。
本発明の水系カーボンブラック分散液には、上記一般式(1)で表される、アセチレングリコール((D)成分)が含有されている。本発明の水系カーボンブラック分散液は、(D)成分を含有することにより、水系(水性)インクとしたときに、普通紙のように目が粗く液体の浸透し易い記録媒体に印字する場合に、インクが記録媒体に浸透してくことを抑制することが可能になる。そのため、その印字物の印字濃度を高くすることができる。そして、更に、(D)成分を含有することにより、水性インクの、粘度を低下させ、吐出安定性を良好にすることができる。(D)成分としては、例えば、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ヘプチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、印字濃度の観点から、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールが好ましい。
本発明の水系カーボンブラック分散液は、更に(E)水溶性有機溶剤((E)成分)を含有してもよい。(E)成分としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、グリセリン等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−プロピルケトン等のケトン化合物;酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸エチル等のエステル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール化合物;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル化合物;N−メチル−2―ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素化合物;その他テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等、アセテート、チオジグリコール、チオール等の水溶性有機溶剤として一般に使用されるが挙げられるが、好ましくはアルコール化合物、又は、グリコールエーテル化合物である。より好ましくは下記1)又は2)のいずれかのアルコール化合物、又は、下記3)のグリコールエーテル化合物である。尚、下記1)のアルキル基、及び、下記2)のアルキル基及びアルキレン基は直鎖でも分岐していてもよい。
2)炭素数3〜6のアルキル基、又は炭素数3〜6のアルキレン基を有する多価アルコール化合物。
3)上記アルコールのグリコールエーテル化合物。
本発明の水系カーボンブラック分散液には、更に他の分散剤を併用することも可能である。他の分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などが挙げられる。また、本発明の水系カーボンブラック分散液は、更に前記界面活性剤、pH調整剤等を含有してもよい。
本発明の水系カーボンブラック分散液は、(C)水を含む水性媒体中で、上記(A)成分、(B−1)成分、(B−2)成分及び(D)成分を、分散機で分散処理して製造されたものであることが好ましいが、(E)成分の存在下で分散処理して製造されたものでもよい。また、本発明の水系カーボンブラック分散液は、(C)水を含む水性媒体中で、上記(A)成分、(B−1)成分、及び(B−2)成分を分散機で分散処理してカーボンブラック分散液を作製し、得られたカーボンブラック分散液に(D)成分を配合して製造されたものであることも好ましい。このように、(A)成分の存在下、分散処理することにより、(A)成分が分散剤として機能し、カーボンブラックが均一に分散した水系カーボンブラック分散液を得ることができる。また、他の添加剤の存在下で分散させてもよい。水性媒体としては水が好ましい。本発明において、「分散処理する」とは、上記所定の混合液を、分散機を用いて均一に分散させることをいう。従って、単に、通常の撹拌機等で撹拌しただけでは「分散処理」したことにはならない。使用する分散機は、サンドミル、ホモジナイザー、アトライター、ボールミル、ペイントシェーカー、フルイダイザー、高速ミキサー、超音波分散機等であり、ミル媒体として、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、ステンレスビーズなどを使用してもよいし、しなくてもよい。分散時間は5分〜24時間、好ましくは30分〜8時間である。より具体的には、0.01〜1.0mmの粒子径のセラミックビーズを用いて遊星ボールミルあるいはサンドミルでインクを分散する方法がある。この場合に、遊星ボールミルでは加速度5〜50G、サンドミルではセラミックビーズの充填率50〜90%で周速5〜20m/sで行うと好ましい。また、(B−1)成分のカ−ボンブラックのみ((B−2)成分は入れずに)を同様に調製した分散液と、(B−2)成分のカ−ボンブラックのみ((B−1)成分は入れずに)を同様に調製した分散液を、混合しても良い。
本発明の水系インクは、上述した本発明の水系カーボンブラック分散液に、更に、水、前記(D)成分あるいは前記(E)成分などの水溶性有機溶剤、その他、pH調整剤、浸透剤、界面活性剤などの公知の添加剤を添加し、混合することにより得ることができる。本発明の水系インクには、水系カーボンブラック分散液中のカーボンブラック固形分が1〜15質量%含有されていることが好ましい。また、本発明の水系インクの粘度は、2〜10mPa・sであることが好ましく、3〜7mPa・sであることが更に好ましい。本発明で得られた水系インクはインクジェット記録用インクとして好ましく使用できる。本発明の水系インクを使用したインクジェット記録用インクは、紙、OHP等のメディアに印字した場合に、印字品質、すなわち、印字濃度、耐マーカー性に優れたものである。
本発明の水系カーボンブラック分散液の製造方法は、(A)ジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体又はジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体の水添物であって、かつスルホン酸基またはその塩を有する重合体、(B−1)DBP吸収量が250ml/100g〜500ml/100gのカーボンブラック、(B−2)DBP吸収量が130ml/100g〜230ml/100gのカーボンブラックを、(C)水および(D)アセチレンアルコ−ルの存在下で分散させて水系カーボンブラック分散液を製造するものである。
表1に示すように、重合体A8質量部、カーボンブラックB−1(a)2質量部、カーボンブラックB−2(a)13質量部、3−メチル−1−ペンチン−3−オ−ル3質量部、及び水74質量部を、スリーワンモーターを用いて、室温、500rpmで10分間予備混合した。予備混合した分散液60ml、0.3mmのジルコニアビーズ70mlを、三菱重工業社製ダイヤモンドファインミルMD−1型分散機に仕込み、内温15℃〜40℃、周速11m/sで30分間分散し、水系カーボンブラック分散液を得た。水系カーボンブラック分散液の粘度及び粒子径を下記方法により測定した。結果を表2に示す。一方、得られた水系カーボンブラック分散液40gに3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オ−ル1g、3−メチル−1−ペンチン−3−オ−ル9g、水50gを混合して水系インク(インクジェット記録用インク)を調製した。得られた水系インクを、IJプリンターMC2000(セイコーエプソン社製)を用いて、市販普通紙XEROX4200(XEROX社製)に印字し、印字品質を以下のように評価した。その結果を表3に示す。
B−1(a)を4質量部とし、B−2(a)の代わりにB−2(b)を11質量部使用し、3−メチル−1−ペンチン−3−オ−ルの代わりに3−メチル−1−ブチン−3−オ−ルを使用して水系カーボンブラック分散液を得た以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。そして、実施例1と同様にして印字品質を評価した。
重合体Aの代わりに重合体Bを使用し、B−1(a)の代わりにB−1(b)を使用し、3−メチル−1−ペンチン−3−オ−ルの代わりに3−メチル−1−ブチン−3−オ−ルを使用して水系カーボンブラック分散液を得た以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。そして、実施例1と同様にして印字品質を評価した。
重合体Aの代わりに重合体Cを使用し、B−1(a)の代わりにB−1(b)を使用した以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。そして、実施例1と同様にして印字品質を評価した。
3−メチル−1−ペンチン−3−オ−ルを使用せずに水系カーボンブラック分散液を得た以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。そして、実施例1と同様にして印字品質を評価した。
重合体Aの代わりに重合体Dを使用した以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。そして、実施例1と同様にして印字品質を評価した。
B−1(a)を使用せず、B−2(a)を15質量部使用した以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。そして、実施例1と同様にして印字品質を評価した。
B−1(a)を15質量部使用し、B−2(a)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。そして、実施例1と同様にして印字品質を評価した。
表1に示すように、重合体A8質量部、カーボンブラックB−1(a)2質量部、カーボンブラックB−2(a)13質量部、1,2−ヘキサンジオール3質量部、及び水74質量部を、スリーワンモーターを用いて、室温、500rpmで10分間予備混合した。予備混合した分散液60ml、0.3mmのジルコニアビーズ70mlを、三菱重工業社製ダイヤモンドファインミルMD−1型分散機に仕込み、内温15〜40℃、周速11m/sで30分間分散し、水系カーボンブラック分散液を得た。水系カーボンブラック分散液の粘度及び粒子径を下記方法により測定した。結果を表2に示す。一方、得られた水系カーボンブラック分散液40gにトリエチレングリコールモノブチルエーテル10g、水50gを混合して水系インク(インクジェット記録用インク)を調製した。得られた水系インクを、IJプリンターMC2000(セイコーエプソン社製)を用いて、市販普通紙XEROX4200(XEROX社製)に印字し、印字品質を以下のように評価した。
重合体A;イソプレン(IP)/スチレン(ST)(50/50モル比)ブロック共重合体のスルホン化物(イソプレン単位をスルホン化)、スルホン酸(塩)基含量 1.5mmol/g、Mw 10,000
B−1(a):Printex XE2B(デグサ社製)、DBP吸収量:380ml/100g、比表面積:950m2/g
カーボンブラック粒子径;
大塚電子社製、Photal PAR−IIIを用いて、得られた水系カーボンブラック分散液および水系インクのそれぞれに含有されるカーボンブラックの数平均粒子径を測定した。
東機産業社製E型粘度計、RE−80Lを用いて、得られた水系カーボンブラック分散液および水系インクの粘度を測定した。
得られたインクを70℃、2週間、栓付のガラス容器に密封して静置保存した。保存前と保存後の25℃の粘度を上記粘度計で測定し、以下の判定をした。
○:保存前と保存後の粘度の差が0.5mPa・s未満
△:保存前と保存後の粘度の差が0.5〜1mPa・s
×:保存前と保存後の粘度の差が1mPa・sを超える
マクベス濃度計により印字物の光学濃度(OD値)を測定した。
市販水性マーカー(カクテルライン(黄色)(ペンテル社製)を用いて、印字物をマーキングした。同じ部分を同じ強さで3回マーキングし、水性マーカーにカーボンブラックの黒色が転写するか否かで、耐マーカー性を判断した。
○:3回マーキングしてもマーカーが黒く汚れない
△:1回のマーキングでは汚れないが、2回目のマーキングによりマーカーが黒く汚れる
×:1回のマーキングによりマーカーが黒く汚れる
得られた水系インクを、IJプリンターMC2000(セイコーエプソン社製)を用いて、市販普通紙XEROX4200(XEROX社製)に連続して20枚ベタ印字を行った。印字した20枚の印字状態を、目視で観察し、幅0.5mm以上のカスレ(インクがのっていない部分)があるか否かで、吐出安定性を評価した。
○:20枚すべてに「かすれ」が生じない
△:20枚中、1〜2枚に「かすれ」が生じる
×:20枚中、3枚以上「かすれ」が生じる
Claims (5)
- (A)ジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体又はジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体の水添物であって、かつスルホン酸基またはその塩を有する重合体、
(B−1)DBP吸収量が250ml/100g〜500ml/100gのカーボンブラック、
(B−2)DBP吸収量が130ml/100g〜230ml/100gのカーボンブラック、
(C)水、及び
(D)下記一般式(1)で表されるアセチレンアルコ−ル
を含有し、前記(B−1)成分と前記(B−2)成分との質量比が、(B−1)/(B−2)=5/95〜40/60である水系カーボンブラック分散液。
- 含有されるカーボンブラック((B−1)及び(B−2))の数平均粒子径が、50〜250nmである請求項1に記載の水系カーボンブラック分散液。
- (A)ジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体又はジエン系単量体に由来する構成単位を含む(共)重合体の水添物であって、かつスルホン酸基またはその塩を有する重合体、(B−1)DBP吸収量が250ml/100g〜500ml/100gのカーボンブラック、(B−2)DBP吸収量が130ml/100g〜230ml/100gのカーボンブラックを、(C)水および(D)アセチレンアルコ−ルの存在下で分散させる水系カーボンブラック分散液の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の水系カーボンブラック分散液を含有する水系インク。
- インクジェット記録用インクとして使用する請求項4に記載の水系インク。
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