JP5080779B2 - リポソーム製剤の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、リモートローディング法による薬物導入工程について、本発明者らが検討したところ、実施例として後述するように小規模の反応では、脂質膜の相転移点以上の温度に加熱すると1分で終了することを見出した(図3参照)。しかしこの事実は、スケールが上ればリポソーム懸濁液と薬物溶液を混合する工程において1分間以上の時間を要してしまう(後述の比較例参照)ことから、製剤中のリポソーム粒子間での薬物導入量の不均一化が懸念されることを示すものであることがわかった。すなわち、上述したように少量ずつ薬物をリポソーム懸濁液に添加するようにしても、薬物溶液がはじめに接触したリポソーム懸濁液中の一部のリポソームに対しては、薬物は過剰量存在することになり、充分にリポソーム内に導入(封入)されるが、順次薬物量は減少しかつリポソーム懸濁液中に分散するのでリポソームに接触する薬物濃度は減少し、以降新たに接触するリポソーム懸濁液中のリポソーム内に導入される薬物量は次第に減少していってしまう。あるいは、投入された薬物がすべてのリポソーム粒子に行き渡る前に一部のリポソームによって全量消費(導入)されてしまい、残余のリポソームに導入されない、または導入されても導入量の少ないリポソーム粒子が発生してしまう。
前述したように現状実施されている方法では、実験室レベルの小スケール製造では均一で安定な製剤化が可能な場合があるが、中・大規模製造への移行に伴い、膨大な時間を要するプロセスとなり、また、熱暴露時間の増加により製剤の物理化学的安定性が懸念される。さらに、薬物導入工程において、薬物導入時間の観点から製剤間の薬物導入量の不均一化が懸念される。以上の三点、すなわち、コスト面の観点、製剤の物理化学的安定性の観点及び品質面の観点から、実用化のための中・大規模製造への薬物導入工程の適用が懸念されるが、これらの課題を解決した方法は存在せず、不十分な製造条件下で薬物導入工程を実施せざるを得ないのが現状である。
(1)リモートローディング法を用いるリポソーム製剤の製造方法であって、予め調製されたリポソームの懸濁液と、薬物との混合液を急速加熱手段により、該リポソームの膜相転移点以上の温度ないし80℃以下の温度に加熱して前記リポソーム内に前記薬物を導入する薬物導入工程を含む、リポソーム製剤の製造方法。
前記薬物導入工程に先立って、前記リポソームの懸濁液と前記薬物とを前記リポソームの膜相転移点以下の温度で混合する工程をさらに含むことができる。
(2)前記薬物がイオン勾配法によりリポソーム内に導入される(1)に記載のリポソーム製剤の製造方法。
(3)前記急速加熱手段が熱交換器である(1)または(2)に記載のリポソーム製剤の製造方法。
熱交換器はキャピラリー型熱交換器であることが好ましく、キャピラリーの管径(内径)は、通常、0.5〜15mmである。
(4)前記熱交換器による熱交換器内滞留時間が3〜120秒である(3)に記載のリポソーム製剤の製造方法。
リポソーム製剤は、リポソーム内に薬物を封入したものである。リポソーム製剤の製造方法はいくつかあるが、本発明は、薬物を封入しようとするリポソームを予め調製し、該リポソーム内に薬物を導入するいわゆるリモートローディング法によるリポソーム製剤の製造方法である。特に、本発明は、後述するような特定の薬物導入工程(2)を行うことを特徴としている。
このような薬物導入工程(2)に供されるリポソームは、薬物をリモートローディングできるものであれば特に制限されないが、まず、薬物を封入しようとするリポソームおよびその調製工程(1)について説明する。
リポソームは、リン脂質二重膜で形成される閉鎖小胞であり、膜を隔てて、閉鎖空間内の内水相と外水相とが存在する懸濁液の状態で存在する。したがって、本明細書において、リポソームの語は、このリポソーム懸濁液を含む意味で使用されることがある。リポソームの膜構造は、脂質二重膜の1枚層からなるユニラメラ小胞(Unilamellar Vesicle)および多重ラメラ小胞(Multilamellar Vesicle,MLV)、またユニラメラ小胞としてSUV(Small Unilamellar Vesicle)、LUV(Large Unilamellar Vesicle)などが知られている。本発明では、膜構造は特に制限されない。
このような膜成分の脂質全量を100mol%とするとき、リン脂質は、通常20〜100mol%であり、好ましくは40〜100mol%であり、他の脂質は、通常0〜80mol%であり、好ましくは0〜60mol%である。
膜修飾成分としては、たとえば親水性高分子、および他の表面修飾剤が挙げられる。これら膜修飾成分の使用時期は、リポソーム調製工程であれば特に制限されないが、これらのうち、親水性高分子による膜修飾は、分布の効率ならびに親水性高分子が内水相に存在する薬物の影響を受けにくいなどの面から、親水性高分子をリポソーム膜の外表面、特に脂質二重膜の外膜から外液側に選択的に分布させることが好ましい。このため、本発明では、リポソームを生成させた後、特に整粒化工程後に添加することが望ましい。
親水性高分子は、特に制限されないが、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリプロピレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。さらに、グルクロン酸、シアル酸、デキストラン、プルラン、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナンなどの水溶性多糖類およびその誘導体、たとえば糖脂質が挙げられる。
なお本発明において、「血中滞留性」とは、リポソーム製剤を投与した宿主において、リポソームに封入された状態の薬物が血液中に存在する性質を意味する。
親水性高分子によるリポソーム修飾率は、膜(総脂質)に対する親水性高分子量の割合として、通常0.1〜10mol%、好ましくは0.1〜5mol%、より好ましくは0.2〜3mol%である。なお、この総脂質には、親水性高分子の脂質誘導体中の脂質も含まれる。
リポソーム懸濁液の調製方法としては、水和法(Bangham法)、超音波処理法、逆相蒸発法(Reverse phase evapolation vesicles)、加温法、脂質溶解法、DRV法(Dehydrated/Rehydrated Vesicles)、凍結融解法、エタノール注入法、薄膜法、エクストリュージョン法、高圧吐出型乳化機による高圧乳化法(「ライフサイエンスにおけるリポソーム」寺田、吉村ら編;シュプリンガー・フェアラーク東京(1992))などの各種の技術が知られている。これら手法についての文献中の記載は引用することにより本明細書に記載されているものとすることができる。
また近年開発された技術として、超高圧による圧縮からの速度変換を利用し、液相下でのジェット流により剪断乳化を行うジェット流乳化法、超臨界二酸化炭素を利用したリポソーム調製技術、後段の整粒工程を簡便化する改良型エタノール注入法などもある。
これら工程を行うにあたり、上記に示すような調製方法を必要に応じて適宜に採用することができる。また1方法だけでなく、2以上の方法を選択することもでき、同じまたは別の方法を重複ないし追加することもできる。
上記のうちでも、脂質溶解法は、実用化指向の方法として、またDRV法は、内水相に薬物を多く保持するための方法として有用である。たとえばエタノールを用いて脂質を加温溶解させる方法は広く用いられている。一般的にリポソームは相転移点をもつため、リポソームの調製のための外液置換工程(iii) の前段各工程を主膜材の相転移点以上の温度で実施することが好ましい。
また、リポソーム懸濁液の調製工程(1)のうちでも、リポソーム生成工程(i)における脂質均一化工程、整粒工程(ii)および表面修飾工程(iii) 、さらに後段の薬物導入工程(2)はリポソームの変形及び脂質膜の液晶化を利用して行われる工程であるため、上記加温温度が求められる。しかし、これらの工程以外では、リポソームの変形による粒子径変動を避けるため、外液置換工程(iv)、薬物導入工程(2)における未封入薬物除去工程、および最後段の無菌化工程は、主膜材の相転移点以下の低温で行うことが望ましい。
以下、この低温とは、たとえば、主膜材の相転移点が50℃付近である場合、0〜40℃程度が好ましく、典型的には、5〜25℃程度をいう。
リポソーム生成工程(i)では、上記のような膜成分と水相とを混合してリポソームを生成させ、リポソーム粗懸濁液を得る。膜成分と混合する水相は、通常、浸透圧調整剤、pH調整剤などを必要に応じて注射用水に溶解した水性溶液が用いられる。
工程(i)において、膜安定化剤などとして他の脂質をリン脂質とともに用いてリポソームを生成させる場合には、膜成分と水相との混合に先立って、複数種の脂質による不均一化を避けるための均一化工程を行うことが望ましい。この均一化方法は、特に限定されないが、通常、膜成分の特に脂質を有機溶媒に完全溶解して脂質溶液を調製する。有機溶媒は、通常、たとえばクロロホルム、エタノールなどの揮発性のものが使用される。産業レベルでの実用化の観点からは、エタノール、特に無水エタノールが好ましい。この溶解を、上記した主膜材の相転移点以上の加温温度下で行えば、均質な脂質溶液が得られやすい。
整粒工程において、リポソーム粗懸濁液が上記主膜材の相転移点以上であれば、粒子径制御が容易である。
混合方法は、リポソーム整粒液に親水性高分子溶液を添加してもよく、その逆でもよい。混合は、撹拌しながら行うことが好ましい、撹拌は、通常、プロペラ式撹拌機などの撹拌装置を用いることができる。
なお、結合されなかった表面修飾剤は、後段の未封入薬物除去工程において除去することができる。この点からも、未封入薬物除去工程は、表面修飾工程以降にあることが望ましい。
整粒および表面修飾されたリポソームは、以降の工程を安定的に実施することができ、通常知られている条件下で実施することができる。外液置換工程(iv)は、無用な熱をかけないように上記した低温で行うことが好ましい。すなわちたとえば、主膜材の相転移点が50℃付近である場合には、0〜40℃程度が好ましく、典型的には5〜25℃程度である。この工程において、リポソーム生成工程(i) から持ち込まれるアルコール、表面修飾工程(iii) でリポソーム内に導入されなかった親水性高分子の除去を行うことができる。なお、リポソーム製剤を病棟で要事調製する際には、リポソーム製剤の製造としては、本工程(iii) 後、無菌化工程を経て最終製剤となり、この最終製剤について、薬物導入工程(2)を病棟の要事調製時に行う。
る。本発明では、予め調製されたリポソーム内に、所望の薬物を導入するリモートローディングが実施できれば、その勾配の種類は特に限定されない。以下に、いくつかリモートローディングの具体例を挙げる。
なお、アンモニウムイオン濃度勾配に対するリモートローディング法により予め形成されているリポソーム中に薬物を導入する技術そのものは、米国特許第5192549号明細書に記載されており、これを参照して行うことができ、またこの記載を引用して本明細書に記載されているものとすることができる。
プロトン化しうるアミノ基を有する有機化合物としては、低分子量のものが望ましく、具体的にはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、アミノエタノールなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明では、上記外液置換工程(iv)後のリポソーム懸濁液を用いて、リモートローディング法により薬物を導入する。薬物は、通常、薬物溶液で導入される。
なお、リポソームに薬物を封入するとは、内水相として、または内水相中に薬物を含ませることをいい、リポソーム製剤とは、この薬物が封入されたリポソームをいう。この封入とは、薬物が膜に付着などにより保持されたものあるいは膜中に保持されたものも含むことを意味し、この場合には薬物が必ずしも内水相に溶解した状態で存在するとは限らない。
具体的には、混合液の送液中の微小時間に瞬間的に加温し薬物を封入する方法である。
本発明において、薬物導入工程の加温手段として熱交換器の利用は、この特性を有効に利用したものである。一般的には、多管円筒形(キャピラリー型)熱交換器、二重管式熱交換器、プレート式熱交換器、コイル式熱交換器、渦巻き式熱交換器、ジャケット熱交換器、非金属熱交換器などがよく知られている。また、一方の流体が開放系である加熱炉、蓄熱式熱交換器(固体に低温、高温流体を交互に接触させ、熱交換させる)などがある。
本発明のリポソーム製剤において、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上の高い薬物封入率を達成することができる。この薬物封入率は、平均値として得られる値であるが、このような高い封入率であれば、個々のリポソーム製剤間のバラツキが少なく、製剤全体で均質な封入率であることを意味する。
未封入薬物除去工程は、薬物導入工程後の未封入薬物の除去を目的とした工程であり、基本的には外液置換工程と同様の操作を行うが、外水相に残留する薬物を除去するという目的の点で異なっている。
本発明では、無菌化工程としては、ろ過滅菌が最も好ましい。ろ過滅菌法においては、リポソームは透過するが、指標菌として用いられるBrevundimonas diminuta(サイズ、約0.3×0.8μm)は濾過されないことが要求されるため、Brevundimonas diminutaに較べ充分に小さい粒子であることが必要である。粒径が100nm付近であることは、ろ過滅菌工程をより確実にする上でも重要である。
なお、製造方法によっては、この無菌化工程を設定しなくてもよい。
本発明のリポソーム製剤は、製造工程における熱履歴が極力抑えられているので、リポソーム製剤の脂質の分解を抑制することができ、保存時の安定性が優れている。この保存安定性は、脂質リゾ体の生成率により評価することができる。
(調製例1〜8)リポソーム製剤の調製
(1)リポソーム懸濁液の調製
<リポソームの形成>
水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC,分子量790,リポイド(Lipoid)社製SPC3)70.53gおよびコレステロール(Chol,分子量386.65,ソルベイ(Solvay)社製)29.50gを秤量し、無水エタノール100mLを添加し、加温溶解した。
得られた脂質のエタノール溶液100mLに、約70℃に加温した250mMの硫酸アンモニウム溶液900mLを添加し、撹拌して粗リポソーム懸濁液を調製した。この粗リポソーム懸濁液を、約65℃に加温したエクストルーダー(Lipex Biomembranes社製)を用いて孔径100nmのフィルター(ポリカーボネートメンブラン)を5回通過させ、リポソーム懸濁液を得た。
得られたリポソーム懸濁液を加温状態で維持したまま、ポリエチレングリコール5000−ホファチジルエタノールアミン(PEG5000-DSPE,分子量5938,日本油脂社製)の7.69g/200mL−注射用水溶液を、PEG導入率=0.75mol%となる量で、直ちに添加し、加温撹拌することで、リポソームの膜表面(外表面)をPEG修飾した。加温終了後のリポソーム懸濁液は、速やかに氷冷した。
なお、上記PEG導入率(mol%)=(PEG5000-DSPE/Total Lipid)×100
である。ここでのTotal Lipidは、リポソーム膜を形成する脂質成分の総量(HSPC+Chol+PEG5000-DSPE)である。各脂質成分は高速液体クロマトグラフ(HPLC)によって定量した。
ろ過装置(ザルトリウス社製メンブレンクロスフロー:ザルトコン スライス(分画分子量300K)を用い、上記PEGで修飾されたリポソーム懸濁液の分散媒(外水相)を、10%スクロース/10mMトリス溶液(pH9.0)にて外液置換した。このとき、リポソーム懸濁液の濃度が常に一定になるように排出される液量と等量の外水相を供給した。外液置換後のリポソーム懸濁液は氷冷した。
この調製例では、急速加熱手段として熱交換器を用いて薬物導入を行った。この態様例における薬物導入工程を説明するための模式図を図1に示す。ここでは、熱交換器1として、ステンレススチール製多管円筒形熱交換器(キャピオックス(登録商標)カーディオプレギアCX−CP50,テルモ社製,管内径:1mm,管内有効断面積:640cm2)を用いた。
ガラス瓶4中のリポソーム懸濁液と薬物溶液との混合液は、熱交換器1内を一定速度で流れるようにポンプ2を介して熱交換器1内に送液した。熱交換器1は恒温槽3で加温した。熱交換器1から送出される薬物封入リポソーム懸濁液はガラス瓶5で受液した。
高速液体クロマトグラフにて外液置換後のリポソームの脂質(HSPC)を定量分析し、定量されたHSPCから算出した総脂質濃度をもとに、塩酸ドキソルビシン(Dox,分子量579.99)/総脂質(mol/mol)が0.16となるようにDox量を計算した。計算結果をもとに必要量のDoxを秤量し、10% スクロース/10mMトリス(pH9.0)溶液を用いて10mg/mLのDox溶液(薬物溶液)を調製した。
上記リポソーム懸濁液および薬物溶液を用いて、リモートローディング法による各温度(25、35、37.5、40、45、50℃)における薬物導入速度を小容量の反応容器で模式的に検討した。
50mLのガラス容器中、予め各温度に加温したリポソーム懸濁液15mLに、予め予め各温度に加温した8mLのDox溶液(塩酸ドキソルビシン/総脂質=0.16mol/mol,10mg/mL)を加え、1,2.5,5,7.5,10,20分間インキュベートした。各温度における未封入薬物濃度を求めた。また、薬物の透過は一次速度式に従うと仮定し、次式で示される関数を求め、その傾きを薬物導入速度定数とした。
C=C0・EXP(−k・t)
式中、C:未封入薬物(Dox)の濃度(mg/mL)
C0:未封入薬物(Dox)の初期濃度(mg/mL)
t:時間(min)
k:薬物導入速度定数(mg/mL/min)
上記検討1において、インキュベート温度50℃での各インキュベート時間における薬物導入率を求め、薬物導入の所要時間を調べた。
薬物導入率(Dox封入効率)は、薬物封入リポソームに生理食塩水を加えて20倍希釈した後、超遠心(1×105g,2時間,10℃)し、薬物封入リポソームを沈降させ、上清中の薬物濃度(mg/mL)から下記式により求めた。
50℃におけるインキュベート時間に対する薬物導入率を図3に示す。インキュベート温度50℃において、薬物導入率は、試験したうちの最短時間(図中、矢印)でほぼ飽和していることがわかった。
図1に示すとおり、ガラス瓶4中、リポソーム懸濁液と薬物溶液とを約25℃で混合した。この混合液400mLを、ポンプ2を介して、表1に示す各流速で熱交換器1内に送液した。この流速は、下記式により求めた。
熱交換器1から送出された薬物封入リポソーム懸濁液を含むガラス瓶5を氷冷した。
最後に、未封入薬物除去後のリポソーム懸濁液を0.2μmのろ過滅菌用フィルターを通過させる無菌化工程を行った。
一方、同じ3.4秒の滞留時間でも、熱交換器出口温度が40℃より低いと、薬物封入効率は20%台と低く、充分な封入効率が得られなかった。また、熱交換器出口温度が40℃以上であれば、熱交換器内の滞留時間を比較的長く設定することにより、50〜60%台の薬物(Dox)の封入効率を得ることができた。
このように極めて短い時間で薬物を導入することができるため、薬物導入工程に要する時間を大幅に短縮することができ、さらには熱暴露の大幅な低減が可能である。これにより保存時のリゾ体の生成率が低く保存安定性に優れることは後述の試験例1に示される。
また、リポソーム懸濁液と薬物溶液を薬物導入の起きにくい低温(25℃付近)で混合後、高い封入効率が得られる高温まで直に上昇させることが可能であるため、薬物がリポソームに均一に導入されると考えられる。
以上の結果より、本発明によれば、熱交換器出口部のサンプル温度が45℃以上であれば極めて短い全加熱時間(約3〜10秒)で臨床効果上充分な薬物(Dox)封入リポソーム製剤を得ることが可能であることが分かった。
調製例1の薬物導入工程(4)に代えて、リポソーム懸濁液と薬物溶液の全量(15L)を従来の加熱撹拌混合工程を行った以外は、調製例1の同様の他の工程を行ってDox封入リポソーム製剤を得た。加熱撹拌混合は、外液置換工程(3)で外液置換したリポソーム懸濁液9.8Lを20Lタンク内に入れ、予め室温から20分かけて60℃に加温し(うち、40℃以上は10分間)、そこに、上記調製例と同じDox溶液(10mg/mL)の所定量を予め60℃に加温して加え、混合後、60℃で、60分(比較例1)、10秒(比較例2)、20秒(比較例3)間、撹拌することにより薬物を導入した。得られたDox封入リポソーム製剤の薬物導入率を表2に示す。
調製例2および比較例1で調製した各Dox封入リポソーム製剤を40℃で、所定時間加温した。1週間ごとに加温したDox封入リポソーム製剤を採取し、高速液体クロマトグラフで脂質分解物(リゾ体)の生成率を求めた。結果を表3および図5に示す。また、各時点でのリポソーム製剤の粒子径の測定結果を表3に示す。
脂質分解物(リゾ体)の測定方法:高速液体クロマトグラフィー
粒子径は、動的光散乱粒子測定装置(Zetasizer 3000,Malvern Instruments)で測定した平均粒子径である。
以上の結果より、本発明は物理化学的安定性を確保しながら極めて短い時間で薬物を導入することができ、また脂質の安定性も向上できる方法である。製造時間の観点、薬物導入量の均一性などの品質の観点、製剤の安定性の観点から充分満足することができる方法であることがわかった。
Claims (7)
- リモートローディング法を用いるリポソーム製剤の製造方法であって、
リポソームの懸濁液と薬物とを前記リポソームの膜相転移点以下の温度でタンク中で撹拌混合し、前記薬物がリポソーム内に導入されることなく前記リポソームの外液に均一に分布した均一混合液を得る混合工程、および
前記混合液を、急速加熱手段を備えた送液パイプを介して前記タンクから送液することにより、前記リポソームの膜相転移点以上の温度ないし80℃以下の温度に加熱して前記リポソーム内に前記薬物を導入する薬物導入工程を含む、リポソーム製剤の製造方法。 - 前記薬物がイオン勾配法によりリポソーム内に導入される請求項1に記載のリポソーム製剤の製造方法。
- 前記急速加熱手段が熱交換器である請求項1または2に記載のリポソーム製剤の製造方法。
- 前記熱交換器による熱交換器内滞留時間が3〜120秒である請求項3に記載のリポソーム製剤の製造方法。
- 前記急速加熱手段がマイクロ波照射である請求項1または2に記載のリポソーム製剤の製造方法。
- 前記薬物導入工程の後に、未封入薬物の除去工程を行う請求項1〜5のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。
- 前記薬物導入工程が、前記加熱した混合物を前記リポソームの膜相転移点以下の温度に冷却する工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。
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