JPWO2013146386A1 - 局所麻酔薬持続性徐放製剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、局所麻酔薬を担持するリポソームの組成物について、優れた持続性を有する、局所麻酔薬持続性徐放製剤を提供することを目的とし、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第1のリポソームと、該外膜によって規定される第1のリポソーム内部領域に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する複数の第2のリポソームと、該第2のリポソームの外膜によって規定される第2のリポソーム内部領域とを有し、少なくとも該第2のリポソーム内部領域と前記第1のリポソームの外部との間にイオン勾配が形成され、局所麻酔薬を少なくとも前記第2のリポソーム内部領域内に含む、局所麻酔薬持続性徐放製剤である。

Description

本発明は局所麻酔薬持続性徐放製剤に関する。
頻回投与を必要とする薬剤は、頻回の通院や穿刺などの苦痛が患者にとって大きな負担となっている。また、嚥下困難を伴う患者は口から薬を飲むことが困難であるため、経口投与以外の投与方法が求められる。認知症患者や脳疾患、パーキンソン病などの介護者を必要とする患者においても、自分で薬を飲む管理が困難であるため、経口投与以外の投与方法や、頻回投与を必要としない治療法の選択肢が求められる。さらに、自律神経失調症など、薬の効果が切れると直ちに日常生活に支障をきたす患者においても、薬の効果が短時間で切れずに長期的に効き続けられる治療法が求められる。あるいは、手術後の痛みに関しても、薬の効果が切れると直ちに我慢できないほどの痛みに襲われるため、リハビリに影響を及ぼし、退院を延ばす要因になりかねない。従って、術後5〜7日間、薬の効果がずっと現れ、痛みを抑制することができれば、術後のリハビリも促進でき、退院を早めるきっかけになると考えられる。
これらのことから、薬の効果を長期的に持続させることができる徐放製剤は、あらゆる疾患領域において、患者のQOLを向上させるものとして非常に期待されている。
これまでに検討されている徐放製剤の多くは、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)を用いたマイクロスフェアである。例えば、アルツハイマー型認知症治療剤として知られているアリセプト(登録商標 エーザイ株式会社)の有効成分である塩酸ドネペジルを用いたPLGAマイクロスフェアが検討されており、持続的な放出性が得られている(非特許文献1)。しかしながら、PLGAを用いる場合、特に水溶性薬物を高濃度でかつ高効率で封入することは難しく、高い薬物封入量を得るためには未だ課題が残されている。また、PLGAを用いると、調製工程において有機溶媒を使用するため有機溶媒の除去が必須となる点(例えば特許文献1、2)や、分解とともに局所的に酸が強まるため炎症を引き起こす点も大きな課題とされている。
その他、ブピバカインなどの局所麻酔薬を用いた徐放製剤のアプローチもいくつか検討されているが、術後、5〜7日間続く痛みを十分な期間、緩和できるだけの持続性についてはまだ課題がある(非特許文献2)。また、多重小胞リポソーム(MVL)は、局所または全身的薬物送達のための脂質ベースの徐放性薬物担体として開発されているが(特許文献1、2)、これに関しても未だ薬物封入量や徐放時間において十分とは言えない。
特表2001−505224号公報 特表2001−522870号公報
Biomaterials 28(2007)1882−1888 Anesthesiology 101(2004)133−137
本発明は、局所麻酔薬を担持するリポソームの組成物について、優れた持続性を有する、局所麻酔薬持続性徐放製剤を提供することを目的とする。
上記課題は以下の本発明によって解決される。
1.複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第1のリポソームと、
該外膜によって規定される第1のリポソーム内部領域に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する複数の第2のリポソームと、
該第2のリポソームの外膜によって規定される第2のリポソーム内部領域とを有し、
少なくとも該第2のリポソーム内部領域と前記第1のリポソームの外部との間にイオン勾配が形成され、
局所麻酔薬を少なくとも前記第2のリポソーム内部領域内に含む、局所麻酔薬持続性徐放製剤。
2.25℃における粘度が4〜1000cPである上記1に記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
3.当該局所麻酔薬持続性徐放製剤の前記第1のリポソーム及び前記第2のリポソームを構成する総脂質の濃度が8〜50(w/v%)である上記1または2のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
4.更に、前記第2のリポソーム以外の第1のリポソーム内部領域に局所麻酔薬を含む上記1〜3のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
5.注射、浸潤、塗布及び埋め込みからなる群から選ばれる少なくとも1種の方法によって、術創患部及び/又はその隣接部位に投与するための、上記1〜4のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
6.術創患部及び/又はその隣接部位にわたる、皮下、筋膜及び筋肉内からなる群から選ばれる少なくとも1種に投与される上記1〜5のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
7.19〜33ゲージの注射針を有する注射器を用いて投与することができる上記1〜6のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
8.投与後、少なくとも3日間以上の鎮痛期間をもたらす上記1〜7のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
9.前記局所麻酔薬が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノアミド型麻酔薬である上記1〜8のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は優れた持続性を有する。よって本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は術後等による痛みを十分な期間緩和できる。
図1は本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に使用されるリポソーム組成物と同様の方法で製造されたリポソーム組成物に薬物を導入した後のリポソームの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した写真である(倍率:32000倍)。 図2は本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤が有する、第1のリポソーム及び第2のリポソームを構成する総脂質の濃度と局所麻酔薬持続性徐放製剤の粘度との関係を示すグラフである。 図3はブピバカイン徐放製剤の鎮痛効果を示すグラフである。 図4はブピバカイン徐放製剤の鎮痛効果における容量依存性を示すグラフである。 図5はブピバカイン単体および空製剤の鎮痛効果グラフである。
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、
複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第1のリポソームと、
該外膜によって規定される第1のリポソーム内部領域に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する複数の第2のリポソームと、
該第2のリポソームの外膜によって規定される第2のリポソーム内部領域とを有し、少なくとも該第2のリポソーム内部領域と前記第1のリポソームの外部との間にイオン勾配が形成され、局所麻酔薬を少なくとも前記第2のリポソーム内部領域内に含む、局所麻酔薬持続性徐放製剤である。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は第1のリポソームと第1のリポソーム内部領域と第1のリポソーム内の第2のリポソームと第2のリポソーム内部領域とを有することによって、局所麻酔薬を持続的に徐放することができる。よって本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は術後等の痛みを十分な期間緩和できる。
本発明において、局所麻酔薬を持続的に徐放することができることを持続性に優れるという。また、本願明細書では、局所麻酔薬を導入する前の第1のリポソームおよび第2のリポソームを含む組成物(外液を含んでもよい。)ものを「リポソーム組成物」といい、前記第2のリポソーム内部領域、もしくは前記第2のリポソームおよび前記第1のリポソームの内部領域に局所麻酔薬を導入した後のリポソーム組成物を「局所麻酔薬持続性徐放製剤」という。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は更に少なくとも第2のリポソーム内部領域と第1のリポソームの外部との間にイオン勾配が形成されることによって、第2のリポソーム内部領域、もしくは第2のリポソームおよび第1のリポソーム内部領域での薬物保持能力が高まり、より持続性に優れる。この場合、局所麻酔薬がイオン勾配にそって第1のリポソームの外部から第1のリポソームの内部へ、さらには第2のリポソームの内部へ移動し、高効率で、かつ高封入量で局所麻酔薬をリポソーム内に導入でき、かつ、臨床上十分な有効濃度をリポソーム内に維持することができる。
第1のリポソーム、第2のリポソームについて以下に説明する。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に利用されるリポソーム組成物は、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第1のリポソームと、該外膜によって規定される第1のリポソーム内部領域に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する複数の第2のリポソームと、該第2のリポソームの外膜によって規定される第2のリポソーム内部領域とを有し、局所麻酔薬を少なくとも前記第2のリポソーム内部領域内に含む。
本発明において第1のリポソームは局所麻酔薬持続性徐放製剤中に複数個含まれて使用することができる。また、第1のリポソームは該外膜によって規定される第1のリポソーム内部領域と、第1のリポソーム内部領域に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する複数の第2のリポソームとを有する。第2のリポソームは、該第2のリポソームの外膜によって規定される第2のリポソーム内部領域を有する。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、第1のリポソームと第1のリポソーム内部領域と第1のリポソーム内の第2のリポソームと第2のリポソーム内部領域とを有することによって、局所麻酔薬を持続的に徐放でき、注射、浸潤、塗布及び埋め込みからなる群から選ばれる少なくとも1種の方法による投与に適する。なお本発明において、注射は局所注射を含むものとする。浸潤、塗布についても同様である。
<リン脂質>
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を構成するリポソーム(第1のリポソーム、第2のリポソーム)が有する脂質二重膜(以下、単に脂質膜、あるいはリポソーム膜ということもある)を構成する主要な脂質であるリン脂質は、生体膜の主要構成成分であり、一般的に、分子内に長鎖アルキル基より構成される疎水性基と、リン酸基より構成される親水性基とをもつ両親媒性物質である。リン脂質としては、ホスファチジルコリン(=レシチン)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどのグリセロリン酸;スフィンゴミエリン(SM)などのスフィンゴリン脂質;カルジオリピンなどの天然または合成のジホスファチジルリン脂質およびこれらの誘導体;これらの水素添加物たとえば水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、水素添加卵黄ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリンが好ましい。リン脂質は単一種または複数種の組合せで用いることができる。
<リン脂質以外の添加物>
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を構成するリポソームは、上記主構成成分とともに他の膜成分を含んでいても良く、たとえば、リン脂質以外の脂質もしくはその誘導体、膜安定化剤、酸化防止剤などを必要に応じて含むことができる。リン脂質以外の脂質とは、分子内に長鎖アルキル基等の疎水性基を有し、リン酸基を分子内に含まない脂質であり、特に限定されないがグリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロールなどのステロール誘導体およびこれらの水素添加物などの誘導体を挙げることができる。コレステロール誘導体としては、シクロペンタノヒドロフェナントレン環を有するステロール類が挙げられる。これらの中でも、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を構成するリポソームはコレステロールを含むことが好ましい。酸化防止剤としては、たとえばアスコルビン酸、尿酸あるいはトコフェロール同族体すなわちビタミンEなどが挙げられる。トコフェロールには、α、β、γ、δの4個の異性体が存在するが、本発明ではいずれも使用できる。
なお、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を構成するリポソームの脂質二重膜組成は、リン脂質100〜50mol%およびコレステロール0〜50mol%が好ましく、より好まくは、リン脂質70〜50mol%およびコレステロール30〜50mol%である。
第1のリポソームの外径は、徐放性能に優れ、かつ、投与部位からのリポソームの拡散を抑制し、リポソームが血管内へ移動せずに投与部位に留まる点から1μm以上の大きさが好ましい。また、細い針(例えば27〜33ゲージ)でも容易に投与可能であるために、傷みを軽減することができる。この点から、第1のリポソームの外径は、1〜20μmであるのが好ましく、3〜10μmであるのがさらに好ましい。
本発明において、複数の第2のリポソームはそれぞれ独立して(1つの第2のリポソームは別の第2のリポソームとは非同心円状に)第1のリポソーム内部領域(内水相)の中に存在する。換言すれば、第2のリポソームは複数層の脂質二重膜で形成された外膜により閉鎖している。第1のリポソームは複数層の脂質二重膜で形成された外膜により、内部に第2のリポソームを含んで閉鎖している。第1のリポソームの内部に含まれた複数の第2のリポソームは互いに接触していないか、接触していても集合して固着していない。第1のリポソームの内部に含まれた第2のリポソームは第1のリポソームの該膜の内表面に接触していないか、接触していても固着していない。したがって、第1のリポソームの内水相の中で複数の第2のリポソームが存在し、この状態で複数の第2のリポソームの外表面の間または第1のリポソームの内表面と第2のリポソームの外表面の間に空間(第1のリポソーム内部領域)が存在する。
第1のリポソームの外形を構成する複数層の脂質二重膜の層構造は、特に限定されないが、30〜70層であるのが好ましい。さらに、第1のリポソームは、第2リポソームを収容する内部領域を有する。
また第2のリポソームの外径は特に限定されないが、局所麻酔薬封入量および徐放性能に優れるという点から、100〜800nmであるのが好ましい。また、第2のリポソームの数は特に限定されないが、一つのリポソーム粒子の第1のリポソームの内部領域に8〜40個含まれるのが好ましい。第2のリポソームの外形を構成する複数層の脂質二重膜の層構造は第2リポソームの外径から、1〜10層であることが好ましい。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、少なくとも該第2のリポソーム内部領域(内水相)と前記第1のリポソームの外部との間にイオン勾配が形成されるのが局所麻酔薬の保持能力を高め、持続性により優れるという観点から好ましい。以下、単に「イオン」と言う場合には、当該イオン勾配を形成するイオンを意味するものとする。本発明において、第2のリポソーム内部領域と第1のリポソームの外部との間にイオン勾配が形成されるとは、(1)第2のリポソームが有する外膜を挟んで、第2のリポソーム内部領域(pH2.0〜3.5)と、第1のリポソーム内部領域(内水相)及び第1のリポソームの外部(pH5.5〜7.5)との間にイオン濃度に差があること、(2)第1のリポソームが有する外膜を挟んで、第2のリポソーム内部領域及び第1のリポソーム内部領域(pH2.0〜4.0)と、第1のリポソームの外部(pH6.0〜7.5)との間にイオン濃度に差があること、(3)第2のリポソームが有する外膜を挟んで、第2のリポソーム内部領域(pH2.0〜3.5)と第1のリポソーム内部領域(pH4.0〜5.5)との間にイオン濃度に差があり、かつ第1のリポソームが有する外膜を挟んで第1のリポソーム内部領域(pH4.0〜5.5)と第1のリポソームの外部(pH6.0〜7.5)との間にイオン濃度に差があること(この場合、第1のリポソーム内部領域のイオン濃度は、第2のリポソーム内部領域のイオン濃度と第1のリポソームの外部のイオン濃度との間の値となる。)、のうちのいずれかであることをいう。
本発明において、イオン勾配は、局所麻酔薬を多く導入する観点から、第2のリポソーム内部領域のイオン濃度が最も高いのが好ましい。また、第2のリポソーム内部領域のイオン濃度(pH2.0〜3.5)≧第1のリポソーム内部領域のイオン濃度(pH2.0〜5.5)>第1のリポソームの外部のイオン濃度(pH6.0〜7.5)とすることができる。また、第2のリポソーム内部領域のイオン濃度(pH2.0〜3.5)>第1のリポソーム内部領域のイオン濃度(pH4.0〜6.0)≧第1のリポソームの外部のイオン濃度(pH6.0〜7.5)とすることができる。また、第2のリポソーム内部領域のイオン濃度(pH2.0〜3.5)>第1のリポソーム内部領域のイオン濃度(pH4.0〜5.5)>第1のリポソームの外部のイオン濃度(pH6.0〜7.5)とすることができる。第2のリポソーム内部領域のイオン濃度=第1のリポソーム内部領域のイオン濃度=第1のリポソームの外部のイオン濃度である場合は本願発明から除かれる。イオン勾配としてプロトン勾配(pH勾配)を用いる場合には、イオン濃度(プロトン濃度)が高いことはpHが低いことに対応する。すなわち、この場合には第2のリポソーム内部領域のpHが最も低いのが好ましい。
<イオン勾配法>
イオン勾配法は、少なくとも第2のリポソーム内部領域と第1のリポソームの外部との間にイオン勾配を形成し、該第1のリポソームの外部に添加された局所麻酔薬がこのイオン勾配に従いリポソーム膜を透過することで局所麻酔薬をリポソーム内部に封入する方法であり、イオン勾配としてはプロトン勾配(pH勾配)が好ましい。イオン勾配法では、第2のリポソーム内部領域および第1のリポソーム内部領域に、局所麻酔薬が内封されていない空リポソームを製造し、該第1のリポソームの外液に局所麻酔薬を添加することにより、リポソームに局所麻酔薬を導入することができる。空リポソームとは、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第1のリポソームの内部領域および、該第1のリポソーム内部領域に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第2のリポソーム内部領域に薬剤を含んでいない(薬剤を内封する前の)リポソームを意味する。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、イオン勾配法によって局所麻酔薬をリポソームに封入することができる。なかでも、イオン勾配としてpH勾配を用いるpH勾配法が最も好ましく適用される。
pH勾配を形成する方法としては、第1内水相及び/または第2内水相として酸性pHの緩衝液(例えばpH2〜3のクエン酸溶液)を用いてリポソームを形成し、次いで第1リポソームの外部pHを中性付近(例えばpH6.5〜7.5の緩衝液)に調整することで、第2リポソーム及び第1リポソームの内部がより低く、第1リポソームの外部がより高いpH勾配を形成する様態とすることができる。
また、アンモニウムイオン勾配を介してpH勾配を形成することもできる。この場合、例えば、第1内水相及び/または第2内水相として硫酸アンモニウム溶液を用いてリポソームを形成し、次いで第1リポソームの外部水相の硫酸アンモニウムを除去するか、または希釈することによって少なくとも第2リポソーム及び第1リポソームの内側と第1リポソームの外側にアンモニウムイオンの勾配を形成する。すると、生成したアンモニウムイオン勾配によって、第1リポソーム及び第2リポソームの内水相から第1リポソームの外水相へアンモニアの流出が起こり、結果的に内水相にアンモニアが残したプロトンが蓄積することによってpH勾配が形成され、第1リポソーム及び第2リポソームの内水相は第1リポソームの外水相より酸性になる。
局所麻酔薬について以下に説明する。本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に含まれる局所麻酔薬は一般的に局所麻酔薬として使用されるものであれば特に制限されない。局所麻酔薬はイオン勾配法でリポソーム内に封入可能なものが好ましい態様の1つとして挙げられる。局所麻酔薬はイオン化可能な両親媒性であることが好ましく、両親媒性弱塩基性であることがさらに好ましい。
局所麻酔薬としては、例えば、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン及びこれらの塩のようなアミノアミド型麻酔薬;コカイン、プロカイン、テトラカイン及びこれらの塩のようなエステル型麻酔薬が挙げられるが、なかでも、アミノアミド型麻酔薬が好ましく、ブビバカイン、ロピバカイン、レボブビバカイン又はこれらの塩がより好ましい。その他、モルヒネ、フェンタニル、コデインのようなオピオイド系鎮痛薬が挙げられる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は有効量の局所麻酔薬を含むことができる。本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に含まれる局所麻酔薬の量は特に限定されず、用途に応じて適宜調整し得る。具体的には例えば、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤をヒトに対して1回投与する場合少なくとも3日間持続的に痛みを緩和できる量を含むものとすることができる。例えば、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を1回投与する際に本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に含まれる局所麻酔薬の量は、ヒトの体重1kg当たり200mg以下とすることができ、該有効量を、少なくとも3日以上にわたって術創患部で持続的に放出する。「1回投与する」というのは、局所麻酔薬必要量の全量を、1箇所に投与することを意味するだけでなく、必要量を術創患部及び/またはその隣接部位に数箇所にわたり投与することも意味する。用量の上限は、個々の局所麻酔薬の毒性により制限される。下限は、第1のリポソーム内部領域及び/または第2のリポソーム内部領域に存在する局所麻酔薬が、徐痛のために必要な最小量を投与部位に放出されればよく、その必要量は術創の大きさによって変わるため特に制限されない。また、正確な用量は、個々の麻酔薬の特性、ならびに年齢、性別、体重、体調などの患者の要因によりかわる。
ブピバカイン又はその塩の有効量の上限は、ヒトの体重1kg当たり25mgとすることができる。
ロピバカイン又はその塩の有効量の上限は、ヒトの体重1kg当たり40mgとすることができる。
レボブピバカイン又はその塩の有効量の上限は、ヒトの体重1kg当たり30mgとすることができる。
リドカイン又はその塩の有効量の上限は、ヒトの体重1kg当たり140mgとすることができる。
メピバカイン又はその塩の有効量の上限は、ヒトの体重1kg当たり140mgとすることができる。
プリロカイン又はその塩の有効量の上限は、ヒトの体重1kg当たり200mgとすることができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、1回の投与で少なくとも3日以上又は4日以上持続放出するので、上記有効量は、持続期間(3日以上、又は4〜7日)に徐放する量である。したがって、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の1回当たりの投与に含まれる局所麻酔薬の量は、1kg当たりの有効量にヒトの体重及び3日以上、又は4〜7日の徐放期間を乗じた量とすることができる。
また、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に含まれる局所麻酔薬の量は、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に使用されるリポソーム組成物が有する総脂質に対するモル比[局所麻酔薬(mol)/総脂質(mol)]で0.05以上であるのが好ましく、0.06〜0.20とすることができる。
本発明において、局所麻酔薬は少なくとも第2のリポソーム内部領域内に含まれる。局所麻酔薬をより持続的に徐放でき、局所麻酔持続性徐放製剤の投与量を少なくできることに優れるという観点から、更に、第2のリポソーム以外の第1のリポソーム内部領域に局所麻酔薬を含むのが好ましい。第2のリポソーム内部領域内に含まれる局所麻酔薬と、第2のリポソーム以外の第1のリポソーム内部領域に含まれる局所麻酔薬とは、同じでも異なるものであってもよい。上記両方の個所に含まれる局所麻酔薬が同じであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
リポソーム組成物への局所麻酔薬の導入前後において、第1のリポソームの形状及び外径、第2のリポソームの形状及び外径はほぼ同じであり変わらない。また、リポソーム組成物への局所麻酔薬の導入前後において、リポソーム組成物におけるイオン勾配は、第1又は第2のリポソームの外膜が破壊されない限り、保たれている。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、投与部位に留まり、局所麻酔薬内封リポソームが血中へ移行することを防ぎ、投与部位でより持続的に局所麻酔薬を徐放することに優れるという観点から、その粘度が4〜1000cPであるのが好ましく、より好ましくは30〜600cPであり、さらに好ましくは、60〜400cPである。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、投与部位に留まり、局所麻酔薬内封リポソームが血中へ移行することを防ぎ、投与部位でより持続的に局所麻酔薬を徐放することに優れるという観点から、局所麻酔薬持続性徐放製剤中の第1のリポソーム及び第2のリポソームを構成する総脂質の濃度が8〜50(w/v%)であるのが好ましく、10〜50(w/v%)であるのがより好ましく、更に好ましくは25〜45(w/v%)であり、特に好ましくは、30〜36(w/v%)である。
また、局所麻酔薬持続性徐放製剤中の第1のリポソーム及び第2のリポソームを構成する総脂質の濃度を上記範囲とすることによって、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の粘度を上記範囲とすることができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤はその使用方法について特に制限されない。例えば、注射、浸潤、塗布及び埋め込みからなる群から選ばれる少なくとも1種の方法によって投与することができる。注射、浸潤、塗布、埋め込みの各方法は特に制限されない。これらは局所であることを含む。例えば、筋肉注射、皮下注射;皮下への浸潤;スプレーによる塗布;シートによる埋め込みが挙げられる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を注射によって投与する場合、19〜33ゲージ(G)の注射針を有する注射器を用いて投与することができ、適宜、注射針の太さを選ぶことができる。注射針のゲージは注射する場所および方法によって適宜、選択することが好ましく、例えば、筋肉内にゆっくりと確実に注射する場合は、比較的太い注射針で投与するのがよく、19〜25ゲージであるのが好ましい。浸潤投与であれば、比較的細い注射針で投与するのがよく、27〜33ゲージであるのが好ましい。本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は、リポソームの脂質濃度、粘度が高い場合、及び/又は、第1リポソームの平均粒子径を独立してまたは組み合わせて適切に選択することにより、局所麻酔薬の優れた持続的徐放性に影響することなく比較的細い注射針を用いて浸潤投与が可能であり、投与時の痛みを軽減することができる点で大きな効果を有する。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を適用する個所としては、例えば、術創患部及び/又はその隣接部位が挙げられる。
術創患部における手術の種類としては、例えば、胃切除術、肝切除術、虫垂切除術、帝王切開術、胆嚢摘出術、子宮摘出術、結腸切除術、前立腺切除、椎間板切除術、卵巣摘出術、整形外科手術、冠動脈バイパス移植術、創面切除術などが挙げられる。
隣接部位は術創患部に接する及び/又は近い部分であれば特に制限されない。
また、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を、術創患部及び/又はその隣接部位にわたる、皮下、筋膜及び筋肉内からなる群から選ばれる少なくとも1種に投与することができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を投与する方法は、縫合すべき切開部を有する術創患部の筋膜を閉鎖後、術創に沿って、局所麻酔薬持続性徐放製剤を筋膜および/またはその下の筋肉に注射針で複数箇所投与するステップと、筋膜および/または筋肉に投与後、皮膚を縫合閉鎖するステップとを有する。さらに、皮膚を縫合閉鎖した後、縫合された切開部に沿った縫合糸付近の位置および切開部を取り囲む位置に、複数箇所、皮下に局所麻酔薬を均一に投与するステップが含んでもよい。投与箇所は、1箇所である必要はなく、局所麻酔薬持続徐放製剤が術創に沿って均一に投与されるように、数箇所にわたって投与されるのが好ましい。
注射針は、縫合された切開部に先端が近づくように、皮膚に対して垂直もしくは斜めに穿刺されるのが良い。さらに、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を注射により投与中に注射された製剤の皮下での膨張感を皮膚の上で確認するステップを有しても良い。この場合、皮膚の上で皮下の膨張間を確認するには術者の手や圧力センサーを備えた機器を用いることができる。膨張感を確認することで、組織に局所麻酔薬持続徐放性剤がしっかりと投与され、かつ術創患部に均一に拡散されたことを確認することができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を用いれば、投与後、少なくとも約3日間以上の鎮痛期間をもたらすことができ、好ましくは4〜7日、より好ましくは4〜5日の鎮痛期間をもたらすことができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造方法としては、例えば、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第1のリポソームを少なくとも含有するリポソーム組成物を製造し、次に、イオン勾配による駆動力によってリポソーム内部に局所麻酔薬を導入する方法が挙げられる。
リポソーム組成物を製造する方法としては、例えば、
脂質を含む水混和性溶媒に対して、該イオン勾配を形成するための化合物を含む第1内水相溶液を体積比0.7〜2.5で混合して第1エマルジョンを調製する工程と、
該第1エマルジョンに対し第2内水相溶液を体積比0.7以上で混合して第2エマルジョンを調製する工程と、
該第2エマルジョンの外水相を、該第1内水相溶液より該イオン勾配を形成するための化合物濃度が低い水溶液で置換する工程とを有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
イオン勾配はプロトン濃度勾配であるのが好ましい。
<リポソーム第1内水相溶液>
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造方法において、第1エマルジョンを調製する工程で使用される第1内水相溶液は、イオン勾配を形成するための化合物を含むのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
イオン勾配を形成するイオンとしては、上記の通りプロトンが好ましい。また、イオン勾配(pH勾配)を形成するための化合物としては、例えば、電離してプロトン、アンモニウムイオン、プロトン化したアミノ基を発生させる化合物が挙げられる。具体的には例えば、硫酸アンモニウム、硫酸デキストラン、コンドロイチン硫酸のような硫酸塩;水酸化物;燐酸、グルクロン酸、クエン酸、炭酸、炭酸水素、硝酸、シアン酸、酢酸、安息香酸、これらの塩;臭化物、塩化物のようなハロゲン化物;無機または有機アニオン類;アニオン性重合体が挙げられる。
pH勾配法により局所麻酔薬をリポソームの内水相(少なくとも第2のリポソーム内部領域)に封入した場合、局所麻酔薬は内水相に存在するプロトンによってプロトン化され、電荷を帯びる。その結果、局所麻酔薬がリポソーム外へ拡散してゆくことが妨げられ、局所麻酔薬はリポソーム内水相に保持される。
また、イオン勾配を形成するための化合物が電離した場合、プロトン等のイオン勾配を形成するイオン(カチオン)とともに、硫酸イオン等のアニオンを生じるが、当該アニオンがプロトン化された弱塩基性局所麻酔薬と塩又はコンプレックスを形成すると、さらに局所麻酔薬を安定的に内水相に保持することができる。すなわち、イオン勾配を形成するための化合物は、塩基性局所麻酔薬と塩又はコンプレックスを形成することができる塩基性局所麻酔薬に対する対イオン(アニオン)を電離により生じるものとすることができる。このような対イオンは、薬学的に許容されるアニオンであれば特に限定されないが、硫酸イオンが最もが好ましい。硫酸イオンを生じる化合物としては硫酸アンモニウムが一般的であるが、その他、硫酸デキストランやコンドロイチン硫酸などからも選択できる。また、その他の対イオンとしては、水酸化物、燐酸塩、グルクロン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、シアン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、臭化物、塩化物、および他の無機または有機アニオン類、またはアニオン性重合体などから電離して生じるアニオンが挙げられる。
本発明においては、第1内水相溶液中のイオン勾配を形成するための化合物の濃度は、50〜500mMであることが好ましく、100〜300mMであることがさらに好ましい。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造方法において、第1エマルジョンを調製する工程で、脂質を含む溶液を調製する際に使用される溶媒は水混和性溶媒であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。水混和性溶媒とは、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造に用いられるリン脂質およびその他の膜成分を溶解し、かつ水と混和することができる溶媒をいう。水混和性溶媒としては例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールが挙げられる。
水に混和しない溶媒(水不混和性溶媒ともいう。例えば、クロロホルムのような水不混和性の有機溶媒が挙げられる。)は本願発明において使用されない。第1エマルジョンを調製する工程で水不混和性溶媒を使用する場合、得られるリポソームは大きなリポソームの中に複数の小さなリポソーム及び第1内水相を収容した形態とはならず、単に発泡スチロールのように個々のリポソームが集合した形態(いわゆる多重小胞リポソーム、MVL)となる。このようにして得られたリポソーム(多重小胞リポソーム)は複数の比較的小径のリポソーム(小胞)の外膜が離間不能なように互いに固着している。外膜が固着した複数のリポソームは互いに独立していない。いわゆる多重小胞リポソームは本発明で使用されるリポソームと上記の点で構造的に異なる。
リポソーム原料としての脂質の量(リン脂質その他の脂質の合計量)は水混和性溶媒の20〜100質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがさらに好ましい。
第1エマルジョン(脂質を含む水混和性溶媒とイオンを含む第1内水相溶液との混合物)中、脂質二重膜を構成し得る成分以外の成分が、第2のリポソームの内部領域を満たすことができる。第2のリポソームの内部領域には他に後述する第2内水相溶液の一部が混合してもよい。
第1エマルジョンを調製する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
pH勾配法を用いる場合、内水相(第1及び/又は第2のリポソーム内部領域)のpHは、適宜調整し得る。例えば、第1内水相溶液に、イオン勾配を形成するための化合物としてクエン酸を用いた場合、あらかじめ内水相(第2のリポソーム内部領域)と外水相(第1のリポソーム内部領域及び/又は第1のリポソームの外部)のpH勾配を形成しておく必要があり、その場合は内水相と外水相のpHの差が3以上であることが好ましい。
また、硫酸アンモニウムを用いた場合は、化学平衡によってpH勾配が形成されるため、予め内水相溶液のpHを調整する必要はない。この場合、第2内水相に外水相と同じ溶液を使用した場合は、第2エマルジョン形成時からイオン勾配の形成が始まり、外液置換でさらに勾配が形成される。第2内水相に第1内水相と同じ硫酸アンモニウム溶液を用いた場合は、外液置換のときにイオン勾配が形成されると考えられる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の調製において、脂質を含む水混和性溶媒とそこに加える第1内水相溶液は、体積比(第1内水相溶液/水混和性溶媒)として0.7〜2.5とすることができ、1.0〜2.0が好ましい。
<リポソーム第2内水相溶液>
本発明において、脂質を含む水混和性溶媒に第1内水相溶液を加えて第1エマルジョンを調製後、さらに該第1エマルジョンに第2内水相溶液を加える工程において、使用される第2内水相溶液は特に限定されるものでない。例えば、第1内水相と同じ溶液、HEPES溶液やNaCl溶液、グルコースやショ糖などの糖類水溶液が挙げられ、好ましくは第1内水相と同じ溶液である。また、第1内水相および第2内水相が共に硫酸アンモニウム水溶液であるのが最も好ましい。第1エマルジョンとそこに加える第2内水相溶液は、体積比[第2内水相溶液/(第1エマルジョン=第1内水相溶液+水混和性溶媒)]として0.7以上とすることができ、0.7〜2.5が好ましく、1.0〜1.5が特に好ましい。
第2エマルジョン中、脂質二重膜を構成し得る成分以外の成分が、第1のリポソームの内部領域(但し第2のリポソームを除く。)を満たすことができる。第1のリポソームの内部領域(但し第2のリポソームを除く。)は第1エマルジョンの一部を含んでもよい。
第2エマルジョンを調製する方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
<リポソーム外水相溶液>
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造方法は、第2エマルジョンの外水相を該第1内水相溶液よりイオン勾配を形成するための化合物濃度が低い水溶液で置換する工程を有する。
第2エマルジョンを調製した後の第1のリポソームの外水相を、リポソーム第2内水相溶液、又は、リポソーム第1内水相溶液及びリポソーム第2内水相溶液を含む混合液から、少なくとも該第1内水相溶液よりイオン勾配を形成するための化合物濃度が低い水溶液で置換することによって、少なくとも第2のリポソーム内部領域と第1のリポソームの外部との間にイオン勾配を形成し、且つ、リポソーム組成物系内から水混和性溶媒が除去され、得られるリポソームに本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤が有する形態を与えることができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造方法に使用される、置換するための外水相としては、少なくとも第1内水相溶液よりイオン勾配を形成するための化合物濃度が低い水溶液が用いられ、具体的にはHEPES溶液や、グルコースやショ糖などの糖類水溶液、クエン酸溶液が用いられる。外水相のpHについては緩衝剤によって調整されていることが望ましく、脂質の分解および生体内投与時のpH格差を考慮してpH5.5から8.5の範囲で調整されることが好適であり、より好ましくはpH6.0〜7.5の範囲である。リポソームの内水相と外水相の浸透圧については、両者の浸透圧差でリポソームが破壊されることのない範囲の浸透圧で調整されていればよく特に限定はされないが、リポソームの物理的安定性を考慮すると該浸透圧差は少ないほど望ましい。
置換するための外水相は、第1内水相溶液及び第2内水相溶液よりイオン勾配を形成するための化合物濃度が低い水溶液であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造方法は、前記イオン勾配による駆動力によって前記リポソーム組成物内部に局所麻酔薬を導入する工程を有する。イオン勾配による駆動力によって前記リポソーム組成物に含有されるリポソームの内部に局所麻酔薬を導入する工程においては、例えば、前記の局所麻酔薬を例えば水等に溶解させ、得られた局所麻酔薬溶液をリポソーム外水相がリポソーム外水相溶液で置換された後のリポソーム組成物に加えてこれらを混合し、リポソーム膜の相転移温度以上(例えば、65℃以上)に加熱して撹拌することで、局所麻酔薬を封入したリポソーム(本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤)を製造することができる。
本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤を製造する際使用される各成分はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
[局所麻酔薬持続性徐放製剤の製造]
以下に使用した各成分の略称および分子量を示す。
HSPC:水素添加大豆フォスファチジルコリン(分子量790、リポイド(Lipoid)社製SPC3)
DMPC:ジミリストイルフォスファチジルコリン(分子量677.9、日油株式会社)
Chol:コレステロール(分子量388.66、Solvay社製)
塩酸ブピバカイン(分子量324.89、JINAN CHENGHUI−SHUANGDA Chemical Co.Itd)
塩酸ロピバカイン(分子量310.88、JINAN CHENGHUI−SHUANGDA Chemical Co.Itd)
(調製例1:塩酸ブピバカイン含有徐放製剤1)
<空リポソームの製造>
HSPC/Chol=54/46となるようにHSPCおよびコレステロールをそれぞれ1.41gおよび0.59g秤量し、無水エタノール8mLを添加して加温溶解した。溶解後、この脂質エタノール溶液に対して約70℃に加温した150mM硫酸アンモニウム水溶液(第1内水相)を等量(8mL)添加し、約10分間加温攪拌した。引き続き、第2内水相(150mM硫酸アンモニウム水溶液)を、(第1内水相+エタノール)の容量に対して25.6mL加え、さらに、約10分間加温攪拌した。
<pH勾配形成>
上記得られたリポソームにpH勾配形成用の外水相(10mM クエン酸/0.9%塩化ナトリウム(pH6.5))を加えて分散し、3500rpmで15分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除き、引き続き、pH6.5の10mM クエン酸/0.9%塩化ナトリウムを添加し分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した後にpH6.5の10mM クエン酸/0.9%塩化ナトリウムに再分散し、pH勾配を形成した。尚、リポソームの外液を外水相(pH6.5の10mM クエン酸/0.9%塩化ナトリウム)に置換することで、リポソーム内部領域のpHが2.0〜3.5に下がり、内部領域と外部領域との間にpH勾配が形成される。
<pH勾配による局所麻酔薬導入>
イオン勾配形成後のリポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、局所麻酔薬/総脂質(mol/mol)比が0.3となるように局所麻酔薬としての塩酸ブピバカインの量を計算し、必要量の局所麻酔薬を秤量後、RO水により10mg/mLの局所麻酔薬溶液を調製した。65℃で加温したリポソーム溶液に、あらかじめ65℃に加温した局所麻酔薬溶液を所定量添加後、引き続き、65℃で60分間、加温攪拌することで局所麻酔薬導入を行った。局所麻酔薬導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
<未封入局所麻酔薬除去>
局所麻酔薬持導入後のリポソームに10mM クエン酸/0.9%塩化ナトリウム溶液(pH6.5)を添加し分散させて、3500rpmで15分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除き、引き続き、10mM クエン酸/0.9%塩化ナトリウム(pH6.5)を添加し分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入局所麻酔薬除去を行い、局所麻酔薬持続性徐放製剤を製造した。得られた局所麻酔薬持続性徐放製剤をブピバカイン含有徐放製剤1とする。
(調製例2:塩酸ブピバカイン含有徐放製剤2)
調製例1のリン脂質をDMPCに変更し、DMPC/Chol=54/46となるようにDMPCおよびコレステロールをそれぞれ1.35gおよび0.65g秤量する他は調製例1と同様にして局所麻酔薬持続性徐放製剤(ブピバカイン含有徐放製剤2)を製造した。
(調製例3:塩酸ブピバカイン含有徐放製剤3)
調製例1の局所麻酔薬の仕込み薬物量(局所麻酔薬/総脂質(mol/mol))比を0.4に変更する他は調製例1と同様にして局所麻酔薬持続性徐放製剤(ブピバカイン含有徐放製剤3)を製造した。
(調製例4:塩酸ロピバカイン含有徐放製剤4)
調製例1の薬物を塩酸ロピバカインに変更する他は調製例1と同様にして局所麻酔薬持続性徐放製剤(塩酸ロピバカイン含有徐放製剤4)を製造した。尚、局所麻酔薬の仕込み薬物量(局所麻酔薬/総脂質(mol/mol))比は0.4にした。
[局所麻酔薬持続性徐放製剤の評価]
結果を下記表に示す。
<粘度>
調製例1〜4で得られた局所麻酔薬持続性徐放製剤の粘度を回転式粘度計(BROOKFIELD DEGITAL VISCOMETER MODEL DV−1+)により測定した。回転式粘度計を25℃に設定し、必要量の局所麻酔薬徐放製剤をセットした。引き続き、適切な回転速度条件下で、局所麻酔薬持続徐放製剤の25℃における粘度を測定した。その結果を表1および図2に示す。図2は本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤が有する、第1のリポソーム及び第2のリポソームを構成する総脂質の濃度と局所麻酔薬持続性徐放製剤の粘度との関係を示すグラフである。図2において、グラフの縦軸は局所麻酔薬持続性徐放製剤の粘度(単位:cP)を示し、グラフの横軸は第1のリポソーム及び第2のリポソームを構成する総脂質の濃度(単位:mg/mL)を示す。図2において、最も右端のデータは調製例1、右から2番目は調製例3、右から3番目は調製例2、右から4番目は調製例4で製造された各局所麻酔薬持続性徐放製剤に関する結果である。その他のデータについては製造例1に準じた方法で適宜製造された局所麻酔薬持続徐放製剤である。
表1及び図2に示す結果から明らかなように、本発明の局所麻酔薬持続徐放製剤における脂質濃度が高くなるに従い、製剤の粘度が著しく増加することが明らかとなった。特に、製剤の脂質濃度が300(mg/mL)を超えたあたりから急激にその粘度が上昇した。一方、脂質濃度が200mg/mL以下では比較的粘度が低く、特に100mg/mL以下では粘性が低くかった。
<局所麻酔薬持続性徐放製剤中におけるリポソームの脂質濃度>
リン脂質濃度(mg/mL):高速液体クロマトグラフィーまたはリン脂質定量を用いて定量されるリポソーム懸濁液中でのリン脂質濃度。
コレステロール濃度(mg/mL):高速液体クロマトグラフィーを用いて定量されるリポソーム懸濁液中でのコレステロール濃度。
総脂質濃度(mol/L):上記リン脂質濃度およびコレステロール濃度から算出される膜構成成分である脂質の合計モル濃度(mM)。
局所麻酔薬濃度(mg/mL):上記で得られた、製剤の総脂質濃度が約20〜30mg/mLとなるようにRO水(逆浸透膜浄水)でリポソーム組成物を希釈した後、これをさらにメタノールで20倍希釈してリポソームを崩壊した。この溶液において、263nmでの吸光度を、紫外吸光光度計を用いて高速液体クロマトグラフィーにて定量した。内封された局所麻酔薬濃度を局所麻酔薬量(mg)/製剤全量(mL)で示す。
局所麻酔薬担持量(局所麻酔薬/総脂質のモル比):リポソームに内封された局所麻酔薬濃度を上記総脂質濃度に対する上記局所麻酔薬濃度の比から、局所麻酔薬/総脂質のモル比で示す。
平均粒子径(μm):光散乱回折式粒度分布計ベックマンコールターLS230で測定した、局所麻酔薬持続性徐放製剤中の第1のリポソームの平均粒子径。
Figure 2013146386
[ラットの術後痛モデル(ラット足裏疼痛モデル)]
10週例の雄性ウィスター・ラット(体重:300−320g)18匹を、6匹ずつ任意に擬似手術群(切開のみ群)、ブピバカイン徐放製剤1投与群、ブピバカイン徐放製剤2投与群に分けた。各ラットへ、ペントバルビタールナトリウム注射液(ネンブタール注射液、大日本住友製薬社製)0.3ml腹腔内投与して麻酔した後、左足底の踵より5mmの位置から縦に、No.11メス(FEATHER)にて5mm皮膚切開した。切開部からさらに足底筋をすくい出し、縦に切開した。その後、7−0 Proline連続縫合ですき間がないように縫合した。縫合後のラットをラットの術後痛モデルとした。
[動物の痛みの行動学的研究(テスト法)]
手術前、手術後から10時間後、さらに14日後まで1日ごとに、von Frey filamentを行った。具体的には、曲がるまでに所定の応力を要するvon Frey Hairセット(North Coast Medical社製、商品名:Touch−Test)を用いて、ラットを入れたゲージの網の下からラットの手術部に対して垂直に押しつけ、ラットが驚愕して足を上げた際の応力(機械刺激の閾値)を求めた。
[術創患部における持続性鎮痛製剤]
(実施例1)
上述のラットの術後痛モデルを用いて、上述のブピバカイン含有徐放製剤1および2の鎮痛効果をvon Frey filamentを用いて上述のとおり評価した。
縫合後の上述のラットの術後痛モデルに、ブピバカイン含有徐放製剤1又は2をインスリン用注射器(テルモマイジェクター27G)を用いて、それぞれ規定量(ブピバカイン量として0.42mg)を足底筋付近に注入した。その結果を図3に示す。図3において、開切前(pre−incision)、術後10時間後、術後1日目〜14日目毎に、3本の棒グラフを示す。各評価タイミングにおける3本の棒グラフのうち、左の白の棒グラフは切開のみの術後痛モデルの結果を示すものであり、中央の斜線の棒グラフはブピバカイン含有徐放製剤1を術後痛モデルに使用した結果を示すものであり、右の棒グラフはブピバカイン含有徐放製剤2を術後痛モデルに使用した結果を示すものである。なお図3において開切前(pre−incision)の応力はいずれも15gを超えている。
徐放製剤を投与していない切開のみ群(擬似手術群)では、痛みが1週間以上持続することが明らかとなった。一方、本発明のブピバカイン(BPV)含有徐放製剤1を投与した群は、術後10時間後から術後6日目まですべての時点で、切開のみ群に比べて有意に閾値の上昇を認めた。本発明のブピバカイン含有徐放製剤と擬似手術群(切開のみ群)との間で有意差が見られることは、術後6日目まで、手術後疼痛が優位に抑制されていることを意味し、特筆すべきである。また、同様に本発明のBPV含有徐放製剤2を投与した群についても、術後10時間後から術後4日目まですべての時点で、切開のみ群に比べて有意に閾値の上昇を認めた。このことから、BPV徐放製剤2についても、術後4日目まで、手術後疼痛が優位に抑制されていることが示唆された。尚、9日目以降、本発明の徐放製剤と擬似手術群(切開のみ群)との差が小さくなっていくのは、切開部の治癒によるものであると考えられる。
以上のことから、本発明のブピバカイン含有徐放製剤は、術後、術創に1回投与することで、約1週間にわたる術後鎮痛効果が得られることが明らかとなった。本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤はヒトに対しても同様に術後、術創に1回投与することで非常に長い鎮痛効果を得ることができると考えられる。
(実施例2)
上述のラットの術後痛モデルを用いて、上述のブピバカイン含有徐放製剤3の鎮痛効果による容量依存性をvon Frey filamentを用いて上述のとおり評価した。
縫合後のラットの術後痛モデルに、ブピバカイン含有徐放製剤3をインスリン用注射器(テルモマイジェクター27G)を用いて、それぞれ規定量(ブピバカイン量として0.32、0.63mg)を足底筋付近に注入した。その結果を図4に示す。図4において、開切前(pre−incision)、術後10時間後、術後1日目〜14日目毎に、3本の棒グラフを示す。各評価タイミングにおける3本の棒グラフのうち、左の白の棒グラフは切開のみの術後痛モデルの結果を示すものであり、中央の斜線の棒グラフはブピバカイン含有徐放製剤3をブピバカイン量として0.32mgで術後痛モデルに使用した結果を示すものであり、右の棒グラフはブピバカイン含有徐放製剤3をブピバカイン量として0.63mgで術後痛モデルに使用した結果を示すものである。
中容量の0.32mg/body注入群は術後10時間後から術後4日目まで切開のみ群に比べて有意に閾値の上昇を認めた。さらに、高容量の0.63mg/body注入群は術後10時間後から術後7日目まですべての時点で、切開のみ群に比べて有意に閾値の上昇を認めた。
以上のことから、本発明のブピバカインを含有する局所麻酔薬持続性徐放製剤は、極めて優れた手術後疼痛の抑制効果を示し、疼痛閾値と持続時間の両方において容量依存性を認めることができた。本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤はヒトに対しても同様に疼痛閾値と持続時間の両方において容量依存性があると考えられる。
(比較例1)
上述のラットの術後痛モデルを用いて、ブピバカイン単体(ブピバカイン原液)およびブピバカインを含まない空製剤(調製例1の製造に使用されたリポソーム組成物)の鎮痛効果をvon Frey filamentを用いて上述のとおり評価した。
縫合後のラットの術後痛モデルに、ブピバカイン単体又は空製剤をインスリン用注射器(テルモマイジェクター27G)を用いて、それぞれ規定量(2%ブピバカイン単体0.02mL、空製剤0.02mL)を足底筋付近に注入した。その結果を図5に示す。図5において、開切前(pre−incision)、術後10時間後、術後1日目〜14日目毎に、3本の棒グラフを示す。各評価タイミングにおける3本の棒グラフのうち、左の白の棒グラフは切開のみの術後痛モデルの結果を示すものであり、中央の斜線の棒グラフは空製剤を術後痛モデルに使用した結果を示すものであり、右の棒グラフはブピバカイン原液を術後痛モデルに使用した結果を示すものである。
ブピバカイン単体注入群および空製剤注入群はいずれも、術後1日目から閾値の上昇は認められなかった。このことから、ブピバカイン単体は、投与後すぐに消失するため、術後疼痛を抑制する時間が非常に短く、術後1日目ですでに術後疼痛を抑制する鎮痛効果は得られないことが明らかとなった。
図1は本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に使用されるリポソーム組成物と同様の方法で製造されたリポソーム組成物に薬物を導入した後のリポソームの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した写真である(倍率:32000倍)。
図1において示されるリポソームはリポソームのほぼ中央で分割されている。図1に示すリポソーム1は、複数層の脂質二重膜で形成された外膜3を有する第1のリポソーム5と、外膜3によって規定される第1のリポソーム内部領域7に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する複数の第2のリポソーム9とを有し、符号11は第1のリポソームの外部である。図1において、第1のリポソーム5の外径は約7μmであり、第2のリポソーム9の外径は100〜800nmである。
図1の写真撮影に使用された薬剤導入後のリポソーム組成物は、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤に使用されるリポソーム組成物と同様の方法で製造された。したがって、本発明の局所麻酔薬持続性徐放製剤は図1のリポソームと同様な形態を有していると考えられる。
図1の写真撮影に使用された薬剤導入後のリポソーム組成物は以下のとおり製造された。
<空リポソーム調製>
HSPC/Chol=54/46(モル比。以下同様)となるようにHSPCおよびコレステロールをそれぞれ1.41gおよび0.59g秤量し、無水エタノール4mLを添加して加温溶解した。溶解した脂質エタノール溶液に、約70℃に加温した、150mMの硫酸アンモニウム水溶液を、エタノールと同量(4mL)添加し、約10分間加温撹拌しながらエマルジョンを形成した。さらに、このエマルジョンに約70℃に加温した20mM HEPES/0.9%塩化ナトリウム(pH7.5)10mLを加え、引き続き約10分間加温攪拌した。加温終了後のリポソームは、速やかに氷冷した。
<pH勾配形成>
上記得られたリポソームに20mM HEPES/0.9%塩化ナトリウム(pH7.5)を加えて分散し、3500rpmで15分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後、上清を除き、引き続き、pH7.5の20mM HEPES/0.9%塩化ナトリウムを添加し分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返した後にpH7.5の20mM HEPES/0.9%塩化ナトリウムに再分散し、pH勾配を形成した。
<pH勾配による薬物導入>
イオン勾配形成後のリポソームのHSPCおよびコレステロールを定量し、総脂質濃度を求めた。算出した総脂質濃度をもとに、塩酸ドネペジル(DNP,分子量415.95)/総脂質(mol/mol)比が0.16となるように塩酸ドネペジル量を計算し、必要量のDNPを秤量後、RO水により20mg/mLのDNP溶液(薬物溶液)を調製した。65℃で加温したリポソーム溶液に、あらかじめ65℃に加温したDNP溶液を所定量添加後、引き続き、65℃で60分間、加温攪拌することで薬物導入を行った。薬物導入後のリポソームは速やかに氷冷した。
<未封入薬物除去>
薬物導入後のリポソームに20mM HEPES/0.9%塩化ナトリウム溶液(pH7.5)を添加し分散させて、3500rpmで15分間遠心分離することでリポソームを沈殿させた。その後上清を除き、引き続き、20mM HEPES/0.9%塩化ナトリウム(pH7.5)を添加し分散させ、同様に遠心分離した。これを3回繰り返すことで未封入薬物除去を行った。
1 リポソーム
3 外膜
5 第1のリポソーム
7 第1のリポソーム内部領域
9 複数の第2のリポソーム
11 第1のリポソームの外部

Claims (9)

  1. 複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する第1のリポソームと、
    該外膜によって規定される第1のリポソーム内部領域に収容された、複数層の脂質二重膜で形成された外膜を有する複数の第2のリポソームと、
    該第2のリポソームの外膜によって規定される第2のリポソーム内部領域とを有し、
    少なくとも該第2のリポソーム内部領域と前記第1のリポソームの外部との間にイオン勾配が形成され、
    局所麻酔薬を少なくとも前記第2のリポソーム内部領域内に含む、局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  2. 25℃における粘度が4〜1000cPである請求項1に記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  3. 当該局所麻酔薬持続性徐放製剤の前記第1のリポソーム及び前記第2のリポソームを構成する総脂質の濃度が8〜50(w/v%)である請求項1または2のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  4. 更に、前記第2のリポソーム以外の第1のリポソーム内部領域に局所麻酔薬を含む請求項1〜3のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  5. 注射、浸潤、塗布及び埋め込みからなる群から選ばれる少なくとも1種の方法によって、術創患部及び/又はその隣接部位に投与するための、請求項1〜4のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  6. 術創患部及び/又はその隣接部位にわたる、皮下、筋膜及び筋肉内からなる群から選ばれる少なくとも1種に投与される請求項1〜5のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  7. 19〜33ゲージの注射針を有する注射器を用いて投与することができる請求項1〜6のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  8. 投与後、少なくとも3日間以上の鎮痛期間をもたらす請求項1〜7のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
  9. 前記局所麻酔薬が、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン及びこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノアミド型麻酔薬である請求項1〜8のいずれかに記載の局所麻酔薬持続性徐放製剤。
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