JP2009513621A - リポソームを調製する方法及びその使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程;プロトン性有機溶媒と共に工程(a)のリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、前記脂質の溶液又は分散を形成する工程;及びイオン含有水溶液に対し工程(b)の溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程;を含む、単純化され費用効率的なリポソーム調製方法において、リポソームが、1.0超の作用物質対リポソーム形成脂質比で作用物質を封入することができる方法を提供している。本方法には、溶液又は分散を乾燥させて、乾燥脂質フィルムを形成する工程;及び/又は前記リポソーム懸濁液中でリポソームを小型化して小さな単層膜ベシクル(SUV)を形成する工程が関与していないことを特徴とする。このようにして形成されたリポソームは次に、両親媒性弱酸/塩基薬物などの活性作用物質をそれに装填するために使用可能である。
Description
本発明は、リポソーム技術、および特にリポソーム調製方法に関する。
先行技術リスト
以下に記すのは、本発明の分野における最新技術を記載する上で関連性があるとみなされている先行技術のリストである:
1. 国際公開第00/09089号パンフレット−硫酸アンモニウム勾配を用いて調製したリポソーム・ブピバカイン組成物(ボロチン(Bolotin)EMら);
2. 米国特許第4,532,089号明細書−巨大サイズのリポソームの調製方法(マクドナルド・ロバート(MACDONALD ROBERT)C);
3. 米国特許第5,192,549号明細書−pH勾配によるリポソーム中の両親媒性薬物装填方法(バレンホルツ(Barenholz)ら);
4. 米国特許第5,807,572号明細書−塩酸塩の存在下で中に封入した生物活性物質を有する多小胞リポソーム(キム(Kim)S.ら);
5. キム S.及びマーチン(Martin)G.M.、Biochim.Biophys.Acta、第646号:1〜9頁(1981年)
6. 米国特許第5,723,147号明細書−塩酸塩の存在下で中に封入した生物活性物質を有する多小胞リポソーム(キム S.ら)。
以下に記すのは、本発明の分野における最新技術を記載する上で関連性があるとみなされている先行技術のリストである:
1. 国際公開第00/09089号パンフレット−硫酸アンモニウム勾配を用いて調製したリポソーム・ブピバカイン組成物(ボロチン(Bolotin)EMら);
2. 米国特許第4,532,089号明細書−巨大サイズのリポソームの調製方法(マクドナルド・ロバート(MACDONALD ROBERT)C);
3. 米国特許第5,192,549号明細書−pH勾配によるリポソーム中の両親媒性薬物装填方法(バレンホルツ(Barenholz)ら);
4. 米国特許第5,807,572号明細書−塩酸塩の存在下で中に封入した生物活性物質を有する多小胞リポソーム(キム(Kim)S.ら);
5. キム S.及びマーチン(Martin)G.M.、Biochim.Biophys.Acta、第646号:1〜9頁(1981年)
6. 米国特許第5,723,147号明細書−塩酸塩の存在下で中に封入した生物活性物質を有する多小胞リポソーム(キム S.ら)。
リポソームは、現在入手可能である将来性の最も高い薬物担体の1つである。リポソームは、疎水性物質を封入し得る疎水性2重層と、その他の物質(例えば親水性又は両親媒性化合物)を封入し得る水性コアの両方を含む。
治療用化合物のリポソーム封入が、制御型薬物送達における有意な展望を示してきた。例えば、一部の脂質ベースの処方物は、より長い生体内半減期、より優れた組織標的化、又は低い毒性を提供する。より有効な治療的処置を開発する目的で、リポソーム内にさまざまな治療用化合物を封入するための試みがなされてきた。例えば数多くの抗ガン又は抗腫瘍薬がリポソーム内に封入されてきた。これらには、アルキル化剤、ニトロソ尿素、シスプラチン、代謝拮抗物質、ビンカ・アルカロイド、カンプトセシン、タキサン及びアントラサイクリンが含まれる。アントラサイクリン抗生物質を含有するリポソームを用いた研究は明らかに心臓毒性の減少を示した。
薬物のリポソーム処方物は、リポソーム封入されていない遊離薬物対応物の薬物動態を修飾する。リポソーム薬物処方物については、薬物動態は主として、担体が血液から浄化される速度及び薬物が担体から放出される速度によって判定される。血液からの緩慢な浄化値を示すリポソーム担体組成物を同定するために多大な努力が払われてきており、長循環担体について数多くの科学的刊行物及び特許の中で記載されてきた。例えばさまざまな脂質構成要素又は放出制御のための膜電位を用いて、リポソーム担体からの薬物漏出又は放出を制御する努力も同じく払われてきた。
リポソームは数多くの方法によって調製されており、得られるベシクルは、二重層の数及び直径に関し著しく変動し得る。リポソームは、小さい又は大きい単層膜ベシクル(SUV、LUV)、多重膜ベシクルベシクル(MLV)及び多小胞ベシクル(MVV)又は、複数のベシクルひいては複数の分離した水相を含む大きい多小胞ベシクル(LMVV)として分類可能である〔クルカルニー(Kulkarni)S.B.、ら、J.Microencapsul、第12号:229〜246頁(1995年)〕。多小胞ベシクル(MVV)の調製〔スゾカ(Szoka)、F.及びパパハジョポウロス(Papahadjopoulos、D.Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第75号:4194〜4198頁(1978年)〕、及びMLVから構造的にMVVに類似している〔Kramer、J.M.H.、ら、Biochemistry、第17号:3932〜3935頁(1997年)〕凍結・解凍済みベシクル(FTMLV)〔キム S.及びマーチン、G.M.Biochim.Biophys.Acta646:1−9(1981年)〕への転換中に、ベシクル内ベシクルが形成される。MVV及びFTMLVは、SUV及びMLVよりもはるかに多くの水相体積を封入するが、MVVとFTMLV(LMVV)の構造は大きく、直径が0.5〜15μmである。
リポソーム調製方法の大部分は、乾燥脂質の水和、又はこのように乾燥された脂質が水溶液中に添加されている有機溶媒の蒸発のいずれかに基づいている。乾燥脂質の水和に基づく方法は、一般的に多段階工程(脂質溶液からの有機溶媒の蒸発、脂質の乾燥、水和、検定そして場合によってはその他の段階)である。緩衝液中へのエタノール又はエーテル脂質溶液の注入に基づく方法は、主としてモデル膜としてのみ有用である小さいベシクルを結果としてもたらす〔バツィーリ(Batzri)、S.及びコーン(Korn)、E.、Biochim.Biophys.Acta_298:1015〜1019頁(1973年);クラマー(Kramer)、J.M.H.、ら、Biochemistry、第17号:3932〜3935頁(1997年)〕。有機、脂質可溶化溶媒中での水相ディスパーゲーション(dispergation)及び直接ベシクル形成中の有機溶媒蒸発に基づく、いくつかの多段階方法が存在する。これらのうち、逆相蒸発方法は最も古いものである〔スゾカ、F.及びパパハジョポウロス、D.Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第75号:4194〜4198頁(1978年)〕。当初の手順によれば、水相が有機溶媒(エチルエーテル、ハロタン、クロロホルム、塩化メチレン又はその他)の中でディスパーゲートされて、これらの相の両方の混合物を音波処理することにより油中水型エマルジョンを形成する。次に、エマルジョンは回転蒸発器に移送され、溶媒は減圧下で除去される。この段階で、水相液滴の一部が組合さり、脂質膜中に包み込まれた緩衝液液滴が懸濁する環境を形成する。その後、凝集体を遠心分離させ、上清をろ過して、画定されたフィルタの孔径よりも小さいLUVを得る。2重エマルジョン特性を用いたもう1つの方法は、振とう器での機械的攪拌によるリポソーム脂質のクロロホルム及びエチルエーテル溶液中の水性エマルジョン形成に基づいている。窒素の恒常なバブリングが、組合せ型エマルジョンを攪拌し、その結果単層又は多小胞ベシクルが形成される〔キムS.及びマーチン、G.M.Biochim.Biophys.Acta第646号:1〜9頁(1981年)、及び米国特許第5,723,147号明細書〕。
米国特許第5,723、147号明細書内で開示されているのは、生物学的に活性な物質を含有する多小胞リポソームであり、多小胞リポソームは、画定されたサイズ分布、調整可能な平均サイズ、調整可能な内部チャンバサイズ及び数、そして調節された生物活性物質の比率を有する。かかる多小胞リポソームを形成するのに用いられる工程には、揮発性有機溶媒中で脂質構成要素を溶解させる工程、封入されるべき少なくとも1つの生物活性物質を含有する非混和性水性構成要素を添加する工程及び、多小胞リポソームから有機溶媒及び脂質構成要素のいずれか又は両方への生物活性物質の放出速度を制御するのに有効な塩酸塩を添加する工程、2つの構成要素から油中水型エマルジョンを作る工程、第2の水性構成要素中にエマルジョンを浸す工程、エマルジョンを、さらに小さい水性チャンバを含む小さな溶媒小球へと分割する工程、そして次に溶媒を除去して、生物活性物質を封入する多小胞リポソームの水性懸濁液を得る工程、が含まれる。
LMVVのさらなる調製方法が、国際公開第00/09089号パンフレット中にも記載されている。この刊行物によれば、リポソーム・ブピバカイン組成物が、装填溶液からの薬物の沈殿を妨げるpHで、アンモニウム塩(例えば硫酸塩)勾配装填手順を用いて調製される。リポソームは、アンモニウム塩の水溶液で乾燥脂質フィルムをボルテックスし、結果として得られた懸濁液を均質化してSUVの懸濁液を形成させ、液体窒素とそれに続く水中へのSUVの懸濁液をくり返し(少なくとも5回)凍結解凍させることによって調製される、大きい多小胞リポソーム(GMVと呼ばれる)であり得る。
本発明は、リポソームを調製するための、単純化された、およびより費用効率の高い方法を提供することを目的としている。
その最初の態様に従うと、本発明により、
(a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共に工程(a)のリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、脂質又は脂質混合物の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し溶液又は分散剤を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
を含むリポソーム調製方法において、
このように形成されたリポソームが、1.0超の作用物質対リポソーム形成脂質間モル/モル比で作用物質を封入することができる方法、が提供されている。
(a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共に工程(a)のリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、脂質又は脂質混合物の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し溶液又は分散剤を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
を含むリポソーム調製方法において、
このように形成されたリポソームが、1.0超の作用物質対リポソーム形成脂質間モル/モル比で作用物質を封入することができる方法、が提供されている。
本発明はまた、
(a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共にリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、脂質又はその混合物の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
からなるリポソーム調製方法において、
このように形成されたリポソームが、1.0超の作用物質対前記リポソーム形成脂質間モル/モル比で作用物質を封入することができる方法、も提供する。
(a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共にリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、脂質又はその混合物の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
からなるリポソーム調製方法において、
このように形成されたリポソームが、1.0超の作用物質対前記リポソーム形成脂質間モル/モル比で作用物質を封入することができる方法、も提供する。
さらに本発明は、
(a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共にリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、脂質又はその混合物の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
を含むリポソーム調製方法であり、
このように形成されたリポソームが、1.0超の作用物質対リポソーム形成脂質比で作用物質を封入することができる方法であって、ここで
前記溶液又は分散を乾燥させて、乾燥脂質フィルムを形成する工程;
前記リポソーム懸濁液中でリポソームを小型化して小さな単層膜ベシクル(SUV)を形成する工程;
のうちの1つ以上の工程を含んでいないことを条件としている方法、を提供している。
(a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共にリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、脂質又はその混合物の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
を含むリポソーム調製方法であり、
このように形成されたリポソームが、1.0超の作用物質対リポソーム形成脂質比で作用物質を封入することができる方法であって、ここで
前記溶液又は分散を乾燥させて、乾燥脂質フィルムを形成する工程;
前記リポソーム懸濁液中でリポソームを小型化して小さな単層膜ベシクル(SUV)を形成する工程;
のうちの1つ以上の工程を含んでいないことを条件としている方法、を提供している。
リポソームは薬物などの活性作用物質を担持するのに使用することができる。このようにして、さらなる一態様に従うと、本発明は、作用物質担持リポソームの調製方法において、
(i) 本発明の方法によりリポソーム懸濁液を提供する工程、及び
(ii) 前記作用物質を含む溶液と前記リポソーム懸濁液をインキュベートして作用物質担持リポソームを形成する工程、
を含むか、又はこれらの工程からなり、
前記作用物質担持リポソームが、1.0超の前記作用物質対前記リポソーム形成脂質間モル/モル比を含む方法を提供している。
(i) 本発明の方法によりリポソーム懸濁液を提供する工程、及び
(ii) 前記作用物質を含む溶液と前記リポソーム懸濁液をインキュベートして作用物質担持リポソームを形成する工程、
を含むか、又はこれらの工程からなり、
前記作用物質担持リポソームが、1.0超の前記作用物質対前記リポソーム形成脂質間モル/モル比を含む方法を提供している。
好ましい実施形態においては、作用物質担持リポソームを調製するための本発明の方法は、前記溶液又は分散を乾燥させて、乾燥脂質フィルムを形成する工程:及び/又は前記リポソーム懸濁液中でリポソームを小型化して小さな単層膜ベシクル(SUV)を形成する工程を排除している。
本発明は同様に、本発明の方法のいずれかにより調製される場合、常に生理学的に受容可能な担体及び作用物質担持リポソームを含む薬学組成物も提供している。
さらに、本発明は、本発明の方法により調製される場合、常に一定量の作用物質担持リポソームを対象に投与する工程を含むことを必要としている、前記対象を治療するための方法を提供する。
本発明は、長時間送達、安全性及びその他の薬物学的及び薬物動態パラメータに関して利点を有し得ることが当業者に充分理解しうる、高い作用物質対脂質比(各々のモル量による)をもつリポソームを調製するための方法に関する。提案されている研究方法の簡潔性は、なかでも、これまで類似の特性及び装填能力をもつリポソームの調製における不可欠の構成要素と考えられてきたいくつかの工程の削除にある。
「リポソーム」及び「ベシクル」という用語は、当該技術分野においては周知であり、特定的に相反する記載があるか又は前後関係から必要となる場合を除き、本明細書中では互換的に使用されている。
本発明の方法は、乾燥リポソーム形成脂質又は1つ以上のリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程;プロトン性有機溶媒と共に、脂質又は脂質を含む乾燥混合物を溶解させて、脂質の溶液又は分散を形成する工程;及びイオン含有水溶液に対しこのように形成された溶液又は分散剤を添加して、その結果としてリポソーム懸濁液を形成する工程を含む。かかるリポソームは高い作用物質対脂質モル/モル比で作用物質を装填する能力を有し、1.0超の高い比率であることが見いだされた。以下で詳述するように、活性作用物質は、作用物質の水溶液を伴うリポソーム懸濁液のインキュベーションなどの異なる方法によりリポソーム中に装填され得る。
本発明によれば、「高い作用物質対脂質比」は、作用物質対リポソーム形成脂質のモル/モル又は重量/重量比により判定される。以下の記載においては、相反する記載のない限り、「比」という用語」は、モル/モル比を表わす。本発明による高い作用物質対脂質(作用物質/脂質)比は、少なくとも1.0超、好ましくは1.5超、より好ましくは1.8超であり、あるあらゆる比として理解されるべきである。本発明の範囲内に入る適切な条件下で、この比は2.0超もあり得る、ということが見出されている。
比較的高い作用物質/脂質比(すなわち1.0超)で作用物質(例えば薬物)が装填されたリポソームを調製するための従来の方法は、類似の特性及び装填能力をもつリポソームの調製においてこれまで不可欠と考えられてきた以下の特徴、すなわち:
リポソーム形成脂質は乾燥後、リポソームを形成する前に再水和する必要があること;および/または、
リポソームは、作用物質を装填すべき最終的リポソームを得る前に(SUVの適切な操作の後)、例えばボルテックス、超音波処理、押出し加工及び/又は類似のプロセスにより小型化されて、小さな単層膜ベシクル(SUV)を形成する必要があること;および/又は、
SUVは、望ましいほどに高い作用物質対脂質比を示す能力をもつリポソームを得るため、少なくとも5回の凍結及び解凍(F&T)サイクルを必要とすること;
凍結乾燥条件下(0℃以上の温度)で凍結しない特定の(このようにして制限的な)有機溶媒の選択。
を含んでいる、という点が指摘される
リポソーム形成脂質は乾燥後、リポソームを形成する前に再水和する必要があること;および/または、
リポソームは、作用物質を装填すべき最終的リポソームを得る前に(SUVの適切な操作の後)、例えばボルテックス、超音波処理、押出し加工及び/又は類似のプロセスにより小型化されて、小さな単層膜ベシクル(SUV)を形成する必要があること;および/又は、
SUVは、望ましいほどに高い作用物質対脂質比を示す能力をもつリポソームを得るため、少なくとも5回の凍結及び解凍(F&T)サイクルを必要とすること;
凍結乾燥条件下(0℃以上の温度)で凍結しない特定の(このようにして制限的な)有機溶媒の選択。
を含んでいる、という点が指摘される
本明細書で示されているように、本発明の方法は、所望の高装填を達成するために上述の工程のいずれかを実施する必要なく高い作用物質/脂質比をもつ作用物質担持リポソームを提供する。換言すると、リポソーム形成に先立って脂質を乾燥させる必要性及び/又はリポソームを小型化する必要性及び/又は多数(2回以上)のF&Tサイクルを実施する必要性を削除することにより、はるかに単純で費用効果の高い方法が提供される。かかる単純化された方法は、特に作用物質担持リポソームの大規模生産に関し、数多くの利点を有する。
本発明のリポソームは、リポソーム形成脂質から形成されている。「リポソーム形成脂質」(又は「ベシクル形成脂質」)は、0.74から1.0以下のパッキングパラメータ又は0.74から1以下の範囲内の相加的充填パラメータ(各構成要素のモル画分をリポソームの各構成要素の充填パラメータに乗じたものの合計)を有する脂質混合物により基本的に特徴づけられる両親媒性分子である。
さらに、本発明による「リポソーム形成脂質」は、頭部基にあるヒドロキシル基のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つが、アシル、アルキル又はアルケニル基のうちの1つ以上のものにより置換されているグリセロール主鎖、リン酸基、好ましくはアシル鎖(アシル又はジアシル誘導体を形成するためのもの)、以上のもののいずれかの組合せ、及び/又は以上のものの誘導体を有する脂質であり、頭部基に(アミン、酸、エステル、アルデヒド又はアルコールなど)化学反応性基を含むことにより極性頭部基を提供してもよい。スフィンゴ脂質、特にスフィンゴミエリンはグリセロリン脂質の優れた代替物である。
標準的には、置換鎖例えばアシル、アルキル及び/又はアルケニル鎖は、長さが炭素原子約14〜約24個の間にあり、さまざまな飽和度を有し、このようにして完全水素化、部分水素化又は非水素化リポソーム形成脂質を結果としてもたらす。さらに、リポソーム形成脂質は天然供給源のものであっても、半合成又は完全合成脂質であってよく、中性、負又は正の電荷を有し得る。
ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)及び炭素原子12〜24個のアシル又はアルキル鎖をもつスフィンゴミエシン(SM)といったスフィンゴリン脂質などの(本発明による好ましい脂質である)リン脂質を含め、さまざまな合成リポソーム形成脂質及び天然発生リポソーム形成脂質が存在する。さまざまな飽和度を有する炭化水素鎖(例えばアシル/アルキル/アルケニル鎖)をもつ上述の脂質及びリン脂質は市販されているものを入手でき、そうでなければ公表された方法に従って調製することもできる。リポソーム中に内含され得るその他の適切な脂質は、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質およびステロール(例えばコレステロール又は植物ステロール)である。本発明に従って形成されたリポソームは、脂質の混合物を含む。従って本発明はで使用する上述の脂質リストは、網羅的であり制限的な意味をもたず、本明細書で開示するその他の脂質を本発明に従って使用することも可能である。
一実施形態によれば、リポソーム形成脂質は16個以上の炭素原子を伴うアシル鎖を有するホスファチジルコリン(PC)及びその誘導体など(ただしこれらに制限されるわけではない)、45℃超のTm(ゲルから液体への結晶相転移温度)を有するものの中から選択される。PC誘導体の1つの好ましい例としては、52℃のTmを有する水素添加大豆PC(HSPC)がある。リポソーム形成脂質はさらに又は代替的に、N−ステロイルスフィンゴミエリンなどのさまざまなNアシル鎖のスフィンゴミエリンを含む。
カチオン脂質(モノ及びポリカチオン脂質)も同様に、本発明のリポソーム内での使用に適しており、ここでカチオン脂質は脂質組成物の少量構成要素としても、また主要構成要素もしくは単独構成要素としても含まれる。かかるカチオン脂質は標準的には、親油性部分、例えばステロール、アシル又はジアシル鎖を有し、脂質は標準的に全体的に正味の正電荷を有する。好ましくは、脂質の頭部基は、正電荷を担持する。モノカチオン脂質には例えば1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP);1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP);N−[1−(2,3,−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);N−[1−(2,3,−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE);N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol);及びジメチル−ジオクタデシルアンモニウム(DDAB)が含まれる。
ポリカチオン脂質の例には、ポリカチオン部分が付着されている、モノカチオン脂質について記載したものに類似する親油性部分が含まれる。典型的なポリカチオン分子としては、スペルミン又はスペルミジン(DOSPA及びDOSPERにより例示されている通り)又はペプチド例えばポリリシン又はその他のポリアミン脂質が含まれる。例えば、中性脂質(DOPE)をポリリシンで誘導体化してカチオン脂質を形成することができる。ポリカチオン脂質としては、制限的な意味なく、N−[2−[[2,5−ビス[3−アミノプロピル)アミノ]−1−オキソペンチル]アミノ]エチル]−N,N−ジメチル−2,3−ビス[(1−オキソ−9−オクタデセニル)オキシ]−1−プロパンアンモニウム(DOSPA)、及びセラミドカルバモイルスペルミン(CCS)が含まれる。
さらにリポソームは、リポポリマーの用語で知られている新しい構成要素を形成するべく、親水性重合体で誘導体化された脂質を内含することもできる。リポポリマーは好ましくは、750Da以上の分子量を有する重合体でその頭部基に修飾されている脂質を含む。頭部基は極性又は無極性であり得る。しかしながら、リポポリマーは大きな(>750Da)高度に水和された(1頭部基につき少なくとも60の水分子)軟質重合体が付着されている極性頭部基である。脂質領域に対する親水性重合体頭部基の付着は、共有結合又は非共有結合付着であり得る。しかしながら好ましくは、脂質領域に対する親水性重合体頭部基の付着は共有結合の形成を介した(任意にはリンカーを介した)ものである。親水性重合体鎖の最も外側の表面被覆は、生体内で長い血液循環寿命をもつリポソームを提供する。リポポリマーは、(a)リポポリマーを脂質混合物に添加し、このようにしてリポソームを形成し、ここでリポポリマーがリポソーム2重層の内部及び外部葉状部において取込まれ曝露されること(アスター(Uster)P.S.ら、FEBBS Letters、第386号:243頁(1996年))又は(b)まず第1にリポソームを調製し、次に、リポポリマー及びリポソーム形成脂質のTmより高い温度でのインキュベーション又はマイクロ波照射に対する短時間曝露のいずれかにより、予め形成されたリポソームの外部葉状部内にリポポリマーを取込むことのいずれかによって、2つの異なる方法でリポソーム内に導入可能である。
(リポソーム形成脂質ではない)ホスファチジルエタノールアミンなどの脂質及びリポソーム形成脂質からなるベシクルの調製及び、ほとんどの場合リポソーム形成脂質でない親水性重合体でのこのような脂質の誘導体化(このようにしてリポポリマーを形成)。例えばチロシュ(Tirosh)ら、(チロシュら.、Biopys.J.、第74号(3):1371〜1379頁(1998年))によって、及び本明細書に参照により援用されている米国特許第5,013,556号明細書、同5,395,619号明細書;同5,817,856号明細書;同6,043,094号明細書及び同6,165、501号明細書内ならびに国際公開第98/07409号パンフレット内で、実施例が記載されてきた。リポポリマーは、非イオンリポポリマー(時として中性リポポリマー又は非荷電リポポリマーとして知られている)又は正味の負電荷、又は正味の正電荷を有するリポポリマーであり得る。
脂質に付着可能な重合体は数多く存在する。脂質修飾物質として標準的に使用される重合体としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ポリ乳酸(ポリラクチド呼ばれる)、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとも呼ばれる)、アポリ乳酸−ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメトキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリアスパルタミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリラート及び例えばヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースなどの誘導体化セルロースが含まれるが、これらに制限されない。重合体は、単独重合体としてか又はブロック又はランダム共重合体として利用可能である。
リポポリマーに誘導体化される脂質は、中性、装填電又は正荷電されたものである(すなわち特定の電荷(又は無電荷)に関する制約が全くない)が、最も一般的に用いられるリポポリマーへと誘導体された市販の脂質は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、通常はジステアリールホスファチジルエタノールアミン(DSPE)である。
本発明により利用され得るリポポリマーの特定のファミリーとしては、カルバマートリンケージを介して脂質にPEG重合体がリンクされることにより負に荷電したリポポリマーとなった、DSPEに付着したモノメチル化PEGが含まれる(異なる長さのPEG鎖を伴い、本明細書中でPEGという略号により言及されているメチル化PEG)。その他のリポポリマーとしては、中性メチルポリエチレングリコールジステアロイルグリセロール(mPEG−DSG)及び中性メチルポリエチレングリコールオキシカルボニル−3−アミノ−1,2−プロパンジオールジステアロイルエステル(mPEG−DS)がある(ガルブゼンコ(Garbuzenko)O.ら、Langmuir.第21号、2560〜2568頁(2005年))。PEG部分は好ましくは、約750Da〜約20.000Daの分子量のPEG頭部基を有する。より好ましくは、頭部基の分子量は約750Da〜約12000Da、そして最も好ましくは約1000Da〜約5000Daの間にある。本明細書で用いられる1つの特定的PEG−DSPEは、本明細書中で2000PEG−DSPE又は2KPEG−DSPEと呼ばれている、2000Daの分子量をもつPEG部分である。
このような誘導体化された脂質を含むリポソームの調製も記載されており、ここでは標準的にかかる誘導体化脂質の1〜20モルパーセントがリポソーム処方物中に含まれている。
(PC及びスフィンゴミエリンなど)リポソーム形成脂質に加えて、リポソーム処方物中にはコレステロール及びホスファチジルエタノールアミンを、(例えば膜の遊離体積ひいては透過性及びその中に封入された作用物質の漏出を減少させる目的で)リポソーム処方物を含ませることができる。1つの実施形態によれば、リポソームはコレステロールを含む。さらなる実施形態によれば、脂質/コレステロールのモル/モル比は約80:20〜約50:50の間の範囲内にある。より特定的なモル/モル比は約60:40である。
リポソームはその他の成分を含む。例えばベシクル−ベシクル融合を減少させかつ細胞とリポソームの相互作用を増大させるため、リポソーム二重層の中にホスファチジルグリセロールなどの電荷誘発脂質を取込むこともできる。リポソームの表面のpHを中性に近いものにするのに適したpHの緩衝液は、加水分解を減少させることができる。ビタミンEといった酸化防止剤、又はデスフェラール(Desferal)又はDTPAなどのキレート化剤の添加を使用が可能である。
リポソーム形成脂質及びその他の脂質及び非脂質構成要素(使用される場合)は、プロトン性有機溶媒中に溶解される。本発明の状況下では、プロトン性有機溶媒は標準的にはアルコール、好ましくはC2からC4のアルコールである。溶媒は好ましくは水中で混和性をもつ。プロトン性有機溶媒の制限がない例としては、メタノール、エタノール、及び第3級ブタノール(tert−ブタノール)が含まれる。エタノールが好ましい溶媒である。
溶媒は、脂質又は脂質混合物を溶解させて、溶液又は分散を形成する。「溶解する」又は「溶液」という用語は、脂質が好ましくは溶媒内部で均質に混合されるというふうに理解されるべきである。それでも、本発明の状況下で、均質でない混合物を形成させ使用することも可能である(分散中)。
形成された溶液又は分散は、次にイオンを含む水溶液に添加される。「イオン含有水溶液」という用語は、本明細書では、塩例えば硫酸アンモニウム、酢酸カルシウムなどを溶解させた形で含む水溶液を表わすために使用される。異なるタイプのイオン及び塩が、pH又はイオン勾配形成に関して以下で詳述される。
本発明の方法は同様に、高い脂質濃度を利用できることを特徴としている。形成されたリポソーム中の脂質濃度が20mM超、30mM超、50mM超、90mM超さらには最高97mMから100mM以下である場合であっても、高い作用物質/脂質比(1.0超)が達成され得るということがわかっている。一実施形態によれば、脂質濃度は30mMから100mM以下である。
これらのリポソーム成分間比の変動が、リポソームの薬理学的特性を決定づける。例えば、さまざまなタイプのベシクル利用分野についての主たる関心事であるリポソームの安定性は、特定のリポソーム成分を選択することによって決定づけられる。明らかに、リポソームの安定性は、従来の医薬品と同じ規格を満たすべきである。化学安定性には、リン脂質二重層内のエステル結合の加水分解の防止、および脂質鎖内の不飽和部位の酸化の防止の両方が関与している。化学的不安定性は、物理的不安定性又は二重層からの封入された薬物の漏洩及びベシクルの融合及び凝集を導く可能性がある。化学的不安定性は同様に、標的に対する効果的な接近及び標的との相互作用に影響を及ぼす、リポソームの短い血液循環時間ももたらす。
本発明の方法により、制限的な意味なく、多重膜ベシクル(MLV)、小さな単層膜ベシクル(SUV)、大きな単層膜ベシクル(LUV)、立体的に安定化したリポソーム(SSL)、多小胞ベシクル(MVV)及び大きな多小胞ベシクル(LMVV)を含んだ、異なるタイプのリポソームを調製することができる。異なるタイプのリポソームは、上述の工程によって形成されたリポソームに対して1つ以上の付加的な処理工程を適用することによって得ることができる。例えば、リポソーム懸濁液について、1回および任意にはそれ以上の回数のF&Tサイクルを実施することによって、LMVVを得ることができる。SUVは、リポソームを小型化するための任意の既知の技術(例えばボルテックス処理、超音波処理、押出し加工など)により得ることができる。当業者であれば、本発明の方法によって形成されたリポソームをその他のリポソーム形態及び構造に転換するために適切な付加的処理工程をいかに選択すべきかがわかるであろう。
一実施形態によれば、本発明の方法は好ましくは、MLVを提供する。1回のF&Tサイクルの後、MLVはLMVVに転換される。付加的なF&Tサイクルを実施することもできる。
一実施形態によれば、少なくとも1つのF&Tサイクルが実施される。もう1つの実施形態によれば5〜9回の間のF&T工程が実施される。F&Tサイクルは、MLVをLMVVに転換し、LMVVは次に、その中に装填されるべき作用物質と共にインキュベートされる。
このようにして形成されたリポソーム懸濁液は、一定量のプロトン性有機溶媒を含む。この量は、溶媒及びこのようにして形成されるリポソームのタイプにより変動する。有機溶媒の量は、リポソームがミセルに転換されないような量となる。例えば、有機溶媒としてエタノールを用いる場合、リポソームからミセルへの変態が標準的に(体積で)30%の溶媒で発生することになる。このようにして、リポソーム懸濁液中のエタノールレベルは、約25体積%といった高いものであり得る。一実施形態によれば、エタノールレベルは約10体積%である。
リポソーム内に装填されるべき活性作用物質は、あらゆる物質、例えば、治療法又は診断において有用である低又は高分子量化合物であり得る。一実施形態によれば、活性物質は、両親媒性の弱酸又は両親媒性弱塩基である。好ましい実施形態によれば、作用物質は両親媒性弱酸性薬物又は両親媒性弱塩基性薬物である。
両親媒性弱塩基性薬物としては、なかでも、以下の限定されないリストのものが含まれる:テンパミン(TMN)ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、カルシノマイシン、N−アセチルアドリアマイシン、ルビダゾン、5−イミドダウノマイシン、N−アセチルダウノマイシン、全てのアントラシリン薬剤、ダウノリリン、トポテカン、イリノテカンプロパノロール、ペンタミジン、ジブカイン、ブピバカイン、テトラカイン、プロカイン、クロルプロマジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトマイシンC、ピロカルピン、フィソスチグミン、ネオスチグミン、クロロキン、アモジアキン、クロログアニド、プリマキン、メフロキン、キニーネ、プリジノール、プロジピン、ベンズトロピンメシラート、トリヘキシフェニジル塩酸塩、プロパノロール、チモロール、ピンドロール、キナクリン、ベナドリル、プロメタジン、ドーパミン、L−DOPAセロトニン、エピネフリン、コデイン、メペリジン、メタドン、モルヒネ、アトロピン、デシクロミン、メチキセン、プロパンテリン、イミプラミン、アミトリプチリン、ドクセピン、デシプラミン、キニジン、プロパノロール、リドカイン、ブピバカイン、クロルプロマジン、プロメタジン、ペルフェナジン、アクリジンオレンジ、モルヒネやその他等のアへン剤。
一実施形態によれば、両親媒性弱塩基は、鎮痛剤である。一部の鎮痛剤は以上で列挙されており、リドカイン及びブピバカインを含む。これらの薬物も又以下で特定的に例示されている。
両親媒性弱酸性薬物には、これらに限定されないが、イブプロフェン、トルエチン、インドメタシン、フェニルブタゾン、メクロフェラム酸(mecloferamic acid)、ピロキシカム、シトロフロキサシン、プロスタグランジン、フルオレスゲイン(fluoresgein)、カルボキシフルオレセイン、メチルペルドニソロン(methyl perdnisolone)へミコハク酸(MPS)、パラセタモール(アセトアミノフェン)、アスピリン(アセチルサリチル酸)及びその他のNSAID及びナリジスク酸が含まれる。
さらに、リポソーム中に装填される作用物質をグルココルチコステロイドとし、投与に先立ってこれらのリポソームを空のリポソームで処理することが有利である。グルココルチコイドの限定されないリストは、その全体が本明細書に参照により援用されているインターネットサイトhttp://www.steraloids.com/に見い出すことができる。限定されない例としては、へミコハク酸プレドニゾロン、へミコハク酸メチルプレドニゾロン、へミコハク酸デキサメタゾン、へミコハク酸アロプレグナノロン;21−へミコハク酸ベクロメタゾン;21−へミコハク酸ベータメタゾン;へミコハク酸ボルデノン;へミコハク酸プレドニゾロン;ナトリウム塩;21−へミコハク酸プレドニゾロン;へミコハク酸ナンドロロン;へミコハク酸19−ノルテストステロン;21−へミコハク酸デオキシコルチコステロン;へミコハク酸デキサメタゾン;へミコハク酸デキサメタゾン;スペルミン;へミコハク酸コルチコステロン;ヘミコハク酸コルテキソロンが含まれる。
一般に、受動的取り込み及び能動的(遠隔)装填を含め、活性作用物質が取り込まれているリポソームを調製するために、さまざまな利用可能な装填方法が存在する。ここで用いられる「取り込み」という用語は、作用物質の少なくとも実質的部分がリポソームの内部水性コア内部に封入されるような形での、リポソーム上への、作用物質のあらゆる装填形態を意味している。内部コアの中で、作用物質は遊離していても、又脂質二重層の内部表面に会合させられていてもよい。このようにして、本発明の状況下では、「取り込み」という用語は、時として「封入」又は「担持」又は「装填」という用語と互換的に使用され得る。
受動的取り込み方法は、リポソーム膜内の親油性薬物の取り込み及び高い水溶性をもつ作用物質の取り込みに最も適している。
イオン化可能な親水性又は両親媒性作用物質の場合を膜貫通pH又はイオン勾配に対抗して作用物質をリポソーム内に装填することにより、さらに大きい作用物質装填効率を達成することができる(ニコラス(Nichols)、J.W.、ら、Biochim.Biophys.Acta、第455号:269〜271頁(1976年);クラマー(Cramer)、J.、ら、Biochemical and Biophysical Research Communications、第75号(2):295〜301頁(1977年))。一般に遠隔装填と呼ばれるこの装填方法は、一般的にそれ自体両親媒性で、内側が高く外側が低いH+及び/又はイオン勾配をもつリポソームの懸濁液に添加することで装填されるイオン性基を有する作用物質が関与する。
本発明の状況下で利用されるリポソームは好ましくは、遠隔装填原理によって装填される。遠隔装填は、作用物質の高いリポソーム内濃度及びリポソーム内部の作用物質対イオン塩の形成に起因するアンモニウム又はアンモニウム様(非有機、有機又は重合体アニオン、例えばアルキルアミンを伴う)勾配凝集などの、pH又はイオン勾配に起因して起こる。アンモニア(NH3)がリポソームから放出された時点で余剰の対イオンが発生する。アンモニウム塩を介した遠隔装填は、中性アンモニアガス分子(1.3×10−1cm/s)と荷電アニオン(<10−10cm/s)の透過性の大きな差異に基づいている。一般的には、アンモニア塩溶液を含むリポソーム内水相のpHは、アンモニウムとアンモニアの外部濃度を低下させることにより減少させることができる(ハラン(Haran)、G.、ら、Biochim Biophys.Acta第1151号:201〜215頁(1993年))。リポソーム内pHの減少は、リポソームプロトン(H+)及び対イオン(例えばHSO4、SO4 −2)内部から離脱するプロトン化されていないアンモニア化合物(NH3)がリポソームから放出された結果である。このようにして、NH4 +に比べて余剰の対アニオンがリポソーム内部で作られる。
pHの低減はアンモニア形成を阻害し、このようにしてリポソームからのアンモニア放出を阻害する。リポソームの外部媒質に対し例えば両親媒性弱塩基といった作用物質を添加した場合、そのような作用物質はその未荷電形態で自由に脂質二重層と混合し、その荷電(低い透過性をもつ)形態で(遊離H+によりプロトン化された後)内部水性区画内に蓄積する(シュルディナー(Schuldiner)、ら、Eur.J.Bichem第25号:64〜70頁(1972年);ニコラス及びディーマー(Deamer)、Biochem.Biophys Acta、第455号:269〜271頁(1976年))。明らかに、この蓄積は内部pHを上昇させ、このようにしてアンモニアが再び形成されリポソームから放出され、作用物質の有効な装填が完了するまで、内部pHなどを低減させる結果となる。従って、両親媒性弱塩基の装填のためには、リポソームが、低リポソーム間/高リポソーム内膜貫通勾配、例えばアンモニウム塩勾配(例えば硫酸アンモニウム)を有することが好ましい、という点が指摘される。
作用物質が弱両親媒性酸である場合には、リポソームが高リポソーム間/低リポソーム内膜貫通勾配を有することが好ましい。かかる勾配は、酢酸カルシウムなどの酢酸塩の水溶液を用いて達成可能である。この場合、酢酸塩イオン勾配は、駆動力であり、一方、リポソーム膜を通って非常に低い透過性をもつカルシウム(Ca2+)イオンは水相内部で弱両親媒性酸の対イオンとして作用し、よって装填を安定化し、装填された弱両親媒性酸の放出速度をより良く制御できるようにする(クラーク(Clerc)、S.及びバレンホルツ、Y.、Loading of amphiphatic weak acids into liposomes in response to transmembrane calcium acetate gradients.Biochim.Biophys.Acta、第1240号:257〜265頁(1995年))。
荷電(プロトン化)作用物質と未荷電作用物質の間の平衡は、透過係数に依存する速度で、リポソームからの未荷電弱塩基の緩慢な漏洩を可能にする。(リポソーム内部で装填された荷電作用物質と対イオンの間で形成された)凝集体の形成を介して平衡をシフトさせることは、リポソーム中の作用物質の保持をさらに改善し、ここで開示されている通り、リポソームからの作用物質の放出を制御するための手段として機能し得る。
本発明によれば、H+及び/又はイオン勾配は、リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質とその他の脂質(必ずしもリポソーム形成脂質ではなく、例えばコレステロール)を含む混合物をプロトン性有機溶媒で溶解させて前記脂質の溶液又は懸濁液を形成させ、次にイオン含有水溶液中に脂質溶液を添加してリポソーム懸濁液を形成させることにより、形成される。このとき、このリポソーム懸濁液は、リポソーム間区画とリポソーム内環境の間でそれぞれのH+又はイオン勾配を達成するのに適したH+又はイオン濃度、及び装填すべき作用物質を含む溶液を用いてインキュベートされる。両親媒性弱酸又は両親媒性弱塩基(活性作用物質/薬物として)の場合には、イオン性基が存在し、このようにして作用物質は、内側/外側pH勾配を有するように調製されたリポソームの懸濁液に添加することにより投与される。その結果、両親媒性弱酸及び両親媒性弱塩基の未荷電種は、リポソーム膜を通して拡散する。しかしながら、リポソーム間水相内のpHが、リポソーム内環境との関係においてより酸性(弱塩基について)又はよりアルカリ性(弱両親媒性酸について)であるというように異なっているため、作用物質はそれぞれにプロトン化又は脱プロトン化されて、荷電種となる。
一実施形態によれば、本発明の方法により形成されるリポソームは、例えば5.5〜7.5の適切なpHで、一般的には、0.1M〜0.3Mのアンモニア塩である、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムなどなどのアンモニウム塩を含有する水性緩衝液を用いることで調製可能である。勾配は、脂質溶液に添加された水溶液中に硫酸化重合体を内含させることによっても生成可能である。例えば、かかる硫酸化重合体は、デキストラン硫酸アンモニウム塩、ヘパリン硫酸アンモニウム塩又はスクラルファートを含む。リポソーム形成後、外部媒質を、アンモニウムイオンが欠如したものと交換することができる。この手法においては、装填中に両親媒性弱塩基はアンモニウムイオンと交換される。
H+/イオン勾配は同じく、選択されたイオノフォアをリポソーム内含することによっても達成可能である。例えば、リポソーム二重層内にバリノマイシンを含ませるために調製されたリポソームがカリウム緩衝液中で調製され、その後、外部媒質がナトリウム緩衝液と交換され、カリウム内側/ナトリウム外側勾配を作り出す。内側から外側方向へのカリウムイオンの運動はそれ自体、恐らくはリポソーム膜を超えての正味の電気陰性電荷に応答したリポソーム内へのプロトンの移動に起因して、内側低/外側高のH+又はイオン勾配を生み出す(ディーマー、D.W.、ら、Biochim.et Biophys.Acta、第274号:323頁(1972年))。
類似の手法は、高い濃度の硫酸マグネシウムを有する水溶液に対し脂質を添加することにある。硫酸マグネシウム勾配は、スクロース中でのpH7.4、20mMのHEPES緩衝液による透析によって作り出される。その後、A23187イオノフォアが加えられ、その結果、各マグネシウムイオンについて2つのプロトンと交換でマグネシウムイオンが外向きに輸送され、その上高リポソーム内/低リポソーム外のプロトン勾配が確立される結果となる(センスク(Senske)DB、ら、Biochim.Biophys.Acta、第1414号:188〜204頁(1998年))。
さらにもう1つの手法は、本明細書に参照により援用されている米国特許第5,939,096号明細書中で記載されている。簡単に言うと、その方法は、そのプロトン化形態がリポソーム膜を超えて転位してより高い内側が高く/外側が低いH+又はイオン勾配を生成する、酢酸などの弱酸の塩が関与するプロトンシャトル機序を利用する。次に、両親媒性弱酸化合物が媒質に添加されて予備成形リポソームを生成する。この両親媒性弱酸はこの勾配に応答してリポソーム中に蓄積し、カチオン(すなわちカルシウムイオン)促進型沈殿又はリポソーム膜を超えた低い透過性によりリポソーム内に保持され得る:すなわち、両親媒性弱酸は酢酸と交換される。
弱塩基の場合、H+/イオン勾配は、水酸化物;硫酸塩;リン酸塩;グルクロン酸塩;クエン酸塩;炭酸塩;重炭酸塩;硝酸塩;シアン酸塩;酢酸塩;安息香酸塩;臭化物;塩化物;その他の無機又は有機アニオン;アニオン重合体例えば硫酸デキストラン、リン酸デキストラン、ホウ酸デキストラン;カルボキシメチルデキストランなど;ならびにポリリン酸塩の中から選択された対イオンを有する塩を使用することにより形成可能であるが、これらに限定されない。弱酸の場合、対イオンは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、アンモニウム、及びその他の無機及び有機カチオン又は例えばデキストランスペルミン、デキストランスペルミジン、アミノエチルデキストラン、トリメチルアンモニウムデキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ポリエチレンイミンデキストランなどのカチオン重合体であり得る。対イオンは、遊離小イオンの形、又は重合体に付着された形、又は同時に両方の形で存在し得る。弱両親媒性酸を担持するリポソームについての特定の実施形態は、酢酸塩例えば酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム又は酢酸カリウムなどの酢酸塩を使用することによりリポソーム外高/リポソーム内低の膜貫通勾配が形成されている実施形態である。酢酸カルシウム塩は、好ましい酢酸塩である。
リポソームからの装填された作用物質の放出速度は、活性作用物質と1つの塩を形成する対イオン(これに関連して、全体が本明細書に参照により援用されている、国際公開第03/032947号パンフレット「予め画定された放出プロファイルを有するリポソーム処方物の調製方法(A method for preparing liposome formulations with a predefined release profile)」を参照のこと)、温度、媒質関連特性(媒質の組成、イオン強度、pH)、リポソーム関連特性(膜脂質組成、リポソームの型、薄層数、リポソームの大きさ、リン脂質膜の物理的状態、すなわち液体−無秩序(LD)、液体−秩序(LO)、固体−秩序(SO))及び装填分子関連特性(親油性、親水性、大きさ)を含めたさまざまな因子により左右されることが示された〔ハラン、G.、ら、Biochim Biophys.Acta、第1151号:201〜215頁(1993年)〕が、これらに限定されない。
本発明は同様に、生理学的に受容可能な担体及び本発明に従って調製された一定量の作用物質担持リポソームを含む薬学組成物も提供しており、前記量は、疾病又は障害を治療又は予防するために有効な量である。
この薬学組成物は単回用量として提供され得るが、好ましくは治療を必要とする対象に対して、(例えば累積的有効量を生成するため)長時間にわたって、数日間単回日用量でまたは一日に数回の用量で、等のように投与することができる。治療投薬計画及び投与すべき特定の処方物は、治療すべき病気の種類により依存することになり、医術当業者例えば医師にとって既知のさまざまな考慮事項により決定され得る。
「有効量」又は「〜に有効な量」という用語は、本明細書では、リポソームが投与された時点で所与の治療的投薬計画内で治療対象の疾病又は障害に関して、所望の治療効果を達成するのに充分である作用物質の量を表わすように用いられている。この量は、当該技術分野において既知の通りの考慮事項によって判定され、治療対象の身体条件の種類及び重症度及び治療投薬計画に依存する。有効量は、標準的には、適切に設計された臨床試験(用量範囲研究)の中で判定され、当業者であれば、有効量を判定する目的でかかる臨床試験をいかにして適切に行なうかがわかるだろう。一般に知られているように、有効量は、投与様式、両親媒性弱酸/塩基を担持する賦形剤の種類、活性作用物質(弱両親媒性酸又は塩基)の反応度、体内でのリポソームの分布プロファイル、例えばリポソームから放出された後の体内の半減期、存在する場合には望ましくない副作用、治療対象の年令及び性別などの因子などを含めた種々の因子を含んだ様々な薬理学的パラメータに依存する。
「投与する」(又は「投与」)という用語は、経口、非経口(皮下、筋内及び静脈内、動脈内、腹腔内など)及び鼻腔内投与、ならびに髄腔内及び注入技術を含んだ、患者体内の所望の場所へのあらゆる適切な送達経路による、患者へのリポソーム処方物の接触又は調剤、供給又は塗布を表わすために使用されている。
一実施形態によれば、本発明に従って使用される組成物は、注入に適した形態をしている。注入可能な処方物用の有効な薬学的賦形剤のための必要条件は、当業者にとって周知である(Pharmaceutics and Pharmacy Practice、J.B.Lippincott Co.、ペンシルベニア州フィラデルフィア、バンカー(Banker)及びチャルマーズ(Chalmers)編、238〜250頁(1982年)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs、Toissel、第4版、622〜630頁(1986年)を参照のこと)。
さらに本発明は、疾病又は障害について患者を治療する方法において、前記患者に対し本発明の方法により調製された一定量の作用物質担持リポソームを投与する工程を含む方法にも関する。
本明細書で使用する「治療」(又は「治療する」)という用語は、望ましくない病態の治癒又はある病気の進行の予防を表わす。治癒を目的とする場合、「治療」という用語は、その病気に付随する望ましくない症候の改善、病気の進行の減速、病気の進行期の発症の遅延、かかる症候の悪化の減速、病気の寛解期開始の増強、存在する場合には進行期の発症の遅延、生存率の改善又は病気からのより急速な回復、病気の重症度の削減又はその治癒などを含む。治療は疾病又は障害の予防も含む。「予防」という用語は、病気の発生の予防又は病気によりひき起こされる不可逆的損傷の予防、発生前の病気に付随する症候の発現の予防、病気の進行の阻害などの目的で一定量の組成物を投与することを含んでいるが、これらに限定されない。
明細書中に使用される通りの「a」、「an」及び「the」という形態には、前後関係から明らかに相反する指示がなされているのでないかぎり、単数ならびに複数の言及を含むことに留意されたい。例えば、「脂質(a lipid)」という用語は1つ以上の同じ又は異なる脂質を含む。同様にして、複数に対する言及は、前後関係から相反する指示がなされているのでないかぎり、単数も含む。
さらに、本明細書で使用される「〜を含む」という用語は、リポソームが列挙された成分を含むことを意味するように意図されているが、酸化防止剤、抗凍結剤などなどのリポソームの形成又は組成において任意であり得るその他のものを排除するわけではない。「本質的に〜からなる」という用語は、例えばリポソームといった、列挙された成分を含むものが、本物質のパラメータ(例えばリポソームの場合、安定性、リポソームからの作用物質の放出又は放出の欠如ならびにリポソームを特徴づけるその他のパラメータ)に対し必須の有意な効果をもち得るその他の成分を除く物質を定義するために用いられる。「〜からなる」というのは、このようにしてしたがって、このようなその他の成分の微量を上回る量を排除することを意味する。これらの転換語の各々により定義される実施形態が、本発明の範囲内に入る。
さらに、全ての数値は、例えば組成物又はリポソーム構成要素を構成する要素の量又は範囲に言及する場合、最高20%、時として最高10%だけ、記載された値が(+)又は(−)に変動する近似である。つねに明示的に述べられていなくても、全ての数値的呼称の前に「約」という語が付いているものとして理解すべきである。
明確さを期して、別の実施形態に関して記載されている本発明の一部の特徴が、単一の実施形態において組合せた形でも提供され得る、ということがわかる。換言すると、簡明さを期して単一の実施形態に関連して記載された本発明のさまざまな特徴は、別々に又は任意の適切な一部組合せの形ででも提供可能である。
本発明は、その特定の実施形態と併せて記載されてきたが、当業者には数多くの代替方法、修正及び変動が明らかになるということは明白であり、本発明がこのような代替方法、修正及び変動を含むことは明示的に意図されている。
本明細書で言及された全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が、本明細書に参照により援用されている。
材料
水素添加大豆ホスファチジルコリン(以下、HSPCという略語で表記する)を、リポイド(Lipoid)(ルートビヒスハーフェン(Ludwigsahfen)、ドイツ)から入手した。
水素添加大豆ホスファチジルコリン(以下、HSPCという略語で表記する)を、リポイド(Lipoid)(ルートビヒスハーフェン(Ludwigsahfen)、ドイツ)から入手した。
コレステロールはシグマ(Sigma)から入手した。
塩酸ブピバカイン(以下BUPという略語で表記する)をオルガモル(Orgamol)(エヴィオナー(Evionnar)、スイス)から入手した。
塩酸リドカイン(以下LIDという略号で表記する)をシグマから入手した。
ジミリストイルホスファチジルコリン(以下DMPCという略語で表記する)を、リポイド(ルートビヒスハーフェン、ドイツ)から入手した。
ジパルミトイルホスファチジルコリン(以下DPPCという略語で表記する)をリポイド(ルートビヒスハーフェン、ドイツ)から入手した。
リポソームの調製及び特徴づけ
多重膜ベシクル(MLV)の調製
450mgの乾燥HSPC及び154mgの乾燥コレステロール(モル比60:40)を秤量して、MLVリポソームを調製した。その後80℃で1mlのエタノール中に乾燥リン脂質/コレステロール混合物を溶解させ、溶解した混合物に(NH4)2SO4水溶液(250mM、297mgの硫酸アンモニウムを9mlの水に添加して調製したもの)を添加して、60mMの最終リン脂質濃度を有する調製物を得た。エタノール体積は、最終体積の10%であった。このようにして得たMLVを65℃で45分間加熱した。
多重膜ベシクル(MLV)の調製
450mgの乾燥HSPC及び154mgの乾燥コレステロール(モル比60:40)を秤量して、MLVリポソームを調製した。その後80℃で1mlのエタノール中に乾燥リン脂質/コレステロール混合物を溶解させ、溶解した混合物に(NH4)2SO4水溶液(250mM、297mgの硫酸アンモニウムを9mlの水に添加して調製したもの)を添加して、60mMの最終リン脂質濃度を有する調製物を得た。エタノール体積は、最終体積の10%であった。このようにして得たMLVを65℃で45分間加熱した。
大きな多小胞ベシクル(LMVV)の調製
上述のように調製したMLVを1回以上(最高合計10回の凍結−解凍サイクル)凍結−解凍させた。凍結は、液体窒素(−196℃)を用いて実施し、解凍は水浴(37℃)を用いて実施した。凍結時間は、リポソーム調製物の体積に正比例し、このようにして調製物1ミリリットルあたり1分間の凍結が実行された(すなわち、10mlについて10分間の凍結が行なわれた)。
上述のように調製したMLVを1回以上(最高合計10回の凍結−解凍サイクル)凍結−解凍させた。凍結は、液体窒素(−196℃)を用いて実施し、解凍は水浴(37℃)を用いて実施した。凍結時間は、リポソーム調製物の体積に正比例し、このようにして調製物1ミリリットルあたり1分間の凍結が実行された(すなわち、10mlについて10分間の凍結が行なわれた)。
膜貫通硫酸アンモニウム勾配を作り出すために、リポソーム調製物を生理食塩水中で逐次的に4回遠心分離した(4℃、1000g、5分)。これは、リポソーム調製物膜にわたる内側から外側のアンモニウムイオン勾配を作り出すのに有効である。アンモニウムイオン濃度勾配は、ブピバカイン(BUP)などの両親媒性弱塩基の装填のための駆動力を提供する。膜貫通pH勾配の存在を、ハラン、G.ら、Biochim.Biophys.Acta、第1151号:201〜215頁(1993年)及びクラーク(Clerc)S.、バレンホルツ、Y.Anal Biochem.第259号(l):104〜11頁(1998年)中の記載通り、両親媒性弱塩基アクリジンオレンジ(AO)の分布を判定することによって確認した。
LMVVリポソームに対する薬物の装填
45分間60℃で4.5%の適切な薬物溶液(薬物の50mg/ml溶液)と共にリポソーム調製物をインキュベートすることによってリポソーム内に薬物、BUP又はLIDを遠隔装填した。
45分間60℃で4.5%の適切な薬物溶液(薬物の50mg/ml溶液)と共にリポソーム調製物をインキュベートすることによってリポソーム内に薬物、BUP又はLIDを遠隔装填した。
生理食塩水(4℃、1000g、5分)中での遠心分離によりLMVV懸濁液から封入されていない薬物を除去した。最終媒質のpHは約5.5であった。このpHを保持して薬物の溶解度を確保し、沈殿を防止した。
一日の貯蔵後および貯蔵後少なくとも1ヵ月間、捕捉及び遊離した薬物の量を、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて測定し(グラント(Grant)、G.ら、Pharm.Res.、第18号N3:336〜343頁(2001年)及びグラント、G.ら、Anasthesiology、第101号:133〜137頁(2004年))、リポソーム処方物中のリン脂質の量をバートレット(Bartlett)方法を用いて判定した(シュミーダ(Shmeeda)、H.ら、Methods Enzymol.、第367号:272〜292頁(2003年))。得られたパラメータから薬物対脂質比を計算した。
薬物装填されたリポソームの特性解析
薬物対脂質比
上述の通りに調製したリポソーム処方物中で得られた薬物対脂質比は、2超であった(薬物モル/脂質モル>2)。
薬物対脂質比
上述の通りに調製したリポソーム処方物中で得られた薬物対脂質比は、2超であった(薬物モル/脂質モル>2)。
リポソームサイズ
レーザーフラウンホーファ回折(LS13320レーザー回折粒子選別分析器、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)、英国)を用いてリポソームのサイズを判定した。計器のソフトウェアは、体積中位径として粒度を表現する。LMVVの平均サイズは約8.5±6.5ミクロンであった。AO分布に従った膜貫通pH勾配のレベルは約89%であり、低リポソーム間/高リポソーム内の膜貫通pH勾配が3超であることを確認した。
レーザーフラウンホーファ回折(LS13320レーザー回折粒子選別分析器、ベックマン・コールター(Beckman Coulter)、英国)を用いてリポソームのサイズを判定した。計器のソフトウェアは、体積中位径として粒度を表現する。LMVVの平均サイズは約8.5±6.5ミクロンであった。AO分布に従った膜貫通pH勾配のレベルは約89%であり、低リポソーム間/高リポソーム内の膜貫通pH勾配が3超であることを確認した。
薬物装填されたリポソームの動態
リポソームからの薬物漏出の動態を、調製後1ヵ月(BUPについて)又は3ヵ月(LIDについて)間の貯蔵中に4℃で測定した。表1及び2は、異なる時点での漏出を表わすパラメータを提供している。
リポソームからの薬物漏出の動態を、調製後1ヵ月(BUPについて)又は3ヵ月(LIDについて)間の貯蔵中に4℃で測定した。表1及び2は、異なる時点での漏出を表わすパラメータを提供している。
薬物/脂質比及び薬物放出レベルに対する凍結−解凍サイクル数の効果
LMVV特性に対する凍結・解凍サイクル数の効果を研究した。2回の独立した実験を実施した。2回目の実験においては、凍結−解凍されなかったリポソーム(MLV)のバッチを検査した。膜貫通pH勾配及びBUP装填を上述の通りに準備した。AO分布測定値によると、膜貫通pH勾配は全ての調製物について同じ、すなわち約85%〜90%であった。
LMVV特性に対する凍結・解凍サイクル数の効果を研究した。2回の独立した実験を実施した。2回目の実験においては、凍結−解凍されなかったリポソーム(MLV)のバッチを検査した。膜貫通pH勾配及びBUP装填を上述の通りに準備した。AO分布測定値によると、膜貫通pH勾配は全ての調製物について同じ、すなわち約85%〜90%であった。
表3中に提示する結果は、調製後(一晩)及び一週間の貯蔵後に提供された合計BUPとの関係における組成物中の遊離非封入BUPの百分率を示す。
表3は、F&Tの数が薬物−脂質比に対し有意な効果を全く有していなかったことを示している。さらに、リポソームのサイズ分布を、F&T数の一関数として測定した。
凍結−解凍サイクル数は、ベックマン・コールターの汎用液体モデルを用いてベシクルの体積に基づいて判定された、リポソームサイズ分布に対する有意な効果を全く有していなかった(1.27μmの精密サイズ標準直径を伴いフラウンホーファrf780dの(サイズ分布計算用)光学モデルである0.040〜2000μmのサイズ範囲測定を可能にするPIDS及び光回折の組合せ、ポリサイエンス社(Polyscience,Inc)のCat No.64035を使用)(データ示さず)。特定的には、1回目の実験では1〜5回の凍結−解凍サイクルの場合および2回目の実験では1〜7回の凍結−解凍サイクルの場合でさえ、薬物/脂質比の間に有意な差異は全く存在しなかった。同時に、最高の薬物/脂質比は、両方の実験において9回の凍結−解凍サイクル後に得られた。第2の調製物はより高い薬物放出レベルを示した。
薬物/脂質比及び薬物放出レベルに対する初期リン脂質濃度の効果
異なる初期脂質濃度の原液を調製し、凍結−解凍サイクル数(0、1及び9回のF&Tサイクル)の効果を評価した。2つの独立した実験を実施した。1回目の実験では、薬物装填から2日後にリポソームからのBUP漏出を測定し、2回目の実験では、薬物装填後2週間のBUP漏出を判定した。結果は表4(1回目の実験)及び表5(2回目の実験)の中で提示されている。
異なる初期脂質濃度の原液を調製し、凍結−解凍サイクル数(0、1及び9回のF&Tサイクル)の効果を評価した。2つの独立した実験を実施した。1回目の実験では、薬物装填から2日後にリポソームからのBUP漏出を測定し、2回目の実験では、薬物装填後2週間のBUP漏出を判定した。結果は表4(1回目の実験)及び表5(2回目の実験)の中で提示されている。
表4及び5に提示されたデータによると、初期リン脂質濃度を増大させると(約97mMの高さまで)、MLVを伴う全ての調製物(F&Tサイクル無し(0))中で薬物/脂質比に影響を及ぼしたことが明らかである。9回のF&Tサイクルの後に得られたLMVV中では、薬物/脂質比に対する異なる初期リン脂質濃度の有意な効果は全く存在しなかった。初期脂質濃度が高くなればなるほど薬物漏出(2週間後の)が低くなることが指摘される。しかしながら、最高118mMまでのリン脂質初期濃度の付加的な増大が結果として薬物/脂質比の減少をもたらしたということもさらに指摘される。
リポソーム中のBUPの装填には、さまざまな利点があり、なかでも、遊離形態での薬物の毒性の低減という利点がある。高い効能をもつアミド総合型局部麻酔薬であるBUPは、高濃度の薬物が循環に入った時点で心臓血管及び中枢神経系の毒性を結果としてもたらす、ということがわかっている。このようにして、標準的なBUP及びLMVVBUPの全身的毒性を、腹腔内注射の後に50%のマウスにおいて致死的である用量(LD50)を判定することによって評価した。所要動物数を最小限におさえるために、ディクソン及びマッセイ(Dixon and Massey)のアップアンドダウン法を使用した。全ての研究溶液について、動物の体重10gあたり0.3mlを注射し、マウスを注射後6時間にわたり毒性徴候について観察した。結果は、標準的BUPについてのLD50が71mg/kgであり、LMVVBUPについてのLD50が565mg/kgであることを示した。LMVVBUPにおけるLD50のこの8倍増加は、リポソーム貯蔵からの薬物の低速放出と一貫性をもつものであった。これは同様に、LMVVの使用によって現在許容されているよりもはるかに多い局所麻酔用量をより安全に投与することが可能になるということも示している。
Claims (21)
- (a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共に工程(a)のリポソーム形成脂質を含む前記混合物又はリポソーム形成脂質を溶解させて、前記脂質の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し工程(b)の溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程;
を含むリポソーム調製方法であって、
リポソームが、1.0超の作用物質対リポソーム形成脂質比で、作用物質を封入することができる、方法。 - (a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共にリポソーム形成脂質を含む前記混合物又は前記リポソーム形成脂質を溶解させて、前記脂質の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し前記溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
からなるリポソーム調製方法であって、
前記リポソームが、1.0超の前記作用物質対前記リポソーム形成脂質比で作用物質を封入することができる、方法。 - (a) 乾燥リポソーム形成脂質又はリポソーム形成脂質を含む乾燥混合物を提供する工程と;
(b) プロトン性有機溶媒と共にリポソーム形成脂質を含む前記混合物又は前記リポソーム形成脂質を溶解させて、前記脂質の溶液又は分散を形成する工程と;及び
(c) イオン含有水溶液に対し前記溶液又は分散を添加してリポソーム懸濁液を形成する工程と;
を含むリポソーム調製方法であり、前記リポソームが、1.0超の前記作用物質対前記リポソーム形成脂質比で作用物質を封入することができる方法であって、
前記溶液又は分散を乾燥させて、乾燥脂質フィルムを形成する工程;
前記リポソーム懸濁液中でリポソームを小型化して小さな単層膜ベシクル(SUV)を形成する工程;
のうちの1つ以上の工程が排除されていることを特徴とする方法。 - 作用物質担持リポソームの調製方法であって、
(i) 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法によりリポソーム懸濁液を提供する工程と;及び
(ii) 前記作用物質を含む溶液と前記リポソーム懸濁液をインキュベートして作用物質担持リポソームを形成する工程と;
を含み、
前記作用物質担持リポソームが、1.0超の前記作用物質対前記リポソーム形成脂質間モル/モル比を含む、方法。 - 前記リポソーム懸濁液が多重膜ベシクル(MLV)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リポソーム形成脂質がリン脂質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記乾燥混合物がコレステロールを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記プロトン性有機溶媒が水混和性である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記有機溶媒がエタノール、メタノール又は第3級ブタノールである、請求項8に記載の方法。
- 前記リポソーム形成脂質の前記溶液又は懸濁液が少なくとも20mMの脂質濃度を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
- 前記脂質濃度が約30mMから約100mMの間である、請求項10に記載の方法。
- 大きい多重膜ベシクル(LMVV)を得るために、前記リポソーム懸濁液の少なくとも1回の凍結・解凍(F&T)サイクルを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記作用物質対脂質比が1.8以上である、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リン脂質が水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)である、請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法。
- 前記作用物質が弱両親媒性塩基又は弱両親媒性酸である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記弱両親媒性塩基でのインキュベーションが、低リポソーム間/高リポソーム内膜貫通pH又はイオン勾配を有するリポソームと共に行なわれる、請求項2〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リポソームが低リポソーム間/高リポソーム内膜貫通アンモニウム塩勾配を有する、請求項16に記載の方法。
- 前記弱い両親媒性酸でのインキュベーションが、高リポソーム間/低リポソーム内膜貫通pH又はイオン勾配を有するリポソームと共に行なわれる、請求項2〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リポソームが高リポソーム間/低リポソーム内膜貫通酢酸塩勾配を有する、請求項18に記載の方法。
- 請求項2〜19のいずれか一項に記載の方法により調製された生理学的に受容可能な担体及び作用物質担持リポソームを含む、薬学組成物。
- 請求項2〜20のいずれか一項に記載の方法により調製された一定量の作用物質担持リポソームを対象に提供することを含む、前記対象の治療方法。
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2006
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